霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 狭野(さぬ)の食国(をすくに)〔一九三五〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm7703
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 天津(あまつ)神(かみ)国津(くにつ)神(かみ)七柱(ななはしら)は、002磐楠舟(いはくすぶね)に身(み)を寄(よ)せ四方(よも)八方(やも)の珍(めづら)しき話(はなし)に時(とき)をうつし給(たま)ひつつ、003東雲(しのの)近(めちか)くなりければ、004この霧(きり)の海原(うなばら)に数多(あまた)棲(す)める百千鳥(ももちどり)の囀(さへづ)る声(こゑ)漸(やうや)くひびき渡(わた)り、005時々(ときどき)大(おほ)いなる鷲(わし)の声(こゑ)は、006神々(かみがみ)の耳(みみ)を欹(そばだ)たしめたりける。
007 ここに朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
008『霧(きり)の海(うみ)の波(なみ)にうかびて吾(わが)立(た)てる
009東雲(しののめ)の空(そら)はほの明(あか)りせり
010百千鳥(ももちどり)啼(な)く声(こゑ)さえて霧(きり)の海(うみ)の
011波(なみ)は漸(やうや)くしののめにけり
012天晴(あめはれ)比女(ひめ)神(かみ)の現(あ)れます今日(けふ)よりは
013天津(あまつ)日(ひ)の光(かげ)清(きよ)く照(て)りまさむ
014ほのぼのと明(あ)け方(がた)近(ちか)くなり行(ゆ)きて
015俄(にはか)に吾(わが)魂(たま)かがやき初(そ)めたり』
016 初頭(うぶがみ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
017『東雲(しののめ)の空(そら)ほの明(あか)りつつ霧(きり)の海(うみ)の
018霧(きり)はつぎつぎうすらぎにけり
019朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の光(ひかり)に霧(きり)の海(うみ)の
020霧(きり)は御空(みそら)にうすらぎ消(き)ゆるも
021東(ひむがし)の空(そら)ほのぼのと明(あか)らみぬ
022やがて昇(のぼ)らむ天津(あまつ)日(ひ)の神(かみ)は
023明(あ)け方(がた)の舟(ふね)に浮(うか)びて吾(わが)魂(たま)は
024よみがへりつつ澄(す)みきらひたり
025曲津(まが)神(かみ)の永久(とは)にひそめる霧(きり)の海(うみ)の
026島(しま)ことごとく言向(ことむ)けやはさむ
027いさぎよき朝香(あさか)の比女(ひめ)の御尾前(みをさき)に
028仕(つか)へてわれは功(いさを)を立(た)てなむ
029アの声(こゑ)の生言霊(いくことたま)に現(あら)はれし
030初頭(うぶがみ)比古(ひこ)吾(あ)は力(ちから)なりけり
031限(かぎ)りなき水火(いき)の力(ちから)を現(あら)はして
032曲津(まが)の砦(とりで)を砕(くだ)き破(やぶ)らむ』
033 起立(おきたつ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
034『東(ひむがし)の空(そら)明(あか)らみぬいざさらば
035起立(おきたつ)の神(かみ)神言(かみごと)宣(の)らむ
036天界(かみくに)は生言霊(いくことたま)に生(な)りし国土(くに)よ
037朝(あさ)な夕(ゆふ)なを神言(かみごと)宣(の)らむ
038一日(ひとひ)だも神言(かみごと)の水火(いき)忘(わす)れたる
039日(ひ)は曲津見(まがつみ)の襲(おそ)ひ来(きた)るも
040非時(ときじく)に生言霊(いくことたま)を宣(の)りつづけ
041醜(しこ)の砦(とりで)に向(むか)ひて進(すす)まむ
042もうもうと霧(きり)立(た)ちのぼる海原(うなばら)を
043明(あか)し進(すす)まむ起立(おきたつ)の神(かみ)吾(われ)は
044東(ひむがし)の雲霧(くもきり)わけて天津(あまつ)日(ひ)は
045大地(だいち)の限(かぎ)り照(て)らして昇(のぼ)れり』
046 天中(あめなか)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
047『主(ス)の神(かみ)のサ声(ごゑ)の言霊(ことたま)幸(さちは)ひて
048天中(あめなか)比古(ひこ)と吾(われ)は生(うま)れし
049朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)の言霊(ことたま)に
050服従(まつろ)はぬものはあらじと思(おも)ふ
051朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)の言霊(ことたま)を
052補(おぎな)ひ奉(まつ)ると吾(われ)は天降(あも)りつ
053天津(あまつ)日(ひ)は生言霊(いくことたま)に照(て)らされて
054天地(てんち)のあらむ限(かぎ)りを照(て)らせり
055非時(ときじく)に雲霧(くもきり)迷(まよ)ふ稚国土(わかぐに)も
056今日(けふ)より成(な)らむ天津(あまつ)日(ひ)の光(ひかり)に』
057 天晴(あめはれ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
058『やうやくに諸神(ももがみ)等(たち)の言霊(ことたま)の
059水火(いき)幸(さちは)ひて天晴(あめは)れにけり
060この海(うみ)を十重(とへ)に二十重(はたへ)に包(つつ)みたる
061霧(きり)うせにつつ天晴(あめは)れにけり
062わが水火(いき)は幸(さちは)ひ助(たす)けて大空(おほぞら)に
063天照(あまて)り渡(わた)らす日(ひ)の大御神(おほみかみ)よ
064斯(か)くならば如何(いか)なる曲津(まが)の潜(ひそ)むとも
065伊吹(いぶ)きに払(はら)はむ生言霊(いくことたま)に
066四方(よも)八方(やも)を包(つつ)みし雲霧(くもきり)晴(は)れにつつ
067見渡(みわた)す限(かぎ)り光(ひかり)の野辺(のべ)なり
068果(は)てしなき霧(きり)の海原(うなばら)に浮(うか)びたる
069島(しま)ことごとく目(め)にうつりけり
070いや先(さ)きに蟻(あり)の棲(す)むとふ魔(ま)の島(しま)に
071舟漕(ふねこ)ぎよせて上(あが)らむとぞ思(おも)ふ』
072 立世(たつよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
073『朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)を守(まも)りて立世(たつよ)比女(ひめ)吾(われ)は
074生言霊(いくことたま)に水火(いき)を放(はな)たむ
075吾(わが)舟(ふね)は次第(しだい)々々(しだい)に魔(ま)の島(しま)を
076指(さ)して進(すす)めり岸(きし)とほみかも
077艪(ろ)も楫(かい)もなけれど生(い)ける言霊(ことたま)に
078進(すす)み行(ゆ)くこそ不思議(ふしぎ)なるかも
079西北(にしきた)の風(かぜ)吹(ふ)き起(おこ)りわが舟(ふね)は
080魔(ま)の島(しま)さして進(すす)み行(ゆ)くなり
081駒(こま)よりも形(かたち)大(おほ)いなる蟻(あり)の群(むれ)
082魔(ま)の浮(う)き島(じま)に集(つど)へりと聞(き)く』
083 狭野彦(さぬひこ)は歌(うた)ふ。
084『大(おほ)いなる蟻(あり)の棲(す)むてふ魔(ま)の島(しま)は
085容易(ようい)に近(ちか)づき得(え)ざる島(しま)と聞(き)く
086さり乍(なが)ら力(ちから)の神々(かみがみ)ましませば
087今日(けふ)は安(やす)らに島(しま)に上(あが)らむか』
088 斯(か)く神々(かみがみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ間(ま)もあらず、089数十(すうじふ)里(り)の波(なみ)を渡(わた)りて御舟(みふね)は魔(ま)の島(しま)近(ちか)く着(つ)きにける。
090 ここに朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は魔(ま)の島(しま)を間近(まぢか)に眺(なが)めながら、091舟(ふね)を止(とど)めて暫(しば)しを休(やす)らひ、092島(しま)の様子(やうす)を窺(うかが)ひ給(たま)ひつつ御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
093『黒々(くろぐろ)と島(しま)一面(いちめん)に群(むら)がりて
094動(うご)ける影(かげ)は蟻(あり)にやあるらむ
095吾(わが)乗(の)れる駒(こま)より大(だい)なる蟻(あり)の群(むれ)
096正(まさ)しく曲津見(まが)の化身(けしん)なるらむ
097この島(しま)に上(あが)れば忽(たちま)ち数十万(すじふまん)の
098蟻(あり)は襲(おそ)はむ驚(おどろ)きにつつ』
099 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は舟(ふね)の上(うへ)より、100御水火(みいき)さわやかに、
101『曲津(まがつ)神(かみ)の蟻(あり)と変(かは)りて寄(よ)り集(つど)ふ
102この魔(ま)の島(しま)よ海(うみ)に沈(しづ)まへ
103蟻(あり)よ蟻(あり)よ姿(かげ)をひそめて消(き)え失(う)せよ
104吾(われ)この島(しま)を今(いま)に沈(しづ)めむ』
105 斯(か)く歌(うた)ひ給(たま)へば、106曲津見(まがつみ)は驚(おどろ)き騒(さわ)ぎ、107前後(ぜんご)左右(さいう)に先(さき)を争(あらそ)ひ島山(しまやま)を駈(か)け廻(めぐ)る様(さま)、108百万(ひやくまん)の大軍(たいぐん)一度(いちど)に襲(おそ)ひ来(きた)りし如(ごと)く響(ひび)きを立(た)て、109狼狽(らうばい)のさまありありと目(め)に映(うつ)りける。
110 さてこの魔(ま)の島(しま)は八十(やそ)曲津見(まがつみ)の地中(ちちう)に潜(ひそ)み、111ただ頭(あたま)のみを水上(すゐじやう)に浮(う)かせゐたるものにして、112数多(あまた)の蟻(あり)はいづれも曲津見(まがつみ)の頭(あたま)にわける虱(しらみ)なりける。
113 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は『島(しま)よ沈(しづ)め』と宣(の)らせし言霊(ことたま)も、114一(いち)時(じ)何(なん)の功(いさを)もなく、115曲津(まがつ)神(かみ)はますます狂(くる)ひ立(た)ち、116島(しま)は次第(しだい)に高(たか)く浮(う)き上(あが)りて曲津見(まがつみ)の巨体(きよたい)は水上(すゐじやう)に浮(うか)び、117目(め)鼻(はな)口(くち)の不規律(ふきりつ)に附着(ふちやく)せる顔(かほ)は雲(くも)を圧(あつ)して高(たか)く、118足(あし)の膝頭(ひざがしら)より中(した)は海中(かいちう)にあり、119其(そ)の大(おほ)いさ形容(けいよう)すべからず。120カラカラと不規律(ふきりつ)なる歯並(はなみ)の口(くち)より笑(わら)ふ声(こゑ)は百雷(ひやくらい)の一(いち)時(じ)に轟(とどろ)くかと思(おも)はれにける。121その声(こゑ)、
122『ガアーーハハハハ ギアーーハハハハ ギユーーフフフフ ゲエーーヘヘヘヘ ギヨーーホホホホ ものものしや朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)とは真(しん)の神(かみ)にあらず、123天界(てんかい)を偽(いつは)る贋神(にせがみ)ならむ。124待(ま)て、125今(いま)に此(この)八十(やそ)曲津見(まがつみ)の神(かみ)が神力(しんりき)を現(あら)はし、126一柱(ひとはしら)も残(のこ)らず吾(わが)泥足(どろあし)に踏(ふ)み躙(にじ)りくれむ。127てもさても心地(ここち)よやな。128ギアーーハハハハ、129ギユーーフフフフ、130ギヨーーホホホホ、131さてもさてもいぢらしいものだわい』
132と言(い)ひつつ巨大(きよだい)なる口(くち)より四方(しはう)八方(はつぱう)に吹(ふ)き散(ち)らす唾(つばき)は滝(たき)の如(ごと)、133四方(よも)八方(やも)に散(ち)り乱(みだ)るるさま、134何(なに)ものを以(もつ)ても言(い)ひ現(あら)はし得(え)ざる光景(くわうけい)なりき。135万一(まんいち)この口(くち)より出(い)づる唾(つばき)の一滴(いつてき)だも身(み)に触(ふ)るる時(とき)は、136全身(ぜんしん)固着(こちやく)して、137手(て)も足(あし)も動(うご)く能(あた)はざるに至(いた)る、138曲津(まがつ)神(かみ)の魔術(まじゆつ)の奥(おく)の手(て)をつくしたるものなりける。139朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は少(すこ)しも恐(おそ)れず、
140『曲津見(まがつみ)の神(かみ)の雄猛(をたけ)びものものし
141わが生霊(いくたま)に滅(ほろ)ぼしくれむ
142汝(なれ)が吹(ふ)く醜(しこ)のみ水火(いき)は雲(くも)となり
143霧(きり)となりつつこの世(よ)を濁(にご)せり
144一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)、五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)
145曲津見(まがつみ)の神(かみ)よ
146巌(いは)となれなれこのまま巌(いは)と
147手足(てあし)も動(うご)くな口(くち)も利(き)くな
148曲津(まがつ)神(かみ)の体(からだ)は立巌(たていは)となれ
149その口鼻(くちはな)は洞穴(ほらあな)となれ
150二(ふた)つの目玉(めだま)は池(いけ)となれ
151蟻(あり)も虱(しらみ)もことごとく
152土(つち)となれなれその土(つち)ゆ
153草木(くさき)は萌(も)えよ花(はな)は咲(さ)け
154香具(かぐ)の木(こ)の実(み)は非時(ときじく)結(むす)べ』
155と言霊(ことたま)宣(の)らせ給(たま)へば、156八十(やそ)曲津見(まがつみ)の巨体(きよたい)は其(その)儘(まま)海中(わだなか)に固(かた)まり、157巨大(きよだい)なる巌島(いはしま)と固(かた)められける。
158 初頭(うぶがみ)比古(ひこ)の神(かみ)は驚(おどろ)きの余(あま)り、159御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
160『比女神(ひめがみ)の生言霊(いくことたま)の功績(いさをし)に
161曲津神(まがつ)は遂(つひ)に巌(いはほ)となりける
162島(しま)の上(うへ)に蟻(あり)と見(み)えしは曲津見(まがつみ)の
163頭(あたま)に生(お)ふる虱(しらみ)なりける
164比女神(ひめがみ)の生言霊(いくことたま)に閉(と)ぢられて
165曲津神(まがつ)は遂(つひ)に巌(いはほ)となりける
166今日(けふ)よりはこれの巌島(いはしま)に国津(くにつ)神(かみ)
167永久(とは)に住(す)ませて拓(ひら)かせむと思(おも)ふ
168天界(かみくに)は生言霊(いくことたま)の御水火(みいき)より
169成(な)りし国土(くに)とは今(いま)悟(さと)りけり
170比女神(ひめがみ)は御樋代(みひしろ)神(がみ)にましませば
171如何(いな)なる神業(みわざ)も果(はた)し給(たま)へり
172比女神(ひめがみ)の神業(みわざ)助(たす)くと吾(わが)宣(の)りし
173生言霊(いくことたま)の恥(は)づかしきかな
174今日(けふ)よりは畏(おそ)れ慎(つつし)み比女神(ひめがみ)の
175神業(みわざ)謹(つつし)み仕(つか)へむと思(おも)ふ
176主(ス)の神(かみ)のア声(ごゑ)の言霊(ことたま)に生(あ)れし吾(われ)も
177比女(ひめ)の功(いさを)に驚(おどろ)きしはや』
178 起立(おきたつ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
179『掛巻(かけまく)も畏(かしこ)し朝香(あさか)比女神(ひめがみ)の
180今日(けふ)の功(いさを)におどろきにけり
181雲霧(くもきり)を四方(よも)に払(はら)ひて魔(ま)の島(しま)の
182曲津神(まがつ)を永久(とは)に巌(いはほ)となせり
183沼(ぬま)をかため島(しま)をかためて比女神(ひめがみ)は
184新(あたら)しき国土(くに)を生(う)ませたまひぬ
185魔(ま)の島(しま)は次第(しだい)々々(しだい)にふくれつつ
186見(み)る見(み)る草木(くさき)は生(お)ひ立(た)ちにけり
187国津(くにつ)神(かみ)の永久(とは)の住処(すみか)と比女神(ひめがみ)は
188曲津神(まがつ)の島(しま)を固(かた)め給(たま)ひぬ
189今日(けふ)よりは国津神(くにつかみ)等(たち)の食物(をしもの)を
190育(そだ)つる国土(くに)と栄(さか)えますらむ
191いやらしき曲津神(まがつ)の声(こゑ)に恥(は)づかしも
192われは一時(ひととき)ふるひ居(ゐ)たりし
193起立(おきたつ)の吾(われ)神(かみ)ながら震(ふる)ひ立(た)ちて
194生言霊(いくことたま)も出(い)でざりしはや
195主(ス)の神(かみ)ゆ御樋代(みひしろ)神(がみ)と選(えら)まれし
196神(かみ)にしませばかくもありなむ』
197 立世(たつよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
198『かくの如(ごと)尊(たふと)き神(かみ)の側(そば)近(ちか)く
199仕(つか)ふる吾(われ)の幸(さち)を思(おも)へり
200比女神(ひめがみ)よ立世(たつよ)比女神(ひめがみ)の真心(まごころ)を
201嘉(よみ)して永久(とは)に仕(つか)はせ給(たま)へ
202吾(われ)はいま朝香(あさか)の比女(ひめ)に仕(つか)へむと
203楽(たの)しみ待(ま)ちし女神(めがみ)なるはや』
204 天中(あめなか)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
205『比女神(ひめがみ)の生言霊(いくことたま)に固(かた)まりし
206この島ケ根(しまがね)に舟(ふね)寄(よ)せむかな
207大(おほ)いなる蟻(あり)と見(み)えしは曲津(まが)神(かみ)の
208頭(あたま)にわける虱(しらみ)なりしか
209斯(か)くならば一度(ひとたび)島(しま)に上(あが)り行(ゆ)きて
210生言霊(いくことたま)の種(たね)を蒔(ま)かばや
211朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)よ許(ゆる)させ給(たま)へかし
212草木(くさき)の種(たね)を吾(われ)蒔(ま)かむと思(おも)ふ』
213 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)もて答(こた)へ給(たま)ふ。
214『天中(あめなか)比古(ひこ)神(かみ)の神言(みこと)にこの島(しま)の
215総(すべ)てをまかせて国土(くに)拓(ひら)かせむ』
216 この島(しま)は周囲(しうゐ)百(ひやく)里(り)に余(あま)る相当(さうたう)に広(ひろ)き島(しま)なりける。217ここに天中(あめなか)比古(ひこ)の神(かみ)は国津(くにつ)神(かみ)狭野彦(さぬひこ)を譲(ゆづ)り受(う)け、218諸々(もも)の草木(くさき)五穀(ごこく)を生言霊(いくことたま)に生(う)み出(い)でましつつ、219遂(つひ)に狭野(さぬ)の食国(をすくに)を生(う)み出(い)で給(たま)ひ、220永久(とこしへ)に鎮(しづ)まり給(たま)ひける。
221(昭和八・一二・一二 旧一〇・二五 於大阪分院蒼雲閣 谷前清子謹録)
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