霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 照魔灯(せうまとう)〔一二九六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第1篇 和光同塵 よみ(新仮名遣い):わこうどうじん
章:第2章 照魔燈 よみ(新仮名遣い):しょうまとう 通し章番号:1296
口述日:1923(大正12)年01月20日(旧12月4日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高天原の最奥における霊国および天国の天人は、すべて愛の善徳を完備し信の真善を成就し、智慧証覚に満ちている。ゆえに中間天国以下の天人のように決して信を説かず、信についても知らない。また神の真についても論究しない。
なぜなら、最高天人は大神の神格に充たされ、愛善信真はこれ天人の本体であるからである。だから他界の天人のように、これは果たして善なりや、悪なりや、などと真理を争うことはない。
また最奥天人は視覚ではなく、その聴覚によって宇宙に瀰漫せるアオウエイの五大父音の音響如何によってその証覚を円満にしていく。
大本神諭にあるごとく、生まれ赤子の心は清浄無垢であるから、たとえ智慧証覚は劣るといえども、その清浄無垢が最奥天国に和合する。またすべての物欲をすてて老後を楽しみ罪悪に遠ざかり、天命を楽しむ老人は、証覚ありかつ無垢な者であることを現している。
大本開祖は夫を見送り世間的生涯を終えて無垢の生涯に入り給うた時、初めて神は予言者として神格に充たされた聖霊を降し給うたのは、開祖の身魂を清浄無垢に復活し、その精霊をして天国の籍におかせ給うたからである。
ゆえに開祖は生前においてすでに霊的復活をせられたのである。これを霊的人格の再生という。大神は、人間の齢が進むにしたがってこれに善と真とを流入し給うものである。まず人間を導いて善と真との知識に入らしめ、不動不滅の智慧に入らしめ、最後に証覚に進ませ給う。
しかし現代の人間は、齢が進むにしたがってますます奸智に長け、表面は世捨て人のごとく装うといえども、その実ますます不良老年の域に進む者が大多数である。
老齢にいたってもますます権謀術数をたくましうして世間的権勢を掌握し無上の功名としている人物のごときは、霊界から見れば憐れむべき盲者である。無智にしてその日の労働にいそしみ不遇の生活を生涯送りし人間が、霊界に至って神の恩寵に浴し、善と真との徳に包まれるのである。
神には一片の偏波もないことを信じ、ひたすら神を愛し神に従い、正しき予言者の教えに信従すれば、生前に物質上の満足は得られなくても、その内分に受ける歓喜と悦楽は、とうてい現界の富者や権力者や智者学者のうかがい知ることはできない。
この物語の主人公たる初稚姫は再び天の命を受け、地上に降誕して大本開祖となり、世間的務めを完成し、八人の子女を生みそれぞれ神界の内的事業に奉仕せしむべく知らず知らずの間にその任を果たし、そして仁愛と信の智を発揮して地獄界を照破する神業に奉仕し、その任務を終えて後事を瑞霊に充たされた予言者に託し、ここにめでたく昇天復活されたのである。
ゆえに開祖は生前よりその容貌はあたかも少女のごとく、正音は優雅微妙にして、開祖に接近する者はその円満な霊容に感化され霊光に照らされ、善人は信従し尊敬し、悪人を嫌忌し恐怖したのである。
開祖の前身たる初稚姫もまた神代における神格者にして大予言者であった。しかしてその霊徳を深く秘して和光同塵の態度をもってあまねく万民を教化すべく、霊的・自然的活動を続け給うたのである。
神は瑞月を呼んで大化け物と宣らせ給うた。現代人はこれを聞いて、大悪人や権謀術数家のごとく認める者も少なくない。しかし神格に充たされた者を、頑迷不霊の地獄界に籍を置いた人間の目からみたときは、眼くらみ頭痛み息苦しくなり、恐怖心に駆られて、予言者を大怪物としか見ることができないものである。このような頑迷の徒を神の光明に浴せしめ、天国の生涯を送らせるのは実に最大難事である。
大正五年、口述者が役員室で神諭を紐解いていると、高島久子があわただしく居間に走ってやってきて、一厘の秘密を知らせるという。瑞月は厳然として神の道に秘密などないことを説き諭すと、高島久子の精霊は大いに怒ってわが耳をつかみ頬をたたいて狂い回った。
瑞月はやむを得ず霊縛をかけて彼女の動きを止め、また神に祈ってお許しを乞うた。起き上がった彼女は悪態をつきながら開祖の居間に侵入した。久子の精霊は開祖の容貌を拝するや、アッと仰向けに倒れ、開祖に悪態をつきながら吾が居間に戻ってきて、仁王立ちとなって瑞月をにらみつけた。
そこに開祖が梅の杖をつきながらちょっと障子を開けてのぞかれた。久子はまたもやキャッと叫んでその場に転倒し、毬のように表に駆け出してしまった。
後で高島久子に聞けば、開祖の居間の障子を開くやいなや、開祖の肉体は金色燦爛たる光明に満ち、その御姿を熟しすることができず、恐ろしくなって自分の守護神が一生懸命駆け出した、と答えた。
またあるときは修行場へ暴れこんで修行者に馬乗りになって小便をかけたりしたが、聖場で小便をしても神罰が当たらなかったのは神格が高いからだ、などと誇っている始末である。神は畜生が糞尿を垂れても看過したまう、これと同じ道理であることがわからないのである。
自愛心強く世間愛を善事としている人間はかえってこのような奇矯な行いを神秘とみなし、人間業でできることではないと感心するのである。
悪霊は、開祖の身内であれば決して悪神が憑依すべきものでない、という人々の思い込みを利用し、高島久子を従えてしまうと、二三の迷える信者を引き連れて八木に逃げ帰り、兇党界の団体をますます大ならしめ、大神の神業を妨害せんと企みつつある。
久子本人は元来開祖を思うこと深く、無知にして比較的その心も清ければ、兇霊も開祖の神諭を非難することはできなかった。そこで表面には厳瑞二霊を尊敬し信従するごとく装い、狂惑した久子を使って世人を魔道に引き入れようと企みつつあるのである。
この悪霊の教えを妙に曲解して随喜渇仰し随伴している者がたくさん現れてきたのは、神界のために実に悲しむべきことである。八木の停車場で狂態を演じて人々を驚かせ、大本の教えを破壊せんと企んだこともあった。
兇霊はこの筆法を用いてあるときは変性男子を極力賞賛し、また対する者の心の中に男子・女子を否んでいることを認めるときは声をひそめて頻りに誹謗し、吾が薬籠中のものになそうと企むものである。初稚姫と高姫の今後の活動は、これに類するものが多ければ巻頭に引証することとした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-11-04 06:52:28 文字数:6552 OBC :rm5002
愛善世界社版:19頁 八幡書店版:第9輯 154頁 修補版: 校定版:20頁 普及版:11頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]:出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第四篇 神霊世界 > 第八章 照魔燈
001 高天原(たかあまはら)の最奥(さいあう)に於(お)ける霊国(れいごく)及(およ)び天国(てんごく)の天人(てんにん)は、002すべて愛(あい)の善徳(ぜんとく)を完備(くわんび)し、003信(しん)の真善(しんぜん)を成就(じやうじゆ)し、004智慧(ちゑ)証覚(しようかく)に充(み)ち居(を)るを以(もつ)て、005中間(ちうかん)天国(てんごく)以下(いか)の天人(てんにん)の如(ごと)く、006決(けつ)して信(しん)を説(と)かず、007又(また)信(しん)の何(なん)たるかも知(し)らないのである。008又(また)神(かみ)の真(しん)に就(つ)いて論究(ろんきう)せないのである。009何故(なにゆゑ)ならば、010斯(か)かる霊的(れいてき)及(およ)び天的(てんてき)最高(さいかう)天人(てんにん)は、011大神(おほかみ)の神格(しんかく)に充(み)たされ、012愛善(あいぜん)信真(しんしん)これ天人(てんにん)の本体(ほんたい)なるが故(ゆゑ)である。013故(ゆゑ)に他界(たかい)の天人(てんにん)の如(ごと)く、014これは果(はた)して善(ぜん)なりや、015悪(あく)なりや、016などと言(い)つて真理(しんり)を争(あらそ)はない。017只(ただ)争(あらそ)ふものは中間(ちうかん)及(およ)び下層(かそう)天界(てんかい)の天人(てんにん)の内分(ないぶん)の度(ど)の低(ひく)いものの所為(しよゐ)である。018又(また)最奥(さいあう)の天人(てんにん)は視覚(しかく)によらず、019必(かなら)ず其(その)聴覚(ちやうかく)によつて、020即(すなは)ち宇宙(うちう)に瀰漫(びまん)せるアオウエイの五大(ごだい)父音(ふおん)の音響(おんきやう)如何(いかん)によつて、021其(その)証覚(しようかく)をして益々(ますます)円満(ゑんまん)ならしむるものである。022大本(おほもと)神諭(しんゆ)に『生(うま)れ赤子(あかご)の心(こころ)にならねば、023神(かみ)の真(まこと)は分(わか)りは致(いた)さぬぞよ……』とお示(しめ)しになつてゐるが、024すべて赤子(あかご)の心(こころ)は清浄(せいじやう)無垢(むく)にして水晶(すゐしやう)の如(ごと)きものであるから、025仮令(たとへ)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)は劣(おと)ると雖(いへど)も、026直(ただ)ちに其(その)清浄(せいじやう)と無垢(むく)とは、027最奥(さいあう)天界(てんかい)に和合(わがふ)し得(う)るからである。028又(また)社会(しやくわい)的(てき)覊絆(きはん)を脱(だつ)し、029すべての物欲(ぶつよく)を棄(す)て、030悠々(いういう)として老後(らうご)を楽(たの)しみ、031罪悪(ざいあく)に遠(とほ)ざかり、032天命(てんめい)を楽(たの)しむ所(ところ)の老人(らうじん)を以(もつ)て、033証覚(しようかく)ありて無垢(むく)なる者(もの)たることを現(あら)はし給(たま)ふのである。034大本(おほもと)開祖(かいそ)が世間(せけん)的(てき)生涯(しやうがい)を終(をは)り、035夫(をつと)を見送(みおく)り、036無垢(むく)の生涯(しやうがい)に入(い)り給(たま)うた時(とき)、037始(はじ)めて神(かみ)は予言者(よげんしや)として、038これに神格(しんかく)の充(みた)されたる精霊(せいれい)を降(くだ)し給(たま)ひ、039天国(てんごく)の福音(ふくいん)を普(あまね)く地上(ちじやう)に宣伝(せんでん)し給(たま)うたのは、040実(じつ)に清浄(せいじやう)無垢(むく)の身魂(みたま)に復活(ふくくわつ)し、041精霊(せいれい)をして天国(てんごく)の籍(せき)におかせ給(たま)うたからである。042故(ゆゑ)に開祖(かいそ)の如(ごと)きは、043生前(せいぜん)に於(おい)て已(すで)に霊的(れいてき)復活(ふくくわつ)をせられたのである。044此(この)復活(ふくくわつ)を称(しよう)して霊的(れいてき)人格(じんかく)の再生(さいせい)といふのである。045大神(おほかみ)は人間(にんげん)をして其(その)齢(よはひ)進(すす)むに従(したが)ひ、046之(これ)に対(たい)して善(ぜん)と真(しん)とを流入(りうにふ)し給(たま)ふものである。047先(ま)づ人間(にんげん)を導(みちび)いて善(ぜん)と真(しん)との知識(ちしき)に入(い)らしめ、048これより進(すす)んで不動(ふどう)不滅(ふめつ)の智慧(ちゑ)に入(い)り、049最後(さいご)に其(その)智慧(ちゑ)より仏者(ぶつしや)の所謂(いはゆる)阿羅耶(あらや)識(しき)(八識(はつしき))即(すなは)ち証覚(しようかく)に進(すす)ませ給(たま)ふものである。050之(これ)を仏教(ぶつけう)にては、051阿耨(あのく)多羅(たら)、052三藐(さんみやく)三菩提心(さんぼだいしん)(無上(むじやう)証覚(しようかく))といふのである。053併(しか)しながら現代(げんだい)の人間(にんげん)は、054其(その)齢(よはひ)進(すす)むに従(したが)つて、055益々(ますます)奸智(かんち)に長(た)け、056表面(へうめん)は楽隠居(らくいんきよ)の如(ごと)く世捨人(よすてびと)の如(ごと)く、057或(あるひ)は聖人(せいじん)君子(くんし)の如(ごと)く装(よそほ)ふと雖(いへど)も、058その実(じつ)益々(ますます)不良(ふりやう)老年(らうねん)の域(ゐき)に進(すす)むものが大多数(だいたすう)である。059優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)、060弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)を以(もつ)て社会(しやくわい)の真理(しんり)と看做(みな)してゐる現代(げんだい)に立(た)ち、061多数(たすう)の党与(たうよ)を率(ひき)ゐて政治界(せいぢかい)又(また)は実業界(じつげふかい)に跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)し、062益々(ますます)権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)を逞(たくま)しうし、063僅(わづか)に其(その)地位(ちゐ)を保(たも)ち、064世間(せけん)的(てき)権勢(けんせい)を掌握(しやうあく)して無上(むじやう)の功名(こうみやう)と看做(みな)してゐる人物(じんぶつ)の如(ごと)きは、065実(じつ)に霊界(れいかい)より之(これ)を見(み)る時(とき)は憐(あは)れむべき盲者(まうじや)である。066斯(かく)の如(ごと)き現界(げんかい)に於(お)ける権力者(けんりよくしや)よりも、067無智(むち)にして其(その)日(ひ)の労働(らうどう)に勤(いそ)しみ、068現代人(げんだいじん)の無道(むだう)の権力(けんりよく)に圧倒(あつたう)され、069孜々(しし)として之(これ)に盲従(まうじゆう)し、070不遇(ふぐう)の生活(せいくわつ)を生涯(しやうがい)送(おく)りし人間(にんげん)が、071霊界(れいかい)に至(いた)つて神(かみ)の恩寵(おんちやう)に浴(よく)し、072其(その)霊魂(れいこん)は智慧(ちゑ)相応(さうおう)の光(ひかり)を放(はな)ち、073善(ぜん)と真(しん)との徳(とく)に包(つつ)まれて、074生前(せいぜん)の位地(ゐち)を転倒(てんたう)してゐる者(もの)が沢山(たくさん)にあるのである。075故(ゆゑ)に霊的(れいてき)観察(くわんさつ)よりすれば、076権勢(けんせい)ある者(もの)、077富(と)める者(もの)、078智者(ちしや)学者(がくしや)といはるる者(もの)よりも、079貧(まづ)しき者(もの)、080卑(いや)しき者(もの)、081力(ちから)弱(よわ)き者(もの)、082現界(げんかい)に於(おい)ていと小(ちひ)さき者(もの)として、083世人(せじん)の脚下(きやくか)に踏(ふ)み躙(にじ)られたる人間(にんげん)が、084却(かへ)つて愛善(あいぜん)の徳(とく)に住(ぢゆう)し、085信真(しんしん)の光(ひかり)に輝(かがや)いて、086天国(てんごく)の団体(だんたい)に円満(ゑんまん)なる生涯(しやうがい)を送(おく)るものである。087故(ゆゑ)に神(かみ)には一片(いつぺん)の依怙(えこ)もなく偏頗(へんぱ)もない事(こと)を信(しん)じ、088只管(ひたすら)神(かみ)を愛(あい)し神(かみ)に従(したが)ひ、089正(ただ)しき予言者(よげんしや)の教(をしへ)に信従(しんじゆう)せば、090生前(せいぜん)に於(おい)ても、091仮令(たとへ)物質(ぶつしつ)上(じやう)の満足(まんぞく)は得(え)られずとも、092其(その)内分(ないぶん)に受(う)くる歓喜(くわんき)と悦楽(えつらく)とは、093到底(たうてい)現界(げんかい)の富者(ふうじや)や権力者(けんりよくしや)や智者(ちしや)学者(がくしや)の窺知(きち)し得(う)る所(ところ)ではないのである。094此(この)物語(ものがたり)の主人公(しゆじんこう)たる初稚姫(はつわかひめ)は再(ふたた)び天(てん)の命(めい)を受(う)け、095地上(ちじやう)に降誕(かうたん)して大本(おほもと)開祖(かいそ)となり、096世間(せけん)的(てき)務(つと)めを完成(くわんせい)し、097八(はち)人(にん)の子女(しぢよ)を生(う)み夫々(それぞれ)神界(しんかい)の内的(ないてき)事業(じげふ)に奉仕(ほうし)せしむべく、098知(し)らず知(し)らずの間(あひだ)に其(その)任(にん)を果(はた)し、099微賤(びせん)に下(くだ)りて、100溢(あふ)るる許(ばか)りの仁愛(じんあい)と透徹(とうてつ)したる信(しん)の智(ち)を発揮(はつき)して、101暗黒(あんこく)無道(むだう)の地獄界(ぢごくかい)を照破(せうは)する神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)し、102其(その)任務(にんむ)を了(を)へて、103後事(こうじ)を瑞霊(ずゐれい)に充(みた)されたる予言者(よげんしや)に托(たく)し、104茲(ここ)に目出度(めでた)く昇天(しようてん)復活(ふくくわつ)されたのである。105故(ゆゑ)に開祖(かいそ)は生前(せいぜん)より其(その)容貌(ようばう)恰(あだか)も少女(せうぢよ)の如(ごと)く、106其(その)声音(せいおん)は優雅(いうが)美妙(びめう)にして、107又(また)少女(せうぢよ)の如(ごと)く、108玲瓏(れいろう)玉(たま)の如(ごと)き顔容(かんばせ)を抱持(はうぢ)し給(たま)ひ、109開祖(かいそ)に接近(せつきん)する者(もの)は、110何時(いつ)とはなしに其(その)円満(ゑんまん)なる霊容(れいよう)に感化(かんくわ)され、111霊光(れいくわう)に照(てら)され、112善人(ぜんにん)は之(これ)を信従(しんじゆう)し尊敬(そんけい)し、113悪人(あくにん)は之(これ)を嫌忌(けんき)し恐怖(きようふ)したのである。114開祖(かいそ)の前身(ぜんしん)たる初稚姫(はつわかひめ)も亦(また)神代(かみよ)に於(お)ける神格者(しんかくしや)にして、115大(だい)予言者(よげんしや)であつた。116その容貌(ようばう)及(およ)び全身(ぜんしん)より金色(こんじき)の光明(くわうみやう)を放射(はうしや)し、117悪魔(あくま)をして容易(ようい)に近(ちか)づき得(え)ざらしめたのである。118されど初稚姫(はつわかひめ)は、119其(その)霊徳(れいとく)と霊光(れいくわう)を深(ふか)く秘(ひ)し給(たま)ひ、120和光(わくわう)同塵(どうぢん)の態度(たいど)を以(もつ)て普(あまね)く万民(ばんみん)を教化(けうくわ)し天国(てんごく)に救(すく)はむため、121ワザと其(その)神相(しんさう)を隠(かく)し給(たま)ひて、122霊的(れいてき)及(およ)び自然(しぜん)的(てき)活動(くわつどう)を続(つづ)け給(たま)うたのである。123開祖(かいそ)は常(つね)に云(い)はれた……出口(でぐち)直(なほ)が正体(しやうたい)を現(あら)はしたなれば、124人民(じんみん)は眼(まなこ)くらみ、125到底(たうてい)側(そば)へは寄(よ)りつくことは出来(でき)ない、126故(ゆゑ)にワザとに世(よ)におちぶらし、127今(いま)まで衆生(しゆじやう)済度(さいど)の為(ため)に化(ばか)してあつたのだ……と物語(ものがた)られた事(こと)は屡々(しばしば)である。128此(この)時(とき)側(そば)に親(した)しく侍(じ)してゐた役員(やくゐん)共(ども)は、129開祖(かいそ)の平素(へいそ)の人格(じんかく)には敬服(けいふく)してゐたが、130併(しか)し其(その)お言葉(ことば)の余(あま)りに高調(かうてう)的(てき)なるに対(たい)し、131開祖(かいそ)が慢心(まんしん)をされたものとのみ思(おも)うてゐた者(もの)も沢山(たくさん)にあつたのである。132神(かみ)は必(かなら)ず順序(じゆんじよ)を守(まも)らせ給(たま)ひ、133相応(さうおう)の理(り)に依(よ)りて和合(わがふ)の徳(とく)を表(あら)はし給(たま)ふが故(ゆゑ)に、134其(その)対者(たいしや)に向(むか)つて余(あま)り懸隔(けんかく)なき様(やう)に現(あら)はれ給(たま)ふのである。135故(ゆゑ)に対者(たいしや)の徳(とく)と智慧(ちゑ)の如何(いかん)によつて、136神(かみ)又(また)は開祖(かいそ)を見(み)る所(ところ)の目(め)に非常(ひじやう)の差等(さとう)があるのは、137已(や)むを得(え)ないのである。138神(かみ)は瑞月(ずゐげつ)を呼(よ)んで大化物(おほばけもの)と予言者(よげんしや)を通(つう)じて宣(の)らせ給(たま)うた。139現代人(げんだいじん)は大化物(おほばけもの)の名(な)を聞(き)いて、140大悪人(だいあくにん)の代名詞(だいめいし)の如(ごと)く或(あるひ)は権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)家(か)の別称(べつしよう)の如(ごと)く、141又(また)巧言(かうげん)令色(れいしよく)、142表(おもて)に善(ぜん)を飾(かざ)り虚偽(きよぎ)を行(おこな)ひ、143世人(せじん)を誑惑(きやうわく)する悪人(あくにん)と認(みと)むる者(もの)も少(すくな)くないのである。144併(しか)し神格(しんかく)に充(みた)されたる者(もの)を、145頑迷(ぐわんめい)不霊(ふれい)の地獄界(ぢごくかい)に籍(せき)を於(お)ける人間(にんげん)の目(め)より見(み)るときは、146忽(たちま)ち眼(まなこ)眩(くら)み頭(かしら)痛(いた)み、147息(いき)苦(くる)しくなり、148癲狂(てんきやう)痴呆(ちはう)と忽(たちま)ち変(へん)じて、149恐怖心(きようふしん)に駆(か)られ、150その真相(しんさう)を看取(かんしゆ)することは出来(でき)ないものである。151故(ゆゑ)にかかる人間(にんげん)の地位(ちゐ)に立(た)ちて予言者(よげんしや)を仰(あふ)ぎ見(み)る時(とき)は、152大怪物(だいくわいぶつ)とより見(み)ることが出来(でき)ないのである。153吁(ああ)斯(かく)の如(ごと)き頑迷(ぐわんめい)の徒(と)をして、154神(かみ)の光明(くわうみやう)に浴(よく)せしめ、155愛善(あいぜん)の徳(とく)に住(ぢゆう)せしめて、156永遠(えいゑん)無窮(むきう)の天国(てんごく)の生涯(しやうがい)を生(い)きながらに送(おく)らしめむとするは、157実(じつ)に最大(さいだい)難事(なんじ)である。158大正(たいしやう)五(ご)年(ねん)の事(こと)であつた。159口述者(こうじゆつしや)は役員室(やくゐんしつ)に在(あ)つて神諭(しんゆ)を繙(ひもと)く折(をり)しも、160慌(あわただ)しく入(い)り来(きた)りしは開祖(かいそ)の娘(むすめ)なる高島(たかしま)久子(ひさこ)であつた。161彼(かれ)は前節(ぜんせつ)に述(の)べたる如(ごと)き肉体(にくたい)的(てき)兇霊(きようれい)に心身(しんしん)を占領(せんりやう)されて、162吾(わが)居間(ゐま)に走(はし)り入(い)りて、163恭敬(きようけい)礼拝(らいはい)し言(い)ふ。164『瑞(みづ)の御霊(みたま)様(さま)、165一大事(いちだいじ)が突発(とつぱつ)致(いた)しました。166一厘(いちりん)の秘密(ひみつ)をお知(し)らせ申(まを)します』と言(い)ふより早(はや)く、167吾(わが)耳(みみ)の側(そば)に口(くち)をよせ、168歯(は)のぬけた口(くち)から、169臭(くさ)い息(いき)と唾(つば)を、170吾(わが)顔面(がんめん)にふきかけながら、171下(くだ)らぬ不合理(ふがふり)に充(み)ちたことを喋々(てふてふ)と弁(べん)じ立(た)てた。172そこで瑞月(ずゐげつ)は儼然(げんぜん)として、173『誠(まこと)の道(みち)に秘密(ひみつ)のあるべき道理(だうり)なし、174秘密(ひみつ)の秘(ひ)は必(かなら)ず示(しめ)すといふことである。175決(けつ)して隠蔽(いんぺい)すべきものでない。176耳(みみ)もとに囁(ささや)く如(ごと)きは神人(しんじん)のなすべき所(ところ)でない。177これは体主(たいしゆ)霊従(れいじう)的(てき)人獣(にんじう)の敢(あ)へてする行為(かうゐ)である』と云(い)ふや否(いな)や、178高島(たかしま)久子(ひさこ)の精霊(せいれい)は大(おほ)いに怒(いか)つて、179わが耳(みみ)たぶを左(ひだり)の手(て)にて引張(ひつぱ)り、180右(みぎ)の手(て)を以(もつ)てわが頬(ほほ)をピシヤピシヤと叩(たた)きつけ『義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)神(かみ)の秘密(ひみつ)の忠告(ちうこく)を聞(き)かねば、181地(ち)の高天原(たかあまはら)は大騒動(だいさうどう)が起(おこ)りますぞ。182何(ど)うなつても日出(ひのでの)神(かみ)は知(し)らぬぞよ』とわめき立(た)て、183狂(くる)ひまはつた。184そこで瑞月(ずゐげつ)は兇霊(きようれい)の憑依(ひようい)せるものなることを本人(ほんにん)に懇々(こんこん)と諭(さと)してみたが、185もはや兇霊(きようれい)に霊肉(れいにく)全(まつた)く占領(せんりやう)された彼女(かれ)には何(なん)の効能(かうのう)もなかつた、186のみならず大(おほ)いに怒(いか)つて、187吾(わが)喉元(のどもと)に飛(と)びかかり、188咬(か)みつかむとした。189そこで瑞月(ずゐげつ)は已(や)むを得(え)ず、190右(みぎ)の人指(ひとさし)を前(まへ)に向(む)けて『ウン』と一声(ひとこゑ)、191神(かみ)に祈(いの)つて、192其(その)面体(めんてい)を霊光(れいくわう)に照(てら)すや否(いな)や、193忽(たちま)ちパタリと倒(たふ)れて了(しま)つた。194そこで瑞月(ずゐげつ)は直(ただち)に神(かみ)に彼(かれ)が為(ため)に謝罪(しやざい)をなし、195お許(ゆる)しを請(こ)うた。196彼女(かれ)はムクムクと立上(たちあが)り、197口(くち)を極(きは)めて『変性(へんじやう)女子(によし)の糞奴(くそやつこ)、198糞(くそ)先生(せんせい)の奴(ど)先生(せんせい)、199小松林(こまつばやし)の悪魔(あくま)奴(め)』と喚(わめ)き立(た)てながら、200長(なが)い廊下(らうか)を韋駄天(ゐだてん)走(ばし)りに開祖(かいそ)の居間(ゐま)に侵入(しんにふ)した。
201忽(たちま)ち久子(ひさこ)に憑依(ひようい)せる兇霊(きようれい)は、202開祖(かいそ)の容貌(ようばう)を拝(はい)するや、203アツと仰向(あふむ)けに倒(たふ)れ、204キヤアキヤアと喚(わめ)きながら、205長廊下(ながらうか)を毬(まり)の如(ごと)くころげて、206再(ふたた)びわが居間(ゐま)に逃(に)げ帰(かへ)り来(きた)り『奴開祖(どかいそ)の糞開祖(くそかいそ)奴(め)、207これから俺(おれ)が誠(まこと)の艮(うしとら)の金神(こんじん)ぢや、208変性(へんじやう)男子(なんし)も女子(によし)も此処(ここ)を出(で)て行(ゆ)け、209これから地(ち)の高天原(たかあまはら)は、210高島(たかしま)久子(ひさこ)が艮(うしとら)の金神(こんじん)変性(へんじやう)男子(なんし)と現(あら)はれて、211日出(ひのでの)神(かみ)を地(ぢ)に致(いた)し、212大広木(おほひろき)正宗(まさむね)殿(どの)の霊(みたま)を御用(ごよう)に使(つか)うて、213神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)するから、214此(この)方(はう)の申(まを)す事(こと)が耳(みみ)に入(はい)らぬ奴(やつ)は、215一人(ひとり)も残(のこ)らず出(で)てゆけ。216金勝要(きんかつかねの)神(かみ)の身魂(みたま)は我(が)が強(つよ)いぞよ。217木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)の生宮(いきみや)も訳(わけ)が分(わか)らぬぞよ。218これから此(この)高島(たかしま)久子(ひさこ)の体(たい)を借(か)つて、219誠(まこと)の事(こと)を知(し)らすぞよ』などと狂態(きやうたい)を演(えん)じ、220身体(からだ)を頻(しき)りに震動(しんどう)させて、221猛悪(まうあく)の相(さう)を現(あら)はし、222座敷(ざしき)の中央(まんなか)に仁王立(にわうだ)ちとなつて睨(ね)めつけてゐた。223そこへ開祖(かいそ)は梅(うめ)の杖(つゑ)をつきながら、224障子(しやうじ)をあけて一寸(ちよつと)覗(のぞ)かれると、225又(また)もやキヤツと叫(さけ)んで其(その)場(ば)に顛倒(てんたう)し、226毬(まり)のやうになつて表(おもて)へ駆(か)け出(だ)して了(しま)つた。227後(あと)に至(いた)つて高島(たかしま)久子(ひさこ)に聞(き)けば、228彼(かれ)は云(い)ふ……開祖(かいそ)の居間(ゐま)の障子(しやうじ)を開(ひら)くや否(いな)や、229開祖(かいそ)の全肉体(ぜんにくたい)は金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる光明(くわうみやう)にみち、230そのお姿(すがた)を熟視(じゆくし)する能(あた)はず、231忽(たちま)ち恐(おそ)ろしくなつて、232妾(わたし)の守護神(しゆごじん)が一生(いつしやう)懸命(けんめい)に駆(か)け出(だ)しました……と答(こた)へたのである。233又(また)彼女(かれ)が自筆(じひつ)の筆先(ふでさき)にも此(この)事(こと)を明記(めいき)してゐる。234それから久子(ひさこ)は表(おもて)へまはり、235金竜殿(きんりうでん)に侵入(しんにふ)した。236そこには数多(あまた)の役員(やくゐん)や修業者(しゆげふしや)が幽斎(いうさい)の最中(さいちう)であつた。237久子(ひさこ)は矢庭(やには)に暴(あば)れ出(だ)していふ……汝(なんぢ)等(ら)盲役員(めくらやくゐん)、238幽斎(いうさい)の修業(しうげふ)などとは以(もつ)ての外(ほか)だ、239この生宮(いきみや)の申(まを)す事(こと)を聞(き)け……と呶鳴(どな)りながら、240修業(しうげふ)に来(き)てゐた河井(かはゐ)芳男(よしを)といふ青年(せいねん)を引捉(ひつとら)へ、241殿中(でんちう)に於(おい)て馬乗(うまのり)となり、242其(その)青年(せいねん)の首(くび)にジヤウ ジヤウ ジヤウとぬくい小便(せうべん)をたれかけ……汝(なんぢ)の如(ごと)き者(もの)は之(これ)にて結構(けつこう)だ……と喚(わめ)き立(た)て、243狂態(きやうたい)を演(えん)じてゐた。244この事(こと)も高島(たかしま)久子(ひさこ)の精霊(せいれい)が書(か)いた筆先(ふでさき)に自慢(じまん)さうに記(しる)してある。245すべて兇党界(きようたうかい)の悪霊(あくれい)は順序(じゆんじよ)を弁(わきま)へず又(また)善悪(ぜんあく)美醜(びしう)の区別(くべつ)がつかないから、246神聖(しんせい)なる金竜殿(きんりうでん)内(ない)に於(おい)て、247人(ひと)の首(くび)に小便(せうべん)をかけ、248得意(とくい)となつてゐるのである。249而(しか)して彼女(かれ)はいふ……わが守護神(しゆごじん)は実(じつ)に偉大(ゐだい)なものだ、250あの様(やう)な聖(きよ)き御殿(ごてん)に於(おい)て、251外(ほか)の者(もの)が小便(せうべん)をこかうものなら、252忽(たちま)ち守護神(しゆごじん)も肉体(にくたい)も神罰(しんばつ)が当(あた)るのであるが、253何(なに)をいつても神格(しんかく)が高(たか)いから、254あの通(とほ)りチツとも罰(ばち)が当(あた)らなかつたのだ……と誇(ほこ)つてゐるのは実(じつ)に済度(さいど)し難(がた)き難物(なんぶつ)である。255丁度(ちやうど)猫(ねこ)や鼠(ねずみ)が大神(おほかみ)の鎮座(ちんざ)まします神聖(しんせい)なる扉(とびら)の中(なか)に巣(す)をくみ、256或(あるひ)は糞尿(ふんねう)をたれても、257神(かみ)は畜生(ちくしやう)として看過(かんくわ)し給(たま)ひ、258之(これ)を懲(きた)め給(たま)はざると同様(どうやう)の理(り)である事(こと)を知(し)らない癲狂(てんきやう)痴呆者(ちはうしや)である。259自愛心(じあいしん)強(つよ)く世間愛(せけんあい)のみを以(もつ)て唯一(ゆゐいつ)の善事(ぜんじ)と思惟(しゐ)しゐたる人間(にんげん)は、260却(かへ)つて斯(か)かる奇矯(きけう)なる行為(かうゐ)を以(もつ)て、261神秘(しんぴ)の行為(かうゐ)となし、262之(これ)を随喜(ずゐき)渇仰(かつかう)していふ……全(まつた)くあの行(おこな)ひは人間(にんげん)ではない、263人間心(にんげんごころ)で、264何(ど)うして殿内(でんない)に於(おい)て、265而(しか)も人間(にんげん)の首(くび)に跨(また)がり、266小便(せうべん)がかけられようか、267全(まつた)く神(かみ)様(さま)の証拠(しようこ)である……と、268斯(か)う云(い)つて感心(かんしん)するのである。269彼(かれ)等(ら)の云(い)ふ如(ごと)く決(けつ)して人間(にんげん)ではない。270併(しか)しながら神(かみ)だと思(おも)つたら大変(たいへん)な間違(まちがひ)である。271スツカリ肉体(にくたい)的(てき)兇霊(きようれい)、272悪魔(あくま)が彼女(かれ)の全身(ぜんしん)を支配(しはい)して行(おこな)うた所(ところ)の狂態(きやうたい)であるのである。
273 其(その)後(ご)かれ悪霊(あくれい)は久子(ひさこ)の肉体(にくたい)に対(たい)し、274いろいろと幻覚(げんかく)を示(しめ)し、275益々(ますます)誑惑(きやうわく)の淵(ふち)に陥(おとしい)れ、276或(あるひ)は一(いつ)ケ月間(げつかん)の断食(だんじき)を与(あた)へ、277地獄(ぢごく)の有様(ありさま)を眼前(がんぜん)に髣髴(はうふつ)せしめ……汝(なんぢ)わが言(げん)を用(もち)ゐざる時(とき)は、278斯(かく)の如(ごと)き無間(むげん)地獄(ぢごく)に陥落(かんらく)すべし。279又(また)わが言(げん)を信従(しんじゆう)し、280わが頤使(いし)に従(したが)つて活動(くわつどう)する時(とき)は、281汝(なんぢ)をして将来(しやうらい)斯(かく)の如(ごと)き結構(けつこう)なる位地(ゐち)につかしむべし……と、282或(あるひ)はたらし或(あるひ)は威(おど)し、283漸(やうや)くにして開祖(かいそ)の身内(みうち)たる肉体(にくたい)を、284わが自由(じいう)に駆使(くし)する事(こと)を得(え)たのである。285彼(かれ)等(ら)が悪業(あくごふ)を遂行(すゐかう)せむとすれば、286現界人(げんかいじん)の浅薄(せんぱく)なる識見(しきけん)より見(み)て、287開祖(かいそ)の血統(けつとう)と生(うま)れし人間(にんげん)なれば、288大丈夫(だいぢやうぶ)、289決(けつ)して悪神(あくがみ)の憑依(ひようい)すべきものでないと信用(しんよう)させ得(う)るの便宜(べんぎ)があるからである。290かれ兇霊(きようれい)は無智(むち)なる久子(ひさこ)の霊肉(れいにく)を完全(くわんぜん)に占領(せんりやう)した上(うへ)、291地(ち)の高天原(たかあまはら)の霊光(れいくわう)にゐたたまらず、292二三(にさん)の迷(まよ)へる信者(しんじや)を引連(ひきつ)れ、293一目散(いちもくさん)に八木(やぎ)へさして逃(に)げ帰(かへ)り、294ここに久子(ひさこ)の記憶(きおく)と信仰(しんかう)を基礎(きそ)として、295其(その)想念中(さうねんちう)に深(ふか)く入(い)り込(こ)み、296兇党界(きようたうかい)の団体(だんたい)をして益々(ますます)大(だい)ならしめ、297大神(おほかみ)の神業(しんげふ)を極力(きよくりよく)妨害(ばうがい)せむと企(たく)みつつあるのである。298さりながら久子(ひさこ)其(その)人(ひと)は元来(ぐわんらい)開祖(かいそ)を思(おも)ふ事(こと)最(もつと)も深(ふか)く且(かつ)無智(むち)にして比較(ひかく)的(てき)其(その)心(こころ)も清(きよ)ければ、299遉(さすが)の兇霊(きようれい)も開祖(かいそ)の神諭(しんゆ)を非難(ひなん)することを得(え)ず、300且(かつ)又(また)厳(いづ)の御霊(みたま)、301瑞(みづ)の御霊(みたま)を極力(きよくりよく)排斥(はいせき)し、302誹謗(ひばう)しては其(その)目的(もくてき)を完成(くわんせい)し得(え)ざるを知(し)るが故(ゆゑ)に、303表面(へうめん)に厳瑞(げんずゐ)二霊(にれい)を尊敬(そんけい)し信従(しんじゆう)する如(ごと)く装(よそほ)ひ、304先(ま)づ久子(ひさこ)を誑惑(きやうわく)し其(その)口(くち)と手(て)を以(もつ)て世人(せじん)を魔道(まだう)に引入(ひきい)れむと企(たく)みつつあるのである。305之(これ)は決(けつ)して瑞月(ずゐげつ)が卑(いや)しき心(こころ)より述(の)ぶるのではない。306大神(おほかみ)の御子(みこ)たる可憐(かれん)なる精霊(せいれい)や人間(にんげん)をして、307一人(ひとり)なりとも邪道(じやだう)に陥(おちい)らざらしめむが為(ため)の慈愛心(じあいしん)に外(ほか)ならぬのである。308かれ精霊(せいれい)は久子(ひさこ)の肉体(にくたい)を綾部(あやべ)の停車場(ていしやぢやう)に仰向(あふむ)けに倒(たふ)し、309陰部(いんぶ)を曝(さら)して大呼(たいこ)して云(い)ふ……われは地(ち)の高天原(たかあまはら)の変性(へんじやう)男子(なんし)出口(でぐち)直(なほ)の肉体(にくたい)をかりて生(うま)れた日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)であるぞよ。310皆(みな)の者(もの)、311これを見(み)て、312大本(おほもと)の教(をしへ)を悟(さと)れよ……と呶鳴(どな)り立(た)てた。313精霊(せいれい)が久子(ひさこ)に斯(か)かる衆人(しうじん)環視(くわんし)の前(まへ)にて狂態(きやうたい)を演(えん)ぜしめた其(その)底意(そこい)は、314要(えう)するに神(かみ)の名(な)を冒涜(ぼうとく)し、315世人(せじん)をして大本(おほもと)を信用(しんよう)せしめざらむが為(ため)の悪計(あくけい)であつた。316されど暗愚(あんぐ)なる信者(しんじや)は、317そんな所(ところ)に少(すこ)しも注意(ちゆうい)せずしていふ……ああ吾々(われわれ)が改心(かいしん)が足(た)らぬ故(ゆゑ)に神(かみ)様(さま)が変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(けいとう)の肉宮(にくみや)をかつて、318お戒(いまし)め下(くだ)さつたのであらう、319お前(まへ)達(たち)の心(こころ)は此(この)通(とほ)り醜(みにく)いのだ、320お前(まへ)達(たち)が神界(しんかい)より罰(ばつ)せられ、321地獄(ぢごく)の釜(かま)のドン底(ぞこ)へ落(おと)されるのだが、322高島(たかしま)久子(ひさこ)に千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)はして助(たす)けてやつて居(ゐ)るぞよ、323との深(ふか)き思召(おぼしめし)であらう……などと妙(めう)な所(ところ)へ曲解(きよくかい)して益々(ますます)随喜(ずゐき)渇仰(かつかう)し、324精霊(せいれい)の誑惑(きやうわく)に乗(の)せられて、325遠近(ゑんきん)の神社(じんじや)を調査(てうさ)するといつて、326或(あるひ)は其(その)費用(ひよう)を献(けん)じ、327或(あるひ)は随伴(ずゐはん)してゐる者(もの)も沢山(たくさん)現(あら)はれて来(き)たのは、328実(じつ)に神界(しんかい)の為(ため)悲(かな)しむべきことである。329されど神(かみ)は決(けつ)して斯(かく)の如(ごと)き兇霊(きようれい)に汚(けが)され給(たま)ふものでもなく、330又(また)如何(いか)に妨害(ばうがい)せむとするも聊(いささ)かの痛痒(つうやう)も感(かん)じ給(たま)はないのである。331只々(ただただ)可憐(かれん)なる神(かみ)の御子(みこ)が彼(かれ)等(ら)兇霊(きようれい)に心身(しんしん)を誑惑(きやうわく)され邪神界(じやしんかい)に引入(ひきい)れられ、332無間(むげん)地獄(ぢごく)に陥落(かんらく)しゆくを悲(かな)しみ給(たま)ふのみである。333かかる仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)の御心(みこころ)も知(し)らず、334男子(なんし)が何(ど)うだとか、335女子(によし)の言行(げんかう)がなんだとか云(い)つて、336その光明(くわうみやう)に反(そむ)き、337醜穢(しうわい)極(きは)まる地獄(ぢごく)に転移(てんい)するは、338実(じつ)に仁慈(じんじ)の目(め)より見(み)て忍(しの)び難(がた)き所(ところ)である。339かれ精霊(せいれい)は久子(ひさこ)を又(また)もや八木(やぎ)の停車場(ていしやぢやう)に連(つ)れ行(ゆ)き、340大声(たいせい)叱呼(しつこ)して云(い)ふ……此(この)女(をんな)は元(もと)を糺(ただ)せば、341丹波国(たんばのくに)何鹿(いかるが)の郡(こほり)綾部町(あやべちやう)、342本宮(ほんぐう)新宮(しんぐう)坪(つぼ)の内(うち)、343変性(へんじやう)男子(なんし)の身魂(みたま)出口(でぐち)直(なほ)の体(たい)をかり、344出口(でぐち)政五郎(まさごらう)といふ父(ちち)を持(も)ち、345若(わか)い時(とき)から男女(をとこをんな)と呼(よ)ばれたる、346ヤンチヤ娘(むすめ)の出口(でぐち)久子(ひさこ)、347今(いま)は神(かみ)の因縁(いんねん)に依(よ)つて、348八木(やぎ)の高島(たかしま)寅之助(とらのすけ)が妻(つま)となり、349あの山(やま)の、350山(やま)のほでらのあばらや住居(ずまゐ)、351今(いま)はおちぶれて居(を)れども、352結構(けつこう)な身魂(みたま)が世(よ)におとしてあるぞよ。353侮(あなど)りて居(を)りたものは、354アフンと致(いた)してあいた口(くち)がすぼまらぬぞよ。355今(いま)に天地(てんち)がかへるぞよ。356欲(よく)を致(いた)して沢山(たくさん)の金(かね)をためて居(を)りても、357其(その)宝(たから)は持切(もちきり)には出来(でき)ぬ宝(たから)であるぞよ。358此(この)神(かみ)の申(まを)した事(こと)には一分(いちぶ)一厘(いちりん)間違(まちが)ひはないぞよ。359先(さき)をみてゐて下(くだ)されよ、360と前(まへ)をまくつて大音声(だいおんぜう)……と自(みづか)ら呼(よ)ばはり、361停車場(ていしやぢやう)に集(あつ)まる人々(ひとびと)を驚(おどろ)かせ、362之(これ)を鎮定(ちんてい)せむと入(い)り来(きた)りし長左(ちやうざ)といふ男(をとこ)の腕(うで)にかぶりつき、363狂態(きやうたい)を演(えん)じ、364大本(おほもと)の教(をしへ)を破壊(はくわい)せむと企(たく)んだ事(こと)もあつたのである。365兇霊(きようれい)は此(この)筆法(ひつぱふ)を以(もつ)て、366或(ある)時(とき)は変性(へんじやう)男子(なんし)を極力(きよくりよく)賞讃(しやうさん)し、367また対者(たいしや)の心(こころ)の中(うち)に男子(なんし)女子(によし)を否(いな)むと認(みと)むる時(とき)は、368声(こゑ)を秘(ひ)そめて切(しき)りに誹謗(ひばう)し、369吾(わが)薬籠中(やくろうちう)のものとなさむと企(たく)むものである。
370 さて、371初稚姫(はつわかひめ)と高姫(たかひめ)との今後(こんご)の活動(くわつどう)は之(これ)に類(るゐ)するもの多(おほ)ければ、372巻頭(くわんとう)に引証(いんしよう)することとしたのである。
 
373追伸(つゐしん)=霊界(れいかい)物語(ものがたり)の読者(どくしや)の中(なか)には凡(すべ)て、374斯様(かやう)であります……とか、375斯(か)う考(かんが)へます……とかいふ謙譲(けんじやう)の言葉(ことば)がなく、376かうである……どうである……などと断定(だんてい)的(てき)に、377且(かつ)高圧(かうあつ)的(てき)に口述(こうじゆつ)してあるのは、378所謂(いはゆる)口述者(こうじゆつしや)が慢心(まんしん)した結果(けつくわ)、379かかる不遜(ふそん)の言辞(げんじ)を弄(ろう)するのだと非難(ひなん)する人(ひと)が間々(まま)あるさうです。380併(しか)しながら『あります』と云(い)へば活字(くわつじ)を四字(よじ)用(もち)ひなくてはなりませぬ。381『ある』といへば二字(にじ)で事(こと)がすみます。382それ故(ゆゑ)にかかる洪瀚(かうかん)な物語(ものがたり)には一字(いちじ)なりとも冗言(じようげん)を省(はぶ)き、383可成(なるべく)数多(あまた)の意味(いみ)を読者(どくしや)に知(し)らさむが為(ため)の忠実(ちうじつ)なる意思(いし)より出(い)でたのであります。384而(しか)して口述者(こうじゆつしや)自身(じしん)は只(ただ)神格(しんかく)にみたされたる聖霊(せいれい)に霊(れい)と体(たい)を任(まか)せきつてゐるのでありますから、385口述者(こうじゆつしや)が之(これ)を改(あらた)めようと致(いた)しましても、386肝腎(かんじん)の局(きよく)に当(あた)る聖霊(せいれい)が聞(き)かなければ是非(ぜひ)ない事(こと)であります。387一寸(ちよつと)茲(ここ)に一言(いちごん)断(ことわ)つておく次第(しだい)であります。
388(大正一二・一・二〇 旧一一・一二・四 松村真澄録)
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