霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 悪魔払(あくまばらひ)〔一三一四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第4篇 神犬の言霊 よみ(新仮名遣い):しんけんのことたま
章:第20章 悪魔払 よみ(新仮名遣い):あくまばらい 通し章番号:1314
口述日:1923(大正12)年01月23日(旧12月7日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
初稚姫、珍彦、楓が高姫の居間が騒々しいので何事かと走ってきてみれば、右のような有様であった。初稚姫は、高姫が斎苑の館の直使に対して暴言を吐いているので、たしなめた。高姫は初稚姫を罵倒し、ふたたびひとしきり義理天上日の出神の神徳を吠えたてた後、便所に言ってくるとその場をはずした。
高姫が向こうの林を見渡せば、妖幻坊の杢助がしきりに手招きをし、トントンと走り出した。高姫もそこにあった草履を引っかけると、杢助の後を追って駆け出した。そしてそれっきり、祠の森に姿を見せることはなかった。
スマートも後を追うことなく、初稚姫たち一同も高姫の逃走を見送りながら、追いかけようとしなかった。いずれも悪魔払いをしたような心持になったからである。到底通常の手段ではビクともしない高姫が逃げ出したのも、妖幻坊の杢助に心魂を奪われ、その引力によって動かされたのであった。
妖幻坊も、こんなときには三五教のためによい御用をしてくれたようなものであった。妖幻坊と高姫は坂を下って行き、山口の森でようやく高姫が追いついた。
安彦と国彦は別れを告げて、復命のために斎苑の館に帰って行った。慌て者のイクとサールは、高姫を追いかけて館を飛び出してしまった。初稚姫は残った者たちに教え諭し、別れを告げて、ふたたびハルナの都への征途につくことになった。
イル、テル、ハルは悪神が逃げ去ったことを感謝するため神殿に参拝し、天津祝詞を奏上して述懐の歌を歌い、謝意を表した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-07-28 00:58:34 文字数:3663 OBC :rm5020
愛善世界社版:277頁 八幡書店版:第9輯 252頁 修補版: 校定版:283頁 普及版:139頁 初版: ページ備考:
001 初稚姫(はつわかひめ)、002珍彦(うづひこ)は楓(かへで)とともに高姫(たかひめ)の居間(ゐま)の騒々(さうざう)しきに、003何事(なにごと)かと走(はし)り来(きた)り見(み)れば、004右(みぎ)の体裁(ていさい)である。
005初稚(はつわか)『もし、006お母(かあ)さま、007お直使(ちよくし)様(さま)に対(たい)して、008あまり御(ご)無礼(ぶれい)ぢや厶(ござ)りませぬか。009も少(すこ)し御(ご)叮嚀(ていねい)に優(やさ)しく仰有(おつしや)つて下(くだ)さいましな』
010高姫『エーエ、011お前(まへ)の飛(と)び出(だ)す所(ところ)ぢやない程(ほど)にすつ込(こ)みなさい。012何度(なんど)云(い)うても云(い)うてもスマートを俺(わし)の目(め)を忍(しの)んで簀(す)の子(こ)の下(した)に隠(かく)して置(お)くものだから、013到頭(たうとう)杢助(もくすけ)さまは何処(どこ)かへ行(い)つてしまつたぢやないか。014本当(ほんたう)に不孝(ふかう)な阿魔(あま)ツちよだな。015今(いま)に神罰(しんばつ)が当(あた)つて国替(くにがへ)をせにやならぬぞや。016義理(ぎり)天上(てんじやう)さまのお筆先(ふでさき)を拝読(いただ)いて見(み)なされ。017珍彦(うづひこ)さまも静子(しづこ)さまも楓(かへで)もお前(まへ)も、018都合(つがふ)によつたら御(ご)神罰(しんばつ)が当(あた)つて命(いのち)がなくなるぞや。019チヤンと御(お)筆(ふで)に出(で)て居(を)るぞえ』
020初稚姫『そらさうでせう。021何(いづ)れ虬(みづち)の血(ち)を塗(ぬ)つた盃(さかづき)を頂(いただ)いたものばかりですから。022併(しか)しながらお母(かあ)さま、023安心(あんしん)して下(くだ)さいませ。024お蔭(かげ)で吾々(われわれ)は御(ご)神徳(しんとく)を頂(いただ)いて居(を)りますから、025何程(なにほど)悪神(あくがみ)や蟇(がま)が毒(どく)を盛(も)りましても、026チツとも利(き)きは致(いた)しませぬから大丈夫(だいぢやうぶ)で厶(ござ)います』
027高姫『エーエ、028こましやくれた、029何(なに)も知(し)らずに……すつ込(こ)んで居(ゐ)なさい。030此(この)義理(ぎり)天上(てんじやう)さまは何(ど)んな事(こと)でも皆(みな)御存(ごぞん)じだぞえ。031無形(むけい)の神界(しんかい)の現象(げんしやう)にも明(あきら)かなれば、032形体(けいたい)的(てき)の原理(げんり)にも達(たつ)してゐる。033宗教(しうけう)、034宗派(しうは)は申(まを)すに及(およ)ばず、035秩序(ちつじよ)標準(へうじゆん)の大本(たいほん)から改心(かいしん)の道(みち)、036春夏(しゆんか)秋冬(しうとう)四季(しき)運行(うんかう)の道(みち)、037神国(しんこく)の大道(たいだう)、038善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)の道(みち)から守護神(しゆごじん)の因縁(いんねん)、039無量(むりやう)長寿(ちやうじゆ)の神法(しんぱふ)から五倫(ごりん)五常(ごじやう)のお道(みち)、040向上(かうじやう)発展(はつてん)の基(もとゐ)、041誠(まこと)の大本(たいほん)、042言霊(ことたま)の原理(げんり)、043日月(じつげつ)の御(ご)因縁(いんねん)、044火(ひ)と水(みづ)とお土(つち)の御(ご)神力(しんりき)は申(まを)すに及(およ)ばず、045弥勒(みろく)の教(をしへ)の大本(たいほん)に一霊(いちれい)四魂(しこん)の原理(げんり)、046宇宙(うちう)の真理(しんり)、047文字(もじ)の起源(きげん)から忠孝(ちうかう)の道(みち)、048平和(へいわ)の大本(たいほん)、049四海(しかい)兄弟(きやうだい)の教(をしへ)から因縁(いんねん)因果(いんぐわ)の有様(ありさま)、050何(なに)から何(なに)まで知(し)らぬ事(こと)はないぞえ。051況(ま)して大先祖(おほせんぞ)の因縁(いんねん)から此(この)世(よ)の泥海(どろうみ)を固(かた)めしめた神(かみ)の因縁(いんねん)、052身魂(みたま)の性来(しやうらい)並(ならび)に斎苑(いそ)館(やかた)の上(うへ)から下(した)までの役員(やくゐん)の悪(あく)の身魂(みたま)の性来(しやうらい)、053何(なに)から何(なに)まで鏡(かがみ)にかけた如(ごと)く知(し)つてるのぢやぞえ。054何程(なにほど)泣(な)く子(こ)と地頭(ぢとう)には勝(か)てぬと云(い)つても、055弥次彦(やじひこ)、056与太彦(よたひこ)等(など)の直使(ちよくし)に屁古(へこ)まされて「はい、057左様(さやう)で厶(ござ)いますか。058へい、059それなら仕方(しかた)がありませぬ。060直(すぐ)に立退(たちの)き申(まを)します」と云(い)ふ様(やう)なヘドロイ身魂(みたま)ではありませぬぞや。061貴女(あなた)も何時(いつ)まで居(を)つても詰(つま)りませぬから早(はや)く帰(かへ)つて下(くだ)さい。062此処(ここ)は義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)神(かみ)が一力(いちりき)で立(た)てる仕組(しぐみ)ぢやぞえ。063さア皆(みな)さま、064早(はや)く帰(かへ)つて下(くだ)さい。065構(かま)ひ立(だ)てには来(き)て下(くだ)さるなや。066もしも素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)がゴテゴテ申(まを)したら、067霊国(れいごく)の天人(てんにん)、068変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)、069義理(ぎり)天上(てんじやう)の身魂(みたま)が事(こと)の道理(だうり)を説(と)き聞(き)かして改心(かいしん)させてやるから、070お前(まへ)等(たち)はよい加減(かげん)に帰(い)んだがよいぞや。071ここは金毛(きんまう)九尾(きうび)さまや、072オツトドツコイ………金勝要(きんかつかねの)神(かみ)の教(をしへ)と竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の守護(しゆご)とで変性(へんじやう)男子(なんし)の御教(みをしへ)を立(た)てて行(ゆ)く義理(ぎり)天上(てんじやう)の射場(いば)ぢやぞえ。073さアさア帰(い)んだり帰(い)んだり。074あああ、075こんな没分暁漢(わからずや)に相手(あひて)になつて居(を)つては日(ひ)が暮(く)れますわい。076一寸(ちよつと)失礼(しつれい)ながら便所(べんじよ)へ行(い)つて来(き)ます。077そしてユツクリとお話(はなし)をして上(あ)げませうから、078そこらで待(ま)つて居(ゐ)て下(くだ)さい。079あああ困(こま)つた代物(しろもの)ばかりだな。080神(かみ)様(さま)も大抵(たいてい)ぢやないわい。081こんな盲(めくら)聾(つんぼ)を誠(まこと)の道(みち)にひき入(い)れてやらうとすれば骨(ほね)の折(を)れる事(こと)だ。082此(この)肉体(にくたい)もホーツと疲(つか)れた。083肩(かた)も腕(かいな)も腰(こし)もメキメキし出(だ)したワ。084アーア』
085と云(い)ひながら便所(べんじよ)に一人(ひとり)立(た)つて行(い)つた。
086 向(むか)ふの林(はやし)を見渡(みわた)せば妖幻坊(えうげんばう)の杢助(もくすけ)が、087早(はや)く来(きた)れと一生(いつしやう)懸命(けんめい)手招(てまね)きしながらトントン走(はし)り出(だ)す。088高姫(たかひめ)も杢助(もくすけ)に手招(てまね)きされては最早(もはや)堪(たま)らない。089そこにあつた上草履(うはざうり)を足(あし)にかけるや否(いな)や、090一生(いつしやう)懸命(けんめい)に杢助(もくすけ)の後(あと)を追(お)ひ駆(か)け出(だ)して了(しま)つた。091そして、092それつきり祠(ほこら)の森(もり)へは姿(すがた)を見(み)せなかつたのである。
093 スマートは二人(ふたり)の逃(に)げ行(ゆ)く後(あと)を眺(なが)めて追(お)ひ駆(か)けようともせず『ワウツ ワウツ ワウツ』となき立(た)ててゐる。
094 初稚姫(はつわかひめ)、095安彦(やすひこ)、096国彦(くにひこ)、097一同(いちどう)は高姫(たかひめ)の逃走(たうそう)したのを目送(もくそう)しながら、098追(お)ひ駆(か)けようともしなかつた。099何(いづ)れも悪魔払(あくまばら)ひをしたやうの心持(こころもち)になつたからである。100高姫(たかひめ)が祠(ほこら)の森(もり)に腰(こし)を据(す)ゑようものなら、101到底(たうてい)普通(ふつう)の手段(しゆだん)ではビクとも動(うご)く気配(けはい)はない。102されど妖幻坊(えうげんばう)の杢助(もくすけ)に心魂(しんこん)を蕩(とろ)かし、103其(その)引力(いんりよく)によつて、104頑張(ぐわんば)つてゐたこの館(やかた)を逃(に)げ出(だ)したのは、105実(じつ)に珍彦(うづひこ)にとつては無上(むじやう)の幸福(しあはせ)であつた。106スマートが後(あと)を追(お)はなかつたのも初稚姫(はつわかひめ)が直使(ちよくし)に対(たい)し暫(しばら)く待(ま)つて貰(もら)ひたいと云(い)つたのも皆(みな)、107かかる出来事(できごと)を予期(よき)しての事(こと)であつた。108妖幻坊(えうげんばう)もこんな時(とき)には、109実(じつ)に三五教(あななひけう)のためによい御用(ごよう)をしてくれた様(やう)なものである。
110 妖幻坊(えうげんばう)と高姫(たかひめ)はトントントンと坂(さか)を下(くだ)つて行(ゆ)く。111其(その)距離(きより)は殆(ほとん)ど二三丁(にさんちやう)ばかり隔(へだ)たつてゐた。112されど高姫(たかひめ)は執念深(しふねんぶか)くも後(あと)を追(お)つ駆(か)け、113漸(やうや)くに山口(やまぐち)の森(もり)にて追(お)ひ付(つ)き、114二人(ふたり)はここに一夜(いちや)を明(あ)かすこととなつた。
115 安彦(やすひこ)、116国彦(くにひこ)は珍彦(うづひこ)に別(わか)れを告(つ)げ、117委細(ゐさい)の様子(やうす)を斎苑(いそ)の館(やかた)へ復命(ふくめい)すべく河鹿(かじか)峠(たうげ)を登(のぼ)り行(ゆ)く。118慌(あわ)て者(もの)のイク、119サール両人(りやうにん)は、120何時(いつ)の間(ま)にか高姫(たかひめ)の後(あと)を追(お)つ駆(か)けて館(やかた)を飛(と)び出(だ)して了(しま)つた。121初稚姫(はつわかひめ)は懇々(こんこん)と後(あと)の行方(やりかた)を珍彦(うづひこ)に教(をし)へ置(お)き、122ハル、123テル、124イルの三(さん)人(にん)に別(わか)れを告(つ)げ、125神殿(しんでん)に拝礼(はいれい)を終(をは)り、126高姫(たかひめ)の一(いち)日(にち)も早(はや)く改心(かいしん)致(いた)しますやうと祈願(きぐわん)を籠(こ)め、127それより二三(にさん)日(にち)をここに暮(くら)して又(また)もや征途(せいと)につく事(こと)となつた。128勿論(もちろん)スマートは影(かげ)の如(ごと)く姫(ひめ)に従(したが)つてゐる。
129 イル、130ハル、131テルの三(さん)人(にん)は悪神(あくがみ)の逃(に)げ去(さ)つたのを感謝(かんしや)すべく神殿(しんでん)に参拝(さんぱい)し、132天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、133歌(うた)を歌(うた)つて感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)した。
134イル『祠(ほこら)の森(もり)の受付(うけつけ)に
135仕(つか)へまつれるイル司(つかさ)
136皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
137慎(つつし)み敬(ゐやま)ひ高姫(たかひめ)や
138妖幻坊(えうげんばう)の曲津(まがつ)奴(め)が
139神(かみ)の威徳(ゐとく)に怖(お)ぢ畏(おそ)れ
140一目散(いちもくさん)に逃(に)げ出(いだ)し
141此(この)聖場(せいぢやう)はもとの如(ごと)
142塵(ちり)もとどめず清(きよ)らけく
143いと穏(おだや)かに治(をさ)まりし
144其(その)御恵(みめぐみ)を御(おん)前(まへ)に
145慎(つつし)み感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
146杢助司(もくすけつかさ)と名乗(なの)りたる
147妖幻坊(えうげんばう)の悪神(あくがみ)は
148其(その)正体(しやうたい)は吾々(われわれ)の
149眼(まなこ)に確(しか)と見(み)えねども
150並大抵(なみたいてい)の奴(やつ)ならず
151虎(とら)、狼(おほかみ)か獅子(しし)、熊(くま)か
152但(ただし)は鬼(おに)の化物(ばけもの)か
153得体(えたい)の知(し)れぬ枉津(まがつ)神(かみ)
154これの館(やかた)にノコノコと
155現(あら)はれ来(きた)り朝夕(あさゆふ)に
156酒(さけ)飲(の)み喰(くら)ひ管(くだ)を巻(ま)き
157只(ただ)一言(ひとこと)も神言(かみごと)を
158唱(とな)へた事(こと)もあらばこそ
159金毛(きんまう)九尾(きうび)の憑(うつ)るてふ
160日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)の
161高姫司(たかひめつかさ)と意茶(いちや)ついて
162此(この)聖場(せいぢやう)を乱(みだ)したる
163実(げ)にも憎(に)つくき曲者(くせもの)よ
164如何(いか)にもなして災(わざはひ)を
165払(はら)はむものと朝夕(あさゆふ)に
166心(こころ)ひそかに祈(いの)りしが
167皇(すめ)大神(おほかみ)はわが祈願(いのり)
168いと平(たひ)らけく聞(きこ)し召(め)し
169教(をしへ)を乱(みだ)す曲神(まがかみ)を
170払(はら)ひ給(たま)ひし嬉(うれ)しさよ
171いざ之(これ)よりは吾々(われわれ)は
172珍彦(うづひこ)さまの命令(めいれい)を
173神(かみ)の言葉(ことば)と慎(つつし)みて
174朝(あさ)な夕(ゆふ)なに真心(まごころ)を
175尽(つく)して仕(つか)へ奉(まつ)らなむ
176かくも曲津(まがつ)の心地(ここち)よく
177逃(に)げたる上(うへ)は信徒(まめひと)も
178喜(よろこ)び勇(いさ)みもとの如(ごと)
179参来(まゐき)集(つど)ひて神徳(しんとく)を
180再(ふたた)び受(う)くる事(こと)ならむ
181ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
182神(かみ)の御稜威(みいづ)も灼然(いやちこ)に
183守(まも)らせ給(たま)へ此(この)館(やかた)
184偏(ひとへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
185朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
186月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
187仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
188皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)教(をしへ)
189如何(いか)でか違(たが)ひ奉(まつ)らむや
190吾(われ)等(ら)三人(みたり)は村肝(むらきも)の
191心(こころ)を合(あは)せ奉(たてまつ)り
192斎苑(いそ)の館(やかた)に現(あ)れませる
193神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大御神(おほみかみ)
194守(まも)らせ給(たま)ふ三五(あななひ)の
195清(きよ)き大道(おほぢ)に仕(つか)へつつ
196埴安彦(はにやすひこ)や埴安(はにやす)の
197姫(ひめ)の尊(みこと)の御守(みまも)りを
198頸(うなじ)に受(う)けて四方(よも)の国(くに)
199百八十(ももやそ)島(しま)の果(はて)までも
200開(ひら)きて行(ゆ)かむ惟神(かむながら)
201尊(たふと)き神(かみ)の御守(みまも)りを
202畏(かしこ)み畏(かしこ)み願(ね)ぎまつる』
203 ハルは又(また)歌(うた)ふ。
204ハル『バラモン教(けう)の軍人(いくさびと)
205其(その)門番(もんばん)と仕(つか)へたる
206吾(われ)は卑(いや)しきハル司(つかさ)
207三五教(あななひけう)の大神(おほかみ)の
208尊(たふと)き恵(めぐみ)を蒙(かうむ)りて
209心機(しんき)俄(にはか)に一転(いつてん)し
210浮木(うきき)の森(もり)の陣営(ぢんえい)を
211ヨル、テル二人(ふたり)と諸共(もろとも)に
212脱営(だつえい)なして斎苑(いそ)館(やかた)
213詣(まう)でむものと来(き)て見(み)れば
214祠(ほこら)の森(もり)に三五(あななひ)の
215玉国別(たまくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
216留(とど)まりいますと聞(き)きしより
217其(その)御教(みをしへ)を仰(あふ)ぎつつ
218珍(うづ)の御舎(みあらか)仕(つか)へます
219其(その)神業(しんげふ)に参加(さんか)して
220漸(やうや)く宮(みや)は建(た)て上(あが)り
221遷宮式(せんぐうしき)も相済(あひす)みて
222喜(よろこ)ぶ間(ま)もなく玉国(たまくに)の
223別(わけ)の命(みこと)は吾々(われわれ)に
224重(おも)き使命(しめい)を授(さづ)けつつ
225悪魔(あくま)の征途(せいと)に上(のぼ)りまし
226其(その)妻神(つまがみ)と現(あ)れませる
227五十子(いそこ)の姫(ひめ)を初(はじ)めとし
228今子(いまこ)の姫(ひめ)は潔(いさぎよ)く
229斎苑(いそ)の館(やかた)に帰(かへ)りまし
230珍彦(うづひこ)親子(おやこ)を止(とど)めおき
231宮(みや)の司(つかさ)と任(ま)け給(たま)ひ
232吾(われ)等(ら)は館(やかた)の諸々(もろもろ)の
233事務(じむ)をそれぞれ命(めい)ぜられ
234心(こころ)を清(きよ)め身(み)を浄(きよ)め
235仕(つか)へ奉(まつ)れる折(をり)もあれ
236金毛(きんまう)九尾(きうび)の宿(やど)りたる
237心(こころ)拗(ねぢ)けた高姫(たかひめ)が
238突然(とつぜん)ここに現(あら)はれて
239吾(われ)は日出(ひのでの)神柱(かむばしら)
240義理(ぎり)天上(てんじやう)の生宮(いきみや)と
241其(その)鼻息(はないき)もいと荒(あら)く
242大(おほ)きな尻(しり)をすゑ長(なが)く
243祠(ほこら)の森(もり)を占領(せんりやう)し
244醜(しこ)の教(をしへ)を伝播(でんぱん)し
245斎苑(いそ)の館(やかた)の神業(しんげふ)を
246妨害(ばうがい)せむと企(たく)むこそ
247困(こま)り果(は)てたる奴(やつ)なりと
248心(こころ)秘(ひそか)に案(あん)じつつ
249皇(すめ)大神(おほかみ)に祈(いの)る折(をり)
250又(また)もや来(きた)る妖幻坊(えうげんばう)
251杢助司(もくすけつかさ)と名乗(なの)りつつ
252高姫司(たかひめつかさ)と諸共(もろとも)に
253館(やかた)の奥(おく)に頑張(ぐわんば)りて
254さしも尊(たふと)き聖場(せいぢやう)を
255攪乱(かくらん)せむと企(たく)むこそ
256実(げ)にも忌々(ゆゆ)しき次第(しだい)なり
257如何(いかが)はせむと思(おも)ふ間(うち)
258初稚姫(はつわかひめ)の神司(かむづかさ)
259猛犬(まうけん)スマート引(ひ)きつれて
260ここに現(あら)はれ来(きた)りまし
261神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の神力(しんりき)を
262隠(かく)し給(たま)ひて高姫(たかひめ)や
263妖幻坊(えうげんばう)が自(おのづか)ら
264逃(に)げ行(ゆ)く時(とき)を待(ま)ち給(たま)ふ
265其(その)沈着(ちんちやく)な行(おこな)ひに
266今更(いまさら)吾(われ)等(ら)も驚(おどろ)きて
267感(かん)じ入(い)りたる次第(しだい)なり
268ああ皇神(すめかみ)よ皇神(すめかみ)よ
269吾(われ)等(ら)は愚(おろか)なものなれど
270心(こころ)を清(きよ)め身(み)を浄(きよ)め
271朝(あさ)な夕(ゆふ)なに大前(おほまへ)に
272誠(まこと)一(ひと)つに仕(つか)へなば
273何卒(なにとぞ)吾(われ)等(ら)を憐(あは)れみて
274初稚姫(はつわかひめ)の神力(しんりき)の
275万分一(まんぶんいち)をも授(さづ)けませ
276偏(ひとへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
277朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
278月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
279仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
280神(かみ)に誓(ちか)ひしわが言葉(ことば)
281如何(いか)で違(たが)へむ神(かみ)の前(まへ)
282珍彦司(うづひこつかさ)に従(したが)ひて
283皇(すめ)大神(おほかみ)の御教(みをしへ)を
284参来(まゐき)集(つど)へる人々(ひとびと)に
285完全(うまら)に委曲(つばら)に宣(の)り伝(つた)へ
286大御恵(おほみめぐ)みの万分一(まんぶいち)
287報(むく)はせ給(たま)へ惟神(かむながら)
288御前(みまへ)に謹(つつし)み願(ね)ぎ奉(まつ)る』
289と歌(うた)ひ終(をは)り、290階段(かいだん)を下(くだ)つて、291もとの受付(うけつけ)に帰(かへ)り行(ゆ)く。
292(大正一二・一・二三 旧一一・一二・七 北村隆光録)
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