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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
>
第50巻(丑の巻)
> 第4篇 神犬の言霊 > 第20章 悪魔払
<<< 逆語
(B)
(N)
犬嘩 >>>
第二〇章
悪魔払
(
あくまばらひ
)
〔一三一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
篇:
第4篇 神犬の言霊
よみ(新仮名遣い):
しんけんのことたま
章:
第20章 悪魔払
よみ(新仮名遣い):
あくまばらい
通し章番号:
1314
口述日:
1923(大正12)年01月23日(旧12月7日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月7日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
初稚姫、珍彦、楓が高姫の居間が騒々しいので何事かと走ってきてみれば、右のような有様であった。初稚姫は、高姫が斎苑の館の直使に対して暴言を吐いているので、たしなめた。高姫は初稚姫を罵倒し、ふたたびひとしきり義理天上日の出神の神徳を吠えたてた後、便所に言ってくるとその場をはずした。
高姫が向こうの林を見渡せば、妖幻坊の杢助がしきりに手招きをし、トントンと走り出した。高姫もそこにあった草履を引っかけると、杢助の後を追って駆け出した。そしてそれっきり、祠の森に姿を見せることはなかった。
スマートも後を追うことなく、初稚姫たち一同も高姫の逃走を見送りながら、追いかけようとしなかった。いずれも悪魔払いをしたような心持になったからである。到底通常の手段ではビクともしない高姫が逃げ出したのも、妖幻坊の杢助に心魂を奪われ、その引力によって動かされたのであった。
妖幻坊も、こんなときには三五教のためによい御用をしてくれたようなものであった。妖幻坊と高姫は坂を下って行き、山口の森でようやく高姫が追いついた。
安彦と国彦は別れを告げて、復命のために斎苑の館に帰って行った。慌て者のイクとサールは、高姫を追いかけて館を飛び出してしまった。初稚姫は残った者たちに教え諭し、別れを告げて、ふたたびハルナの都への征途につくことになった。
イル、テル、ハルは悪神が逃げ去ったことを感謝するため神殿に参拝し、天津祝詞を奏上して述懐の歌を歌い、謝意を表した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-07-28 00:58:34
OBC :
rm5020
愛善世界社版:
277頁
八幡書店版:
第9輯 252頁
修補版:
校定版:
283頁
普及版:
139頁
初版:
ページ備考:
001
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
002
珍彦
(
うづひこ
)
は
楓
(
かへで
)
とともに
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
の
騒々
(
さうざう
)
しきに、
003
何事
(
なにごと
)
かと
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り
見
(
み
)
れば、
004
右
(
みぎ
)
の
体裁
(
ていさい
)
である。
005
初稚
(
はつわか
)
『もし、
006
お
母
(
かあ
)
さま、
007
お
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して、
008
あまり
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
ぢや
厶
(
ござ
)
りませぬか。
009
も
少
(
すこ
)
し
御
(
ご
)
叮嚀
(
ていねい
)
に
優
(
やさ
)
しく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいましな』
010
高姫
『エーエ、
011
お
前
(
まへ
)
の
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す
所
(
ところ
)
ぢやない
程
(
ほど
)
にすつ
込
(
こ
)
みなさい。
012
何度
(
なんど
)
云
(
い
)
うても
云
(
い
)
うてもスマートを
俺
(
わし
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
んで
簀
(
す
)
の
子
(
こ
)
の
下
(
した
)
に
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
くものだから、
013
到頭
(
たうとう
)
杢助
(
もくすけ
)
さまは
何処
(
どこ
)
かへ
行
(
い
)
つてしまつたぢやないか。
014
本当
(
ほんたう
)
に
不孝
(
ふかう
)
な
阿魔
(
あま
)
ツちよだな。
015
今
(
いま
)
に
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
つて
国替
(
くにがへ
)
をせにやならぬぞや。
016
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまのお
筆先
(
ふでさき
)
を
拝読
(
いただ
)
いて
見
(
み
)
なされ。
017
珍彦
(
うづひこ
)
さまも
静子
(
しづこ
)
さまも
楓
(
かへで
)
もお
前
(
まへ
)
も、
018
都合
(
つがふ
)
によつたら
御
(
ご
)
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
つて
命
(
いのち
)
がなくなるぞや。
019
チヤンと
御
(
お
)
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
て
居
(
を
)
るぞえ』
020
初稚姫
『そらさうでせう。
021
何
(
いづ
)
れ
虬
(
みづち
)
の
血
(
ち
)
を
塗
(
ぬ
)
つた
盃
(
さかづき
)
を
頂
(
いただ
)
いたものばかりですから。
022
併
(
しか
)
しながらお
母
(
かあ
)
さま、
023
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
024
お
蔭
(
かげ
)
で
吾々
(
われわれ
)
は
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
りますから、
025
何程
(
なにほど
)
悪神
(
あくがみ
)
や
蟇
(
がま
)
が
毒
(
どく
)
を
盛
(
も
)
りましても、
026
チツとも
利
(
き
)
きは
致
(
いた
)
しませぬから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
027
高姫
『エーエ、
028
こましやくれた、
029
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らずに……すつ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
なさい。
030
此
(
この
)
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまは
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
でも
皆
(
みな
)
御存
(
ごぞん
)
じだぞえ。
031
無形
(
むけい
)
の
神界
(
しんかい
)
の
現象
(
げんしやう
)
にも
明
(
あきら
)
かなれば、
032
形体
(
けいたい
)
的
(
てき
)
の
原理
(
げんり
)
にも
達
(
たつ
)
してゐる。
033
宗教
(
しうけう
)
、
034
宗派
(
しうは
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
035
秩序
(
ちつじよ
)
標準
(
へうじゆん
)
の
大本
(
たいほん
)
から
改心
(
かいしん
)
の
道
(
みち
)
、
036
春夏
(
しゆんか
)
秋冬
(
しうとう
)
四季
(
しき
)
運行
(
うんかう
)
の
道
(
みち
)
、
037
神国
(
しんこく
)
の
大道
(
たいだう
)
、
038
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
道
(
みち
)
から
守護神
(
しゆごじん
)
の
因縁
(
いんねん
)
、
039
無量
(
むりやう
)
長寿
(
ちやうじゆ
)
の
神法
(
しんぱふ
)
から
五倫
(
ごりん
)
五常
(
ごじやう
)
のお
道
(
みち
)
、
040
向上
(
かうじやう
)
発展
(
はつてん
)
の
基
(
もとゐ
)
、
041
誠
(
まこと
)
の
大本
(
たいほん
)
、
042
言霊
(
ことたま
)
の
原理
(
げんり
)
、
043
日月
(
じつげつ
)
の
御
(
ご
)
因縁
(
いんねん
)
、
044
火
(
ひ
)
と
水
(
みづ
)
とお
土
(
つち
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
045
弥勒
(
みろく
)
の
教
(
をしへ
)
の
大本
(
たいほん
)
に
一霊
(
いちれい
)
四魂
(
しこん
)
の
原理
(
げんり
)
、
046
宇宙
(
うちう
)
の
真理
(
しんり
)
、
047
文字
(
もじ
)
の
起源
(
きげん
)
から
忠孝
(
ちうかう
)
の
道
(
みち
)
、
048
平和
(
へいわ
)
の
大本
(
たいほん
)
、
049
四海
(
しかい
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
教
(
をしへ
)
から
因縁
(
いんねん
)
因果
(
いんぐわ
)
の
有様
(
ありさま
)
、
050
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
知
(
し
)
らぬ
事
(
こと
)
はないぞえ。
051
況
(
ま
)
して
大先祖
(
おほせんぞ
)
の
因縁
(
いんねん
)
から
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
泥海
(
どろうみ
)
を
固
(
かた
)
めしめた
神
(
かみ
)
の
因縁
(
いんねん
)
、
052
身魂
(
みたま
)
の
性来
(
しやうらい
)
並
(
ならび
)
に
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
の
上
(
うへ
)
から
下
(
した
)
までの
役員
(
やくゐん
)
の
悪
(
あく
)
の
身魂
(
みたま
)
の
性来
(
しやうらい
)
、
053
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
鏡
(
かがみ
)
にかけた
如
(
ごと
)
く
知
(
し
)
つてるのぢやぞえ。
054
何程
(
なにほど
)
泣
(
な
)
く
子
(
こ
)
と
地頭
(
ぢとう
)
には
勝
(
か
)
てぬと
云
(
い
)
つても、
055
弥次彦
(
やじひこ
)
、
056
与太彦
(
よたひこ
)
等
(
など
)
の
直使
(
ちよくし
)
に
屁古
(
へこ
)
まされて「はい、
057
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
058
へい、
059
それなら
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
060
直
(
すぐ
)
に
立退
(
たちの
)
き
申
(
まを
)
します」と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
なヘドロイ
身魂
(
みたま
)
ではありませぬぞや。
061
貴女
(
あなた
)
も
何時
(
いつ
)
まで
居
(
を
)
つても
詰
(
つま
)
りませぬから
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
062
此処
(
ここ
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が
一力
(
いちりき
)
で
立
(
た
)
てる
仕組
(
しぐみ
)
ぢやぞえ。
063
さア
皆
(
みな
)
さま、
064
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
065
構
(
かま
)
ひ
立
(
だ
)
てには
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さるなや。
066
もしも
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
がゴテゴテ
申
(
まを
)
したら、
067
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
、
068
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
、
069
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
身魂
(
みたま
)
が
事
(
こと
)
の
道理
(
だうり
)
を
説
(
と
)
き
聞
(
き
)
かして
改心
(
かいしん
)
させてやるから、
070
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
はよい
加減
(
かげん
)
に
帰
(
い
)
んだがよいぞや。
071
ここは
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
さまや、
072
オツトドツコイ………
金勝要
(
きんかつかねの
)
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
と
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
の
守護
(
しゆご
)
とで
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
立
(
た
)
てて
行
(
ゆ
)
く
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
射場
(
いば
)
ぢやぞえ。
073
さアさア
帰
(
い
)
んだり
帰
(
い
)
んだり。
074
あああ、
075
こんな
没分暁漢
(
わからずや
)
に
相手
(
あひて
)
になつて
居
(
を
)
つては
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れますわい。
076
一寸
(
ちよつと
)
失礼
(
しつれい
)
ながら
便所
(
べんじよ
)
へ
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
ます。
077
そしてユツクリとお
話
(
はなし
)
をして
上
(
あ
)
げませうから、
078
そこらで
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
079
あああ
困
(
こま
)
つた
代物
(
しろもの
)
ばかりだな。
080
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
大抵
(
たいてい
)
ぢやないわい。
081
こんな
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
を
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
にひき
入
(
い
)
れてやらうとすれば
骨
(
ほね
)
の
折
(
を
)
れる
事
(
こと
)
だ。
082
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
もホーツと
疲
(
つか
)
れた。
083
肩
(
かた
)
も
腕
(
かいな
)
も
腰
(
こし
)
もメキメキし
出
(
だ
)
したワ。
084
アーア』
085
と
云
(
い
)
ひながら
便所
(
べんじよ
)
に
一人
(
ひとり
)
立
(
た
)
つて
行
(
い
)
つた。
086
向
(
むか
)
ふの
林
(
はやし
)
を
見渡
(
みわた
)
せば
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
が、
087
早
(
はや
)
く
来
(
きた
)
れと
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
手招
(
てまね
)
きしながらトントン
走
(
はし
)
り
出
(
だ
)
す。
088
高姫
(
たかひめ
)
も
杢助
(
もくすけ
)
に
手招
(
てまね
)
きされては
最早
(
もはや
)
堪
(
たま
)
らない。
089
そこにあつた
上草履
(
うはざうり
)
を
足
(
あし
)
にかけるや
否
(
いな
)
や、
090
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
杢助
(
もくすけ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
091
そして、
092
それつきり
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
へは
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せなかつたのである。
093
スマートは
二人
(
ふたり
)
の
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
後
(
あと
)
を
眺
(
なが
)
めて
追
(
お
)
ひ
駆
(
か
)
けようともせず『ワウツ ワウツ ワウツ』となき
立
(
た
)
ててゐる。
094
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
095
安彦
(
やすひこ
)
、
096
国彦
(
くにひこ
)
、
097
一同
(
いちどう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
逃走
(
たうそう
)
したのを
目送
(
もくそう
)
しながら、
098
追
(
お
)
ひ
駆
(
か
)
けようともしなかつた。
099
何
(
いづ
)
れも
悪魔払
(
あくまばら
)
ひをしたやうの
心持
(
こころもち
)
になつたからである。
100
高姫
(
たかひめ
)
が
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
腰
(
こし
)
を
据
(
す
)
ゑようものなら、
101
到底
(
たうてい
)
普通
(
ふつう
)
の
手段
(
しゆだん
)
ではビクとも
動
(
うご
)
く
気配
(
けはい
)
はない。
102
されど
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
に
心魂
(
しんこん
)
を
蕩
(
とろ
)
かし、
103
其
(
その
)
引力
(
いんりよく
)
によつて、
104
頑張
(
ぐわんば
)
つてゐたこの
館
(
やかた
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
したのは、
105
実
(
じつ
)
に
珍彦
(
うづひこ
)
にとつては
無上
(
むじやう
)
の
幸福
(
しあはせ
)
であつた。
106
スマートが
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
はなかつたのも
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
直使
(
ちよくし
)
に
対
(
たい
)
し
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
貰
(
もら
)
ひたいと
云
(
い
)
つたのも
皆
(
みな
)
、
107
かかる
出来事
(
できごと
)
を
予期
(
よき
)
しての
事
(
こと
)
であつた。
108
妖幻坊
(
えうげんばう
)
もこんな
時
(
とき
)
には、
109
実
(
じつ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
のためによい
御用
(
ごよう
)
をしてくれた
様
(
やう
)
なものである。
110
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
高姫
(
たかひめ
)
はトントントンと
坂
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
111
其
(
その
)
距離
(
きより
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
二三丁
(
にさんちやう
)
ばかり
隔
(
へだ
)
たつてゐた。
112
されど
高姫
(
たかひめ
)
は
執念深
(
しふねんぶか
)
くも
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つ
駆
(
か
)
け、
113
漸
(
やうや
)
くに
山口
(
やまぐち
)
の
森
(
もり
)
にて
追
(
お
)
ひ
付
(
つ
)
き、
114
二人
(
ふたり
)
はここに
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かすこととなつた。
115
安彦
(
やすひこ
)
、
116
国彦
(
くにひこ
)
は
珍彦
(
うづひこ
)
に
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げ、
117
委細
(
ゐさい
)
の
様子
(
やうす
)
を
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
復命
(
ふくめい
)
すべく
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
118
慌
(
あわ
)
て
者
(
もの
)
のイク、
119
サール
両人
(
りやうにん
)
は、
120
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
高姫
(
たかひめ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つ
駆
(
か
)
けて
館
(
やかた
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
121
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
懇々
(
こんこん
)
と
後
(
あと
)
の
行方
(
やりかた
)
を
珍彦
(
うづひこ
)
に
教
(
をし
)
へ
置
(
お
)
き、
122
ハル、
123
テル、
124
イルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げ、
125
神殿
(
しんでん
)
に
拝礼
(
はいれい
)
を
終
(
をは
)
り、
126
高姫
(
たかひめ
)
の
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しますやうと
祈願
(
きぐわん
)
を
籠
(
こ
)
め、
127
それより
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
をここに
暮
(
くら
)
して
又
(
また
)
もや
征途
(
せいと
)
につく
事
(
こと
)
となつた。
128
勿論
(
もちろん
)
スマートは
影
(
かげ
)
の
如
(
ごと
)
く
姫
(
ひめ
)
に
従
(
したが
)
つてゐる。
129
イル、
130
ハル、
131
テルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
悪神
(
あくがみ
)
の
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つたのを
感謝
(
かんしや
)
すべく
神殿
(
しんでん
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
132
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
133
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つて
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
した。
134
イル『
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
受付
(
うけつけ
)
に
135
仕
(
つか
)
へまつれるイル
司
(
つかさ
)
136
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
137
慎
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
高姫
(
たかひめ
)
や
138
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
曲津
(
まがつ
)
奴
(
め
)
が
139
神
(
かみ
)
の
威徳
(
ゐとく
)
に
怖
(
お
)
ぢ
畏
(
おそ
)
れ
140
一目散
(
いちもくさん
)
に
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
141
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
はもとの
如
(
ごと
)
142
塵
(
ちり
)
もとどめず
清
(
きよ
)
らけく
143
いと
穏
(
おだや
)
かに
治
(
をさ
)
まりし
144
其
(
その
)
御恵
(
みめぐみ
)
を
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
145
慎
(
つつし
)
み
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
146
杢助司
(
もくすけつかさ
)
と
名乗
(
なの
)
りたる
147
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
悪神
(
あくがみ
)
は
148
其
(
その
)
正体
(
しやうたい
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
149
眼
(
まなこ
)
に
確
(
しか
)
と
見
(
み
)
えねども
150
並大抵
(
なみたいてい
)
の
奴
(
やつ
)
ならず
151
虎
(
とら
)
、
狼
(
おほかみ
)
か
獅子
(
しし
)
、
熊
(
くま
)
か
152
但
(
ただし
)
は
鬼
(
おに
)
の
化物
(
ばけもの
)
か
153
得体
(
えたい
)
の
知
(
し
)
れぬ
枉津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
154
これの
館
(
やかた
)
にノコノコと
155
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
朝夕
(
あさゆふ
)
に
156
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
み
喰
(
くら
)
ひ
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
き
157
只
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
も
神言
(
かみごと
)
を
158
唱
(
とな
)
へた
事
(
こと
)
もあらばこそ
159
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
憑
(
うつ
)
るてふ
160
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
161
高姫司
(
たかひめつかさ
)
と
意茶
(
いちや
)
ついて
162
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
を
乱
(
みだ
)
したる
163
実
(
げ
)
にも
憎
(
に
)
つくき
曲者
(
くせもの
)
よ
164
如何
(
いか
)
にもなして
災
(
わざはひ
)
を
165
払
(
はら
)
はむものと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
166
心
(
こころ
)
ひそかに
祈
(
いの
)
りしが
167
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
はわが
祈願
(
いのり
)
168
いと
平
(
たひ
)
らけく
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
し
169
教
(
をしへ
)
を
乱
(
みだ
)
す
曲神
(
まがかみ
)
を
170
払
(
はら
)
ひ
給
(
たま
)
ひし
嬉
(
うれ
)
しさよ
171
いざ
之
(
これ
)
よりは
吾々
(
われわれ
)
は
172
珍彦
(
うづひこ
)
さまの
命令
(
めいれい
)
を
173
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
と
慎
(
つつし
)
みて
174
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
真心
(
まごころ
)
を
175
尽
(
つく
)
して
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らなむ
176
かくも
曲津
(
まがつ
)
の
心地
(
ここち
)
よく
177
逃
(
に
)
げたる
上
(
うへ
)
は
信徒
(
まめひと
)
も
178
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
みもとの
如
(
ごと
)
179
参来
(
まゐき
)
集
(
つど
)
ひて
神徳
(
しんとく
)
を
180
再
(
ふたた
)
び
受
(
う
)
くる
事
(
こと
)
ならむ
181
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
182
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
灼然
(
いやちこ
)
に
183
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
此
(
この
)
館
(
やかた
)
184
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
185
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
186
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
187
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
188
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
189
如何
(
いか
)
でか
違
(
たが
)
ひ
奉
(
まつ
)
らむや
190
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
は
村肝
(
むらきも
)
の
191
心
(
こころ
)
を
合
(
あは
)
せ
奉
(
たてまつ
)
り
192
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
現
(
あ
)
れませる
193
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
194
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
三五
(
あななひ
)
の
195
清
(
きよ
)
き
大道
(
おほぢ
)
に
仕
(
つか
)
へつつ
196
埴安彦
(
はにやすひこ
)
や
埴安
(
はにやす
)
の
197
姫
(
ひめ
)
の
尊
(
みこと
)
の
御守
(
みまも
)
りを
198
頸
(
うなじ
)
に
受
(
う
)
けて
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
199
百八十
(
ももやそ
)
島
(
しま
)
の
果
(
はて
)
までも
200
開
(
ひら
)
きて
行
(
ゆ
)
かむ
惟神
(
かむながら
)
201
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御守
(
みまも
)
りを
202
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる』
203
ハルは
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
204
ハル
『バラモン
教
(
けう
)
の
軍人
(
いくさびと
)
205
其
(
その
)
門番
(
もんばん
)
と
仕
(
つか
)
へたる
206
吾
(
われ
)
は
卑
(
いや
)
しきハル
司
(
つかさ
)
207
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
208
尊
(
たふと
)
き
恵
(
めぐみ
)
を
蒙
(
かうむ
)
りて
209
心機
(
しんき
)
俄
(
にはか
)
に
一転
(
いつてん
)
し
210
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
を
211
ヨル、テル
二人
(
ふたり
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
212
脱営
(
だつえい
)
なして
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
213
詣
(
まう
)
でむものと
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
214
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
三五
(
あななひ
)
の
215
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
216
留
(
とど
)
まりいますと
聞
(
き
)
きしより
217
其
(
その
)
御教
(
みをしへ
)
を
仰
(
あふ
)
ぎつつ
218
珍
(
うづ
)
の
御舎
(
みあらか
)
仕
(
つか
)
へます
219
其
(
その
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
して
220
漸
(
やうや
)
く
宮
(
みや
)
は
建
(
た
)
て
上
(
あが
)
り
221
遷宮式
(
せんぐうしき
)
も
相済
(
あひす
)
みて
222
喜
(
よろこ
)
ぶ
間
(
ま
)
もなく
玉国
(
たまくに
)
の
223
別
(
わけ
)
の
命
(
みこと
)
は
吾々
(
われわれ
)
に
224
重
(
おも
)
き
使命
(
しめい
)
を
授
(
さづ
)
けつつ
225
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
りまし
226
其
(
その
)
妻神
(
つまがみ
)
と
現
(
あ
)
れませる
227
五十子
(
いそこ
)
の
姫
(
ひめ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
228
今子
(
いまこ
)
の
姫
(
ひめ
)
は
潔
(
いさぎよ
)
く
229
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
帰
(
かへ
)
りまし
230
珍彦
(
うづひこ
)
親子
(
おやこ
)
を
止
(
とど
)
めおき
231
宮
(
みや
)
の
司
(
つかさ
)
と
任
(
ま
)
け
給
(
たま
)
ひ
232
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
館
(
やかた
)
の
諸々
(
もろもろ
)
の
233
事務
(
じむ
)
をそれぞれ
命
(
めい
)
ぜられ
234
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め
身
(
み
)
を
浄
(
きよ
)
め
235
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
れる
折
(
をり
)
もあれ
236
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
宿
(
やど
)
りたる
237
心
(
こころ
)
拗
(
ねぢ
)
けた
高姫
(
たかひめ
)
が
238
突然
(
とつぜん
)
ここに
現
(
あら
)
はれて
239
吾
(
われ
)
は
日出
(
ひのでの
)
神柱
(
かむばしら
)
240
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
241
其
(
その
)
鼻息
(
はないき
)
もいと
荒
(
あら
)
く
242
大
(
おほ
)
きな
尻
(
しり
)
をすゑ
長
(
なが
)
く
243
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
を
占領
(
せんりやう
)
し
244
醜
(
しこ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝播
(
でんぱん
)
し
245
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
神業
(
しんげふ
)
を
246
妨害
(
ばうがい
)
せむと
企
(
たく
)
むこそ
247
困
(
こま
)
り
果
(
は
)
てたる
奴
(
やつ
)
なりと
248
心
(
こころ
)
秘
(
ひそか
)
に
案
(
あん
)
じつつ
249
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
に
祈
(
いの
)
る
折
(
をり
)
250
又
(
また
)
もや
来
(
きた
)
る
妖幻坊
(
えうげんばう
)
251
杢助司
(
もくすけつかさ
)
と
名乗
(
なの
)
りつつ
252
高姫司
(
たかひめつかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
253
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
に
頑張
(
ぐわんば
)
りて
254
さしも
尊
(
たふと
)
き
聖場
(
せいぢやう
)
を
255
攪乱
(
かくらん
)
せむと
企
(
たく
)
むこそ
256
実
(
げ
)
にも
忌々
(
ゆゆ
)
しき
次第
(
しだい
)
なり
257
如何
(
いかが
)
はせむと
思
(
おも
)
ふ
間
(
うち
)
258
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
259
猛犬
(
まうけん
)
スマート
引
(
ひ
)
きつれて
260
ここに
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りまし
261
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
神力
(
しんりき
)
を
262
隠
(
かく
)
し
給
(
たま
)
ひて
高姫
(
たかひめ
)
や
263
妖幻坊
(
えうげんばう
)
が
自
(
おのづか
)
ら
264
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
ち
給
(
たま
)
ふ
265
其
(
その
)
沈着
(
ちんちやく
)
な
行
(
おこな
)
ひに
266
今更
(
いまさら
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
も
驚
(
おどろ
)
きて
267
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りたる
次第
(
しだい
)
なり
268
ああ
皇神
(
すめかみ
)
よ
皇神
(
すめかみ
)
よ
269
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
愚
(
おろか
)
なものなれど
270
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め
身
(
み
)
を
浄
(
きよ
)
め
271
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
大前
(
おほまへ
)
に
272
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つに
仕
(
つか
)
へなば
273
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
憐
(
あは
)
れみて
274
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
神力
(
しんりき
)
の
275
万分一
(
まんぶんいち
)
をも
授
(
さづ
)
けませ
276
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
277
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
278
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
279
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
280
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひしわが
言葉
(
ことば
)
281
如何
(
いか
)
で
違
(
たが
)
へむ
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
282
珍彦司
(
うづひこつかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
283
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
284
参来
(
まゐき
)
集
(
つど
)
へる
人々
(
ひとびと
)
に
285
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へ
286
大御恵
(
おほみめぐ
)
みの
万分一
(
まんぶいち
)
287
報
(
むく
)
はせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
288
御前
(
みまへ
)
に
謹
(
つつし
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
289
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
290
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
つて、
291
もとの
受付
(
うけつけ
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
292
(
大正一二・一・二三
旧一一・一二・七
北村隆光
録)
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