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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
余白歌
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霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
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第50巻(丑の巻)
> 第4篇 神犬の言霊 > 第18章 安国使
<<< 偽筆
(B)
(N)
逆語 >>>
第一八章
安国使
(
あんこくし
)
〔一三一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
篇:
第4篇 神犬の言霊
よみ(新仮名遣い):
しんけんのことたま
章:
第18章 安国使
よみ(新仮名遣い):
あんこくし
通し章番号:
1312
口述日:
1923(大正12)年01月23日(旧12月7日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月7日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
珍彦館では、安彦と国彦が、珍彦、静子、楓、初稚姫らと懇談していた。安彦と国彦は、高姫が本部で副教主東野別に対して無礼を加え、あらゆる狂態を演じた上に、夜陰にまぎれて聖地を逃げ出したことを明かした。
そして、高姫が悪霊に左右されて祠の森にやってきて神業の妨害をすること甚だしいので、一時早く祠の森を放逐し、自転倒島に追い返すように、と教主八島主から命を受けてきたことを伝えた。
初稚姫は、高姫にきつく当たってはかえって心が荒んでしまうだろうから、ここは自分にまかせて今しばらく待ってほしい、そのように八島主に伝えてほしい、と安彦・国彦に懇願した。二人はひとまず、初稚姫の依頼を承諾した。
二人はまた、高姫がここに引っ張り込んでいる杢助と名乗る男についても尋ねた。それというのも、本物の初稚姫の父・杢助は、日々斎苑の館に出勤しているからだった。珍彦たち一同は、祠の森の杢助は、犬を嫌い、娘のはずの初稚姫にも会おうとせずに酒ばかり飲んでいると報告した。
楓は珍彦夫婦毒殺未遂について二人に報告した。初稚姫は正体を察しており、大雲山の妖幻坊という妖怪が自分の父に化けているのに間違いはないと明かした。しかしいきなり正体を暴いては高姫が恥をかくし、また追い散らしても他所で悪事を働くだろうから、時機を待っているのだと説明した。
安彦と国彦も、機会があれば妖怪を改心させようとしている初稚姫の意図を汲んで、その由を聖地に報告するために帰ることになった。そして沙汰があり次第、斎苑の館の決定を高姫に言い渡すよう、珍彦に念を押した。
安彦と国彦が、帰る前に祠の森を見て回りたいと言うので、珍彦は人を呼んだ。イルとサールがやってきて、二人を案内した。二人は宣伝歌を歌い神前に拝礼した。イルとサールの案内で森林を巡回し、妖幻坊が遭難した場所を実見し、こぼれ落ちた血糊が人間のものでないことを確認した。
その後、八尋殿で休憩し、杢助と高姫の居間を臨検しようと相談していた。一方杢助と高姫は、連れてきたハルを相手に、聖地からの使者について尋問を始めていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-07-25 15:51:22
OBC :
rm5018
愛善世界社版:
250頁
八幡書店版:
第9輯 242頁
修補版:
校定版:
255頁
普及版:
126頁
初版:
ページ備考:
001
珍彦館
(
うづひこやかた
)
には、
002
珍彦
(
うづひこ
)
、
003
静子
(
しづこ
)
、
004
楓
(
かへで
)
、
005
初稚姫
(
はつわかひめ
)
及
(
およ
)
び
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
直使
(
ちよくし
)
なる
安彦
(
やすひこ
)
、
006
国彦
(
くにひこ
)
の
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
がヒソビソと
首
(
かうべ
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
懇談
(
こんだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
007
珍彦
(
うづひこ
)
『
遥々
(
はるばる
)
と
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
よりの
御
(
おん
)
使
(
つかひ
)
、
008
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
009
何分
(
なにぶん
)
至
(
いた
)
らぬ
吾々
(
われわれ
)
、
010
大役
(
たいやく
)
を
仰
(
おほ
)
せつけられ、
011
力
(
ちから
)
にあまり、
012
勤
(
つと
)
めも
碌
(
ろく
)
に
出来
(
でき
)
ませぬので、
013
定
(
さだ
)
めし
八島主
(
やしまぬしの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
にも
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
014
定
(
さだ
)
めて
吾々
(
われわれ
)
の
不都合
(
ふつがふ
)
をお
叱
(
しか
)
りのためのお
使
(
つかひ
)
で
厶
(
ござ
)
いませうなア』
015
安彦
(
やすひこ
)
『イヤイヤ
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ。
016
貴方
(
あなた
)
の
赤心
(
まごころ
)
は
誰
(
たれ
)
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
017
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
も
大変
(
たいへん
)
にお
喜
(
よろこ
)
びになつて
居
(
ゐ
)
ますから、
018
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
019
珍彦
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
020
不都合
(
ふつがふ
)
な
吾々
(
われわれ
)
を、
021
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
誠
(
まこと
)
に
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います』
022
静子
(
しづこ
)
『
何分
(
なにぶん
)
とも
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
023
安彦
『ハイ、
024
よきに
取計
(
とりはか
)
らひませう。
025
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
026
初稚
(
はつわか
)
『
安彦
(
やすひこ
)
様
(
さま
)
、
027
今度
(
こんど
)
お
出
(
い
)
でになりましたのは、
028
あの
高姫
(
たかひめ
)
さまの
一件
(
いつけん
)
で
厶
(
ござ
)
いませうな』
029
安彦
『お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
030
彼
(
かれ
)
高姫
(
たかひめ
)
は
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て、
031
副教主
(
ふくけうしゆ
)
東野別
(
あづまのわけ
)
に
対
(
たい
)
して
無礼
(
ぶれい
)
を
加
(
くは
)
へ、
032
其
(
その
)
上
(
うへ
)
所在
(
あらゆる
)
狂態
(
きやうたい
)
を
演
(
えん
)
じ、
033
夜陰
(
やいん
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
館
(
やかた
)
を
抜
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
し、
034
直様
(
すぐさま
)
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
逃
(
に
)
げ
来
(
きた
)
り、
035
又
(
また
)
もや
悪霊
(
あくれい
)
に
左右
(
さいう
)
されて、
036
神業
(
しんげふ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
を
致
(
いた
)
すこと
最
(
もつと
)
も
甚
(
はなは
)
だしければ、
037
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
放逐
(
はうちく
)
し、
038
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へ
追
(
お
)
つ
帰
(
かへ
)
せとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
厶
(
ござ
)
る』
039
初稚姫
『それは
嘸
(
さぞ
)
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
がお
驚
(
おどろ
)
き
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
040
何
(
なん
)
とか
穏便
(
をんびん
)
に
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
に
改心
(
かいしん
)
して
貰
(
もら
)
ひ、
041
此処
(
ここ
)
に
暫
(
しばら
)
く
御用
(
ごよう
)
をさしてあげる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいかなア』
042
安彦
『
貴女
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
ならば、
043
決
(
けつ
)
して
違背
(
ゐはい
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい。
044
併
(
しか
)
しながら
吾々
(
われわれ
)
は
教主
(
けうしゆ
)
のお
使
(
つかひ
)
にて
参
(
まゐ
)
りしものなれば、
045
独断
(
どくだん
)
にて
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
046
初稚姫
『
成程
(
なるほど
)
それは
御尤
(
ごもつと
)
もで
厶
(
ござ
)
います。
047
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあらば
致
(
いた
)
し
方
(
かた
)
厶
(
ござ
)
りませぬ。
048
併
(
しか
)
しながら
茲
(
ここ
)
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
私
(
わたし
)
にお
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さるまいか。
049
何
(
なん
)
とか
致
(
いた
)
して
高姫
(
たかひめ
)
さまの
身魂
(
みたま
)
を
救
(
すく
)
ひたいもので
厶
(
ござ
)
います。
050
今
(
いま
)
放逐
(
はうちく
)
すれば
益々
(
ますます
)
心
(
こころ
)
荒
(
すさ
)
み、
051
上
(
あ
)
げも
下
(
おろ
)
しもする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないやうになるかも
知
(
し
)
れませぬ。
052
何卒
(
どうぞ
)
八島主
(
やしまぬし
)
様
(
さま
)
にお
会
(
あ
)
ひでしたら、
053
茲
(
ここ
)
暫
(
しばら
)
く
初稚姫
(
はつわかひめ
)
にお
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さるやうお
願
(
ねが
)
ひ
下
(
くだ
)
さいませぬか』
054
安彦
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
055
直様
(
すぐさま
)
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
つて
見
(
み
)
ませう』
056
初稚姫
『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
057
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
058
国彦
(
くにひこ
)
『イヤ
珍彦
(
うづひこ
)
殿
(
どの
)
、
059
高姫
(
たかひめ
)
殿
(
どの
)
は
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しき
男
(
をとこ
)
を
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れて
居
(
ゐ
)
られるとか
聞
(
き
)
きましたが、
060
それは
何者
(
なにもの
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
061
珍彦
『ハイ、
062
真偽
(
しんぎ
)
の
程
(
ほど
)
は
吾々
(
われわれ
)
には
分
(
わか
)
りませぬが、
063
どうも
怪
(
あや
)
しいもので
厶
(
ござ
)
います。
064
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
から
参
(
まゐ
)
つた、
065
杢助
(
もくすけ
)
だと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られますが、
066
どうしても
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
にお
会
(
あ
)
ひなさらぬので
厶
(
ござ
)
います。
067
それが
第一
(
だいいち
)
私
(
わたし
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
とする
所
(
ところ
)
、
068
一度
(
いちど
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
にお
尋
(
たづ
)
ねして
見
(
み
)
たいと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
ますが、
069
余
(
あま
)
り
失礼
(
しつれい
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
070
お
尋
(
たづ
)
ねも
致
(
いた
)
さず
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
りました』
071
国彦
『ハテナ、
072
杢助
(
もくすけ
)
総務
(
そうむ
)
は
日々
(
にちにち
)
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
御
(
ご
)
出勤
(
しゆつきん
)
になつてゐます。
073
弥
(
いよいよ
)
もつて
不思議
(
ふしぎ
)
の
至
(
いた
)
りで
厶
(
ござ
)
る。
074
何
(
なに
)
か
怪
(
あや
)
しい
点
(
てん
)
はお
認
(
みと
)
めになりませぬかな』
075
珍彦
『ハイ、
076
何
(
なん
)
だか
存
(
ぞん
)
じませぬが、
077
大変
(
たいへん
)
に
犬
(
いぬ
)
がお
嫌
(
きら
)
ひださうで
厶
(
ござ
)
います。
078
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も
森
(
もり
)
を
散歩
(
さんぽ
)
して
躓
(
つまづ
)
き
眉間
(
みけん
)
を
石
(
いし
)
で
打
(
う
)
つたと
仰
(
おほ
)
せられましたが、
079
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
が
窺
(
うかが
)
ひますのに、
080
顛倒
(
こけ
)
て
打
(
う
)
つた
傷
(
きず
)
ではなく、
081
犬
(
いぬ
)
に
噛
(
か
)
まれたやうな
深
(
ふか
)
い
歯形
(
はがた
)
が
附
(
つ
)
いて
居
(
を
)
りました』
082
国彦
『
成程
(
なるほど
)
、
083
そいつは
益々
(
ますます
)
怪
(
あや
)
しう
厶
(
ござ
)
る。
084
安彦
(
やすひこ
)
殿
(
どの
)
、
085
如何
(
いかが
)
思召
(
おぼしめ
)
されますか。
086
こりや
聞
(
き
)
き
捨
(
ず
)
てにはなりますまい。
087
一
(
ひと
)
つ
正体
(
しやうたい
)
を
調
(
しら
)
べたいものですなア』
088
安彦
『サア、
089
吾々
(
われわれ
)
はお
使
(
つかひ
)
に
参
(
まゐ
)
つたのは、
090
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
一切
(
いつさい
)
を
調
(
しら
)
べて
来
(
こ
)
いとの
事
(
こと
)
なれば、
091
高姫
(
たかひめ
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
092
杢助
(
もくすけ
)
と
名乗
(
なの
)
る
人物
(
じんぶつ
)
を
能
(
よ
)
く
調
(
しら
)
べて
報告
(
はうこく
)
を
致
(
いた
)
さねばなりますまい』
093
国彦
(
くにひこ
)
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
る、
094
直様
(
すぐさま
)
着手
(
ちやくしゆ
)
致
(
いた
)
しませう』
095
珍彦
(
うづひこ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
096
余程
(
よほど
)
考
(
かんが
)
へなくては、
097
先方
(
せんぱう
)
に
悟
(
さと
)
られては
又
(
また
)
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すかも
知
(
し
)
れませぬから、
098
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
が
様子
(
やうす
)
を
伺
(
うかが
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう』
099
楓
(
かへで
)
『あのお
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
100
高姫
(
たかひめ
)
さまと
夫婦
(
ふうふ
)
だと
云
(
い
)
つて、
101
それはそれは
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
、
102
酒
(
さけ
)
ばかり
呑
(
の
)
んで
一寸
(
ちよつと
)
も
事務
(
じむ
)
は
見
(
み
)
ないのですよ。
103
そしてお
父
(
とう
)
さまやお
母
(
かあ
)
さまを
毒散
(
どくさん
)
と
云
(
い
)
ふ
薬
(
くすり
)
で
殺
(
ころ
)
さうとしたのですよ。
104
けれども
文珠
(
もんじゆ
)
菩薩
(
ぼさつ
)
様
(
さま
)
が
夢
(
ゆめ
)
に
現
(
あら
)
はれて
神丹
(
しんたん
)
を
下
(
くだ
)
さいましたので、
105
お
蔭
(
かげ
)
で
毒
(
どく
)
が
利
(
き
)
かなかつたのです。
106
さうでなければ、
107
私
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
はとうの
昔
(
むかし
)
になくなつて
居
(
を
)
るのです。
108
彼
(
あ
)
んな
奴
(
やつ
)
は
早
(
はや
)
くどうかして
貰
(
もら
)
はなくては、
109
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
、
110
一目
(
ひとめ
)
も
寝
(
ね
)
られないのです。
111
初稚姫
(
はつわかひめ
)
のお
父
(
とう
)
さまだなんて
云
(
い
)
ひながら、
112
正体
(
しやうたい
)
が
現
(
あら
)
はれるのが
怖
(
おそ
)
ろしさに
一度
(
いちど
)
も
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
会
(
あ
)
はず、
113
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
を
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
めて
了
(
しま
)
ひ、
114
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
には
高姫
(
たかひめ
)
と
二人
(
ふたり
)
で
誰
(
たれ
)
も
通
(
とほ
)
さないのです。
115
きつとあいつは
妖怪
(
ばけもの
)
に
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
116
そして
高姫
(
たかひめ
)
さまは、
117
妖怪
(
ばけもの
)
を
杢助
(
もくすけ
)
さまと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのです。
118
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
杢助
(
もくすけ
)
さまが
彼方
(
あちら
)
にもあり、
119
此方
(
こちら
)
にもある
道理
(
だうり
)
がないぢやありませぬか』
120
安彦
(
やすひこ
)
『ハテ、
121
聞
(
き
)
けば
聞
(
き
)
く
程
(
ほど
)
不思議
(
ふしぎ
)
千万
(
せんばん
)
で
厶
(
ござ
)
る。
122
これはテツキリ
妖怪
(
ばけもの
)
に
間違
(
まちが
)
ひ
厶
(
ござ
)
いますまい。
123
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
、
124
貴女
(
あなた
)
のお
考
(
かんが
)
へは
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
います』
125
初稚姫
『
私
(
わたし
)
の
考
(
かんが
)
へでは
杢助
(
もくすけ
)
と
名乗
(
なの
)
る
怪物
(
くわいぶつ
)
は、
126
大雲山
(
たいうんざん
)
に
居
(
を
)
る
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
悪魔
(
あくま
)
に
違
(
ちが
)
ひないと
考
(
かんが
)
へます。
127
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
妾
(
わたし
)
の
愛犬
(
あいけん
)
スマートが
怖
(
こは
)
くて
仕様
(
しやう
)
がないので
厶
(
ござ
)
いますもの』
128
安彦
(
やすひこ
)
は
二歩
(
ふたあし
)
三歩
(
みあし
)
ニジリ
寄
(
よ
)
り、
129
目
(
め
)
を
見張
(
みは
)
り、
130
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らしながら、
131
安彦
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
132
それがお
分
(
わか
)
りになつて
居
(
を
)
るのに、
133
何故
(
なぜ
)
今
(
いま
)
まで
放任
(
はうにん
)
しておかれたのですか。
134
早
(
はや
)
くスマートを
使嗾
(
けし
)
かけて
亡
(
ほろ
)
ぼしてやつたらどうですか。
135
さうしたら
高姫
(
たかひめ
)
も
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めるでは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
136
初稚姫
『さうして
見
(
み
)
ようかとも
思
(
おも
)
ひましたが、
137
俄
(
にはか
)
に
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
せば、
138
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
が
大変
(
たいへん
)
な
恥
(
はぢ
)
をお
掻
(
か
)
き
遊
(
あそ
)
ばすなり、
139
又
(
また
)
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
程
(
ほど
)
が
計
(
はか
)
り
知
(
し
)
られないと
思
(
おも
)
ひまして、
140
ボツボツと
気
(
き
)
のつくやうと、
141
忙
(
いそ
)
がしい
体
(
からだ
)
をここに
留
(
とど
)
めて、
142
時機
(
じき
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るので
厶
(
ござ
)
います』
143
安彦
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
144
そんな、
145
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
る
場合
(
ばあひ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬぞ。
146
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
承
(
うけたま
)
はりました
以上
(
いじやう
)
、
147
此
(
この
)
儘
(
まま
)
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ、
148
サア
是
(
これ
)
から
妖怪
(
えうくわい
)
征伐
(
せいばつ
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
致
(
いた
)
しますから、
149
何卒
(
どうぞ
)
拙者
(
せつしや
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
にお
任
(
まか
)
せを
願
(
ねが
)
ひます』
150
初稚姫
『あれしきの
妖怪
(
ばけもの
)
を
倒
(
たふ
)
す
位
(
くらゐ
)
は
朝飯前
(
あさめしまへ
)
の
仕事
(
しごと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
151
スマートだけでも
立派
(
りつぱ
)
に
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らすでせう。
152
併
(
しか
)
しながら
彼
(
かれ
)
を
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らしてみた
所
(
ところ
)
で、
153
又
(
また
)
他
(
た
)
の
地方
(
ちはう
)
へ
往
(
い
)
つて
悪事
(
あくじ
)
をなすに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
154
それ
故
(
ゆゑ
)
に
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
に
留
(
と
)
め
置
(
お
)
き、
155
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
彼
(
か
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
を
改心
(
かいしん
)
させようと
存
(
ぞん
)
じ、
156
光
(
ひかり
)
を
和
(
やは
)
らげて
時機
(
じき
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ』
157
国彦
(
くにひこ
)
『どうも
腕
(
うで
)
が
鳴
(
な
)
つて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
158
もし
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
159
そんな
気
(
き
)
の
永
(
なが
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はずに、
160
私
(
わたし
)
にお
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さいませ。
161
きつと
私
(
わたし
)
が
退治
(
たいぢ
)
てお
目
(
め
)
にかけませう』
162
初稚姫
『
短気
(
たんき
)
は
損気
(
そんき
)
、
163
まア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
164
お
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
を
背
(
そむ
)
いては
済
(
す
)
みませぬが、
165
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
妾
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
と
云
(
い
)
つて
現
(
あら
)
はれたので
厶
(
ござ
)
いますから、
166
仮令
(
たとへ
)
怪物
(
くわいぶつ
)
と
雖
(
いへど
)
も
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
と
名
(
な
)
のついたものを、
167
さう
無闇
(
むやみ
)
に
苦
(
くる
)
しめる
事
(
こと
)
は
情
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
てすみませぬ。
168
仮令
(
たとへ
)
贋者
(
にせもの
)
にもせよ、
169
父
(
ちち
)
の
名
(
な
)
に
於
(
おい
)
てどうして
敵対
(
てきた
)
へませうか。
170
仮令
(
たとへ
)
貴方
(
あなた
)
が
退治
(
たいぢ
)
なさつても、
171
この
初稚
(
はつわか
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
つた
以上
(
いじやう
)
は
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
もお
止
(
と
)
め
致
(
いた
)
します。
172
妾
(
わらは
)
が
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
退治
(
たいぢ
)
遊
(
あそ
)
ばすのなら
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬが、
173
もう
只今
(
ただいま
)
となつては、
174
貴方
(
あなた
)
も
妾
(
わらは
)
に
対
(
たい
)
し
左様
(
さやう
)
な
惨酷
(
ざんこく
)
な
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい』
175
安彦
(
やすひこ
)
『
何
(
なん
)
と
親
(
おや
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものだな。
176
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
悪魔
(
あくま
)
でも
親
(
おや
)
の
名
(
な
)
を
名乗
(
なの
)
つて
居
(
を
)
るものを
苦
(
くる
)
しめる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないとは、
177
実
(
じつ
)
に
人情
(
にんじやう
)
の
深
(
ふか
)
いお
方
(
かた
)
だ。
178
いや
孝行
(
かうかう
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
だ。
179
いやもう
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りました』
180
初稚姫
『それ
故
(
ゆえ
)
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
赤心
(
まごころ
)
を
尽
(
つく
)
して
其
(
その
)
妖怪
(
ばけもの
)
を
改心
(
かいしん
)
させ、
181
救
(
すく
)
うてやりたいものです。
182
妾
(
わらは
)
もあの
妖怪
(
ばけもの
)
から
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
と
云
(
い
)
はれたのですから、
183
娘
(
むすめ
)
としての
赤心
(
まごころ
)
を
尽
(
つく
)
したいと
存
(
ぞん
)
じます。
184
斯様
(
かやう
)
な
妖怪
(
ばけもの
)
に、
185
仮令
(
たとへ
)
言葉
(
ことば
)
の
上
(
うへ
)
でも
娘
(
むすめ
)
と
云
(
い
)
はれるのは
何
(
なに
)
か
因縁
(
いんねん
)
があるのでせう。
186
何
(
ど
)
うか
愛善
(
あいぜん
)
の
徳
(
とく
)
を
以
(
もつ
)
て
彼
(
かれ
)
を
救
(
すく
)
ふべく、
187
試験
(
しけん
)
問題
(
もんだい
)
をお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さつたのだらうと
存
(
ぞん
)
じます』
188
安彦
『
然
(
しか
)
らば
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
びませぬ。
189
イヤ
国彦
(
くにひこ
)
殿
(
どの
)
、
190
これにてお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
さうぢやないか』
191
初稚姫
『
何
(
ど
)
うも
遠方
(
ゑんぱう
)
を
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
192
高姫
(
たかひめ
)
さまの
件
(
けん
)
については
今
(
いま
)
一応
(
いちおう
)
妾
(
わらは
)
の
意見
(
いけん
)
を
申上
(
まをしあ
)
げ、
193
御
(
ご
)
詮議
(
せんぎ
)
の
上
(
うへ
)
暫
(
しば
)
しの
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
あらむ
事
(
こと
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します。
194
そして
否
(
いな
)
やの
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
は、
195
無線
(
むせん
)
霊話
(
れいわ
)
をもつて
妾
(
わらは
)
の
耳
(
みみ
)
迄
(
まで
)
お
達
(
たつ
)
し
下
(
くだ
)
さいますれば、
196
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
197
安彦
『イヤ
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
198
珍彦
(
うづひこ
)
殿
(
どの
)
、
199
然
(
しか
)
らばこれにて
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう。
200
随分
(
ずいぶん
)
貴方
(
あなた
)
も
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
201
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
のあり
次第
(
しだい
)
、
202
貴方
(
あなた
)
は
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
神司
(
かむづかさ
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
高姫
(
たかひめ
)
に
申渡
(
まをしわた
)
しをなさるやうに、
203
呉
(
く
)
れ
呉
(
ぐ
)
れも
申渡
(
まをしわた
)
しますぞや。
204
決
(
けつ
)
して
遠慮
(
ゑんりよ
)
はいりませぬから、
205
どしどしおやりなさいませ』
206
珍彦
『ハイ
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
207
それを
承
(
うけたま
)
はらば、
208
拙者
(
せつしや
)
も
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
通
(
どほ
)
り、
209
何
(
なん
)
の
憚
(
はばか
)
る
所
(
ところ
)
なく
断行
(
だんかう
)
致
(
いた
)
しますから、
210
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
211
此
(
この
)
珍彦
(
うづひこ
)
も
何分
(
なにぶん
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
が
充分
(
じうぶん
)
に
分
(
わか
)
つてゐないものですから、
212
つひ
高姫
(
たかひめ
)
さまの
口先
(
くちさき
)
に
操
(
あやつ
)
られ、
213
いつも
屁古
(
へこ
)
まされ
通
(
どほ
)
しですが、
214
お
直使
(
ちよくし
)
を
通
(
とほ
)
しての
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
、
215
決
(
けつ
)
して
背
(
そむ
)
きは
致
(
いた
)
しませぬ』
216
安彦
『イヤそれ
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました』
217
国彦
(
くにひこ
)
『イヤ
安彦
(
やすひこ
)
殿
(
どの
)
、
218
折角
(
せつかく
)
出張
(
しゆつちやう
)
致
(
いた
)
したのだから、
219
御
(
ご
)
本殿
(
ほんでん
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
220
此
(
この
)
館
(
やかた
)
は
一間
(
ひとま
)
も
残
(
のこ
)
らず
見分
(
けんぶん
)
致
(
いた
)
し、
221
境内
(
けいだい
)
を
一巡
(
いちじゆん
)
致
(
いた
)
して
帰
(
かへ
)
らうでは
厶
(
ござ
)
らぬか』
222
珍彦
(
うづひこ
)
『
然
(
しか
)
らば
幹部
(
かんぶ
)
の
役員
(
やくゐん
)
に
申付
(
まをしつ
)
けて
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
させませう』
223
安彦
(
やすひこ
)
『イヤそれは
有難
(
ありがた
)
い。
224
然
(
しか
)
らば
二人
(
ふたり
)
許
(
ばか
)
り
案内
(
あんない
)
を
願
(
ねが
)
ひませうかなア』
225
珍彦
『
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
226
と
云
(
い
)
ひながら、
227
磬板
(
けいばん
)
をカンカンと
打
(
う
)
つた。
228
イル、
229
サールの
両人
(
りやうにん
)
は
暫
(
しばら
)
くして
装束
(
しやうぞく
)
をつけ
珍彦
(
うづひこ
)
が
館
(
やかた
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
230
イル、サール
『
今
(
いま
)
「
二人
(
ふたり
)
来
(
こ
)
い」と
云
(
い
)
ふお
報
(
しら
)
せで
厶
(
ござ
)
いましたので、
231
直様
(
すぐさま
)
装束
(
しやうぞく
)
を
調
(
ととの
)
へ
罷
(
まか
)
り
出
(
で
)
ました。
232
お
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
が
厶
(
ござ
)
いますれば、
233
承
(
うけたま
)
はりませう』
234
珍彦
(
うづひこ
)
『いや、
235
イル、
236
サール
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
237
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
238
外
(
ほか
)
でもありませぬが、
239
お
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
お
二人
(
ふたり
)
を
一度
(
いちど
)
御
(
ご
)
本殿
(
ほんでん
)
に
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申上
(
まをしあ
)
げて
下
(
くだ
)
さい。
240
そして
境内
(
けいだい
)
を
叮嚀
(
ていねい
)
に
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申上
(
まをしあ
)
げ、
241
最後
(
さいご
)
に
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
や、
242
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
のお
居間
(
ゐま
)
へ
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
なさるが
宜
(
よろ
)
しいぞや』
243
イル『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
244
サア
御
(
お
)
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
245
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう』
246
安彦
(
やすひこ
)
、
247
国彦
(
くにひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
軽
(
かる
)
く
目礼
(
もくれい
)
しながら、
248
イル、
249
サールの
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
御
(
ご
)
本殿
(
ほんでん
)
に
案内
(
あんない
)
された。
250
茲
(
ここ
)
に
両人
(
りやうにん
)
は
恭
(
うやうや
)
しく
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
251
終
(
をは
)
つて
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
手向
(
たむ
)
けた。
252
安彦
(
やすひこ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
253
安彦
『
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
や
瑞御霊
(
みづみたま
)
254
清
(
きよ
)
き
尊
(
たふと
)
き
大御
(
おほみ
)
稜威
(
いづ
)
255
現
(
あら
)
はれまして
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
256
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
257
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
に
258
千木
(
ちぎ
)
高
(
たか
)
知
(
し
)
りて
現
(
あ
)
れませる
259
国治立
(
くにはるたち
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
260
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
日
(
ひ
)
の
御神
(
みかみ
)
261
バラモン
教
(
けう
)
の
司神
(
つかさがみ
)
262
大国彦
(
おほくにひこ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
263
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
塩長
(
しほなが
)
の
264
彦
(
ひこ
)
の
命
(
みこと
)
や
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
265
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
斎
(
いつ
)
かひて
266
常世
(
とこよ
)
の
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らさむと
267
顕
(
あ
)
れませるこそ
尊
(
たふと
)
けれ
268
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
269
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
270
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
271
曲津
(
まがつ
)
は
如何
(
いか
)
に
荒
(
すさ
)
ぶとも
272
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
もて
273
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
曲
(
まが
)
を
悉
(
ことごと
)
く
274
伊吹
(
いぶき
)
払
(
はら
)
ひに
払
(
はら
)
ひのけ
275
浦安国
(
うらやすくに
)
の
浦安
(
うらやす
)
く
276
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
277
神
(
かみ
)
の
詔
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
278
産土山
(
うぶすなやま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
より
279
参
(
まゐ
)
り
来
(
き
)
ませる
安彦
(
やすひこ
)
や
280
国彦司
(
くにひこつかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
281
御前
(
みまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
282
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
283
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
284
国彦
(
くにひこ
)
は
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
285
国彦
『
吾
(
われ
)
は
国彦
(
くにひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
286
高取村
(
たかとりむら
)
の
与太彦
(
よたひこ
)
と
287
名
(
な
)
を
知
(
し
)
られたる
与太
(
よた
)
男
(
をとこ
)
288
弥次彦
(
やじひこ
)
さまと
諸共
(
もろとも
)
に
289
コーカス
参
(
まゐ
)
りの
其
(
その
)
途中
(
とちう
)
290
お
竹
(
たけ
)
の
宿
(
やど
)
に
泊
(
とま
)
る
折
(
をり
)
291
日出
(
ひので
)
の
別
(
わけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
292
部下
(
ぶか
)
に
仕
(
つか
)
へる
神司
(
かむづかさ
)
293
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれましまして
294
駒
(
こま
)
に
跨
(
また
)
がりいそいそと
295
小鹿峠
(
こじかたうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
296
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
しも
音彦
(
おとひこ
)
の
297
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
298
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は
残
(
のこ
)
されて
299
ウラルの
道
(
みち
)
の
目付
(
めつけ
)
等
(
ら
)
に
300
取囲
(
とりかこ
)
まれて
逃
(
に
)
ぐる
折
(
をり
)
301
小鹿峠
(
こじかたうげ
)
の
峻坂
(
しゆんぱん
)
に
302
前後
(
ぜんご
)
に
敵
(
てき
)
を
受
(
う
)
けしより
303
千尋
(
ちひろ
)
の
谷間
(
たにま
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んで
304
忽
(
たちま
)
ち
幽冥
(
いうめい
)
の
人
(
ひと
)
となり
305
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
まで
到着
(
たうちやく
)
し
306
脱衣婆
(
だついば
)
さまにいろいろと
307
小言
(
こごと
)
八百
(
はつぴやく
)
並
(
なら
)
べられ
308
河
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
りて
銅木像
(
どうもくざう
)
309
其
(
その
)
外
(
ほか
)
怪
(
あや
)
しき
者
(
もの
)
共
(
ども
)
に
310
二度
(
ふたたび
)
三度
(
みたび
)
出会
(
しゆつくわい
)
し
311
茲
(
ここ
)
に
漸
(
やうや
)
く
身魂
(
みたま
)
をば
312
研
(
みが
)
きすまして
宣伝使
(
せんでんし
)
313
仕
(
つか
)
へまつりし
国彦
(
くにひこ
)
ぞ
314
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
315
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて
316
今
(
いま
)
は
尊
(
たふと
)
き
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
317
司
(
つかさ
)
の
群
(
むれ
)
に
加
(
くは
)
はりて
318
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
を
宣伝
(
せんでん
)
し
319
帰
(
かへ
)
りて
見
(
み
)
れば
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
320
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
直使
(
ちよくし
)
をば
321
云
(
い
)
ひつけられし
尊
(
たふと
)
さよ
322
此
(
この
)
御社
(
みやしろ
)
に
現
(
あ
)
れませる
323
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
よ
百神
(
ももがみ
)
よ
324
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
使命
(
しめい
)
をば
325
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
復
(
かへ
)
り
命
(
ごと
)
326
申
(
まを
)
させたまへ
惟神
(
かむながら
)
327
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
328
安彦
(
やすひこ
)
国彦
(
くにひこ
)
両人
(
りやうにん
)
が
329
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
330
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
331
神
(
かみ
)
のみたまの
幸
(
さち
)
はひて
332
これの
館
(
やかた
)
に
住
(
す
)
まひたる
333
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
醜霊
(
しこたま
)
や
334
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
醜狐
(
しこぎつね
)
335
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
大神
(
おほかみ
)
の
336
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし
337
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
をひるがへし
338
世界
(
せかい
)
に
曲
(
まが
)
を
行
(
おこな
)
はず
339
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
ふ
御柱
(
みはしら
)
と
340
ならさせたまへ
惟神
(
かむながら
)
341
神
(
かみ
)
かけ
念
(
ねん
)
じ
奉
(
たてまつ
)
る』
342
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
343
恭
(
うやうや
)
しく
拝礼
(
はいれい
)
をして
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
り、
344
又
(
また
)
もやイル、
345
サールの
案内
(
あんない
)
に
連
(
つ
)
れて
広
(
ひろ
)
き
森林内
(
しんりんない
)
を
隈
(
くま
)
なく
巡視
(
じゆんし
)
し、
346
妖幻坊
(
えうげんばう
)
が
遭難場
(
さうなんば
)
をも
詳
(
くは
)
しく
実見
(
じつけん
)
し、
347
落
(
お
)
ちこぼれたる
血糊
(
ちのり
)
の、
348
人間
(
にんげん
)
の
血
(
ち
)
にあらざる
事
(
こと
)
迄
(
まで
)
よく
確
(
たしか
)
め、
349
終
(
をは
)
つて
八尋殿
(
やひろどの
)
に
上
(
あが
)
り、
350
暫
(
しば
)
し
休憩
(
きうけい
)
の
後
(
のち
)
、
351
杢助
(
もくすけ
)
、
352
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
を
臨検
(
りんけん
)
せむと
相談
(
さうだん
)
しながら
茶
(
ちや
)
を
啜
(
すす
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
353
杢助
(
もくすけ
)
、
354
高姫
(
たかひめ
)
は
安彦
(
やすひこ
)
、
355
国彦
(
くにひこ
)
が
今
(
いま
)
や
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
臨検
(
りんけん
)
に
来
(
きた
)
るとは、
356
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
もなく、
357
ハルを
相手
(
あひて
)
にいろいろと
訊問
(
じんもん
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
358
(
大正一二・一・二三
旧一一・一二・七
加藤明子
録)
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