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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
余白歌
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>
真善美愛(第49~60巻)
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第50巻(丑の巻)
> 第4篇 神犬の言霊 > 第16章 鷹鷲掴
<<< 妖幻坊
(B)
(N)
偽筆 >>>
第一六章
鷹鷲掴
(
たかわしづかみ
)
〔一三一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
篇:
第4篇 神犬の言霊
よみ(新仮名遣い):
しんけんのことたま
章:
第16章 鷹鷲掴
よみ(新仮名遣い):
たかわしづかみ
通し章番号:
1310
口述日:
1923(大正12)年01月23日(旧12月7日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月7日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
イルは大速力で筆先を写し終おわると、三宝に乗せて高姫のところに持ってきた。そしてわざと荘重な言葉使いで神がかりの真似をして高姫をからかうが、高姫はイルが気違いになったと悪口して三宝をひったくろうとした。
イルはわざと三宝を握りしめたので、脚が音を立てて二つに割れた。その勢いで筆先は宙をかすめて炭火の中へぱっと落ち、たちまち三冊の筆先は煙となってしまった。高姫は怒ったが、イルは神徳が高いから筆先から煙の竜が出て天上に立ち上ったのだととっさにゴマをすった。高姫は勢いをそがれてしまった。
高姫は気を取り直して筆先の写しを持ってくるようにイルに命じたが、イルは、筆先のご神徳が高すぎて後光がさし、写せなかったと高姫をからかった。イルの上げては落とすからかいに、最後には高姫は顔を真っ赤にして去るようにと怒鳴った。
イルが受付に戻ると、ハル、テル、イク、サールの四人が筆先の写しをげらげら笑いながら読んでいる。イルは、高姫の態度が気に食わなかったから、筆先の元の本が燃えてしまっても、筆先を写してあることを言わなかったのだと伝えた。
それを聞いたハルたちは面白がって、ひとつここで筆先を大声で読んでやろうと言い出した。イルも賛成し、大声で読み始めた。筆先には、これは火にも焼けない水にも溺れないと書いてあったことを引いて、一同は面白がっている。
そこへ高姫が筆先の朗読の声を聞きつけてやってきて、今義理天上の悪口を言っていたのではないか、と声をかけた。筆先を読んでいたのではないかと問う高姫に対し、イルは日の出神様が体内に入り、しばらくするとあんなことを自分の口から仰ったのだととぼけた。
イルは、高姫の注意をそらしたすきに、尻の下に隠していた筆先の写しを懐に入れた。しかし高姫はそれに気が付いて懐から筆先の写しを掴みだすと、イルをやたらに打ち据えて、憎々しげに高笑いし、杢助と相談して処分すると捨て台詞をして去って行った。
五人をそれを見送って、頭をかき冷や汗を拭きながら笑っている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-07-23 19:06:29
OBC :
rm5016
愛善世界社版:
221頁
八幡書店版:
第9輯 230頁
修補版:
校定版:
226頁
普及版:
111頁
初版:
ページ備考:
001
イルは
冷笑
(
れいせう
)
を
泛
(
うか
)
べながら、
002
高姫
(
たかひめ
)
の
御
(
ご
)
機嫌取
(
きげんと
)
りの
為
(
ため
)
に、
003
一間
(
ひとま
)
に
入
(
はい
)
つて
大速力
(
だいそくりよく
)
にて
書
(
か
)
き
写
(
うつ
)
し、
004
直様
(
すぐさま
)
に
直筆
(
ぢきひつ
)
を
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
にひん
握
(
にぎ
)
り、
005
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
に
三宝
(
さんぱう
)
を
掴
(
つか
)
んで
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
の
前
(
まへ
)
まで
到
(
いた
)
り、
006
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
りキチンと
叮嚀
(
ていねい
)
にのせ、
007
目八分
(
めはちぶ
)
に
捧
(
ささ
)
げ、
008
襖
(
ふすま
)
の
外
(
そと
)
から
言葉
(
ことば
)
もいと
荘重
(
さうちよう
)
に、
009
イル
『
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
、
010
只今
(
ただいま
)
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
、
011
アイヤ、
012
高姫
(
たかひめ
)
殿
(
どの
)
、
013
此
(
この
)
襖
(
ふすま
)
をあけめされよ』
014
と
呼
(
よ
)
ばはつた。
015
高姫
(
たかひめ
)
は
余
(
あま
)
り
荘重
(
さうちよう
)
な
言葉
(
ことば
)
に、
016
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
と
襖
(
ふすま
)
をサツとあけ
見
(
み
)
れば、
017
イルは
筆先
(
ふでさき
)
を
載
(
の
)
せた
三宝
(
さんぱう
)
を
恭
(
うやうや
)
しく
捧
(
ささ
)
げ
立
(
た
)
つてゐる。
018
高姫
『
何
(
なん
)
だ、
019
お
前
(
まへ
)
はイルぢやないか。
020
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い、
021
私
(
わたし
)
を
吃驚
(
びつくり
)
さしたがなア。
022
ヘン
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
なんて、
023
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふものぢやないワ。
024
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
体内
(
たいない
)
にお
鎮
(
しづ
)
まり
遊
(
あそ
)
ばすぞや。
025
お
前
(
まへ
)
さまのやうなお
方
(
かた
)
に、
026
何
(
ど
)
うしてお
鎮
(
しづ
)
まり
遊
(
あそ
)
ばすものか』
027
イルは
立
(
た
)
ちはだかつたまま、
028
イル
『アイヤ、
029
高姫
(
たかひめ
)
、
030
よつく
承
(
うけたま
)
はれ。
031
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
が
体内
(
たいない
)
に
宿
(
やど
)
ることもあり、
032
又
(
また
)
筆先
(
ふでさき
)
に
宿
(
やど
)
る
事
(
こと
)
もあるぞよ。
033
このイルに
持
(
も
)
たせた
筆先
(
ふでさき
)
は
即
(
すなは
)
ち
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
であるぞよ。
034
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
体内
(
たいない
)
に
宿
(
やど
)
り、
035
或
(
ある
)
時
(
とき
)
は
筆先
(
ふでさき
)
に
宿
(
やど
)
り、
036
イルの
肉体
(
にくたい
)
を
以
(
もつ
)
て
之
(
これ
)
を
守
(
まも
)
らせあれば、
037
只今
(
ただいま
)
のイルは
即
(
すなは
)
ち
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
であるぞよ。
038
粗末
(
そまつ
)
に
致
(
いた
)
すと
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
るぞよ。
039
取違
(
とりちが
)
ひを
致
(
いた
)
すでないぞよ。
040
アフンと
致
(
いた
)
して
目眩
(
めまひ
)
が
来
(
く
)
るぞよ。
041
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
に
間違
(
まちが
)
ひはないぞよ。
042
おちぶれ
者
(
もの
)
を
侮
(
あなど
)
ることはならぬぞよ。
043
何
(
ど
)
んな
御
(
お
)
方
(
かた
)
に
御用
(
ごよう
)
がさしてあるか
分
(
わか
)
らぬぞよ』
044
高姫
『あああ、
045
とうと、
046
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
に
打
(
う
)
たれて
半気違
(
はんきちが
)
ひになりよつた。
047
これだから
猫
(
ねこ
)
に
小判
(
こばん
)
、
048
豚
(
ぶた
)
に
真珠
(
しんじゆ
)
といふのだ。
049
サ
早
(
はや
)
く
此方
(
こちら
)
へかしなされ、
050
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が
二人
(
ふたり
)
も
出来
(
でき
)
たら
治
(
をさ
)
まらぬからな』
051
と
矢庭
(
やには
)
にパツと
引
(
ひつ
)
たくらうとする。
052
イルはワザとに
三宝
(
さんぱう
)
を
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
めた。
053
高姫
(
たかひめ
)
は
力
(
ちから
)
をこめて、
054
グツと
引
(
ひ
)
いた
拍子
(
ひやうし
)
に、
055
三宝
(
さんぱう
)
の
表
(
おもて
)
と
脚
(
あし
)
とがメキメキと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
二
(
ふた
)
つになつた。
056
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
に
筆先
(
ふでさき
)
は
宙
(
ちう
)
を
掠
(
かす
)
めて、
057
ゴンゴンといこつてゐた
[
※
「いこって」…「いこる」は関西の方言で、炭に火がついて赤くなった状態。
]
炭火
(
すみび
)
の
中
(
なか
)
へパツと
落
(
お
)
ちた。
058
忽
(
たちま
)
ち
三冊
(
さんさつ
)
のお
筆先
(
ふでさき
)
は
黒
(
くろ
)
き
煙
(
けむり
)
の
竜
(
りう
)
となつて
天
(
てん
)
に
昇
(
のぼ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
059
高姫
『あああ、
060
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
ぢや、
061
これ、
062
イル、
063
何
(
ど
)
うして
下
(
くだ
)
さる。
064
折角
(
せつかく
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
書
(
か
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたお
直筆
(
ぢきひつ
)
を、
065
サツパリ
煙
(
けむり
)
にして
了
(
しま
)
つたぢやないか』
066
イル
『
何
(
なん
)
と
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はえらいものですな。
067
たうとう
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
が
現
(
あら
)
はれました。
068
貴女
(
あなた
)
も
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
069
火鉢
(
ひばち
)
から
火
(
ひ
)
が
出
(
で
)
て
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
となり、
070
あの
通
(
とほ
)
り
黒
(
くろ
)
い
竜
(
りう
)
となり、
071
煙
(
けむり
)
に
包
(
つつ
)
まれて
天上
(
てんじやう
)
なされました。
072
イヤ
煙
(
けむり
)
ではなからう、
073
朝霧
(
あさぎり
)
夕霧
(
ゆふぎり
)
といふギリでせう。
074
それだから
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が
御
(
ご
)
竜体
(
りうたい
)
を
現
(
あら
)
はして
天上
(
てんじやう
)
なされました。
075
何
(
なん
)
とマア
貴女
(
あなた
)
は
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
高姫
(
たかひめ
)
さまで
厶
(
ござ
)
いますな。
076
エヘヘヘヘ、
077
イヤもう
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りまして
厶
(
ござ
)
います』
078
と
口
(
くち
)
から
出任
(
でまか
)
せに
高姫
(
たかひめ
)
を
揶揄
(
からかひ
)
半分
(
はんぶん
)
に
褒
(
ほ
)
めそやした。
079
高姫
(
たかひめ
)
は
怒
(
おこ
)
らうと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つたが、
080
イルの
頓智
(
とんち
)
に
巻
(
ま
)
き
込
(
こ
)
まれ、
081
嬉
(
うれ
)
しいやうな
腹立
(
はらだ
)
たしいやうな、
082
妙
(
めう
)
な
気分
(
きぶん
)
になつて、
083
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でおろし、
084
高姫
『お
直筆
(
ぢきひつ
)
は
天上
(
てんじやう
)
なさつたが、
085
併
(
しか
)
しマアマア
結構
(
けつこう
)
だ。
086
お
前
(
まへ
)
が
写
(
うつ
)
しておいてくれたから、
087
マ
一度
(
いちど
)
書
(
か
)
き
直
(
なほ
)
さして
頂
(
いただ
)
かうかな。
088
滅多
(
めつた
)
にあんな
結構
(
けつこう
)
なお
筆先
(
ふでさき
)
は
出
(
で
)
るものぢやないからな。
089
コレ、
090
イルや、
091
早
(
はや
)
くあのお
筆先
(
ふでさき
)
の
写
(
うつ
)
しを、
092
ここへ
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てくれ』
093
イル
『ヘーエ、
094
写
(
うつ
)
さして
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
ひましたが、
095
何分
(
なにぶん
)
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
高
(
たか
)
いお
筆先
(
ふでさき
)
だものですから、
096
後光
(
ごくわう
)
がさしまして、
097
サツパリ
目
(
め
)
がくらみ、
098
一字
(
いちじ
)
々々
(
いちじ
)
其
(
その
)
文字
(
もじ
)
が
鎌首
(
かまくび
)
を
立
(
た
)
てて、
099
竜神
(
りうじん
)
さまになつて
動
(
うご
)
くやうに
見
(
み
)
えるものですもの、
100
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
如
(
ごと
)
き
神徳
(
しんとく
)
のない
者
(
もの
)
では、
101
写
(
うつ
)
すことは
愚
(
おろ
)
か
拝読
(
いただ
)
くでさへも
目
(
め
)
がマクマク
致
(
いた
)
します。
102
それでお
前
(
まへ
)
さまに
写
(
うつ
)
して
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
つて、
103
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
をここ
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
たので
厶
(
ござ
)
います』
104
と
揶揄好
(
からかひずき
)
のイルは、
105
其
(
その
)
実
(
じつ
)
スツクリ
写
(
うつ
)
し
取
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
ながら、
106
ワザとこんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ。
107
高姫
『エーエ、
108
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬことだなア、
109
お
前
(
まへ
)
が
能
(
よ
)
う
写
(
うつ
)
さな、
110
なぜ
他
(
ほか
)
の
者
(
もの
)
に
写
(
うつ
)
ささなかつたのだい』
111
イル
『それでもイルに
写
(
うつ
)
せよと、
112
貴女
(
あなた
)
が
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
をお
下
(
くだ
)
しになつたものですから、
113
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
には
背
(
そむ
)
かれないと
思
(
おも
)
うて、
114
他
(
ほか
)
の
者
(
もの
)
には
見
(
み
)
せもしませなんだのですよ』
115
高姫
『エーエ、
116
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
男
(
をとこ
)
だな。
117
あああ、
118
どうしたらいいかしらぬて……お
前
(
まへ
)
さまは
暫
(
しばら
)
く
謹慎
(
きんしん
)
の
為
(
ため
)
、
119
彼方
(
あちら
)
へ
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
りなさい。
120
そして
受付
(
うけつけ
)
はハルに
申付
(
まをしつ
)
ける。
121
こんな
不調法
(
ぶてうはふ
)
を
致
(
いた
)
して、
122
よい
気
(
き
)
で
居
(
を
)
るといふ
事
(
こと
)
があるものかいな』
123
イル
『ハイ、
124
仕方
(
しかた
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
125
併
(
しか
)
しながら
私
(
わたし
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
霊界
(
れいかい
)
で
写
(
うつ
)
したかも
知
(
し
)
れませぬから、
126
もし
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ましたら、
127
勘忍
(
かんにん
)
して
下
(
くだ
)
さるでせうなア』
128
高姫
『
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひなさるな。
129
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
がそんな
事
(
こと
)
が
書
(
か
)
けてたまりますか。
130
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
でさへも
守護神
(
しゆごじん
)
が
書
(
か
)
くといふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ
故
(
ゆゑ
)
に、
131
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
の
手
(
て
)
を
通
(
とほ
)
してお
書
(
か
)
きなさるのだ。
132
エエ
気色
(
きしよく
)
の
悪
(
わる
)
い、
133
彼方
(
あつちや
)
へ
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
され。
134
お
前
(
まへ
)
さまの
面
(
つら
)
を
見
(
み
)
るのも
胸
(
むね
)
クソが
悪
(
わる
)
い。
135
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
なお
筆先
(
ふでさき
)
を
三冊
(
さんさつ
)
まで
燃
(
も
)
やして
了
(
しま
)
うて、
136
どうしてこれが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
が
立
(
た
)
ちますか』
137
イル
『
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
に
会
(
あ
)
はうと
思
(
おも
)
うて、
138
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまが
化相
(
けさう
)
の
術
(
じゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て、
139
天上
(
てんじやう
)
なさつたのかも
知
(
し
)
れませぬよ。
140
さう
気投
(
けな
)
げしたものぢや
厶
(
ござ
)
いませぬワイ』
141
高姫
『エー
喧
(
やかま
)
しい、
142
彼方
(
あつちや
)
へ
行
(
ゆ
)
きなされ。
143
グヅグヅ
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ると、
144
此
(
この
)
箒
(
はうき
)
が
御
(
お
)
見舞
(
みま
)
ひ
申
(
まを
)
すぞや』
145
と
顔
(
かほ
)
を
真赤
(
まつか
)
にし、
146
捨鉢
(
すてばち
)
気味
(
ぎみ
)
になり、
147
半狂乱
(
はんきやうらん
)
になつて
呶鳴
(
どな
)
り
散
(
ち
)
らすのであつた。
148
イルは、
149
イル
『ハイ』
150
と
一言
(
ひとこと
)
残
(
のこ
)
し、
151
匆々
(
さうさう
)
に
襖
(
ふすま
)
を
開
(
あ
)
け
閉
(
し
)
めし、
152
首
(
くび
)
をすくめ、
153
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
し、
154
腮
(
あご
)
をしやくりながら
受付
(
うけつけ
)
へ
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
155
受付
(
うけつけ
)
にはハル、
156
テル、
157
イク、
158
サールの
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
筆先
(
ふでさき
)
の
写
(
うつ
)
しをゲラゲラ
笑
(
わら
)
ひながら
読
(
よ
)
んでゐる。
159
イル
『オイ、
160
そんな
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
笑
(
わら
)
つてくれな、
161
今
(
いま
)
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
が
大変
(
たいへん
)
に
怒
(
おこ
)
つてゐるからな』
162
ハル『ナアニ、
163
怒
(
おこ
)
る
事
(
こと
)
があらうかい。
164
早
(
はや
)
く
写
(
うつ
)
して
腹
(
はら
)
へ
締
(
し
)
め
込
(
こ
)
みておいて
下
(
くだ
)
されよ……と
云
(
い
)
つて
帰
(
かへ
)
つたぢやないか。
165
今
(
いま
)
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
他人
(
たにん
)
の
褌
(
ふんどし
)
を
締
(
し
)
めこみてゐる
所
(
ところ
)
だ。
166
アハハハハ』
167
サール『これ
程
(
ほど
)
分
(
わか
)
りにくい
文字
(
もじ
)
を
写
(
うつ
)
させておいて、
168
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
に
高姫
(
たかひめ
)
さまが、
169
それ
程
(
ほど
)
怒
(
おこ
)
るのだい。
170
怒
(
おこ
)
る
位
(
くらゐ
)
ならなぜ
写
(
うつ
)
せと
云
(
い
)
つたのだ。
171
本当
(
ほんたう
)
に
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
をぬかすじやないか』
172
イル
『ナアニ、
173
そりやそれでいいのだが、
174
高姫
(
たかひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
175
とうと、
176
過
(
あやま
)
つて
三冊
(
さんさつ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
を
火
(
ひ
)
の
中
(
なか
)
へおとし、
177
焼
(
や
)
いて
了
(
しま
)
ひよつたのだ。
178
それで
大変
(
たいへん
)
に
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
悪
(
わる
)
いのだよ』
179
サール
『イヒヒヒヒ、
180
そりやいい
気味
(
きみ
)
だねえ、
181
随分
(
ずいぶん
)
妙
(
めう
)
な
面
(
つら
)
をしただらう』
182
イル
『
丸
(
まる
)
きり、
183
竈
(
かまど
)
の
上
(
うへ
)
の
不動
(
ふどう
)
さまを
焼杭
(
やけぐひ
)
でくらはした
時
(
とき
)
のやうな
面
(
つら
)
をしよつて、
184
きつく
睨
(
にら
)
みよつた。
185
そして
其
(
その
)
写
(
うつ
)
しがあるだらうから、
186
すぐ
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
いと
云
(
い
)
ひよつたので、
187
俺
(
おれ
)
は
余
(
あんま
)
り
劫腹
(
ごふはら
)
だから、
188
あのお
筆先
(
ふでさき
)
は
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
が
高
(
たか
)
うて
後光
(
ごくわう
)
がさし、
189
一字
(
いちじ
)
々々
(
いちじ
)
文字
(
もじ
)
が
活躍
(
くわつやく
)
して、
190
鎌首
(
かまくび
)
を
立
(
た
)
て
竜神
(
りうじん
)
になつて
這
(
は
)
ひ
廻
(
まは
)
るやうに
見
(
み
)
えたから、
191
能
(
よ
)
う
写
(
うつ
)
しませなんだ……とやつた
所
(
ところ
)
、
192
流石
(
さすが
)
の
高姫
(
たかひめ
)
も
真青
(
まつさを
)
の
面
(
つら
)
して、
193
其
(
その
)
失望
(
しつばう
)
、
194
落胆
(
らくたん
)
さ
加減
(
かげん
)
、
195
実
(
じつ
)
に
痛快
(
つうくわい
)
だつたよ。
196
それだから
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
読
(
よ
)
むなと
云
(
い
)
ふのだ』
197
サール
『アハハハハ、
198
成程
(
なるほど
)
、
199
其奴
(
そいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い。
200
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
201
此処
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ
大声
(
おほごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて
読
(
よ
)
んだろかい』
202
イル
『そんな
事
(
こと
)
したら、
203
高姫
(
たかひめ
)
がガンづくぢやないか』
204
サール
『なアに、
205
俺
(
おれ
)
が
廊下
(
らうか
)
に
見張
(
みはり
)
をしてゐるから、
206
向
(
むか
)
ふへ
聞
(
きこ
)
えるやうに
読
(
よ
)
むのだ。
207
そして
高姫
(
たかひめ
)
が
来
(
き
)
よつたら、
208
筆先
(
ふでさき
)
を
尻
(
しり
)
の
下
(
した
)
へかくし、
209
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
してるのだ。
210
今
(
いま
)
読
(
よ
)
んで
居
(
を
)
つたぢやないかと
云
(
い
)
ひよつたら、
211
イルの
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
へ
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまがお
這入
(
はい
)
りになつて、
212
あんな
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
でお
筆先
(
ふでさき
)
を
読
(
よ
)
まれた……とかませばいいぢやないか』
213
イル
『なアる
程
(
ほど
)
、
214
妙案
(
めうあん
)
だ、
215
それでは
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
読
(
よ
)
んでやらうかなア』
216
とサールを
廊下
(
らうか
)
に
立番
(
たちばん
)
させ、
217
ハル、
218
テル、
219
イクを
前
(
まへ
)
に
坐
(
すわ
)
らせ、
220
イルはワザとに
大声
(
おほごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
読
(
よ
)
み
始
(
はじ
)
めた。
221
イル
『
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
正
(
しやう
)
まつの、
222
生粋
(
きつすゐ
)
の
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
の
筆先
(
ふでさき
)
であるぞよ。
223
高姫
(
たかひめ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
は、
224
昔
(
むかし
)
の
昔
(
むかし
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
神代
(
かみよ
)
から、
225
因縁
(
いんねん
)
ありて、
226
神
(
かみ
)
が
御用
(
ごよう
)
に
使
(
つか
)
うて
居
(
を
)
りたぞよ。
227
この
肉体
(
にくたい
)
は
高天原
(
たかあまはら
)
の
第一
(
だいいち
)
の
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
身魂
(
みたま
)
であるぞよ。
228
高姫
(
たかひめ
)
の
身魂
(
みたま
)
と
引添
(
ひつそ
)
うて、
229
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
守護
(
しゆご
)
がさしてありたぞよ。
230
それについては
杢助殿
(
もくすけどの
)
の
身魂
(
みたま
)
もヤツパリ
霊国
(
れいごく
)
天人
(
てんにん
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
の
身魂
(
みたま
)
であるぞよ。
231
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
は
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
致
(
いた
)
す
御
(
おん
)
役
(
やく
)
であるぞよ。
232
祭典
(
さいてん
)
や
拝礼
(
はいれい
)
などを
致
(
いた
)
す
霊
(
みたま
)
は、
233
天国
(
てんごく
)
天人
(
てんにん
)
の
御用
(
ごよう
)
であるぞよ。
234
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
世
(
よ
)
が
曇
(
くも
)
りて、
235
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
は
一人
(
ひとり
)
もなくなり、
236
八衢
(
やちまた
)
人間
(
にんげん
)
が
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
237
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
は
皆
(
みな
)
地獄
(
ぢごく
)
の
餓鬼
(
がき
)
の
霊
(
みたま
)
や
畜生道
(
ちくしやうだう
)
の
霊
(
みたま
)
ばかりであるから、
238
此
(
この
)
世
(
よ
)
がサツパリ
曇
(
くも
)
りて
了
(
しま
)
うたぞよ。
239
夜
(
よる
)
の
守護
(
しゆご
)
であるぞよ。
240
此
(
この
)
暗
(
やみ
)
くもの
世
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
守護
(
しゆご
)
といたす
為
(
ため
)
に、
241
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
が
因縁
(
いんねん
)
のある
高姫
(
たかひめ
)
の
身魂
(
みたま
)
を
生宮
(
いきみや
)
と
致
(
いた
)
して、
242
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
構
(
かま
)
ふ
時節
(
じせつ
)
が
参
(
まゐ
)
りたぞよ。
243
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
霊
(
みたま
)
は
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が
現
(
あら
)
はれるについて、
244
神
(
かみ
)
から
先走
(
さきばし
)
りに
出
(
だ
)
してありたぞよ。
245
そして
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
霊
(
みたま
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
曇
(
くも
)
らす
霊
(
みたま
)
であるぞよ。
246
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にしておいたなれば、
247
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
泥海
(
どろうみ
)
になるより
仕様
(
しやう
)
がないぞよ。
248
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
は
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
より
外
(
ほか
)
にないぞよ。
249
それについては
杢助殿
(
もくすけどの
)
の
霊
(
みたま
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
の
霊
(
みたま
)
であるから、
250
高姫
(
たかひめ
)
と
引添
(
ひつそ
)
うて
御用
(
ごよう
)
させるやうに
天
(
てん
)
の
大神
(
おほかみ
)
からの
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
であるぞよ。
251
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
杢助
(
もくすけ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
であるけれども、
252
霊
(
みたま
)
の
親子
(
おやこ
)
ではないぞよ。
253
高姫
(
たかひめ
)
も
肉体
(
にくたい
)
上
(
じやう
)
母子
(
おやこ
)
となりて
居
(
を
)
るなれど、
254
霊
(
みたま
)
から
申
(
まを
)
せば
天地
(
てんち
)
の
相違
(
さうゐ
)
があるぞよ。
255
高姫
(
たかひめ
)
は
一番
(
いちばん
)
高
(
たか
)
い
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
であるなれど、
256
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
八衢
(
やちまた
)
の
霊
(
みたま
)
であるから、
257
到底
(
たうてい
)
、
258
一通
(
ひととお
)
りでは
側
(
そば
)
へも
寄
(
よ
)
りつけぬなれども、
259
肉体
(
にくたい
)
が
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても、
260
憐
(
あは
)
れみ
深
(
ぶか
)
い
結構
(
けつこう
)
な
人間
(
にんげん
)
ぢやによつて、
261
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
と
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
262
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
も
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
されよ。
263
杢助
(
もくすけ
)
の
子
(
こ
)
ぢやと
申
(
まを
)
して
慢心
(
まんしん
)
致
(
いた
)
すでないぞよ。
264
それについてはイル、
265
イク、
266
サール、
267
ハル、
268
テル
殿
(
どの
)
に
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
さすぞよ。
269
此
(
この
)
筆先
(
ふでさき
)
は
火
(
ひ
)
にも
焼
(
や
)
けず
水
(
みづ
)
にも
溺
(
おぼ
)
れぬ
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
であるから、
270
粗末
(
そまつ
)
に
致
(
いた
)
したら
目眩
(
めまひ
)
が
来
(
く
)
るぞよ。
271
珍彦
(
うづひこ
)
の
霊
(
みたま
)
も
静子
(
しづこ
)
の
霊
(
みたま
)
も
誠
(
まこと
)
に
因縁
(
いんねん
)
の
悪
(
わる
)
い
霊
(
みたま
)
であるぞよ。
272
其
(
その
)
中
(
なか
)
から
生
(
うま
)
れた
楓
(
かへで
)
は、
273
誠
(
まこと
)
に
了簡
(
れうけん
)
の
悪
(
わる
)
い
豆狸
(
まめだぬき
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
であるから、
274
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
に
神
(
かみ
)
が
国替
(
くにがへ
)
を
致
(
いた
)
さして、
275
神界
(
しんかい
)
でそれぞれの
御用
(
ごよう
)
を
仰
(
おほ
)
せつけるぞよ。
276
此
(
この
)
筆先
(
ふでさき
)
に
書
(
か
)
いた
事
(
こと
)
は
間違
(
まちがひ
)
はないぞよ。
277
初稚姫
(
はつわかひめ
)
も
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して
下
(
くだ
)
さらぬと、
278
何時
(
いつ
)
舟
(
ふね
)
が
覆
(
かへ
)
るか
分
(
わか
)
らぬぞよ。
279
可哀相
(
かあいさう
)
な
者
(
もの
)
なれど、
280
霊
(
みたま
)
で
御用
(
ごよう
)
さすより
仕様
(
しやう
)
がないぞよ。
281
虬
(
みづち
)
の
霊
(
みたま
)
であるから、
282
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
はばりてをりたなれど、
283
善悪
(
ぜんあく
)
の
立別
(
たてわ
)
かる
時節
(
じせつ
)
が
参
(
まゐ
)
りて、
284
高姫
(
たかひめ
)
が
此処
(
ここ
)
へ
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は、
285
到底
(
たうてい
)
叶
(
かな
)
はぬぞよ。
286
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
よ、
287
此
(
この
)
筆先
(
ふでさき
)
をよく
腹
(
はら
)
へ
締
(
し
)
め
込
(
こ
)
みておいて
下
(
くだ
)
されよ。
288
杢助殿
(
もくすけどの
)
と
高姫
(
たかひめ
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になりたと
申
(
まを
)
して、
289
チヨコチヨコとせせら
笑
(
わら
)
ひを
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るなれど、
290
人民
(
じんみん
)
の
知
(
し
)
りた
事
(
こと
)
でないぞよ。
291
神
(
かみ
)
は
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
気
(
き
)
を
引
(
ひ
)
くから、
292
取違
(
とりちがひ
)
を
致
(
いた
)
さぬやうに
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なされよ。
293
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
は
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
間違
(
まちが
)
ひはないぞよ。
294
高天原
(
たかあまはら
)
の
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
一番
(
いちばん
)
天上
(
てんじやう
)
の
身魂
(
みたま
)
であるぞよ。
295
又
(
また
)
杢助殿
(
もくすけどの
)
には
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
殿
(
どの
)
の
霊
(
みたま
)
が
授
(
さづ
)
けてあるぞよ。
296
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
は
摩利支
(
まりし
)
天
(
てん
)
の
霊
(
みたま
)
が
憑
(
かか
)
りて
居
(
を
)
りたなれど、
297
神界
(
しんかい
)
の
都合
(
つがふ
)
により、
298
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
命令
(
めいれい
)
により、
299
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
の
御用
(
ごよう
)
をさして、
300
常世姫
(
とこよひめ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
と、
301
末代
(
まつだい
)
の
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
させるから、
302
杢助殿
(
もくすけどの
)
が
何事
(
なにごと
)
を
致
(
いた
)
しても
申
(
まを
)
してもゴテゴテ
申
(
まを
)
すでないぞよ。
303
又
(
また
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
き
霊
(
みたま
)
なれども、
304
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
神力
(
しんりき
)
に、
305
トウトウ
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
して、
306
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
のスマートを
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
追
(
お
)
ひ
返
(
かへ
)
したのは、
307
まだしも
結構
(
けつこう
)
であるぞよ。
308
これからスマートを
一息
(
ひといき
)
でも、
309
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
大門
(
おほもん
)
へよこしてみよれ、
310
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
体
(
からだ
)
はビクとも
動
(
うご
)
かぬやうに
致
(
いた
)
してみせるぞよ。
311
杢助殿
(
もくすけどの
)
は
霊
(
みたま
)
が
水晶
(
すいしやう
)
であるから、
312
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
が
来
(
く
)
るのは
大変
(
たいへん
)
御
(
お
)
嫌
(
きら
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすぞよ。
313
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
を
連
(
つ
)
れて
参
(
まゐ
)
りたトガメに
依
(
よ
)
つて
神罰
(
しんばつ
)
を
蒙
(
かうむ
)
り、
314
命
(
いのち
)
がなくなる
所
(
ところ
)
でありたなれど、
315
神
(
かみ
)
の
慈悲
(
じひ
)
によりて、
316
杢助殿
(
もくすけどの
)
を
身代
(
みがは
)
りに
立
(
た
)
て、
317
チツと
許
(
ばか
)
り
疵
(
きず
)
を
致
(
いた
)
させ
許
(
ゆる
)
してやりたぞよ。
318
これをみて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
されよ。
319
神
(
かみ
)
の
御恩
(
ごおん
)
と
親
(
おや
)
の
御恩
(
ごおん
)
とが
分
(
わか
)
らぬやうな
事
(
こと
)
では、
320
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
側
(
そば
)
へは
寄
(
よ
)
りつけぬぞよ。
321
余
(
あま
)
り
慢心
(
まんしん
)
が
強
(
つよ
)
いので
親
(
おや
)
の
側
(
そば
)
へ
寄
(
よ
)
れぬぞよ。
322
其方
(
そなた
)
の
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
たなれば、
323
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
が
取持
(
とりもち
)
致
(
いた
)
して、
324
杢助殿
(
もくすけどの
)
に
会
(
あ
)
はしてやるぞよ。
325
早
(
はや
)
く
霊
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
いて
下
(
くだ
)
されよ、
326
神
(
かみ
)
が
前
(
まへ
)
つ
前
(
まへ
)
つに
気
(
き
)
をつけるぞよ。
327
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
に
間違
(
まちが
)
ひはないぞよ。
328
此
(
この
)
筆先
(
ふでさき
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
生神
(
いきがみ
)
が
高姫
(
たかひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
に
這入
(
はい
)
りて
書
(
か
)
いたのであるから、
329
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
其
(
その
)
儘
(
まま
)
であるから、
330
粗末
(
そまつ
)
には
致
(
いた
)
されぬぞよ。
331
もし
疑
(
うたが
)
ふなら、
332
火鉢
(
ひばち
)
にくべてみよれ、
333
焼
(
や
)
けは
致
(
いた
)
さぬぞよ。
334
それで
誠
(
まこと
)
の
生神
(
いきがみ
)
といふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
るぞよ。
335
ぢやと
申
(
まを
)
して、
336
汚
(
けが
)
れた
人民
(
じんみん
)
の
手
(
て
)
で、
337
いらうたら、
338
焼
(
や
)
けぬとも
限
(
かぎ
)
らぬから、
339
余程
(
よほど
)
大切
(
たいせつ
)
に
清
(
きよ
)
らかにして
下
(
くだ
)
されよ』
340
と
読
(
よ
)
み
了
(
をは
)
り、
341
イル
『ハツハハハ、
342
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
るワイ、
343
火
(
ひ
)
にも
焼
(
や
)
けぬ
水
(
みづ
)
にも
溺
(
おぼ
)
れぬと
仰有
(
おつしや
)
つた
筆先
(
ふでさき
)
が、
344
パツと
焼
(
や
)
けたのだからたまらぬワイ。
345
イヒヒヒヒ、
346
これでは
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
も、
347
サツパリ
駄目
(
だめ
)
だなア』
348
サール『それでも……
汚
(
けが
)
れた
人民
(
じんみん
)
が
触
(
さは
)
りたら、
349
焼
(
や
)
けるかも
知
(
し
)
れぬぞよ……と
書
(
か
)
いてあつたぢやないか』
350
イル
『ハハハ、
351
そこが
高姫
(
たかひめ
)
の
予防線
(
よばうせん
)
だ。
352
引掛戻
(
ひつかけもど
)
しの
所謂
(
いはゆる
)
仕組
(
しぐみ
)
をやつてゐよるのだ。
353
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
小気味
(
こぎみ
)
のよい
事
(
こと
)
だなア』
354
サールは、
355
いつの
間
(
ま
)
にやら
廊下
(
らうか
)
の
見張
(
みはり
)
を
忘
(
わす
)
れて、
356
イルの
前
(
まへ
)
に
頭
(
かしら
)
を
鳩
(
あつ
)
め
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
357
そこへ
高姫
(
たかひめ
)
が
筆先
(
ふでさき
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞付
(
ききつ
)
けて、
358
足音
(
あしおと
)
忍
(
しの
)
ばせ、
359
半分
(
はんぶん
)
余
(
あま
)
り
末
(
すゑ
)
の
方
(
はう
)
を
障子
(
しやうじ
)
の
外
(
そと
)
から
聞
(
き
)
き
終
(
をは
)
り、
360
高姫
『コレ、
361
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
、
362
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
うてゐたのだい』
363
この
声
(
こゑ
)
に、
364
イルは
驚
(
おどろ
)
いて
尻
(
しり
)
の
下
(
した
)
に
隠
(
かく
)
し、
365
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
坐
(
すわ
)
つてゐる。
366
高姫
『コレ、
367
此
(
この
)
障子
(
しやうじ
)
一寸
(
ちよつと
)
あけておくれ、
368
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つてゐたのだい。
369
お
筆先
(
ふでさき
)
を
拝読
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
つたのだらう。
370
そして
大変
(
たいへん
)
に
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまの
悪口
(
わるくち
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたぢやないか』
371
イルは
小声
(
こごゑ
)
で、
372
イル
『オイ、
373
サール、
374
貴様
(
きさま
)
番
(
ばん
)
をすると
吐
(
ぬか
)
しよつて、
375
こんな
所
(
ところ
)
へ
這入
(
はい
)
つてけつかるものだから、
376
これ
見
(
み
)
ろ、
377
とうと
見付
(
みつ
)
けられたでないか』
378
サール
『ウン、
379
マア
仕方
(
しかた
)
がないサ、
380
……ヤア
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
381
ようこそお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
されました。
382
サ、
383
お
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
384
と
突張
(
つつぱり
)
のかうてあつた
障子
(
しやうじ
)
をサツと
開
(
ひら
)
いた。
385
高姫
(
たかひめ
)
は
受付
(
うけつけ
)
の
間
(
ま
)
へヌツと
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
386
高姫
『コレ、
387
イルさま、
388
お
前
(
まへ
)
、
389
筆先
(
ふでさき
)
を
写
(
うつ
)
さぬと
云
(
い
)
つたぢないか。
390
今
(
いま
)
読
(
よ
)
んで
居
(
を
)
つたのは
何
(
なん
)
だいなア』
391
イル
『ハイ、
392
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が、
393
お
前
(
まへ
)
の
体内
(
たいない
)
にイルと
仰有
(
おつしや
)
いまして、
394
暫
(
しばら
)
くすると、
395
あんな
事
(
こと
)
を
私
(
わたし
)
の
口
(
くち
)
から
仰有
(
おつしや
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
396
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
で
厶
(
ござ
)
いましたよ。
397
そして
又
(
また
)
蟇
(
がま
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
私
(
わたし
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
這入
(
はい
)
り、
398
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
や
天上
(
てんじやう
)
様
(
さま
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しますので、
399
イヤもう
困
(
こま
)
りました。
400
何卒
(
どうぞ
)
一
(
ひと
)
つ
鎮魂
(
ちんこん
)
をして
下
(
くだ
)
さいな』
401
高姫
『
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
さまなどと、
402
悪神
(
あくがみ
)
がお
前
(
まへ
)
を
騙
(
だま
)
して
真似
(
まね
)
を
致
(
いた
)
すのだらう。
403
それだからシツカリ
致
(
いた
)
さぬと
悪魔
(
あくま
)
に
狙
(
ねら
)
はれると、
404
何時
(
いつ
)
も
申
(
まを
)
してあらうがな。
405
エーエ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だ、
406
サ、
407
そこを
一寸
(
ちよつと
)
お
立
(
た
)
ちなされ。
408
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が
鎮魂
(
ちんこん
)
をして
上
(
あ
)
げるから……』
409
イル
『イー、
410
ウーン、
411
一寸
(
ちよつと
)
ここは
退
(
の
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ、
412
尻
(
しり
)
に
白根
(
しらね
)
が
下
(
お
)
りましたので、
413
痺
(
しびれ
)
が
切
(
き
)
れて
何
(
ど
)
うする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
414
何卒
(
どうぞ
)
又
(
また
)
後
(
あと
)
から
鎮魂
(
ちんこん
)
して
下
(
くだ
)
さいな。
415
ああ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
416
あの
外
(
そと
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさいませ、
417
大
(
おほ
)
きな
鷲
(
わし
)
が
子供
(
こども
)
をくはへて、
418
それそれ
通
(
とほ
)
ります』
419
と
高姫
(
たかひめ
)
の
視線
(
しせん
)
を
外
(
そと
)
へ
向
(
む
)
け、
420
手早
(
てばや
)
く
尻
(
しり
)
に
敷
(
し
)
いた
写
(
うつ
)
しの
筆先
(
ふでさき
)
を
懐
(
ふところ
)
へ
捻
(
ね
)
ぢ
込
(
こ
)
み、
421
席
(
せき
)
を
替
(
か
)
へようとした。
422
されど
余
(
あま
)
り
慌
(
あわ
)
てて、
423
二冊
(
にさつ
)
は
甘
(
うま
)
く
懐
(
ふところ
)
へ
這入
(
はい
)
つたが、
424
まだ
一冊
(
いつさつ
)
尻
(
しり
)
の
下
(
した
)
に
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
425
高姫
『コレ、
426
イル、
427
そんな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
して、
428
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
を
外
(
そと
)
を
向
(
む
)
かせておき、
429
其
(
その
)
間
(
ま
)
に
何
(
なん
)
だか
懐
(
ふところ
)
へ
隠
(
かく
)
したぢやらう、
430
サ、
431
其
(
その
)
懐
(
ふところ
)
を
見
(
み
)
せて
御覧
(
ごらん
)
』
432
イル
『ヘー、
433
此
(
こ
)
の
懐
(
ふところ
)
は
私
(
わたし
)
の
懐
(
ふところ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
434
何程
(
なにほど
)
一軒
(
いつけん
)
の
内
(
うち
)
に
住居
(
ぢゆうきよ
)
して
居
(
を
)
つても、
435
懐
(
ふところ
)
は
別
(
べつ
)
ですからな。
436
珍彦
(
うづひこ
)
様
(
さま
)
が
会計
(
くわいけい
)
して
下
(
くだ
)
さるので、
437
私
(
わたし
)
の
懐
(
ふところ
)
まで
御
(
ご
)
詮議
(
せんぎ
)
は
要
(
い
)
りますまい』
438
高姫
『
一寸
(
ちよつと
)
、
439
お
前
(
まへ
)
さま、
440
妙
(
めう
)
なものが
憑
(
うつ
)
つてゐるから、
441
鎮魂
(
ちんこん
)
して
上
(
あ
)
げよう。
442
私
(
わたし
)
が
坐
(
すわ
)
らにやならぬから、
443
一寸
(
ちよつと
)
退
(
の
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
444
お
前
(
まへ
)
さまが
一番
(
いちばん
)
正座
(
しやうざ
)
へ
坐
(
すわ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
道
(
みち
)
が
違
(
ちが
)
ひますぞや』
445
イル
『ハイ、
446
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
447
ああ
杢助
(
もくすけ
)
さまが
門
(
かど
)
を
通
(
とほ
)
らつしやるわいな』
448
と
云
(
い
)
ひながら、
449
尻
(
しり
)
の
下
(
した
)
の
残
(
のこ
)
りの
筆先
(
ふでさき
)
をグツと
取
(
と
)
り、
450
懐
(
ふところ
)
へ
入
(
い
)
れようとした。
451
高姫
(
たかひめ
)
は
今度
(
こんど
)
は
其
(
その
)
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
らず、
452
イルの
態度
(
たいど
)
を
熟視
(
じゆくし
)
して
居
(
を
)
つたから、
453
たまらぬ。
454
矢庭
(
やには
)
にイルの
懐
(
ふところ
)
へ
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れ、
455
三冊
(
さんさつ
)
の
写
(
うつ
)
しの
筆先
(
ふでさき
)
を
掴
(
つか
)
み
出
(
だ
)
し、
456
キリキリと
丸
(
まる
)
めて、
457
イルの
鼻
(
はな
)
といはず、
458
目
(
め
)
と
云
(
い
)
はず、
459
滅多打
(
めつたうち
)
に
打据
(
うちす
)
ゑ、
460
高姫
『オホホホホ、
461
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みの
現
(
あら
)
はれ
口
(
ぐち
)
、
462
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
には
叶
(
かな
)
ひますまいがな。
463
頓
(
やが
)
て
沙汰
(
さた
)
を
致
(
いた
)
すから、
464
其処
(
そこ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るがよからうぞ。
465
イク、
466
ハル、
467
テル、
468
サールも
同類
(
どうるゐ
)
だ。
469
今
(
いま
)
に
杢助
(
もくすけ
)
さまと
相談
(
さうだん
)
して、
470
沙汰
(
さた
)
を
致
(
いた
)
すから
待
(
ま
)
つてゐなさい』
471
と
憎々
(
にくにく
)
しげに
睨
(
にら
)
みつけ、
472
懐
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢ
込
(
こ
)
んで、
473
サツサと
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
474
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つて
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き、
475
冷汗
(
ひやあせ
)
を
拭
(
ふ
)
きながら、
476
五人(イル、イク、ハル、テル、サール)
『あああ、
477
サーツパリ
源助
(
げんすけ
)
だ、
478
ウンウン、
479
イヒヒヒヒ』
480
(
大正一二・一・二三
旧一一・一二・七
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
偽筆 >>>
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