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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
余白歌
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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第50巻(丑の巻)
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<<< 安国使
(B)
(N)
悪魔払 >>>
第一九章
逆語
(
ぎやくご
)
〔一三一三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
篇:
第4篇 神犬の言霊
よみ(新仮名遣い):
しんけんのことたま
章:
第19章 逆語
よみ(新仮名遣い):
ぎゃくご
通し章番号:
1313
口述日:
1923(大正12)年01月23日(旧12月7日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月7日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ハルは、通りすがりの者が受付に立ち寄ったのだととぼけたが、杢助と高姫は、斎苑の館から使いがやってきたことを感知していた。
杢助と高姫は、イルやハルたちが斎苑の館に手紙をやって、自分たちを放逐しようと役員を呼んだのだろうと気を回し、首謀者を白状させようとハルを手荒に責め立てた。
妖幻坊の杢助が拳骨を固めてハルを打ち据えようとしたとき、スマートの吠え声が聞こえてきた。妖幻坊は体がすくみ、青ざめて自分の居間に逃げ帰り、布団をかぶって震えている。高姫は自分もふるえながら、ハルの尋問を続けた。
ハルは、大方高姫たちに立ち退き命令を告げに来たのだろう、とやけになって答える。高姫は怒り、珍彦に直接談判すると言って珍彦館に向かおうとした。そこにイルとサールに案内された安彦と国彦が入ってきた。
イルは入ってくるなり、早く高姫に立ち退き命令を告げてくれと安彦と国彦に頼みこみ、高姫を嘲笑した。安彦と国彦は高姫に挨拶をし、来訪の目的は珍彦に伝えてあるから、やがて高姫たちに沙汰があるだろうと伝えた。
高姫は安彦と国彦を昔の名前で呼んで馬鹿にし、挑発する始末であった。安彦は、高姫は放っておいて隣の間で唸っている妖幻坊の様子を見ようとした。高姫の制止を聞かずに、イルと安彦は杢助の居間のふすまを開けた。
妖幻坊は樫の棒を振り上げ、安彦の頭を叩き割ろうとしたが、床下から聞こえてきたスマートの吠え声にたちまち手がしびれ、一目散に裏の森林指して逃げてしまった。高姫が居間に入ってみれば、そこはもぬけの殻だった。
妖幻坊がどこかに行ってしまったので、高姫は大声で自説を怒鳴りたて、安彦と国彦を煙に巻いてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-07-27 15:15:20
OBC :
rm5019
愛善世界社版:
264頁
八幡書店版:
第9輯 247頁
修補版:
校定版:
270頁
普及版:
133頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
には
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
、
002
高姫
(
たかひめ
)
両人
(
りやうにん
)
、
003
六ケ
(
むつか
)
しい
顔
(
かほ
)
をして
上座
(
じやうざ
)
に
坐
(
すわ
)
り、
004
ハルをつかまへて
油
(
あぶら
)
をとつてゐる。
005
妖幻
(
えうげん
)
(妖幻坊の杢助)
『オイ、
006
ハル、
007
今
(
いま
)
表口
(
おもてぐち
)
に
参
(
まゐ
)
つて
何
(
なに
)
かゴテゴテ
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
つたのは
何者
(
なにもの
)
だなア』
008
ハル
『ハイ、
009
何
(
なん
)
でも
厶
(
ござ
)
いませぬ。
010
只
(
ただ
)
道通
(
みちどほり
)
が
一寸
(
ちよつと
)
受付
(
うけつけ
)
へ
立寄
(
たちよ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います』
011
妖幻坊の杢助
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ。
012
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
吾々
(
われわれ
)
に
隠
(
かく
)
し
立
(
だ
)
てをするのだなア。
013
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
から
直使
(
ちよくし
)
が
来
(
き
)
たのであらうがな』
014
ハル
『ハイ、
015
エエ、
016
それは、
017
みえました。
018
併
(
しか
)
しながら
決
(
けつ
)
して
吾々
(
われわれ
)
に
対
(
たい
)
して、
019
御用
(
ごよう
)
もなければ
何
(
なん
)
とも
仰
(
おほ
)
せられませぬ』
020
妖幻坊の杢助
『
珍彦館
(
うづひこやかた
)
へ
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
案内
(
あんない
)
をしたであらうがなア。
021
様子
(
やうす
)
は
大抵
(
たいてい
)
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るだらう』
022
ハル
『ヘーエ、
023
イルに……イン、
024
承
(
うけたま
)
はりますれば、
025
此
(
この
)
館
(
やかた
)
の
総取締
(
そうとりしまり
)
にイルを
致
(
いた
)
す………とか
云
(
い
)
ふお
使
(
つかひ
)
ださうで
厶
(
ござ
)
います』
026
妖幻坊の杢助
『
高姫
(
たかひめ
)
や
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
を
放逐
(
はうちく
)
すると
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
らうがな』
027
ハル
『エー、
028
そんなこた、
029
一寸
(
ちよつと
)
も
存
(
ぞん
)
じませぬ。
030
併
(
しか
)
しながら
朝晩
(
あさばん
)
の
御
(
お
)
給仕
(
きふじ
)
もせず、
031
酒
(
さけ
)
ばかり
呑
(
の
)
んでる
人物
(
じんぶつ
)
に
対
(
たい
)
しては、
032
どういう
御
(
ご
)
沙汰
(
さた
)
が
下
(
さが
)
つたやら
分
(
わか
)
りませぬな。
033
直接
(
ちよくせつ
)
私
(
わたし
)
は
何
(
なん
)
にも
聞
(
き
)
かないものですから、
034
かう
申
(
まを
)
したと
云
(
い
)
つて、
035
決
(
けつ
)
して
之
(
これ
)
が
事実
(
じじつ
)
だか
事実
(
じじつ
)
でないか、
036
保証
(
ほしよう
)
の
限
(
かぎ
)
りで
厶
(
ござ
)
いませぬ。
037
併
(
しか
)
し
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
空気
(
くうき
)
が
漂
(
ただよ
)
うてゐますで。
038
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
杢助
(
もくすけ
)
さまともあらうものが、
039
スマート
如
(
ごと
)
きが
怖
(
こは
)
いと
仰有
(
おつしや
)
るものだから、
040
ヘヘヘヘヘ、
041
皆
(
みな
)
の
連中
(
れんちう
)
がチヨコチヨコと
噂
(
うはさ
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
042
それより
外
(
ほか
)
は
何
(
なに
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
043
これは
一文
(
いちもん
)
生中
(
きなか
)
の
掛値
(
かけね
)
もない、
044
ハルの
真心
(
まごころ
)
を
吐露
(
とろ
)
したので
厶
(
ござ
)
いますから、
045
此
(
この
)
上
(
うへ
)
の
秘密
(
ひみつ
)
は
何
(
なに
)
も
存
(
ぞん
)
じませぬ』
046
妖幻坊の杢助
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ。
047
まだ
外
(
ほか
)
に
何
(
なに
)
か
秘密
(
ひみつ
)
があるだらう。
048
今
(
いま
)
の
言葉
(
ことば
)
から
考
(
かんが
)
へてみれば、
049
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
は
申合
(
まをしあは
)
せ、
050
此
(
この
)
方
(
はう
)
や
高姫
(
たかひめ
)
の
悪口
(
あくこう
)
を
申
(
まを
)
して、
051
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
手紙
(
てがみ
)
をやつたのであらうがなア。
052
それでなければ
直使
(
ちよくし
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
がないぢやないか。
053
なに
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだ、
054
ヤツパリ
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いとみえるな。
055
コリヤ
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さぬか』
056
とハルの
襟首
(
えりくび
)
をグツと
取
(
と
)
り、
057
剛力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
せて、
058
座敷
(
ざしき
)
の
中央
(
まんなか
)
に
突
(
つ
)
き
倒
(
たふ
)
し、
059
一方
(
いつぱう
)
の
手
(
て
)
でグツと
押
(
おさ
)
へ、
060
一方
(
いつぱう
)
の
荒
(
あら
)
い
毛
(
け
)
だらけの
手
(
て
)
に
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて
振上
(
ふりあ
)
げながら、
061
妖幻坊の杢助
『コリヤ、
062
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せばよし、
063
隠
(
かく
)
し
立
(
だ
)
てを
致
(
いた
)
すと、
064
此
(
この
)
鉄拳
(
てつけん
)
が
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
眉間
(
みけん
)
へ
触
(
さは
)
るや
否
(
いな
)
や、
065
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
脳天
(
なうてん
)
は
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
になるが、
066
それでも
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さぬか』
067
ハル
『イイ
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い、
068
アア
誰
(
たれ
)
か
来
(
き
)
てくれぬかいな、
069
お
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
070
早
(
はや
)
く、
071
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さるといいにな、
072
イイ
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い』
073
妖幻坊の杢助
『サ、
074
痛
(
いた
)
くば
早
(
はや
)
く
申
(
まを
)
せ。
075
白状
(
はくじやう
)
さへすれば
許
(
ゆる
)
してやらう』
076
ハル
『ハハ
白状
(
はくじやう
)
せと
云
(
い
)
つたつて、
077
種
(
たね
)
のない
事
(
こと
)
が
白状
(
はくじやう
)
出来
(
でき
)
ますか』
078
高姫
(
たかひめ
)
『コレ、
079
ハルさま、
080
お
前
(
まへ
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
中
(
なか
)
でも
一番
(
いちばん
)
利巧
(
りかう
)
な
男
(
をとこ
)
だ。
081
それだから
私
(
わたし
)
がお
前
(
まへ
)
をイルの
野郎
(
やらう
)
の
代
(
かは
)
りに
受付頭
(
うけつけがしら
)
にして
上
(
あ
)
げたぢやないか。
082
これ
程
(
ほど
)
私
(
わたし
)
がお
前
(
まへ
)
をヒイキにして
居
(
ゐ
)
るのに、
083
なぜ
隠
(
かく
)
し
立
(
だ
)
てをなさるのだい。
084
サ、
085
早
(
はや
)
く
言
(
い
)
つてみなさい。
086
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
さまの
為
(
ため
)
に
悪
(
わる
)
いやうにはせないからな』
087
ハル
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
088
そんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
、
089
あなた
迄
(
まで
)
が
言
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
つちや、
090
此
(
この
)
ハルが
何
(
ど
)
うして
立
(
た
)
ちますか。
091
よい
加減
(
かげん
)
に
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らして
下
(
くだ
)
さいな』
092
妖幻
(
えうげん
)
(妖幻坊の杢助)
『
此奴
(
こいつ
)
は
何処
(
どこ
)
までもドシぶとい、
093
まてツ、
094
今
(
いま
)
に
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
らしてやらう、
095
サどうぢや』
096
と
又
(
また
)
もや
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて、
097
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
打下
(
うちおろ
)
さうとする
一刹那
(
いつせつな
)
『ウーウー、
098
ワツウ ワツウ ワツウ』とスマートの
声
(
こゑ
)
、
099
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
体
(
からだ
)
がすくみ、
100
色
(
いろ
)
青
(
あを
)
ざめ、
101
其
(
その
)
儘
(
まま
)
ツイと
立
(
た
)
つて
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り、
102
蒲団
(
ふとん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
慄
(
ふる
)
うてゐる。
103
スマートの
声
(
こゑ
)
は
益々
(
ますます
)
烈
(
はげ
)
しくなつて
来
(
き
)
た。
104
高姫
(
たかひめ
)
は
少々
(
せうせう
)
慄
(
ふる
)
ひながら、
105
高姫
『コレ、
106
ハルさま、
107
お
前
(
まへ
)
はいい
子
(
こ
)
だ。
108
本当
(
ほんたう
)
に
様子
(
やうす
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらう。
109
サ、
110
チヤツと
言
(
い
)
うてくれ、
111
其
(
その
)
代
(
かは
)
り、
112
お
前
(
まへ
)
をここの
神司
(
かむづかさ
)
にして
上
(
あ
)
げるからなア』
113
ハル
『ハイ、
114
お
前
(
まへ
)
さま、
115
用心
(
ようじん
)
しなされ。
116
どうやら
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
が
来
(
き
)
たやうな
按配
(
あんばい
)
ですよ』
117
高姫
『ナアニ、
118
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
が、
119
そりや
誰
(
たれ
)
に、
120
大方
(
おほかた
)
珍彦
(
うづひこ
)
にだらう』
121
ハル
『
冗談
(
じようだん
)
云
(
い
)
つちやいけませぬよ。
122
珍彦
(
うづひこ
)
さまはここの
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
です。
123
お
前
(
まへ
)
さまは
勝手
(
かつて
)
に
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
だとか
云
(
い
)
つて
坐
(
すわ
)
り
込
(
こ
)
み、
124
自分
(
じぶん
)
免許
(
めんきよ
)
で
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
威張
(
ゐば
)
つてゐるのでせう。
125
それだからお
前
(
まへ
)
さまに
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
が
来
(
く
)
るのは
当然
(
あたりまへ
)
ですワ』
126
高姫
『エーエ、
127
まさかの
時
(
とき
)
になつて、
128
杢助
(
もくすけ
)
さまも
杢助
(
もくすけ
)
さまだ。
129
スマート
位
(
くらゐ
)
な
畜生
(
ちくしやう
)
が、
130
何程
(
なにほど
)
厭
(
いや
)
だと
云
(
い
)
つても、
131
こんな
正念場
(
しやうねんば
)
になつてから、
132
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
這入
(
はい
)
つて
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
ふといふ
事
(
こと
)
があるものかいなア』
133
ハル
『ヘン、
134
誠
(
まこと
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
様
(
さま
)
、
135
すんまへんな。
136
何
(
いづ
)
れ、
137
悪
(
あく
)
は
永
(
なが
)
うは
続
(
つづ
)
きませぬぞや』
138
高姫
『エーエ、
139
お
前
(
まへ
)
迄
(
まで
)
が、
140
しよう
もない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやないか。
141
サ、
142
とつとと
出
(
で
)
ていつて
下
(
くだ
)
さい。
143
この
館
(
やかた
)
は
仮令
(
たとへ
)
直使
(
ちよくし
)
が
来
(
こ
)
うが
何
(
なに
)
が
来
(
こ
)
うが、
144
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
守護
(
しゆご
)
して
居
(
を
)
れば、
145
誰一人
(
たれひとり
)
居
(
を
)
らいでもよいのだから、
146
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
放
(
ほ
)
イ
出
(
だ
)
して
こまそ
。
147
グヅグヅしてると
先方
(
むかふ
)
の
方
(
はう
)
から
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
なんて
吐
(
ぬか
)
しやがるから、
148
先
(
さき
)
んずれば
人
(
ひと
)
を
制
(
せい
)
すだから
此方
(
こつち
)
の
方
(
はう
)
から
立退
(
たちの
)
かしてくれるツ』
149
と
珍彦館
(
うづひこやかた
)
をさして
行
(
ゆ
)
かむと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
る。
150
そこへ
安彦
(
やすひこ
)
、
151
国彦
(
くにひこ
)
はイル、
152
サールに
案内
(
あんない
)
され、
153
襖
(
ふすま
)
をサツと
開
(
ひら
)
いて
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
154
イル『エ、
155
もし
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
156
ここが
所謂
(
いはゆる
)
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
居間
(
ゐま
)
で
厶
(
ござ
)
います。
157
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
を
申
(
まを
)
し
渡
(
わた
)
して
下
(
くだ
)
さい。
158
コリヤ
高姫
(
たかひめ
)
、
159
ザマア
見
(
み
)
やがれ、
160
イヒヒヒヒ、
161
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
てお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
千万
(
せんばん
)
なれど、
162
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
りだと
思
(
おも
)
うて、
163
諦
(
あきら
)
めて
帰
(
い
)
んだがよいぞや。
164
油揚
(
あぶらげ
)
の
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
も
餞別
(
せんべつ
)
にやりたいけれど、
165
生憎
(
あひにく
)
今日
(
けふ
)
は
油揚
(
あぶらげ
)
も
小豆
(
あづき
)
もないワ。
166
サツパリ、
167
コーンと
諦
(
あきら
)
めて、
168
ササ、
169
帰
(
かへ
)
つたり
帰
(
かへ
)
つたり』
170
高姫
『エー
喧
(
やかま
)
しい、
171
スツ
込
(
こ
)
んでゐなさい。
172
ここは
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
神界
(
しんかい
)
から
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
す
大門
(
おほもん
)
ぢやぞえ。
173
そして
直使
(
ちよくし
)
といふのは
誰
(
たれ
)
だなア』
174
安彦
(
やすひこ
)
『ヤア
高姫
(
たかひめ
)
殿
(
どの
)
、
175
久
(
ひさ
)
しう
厶
(
ござ
)
る』
176
国彦
『
拙者
(
せつしや
)
は
国彦
(
くにひこ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
177
此
(
この
)
度
(
たび
)
、
178
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
より
一寸
(
ちよつと
)
様子
(
やうす
)
あつて
参拝
(
さんぱい
)
致
(
いた
)
した
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
る。
179
境内
(
けいだい
)
の
様子
(
やうす
)
を
見
(
み
)
む
為
(
ため
)
、
180
此処
(
ここ
)
まで
調査
(
てうさ
)
に
来
(
き
)
たのですよ。
181
そして
直使
(
ちよくし
)
の
趣
(
おもむき
)
は
珍彦
(
うづひこ
)
に
申渡
(
まをしわた
)
しあれば、
182
やがて
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
対
(
たい
)
し、
183
何
(
なん
)
とか
沙汰
(
さた
)
があるであらう』
184
高姫
『ヘン、
185
阿呆
(
あはう
)
らしい、
186
人民
(
じんみん
)
の
命令
(
めいれい
)
位
(
くらゐ
)
、
187
聞
(
き
)
くやうな
生神
(
いきがみ
)
ぢやありませぬぞや。
188
勿体
(
もつたい
)
なくも
高天原
(
たかあまはら
)
の
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
、
189
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぢやぞえ。
190
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
は
常世姫
(
とこよひめの
)
命
(
みこと
)
の
再来
(
さいらい
)
で、
191
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御
(
ご
)
系統
(
ひつぱう
)
だ。
192
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てござる。
193
……ヤアお
前
(
まへ
)
は
北山村
(
きたやまむら
)
の
本山
(
ほんざん
)
へやつて
来
(
き
)
て、
194
トロロの
丼鉢
(
どんぶりばち
)
を
座敷中
(
ざしきちう
)
にブツつけた、
195
国公
(
くにこう
)
ぢやないか。
196
そしてお
前
(
まへ
)
は
安
(
やす
)
だらう。
197
ヘン、
198
阿呆
(
あはう
)
らしい、
199
直使
(
ちよくし
)
なんて、
200
笑
(
わら
)
はせやがるワイ、
201
イツヒヒヒヒ、
202
大
(
おほ
)
きに
憚
(
はばか
)
りさま。
203
これなつと、
204
お
喰
(
くら
)
へ』
205
と
焼糞
(
やけくそ
)
になつて、
206
大
(
おほ
)
きなだん
尻
(
じり
)
を
引
(
ひ
)
きまくり、
207
ポンポンと
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
叩
(
たた
)
き、
208
体
(
からだ
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つゆすり、
209
腮
(
あご
)
をしやくり、
210
舌
(
した
)
をニユツと
出
(
だ
)
し、
211
両手
(
りやうて
)
を
鳶
(
とび
)
が
羽
(
は
)
ばたきしたやうにしてみせた。
212
安彦
(
やすひこ
)
『
仮令
(
たとへ
)
、
213
拙者
(
せつしや
)
は
神力
(
しんりき
)
足
(
た
)
らぬ
者
(
もの
)
にもせよ、
214
天晴
(
あつぱれ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
215
今日
(
こんにち
)
は
又
(
また
)
八島主
(
やしまぬしの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
より
直使
(
ちよくし
)
として
参
(
まゐ
)
つた
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
る。
216
粗略
(
そりやく
)
な
扱
(
あつかひ
)
をなさると、
217
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げますぞ』
218
高姫
『ヘン、
219
仰有
(
おつしや
)
いますわい。
220
八島主
(
やしまぬし
)
の
教主
(
けうしゆ
)
が
何
(
なん
)
だ。
221
青
(
あを
)
い
青
(
あを
)
い
痩
(
や
)
せた
顔
(
かほ
)
しやがつて、
222
まるで
肺病
(
はいびやう
)
の
親方
(
おやかた
)
みたやうな
面
(
つら
)
をして、
223
此
(
この
)
方
(
はう
)
に
立退
(
たちの
)
き
命令
(
めいれい
)
、
224
ヘン、
225
尻
(
けつ
)
が
呆
(
あき
)
れて
雪隠
(
せつちん
)
が
躍
(
をど
)
りますワイ。
226
お
茶
(
ちや
)
の
一杯
(
いつぱい
)
も
上
(
あ
)
げたいは
山々
(
やまやま
)
なれど、
227
左様
(
さやう
)
な
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつこ
)
さまには、
228
番茶
(
ばんちや
)
一
(
ひと
)
つ
汲
(
く
)
む
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬワ。
229
サア、
230
トツトとお
帰
(
かへ
)
りなさい。
231
高姫
(
たかひめ
)
は
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても、
232
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
の
総務
(
そうむ
)
杢助
(
もくすけ
)
の
妻
(
つま
)
で
厶
(
ござ
)
るぞや。
233
何程
(
なにほど
)
安
(
やす
)
や
国
(
くに
)
が
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
云
(
い
)
つても、
234
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
杢助
(
もくすけ
)
の
家来
(
けらい
)
ぢやないか。
235
今
(
いま
)
こそ
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
は
様子
(
やうす
)
あつて
役
(
やく
)
を
引
(
ひ
)
いて
厶
(
ござ
)
るが、
236
ヤツパリ
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
は
三五教
(
あななひけう
)
切
(
き
)
つての
偉者
(
えらもの
)
だ。
237
どうだ
両人
(
りやうにん
)
、
238
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
し、
239
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
部下
(
ぶか
)
となつて、
240
此処
(
ここ
)
で
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
す
気
(
き
)
はないかな』
241
国彦
(
くにひこ
)
『
安彦
(
やすひこ
)
殿
(
どの
)
、
242
困
(
こま
)
つた
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
るな。
243
論
(
ろん
)
にも
杭
(
くひ
)
にもかからぬでは
厶
(
ござ
)
らぬか』
244
高姫
『コリヤ
与太
(
よた
)
、
245
ソリヤ
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
246
勿体
(
もつたい
)
なくも
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
目下
(
めした
)
に
見下
(
みおろ
)
し、
247
直使面
(
ちよくしづら
)
をさげて、
248
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
249
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだい。
250
弥次彦
(
やじひこ
)
、
251
与太彦
(
よたひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
奴
(
め
)
、
252
又
(
また
)
一途
(
いちづ
)
の
川
(
かは
)
の
出刃
(
でば
)
庖丁
(
ばうちやう
)
を、
253
土手
(
どて
)
つ
腹
(
ぱら
)
へつつ
込
(
こ
)
んでやらうかな。
254
あの
時
(
とき
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
と
二人
(
ふたり
)
だつたが、
255
モウ、
256
今日
(
こんにち
)
は
神力
(
しんりき
)
無双
(
むさう
)
の
勇士
(
ゆうし
)
、
257
杢助
(
もくすけ
)
さまの
女房
(
にようばう
)
ぢやぞ。
258
何
(
なん
)
だ、
259
糊
(
のり
)
つけもののやうに、
260
しやちこ
張
(
ば
)
つて、
261
其
(
その
)
面
(
つら
)
は、
262
マアそこに
坐
(
すわ
)
つたが
宜
(
よ
)
からう』
263
隣
(
となり
)
の
間
(
ま
)
にウンウンと
唸
(
うな
)
る
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
声
(
こゑ
)
、
264
耳
(
みみ
)
をさす
如
(
ごと
)
くに
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
265
イル『モシお
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
266
こんな
気違
(
きちが
)
ひは
後
(
あと
)
まはしと
致
(
いた
)
しまして、
267
杢助
(
もくすけ
)
の
居間
(
ゐま
)
を
取調
(
とりしら
)
べませう、
268
何
(
なん
)
だか
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうですよ』
269
安彦
(
やすひこ
)
『ヤ、
270
国彦
(
くにひこ
)
殿
(
どの
)
、
271
エー、
272
サール
殿
(
どの
)
とハル
殿
(
どの
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
273
此
(
この
)
発狂者
(
はつきやうしや
)
を
監督
(
かんとく
)
してゐて
下
(
くだ
)
さい。
274
拙者
(
せつしや
)
は
杢助
(
もくすけ
)
と
称
(
しよう
)
する
人物
(
じんぶつ
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
見届
(
みとど
)
けて
参
(
まゐ
)
りますから』
275
と
行
(
ゆ
)
かうとする。
276
高姫
(
たかひめ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
277
高姫
『コリヤコリヤ
安
(
やす
)
、
278
イヤ
弥次彦
(
やじひこ
)
、
279
イル、
280
メツタに
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまの
許
(
ゆる
)
しもなしに、
281
行
(
ゆ
)
くことはならぬぞや。
282
さやうな
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すと、
283
忽
(
たちま
)
ち
手足
(
てあし
)
も
動
(
うご
)
かぬやうに
致
(
いた
)
すから、
284
それでもよけら、
285
行
(
い
)
つたが
宜
(
よ
)
からう』
286
イル『モシ
直使
(
ちよくし
)
様
(
さま
)
、
287
行
(
ゆ
)
きませう。
288
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
は
何時
(
いつ
)
もあんなこと
言
(
い
)
つて
嚇
(
おど
)
しが
上手
(
じやうづ
)
ですからなア』
289
安彦
(
やすひこ
)
『なる
程
(
ほど
)
、
290
参
(
まゐ
)
りませう』
291
と
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
の
杢助
(
もくすけ
)
の
居間
(
ゐま
)
をパツとあけた。
292
杢助
(
もくすけ
)
は
樫
(
かし
)
の
棒
(
ぼう
)
を
頭上
(
づじやう
)
高
(
たか
)
くふりかざし、
293
力
(
ちから
)
をこめてウンと
一打
(
ひとうち
)
、
294
今
(
いま
)
や
安彦
(
やすひこ
)
の
頭
(
あたま
)
は
二
(
ふた
)
つに
割
(
わ
)
れたと
思
(
おも
)
ふ
一刹那
(
いつせつな
)
、
295
床下
(
ゆかした
)
より
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
るスマートの
声
(
こゑ
)
、
296
スマート
『ウーツ、
297
ワアウ ワアウ ワアウ』
298
杢助
(
もくすけ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
手
(
て
)
痺
(
しび
)
れ、
299
棍棒
(
こんぼう
)
をふり
上
(
あ
)
げた
儘
(
まま
)
、
300
一目散
(
いちもくさん
)
に
裏
(
うら
)
の
森林
(
しんりん
)
指
(
さ
)
して、
301
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
302
高姫
(
たかひめ
)
は
矢庭
(
やには
)
に
杢助
(
もくすけ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
入
(
はい
)
つて
見
(
み
)
れば
藻抜
(
もぬ
)
けの
殻
(
から
)
。
303
高姫
『コレ
杢助
(
もくすけ
)
さま、
304
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたのだい。
305
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にも
程
(
ほど
)
があるぢやないか、
306
サ
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
307
エーエ、
308
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
人
(
ひと
)
だらう、
309
本当
(
ほんたう
)
に
優
(
やさ
)
しい
人
(
ひと
)
は、
310
こんな
時
(
とき
)
になると
仕方
(
しかた
)
がないワ。
311
併
(
しか
)
し
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
三五教
(
あななひけう
)
だから、
312
相手
(
あひて
)
になつてはならない。
313
こんな
奴
(
やつ
)
に
掛
(
かか
)
り
合
(
あ
)
うて
居
(
を
)
つたら、
314
カツタイと
棒打
(
ぼうう
)
ちするやうなものだと
思
(
おも
)
つて、
315
逃
(
に
)
げなさつたのかな。
316
兵法
(
へいはふ
)
三十六
(
さんじふろく
)
計
(
けい
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
は、
317
逃
(
に
)
げるが
一番
(
いちばん
)
ぢやといふ
事
(
こと
)
だ。
318
ヤツパリ
杢助
(
もくすけ
)
さまは、
319
どこともなしに
賢明
(
けんめい
)
な
方
(
かた
)
だなア。
320
到底
(
たうてい
)
ここらに
居
(
を
)
るガラクタには
比
(
くら
)
べものにはなりませぬワイ。
321
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
も
杢助
(
もくすけ
)
さまには
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
したぞや。
322
コレ
弥次彦
(
やじひこ
)
、
323
与太彦
(
よたひこ
)
、
324
どうだい。
325
感心
(
かんしん
)
したかい。
326
チツトお
筆先
(
ふでさき
)
を
頂
(
いただ
)
いたらどうだい。
327
結構
(
けつこう
)
なお
筆先
(
ふでさき
)
が
出
(
で
)
てるぞや。
328
此
(
この
)
イルも
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
る
通
(
とほ
)
り、
329
一字
(
いちじ
)
々々
(
いちじ
)
文字
(
もじ
)
が
動
(
うご
)
くのだから、
330
そして
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はして
竜
(
りう
)
となり、
331
天上
(
てんじやう
)
をするといふ
生
(
い
)
きたお
筆先
(
ふでさき
)
ぢやぞえ。
332
どうだ、
333
折角
(
せつかく
)
此処
(
ここ
)
まで
来
(
き
)
たのだから、
334
頂
(
いただ
)
いて
帰
(
かへ
)
る
気
(
き
)
はないか。
335
頂
(
いただ
)
くというても
筆先
(
ふでさき
)
は
直筆
(
ぢきひつ
)
でも
写
(
うつ
)
しでもやりませぬぞや。
336
お
前
(
まへ
)
の
耳
(
みみ
)
の
中
(
なか
)
へ
容
(
い
)
れて
帰
(
かへ
)
ればいいのだから……』
337
安彦
(
やすひこ
)
『ああ
困
(
こま
)
つたものだなア、
338
上
(
あ
)
げも
下
(
おろ
)
しもならぬ
奴
(
やつ
)
だ。
339
阿呆
(
あはう
)
と
気違
(
きちが
)
ひにかかつたら、
340
どうも
手
(
て
)
のつけやうのないものだ』
341
高姫
『ヘン、
342
お
前
(
まへ
)
もお
筆先
(
ふでさき
)
をチツとは
頂
(
いただ
)
いてをるだらう。
343
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
様
(
さま
)
が……
阿呆
(
あはう
)
になりてをりて
下
(
くだ
)
されよ。
344
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
大気違
(
おほきちが
)
ひであるぞよ。
345
気違
(
きちが
)
ひになりて
居
(
を
)
らねば
此
(
この
)
大望
(
たいまう
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
さぬぞよ。
346
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
誰
(
たれ
)
の
手
(
て
)
にも
合
(
あ
)
はぬ
身魂
(
みたま
)
であるぞよ。
347
鬼門
(
きもん
)
の
金神
(
こんじん
)
でさへも
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
すぞよ。
348
中
(
なか
)
にも
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
神力
(
しんりき
)
は
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
も
側
(
そば
)
へもよれぬぞよ。
349
結構
(
けつこう
)
の
身魂
(
みたま
)
が
世
(
よ
)
におとしてありたぞよ。
350
余
(
あま
)
り
神
(
かみ
)
を
侮
(
あなど
)
りて
居
(
を
)
りたら、
351
赤恥
(
あかはぢ
)
をかいて、
352
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
物
(
もの
)
も
言
(
い
)
へぬぞよ。
353
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
を
地
(
ぢ
)
に
致
(
いた
)
して
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
御用
(
ごよう
)
をさしてあるぞよ。
354
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らぬ
人民
(
じんみん
)
が、
355
ゴテゴテ
申
(
まを
)
せど、
356
何
(
なに
)
も
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
さいでもよいぞよ。
357
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
人民
(
じんみん
)
からいろいろと
申
(
まを
)
されるぞよ。
358
それを
構
(
かま
)
うて
居
(
を
)
つたら
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まらぬぞよ。
359
神
(
かみ
)
はいろいろと
気
(
き
)
をひくぞよ。
360
トコトン
気
(
き
)
を
引
(
ひ
)
いて、
361
これなら
動
(
うご
)
かぬ
身魂
(
みたま
)
と
知
(
し
)
りぬいた
上
(
うへ
)
、
362
誠
(
まこと
)
の
御用
(
ごよう
)
に
使
(
つか
)
ふぞよ……といふ
事
(
こと
)
をお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るかい。
363
知
(
し
)
らな
言
(
い
)
うてやろ、
364
そこに
坐
(
すわ
)
りなさい。
365
あああ
一人
(
ひとり
)
の
霊
(
みたま
)
を
改心
(
かいしん
)
ささうと
思
(
おも
)
へば、
366
随分
(
ずいぶん
)
骨
(
ほね
)
の
折
(
を
)
れた
事
(
こと
)
だわい。
367
誠
(
まこと
)
を
聞
(
き
)
かしてやれば
面
(
つら
)
をふくらすなり、
368
ぢやと
申
(
まを
)
してお
気
(
き
)
に
合
(
あ
)
ふやうなことを
申
(
まを
)
せば、
369
すぐに
慢心
(
まんしん
)
を
致
(
いた
)
すなり、
370
今
(
いま
)
の
人民
(
じんみん
)
は
手
(
て
)
のつけやうがないぞよ。
371
神
(
かみ
)
も
誠
(
まこと
)
に
声
(
こゑ
)
をあげて
苦
(
くる
)
しみて
居
(
を
)
るぞよ。
372
中
(
なか
)
にも
与太彦
(
よたひこ
)
、
373
弥次彦
(
やじひこ
)
のやうな
八衢
(
やちまた
)
人間
(
にんげん
)
が、
374
善
(
ぜん
)
の
面
(
めん
)
をかぶりて、
375
宣伝使
(
せんでんし
)
などと
申
(
まを
)
して
歩
(
ある
)
く
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
376
困
(
こま
)
つたものであるぞよ。
377
八島主
(
やしまぬしの
)
命
(
みこと
)
も
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
も、
378
学
(
がく
)
で
智慧
(
ちゑ
)
の
出来
(
でき
)
た
途中
(
とちう
)
の
鼻高
(
はなだか
)
であるから、
379
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
の
申
(
まを
)
すことはチツとも
耳
(
みみ
)
へ
入
(
はい
)
らず、
380
誠
(
まこと
)
に
神
(
かみ
)
も
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
すぞよ。
381
これから
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
肉宮
(
にくみや
)
が、
382
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
参
(
まゐ
)
りて、
383
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
根本
(
こつぽん
)
から
立替
(
たてかへ
)
を
致
(
いた
)
してやるぞよ。
384
そこになりたら、
385
今
(
いま
)
まで
偉
(
えら
)
さうに
申
(
まを
)
してをりた
御
(
おん
)
方
(
かた
)
、
386
首尾
(
しゆび
)
悪
(
わる
)
き
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るぞよ。
387
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
中
(
うち
)
に
聞
(
き
)
かねば、
388
後
(
あと
)
になりて
何程
(
なにほど
)
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
えたとて
神
(
かみ
)
は
聞
(
き
)
き
済
(
ず
)
みはないぞよ。
389
改心
(
かいしん
)
が
一等
(
いつとう
)
ぞよ。
390
神
(
かみ
)
は
人民
(
じんみん
)
が
助
(
たす
)
けたさに
夜
(
よ
)
の
目
(
め
)
もロクによう
寝
(
ね
)
ずに、
391
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
392
神
(
かみ
)
の
事
(
こと
)
は
人民
(
じんみん
)
等
(
など
)
の
分
(
わか
)
ることでないぞよ。
393
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
されよ。
394
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
霊
(
みたま
)
がウロウロ
致
(
いた
)
すと、
395
神
(
かみ
)
の
気障
(
きざわり
)
が
出来
(
でき
)
るぞよ。
396
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
されよ』
397
とのべつ
幕
(
まく
)
なしに
大声
(
おほごゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
て、
398
安彦
(
やすひこ
)
、
399
国彦
(
くにひこ
)
の
直使
(
ちよくし
)
を
烟
(
けむり
)
にまいて
了
(
しま
)
つた。
400
(
大正一二・一・二三
旧一一・一二・七
松村真澄
録)
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