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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
余白歌
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【第5話】Onidoとは何者?動画【最終回】
霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第50巻(丑の巻)
> 第1篇 和光同塵 > 第3章 高魔腹
<<< 照魔燈
(B)
(N)
御意犬 >>>
第三章
高魔腹
(
たかまはら
)
〔一二九七〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
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主な登場人物
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備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
文字数:
OBC :
rm5003
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
神殿
(
しんでん
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
002
長途
(
ちやうと
)
の
遠征
(
ゑんせい
)
を
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へと
祈願
(
きぐわん
)
をこらし、
003
再
(
ふたた
)
び
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
した。
004
高姫
(
たかひめ
)
は
遠
(
とほ
)
く
従
(
したが
)
うて
神殿
(
しんでん
)
近
(
ちか
)
く
進
(
すす
)
み、
005
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
後姿
(
うしろすがた
)
を
打眺
(
うちなが
)
め、
006
何処
(
どこ
)
ともなしに
其
(
その
)
神格
(
しんかく
)
の
完備
(
くわんび
)
せるに
打驚
(
うちおどろ
)
き
舌
(
した
)
をまいた。
007
そして
高姫
(
たかひめ
)
は
其
(
その
)
神格
(
しんかく
)
に
感
(
かん
)
じ、
008
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
く
尊敬
(
そんけい
)
した。
009
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何処
(
どこ
)
ともなく
恐怖心
(
きようふしん
)
に
駆
(
か
)
られ、
010
且
(
かつ
)
其
(
その
)
神格
(
しんかく
)
の
偉大
(
ゐだい
)
なるに
稍
(
やや
)
嫉妬
(
しつと
)
の
念
(
ねん
)
を
兆
(
きざ
)
したのである。
011
今
(
いま
)
まで
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
大神格
(
だいしんかく
)
に
圧倒
(
あつたう
)
され、
012
暫
(
しば
)
し
高姫
(
たかひめ
)
の
身体内
(
しんたいない
)
に
潜
(
ひそ
)
みて
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
は、
013
高姫
(
たかひめ
)
が
少
(
すこ
)
しく
嫉妬心
(
しつとしん
)
の
兆
(
きざ
)
したのを
幸
(
さいは
)
ひ、
014
其
(
その
)
虚
(
きよ
)
に
入
(
い
)
り
忽
(
たちま
)
ち
囁
(
ささや
)
いて
云
(
い
)
ふ。
015
悪狐
『
吾
(
われ
)
は
汝
(
なんぢ
)
の
略
(
ほぼ
)
知
(
し
)
る
如
(
ごと
)
く、
016
神代
(
かみよ
)
に
於
(
おい
)
て
常世姫
(
とこよひめの
)
命
(
みこと
)
に
憑依
(
ひようい
)
し
罪悪
(
ざいあく
)
の
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
した
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
白面
(
はくめん
)
の
悪狐
(
あくこ
)
である。
017
併
(
しか
)
しながら
時節
(
じせつ
)
来
(
きた
)
りてミロクの
大神
(
おほかみ
)
、
018
地上
(
ちじやう
)
に
降臨
(
かうりん
)
し
給
(
たま
)
ひし
上
(
うへ
)
は、
019
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
悪
(
あく
)
を
続
(
つづ
)
ける
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬ。
020
吾
(
われ
)
は
悪
(
あく
)
の
張本人
(
ちやうほんにん
)
なれば
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
一切
(
いつさい
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
企
(
たく
)
みは
皆
(
みな
)
知
(
し
)
つてゐる。
021
悪
(
あく
)
に
強
(
つよ
)
ければ
善
(
ぜん
)
にも
強
(
つよ
)
い。
022
吾
(
われ
)
は
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
白面
(
はくめん
)
の
悪狐
(
あくこ
)
だ。
023
そして
汝
(
なんぢ
)
は
常世姫
(
とこよひめの
)
命
(
みこと
)
の
身魂
(
みたま
)
の
再来
(
さいらい
)
だ。
024
もう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
を
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて、
025
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みを
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
にお
知
(
し
)
らせ
申
(
まを
)
さねばならぬ。
026
就
(
つ
)
いてはあの
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
の
再来
(
さいらい
)
なれば、
027
到底
(
たうてい
)
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
匹敵
(
ひつてき
)
すべき
神人
(
しんじん
)
ではない。
028
寧
(
むし
)
ろ
吾
(
われ
)
よりトコトン
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
すべければ、
029
汝
(
なんぢ
)
も
彼
(
か
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
師
(
し
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ、
030
共
(
とも
)
に
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
すべし』
031
と
甘
(
うま
)
く
高姫
(
たかひめ
)
を
誑惑
(
きやうわく
)
してしまつた。
032
高姫
(
たかひめ
)
は
兇霊
(
きようれい
)
の
言
(
げん
)
を
深
(
ふか
)
く
信
(
しん
)
じて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
対
(
たい
)
する
態度
(
たいど
)
を
一変
(
いつぺん
)
した。
033
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
神殿
(
しんでん
)
の
拝礼
(
はいれい
)
を
終
(
をは
)
り、
034
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
りながら
心
(
こころ
)
私
(
ひそ
)
かに
思
(
おも
)
ふやう、
035
初稚姫
『
彼
(
かれ
)
高姫
(
たかひめ
)
には
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
の
霊
(
れい
)
憑依
(
ひようい
)
せり。
036
而
(
しか
)
して
彼
(
かれ
)
悪霊
(
あくれい
)
は
形体
(
けいたい
)
を
有
(
いう
)
するものなれば、
037
吾
(
わが
)
真相
(
しんさう
)
を
現
(
あら
)
はさば
忽
(
たちま
)
ち
彼
(
かれ
)
が
肉体
(
にくたい
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼすか、
038
但
(
ただし
)
は
遁走
(
とんそう
)
して
又
(
また
)
もや
相応
(
さうおう
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
住居
(
ぢゆうきよ
)
を
構
(
かま
)
へ
世
(
よ
)
を
惑乱
(
わくらん
)
するに
至
(
いた
)
らむ。
039
如
(
し
)
かず
吾
(
われ
)
は
和光
(
わくわう
)
同塵
(
どうぢん
)
の
態度
(
たいど
)
を
極力
(
きよくりよく
)
維持
(
ゐぢ
)
し、
040
彼
(
か
)
の
悪霊
(
あくれい
)
を
高姫
(
たかひめ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
長
(
なが
)
く
残留
(
ざんりう
)
せしめ、
041
彼
(
かれ
)
が
根本
(
こんぽん
)
より
改心
(
かいしん
)
すれば
重畳
(
ちようでふ
)
なれども、
042
万一
(
まんいち
)
改心
(
かいしん
)
せずとも
高姫
(
たかひめ
)
の
肉体中
(
にくたいちう
)
に
秘
(
ひ
)
め
置
(
お
)
かば、
043
彼
(
かれ
)
精霊
(
せいれい
)
は
外
(
ほか
)
に
出
(
い
)
づる
虞
(
おそれ
)
なし。
044
要
(
えう
)
するに
高姫
(
たかひめ
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
天下
(
てんか
)
を
乱
(
みだ
)
す
悪霊
(
あくれい
)
をつなぐ
処
(
ところ
)
の
牢獄
(
らうごく
)
と
見
(
み
)
ればいい。
045
もとより
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
兇霊
(
きようれい
)
なれば、
046
神
(
かみ
)
の
光明
(
くわうみやう
)
に
照
(
てら
)
されなば、
047
兇霊
(
きようれい
)
は
忽
(
たちま
)
ち
自暴
(
じばう
)
自棄
(
じき
)
となり、
048
益々
(
ますます
)
神業
(
しんげふ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
をなすべし。
049
如
(
し
)
かず、
050
神慮
(
しんりよ
)
に
背
(
そむ
)
くかは
知
(
し
)
らざれども、
051
暫
(
しばら
)
く
吾
(
われ
)
は
猫
(
ねこ
)
を
被
(
かぶ
)
つて
彼
(
かれ
)
と
交際
(
かうさい
)
し、
052
何時
(
いつ
)
とはなしに
高姫
(
たかひめ
)
と
精霊
(
せいれい
)
とを
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ひやらむ』
053
と
決心
(
けつしん
)
し、
054
大神
(
おほかみ
)
に
念
(
ねん
)
じながら
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
にて
高姫
(
たかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
055
精霊
(
せいれい
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
口舌
(
こうぜつ
)
を
使用
(
しよう
)
して、
056
いとやさしげに
言葉
(
ことば
)
を
飾
(
かざ
)
つて
云
(
い
)
ふやう、
057
高姫(悪狐)
『
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御
(
おん
)
身魂
(
みたま
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
058
よくも
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
下
(
くだ
)
さいました。
059
私
(
わたくし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
060
御存
(
ごぞん
)
じの
高姫
(
たかひめ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
061
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
により
悪神
(
あくがみ
)
の
張本
(
ちやうほん
)
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
が
私
(
わたし
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
潜
(
ひそ
)
み
入
(
い
)
り、
062
私
(
わたくし
)
の
真心
(
まごころ
)
に
感化
(
かんくわ
)
されて
漸
(
やうや
)
く
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
しまして、
063
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
悪
(
あく
)
をスツクリ
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
しました。
064
就
(
つ
)
いては
凡
(
すべ
)
ての
悪神
(
あくがみ
)
の
企
(
たく
)
みは
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
存
(
ぞん
)
じて
居
(
ゐ
)
ると
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りますから、
065
私
(
わたくし
)
が
守護神
(
しゆごじん
)
と
共
(
とも
)
に
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
大門
(
おほもん
)
を
造
(
つく
)
り、
066
凡
(
すべ
)
ての
人民
(
じんみん
)
の
因縁
(
いんねん
)
をよく
調
(
しら
)
べ
改心
(
かいしん
)
をさせた
上
(
うへ
)
、
067
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
送
(
おく
)
る
考
(
かんが
)
へで
厶
(
ござ
)
ります。
068
何卒
(
なにとぞ
)
此
(
この
)
事
(
こと
)
をお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
に、
069
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御霊
(
みたま
)
様
(
さま
)
、
070
お
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します。
071
そして
一方
(
いつぱう
)
には
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
なる
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
が、
072
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
によりまして
世界中
(
せかいぢう
)
を
調
(
しら
)
べに
歩
(
ある
)
き、
073
世
(
よ
)
の
初
(
はじ
)
まりの
根本
(
こつぽん
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
成
(
な
)
り
立
(
た
)
ちから、
074
人民
(
じんみん
)
の
大先祖
(
おほせんぞ
)
の
因縁
(
いんねん
)
、
075
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
身魂
(
みたま
)
は
如何
(
いか
)
なる
因縁
(
いんねん
)
があるか、
076
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
のお
働
(
はたら
)
きは
如何
(
いか
)
なるものかと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らしたいので
厶
(
ござ
)
ります。
077
今
(
いま
)
の
三五教
(
あななひけう
)
には
宣伝使
(
せんでんし
)
は
沢山
(
たくさん
)
厶
(
ござ
)
りますが、
078
皆
(
みな
)
智慧
(
ちゑ
)
、
079
学
(
がく
)
で
神界
(
しんかい
)
の
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へようと
致
(
いた
)
すので
厶
(
ござ
)
りますから
何
(
なに
)
も
分
(
わか
)
りませぬ。
080
貴女
(
あなた
)
は
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
の
大和
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
善
(
ぜん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
りますから、
081
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
事
(
こと
)
は
御存
(
ごぞん
)
じで
厶
(
ござ
)
りますが、
082
外
(
ほか
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
や
宣伝使
(
せんでんし
)
や
信者
(
しんじや
)
はサツパリ
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
083
それ
故
(
ゆゑ
)
此処
(
ここ
)
に
大門
(
おほもん
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
084
私
(
わたし
)
が
一々
(
いちいち
)
因縁
(
いんねん
)
をあらため、
085
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
さす
御
(
おん
)
役
(
やく
)
にして
下
(
くだ
)
さいませぬか』
086
と
兇霊
(
きようれい
)
はうまく
高姫
(
たかひめ
)
に
化
(
ば
)
けて
虫
(
むし
)
のよい
事
(
こと
)
を
頼
(
たの
)
みかけた。
087
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
彼
(
かれ
)
が
奸計
(
かんけい
)
を
残
(
のこ
)
らず
看破
(
かんぱ
)
した。
088
されど
前述
(
ぜんじゆつ
)
の
如
(
ごと
)
く
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
此
(
この
)
悪霊
(
あくれい
)
を
審判
(
さには
)
する
事
(
こと
)
を
避
(
さ
)
けられたのである。
089
初稚姫
『
貴女
(
あなた
)
は
信心
(
しんじん
)
堅固
(
けんご
)
にして
霊界
(
れいかい
)
によくお
通
(
つう
)
じ
遊
(
あそ
)
ばした
方
(
かた
)
と
見
(
み
)
えますな。
090
妾
(
わらは
)
は
賤
(
いや
)
しき
杢助
(
もくすけ
)
の
娘
(
むすめ
)
と
生
(
うま
)
れ、
091
まだ
年
(
とし
)
も
若
(
わか
)
く、
092
社会
(
しやくわい
)
的
(
てき
)
の
経験
(
けいけん
)
さへも
積
(
つ
)
んでゐない
愚者
(
おろかもの
)
で
厶
(
ござ
)
りますから、
093
到底
(
たうてい
)
霊界
(
れいかい
)
の
消息
(
せうそく
)
等
(
など
)
は
分
(
わか
)
りませぬ。
094
就
(
つ
)
いては
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
し
左様
(
さやう
)
の
事
(
こと
)
をお
許
(
ゆる
)
し
申
(
まを
)
すなどとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
095
何
(
いづ
)
れ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
をお
認
(
みと
)
め
遊
(
あそ
)
ばしたならば、
096
屹度
(
きつと
)
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
からお
許
(
ゆる
)
しが
厶
(
ござ
)
りませう。
097
妾
(
わらは
)
には
左様
(
さやう
)
な
権限
(
けんげん
)
は
少
(
すこ
)
しも
厶
(
ござ
)
りませぬから、
098
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
らない
様
(
やう
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
099
何卒
(
なにとぞ
)
至
(
いた
)
らぬ
妾
(
わらは
)
、
100
神徳
(
しんとく
)
高
(
たか
)
き
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
より
御
(
ご
)
教授
(
けうじゆ
)
を
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
したいもので
厶
(
ござ
)
ります』
101
と
一切
(
いつさい
)
の
光明
(
くわうみやう
)
を
包
(
つつ
)
み、
102
普通人
(
ふつうじん
)
の
如
(
ごと
)
くなつて
了
(
しま
)
つた。
103
高姫
(
たかひめ
)
はニタリと
打笑
(
うちわら
)
ひ、
104
高姫
『アー、
105
さうだらうさうだらう、
106
それが
正直
(
しやうぢき
)
の
処
(
ところ
)
だ。
107
まだ
年
(
とし
)
も
若
(
わか
)
い
癖
(
くせ
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
に
歩
(
ある
)
かすとは、
108
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
様
(
さま
)
も
余程
(
よつぽど
)
物好
(
ものず
)
きな
珍
(
めづ
)
らし
物
(
もの
)
喰
(
ぐ
)
ひだな。
109
どれどれ
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
がここで
根本
(
こつぽん
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
因縁
(
いんねん
)
を
説
(
と
)
いて
聞
(
き
)
かしますから
十分
(
じふぶん
)
修行
(
しゆぎやう
)
をなさいませ。
110
それでなければ、
111
訳
(
わけ
)
も
分
(
わか
)
らずに
宣伝
(
せんでん
)
に
歩
(
ある
)
いたり、
112
大黒主
(
おほくろぬし
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すなどとは、
113
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
無謀
(
むぼう
)
のやり
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
りますからな』
114
初稚姫
『
何分
(
なにぶん
)
、
115
至
(
いた
)
らぬ
妾
(
わらは
)
、
116
老練
(
らうれん
)
な
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
薫陶
(
くんたう
)
をお
願
(
ねが
)
ひしたいもので
厶
(
ござ
)
ります』
117
高姫
『ハイ、
118
よしよし、
119
お
前
(
まへ
)
は
水晶魂
(
すいしやうだま
)
だ。
120
本当
(
ほんたう
)
に
素直
(
すなほ
)
な
可愛
(
かあい
)
い
娘
(
こ
)
だな。
121
これから
此
(
この
)
小母
(
をば
)
さまの
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くのだよ。
122
否
(
いな
)
小母
(
をば
)
さまではない、
123
絶
(
き
)
つてもきれぬ
母子
(
おやこ
)
だから、
124
そのつもりでつき
合
(
あ
)
つて
下
(
くだ
)
さいねー』
125
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
心
(
こころ
)
に
打笑
(
うちわら
)
ひながら
故意
(
わざ
)
と
空惚
(
そらとぼ
)
けて、
126
初稚姫
『
小母
(
をば
)
様
(
さま
)
、
127
今
(
いま
)
貴女
(
あなた
)
は
妾
(
わらは
)
ときつてもきれぬ
母子
(
おやこ
)
だと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
128
それは
身魂
(
みたま
)
の
母子
(
おやこ
)
で
厶
(
ござ
)
りますか。
129
チツとも
愚鈍
(
ぐどん
)
の
妾
(
わらは
)
には
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
りませぬワ』
130
高姫
『
身魂
(
みたま
)
の
母子
(
おやこ
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばぬ、
131
お
前
(
まへ
)
さまは
杢助
(
もくすけ
)
さまの
大切
(
たいせつ
)
の
娘
(
むすめ
)
だらう。
132
其
(
その
)
杢助
(
もくすけ
)
さまは
此
(
この
)
度
(
たび
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
因縁
(
いんねん
)
によつて
常世姫
(
とこよひめの
)
命
(
みこと
)
の
改心
(
かいしん
)
した
善
(
ぜん
)
の
折
(
をり
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
の
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
夫
(
をつと
)
とおなり
遊
(
あそ
)
ばしたのだよ。
133
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
だつて、
134
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
だつて、
135
よい
年
(
とし
)
をしてから
若
(
わか
)
いものか
何
(
なん
)
ぞの
様
(
やう
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
になつたり、
136
そんな
見
(
み
)
つともない
事
(
こと
)
はしたくはない。
137
胸
(
むね
)
に
焼鉄
(
やきがね
)
をあてる
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
うてゐるのだが、
138
これも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のため、
139
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふため、
140
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
うて
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
してるのだよ。
141
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
人民
(
じんみん
)
がいろいろと
申
(
まを
)
すであらうなれど、
142
人民
(
じんみん
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
に
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
まして
居
(
を
)
りたらミロク
神政
(
しんせい
)
の
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まりませぬ。
143
訳
(
わけ
)
知
(
し
)
らぬ
人民
(
じんみん
)
は、
144
杢助
(
もくすけ
)
、
145
高姫
(
たかひめ
)
の
結婚
(
けつこん
)
を
何
(
なん
)
となつと
申
(
まを
)
して
笑
(
わら
)
へば
笑
(
わら
)
へ、
146
誹
(
そし
)
らば
誹
(
そし
)
れ、
147
神
(
かみ
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
一厘
(
いちりん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
が
如何
(
どう
)
して
一寸先
(
いつすんさき
)
も
見
(
み
)
えない
人民
(
じんみん
)
に
分
(
わか
)
るものか、
148
と
云
(
い
)
ふ
磐石
(
ばんじやく
)
の
如
(
ごと
)
き
決心
(
けつしん
)
を
以
(
もつ
)
てここに
夫婦
(
ふうふ
)
の
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
んだのだから、
149
初稚
(
はつわか
)
さま、
150
貴女
(
あなた
)
もそのお
積
(
つも
)
りで、
151
私
(
わたし
)
を
母
(
はは
)
と
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいや。
152
私
(
わたし
)
も
貴女
(
あなた
)
を
大切
(
たいせつ
)
の
大切
(
たいせつ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
と
致
(
いた
)
して
敬
(
うやま
)
ひますから、
153
母
(
おや
)
となり
子
(
こ
)
となるのも
昔
(
むかし
)
の
昔
(
むかし
)
のさる
昔
(
むかし
)
、
154
も
一
(
ひと
)
つ
昔
(
むかし
)
のまだ
昔
(
むかし
)
の
天地
(
てんち
)
開闢
(
かいびやく
)
の
初
(
はじ
)
めから
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
より
定
(
さだ
)
められた
因縁
(
いんねん
)
ぢやによつて、
155
何卒
(
どうぞ
)
その
覚悟
(
かくご
)
でゐて
下
(
くだ
)
され。
156
何事
(
なにごと
)
にも
素直
(
すなほ
)
なお
賢
(
かしこ
)
いお
前
(
まへ
)
さまだから、
157
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
、
158
よく
呑込
(
のみこ
)
めたでせうなア』
159
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
杢助
(
もくすけ
)
の
本物
(
ほんもの
)
でなく、
160
獅子
(
しし
)
と
虎
(
とら
)
との
中間
(
ちうかん
)
動物
(
どうぶつ
)
なる
兇霊
(
きようれい
)
に
騙
(
だま
)
されてゐる
事
(
こと
)
はよく
看破
(
かんぱ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
161
されど
故意
(
わざ
)
と
空惚
(
そらとぼ
)
けて、
162
初稚姫
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
163
私
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
が
何時
(
いつ
)
そんな
事
(
こと
)
を
貴女
(
あなた
)
と
約束
(
やくそく
)
致
(
いた
)
しましたのですか、
164
私
(
わたし
)
今
(
いま
)
が
初耳
(
はつみみ
)
ですわ。
165
まアまアまア
不思議
(
ふしぎ
)
な
御縁
(
ごえん
)
で
厶
(
ござ
)
りますこと。
166
さうしてお
父
(
とう
)
さまは
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かれましたの』
167
高姫
『
一寸
(
ちよつと
)
此
(
この
)
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
へ
散歩
(
さんぽ
)
にお
出
(
い
)
でになつたと
見
(
み
)
えます。
168
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
は
森
(
もり
)
の
散歩
(
さんぽ
)
が
大変
(
たいへん
)
にお
好
(
す
)
きだと
見
(
み
)
えましてね。
169
お
前
(
まへ
)
さまが
此処
(
ここ
)
へ
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
こ
)
られた
事
(
こと
)
をお
聞
(
き
)
きになつたら、
170
嘸
(
さぞ
)
喜
(
よろこ
)
ばれるでせう』
171
初稚姫
『はて、
172
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
だわ。
173
妾
(
わらは
)
のお
父
(
とう
)
さまは
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
総務
(
そうむ
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
らつしやるのだから、
174
ここへお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばす
道理
(
だうり
)
はありませぬがな』
175
高姫
『これ
初
(
はつ
)
ちやま、
176
お
前
(
まへ
)
の、
177
さう
疑
(
うたが
)
ふのも
尤
(
もつと
)
もだ。
178
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
杢助
(
もくすけ
)
さまは、
179
あの
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い
東野別
(
あづまのわけ
)
の
東助
(
とうすけ
)
さまと
云
(
い
)
ふ
副教主
(
ふくけうしゆ
)
との
間
(
あひだ
)
に
事務
(
じむ
)
上
(
じやう
)
の
衝突
(
しようとつ
)
が
起
(
おこ
)
り、
180
それがために
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されなさつたのですよ。
181
東助
(
とうすけ
)
の
野郎
(
やらう
)
、
182
正直
(
しやうぢき
)
一途
(
いちづ
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
、
183
三羽烏
(
さんばがらす
)
の
御
(
ご
)
一人
(
いちにん
)
なる
杢助
(
もくすけ
)
さまを
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
すとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
悪人
(
あくにん
)
ぢやありませぬか。
184
あの
東助
(
とうすけ
)
はやがて
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤
(
こぶ
)
の
様
(
やう
)
に
困
(
こま
)
つてゐた
杢助
(
もくすけ
)
さまを
首尾
(
しゆび
)
よく
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
し、
185
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
全権
(
ぜんけん
)
を
掌握
(
しやうあく
)
し、
186
終
(
つひ
)
には
八島主
(
やしまぬし
)
の
教主
(
けうしゆ
)
さまをおつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
し、
187
自分
(
じぶん
)
が
其
(
その
)
後釜
(
あとがま
)
にすわると
云
(
い
)
ふ
野心
(
やしん
)
を
抱
(
いだ
)
いてをるのですよ。
188
それでお
前
(
まへ
)
と
私
(
わし
)
が
此処
(
ここ
)
で
一肌
(
ひとはだ
)
脱
(
ぬ
)
いで、
189
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
参
(
まゐ
)
る
信者
(
しんじや
)
を
小口
(
こぐち
)
から
虱殺
(
しらみごろ
)
しに
調
(
しら
)
べ、
190
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へやらぬ
様
(
やう
)
にせねばなりませぬ。
191
私
(
わし
)
がここで
杢助
(
もくすけ
)
さまと
大門開
(
おほもんびら
)
きをしたのは、
192
杢助
(
もくすけ
)
さまや
八島主
(
やしまぬし
)
の
教主
(
けうしゆ
)
がお
困
(
こま
)
りになつた
時
(
とき
)
、
193
お
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
すやうにチヤンと
仕組
(
しぐみ
)
をしてゐるのだから、
194
お
前
(
まへ
)
さまも
何処
(
どこ
)
へも
行
(
ゆ
)
かず、
195
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
つて
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
さうぢやありませぬか』
196
初稚姫
『それは
又
(
また
)
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はります。
197
東助
(
とうすけ
)
様
(
さま
)
はそんなお
方
(
かた
)
ぢやない
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ひますがな』
198
高姫
『それが
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
つてゐる
悪魔
(
あくま
)
ですよ。
199
屹度
(
きつと
)
悪人
(
あくにん
)
は
悪相
(
あくさう
)
を
以
(
もつ
)
て
現
(
あら
)
はれるものぢやありませぬ。
200
所在
(
あらゆる
)
虚偽
(
きよぎ
)
と
偽善
(
ぎぜん
)
を
以
(
もつ
)
て
人民
(
じんみん
)
を
詐
(
いつは
)
り、
201
虚栄
(
きよえい
)
的
(
てき
)
権威
(
けんゐ
)
に
甘
(
あま
)
んじてゐるものですよ。
202
これ
初稚
(
はつわか
)
さま、
203
油断
(
ゆだん
)
してはなりませぬぞや。
204
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
海千
(
うみせん
)
川千
(
かはせん
)
山千
(
やません
)
の
修業
(
しゆげふ
)
をした
善
(
ぜん
)
にも
強
(
つよ
)
い、
205
悪
(
あく
)
にも
強
(
つよ
)
い、
206
そして
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みは
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
看破
(
かんぱ
)
してゐるのだから、
207
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
間違
(
まちが
)
ひはありませぬよ』
208
初稚姫
『あの
東助
(
とうすけ
)
さまは
小母
(
をば
)
さまの
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
のお
馴染
(
なじみ
)
だつたさうですな。
209
そんなに
悪口
(
わるくち
)
を
云
(
い
)
ふものぢやありませぬよ。
210
父
(
ちち
)
の
杢助
(
もくすけ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
211
幾層倍
(
いくそうばい
)
人格
(
じんかく
)
が
上
(
うへ
)
だか
知
(
し
)
れぬぢやありませぬか』
212
高姫
『ヤツパリ
子供
(
こども
)
だな。
213
然
(
しか
)
し
子供
(
こども
)
は
正直
(
しやうぢき
)
ぢや。
214
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
水晶魂
(
すいしやうだま
)
だから
心
(
こころ
)
に
罪
(
つみ
)
がないので、
215
表面
(
うはべ
)
から
良
(
よ
)
く
見
(
み
)
える
人
(
ひと
)
を
信用
(
しんよう
)
なさるのだ。
216
そこが
本当
(
ほんたう
)
に
尊
(
たふと
)
い
処
(
ところ
)
だよ。
217
然
(
しか
)
し
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
はチツとも
違
(
ちが
)
ひませぬぞや』
218
初稚姫
『さうで
厶
(
ござ
)
りますかな。
219
一遍
(
いつぺん
)
父
(
ちち
)
に
会
(
あ
)
つてみたいものですがな。
220
もし
小母
(
をば
)
さま、
221
長上
(
ちやうじやう
)
をお
使
(
つか
)
ひ
申
(
まを
)
して
真
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬが、
222
一度
(
いちど
)
お
父
(
とう
)
さまに
会
(
あ
)
ひたう
厶
(
ござ
)
りますから、
223
探
(
さが
)
して
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
224
高姫
『アアさうだろさうだろ、
225
無理
(
むり
)
もない。
226
親子
(
おやこ
)
の
情
(
じやう
)
と
云
(
い
)
ふものは
本当
(
ほんたう
)
に
尊
(
たふと
)
いものだな。
227
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
捨
(
す
)
てる
藪
(
やぶ
)
はあつても
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
を
捨
(
す
)
てる
藪
(
やぶ
)
はないと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
228
杢助
(
もくすけ
)
さまも
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
天眼通
(
てんがんつう
)
で
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
りながら、
229
こんな
可愛
(
かあい
)
い
娘
(
むすめ
)
が
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのに、
230
そしらぬ
顔
(
かほ
)
して
森
(
もり
)
に
散歩
(
さんぽ
)
してゐなさるとは
本当
(
ほんたう
)
に
水臭
(
みづくさ
)
い
方
(
かた
)
だな。
231
子
(
こ
)
の
心
(
こころ
)
、
232
親
(
おや
)
知
(
し
)
らずだ。
233
然
(
しか
)
し
初稚
(
はつわか
)
さま、
234
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
本当
(
ほんたう
)
にやさしいものですよ。
235
杢助
(
もくすけ
)
さまに
比
(
くら
)
べて
幾百倍
(
いくひやくばい
)
も
可愛
(
かあい
)
がつてやりますから、
236
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
を
本当
(
ほんたう
)
の
母
(
おや
)
だと
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいや』
237
初稚姫
『ハイ、
238
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります』
239
と
俯向
(
うつむ
)
いて
見
(
み
)
せた。
240
高姫
『これ
初稚
(
はつわか
)
さま、
241
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さい。
242
お
父
(
とう
)
さまのあとを
探
(
さが
)
して
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
に
屹度
(
きつと
)
連
(
つ
)
れて
参
(
まゐ
)
りますから』
243
と
云
(
い
)
ひながら
羽
(
は
)
ばたきしつつ
欣々
(
いそいそ
)
として
森林
(
しんりん
)
の
方
(
はう
)
に
行
(
ゆ
)
く。
244
高姫
(
たかひめ
)
は
森
(
もり
)
の
茂
(
しげ
)
みに
隠
(
かく
)
れて
後
(
あと
)
ふり
返
(
かへ
)
り
舌
(
した
)
をニユツと
出
(
だ
)
し、
245
いやらしい
笑
(
ゑ
)
みを
漏
(
もら
)
しながら
独言
(
ひとりごと
)
、
246
高姫
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもヤツパリ
子供
(
こども
)
だな。
247
然
(
しか
)
しながらあの
娘
(
こ
)
は
何処
(
どこ
)
ともなしに
気高
(
けだか
)
い
処
(
ところ
)
もあり、
248
中々
(
なかなか
)
シヤンとした
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ。
249
あれをうまくチヨロまかし
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
として
置
(
お
)
けば、
250
三五教
(
あななひけう
)
は
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
握
(
にぎ
)
つた
様
(
やう
)
なものだ。
251
何
(
なん
)
と
都合
(
つがふ
)
のいい
事
(
こと
)
になつたものだな。
252
これから
一
(
ひと
)
つでも、
253
うまい
物
(
もの
)
があつたら、
254
あの
娘
(
こ
)
に
呉
(
く
)
れてやり、
255
そして
十分
(
じふぶん
)
懐
(
なつ
)
かして
置
(
お
)
かねばならぬ。
256
然
(
しか
)
し
都合
(
つがふ
)
のいい
事
(
こと
)
には
杢助
(
もくすけ
)
さまが
私
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
だから、
257
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ
仲
(
なか
)
だ。
258
ああ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります、
259
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
様
(
さま
)
、
260
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
』
261
と
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
から
囁
(
ささや
)
いた。
262
高姫
(
たかひめ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
263
臍
(
へそ
)
の
辺
(
あたり
)
を
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
でトントンと
打
(
う
)
ちながら、
264
高姫
『こりや、
265
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
奴
(
め
)
、
266
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すのだ。
267
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと、
268
もう
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
肉体
(
にくたい
)
を
借
(
か
)
さぬぞや。
269
杢助
(
もくすけ
)
さまや
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
傍
(
そば
)
で、
270
そんな
事
(
こと
)
でも
云
(
い
)
うて
見
(
み
)
よれ。
271
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
立場
(
たちば
)
がないぢやないか。
272
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
したと
云
(
い
)
うたぢやないか』
273
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
274
(高姫に憑依している悪狐)
『ここは
誰
(
たれ
)
も
居
(
ゐ
)
ないから
一寸
(
ちよつと
)
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
たのだから、
275
さう
怒
(
おこ
)
るものぢやない。
276
メツタに
人
(
ひと
)
の
居
(
を
)
る
処
(
ところ
)
で
正体
(
しやうたい
)
は
現
(
あら
)
はさぬから
安心
(
あんしん
)
しておくれ』
277
高姫
『よし、
278
屹度
(
きつと
)
守
(
まも
)
るか、
279
うつかりした
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと
常世姫
(
とこよひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
承知
(
しようち
)
しませぬぞや。
280
これから
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
はスツカリ
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
して、
281
あとへ
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
が
這入
(
はい
)
つてゐると
何処
(
どこ
)
までも
主張
(
しゆちやう
)
するのだよ。
282
よいか、
283
分
(
わか
)
つたか。
284
馬鹿
(
ばか
)
な
守護神
(
しゆごじん
)
だな』
285
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
286
(高姫に憑依している悪狐)
『
何
(
なん
)
とまア、
287
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い、
288
向
(
むか
)
ふ
息
(
いき
)
のきつい
肉体
(
にくたい
)
だな、
289
アハハハハ』
290
(
大正一二・一・二〇
旧一一・一二・四
北村隆光
録)
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