霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 霊肉(れいにく)問答(もんだふ)〔一二九九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第2篇 兇党擡頭 よみ(新仮名遣い):きょうとうたいとう
章:第5章 霊肉問答 よみ(新仮名遣い):れいにくもんどう 通し章番号:1299
口述日:1923(大正12)年01月20日(旧12月4日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は、初稚姫と会話の最中に腹中の兇霊が不注意な言葉をはさもうとしたことに怒り、悪態をついた。兇霊は高姫の腹を痛めて対抗するが、高姫も大神に届け出るぞと脅し、兇霊もそれは困るとやや下手に出て来た。
二人はけんかしながらも問答しているうちに、三五教を乗っ取ってウラナイ教に立て返すということに相談が決まった。
高姫がさっと障子を開けて外をのぞくと、初稚姫は無邪気に枯れた芒で遊んでいる。高姫はほくそえんで、初稚姫を教育してウラナイ教の宣伝使に仕込み、杢助とウラナイ教を盛り返せば、東助の鼻を明かせると独り言を言っている。
初稚姫は何気なく高姫に話しかけ、スマートは石を投げて頭を割り、追い払ったと報告した。そして誠さえ立てば名などどうでもよいと、ウラナイ教を立てて行けばよいといって高姫の機嫌を取った。
高姫がまた杢助を呼びに行った間、初稚姫は珍彦の居間を訪ね、楓姫と四方山話をしながら時を過ごしていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-07-11 14:03:42 OBC :rm5005
愛善世界社版:59頁 八幡書店版:第9輯 170頁 修補版: 校定版:63頁 普及版:32頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)初稚姫(はつわかひめ)のスマートを(おく)つて()(あと)(ただ)一人(ひとり)002腹中(ふくちう)兇霊(きようれい)打向(うちむか)ひ、003(にぎ)(こぶし)(かた)めながら、004(ふところ)をパツと(ひら)き、005布袋(ほて)(ぱら)(あら)はし、006両方(りやうはう)()(へそ)のあたりを(つか)んだり(なぐ)つたりしながら、007(やや)声低(こゑびく)になつて、
008高姫『コリヤ、009(その)(はう)はあれ(だけ)注意(ちゆうい)(あた)へておくのに、010なぜ初稚姫(はつわかひめ)(まへ)で、011あんな不用意(ふようい)(こと)をいふのだ。012サア、013高姫(たかひめ)承知(しようち)(いた)さぬ。014(いち)()(はや)く、015トツトと()てくれ。016エー(なん)()つてもモウ(ゆる)さぬのだ。017(けが)らはしい、018コリヤ、019痰唾(たんつば)をはつかけてやらうか』
020()ひながら、021自分(じぶん)(へそ)のあたりに(むか)つて、022青洟(あをばな)をツンとかんでこれをかけ、023又々(またまた)(つば)をピユーピユーと(しき)りに()きかけてゐる。
024(腹の中から)『アハハハハ、025どれだけお(まへ)痰唾(たんつば)()きかけようが、026(はら)()ぢようが、027チツともおれは(いた)くはない。028つまりお(まへ)(はら)をお(まへ)(いた)め、029(まへ)(つば)をお(まへ)(はら)にかけるだけのものだ。030そんな他愛(たあい)もない馬鹿(ばか)(つく)すよりも、031日出(ひのでの)(かみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)(まを)すことを神妙(しんめう)服従(ふくじゆう)するがお(まへ)()(ため)だぞ。032グヅグヅ(まを)すと(はら)(なか)(あば)れさがし、033盲腸(まうちやう)(やぶ)つてやらうか、034コラどうぢや』
035高姫『アイタタタタ、036コリヤコリヤそんな無茶(むちや)(こと)(いた)すものでないぞ。037結構(けつこう)結構(けつこう)常世姫(とこよひめ)()肉体(にくたい)だ。038左様(さやう)不都合(ふつがふ)(いた)すと、039大神(おほかみ)(さま)()(とど)(いた)すが、040それでも(くる)しうないか』
041(腹の中から)『や、042そいつア一寸(ちよつと)(こま)る、043(なに)()うても()(つよ)肉体(にくたい)だから、044(おも)ふやうに使(つか)へないので(かみ)(いささ)迷惑(めいわく)(いた)して()るぞよ。045チツと柔順(おとなし)くなつて御用(ごよう)()いて(くだ)されよ』
046高姫(なに)(ぬか)しやがるのだ。047(また)しても(また)してもしようもない(こと)(ぬか)して、048(ひと)(さと)られたら(なん)とするのだ。049本当(ほんたう)馬鹿(ばか)だな。050これから(この)(はう)(きび)しく審神(さには)(いた)すから、051一言(ひとこと)でも(へん)なことを(まを)したら、052(この)生宮(いきみや)承知(しようち)(いた)さぬぞや』
053(腹の中から)『イヤ、054肉体(にくたい)()ふのも(もつと)もだ、055キツト心得(こころえ)るから、056どうぞ(なか)ようしてくれ。057(なん)()つても密着(みつちやく)不離(ふり)関係(くわんけい)になつてゐるのだから、058(まへ)肉体(にくたい)のある(うち)は、059(はな)れようといつたつて(はな)れる(わけ)にも()かず、060(まへ)(また)(おれ)()()さうとすれば、061(いのち)をすてる覚悟(かくご)でなくちや駄目(だめ)だぞ。062すぐに盲腸(まうちやう)でも十二(じふに)指腸(しちやう)でも、063空腸(くうちやう)064回腸(くわいちやう)065直腸(ちよくちやう)066結腸(けつちやう)(きら)ひなく、067()ぢて()ぢて()(まは)し、068肉体(にくたい)(いのち)()るのだから、069つまりお(まへ)(おれ)大事(だいじ)にし、070(おれ)はお(まへ)肉体(にくたい)唯一(ゆゐいつ)機関(きくわん)とせなくちや、071(あく)目的(もくてき)成就(じやうじゆ)せぬのだからなア』
072高姫『コリヤ、073(また)左様(さやう)なことを(まを)す。074この高姫(たかひめ)稚桜姫(わかざくらひめの)(みこと)身魂(みたま)系統(ひつぽう)075常世姫(とこよひめの)(みこと)再来(さいらい)だ。076(あく)といふ(こと)微塵(みぢん)でもしたくない、077大嫌(だいきら)ひなのだ。078(その)(はう)(あく)(あらた)めて(ぜん)立復(たちかへ)つたと(まを)したでないか。079どうしても(この)(はう)肉体(にくたい)使(つか)うて(あく)(いた)し、080変性(へんじやう)男子(なんし)(さま)()神業(しんげふ)(さまた)(いた)すのなれば、081(この)高姫(たかひめ)仮令(たとへ)(その)(はう)(はらわた)をむしられて国替(くにがへ)をしても、082チツとも(かま)はぬのだ。083サアどうだ、084返答(へんたふ)(いた)せ』
085審神者(さには)気分(きぶん)になつて呶鳴(どな)つてゐる。
086(腹の中から)『ヤア高姫(たかひめ)(さま)087(まこと)(まを)(ちが)ひを(いた)しました。088つひ(あく)(にく)むの(あま)(ぜん)(あく)とを取違(とりちが)へまして、089あんな不都合(ふつがふ)なことを(まを)しました。090今後(こんご)はキツと心得(こころえ)ますから、091どうぞ霊肉(れいにく)和合(わがふ)して(くだ)さいませ』
092高姫『ウンよしツ、093それに間違(まちが)ひなくば(ゆる)してやらう。094(この)(うへ)一言(ひとこと)でも金毛(きんまう)九尾(きうび)だの大蛇(をろち)だのと(まを)したら了簡(れうけん)(いた)さぬぞや』
095(腹の中から)『それなら、096(なん)といひませうかな、097義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)名乗(なの)りませうか』
098高姫(おそれおほ)(こと)(まを)すな。099義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)変性(へんじやう)男子(なんし)(さま)系統(ひつぽう)()身魂(みたま)ぢや。100(その)(はう)はヤツパリ、101ユラリ(ひこの)(みこと)(まを)したがよからうぞ』
102(腹の中から)『コレ高姫(たかひめ)さま、103さうイロイロと沢山(たくさん)()()つちや、104娑婆(しやば)亡者(まうじや)本当(ほんたう)(いた)しませぬぞや』
105高姫『コリヤ、106(なん)()ふことを(まを)す。107人間(にんげん)結構(けつこう)(かみ)生宮(いきみや)だ。108(あめ)(した)(かみ)(さま)のお(まも)りを()けないものは一人(ひとり)もないぞや。109()はば結構(けつこう)(てん)(かみ)(さま)直々(ぢきぢき)の、110人間(にんげん)御子(みこ)だ。111(なに)(もつ)娑婆(しやば)亡者(まうじや)などと(まを)すのか、112なぜ善言(ぜんげん)美詞(びし)言霊(ことたま)使(つか)はぬ。113ヤツパリ(その)(はう)はまだ本当(ほんたう)改心(かいしん)出来(でき)()らぬと()えるなア。114改心(かいしん)(いた)さな(いた)すやうにして改心(かいしん)(いた)さして()せうぞや』
115(腹の中から)高姫(たかひめ)さま、116一旦(いつたん)(にふ)()つた瀬戸物(せともの)何程(なにほど)(うま)(やき)つぎをしても、117(その)(きず)(もと)(とほ)りになほらないと同様(どうやう)に、118元来(ぐわんらい)身魂(みたま)にヒビが()つてゐるのだから、119本当(ほんたう)(ぜん)(かへ)(こと)(つら)うて出来(でき)ませぬぞや。120(まへ)さまの肉体(にくたい)だつて、121ヤツパリさうぢやないか。122(にふ)()つて()ればこそ、123(この)(はう)這入(はい)れたのだ。124(まへ)さまは立派(りつぱ)大和(やまと)(だましひ)生粋(きつすゐ)だと(おも)つてゐるだらうが、125(この)金毛(きんまう)九尾(きうび)から()れば、126大和(やまと)(だましひ)どころか山子(やまこ)だましの身魂(みたま)だよ。127相応(さうおう)()によつて、128破鍋(われなべ)にトヂ蓋式(ぶたしき)自然(しぜん)(むす)ばれた因縁(いんねん)だから、129何程(なにほど)もがいても()うしても、130(この)悪縁(あくえん)()ることは出来(でき)ませぬぞや、131(まへ)さまも是非(ぜひ)なき(こと)断念(だんねん)して、132(わが)()因縁(いんねん)(うら)めるより仕方(しかた)がないぢやありませぬか。133霊肉(れいにく)不二(ふじ)関係(くわんけい)()つてゐる肉体(にくたい)(この)(はう)とが、134何時(いつ)もこれだけ衝突(しようとつ)をして()つては(たがひ)迷惑(めいわく)……(いな)大損害(だいそんがい)ですよ。135チツとはお(まへ)さまも大目(おほめ)()(もら)はなくちや、136わしだつて、137さう(いぢ)められてばかり()つても、138()()がないぢやないか』
139高姫(いま)(まで)なれば少々(せうせう)のことは大目(おほめ)にみておくが、140(まへ)()つて()るだらう、141斎苑(いそ)(やかた)(ござ)つた三五教(あななひけう)三羽烏(さんばがらす)杢助(もくすけ)(さま)がお()でになり、142(この)肉体(にくたい)(をつと)となられ、143(また)立派(りつぱ)(むすめ)初稚姫(はつわかひめ)此処(ここ)(わし)()となつて()たのだから、144余程(よほど)心得(こころえ)(もら)はなくては、145(いま)(まで)とは(ちが)ひますぞや。146(いま)(まで)(この)高姫(たかひめ)(ほとん)独身(どくしん)同様(どうやう)であつた。147大将軍(だいしやうぐん)(さま)肉宮(にくみや)はあの(とほ)りお(ひと)よしだから、148どうでもよい(やう)なものだつたが、149今度(こんど)摩利支天(まりしてん)(さま)肉宮(にくみや)が、150(この)肉体(にくたい)(をつと)とお()(あそ)ばしたのだから、151(まへ)さまの自由(じいう)ばかりになつてゐる(わけ)には()かぬから、152(その)(つも)りで()つて(くだ)されや』
153(腹の中から)『それは肉体(にくたい)のすることだから()へて干渉(かんせふ)はしないが、154(しか)しながら、155初稚姫(はつわかひめ)といふ(をんな)(なん)だか(むし)()かぬ(をんな)だ。156(まへ)物好(ものずき)な、157他人(ひと)()(わが)()にせなくてもよいぢやないか』
158高姫馬鹿(ばか)だなア、159あの初稚姫(はつわかひめ)本当(ほんたう)掘出(ほりだ)(もの)だよ。160柔順(じうじゆん)賢明(けんめい)(しか)して(ひと)には信用(しんよう)があるなり、161あんな(むすめ)使(つか)はずに、162どうして神業(しんげふ)完全(くわんぜん)出来(でき)るのだ。163(まへ)改心(かいしん)して五六七(みろく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(ため)活動(くわつどう)するならば、164これ(ほど)大慶(たいけい)(こと)はないぢやないか。165変性(へんじやう)男子(なんし)(さま)(なが)らくの(あひだ)()苦労(くらう)()艱難(かんなん)(あそ)ばして、166此処(ここ)まで麻柱(あななひ)(みち)をお(ひら)(あそ)ばし、167(また)都合(つがふ)によつてウラナイ(けう)()(ひら)(あそ)ばしたのだから、168(あく)微塵(みじん)でもあつたら、169(この)(こと)成就(じやうじゆ)(いた)しませぬぞや』
170(腹の中から)『それでも、171(まへ)172三五教(あななひけう)をやめてウラナイ(けう)()てようと、173昨日(きのふ)もいつたぢやないか。174どちらを()てて()くのだ。175それからきめて(もら)はなくちや、176此方(こつち)(こま)るぢやないか』
177高姫変性(へんじやう)男子(なんし)のお(ふで)には……三五教(あななひけう)ばかりでないぞよ。178(この)(かみ)はまだ(ほか)にも仕組(しぐみ)(いた)してあるぞよ。179ウツカリ(いた)して()ると、180結構(けつこう)神徳(しんとく)(ほか)()られて(しま)ふぞよ……とお(しめ)しになつて()るだろ、181(この)(ごろ)斎苑(いそ)(やかた)役員(やくゐん)(ども)()(かた)()つたら、182サツパリ変性(へんじやう)女子(によし)(をしへ)ばかり(いた)して、183男子(なんし)(さま)()苦労(くらう)(みづ)(あわ)(いた)さうとするによつて、184(ふで)()いてある(とほ)り、185系統(ひつぽう)身魂(みたま)(この)(はう)が、186()むを()ずしてウラナイ(けう)()てるのだ、187(しか)しながら秘密(ひみつ)何処(どこ)までも秘密(ひみつ)だから、188(おもて)はヤツパリ三五教(あななひけう)標榜(へうばう)し、189(その)内実(ないじつ)はウラナイ(けう)()てるのだよ。190よいか、191合点(がてん)がいただらうなア』
192(腹の中から)『コレ肉体(にくたい)さま、193ソリヤ二股(ふたまた)膏薬(かうやく)といふものではないかなア。194いつも(あく)(いや)(いや)だと()(くせ)に、195なぜ(その)(やう)謀反(むほん)(おこ)すのだい。196(ぜん)(ひと)つを()てぬくのなれば、197(まへ)舎身(しやしん)(てき)活動(くわつどう)をして三五教(あななひけう)(あやま)つてゐる行方(やりかた)改良(かいりやう)さして、198(ひと)つの(みち)でやつて()つたらいいぢやないか。199さうするとヤツパリ肉体(にくたい)(ぜん)(おもて)標榜(へうばう)し、200自我(じが)()(とほ)(ため)結局(けつきよく)(あく)(たく)んでゐるのだなア。201サウすりや(なに)も、202わしのすることや()ふことをゴテゴテいふには(およ)ばぬぢやないか。203(おな)(あな)(おほかみ)だ。204怪狼(くわいらう)同狐(どうけつ)間柄(あひだがら)ぢやないか。205(まへ)(ぜん)か、206(おれ)(あく)か、207(はかり)にかけたら何方(どちら)(あが)るやら、208(わづ)かに五十歩(ごじつぽ)五十一(ごじふいつ)()との(ちが)ひだらう。209どうぢや肉体(にくたい)210これでも返答(へんたふ)(ござ)るかな、211ウツフツフ』
212高姫『コリヤ、213(やかま)しいワイ。214そこは、215それ、216(かみ)(おく)には(おく)があり、217(その)(また)(おく)には(おく)があるのだ。218()れてバラバラ(あふぎ)(かなめ)……といふ(なぞ)を、219(まへ)()らぬのか……十五夜(じふごや)(かた)われ(づき)があるものか、220(くも)にかくれてここに半分(はんぶん)……だ』
221(腹の中から)『ハツハハ、222イヤ、223チツとばかり了解(れうかい)した。224……(この)(はら)(くろ)尉殿(じやうどの)一旦(いつたん)改心(かいしん)(さか)(とほ)()し、225(また)もや慢心(まんしん)(まを)(もと)屋敷(やしき)にお(なほ)(さふらふ)……だな、226イツヒツヒ。227それならさうと、228なぜ(はじ)めから()つてくれないのだ。229コツチにも方針(はうしん)があるのだから……(おれ)(むかし)から金毛(きんまう)九尾(きうび)といつて、230随分(ずいぶん)(あく)(つく)して()たのだが、231(はら)(くろ)人間(にんげん)腹中(ふくちう)は、232自分(じぶん)現在(げんざい)這入(はい)つて()りながら、233(わか)らぬものだ。234いかにも人間(にんげん)といふものは重宝(ちようほう)なものだなア。235偽善(ぎぜん)徹底(てつてい)(てき)遂行(すゐかう)するには、236本当(ほんたう)重宝(ちようはう)唯一(ゆゐいつ)無二(むに)のカラクリだ、237イツヒヒヒ。238それを()いて(この)金毛(きんまう)九尾(きうび)もスツカリと安心(あんしん)(いた)したぞや。239サア(はじ)めてお(まへ)()()けてくれたのだから、240今日(けふ)(くらゐ)心地(ここち)よいことはないワ、241のう大蛇(をろち)よ、242(さる)よ、243(くろ)よ、244(がま)よ、245(まめ)よ、246本当(ほんたう)岩戸(いはと)(ひら)けたやうな気分(きぶん)がするぢやないか』
247 (はら)(なか)から(ちが)うた(こゑ)で、
248(腹の中から違う声で)『ウン ウン ウン ウン、249さうさう、250これでこそ、251(わし)たちも安心(あんしん)だ。252流石(さすが)金毛(きんまう)九尾(きうび)さまだけあつて、253よくマア肉体(にくたい)と、254其処(そこ)まで談判(だんぱん)して(くだ)さつた。255ああ有難(ありがた)有難(ありがた)い』
256 腹中(ふくちう)より(また)もや以前(いぜん)(こゑ)で、
257(腹の中から)『さうだから、258(この)金毛(きんまう)九尾(きうび)さまに(したが)へと()ふのだ。259これから高姫(たかひめ)肉体(にくたい)をかつて、260三千(さんぜん)世界(せかい)自由(じいう)自在(じざい)(いた)すのだ。261それに()いては()第一(だいいち)三五教(あななひけう)崩壊(ほうくわい)し、262ウラナイ(けう)()てて(ぜん)仮面(かめん)(かぶ)り、263現界(げんかい)人間(にんげん)(かた)(ぱし)から兇党界(きようたうかい)引張(ひつぱ)()んで(しま)ふのだ。264最早(もはや)肉体(にくたい)(こころ)()()けた以上(いじやう)は、265(なん)()つても()(なほ)しはささない。266()しも最前(さいぜん)言葉(ことば)肉体(にくたい)(そむ)きよつたら、267(まへ)たちはおれの命令(めいれい)一下(いつか)(とも)に、268そこら(ぢう)引張(ひつぱ)りまはし(くるし)めてやるのだよ』
269高姫『コラ、270そんな無茶(むちや)相談(さうだん)(いた)すといふことがあるか、271(おもて)(おもて)272(うら)(うら)だ。273さうお(まへ)のやうに露骨(ろこつ)()つちや、274肝腎(かんじん)大望(たいまう)成就(じやうじゆ)せぬぢやないか』
275(腹の中から)(なに)276(まへ)(みみ)内部(ないぶ)から(つた)はるだけのもので、277(けつ)して外部(ぐわいぶ)へは()れる気遣(きづか)ひはない。278(まへ)さへ(しやべ)らなかつたら、279それでいいのだ』
280高姫『ソリヤさうだな、281それならマア、282十分(じふぶん)にお(まへ)千騎(せんき)一騎(いつき)活動(くわつどう)(いた)すがよいぞや。283この高姫(たかひめ)()りかけた(ふね)だ、284何処(どこ)までも初心(しよしん)貫徹(くわんてつ)せなくちやおかないのだからな。285ドレドレ、286モウ初稚(はつわか)(かへ)つて()時分(じぶん)だ。287(おも)はず守護神(しゆごじん)談判(だんぱん)をして()つたものだから、288つひ(とき)()つのも(わす)れてゐた。289(しか)初稚姫(はつわかひめ)()いてゐやせなんだか()らぬて、290(なん)だか気掛(きがか)りでならないワ』
291といひながら、292サツと障子(しやうじ)をあけて長廊下(ながらうか)(なが)めた。293初稚姫(はつわかひめ)(すすき)()れた()(ひと)つかみ(にぎ)りながら、294他愛(たあい)もなく(あそ)(たはむ)れ、295廊下(らうか)一本(いつぽん)一本(いつぽん)さして(あそ)んでゐる。296その無邪気(むじやき)光景(くわうけい)(なが)めて、297高姫(たかひめ)はホツと一息(ひといき)し、
298高姫(なん)とマア無邪気(むじやき)()だこと、299枯尾花(かれをばな)(いた)()隙間(すきあひ)()(なら)べて(あそ)んでゐるのだもの。300(おほ)きな図体(づうたい)をしながら、301そして十七(じふしち)にもなりながら、302未通(おぼ)こい(むすめ)だなア。303本当(ほんたう)水晶魂(すいしやうだま)だ。304この高姫(たかひめ)がうまく仕込(しこ)んでやれば、305完全(くわんぜん)改悪(かいあく)して立派(りつぱ)なウラナイ(けう)宣伝使(せんでんし)になるだらう。306(なん)()つても杢助(もくすけ)さまと()父親(てておや)掌中(しやうちう)(にぎ)つてゐるのだから大丈夫(だいぢやうぶ)だ。307東助(とうすけ)さまに肱鉄(ひぢてつ)をかまされ、308大勢(おほぜい)(まへ)(はぢ)をかかされて、309(くや)残念(ざんねん)さをこばつて、310此処(ここ)まで()()れば、311こんな都合(つがふ)()いことが出来(でき)()た。312あああ、313人間(にんげん)万事(ばんじ)塞翁(さいをう)(うま)(くそ)とやら、314(くる)しい(あと)には(たの)しみがあり、315(たの)しみの(あと)には(くる)しみが()るぞよ、316改心(かいしん)なされよ……と男子(なんし)(さま)のお筆先(ふでさき)にチヤンと()()る。317高姫(たかひめ)もまだ天運(てんうん)()きないと……あ……()えるワイ、318エツヘヘヘ、319変性(へんじやう)男子(なんし)(さま)320大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)(さま)321(まも)(たま)(さきは)(たま)へ』
322(腹の中から)『オツホツホホホ、323オイ肉体(にくたい)324大変(たいへん)元気(げんき)だなア、325(うま)()きさうだのう。326吾々(われわれ)一団体(いちだんたい)兇霊(きようれい)連中(れんちう)満足(まんぞく)してゐる。327どうだ、328チツと(うた)でもうたつたら面白(おもしろ)からうに……のう』
329高姫『コリヤ、330(なん)()不心得(ふこころえ)なことをいふか。331世界(せかい)暗雲(やみくも)になり、332(ほとん)泥海(どろうみ)のやうになつてゐるのに、333そんな陽気(やうき)なことで、334どうして(まこと)(つらぬ)けるか。335変性(へんじやう)男子(なんし)(さま)のお筆先(ふでさき)(なん)心得(こころえ)てゐる、336チツと改心(かいしん)したがよからうぞ』
337(腹の中から)『アハハハハ、338善悪(ぜんあく)不二(ふじ)339正邪(せいじや)一如(いちによ)といふ(うま)筆法(ひつぱふ)だなア。340(いち)(まい)(かみ)にも裏表(うらおもて)のあるものだから……』
341高姫『シーツ、342(いま)そこへ初稚姫(はつわかひめ)()()るぢやないか、343チツと心得(こころえ)ないか』
344(腹の中から)(こゑ)がせないと、345チツとも姿(すがた)()えぬものだから、346これはエライ不調法(ぶてうはふ)(いた)しました。347オオ()はオオ()は、348肉体(にくたい)権幕(けんまく)には(おれ)往生(わうじやう)(いた)したワイ』
349 初稚姫(はつわかひめ)何気(なにげ)なき(てい)(よそほ)ひ、350ニコニコしながら()(きた)り、
351初稚姫『お()アさま、352とうとうスマートをぼつ(かへ)して()ましたよ。353(めう)(いぬ)でしてね、354何程(なにほど)()つかけても(あと)(かへ)つて()仕方(しかた)がありませぬので、355(わたし)(こま)りましたよ』
356高姫『ああさうだろさうだろ、357あれ(だけ)(まへ)につき(まと)うて()つたのだから、358(はな)れともなかつただらう。359(なん)()つても畜生(ちくしやう)だから人間(にんげん)()ふこた(わか)らず、360(さぞ)骨折(ほねをり)だつたろ。361(しか)しマアよう()にましたなア』
362初稚姫『ハイ、363仕方(しかた)がないので、364(いし)(ひろ)つて(いつ)(むつ)(あたま)にかちつけてやりましたの。365そしたら(あたま)(ふた)つにポカンと()れて大変(たいへん)()()し、366(いや)らしい(こゑ)()して()げて(かへ)りましたの』
367高姫『それは本当(ほんたう)に、368気味(きみ)のよいこと……ウン、369オツトドツコイ、370気味(きみ)(わる)いことだつたね。371大変(たいへん)にお(まへ)(うら)んで()つただらうなア』
372初稚姫何程(なにほど)ウラナイ(けう)だとて、373(うら)みも(いた)しますまい、374ホホホ』
375高姫『や、376初稚(はつわか)さま、377(まへ)(いま)ウラナイ(けう)()ひましたね、378(たれ)にそんなことをお()きになつたのだえ』
379初稚姫『お()アさま、380(おもて)はね、381三五教(あななひけう)で、382(その)内実(ないじつ)は、383()アさまのお(ひら)(あそ)ばしたウラナイ(けう)(はう)()いぢやありませぬか。384(わたし)385ウラナイ(けう)大好(だいす)きなのよ』
386高姫『オホホホホ、387ヤツパリお(まへ)(わし)大事(だいじ)()だ、388(なん)(かしこ)(もの)だなア。389これでこそ三五教(あななひけう)崩壊(ほうくわい)の……ウン……トコドツコイ、390法界(ほふかい)危急(ききふ)完全(くわんぜん)救済(きうさい)することが出来(でき)ませうぞや』
391初稚姫『さうですなア。392(まこと)さへ()てば、393()()うでもいいぢやありませぬか』
394 高姫(たかひめ)(くび)(しき)りにシヤクリながら、395(ゑみ)満面(まんめん)(たた)へて、
396高姫『コレ初稚(はつわか)さま、397()アさまは、398これからお(とう)さまをお(むか)(まを)してくるから、399(まへ)さまは(しばら)事務所(じむしよ)へでも()つて(あそ)んで()(くだ)さい。400こんな(ところ)一人(ひとり)()いとくのも()(どく)だからなア』
401初稚姫『お()アさま、402そんなに(なが)時間(じかん)がかかるのですか』
403高姫『さう(なが)くもかからない(つもり)だが、404(なん)()つてもあの(とほ)り、405()ひかけたら(あと)()かぬ杢助(もくすけ)さまだから、406(いぬ)()なしたことから、407(その)(ほか)(まへ)さまの(はら)(そこ)を、408トツクリと()得心(とくしん)なさるやうに申上(まをしあ)げねばならぬから、409チツとばかり(ひま)()るかも()れませぬからなア』
410初稚姫『お()アさま、411(わたし)もお(とも)(いた)しませうか』
412高姫『イヤイヤそれには(およ)びませぬ。413(また)杢助(もくすけ)(さま)に、414どんな()意見(いけん)があるか()れませぬから、415(かへ)つてお(まへ)さまが(そば)にゐない(はう)が、416双方(さうはう)(ため)都合(つがふ)がいいかも()れませぬ。417一寸(ちよつと)其処(そこ)まで()つて(まゐ)ります』
418とイソイソとして()でて()く。419(あと)見送(みおく)つて初稚姫(はつわかひめ)はニツコと(わら)ひ、420イソイソとして珍彦(うづひこ)居間(ゐま)(たづ)ね、421同年輩(どうねんぱい)楓姫(かへでひめ)とあどけなき(はなし)交換(かうくわん)しながら(とき)(うつ)してゐる。
422大正一二・一・二〇 旧一一・一二・四 松村真澄録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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