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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第50巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 和光同塵
第1章 至善至悪
第2章 照魔燈
第3章 高魔腹
第4章 御意犬
第2篇 兇党擡頭
第5章 霊肉問答
第6章 玉茸
第7章 負傷負傷
第8章 常世闇
第9章 真理方便
第3篇 神意と人情
第10章 据置貯金
第11章 鸚鵡返
第12章 敵愾心
第13章 盲嫌
第14章 虬の盃
第4篇 神犬の言霊
第15章 妖幻坊
第16章 鷹鷲掴
第17章 偽筆
第18章 安国使
第19章 逆語
第20章 悪魔払
第21章 犬嘩
余白歌
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<<< 真理方便
(B)
(N)
鸚鵡返 >>>
第一〇章
据置
(
すゑおき
)
貯金
(
ちよきん
)
〔一三〇四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
篇:
第3篇 神意と人情
よみ(新仮名遣い):
しんいとにんじょう
章:
第10章 据置貯金
よみ(新仮名遣い):
すえおきちょきん
通し章番号:
1304
口述日:
1923(大正12)年01月21日(旧12月5日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月7日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
誰言うともなく、祠の森に獅子・虎両性の怪物が現れて人間に化けて主管している、という噂が立ち、ここ二三日は祠の森に誰も立ちよらなくなってしまった。受付も事務室もきわめて閑散としていた。
珍彦は相変わらず至誠神に仕え、参拝者の有無にかかわらず朝と晩のお給仕を忠実に勤めている。イル、イク、サール、ハル、テルの五人は仕事をほったらかして、酒と肴を携えて祠の森のもっとも風景の良い場所で飲み始めた。
次第に一同は酔ってきて、イルが初稚姫と間違えてスマートの手を握って耳を噛まれた馬鹿話を披露した。また一同が話にふけっていると、森の彼方から楓が呼ぶ声がする。五人はバタバタと事務所をさして帰って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-07-17 17:56:37
OBC :
rm5010
愛善世界社版:
135頁
八幡書店版:
第9輯 199頁
修補版:
校定版:
141頁
普及版:
70頁
初版:
ページ備考:
001
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
には
誰
(
たれ
)
云
(
い
)
ふとなく
獅子
(
しし
)
、
002
虎
(
とら
)
両性
(
りやうせい
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
が
現
(
あら
)
はれ、
003
人間
(
にんげん
)
に
化
(
ば
)
けてゐる。
004
その
人間
(
にんげん
)
が
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
主管者
(
しゆくわんしや
)
だから、
005
ウツカリ
詣
(
まゐ
)
らうものなら
喰
(
く
)
はれて
了
(
しま
)
ふと
云
(
い
)
ふ
評判
(
ひやうばん
)
がパツと
立
(
た
)
つた。
006
それ
故
(
ゆゑ
)
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
連中
(
れんちう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
恐怖心
(
きようふしん
)
にかられて、
007
ここ
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
は
誰
(
たれ
)
も
寄
(
よ
)
りつかなかつた。
008
受付
(
うけつけ
)
も
事務室
(
じむしつ
)
も
極
(
きは
)
めて
閑散
(
かんさん
)
である。
009
只
(
ただ
)
相変
(
あひかは
)
らず
忙
(
いそが
)
しいのは
珍彦
(
うづひこ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
のみである。
010
珍彦
(
うづひこ
)
は
至誠
(
しせい
)
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へ、
011
参拝者
(
さんぱいしや
)
の
有無
(
うむ
)
に
拘
(
かか
)
はらず、
012
朝
(
あさ
)
と
晩
(
ばん
)
とのお
給仕
(
きふじ
)
を
忠実
(
ちうじつ
)
に
行
(
や
)
つてゐる。
013
イル、
014
イク、
015
サール、
016
ハル、
017
テルの
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は、
018
受付
(
うけつけ
)
も
事務室
(
じむしつ
)
もほつたらかしにして、
019
瓢
(
ひさご
)
と
鯣
(
するめ
)
などを
携
(
たづさ
)
へ、
020
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
最
(
もつと
)
も
風景
(
ふうけい
)
佳
(
よ
)
き
日当
(
ひあた
)
りのよい
場所
(
ばしよ
)
を
選
(
えら
)
んで、
021
頻
(
しき
)
りに
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
み
始
(
はじ
)
めた。
022
イク『オイ、
023
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
、
024
何
(
なん
)
とまア
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
も
淋
(
さび
)
しくなつたぢやないか。
025
エー、
026
杢助
(
もくすけ
)
さまが
怪我
(
けが
)
をしたとか
云
(
い
)
つて
踪跡
(
そうせき
)
をくらまし、
027
あの
悪
(
あく
)
たれ
婆
(
ばあ
)
さまの
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまは
杉
(
すぎ
)
の
木
(
き
)
へ
天上
(
てんじやう
)
して
顛倒
(
てんたう
)
し、
028
腰骨
(
こしぼね
)
をしたたか
打
(
う
)
ち、
029
梟鳥
(
ふくろどり
)
の
奴
(
やつ
)
に
両眼
(
りやうがん
)
をこつかれて
顔面
(
がんめん
)
膨
(
ふく
)
れ
上
(
あが
)
り、
030
丸
(
まる
)
でお
化
(
ばけ
)
の
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
つたぢやないか。
031
あんまり
嫌
(
いや
)
らしくなつて
此
(
この
)
神聖
(
しんせい
)
なお
館
(
やかた
)
も
妖怪窟
(
えうくわいくつ
)
の
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になつて
来
(
き
)
て、
032
ジツクリとして
居
(
を
)
られないぢやないか。
033
酒
(
さけ
)
でも
飲
(
の
)
んで
元気
(
げんき
)
をつけなくちやアやりきれないからな。
034
おいイル、
035
貴様
(
きさま
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまのお
世話
(
せわ
)
をして
居
(
ゐ
)
たぢやないか。
036
随分
(
ずいぶん
)
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
かつただらうな』
037
イル
『
何
(
なに
)
、
038
そんな
事
(
こと
)
に
屁古垂
(
へこた
)
れるイルさまぢやないわ。
039
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
善悪
(
ぜんあく
)
相混
(
あひこん
)
じ
美醜
(
びしう
)
互
(
たがひ
)
に
相交
(
あひまじ
)
はると
云
(
い
)
ふからな。
040
一方
(
いつぱう
)
には
醜
(
しう
)
の
醜
(
しう
)
、
041
悪
(
あく
)
の
悪
(
あく
)
なる
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
ながら、
042
又
(
また
)
一方
(
いつぱう
)
には
善
(
ぜん
)
の
善
(
ぜん
)
、
043
美
(
び
)
の
美
(
び
)
なる
天女
(
てんによ
)
のやうな
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
紅顔
(
こうがん
)
麗容
(
れいよう
)
を
拝
(
はい
)
してゐるのだから、
044
相当
(
さうたう
)
に
調和
(
てうわ
)
がとれるよ。
045
美
(
うつく
)
しいものばかり
見
(
み
)
てゐると、
046
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
瞳孔
(
どうこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
047
増長
(
ぞうちよう
)
しやがつて
美
(
うつく
)
しいものも
美
(
うつく
)
しうない
様
(
やう
)
になるものだが、
048
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
極端
(
きよくたん
)
な
妖怪
(
えうくわい
)
的
(
てき
)
醜面
(
しこづら
)
と
又
(
また
)
極端
(
きよくたん
)
な
芙蓉
(
ふよう
)
の
顔
(
かんばせ
)
月
(
つき
)
の
眉
(
まゆ
)
、
049
雪
(
ゆき
)
の
肌
(
はだへ
)
、
050
日月
(
じつげつ
)
の
眼
(
まなこ
)
、
051
花
(
はな
)
の
姿
(
すがた
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
を
見返
(
みかへ
)
つた
時
(
とき
)
には
其
(
その
)
反動力
(
はんどうりよく
)
とでも
云
(
い
)
はうか、
052
其
(
その
)
美
(
び
)
は
益々
(
ますます
)
美
(
び
)
に
見
(
み
)
え
善
(
ぜん
)
は
益々
(
ますます
)
善
(
ぜん
)
と
映
(
えい
)
ずるのだ。
053
それだから
辛抱
(
しんぼう
)
が
出来
(
でき
)
たものだよ。
054
いや
結句
(
けつく
)
、
055
辛抱
(
しんばう
)
どころか、
056
得
(
え
)
も
云
(
い
)
はれぬ
歓喜
(
くわんき
)
悦楽
(
えつらく
)
の
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
ふのだ。
057
イツヒヒヒヒヒ』
058
サール『おい、
059
イル、
060
それ
程
(
ほど
)
高姫
(
たかひめ
)
さまの
側
(
そば
)
が
結構
(
けつこう
)
なら、
061
何故
(
なぜ
)
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
までくつついてゐないのだ。
062
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
様
(
やう
)
な
醜面
(
しこづら
)
の
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て、
063
口賤
(
くちいや
)
しい
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
はなくても、
064
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
恍惚
(
くわうこつ
)
として
心魂
(
しんこん
)
を
蕩
(
とろ
)
かし、
065
酔
(
よ
)
うてゐたら
宜
(
い
)
いぢやないか』
066
イル
『それもさうぢやが、
067
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が「あたえ、
068
一人
(
ひとり
)
でお
世話
(
せわ
)
を
致
(
いた
)
しますから、
069
イルさまは
何卒
(
どうぞ
)
休
(
やす
)
んで
頂戴
(
ちやうだい
)
ね、
070
又
(
また
)
御用
(
ごよう
)
が
厶
(
ござ
)
りましたらお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しますから」と、
071
それはそれは
同情
(
どうじやう
)
のこもつた
此
(
この
)
イルさまに……ヘヘヘヘヘ、
072
一寸
(
ちよつと
)
細
(
ほそ
)
い
目
(
め
)
を
向
(
む
)
けて
優
(
やさ
)
しい
声
(
こゑ
)
で
仰有
(
おつしや
)
るのだもの、
073
なんぼ
頑固
(
ぐわんこ
)
の
俺
(
おれ
)
だとて、
074
君命
(
くんめい
)
もだし
難
(
がた
)
く
退却
(
たいきやく
)
仕
(
つかまつ
)
ると
云
(
い
)
ふことになつて、
075
暫
(
しばら
)
く
差控
(
さしひか
)
へてゐるのだ』
076
テル『ハハハハハ、
077
馬鹿
(
ばか
)
だな。
078
本当
(
ほんたう
)
に
貴様
(
きさま
)
はお
目出度
(
めでた
)
い
奴
(
やつ
)
だよ。
079
態
(
てい
)
よい
辞令
(
じれい
)
で
肱鉄
(
ひぢてつ
)
をかまされよつたのだ。
080
貴様
(
きさま
)
の
面
(
つら
)
を
水鏡
(
みづかがみ
)
で
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
て
見
(
み
)
よ、
081
薩張
(
さつぱり
)
顔
(
かほ
)
の
詰
(
つめ
)
がぬけて
了
(
しま
)
つてるぢやないか』
082
イル
『ナーニ
吐
(
ぬか
)
しやがるのだい。
083
唐変木
(
たうへんぼく
)
の
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
に
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
るものかい。
084
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
と
俺
(
おれ
)
との
関係
(
くわんけい
)
を
貴様
(
きさま
)
知
(
し
)
つてるのか。
085
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
、
086
不言
(
ふげん
)
不語
(
ふご
)
の
間
(
うち
)
に
於
(
おい
)
て
万世
(
ばんせい
)
不易
(
ふえき
)
の
愛的
(
あいてき
)
連鎖
(
れんさ
)
が
結
(
むす
)
ばれてあるのだ。
087
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬな、
088
エツヘヘヘヘヘ。
089
エー、
090
涎
(
よだれ
)
の
奴
(
やつ
)
、
091
イルさまの
許可
(
きよか
)
も
無
(
な
)
くして
勝手
(
かつて
)
気儘
(
きまま
)
に
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるかい。
092
何程
(
なにほど
)
俺
(
おれ
)
がデレルと
云
(
い
)
うても、
093
貴様
(
きさま
)
までが
勝手
(
かつて
)
にデレルとはチツト
越権
(
ゑつけん
)
だぞ。
094
ウツフフフフフ』
095
と
云
(
い
)
ひながら
牛
(
うし
)
の
様
(
やう
)
な
粘液性
(
ねんえきせい
)
に
富
(
と
)
んだ
細
(
ほそ
)
い
涎
(
よだれ
)
を
手繰
(
たぐ
)
つてゐる。
096
テル『ハハハハハ、
097
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
てゐやがつたな。
098
貴様
(
きさま
)
と
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
との
関係
(
くわんけい
)
と
云
(
い
)
ふのは、
099
只
(
ただ
)
主
(
しゆ
)
と
僕
(
ぼく
)
との
関係
(
くわんけい
)
だ。
100
到底
(
たうてい
)
夫婦
(
ふうふ
)
なんぞと、
101
そんな
事
(
こと
)
は
柄
(
がら
)
にないわ』
102
イル『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
103
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
美貌
(
びばう
)
を
幻
(
うつつ
)
になつて
眺
(
なが
)
めてゐたものだから、
104
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまの
命令
(
めいれい
)
も
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
らず、
105
ポカンとして
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
を、
106
高姫
(
たかひめ
)
の
奴
(
やつ
)
目
(
め
)
も
見
(
み
)
えない
癖
(
くせ
)
に、
107
ポカンとやりやがつたのだ』
108
テル
『
愈
(
いよいよ
)
三段目
(
さんだんめ
)
になつて
来
(
き
)
たな。
109
さア
一杯
(
いつぱい
)
グツと
飲
(
の
)
んで、
110
正念場
(
しやうねんば
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はうかい』
111
イル
『
酒
(
さけ
)
の
一杯
(
いつぱい
)
や
二杯
(
にはい
)
では、
112
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
は
渡
(
わた
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないわ。
113
此
(
この
)
上
(
うへ
)
話
(
はな
)
して
聞
(
き
)
かした
処
(
ところ
)
で、
114
下根
(
げこん
)
のお
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
、
115
所謂
(
いはゆる
)
八衢
(
やちまた
)
人間
(
にんげん
)
には
到底
(
たうてい
)
解
(
かい
)
し
得
(
え
)
ないから、
116
まア
云
(
い
)
はぬが
花
(
はな
)
として
筐底
(
きやうてい
)
深
(
ふか
)
く
秘
(
ひ
)
めて
置
(
お
)
かう。
117
開
(
あ
)
けて
口惜
(
くや
)
しき
玉手箱
(
たまてばこ
)
でなくて、
118
ぶちあけて
嬉
(
うれ
)
しい
玉手箱
(
たまてばこ
)
、
119
折角
(
せつかく
)
握
(
にぎ
)
つた
運命
(
うんめい
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
に
占領
(
せんりやう
)
されちやア、
120
折角
(
せつかく
)
の
苦心
(
くしん
)
が
水泡
(
すいはう
)
に
帰
(
き
)
するからな』
121
テル
『おい、
122
そんな
出
(
だ
)
し
惜
(
を
)
しみをするものぢやない。
123
其
(
その
)
先
(
さき
)
の
一寸
(
ちよつと
)
小意気
(
こいき
)
な
所
(
ところ
)
を
窺
(
のぞ
)
かしてくれないかい。
124
刀
(
かたな
)
の
鑑定人
(
めきき
)
は、
125
チツト
許
(
ばか
)
り
砥石
(
といし
)
でといで
窓
(
まど
)
をあけ、
126
柄元
(
つかもと
)
の
匂
(
にほ
)
ひを
見
(
み
)
れば、
127
直
(
すぐ
)
に
其
(
その
)
名刀
(
めいたう
)
たり
或
(
あるひ
)
は
鈍刀
(
どんたう
)
たる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
る
如
(
ごと
)
く、
128
此
(
この
)
テルさまは
名
(
な
)
の
如
(
ごと
)
く、
129
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
までよくテルさまだからな』
130
イル
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
131
其
(
その
)
先
(
さき
)
は
余
(
あま
)
りで
云
(
い
)
ふに
忍
(
しの
)
びないのだ』
132
テル
『
忍
(
しの
)
びないとは
何
(
なん
)
だ、
133
ヤツパリやり
損
(
そこ
)
ねたのだな。
134
玉茸
(
たまたけ
)
を
採
(
と
)
り
損
(
ぞこ
)
なつて
梟
(
ふくろ
)
の
宵企
(
よひだく
)
みに
目玉
(
めだま
)
をこつかれた
口
(
くち
)
だらう。
135
ウフフフフフ』
136
イル
『
秘密
(
ひみつ
)
にして
呉
(
く
)
れたら
言
(
い
)
つてやるが、
137
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一生涯
(
いつしやうがい
)
他言
(
たごん
)
はせぬと
云
(
い
)
ふ
誓
(
ちか
)
ひをするか。
138
さうすれば
一部分
(
いちぶぶん
)
位
(
くらゐ
)
はお
祝
(
いはひ
)
に
表示
(
へうじ
)
してやらぬ
事
(
こと
)
もない』
139
四
(
よ
)
人
(
にん
)
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
140
(イク、サール、ハル、テルの四人)
『よし
誓
(
ちか
)
つた。
141
誓
(
ちか
)
つた
以上
(
いじやう
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だからね』
142
イル
『それなら
云
(
い
)
つてやらう。
143
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまが、
144
それはそれは
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
情緒
(
じやうちよ
)
のこもつたお
声
(
こゑ
)
で、
145
柔
(
やはら
)
かい
細
(
ほそ
)
いお
手々
(
てて
)
を
出
(
だ
)
して、
146
「これイルさまえ、
147
お
前
(
まへ
)
もお
母
(
かあ
)
さまのお
世話
(
せわ
)
をして
下
(
くだ
)
さるので、
148
さぞお
疲
(
つか
)
れでせう。
149
何卒
(
どうぞ
)
コーヒーなつと
一杯
(
いつぱい
)
お
飲
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ」……ヘヘヘヘヘなーんて
仰有
(
おつしや
)
つて、
150
それはそれは
情
(
じやう
)
のこもつた
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へて
注
(
つ
)
いで
下
(
くだ
)
さるのだ。
151
それから
頭脳
(
づなう
)
鋭敏
(
えいびん
)
の
某
(
それがし
)
、
152
チヤーンと
相手
(
あひて
)
方
(
がた
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
まで
見
(
み
)
てとり、
153
例
(
れい
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
式
(
しき
)
で
身体
(
からだ
)
をキチンと
整理
(
せいり
)
し、
154
コーヒーを
左手
(
ゆんで
)
に
一寸
(
ちよつと
)
持
(
も
)
ち、
155
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
が
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
様
(
やう
)
なしだらない
事
(
こと
)
はなさらないな。
156
第一
(
だいいち
)
姿勢
(
しせい
)
を
正
(
ただ
)
しうし、
157
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
け「
一
(
オイチ
)
、
158
二
(
ニ
)
、
159
三
(
サン
)
」と、
160
斯
(
か
)
う
空中
(
くうちう
)
に
角度
(
かくど
)
を
描
(
ゑが
)
いて、
161
わが
口中
(
こうちう
)
へ
徐
(
おもむろ
)
に
注入
(
ちゆうにふ
)
した。
162
さア、
163
さうすると
流石
(
さすが
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまも
堪
(
た
)
へきれない
様
(
やう
)
な
笑
(
ゑみ
)
を
洩
(
もら
)
して、
164
「ホホホホホ」と
鶯
(
うぐひす
)
のさね
渡
(
わた
)
りの
様
(
やう
)
な
美声
(
びせい
)
妙音
(
めうおん
)
を
放
(
はな
)
つて
笑
(
わら
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
165
さうすると
一方
(
いつぱう
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
る
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
奴
(
め
)
、
166
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えないものだから
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
に
喰
(
く
)
つてかかり「これ
初稚
(
はつわか
)
、
167
お
前
(
まへ
)
は
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
親
(
おや
)
が
苦
(
くる
)
しんでゐるのに、
168
何
(
なに
)
面白
(
おもしろ
)
さうに
笑
(
わら
)
ふのだい。
169
小気味
(
こぎみ
)
がよいのかい」
等
(
など
)
と
意地苦根
(
いぢくね
)
の
悪
(
わる
)
い、
170
あの
優
(
やさ
)
しいお
姫
(
ひめ
)
さまに
毒
(
どく
)
ついてゐるのだ。
171
憎
(
にく
)
いの
何
(
なん
)
のと、
172
此
(
この
)
時
(
とき
)
こそは
愛人
(
あいじん
)
の
為
(
ため
)
に
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つてお
目
(
め
)
にかけむと
奮然
(
ふんぜん
)
として
立上
(
たちあが
)
り、
173
高姫
(
たかひめ
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
目
(
め
)
がけて
骨
(
ほね
)
も
挫
(
くじ
)
けよと
許
(
ばか
)
り「ウーン」と
叩
(
たた
)
いたと
思
(
おも
)
へば
火鉢
(
ひばち
)
の
角
(
かど
)
だつた、
174
アハハハハ。
175
よくよく
見
(
み
)
れば
指
(
ゆび
)
から
血
(
ち
)
が
滲
(
にじ
)
んでゐる。
176
そこで「
痛
(
いた
)
い」と
云
(
い
)
はむとせしが
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
しだ。
177
それはそれ、
178
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
監視
(
かんし
)
して
厶
(
ござ
)
るだらう。
179
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
中
(
なか
)
を
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
勇往
(
ゆうわう
)
邁進
(
まいしん
)
し、
180
砲煙
(
はうえん
)
弾雨
(
だんう
)
を
物
(
もの
)
ともしない
軍人
(
ぐんじん
)
の
某
(
それがし
)
、
181
マサカ
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
く
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
182
痛
(
いた
)
さうな
顔
(
かほ
)
も
出来
(
でき
)
ないのだから
随分
(
ずいぶん
)
我慢
(
がまん
)
したね。
183
さうすると、
184
又
(
また
)
もや
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
梅花
(
ばいくわ
)
の
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
いて、
185
鶯
(
うぐひす
)
でも
囀
(
さへづ
)
つてゐるやうに「ホホホホホ」と
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
をお
洩
(
もら
)
し
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
186
そこで
此
(
この
)
イルさまが「これはしたり、
187
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
」とやつたね』
188
テル『うーん
面白
(
おもしろ
)
いね。
189
談
(
だん
)
益々
(
ますます
)
佳境
(
かきやう
)
に
入
(
い
)
りけりだ。
190
謹聴
(
きんちやう
)
々々
(
きんちやう
)
』
191
イル
『さうすると
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
るのに「あのまあイルさまの
勇壮
(
ゆうさう
)
なお
顔
(
かほ
)
、
192
口
(
くち
)
を
へ
の
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
び
眉間
(
みけん
)
に
迄
(
まで
)
皺
(
しわ
)
を
寄
(
よ
)
せて
厶
(
ござ
)
るお
姿
(
すがた
)
は、
193
ビリケンの
化相
(
けさう
)
した
山門
(
さんもん
)
の
仁王
(
にわう
)
さま
見
(
み
)
た
様
(
やう
)
だわ」と
仰有
(
おつしや
)
るのだ、
194
エヘヘヘヘヘ。
195
ここに
初
(
はじ
)
めて
某
(
それがし
)
のヒーロー
豪傑
(
がうけつ
)
たる
真相
(
しんさう
)
を
認
(
みと
)
められたと
思
(
おも
)
つた
時
(
とき
)
の
嬉
(
うれ
)
しさ、
196
勇
(
いさ
)
ましさ、
197
イヤ
早
(
はや
)
形容
(
けいよう
)
すべき
言語
(
げんご
)
もない
位
(
くらゐ
)
だつた』
198
サール『
馬鹿
(
ばか
)
、
199
貴様
(
きさま
)
、
200
馬鹿
(
ばか
)
にしられ
居
(
を
)
つてそれが
嬉
(
うれ
)
しいのか。
201
恋
(
こひ
)
に
恍
(
とぼ
)
けた
奴
(
やつ
)
の
目
(
め
)
には、
202
何
(
なん
)
でもかんでも
愛
(
あい
)
に
映
(
えい
)
ずるのだから
堪
(
たま
)
らぬのだ。
203
本当
(
ほんたう
)
に
此奴
(
こいつ
)
は
睾玉
(
きんたま
)
を
落
(
おと
)
して
来
(
き
)
よつたのだよ』
204
イル
『こりや、
205
サール、
206
黙
(
だま
)
つて
聞
(
き
)
かう。
207
聴講者
(
ちやうかうしや
)
の
妨害
(
ばうがい
)
となるのを
知
(
し
)
らぬか。
208
あまり
騒擾
(
さうぜう
)
致
(
いた
)
すと
会堂外
(
くわいだうぐわい
)
へ
退去
(
たいきよ
)
を
命
(
めい
)
ずるぞ』
209
サール
『ヘヘヘヘヘ、
210
あーあ、
211
あーあ、
212
化物
(
ばけもの
)
屋敷
(
やしき
)
ぢやないが、
213
アークビ
が
出
(
で
)
るわい』
214
テル『おい、
215
イル
公
(
こう
)
、
216
サールなどに
構
(
かま
)
はずドシドシと
長口舌
(
ちやうこうぜつ
)
を
運転
(
うんてん
)
さしてくれ。
217
機関
(
きくわん
)
の
油
(
あぶら
)
がきれたら
又
(
また
)
このアルコールをグツと
注
(
さ
)
してやるからな』
218
イル
『
竹林
(
ちくりん
)
の
七賢人
(
しちけんじん
)
でなくて、
219
森林
(
しんりん
)
の
四賢
(
しけん
)
一
(
いち
)
愚人
(
ぐじん
)
がここに
集
(
あつ
)
まつて
林間酒
(
りんかんさけ
)
を
暖
(
あたた
)
めながら、
220
田原峠
(
たぱるたうげ
)
の
実戦
(
じつせん
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
実地
(
じつち
)
に
臨
(
のぞ
)
んだ
其
(
その
)
勇士
(
ゆうし
)
から
聞
(
き
)
くのだから、
221
随分
(
ずいぶん
)
勇壮
(
ゆうさう
)
なものだぞ。
222
謹
(
つつし
)
んで
聞
(
き
)
かないと、
223
再
(
ふたた
)
び
斯様
(
かやう
)
な
面白
(
おもしろ
)
き
趣味
(
しゆみ
)
津々
(
しんしん
)
たるローマンスは
一生涯
(
いつしやうがい
)
聞
(
き
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないぞ』
224
テル
『うん、
225
さうだろ さうだろ。
226
之
(
これ
)
からが
正念場
(
しやうねんば
)
だ』
227
と
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をしながら
肱
(
ひぢ
)
を
張
(
は
)
り、
228
自分
(
じぶん
)
がやつた
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
で
二足
(
ふたあし
)
三足
(
みあし
)
前
(
まへ
)
へニジリ
寄
(
よ
)
り、
229
咬
(
か
)
み
犬
(
いぬ
)
の
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をしてイルの
顔
(
かほ
)
をグツと
見上
(
みあ
)
げてゐる。
230
イルは
演説
(
えんぜつ
)
口調
(
くてう
)
になつて、
231
四辺
(
あたり
)
の
木
(
き
)
の
幹
(
みき
)
に
片手
(
かたて
)
を
支
(
ささ
)
へ、
232
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
腰
(
こし
)
の
辺
(
あた
)
りに
置
(
お
)
き、
233
稍
(
やや
)
反身
(
そりみ
)
になつて
喋々
(
てふてふ
)
と
虚実
(
きよじつ
)
交々
(
こもごも
)
取
(
と
)
りまぜて、
234
講談師
(
かうだんし
)
気分
(
きぶん
)
で
喋
(
しやべ
)
り
始
(
はじ
)
めた。
235
イル
『
扨
(
さ
)
て、
236
前席
(
ぜんせき
)
に
引続
(
ひきつづ
)
きまして
御
(
ご
)
静聴
(
せいちやう
)
を
煩
(
わづら
)
はしまする。
237
愈
(
いよいよ
)
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
、
238
高姫
(
たかひめ
)
の
段
(
だん
)
、
239
三五教
(
あななひけう
)
に
其
(
その
)
人
(
ひと
)
ありと
聞
(
きこ
)
えたるイルの
勇将
(
ゆうしやう
)
に、
240
一方
(
いつぱう
)
は
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
のナイス、
241
初稚姫
(
はつわかひめ
)
との
面白
(
おもしろ
)
き
物語
(
ものがたり
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
242
そこへ
勇猛
(
ゆうまう
)
なる
義犬
(
ぎけん
)
スマートをあしらつた
物語
(
ものがたり
)
で
厶
(
ござ
)
りますれば、
243
益々
(
ますます
)
佳境
(
かきやう
)
に
入
(
い
)
り、
244
お
臍
(
へそ
)
の
宿替
(
やどがへ
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
245
睾玉
(
きんたま
)
の
洋行
(
やうかう
)
致
(
いた
)
さない
様
(
やう
)
、
246
十二分
(
じふにぶん
)
の
御
(
ご
)
注意
(
ちゆうい
)
を
払
(
はら
)
はれむ
事
(
こと
)
を
希望
(
きばう
)
する
次第
(
しだい
)
であります』
247
ハル『おい、
248
そんな
長口上
(
ながこうじやう
)
は
如何
(
どう
)
でもいいわ。
249
早
(
はや
)
く
本問題
(
ほんもんだい
)
に
移
(
うつ
)
らないか』
250
イル
『お
客様
(
きやくさま
)
の
仰
(
おほ
)
せ、
251
御尤
(
ごもつと
)
もには
候
(
さふら
)
へど、
252
今
(
いま
)
申
(
まを
)
したのは
今夕
(
こんせき
)
の
添物
(
そへもの
)
と
致
(
いた
)
しまして、
253
愈
(
いよいよ
)
本問題
(
ほんもんだい
)
に
差
(
さ
)
しかかりまする』
254
テル『おい、
255
最前
(
さいぜん
)
の
様
(
やう
)
に
坐
(
すわ
)
つて
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
みながらやつてくれないか。
256
何
(
なん
)
だか
学術
(
がくじゆつ
)
講演会
(
かうえんくわい
)
へ
出席
(
しゆつせき
)
してる
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がして、
257
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んでる
気分
(
きぶん
)
がせないわ』
258
イル
『
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
とあれば
仰
(
おほ
)
せに
従
(
したが
)
ひ、
259
それでは
一寸
(
ちよつと
)
天降
(
あまくだ
)
りを
致
(
いた
)
し、
260
光
(
ひかり
)
を
和
(
やは
)
らげ
塵
(
ちり
)
に
同
(
まじ
)
はつて、
261
下賤
(
げせん
)
の
人物
(
じんぶつ
)
と
共
(
とも
)
に
兄弟
(
きやうだい
)
の
如
(
ごと
)
く、
262
朋友
(
ほういう
)
の
如
(
ごと
)
く、
263
打解
(
うちと
)
けて
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
を
致
(
いた
)
しませう。
264
ハハハハハ』
265
と
云
(
い
)
ひながらドスンと
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
した
拍子
(
ひやうし
)
に、
266
細
(
ほそ
)
い
木
(
き
)
の
角杭
(
かくくひ
)
の
削
(
そ
)
ぎ
口
(
くち
)
が
槍
(
やり
)
の
様
(
やう
)
に
劣
(
とが
)
つて
居
(
ゐ
)
る
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
尻
(
しり
)
を
下
(
お
)
ろしたのだから
堪
(
たま
)
らない。
267
忽
(
たちま
)
ちブスツと
肛門
(
こうもん
)
に
突入
(
とつにふ
)
し、
268
恰
(
あだか
)
も
粉
(
こな
)
ひき
臼
(
うす
)
の
上臼
(
うはうす
)
の
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
269
イル
『アイタタタ、
270
然
(
しか
)
し
丸
(
まる
)
いものと
云
(
い
)
ふものは
誰
(
たれ
)
でも
狙
(
ねら
)
ふものと
見
(
み
)
えるわい。
271
木
(
き
)
の
株
(
かぶ
)
迄
(
まで
)
が
俺
(
おれ
)
の
尻
(
しり
)
を
狙
(
ねら
)
つて
居
(
ゐ
)
やがる。
272
何程
(
なにほど
)
株
(
かぶ
)
が
流行
(
はや
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
でも、
273
此
(
この
)
株
(
かぶ
)
ばつかりは
御免
(
ごめん
)
だ。
274
然
(
しか
)
し
節季
(
せつき
)
になつて
尻拭
(
しりぬぐ
)
ひが
出来
(
でき
)
ぬと
困
(
こま
)
るから、
275
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
倹約
(
けんやく
)
して
此処
(
ここ
)
にチヤンと
据置
(
すゑおき
)
貯金
(
ちよきん
)
だ。
276
イヒヒヒヒヒ』
277
と
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
肛門
(
こうもん
)
を
破
(
やぶ
)
り
血
(
ち
)
をたらしながら、
278
ズブ
六
(
ろく
)
に
酔
(
よ
)
うて
居
(
ゐ
)
るので、
279
そんな
事
(
こと
)
に
頓着
(
とんちやく
)
なく
滔々
(
たうたう
)
として
弁
(
べん
)
じ
始
(
はじ
)
めた。
280
イル
『さて、
281
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
顔
(
かほ
)
が
目
(
め
)
にちらつき、
282
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れても、
283
寝
(
ね
)
ても
起
(
お
)
きても、
284
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
にでも
俺
(
おれ
)
の
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれるのだ。
285
何
(
なん
)
とまアよく
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまも
惚
(
ほ
)
れたものだな。
286
何処
(
どこ
)
に
行
(
い
)
つてもついて
来
(
き
)
てゐる。
287
据膳
(
すゑぜん
)
喰
(
く
)
はぬは
男
(
をとこ
)
でないと
思
(
おも
)
ひ、
288
轟
(
とどろ
)
く
胸
(
むね
)
をグツと
抑
(
おさ
)
へ、
289
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
してその
優
(
やさ
)
しい
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つた
途端
(
とたん
)
に、
290
「ウー、
291
ワンワン」と
云
(
い
)
つて
俺
(
おれ
)
の
耳
(
みみ
)
たぼに
噛
(
か
)
振
(
ぶ
)
りつき、
292
これ、
293
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
傷
(
きず
)
をさせよつたのだ』
294
テル『
何
(
なん
)
と
顔
(
かほ
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ
恐
(
おそ
)
ろしい
女
(
をんな
)
だな』
295
イル
『
何
(
なに
)
、
296
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
だと
思
(
おも
)
つたら
猛犬
(
まうけん
)
の
手
(
て
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
握
(
にぎ
)
つたものだから、
297
畜生
(
ちくしやう
)
吃驚
(
びつくり
)
して
喰
(
く
)
ひつきよつたのだ、
298
アハハハハハ』
299
サール『
何
(
なん
)
だ。
300
大方
(
おほかた
)
、
301
そこらが
落
(
お
)
ちだと
思
(
おも
)
つてゐたのだ。
302
貴様
(
きさま
)
は
一霊
(
いちれい
)
四魂
(
しこん
)
の
活動
(
くわつどう
)
が
不完全
(
ふくわんぜん
)
だから、
303
そんな
頓馬
(
とんま
)
な
事
(
こと
)
ばかりやりよるのだ。
304
チツと
霊学
(
れいがく
)
の
研究
(
けんきう
)
でもしたら
如何
(
どう
)
だい、
305
男爵
(
だんしやく
)
様
(
さま
)
が
気
(
き
)
をつけるぞや』
306
イル
『ヘン、
307
男爵
(
だんしやく
)
、
308
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
309
貴様
(
きさま
)
は
首陀
(
しゆだ
)
の
生
(
うま
)
れぢやないか』
310
サール
『
男
(
をとこ
)
が
酌
(
しやく
)
をして
飲
(
の
)
むのが
男爵
(
だんしやく
)
だ。
311
私
(
わし
)
が
勝手
(
かつて
)
に
酌
(
しやく
)
をして
飲
(
の
)
むのが
私爵
(
ししやく
)
だ。
312
小酌
(
こしやく
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
さぬぞ』
313
イル
『
俺
(
おれ
)
は
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
口
(
くち
)
から
嘔吐
(
へど
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
吐
(
は
)
いたから
吐
(
は
)
く
酌
(
しやく
)
様
(
さま
)
だ。
314
吐
(
は
)
く
酌
(
しやく
)
として
余裕
(
よゆう
)
ある
一
(
いち
)
丈
(
ぢやう
)
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
だからな』
315
サール
『ヘン、
316
一
(
いち
)
丈
(
ぢやう
)
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
なんて
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
にも
足
(
た
)
らぬ
小男
(
こをとこ
)
奴
(
め
)
、
317
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない』
318
イル
『
八
(
はつ
)
尺
(
しやく
)
と
九
(
く
)
尺
(
しやく
)
とよせて
八九
(
はつく
)
尺
(
しやく
)
だ。
319
一
(
いち
)
丈
(
ぢやう
)
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
と
云
(
い
)
つたのが
何処
(
どこ
)
が
算盤
(
そろばん
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
320
何
(
なん
)
と
粗雑
(
そざつ
)
な
頭脳
(
づなう
)
の
持主
(
もちぬし
)
だな。
321
一霊
(
いちれい
)
四魂
(
しこん
)
が
如何
(
どう
)
だのかうだのと、
322
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない。
323
それ
程
(
ほど
)
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふのなら、
324
一
(
ひと
)
つ
解釈
(
かいしやく
)
して
見
(
み
)
よ』
325
サール
『
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
木耳耳
(
きくらげみみ
)
には
聞
(
き
)
かしてやるのは
惜
(
を
)
しけれど、
326
俺
(
おれ
)
が
無学者
(
むがくしや
)
と
思
(
おも
)
はれちや
片腹
(
かたはら
)
痛
(
いた
)
い。
327
云
(
い
)
ひがかり
上
(
じやう
)
、
328
男子
(
だんし
)
として
説明
(
せつめい
)
の
労
(
らう
)
を
与
(
あた
)
へないのも、
329
学者
(
がくしや
)
の
估券
(
こけん
)
を
傷付
(
きずつ
)
くる
事
(
こと
)
になるから、
330
一
(
ひと
)
つはりこんで
教訓
(
けうくん
)
してやらう。
331
エヘン、
332
抑々
(
そもそも
)
一霊
(
いちれい
)
四魂
(
しこん
)
と
云
(
い
)
ふのは、
333
直霊
(
ちよくれい
)
、
334
荒魂
(
あらみたま
)
、
335
奇魂
(
くしみたま
)
、
336
幸魂
(
さちみたま
)
、
337
和魂
(
にぎみたま
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
338
さうして
荒魂
(
あらみたま
)
は
勇
(
ゆう
)
なり、
339
幸魂
(
さちみたま
)
は
愛
(
あい
)
なり、
340
奇魂
(
くしみたま
)
は
智
(
ち
)
なり、
341
和魂
(
にぎみたま
)
は
親
(
しん
)
なり、
342
分
(
わか
)
つたか、
343
随分
(
ずいぶん
)
よく
学理
(
がくり
)
に
明
(
あか
)
るいものだらう』
344
イル
『
勇
(
ゆう
)
とは
何
(
なん
)
だ。
345
勇
(
ゆう
)
の
説明
(
せつめい
)
をせぬかい』
346
サール
『マ
男
(
をとこ
)
を
即
(
すなは
)
ち
勇者
(
ゆうしや
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
347
どうだ、
348
分
(
わか
)
つたか。
349
それから
親
(
しん
)
の
講釈
(
かうしやく
)
だ。
350
親
(
しん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
親
(
おや
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
だ。
351
辛
(
つら
)
い
目
(
め
)
を
八度
(
はちど
)
見
(
み
)
せるのを
親
(
おや
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
352
それから
愛
(
あい
)
だ。
353
どんな
事
(
こと
)
でも
有利
(
いうり
)
なものであつたならば
喉
(
のど
)
を
鳴
(
な
)
らして
受
(
う
)
ける
心
(
こころ
)
、
354
之
(
これ
)
を
愛
(
あい
)
と
云
(
い
)
ふ。
355
ヘン、
356
又
(
また
)
日々
(
にちにち
)
貴様
(
きさま
)
のやうに
口
(
くち
)
で
失策
(
しつさく
)
する
奴
(
やつ
)
を
智
(
ち
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
357
十目
(
じふもく
)
一様
(
いちやう
)
に
見
(
み
)
るのを
直霊
(
ちよくれい
)
の
直
(
ちよく
)
といふのだ。
358
何
(
なん
)
といつてもサールさまだらう。
359
俺
(
おれ
)
の
知識
(
ちしき
)
には、
360
誰一人
(
たれひとり
)
天下
(
てんか
)
に
手
(
て
)
をサールものがないのだから、
361
サールさまと
申
(
まを
)
すのだ、
362
エヘン』
363
テル『
成程
(
なるほど
)
、
364
妙々
(
めうめう
)
、
365
如何
(
いか
)
にもよく
徹底
(
てつてい
)
した。
366
文字
(
もんじ
)
と
云
(
い
)
ふものは
感心
(
かんしん
)
な
意味
(
いみ
)
を
含
(
ふく
)
んだものだね』
367
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも
楓
(
かへで
)
は
森
(
もり
)
の
彼方
(
あなた
)
より、
368
楓
『イルさま、
369
皆
(
みな
)
さま、
370
早
(
はや
)
う
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
371
とありきりの
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
呼
(
よ
)
ばはつた。
372
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取
(
と
)
り
敢
(
あ
)
へず、
373
バタバタと
事務所
(
じむしよ
)
をさして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
374
(
大正一二・一・二一
旧一一・一二・五
北村隆光
録)
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