霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(従来バージョンはこちら)【新着情報】サブスクのお知らせ)

第一章 貞操論(ていさうろん)〔一七二五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第1篇 名花移植 よみ(新仮名遣い):めいかいしょく
章:第1章 貞操論 よみ(新仮名遣い):ていそうろん 通し章番号:1725
口述日:1925(大正14)年01月28日(旧01月5日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
昔、左守の職を追われたシャカンナは、政敵の一掃と国政への復帰を胸に、山奥に部下を集めて山賊の棟梁となり時宜を狙っていたが、天命を知り塞に火を放ち、部下を解散し、今は一人娘のスバールを老後の力となして暮らしていた。
今年十五を数えるスバール姫は、スダルマン太子の来訪より、密かに太子に恋心を抱いていた。
シャカンナはある日、スバールに尋ねる。太子がここに踏み迷って来られた際、スバールに思し召しがあったように見受けられたが、もし太子から迎えが来たら、その気があるだろうか、と。
スバールは、実は太子が「きっと迎えに来る」と約束したこと、また自分も太子のことを思っていることを明かす。
シャカンナは、娘の恋愛によって自分が再び政界に復帰することができると喜ぶ。
スバールは、父に対する孝養と、夫に対する恋愛では道が違う、と釘をさす。
曰く、今回の恋愛が成就することによって、結果的に、父に対する孝養もできるかもしれないが、恋愛は流動的なものであり、恋愛を主とする限り、父への孝養を保障することはできない。
恋愛は理知・道徳と相容れないものであるから、「父への孝養のために太子と結婚する」というような、倫理に恋愛を従属させるようなことでは、恋愛が成り立たない。
倫理や道徳にとらわれて、女の一生を霊的に抹殺されることは耐えられない。「神聖な霊魂を男子に翻弄される事は、女一人として堪えられない悲哀」
人格と人格との結合によって、初めて完全な恋愛が行われる。
恋愛は恋愛として、どこまでも自由でなければならない。
だから、もし他にもっと好きな相手ができたら、そちらに恋愛を移すのが自然の成り行きであり、結婚を理由に貞操を守れ、というのは不合理である。
倫理の観点から結婚を見るなら、女子に貞操を強要するのであれば、当然夫に対しても貞操を強要しなければならない。
しかし、恋愛の観点から結婚を見るなら、夫は女房が他の男に恋するのを押さえつけてはいけないし、妻は妻で、夫の他の女に対する恋愛を遂げさせてあげるのが、真に夫を愛するということになる。
また、一夫一婦制に対しての反論
男女が平均に生まれないため、一夫一婦制ではない国も、世界にはたくさんある。
むしろ君子的人格者はたくさんの妻を持ち、その子供を四方に配ることが、国家にとって利益になる。
道徳と恋愛を別のものとして考えることで、家庭は家庭としてうまくいき、恋愛は恋愛として自由に行われる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-06-05 19:54:01 OBC :rm6801
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第12輯 151頁 修補版: 校定版:7頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 樹々(きぎ)(みどり)浅倉山(あさくらやま)嫩芽(どんが)002巻紙(まきがみ)(ひろ)げて(いち)(まい)々々(いちまい)楕円(だゑん)(した)をはみ()し、003晩春(ばんしゆん)(かぜ)()られて無言(むごん)(ささや)きをつづけて()る。
 004(はる)(をは)りとは()へ、005高地帯(かうちたい)山奥(やまおく)では都路(みやこぢ)()して(いつ)(げつ)ばかり()()(おひ)()ちも(おく)れてゐる。
006 (とら)007(おほかみ)008獅子(しし)009(くま)(うな)(ごゑ)010小鳥(ことり)百囀(ももさへづ)り、011春風(はるかぜ)木々(きぎ)(こずゑ)をもむ(おと)012それより(ほか)()くものもなき(この)山奥(やまおく)に、013(その)(むかし)タラハン(ごく)左守(さもり)(かみ)(つか)へたるシャカンナは014(とし)()いたりと(いへど)勇気(ゆうき)(むかし)(おとろ)へず、015一朝(いつてう)016(とき)()れば潜竜(せんりう)(ふち)()でて(てん)(をど)るが(ごと)く、017天下(てんか)国家(こくか)(ため)(むかし)とつたる杵柄(きねづか)(たくま)しき両腕(りやううで)国政(こくせい)(うへ)(こころ)みむとし、018数百(すうひやく)部下(ぶか)人跡(じんせき)(まれ)なる山奥(やまおく)(あつ)めて回天(くわいてん)神策(しんさく)身心(しんしん)(かたむ)けて()たが019フトした(こと)より、020()年波(としなみ)(とも)天命(てんめい)()山寨(さんさい)()(はな)ち、021数多(あまた)部下(ぶか)解散(かいさん)し、022今年(ことし)十五(じふご)(はる)(むか)へた最愛(さいあい)一女(いちぢよ)スバール(ひめ)老後(らうご)(ちから)となして023一陽(いちやう)来復(らいふく)(とき)()ちつつあつた。
024 (あたか)(てん)から()つて()いたる(ごと)(おも)ひがけなきタラハン(ごく)のスダルマン太子(たいし)025(わが)政敵(せいてき)なる左守(さもり)(せがれ)0251アリナと(とも)026雨露(あめつゆ)(しの)ぐに()ゆべき茅屋(あばらや)(やぶ)()(たた)くに()ひ、0261仮寝(うたたね)(ゆめ)(やぶ)られ027(じふ)(ねん)()りにて主従(しゆじゆう)対面(たいめん)をなしたる数奇(すうき)(きは)まる運命(うんめい)に、028大旱(たいかん)になやんで(しほ)れかかりし()()029雨露(あめつゆ)(めぐ)みに()ひて、0291生々(せいせい)復活(ふくくわつ)したるが(ごと)心地(ここち)し、030日夜(にちや)(うで)(やく)してタラハン(じやう)(そら)(なが)めて再生(さいせい)活躍(くわつやく)希望(きばう)(みなぎ)らしつつあつた。
031 日頃(ひごろ)(さび)しく(かん)ずる猛獣(まうじう)(こゑ)も、032悲哀(ひあい)()ちた百鳥(ももどり)(さへづ)りも033(この)(ごろ)(なん)となく生気(せいき)溌溂(はつらつ)として(おの)出盧(しゆつろ)(うなが)すものの(ごと)く、034谷川(たにがは)のせせらぎの()にも035(こずゑ)(わた)(かぜ)()にも、036希望(きばう)(こゑ)()ちて()るやうに(かん)じられた。
037 俗臭(ぞくしう)紛々(ふんぷん)として罪悪(ざいあく)()ちたる暗黒(あんこく)社会(しやくわい)038人面(にんめん)獣心(じうしん)化物(ばけもの)(ども)白昼(はくちう)横行(わうかう)濶歩(くわつぽ)する都大路(みやこおほぢ)(ちり)にも()まぬ天成(てんせい)美人(びじん)スバール(ひめ)が、039浅倉山(あさくらやま)山奥(やまおく)040(たま)(がは)上流(じやうりう)041(きよ)(なが)れて激潭(げきたん)飛沫(ひまつ)をとばす(きし)片辺(かたほとり)042千畳(せんでふ)岩石(がんせき)(もつ)区劃(くくわく)された(かは)(ふち)043(さび)しげに()てられた、0431()()()ちの茅屋(あばらや)044(おに)をも(ひし)(ちち)のシャカンナと(とも)に、045無心(むしん)生命(せいめい)(たも)ち、046千歳(ちとせ)(こけ)(たま)(はだ)(つつ)まれて、047(いま)まで社会(しやくわい)落伍(らくご)した人間(にんげん)(くづ)小盗人(こぬすと)(ども)に、048女帝(によてい)(ごと)く、049王女(わうぢよ)(ごと)くもてはやされ、050人生(じんせい)(はる)()ごすこそ、051せめてものスバール(ひめ)(こころ)(ほこ)り、052もし(この)ままにして()()でずば053(けもの)(くさ)山男(やまをとこ)(つま)となるか、054泥棒(どろばう)(つま)となつて女盗賊(をんなたうぞく)頭目(とうもく)として一生(いつしやう)(をは)るか、055(ただし)()るべき(はな)として(とき)(ちから)()()()(むす)ばず、056()()肥料(こえ)となるか、057さもなくば可惜(あたら)美人(びじん)生涯(しやうがい)真黒(まつくろ)毛脛(けずね)()(とほ)され、058果敢(はか)なき一生(いつしやう)(おく)るより(ほか)(みち)なき(ひめ)運命(うんめい)059人間(にんげん)としては(あま)りに艶麗(えんれい)()ぎたる(その)容貌(ようばう)060(ことわざ)()美人(びじん)薄命(はくめい)061結縁(むすぶ)(かみ)(にく)まれて(この)山中(さんちう)(はうむ)らるべき可惜(あたら)もの。062さりながら、063(ちち)権威(けんゐ)(わが)()(とし)(わか)きに()ぎたるを(さいは)ひ、064悪性(あくしやう)(をとこ)暴力(ばうりよく)()()(まくら)犠牲(ぎせい)にもならず、065今日(こんにち)十五(じふご)(はる)まで()(をか)されず、066(れい)(もてあそ)ばれず、067春秋(しゆんじう)(おく)(むか)へして()たのは、068せめてもの()少女(せうぢよ)にとつては(さいはひ)である。069(ろく)(さい)(はる)より父親(てておや)()(そだ)てられ070浅倉谷(あさくらだに)清流(せいりう)071(いは)にせかるる(たに)淵瀬(ふちせ)水鏡(みづかがみ)はあり(なが)ら、072()()でる(ごと)(なが)(かしら)黒髪(くろかみ)無雑作(むざふさ)にクルクルとまきつけて(むす)び、073浮世(うきよ)(かぜ)(ひびき)さへ()らず、074もし(ひと)あつて(この)美人(びじん)都大路(みやこおほぢ)真中(まんなか)につき()さうものなら、075万金(まんきん)(つひや)しても()られぬ(はず)(たま)()べたる(ごと)(かひな)(すね)(あらは)惜気(をしげ)もなく076タニグク(おろし)()()()()(くづ)(もてあそ)ばれ、077一片(いつぺん)人工(じんこう)(ほどこ)さず、078天成(てんせい)そのままの(たま)(はだ)(この)山奥(やまおく)(よこ)たへ、079(ひま)ある(とき)は、080獅子(しし)081(うさぎ)安息所(あんそくしよ)たる山林(さんりん)()()つて、082(たきぎ)背負(せお)ひ、083炊事(すゐじ)万端(ばんたん)まめまめしく(ちち)労苦(らうく)(たす)けて()た。084(べに)白粉(おしろい)香油(かうゆう)(など)補助(ほじよ)(てき)粧飾品(さうしよくひん)(うま)れて以来(このかた)085()(こと)もなく、086()につけた(こと)もない、087(ただ)惟神(かむながら)のままに生立(おひた)つた。088原野(げんや)()(にほ)(はな)(よそほひ)(この)山奥(やまおく)人知(ひとし)れずさらすのは、089宛然(さながら)造化(ざうくわ)技巧(ぎかう)をこらして(つく)()げた天真(てんしん)美貌(びばう)090どこへ(ころ)がしても(たま)(たま)091如何(いか)粗末(そまつ)でも蘭麝(らんじや)蘭麝(らんじや)()(そな)ふる道理(だうり)092どこともなく()ふに()はれぬ(ゆか)()がある。093蔭裏(かげうら)(まめ)時節(じせつ)()れば(はな)(ひら)()(むす)道理(だうり)094今年(ことし)十五(じふご)(はる)(むか)へたスバール(ひめ)095天極(てんごく)紫微宮(しびきう)より(くだ)らせ(たま)ひしエンゼルにも(ひと)しきスダルマン太子(たいし)の、096どこともなく雄々(をを)しき(をとこ)らしき(ゆか)しき容貌(ようばう)(その)謦咳(けいがい)(せつ)してより、097(とき)ならぬ(かほ)紅葉(もみぢ)()らし、098梅花(ばいくわ)一輪(いちりん)春陽(しゆんやう)()うて(ほころ)()めし心地(ここち)099子供心(こどもごころ)にも(こひ)てふものの(あや)しき魔物(まもの)捕捉(ほそく)さるるに(いた)つた。100(あめ)(あした)101(かぜ)(ゆふべ)102少女(せうぢよ)浅倉谷(あさくらだに)清流(せいりう)(むか)つて両手(りやうて)(あは)せ、103激湍(げきたん)飛沫(ひまつ)(たけ)(くる)有様(ありさま)()てはスダルマン太子(たいし)雄々(をを)しき御心(みこころ)(あが)め、104(きよ)溪流(けいりう)(なが)めては太子(たいし)御心(みこころ)(きよ)(かがみ)(はい)し、105小鳥(ことり)(こゑ)106(こずゑ)(わた)(かぜ)()太子(たいし)(あま)言葉(ことば)(ごと)(おも)はれ、107(はやし)()(にほ)(みどり)108(くれなゐ)109(しろ)110(あか)111黄色(きいろ)(はな)(なが)めては太子(たいし)(おん)(かんばせ)(しの)び、112満天(まんてん)星光(せいくわう)(あつ)して(のぼ)月影(つきかげ)(たい)しては、113あの円満(ゑんまん)なる(つき)(かんばせ)(まさ)しく太子(たいし)(きよ)き、114やさしき(おん)姿(すがた)115(わが)生命(せいめい)(つな)(あこ)がれ、116(もの)(せつ)し、117(こと)()れ、118森羅(しんら)万象(ばんしやう)(ことごと)く、119(いつ)として太子(たいし)(こゑ)ならざるはなく、120太子(たいし)姿(すがた)ならざるはなき、121(ふか)くも(こひ)(やみ)滝津瀬(たきつせ)のおちくる(ごと)強度(きやうど)(いきほひ)(もつ)122千尋(ちひろ)(ふか)(そこ)(しづ)()くのであつた。
123 シャカンナはスバール(ひめ)(この)(ごろ)様子(やうす)の、124如何(いか)にも()()ちぬに(こころ)(なや)ませ、125(むすめ)(おや)として、126あらむ(かぎ)りの思索(しさく)(めぐ)らし、127時々(ときどき)溜息(ためいき)()(こと)さへあつた。128(ある)(とき)シャカンナはスバール(ひめ)(むか)ひ、129(すこ)しく(こゑ)(ひそ)め、130(ひめ)(かほ)(のぞ)くやうにして頬杖(ほほづゑ)をつき(なが)ら、
131シャカンナ『スバール(ひめ)よ、132(まへ)今年(ことし)十五(じふご)(はる)(むか)へた年頃(としごろ)(むすめ)133(この)(おや)として自分(じぶん)もお(まへ)()()るにつけ、134可惜(あたら)名玉(めいぎよく)(この)山奥(やまおく)(うづ)()くはないのだ。135(わし)一旦(いつたん)左守(さもり)(かみ)職掌(しよくしやう)退(しりぞ)136君側(くんそく)(わだかま)奸邪(かんじや)侫人(ねいじん)(うち)(はら)137タラハン(ごく)城下(じやうか)安寧(あんねい)秩序(ちつじよ)(たも)ち、138(いつ)王家(わうけ)のため、139(いつ)国家(こくか)万民(ばんみん)のため140時節(じせつ)()つて一臂(いつぴ)(ちから)(ふる)つて()むと141(この)山奥(やまおく)山賊(さんぞく)(ども)()(あつ)め、142捲土(けんど)重来(ぢうらい)時期(じき)()つて()た。143()(こと)(ほと)んど(じふ)(ねん)144されど数多(あまた)部下(ぶか)(あつ)まつて()ても145(いち)(にん)として(こころ)(そこ)(うち)()かし、1451大業(たいげふ)遂行(すゐかう)(たい)片腕(かたうで)(ちから)になるものも()()ない。146それがため(ちち)はホトホト()(なか)(いや)になり、147(まへ)()(とほ)り、148タニグク(だに)山寨(さんさい)()(はな)つて、149玄真坊(げんしんばう)(あと)()つて()部下(ぶか)不在中(ふざいちう)150(この)浅倉谷(あさくらだに)(かく)()に、1501(まへ)二人(ふたり)佗住居(わびずまゐ)151味気(あぢき)なき余生(よせい)(おく)らむものと覚悟(かくご)()めて()たが、152雄心(ゆうしん)勃々(ぼつぼつ)として脾肉(ひにく)(たん)()へず、153一層(いつそう)のこと(この)()(おも)()にタラハン(じやう)(ただ)一騎(いつき)()()み、154君側(くんそく)(わだか)まる悪人輩(あくにんばら)(うち)(ほろ)ぼし、155国家(こくか)(わざはひ)(のぞ)き、156(わし)はその()自殺(じさつ)をなして(つみ)(しや)せむかと、157幾度(いくたび)かとつおいつ思案(しあん)はして()たが、158(てん)にも()にも(おや)一人(ひとり)159()一人(ひとり)其方(そなた)(あと)(のこ)して先立(さきだ)たむも、160其方(そなた)(たい)して不憫(ふびん)であり、161大悪人(だいあくにん)(むすめ)と、162其方(そなた)()(ひと)後指(うしろゆび)さされるのも心苦(こころぐる)しく、163それ(ゆゑ)164(をとこ)らしき(はたら)きも()なさず、165躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)女々(めめ)しくも今日(けふ)(まで)166可惜(あたら)光陰(くわういん)(むな)しく(つひや)して()たのだ。167(しか)るに(てん)(めぐ)みか、168()(すく)ひか、169ゆくりなくも先月(あとげつ)今日(けふ)今頃(いまごろ)170(ゆめ)()(ごと)きスダルマン太子(たいし)(わが)茅屋(あばらや)()(まよ)つて()られ、171金枝(きんし)玉葉(ぎよくえふ)(おん)()(もつ)て、172(この)茅屋(あばらや)一夜(いちや)()ごされたのも(なに)かの(かみ)()引合(ひきあは)せであらう。173つらつら(おも)ふに、174(かみ)(さま)(この)シャカンナに(いち)()(はや)(やま)()(みやこ)(のぼ)つて、175国家(こくか)危急(ききふ)(すく)へとの暗示(あんじ)のやうにも(かんが)へられる。176それについては、177其方(そなた)(さいは)ひに()にも(まれ)なる美人(びじん)178万々一(まんまんいち)冥加(みやうが)(かな)つて太子(たいし)(さま)のお(こころ)()したならば、179それこそ(ちち)大望(たいまう)にとつても国家(こくか)にとつても(これ)(くらゐ)都合(つがふ)()(こと)はない。180(しか)しながら何事(なにごと)人間(にんげん)運命(うんめい)左右(さいう)されるものだから、181窮極(きうきよく)する(ところ)到底(たうてい)人間力(にんげんりき)ではいかないだらう。182そして(また)男女(だんぢよ)関係(くわんけい)()ふものは(じつ)不可思議(ふかしぎ)のもので、183(なに)(ほど)太子(たいし)(さま)がお(まへ)寵愛(ちようあい)(あそ)ばしても、184(まへ)(こころ)太子(たいし)恋慕(れんぼ)する(こころ)がなければ、185無理(むり)(おや)権威(けんゐ)(もつ)結婚(けつこん)()ひる(わけ)にも()かず、186(ちち)()より観察(くわんさつ)すれば、187どうやら太子(たいし)(さま)は、188其方(そなた)思召(おぼしめし)があるやうに(かん)ぜられた。189(しか)(なが)結婚(けつこん)恋愛(れんあい)によつて成立(せいりつ)するものだから、190(なに)(ほど)少女(せうぢよ)だと()つても、191(わが)(むすめ)だと()つても、192(これ)(ばか)りは(ちち)自由(じいう)にはならない。193(まへ)(かんが)へはどう(おも)つてゐるか、194遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)()らぬ。195()つても()れぬ親娘(おやこ)(なか)だ。196そして、197(まへ)一生(いつしやう)一代(いちだい)大事件(だいじけん)だ。198(あらかじ)め、199(まへ)(こころ)(この)(ちち)()かしてくれ。200(まへ)(こころ)()いた(うへ)201(この)(ちち)にも(また)劃策(くわくさく)する(ところ)があるから』
202 スバール(ひめ)少女(せうぢよ)似合(にあ)はず、203性質(せいしつ)怜悧(れいり)(やま)(おく)(そだ)(なが)ら、204人情(にんじやう)機微(きび)比較(ひかく)(てき)(つう)じてゐた。205そして十二三(じふにさん)(さい)(ころ)より、206恋愛(れんあい)()(こと)趣味(しゆみ)(かん)じ、207数百(すうひやく)部下(ぶか)面貌(めんばう)一々(いちいち)点検(てんけん)して、208顔容(かほかたち)や、209性質(せいしつ)起居(たちゐ)振舞(ふるまひ)(とう)注意(ちうい)し、210男子(だんし)(たい)する一種(いつしゆ)批評眼(ひひやうがん)(そな)へて()た。211(しか)(なが)ら、212どの(をとこ)()ても心性(しんせい)下劣(げれつ)な、213容貌(ようばう)野卑(やひ)山猿(やまざる)(てき)人間(にんげん)(ばか)りで、214スバールが一生(いつしやう)(まか)(をつと)として(えら)むべき(たま)(ひと)つも見当(みあた)らなかつた。215(ろく)(さい)(とき)216タラハン(じやう)(あと)に、217(この)山奥(やまおく)(ちち)()(そだ)てられ、218(あら)くれ(をとこ)奇怪(きくわい)面貌(めんばう)をした小人輩(せうじんばら)(ばか)りを(なが)めて()(かれ)は……()(なか)(をとこ)()ふものは(すべ)(この)(やう)(けだもの)めいたものだらうか。219(いづ)れの人間(にんげん)()ても左右(さいう)()不揃(ふそろ)ひであつたり上下(うへした)になつてゐたり、220鼻柱(はなばしら)(みぎ)(まが)つたり(ひだり)(まが)つたり、221(くち)(かたち)から()()具合(ぐあひ)222起居(たちゐ)振舞(ふるまひ)(まで)()て、223……(じつ)男子(だんし)てふものは(なさけ)ないものだ。224(この)()(なか)何故(なにゆゑ)225こんな化物(ばけもの)(ばか)()んでゐるのだらう。226あゝ(なさけ)ない浮世(うきよ)だな……と、227いつも落胆(らくたん)失望(しつばう)(ふち)(しづ)んでゐたが、228フトした(こと)からタラハン(じやう)太子(たいし)(きみ)(めぐ)()ひ、229(その)気高(けだか)姿(すがた)(あこ)がれ、230(また)左守(さもり)(せがれ)アリナの容貌(ようばう)()(がた)(ところ)がある。231(これ)(おも)へば、232……(いま)(まで)(じふ)年間(ねんかん)(なが)めて()たやうな屑男(くづをとこ)(ばか)りではあるまい、233()(なか)には(ひやく)(にん)一人(ひとり)二人(ふたり)人間(にんげん)らしい(つら)をした(をとこ)もあるだらう。234太子(たいし)(さま)がお(かへ)りの(とき)235自分(じぶん)()(かた)(にぎ)つて、236『これ、237スバール、238屹度(きつと)(むか)へに()るよ』と(みみ)(そば)(ささや)(あそ)ばした(とき)(うれ)しさ。239(しか)し、240かやうな山奥(やまおく)(そだ)つた世間(せけん)()らずの(わらは)をば、241どうして永遠(ゑいゑん)寵愛(ちようあい)して(くだ)さる道理(だうり)があらう。242地位(ちゐ)()容貌(ようばう)()ひ、243名望(めいばう)()ひ、244比稀(たぐひまれ)なる若君(わかぎみ)なれば245都大路(みやこおほぢ)には立派(りつぱ)(をんな)沢山(たくさん)あるだらう。246そして太子(たいし)(さま)権威(けんゐ)富力(ふりよく)によらば、247いかなる天下(てんか)美人(びじん)も、248引寄(ひきよ)(たま)(こと)出来(でき)るであらう。249太子(たいし)(さま)は、250どこ(まで)(こひ)しい。251()ても()めても(わす)れられぬ。252(なん)だか(この)(ごろ)(わが)(こころ)さへボンヤリとして()たやうだ。253(しか)(なが)都大路(みやこおほぢ)()て、254(さひは)ひに太子(たいし)(さま)()寵愛(ちようあい)(かうむ)つた(ところ)でさへ、255(ゆめ)()朝顔(あさがほ)(はな)256(あさ)(つゆ)(かわ)けば(ゆふべ)(しほ)るる道理(だうり)257可惜(あたら)(つみ)(つく)るよりも一層(いつそう)(こと)258(わが)()ふる(こころ)太子(たいし)(さま)(たてまつ)り、259一生(いつしやう)(みさを)(まも)つて(ちち)(とも)(この)山奥(やまおく)()ちむか……と、260雄々(をを)しくも(こひ)(ほのほ)(みづか)()してゐた。261そこへ(ちち)のシャカンナが意味(いみ)ありげな言葉(ことば)()いて、262スバール(ひめ)(なん)とはなしに前途(ぜんと)有望(いうばう)のやうな(かん)じがムラムラと()()で、263俯向(うつむ)(なが)ら、264(かほ)(くれなゐ)()め、265(はづ)かしげに()ふ。
266『お(とう)(さま)267遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)なく(おも)つてゐる(こと)()へと(おつしや)いましたから、268今日(けふ)(わらは)一生(いつしやう)一大事(いちだいじ)269(なに)もかも(おも)つてゐる(こと)(まをし)()げます。270どうか(しか)らないやうにして(くだ)さい』
271シャ『(なに)272(しか)るものか。273どんな(こと)でも(おも)つた(こと)(ちち)(まへ)()つて()るがよい』
274ス『そんなら(まをし)()げます。275もうかうなつてはお(かく)(まを)すも(およ)びませぬから、276太子(たいし)(さま)がお(かへ)りの(とき)277(わらは)()(かた)(にぎ)り「スバール(ひめ)よ、278(しばら)()つてゐよ。279屹度(きつと)(むか)へに()てやる」と仰有(おつしや)いました。280自惚(うぬぼれ)かは()りませぬが、281太子(たいし)(さま)は……あの(わらは)にラブしてゐらつしやるでせう。282そして(わらは)も……』
283シャ『アツハヽヽヽ、284さうだらう 285さうだらう、286やつぱり(ちち)(にら)んだ(とほ)りだ。287そして太子(たいし)(さま)(むか)へに()(くだ)さつたら、288(まへ)(よろこ)んで()くだらうな』
289ス『ハイ、290それは(まゐ)らぬ(こと)(ござ)いませぬが、291(なん)()つてもラブは神聖(しんせい)なもので(ござ)いますから、292余程(よほど)(かんが)へさして(いただ)かねばなりませぬ』
293シャ『ウン、294それもさうだな。295(なん)()つても一国(いつこく)主権者(しゆけんしや)におなり(あそ)ばす()(かた)296至尊(しそん)至貴(しき)にして(をか)すべからざる王太子(わうたいし)(さま)()になるのは297(まへ)(をんな)としては無上(むじやう)出世(しゆつせ)だ。298(まへ)(ため)()(ちち)枯木(かれき)(はな)()時節(じせつ)()るのだから、299どうか太子(たいし)(さま)思召(おぼしめし)がお(まへ)をどこ(まで)(きさき)にすると()(かんが)へが(きま)つたならば、300(ちち)(ため)にもなる(こと)だから(よろこ)んで()つてくれるだらうな』
301ス『(ちち)(ため)には孝養(かうやう)(つく)すを(もつ)()たるものの(つと)めと(いた)します。302(ちち)(ため)恋愛(れんあい)(ため)とは(みち)(ちが)ふぢやありませぬか。303もし(わらは)恋愛(れんあい)完全(くわんぜん)成就(じやうじゆ)したのならば、304副産物(ふくさんぶつ)としてお(とう)(さま)幸運(かううん)(むか)はれるでせう。305(とう)さまの幸運(かううん)はつまり()恋愛(れんあい)成就(じやうじゆ)するからでせう。306(わらは)はお(とう)(さま)(たい)しては孝養(かうやう)(しゆ)とし、307(をつと)(たい)しては恋愛(れんあい)(しゆ)とするものです。308それが至当(したう)道理(だうり)(かんが)へてゐます』
309シャ『アツハヽヽヽ、310何時(いつ)()に、311そんな理窟(りくつ)(おぼ)えたのだ。312(をつと)(しゆ)(ちち)(じう)とはチツとひどいぢやないか。313それでは倫理学(りんりがく)(じやう)由々(ゆゆ)しき大問題(だいもんだい)だ』
314ス『そんならお(とう)(さま)孝養(かうやう)(しゆ)として恋愛(れんあい)一生(いつしやう)(はうむ)りませう。315その(かは)316(この)山奥(やまおく)一生(いつしやう)()()てる覚悟(かくご)(ござ)いますから』
317シャ『そんな、318ならぬ(こと)()ふものぢやない。319(おや)()(でう)について太子(たいし)(さま)のお(きさき)になれば320孝養(かうやう)恋愛(れんあい)完全(くわんぜん)成就(じやうじゆ)するぢやないか』
321ス『孝養(かうやう)恋愛(れんあい)両方(りやうはう)円満(ゑんまん)成功(せいこう)すれば、322こんな結構(けつこう)(よろこ)びは(ござ)いませぬ。323(しか)(なが)()(なか)には、324さう(あつら)(むき)()かない(こと)沢山(たくさん)あるでせう。325(すべ)恋愛(れんあい)なるものは愛情(あいじやう)から()るものです。326愛情(あいじやう)はどこどこ(まで)拡大(くわくだい)すべきもの、327(また)流動性(りうどうせい)()びてゐるものですから、328倫理(りんり)道徳(だうとく)知識(ちしき)(もつ)制縛(せいばく)()るものではありませぬ。329もし恋愛(れんあい)理智(りち)(くは)はれば恋愛(れんあい)そのものは、330(せん)()遠方(ゑんぱう)()()してゐるぢやありませぬか。331智性(ちせい)意性(いせい)(すなは)理智(りち)愛情(あいじやう)とは到底(たうてい)両立(りやうりつ)しないものでせう』
332シャ『何時(いつ)()にか333(たれ)(をし)へないのに、334こましやくれたものだな。335ほんとに「油断(ゆだん)のならぬは(むすめ)だ」と()ふが、336(この)(ちち)もお(まへ)(はなし)()いて荒肝(あらぎも)(ひし)がれて(しま)つたよ』
337ス『お(とう)さまは昔気質(むかしかたぎ)でお(つもり)(すこ)(ふる)出来(でき)てゐますから、338恋愛(れんあい)問題(もんだい)(など)容喙(ようかい)なさる資格(しかく)はありますまいよ。339どうか(この)問題(もんだい)(わらは)意志(いし)(まか)して(くだ)さいませ。340(ふる)倫理(りんり)道徳説(だうとくせつ)(とら)はれて341可惜(あたら)(をんな)一生(いつしやう)霊的(れいてき)抹殺(まつさつ)される(こと)()へられませぬ。342神聖(しんせい)霊魂(れいこん)男子(だんし)翻弄(ほんろう)される(こと)343(をんな)一人(ひとり)として()へられない悲哀(ひあい)ですから、344仮令(たとへ)太子(たいし)(さま)(わらは)寵愛(ちようあい)して(くだ)さるにした(ところ)で、345(わらは)太子(たいし)(さま)以上(いじやう)(あい)する男子(だんし)(あら)はれたとすれば、346その(とき)はお(とう)(さま)はどう(おも)ひますか』
347シャ『これは()しからぬ。348(をんな)三界(さんがい)(いへ)なし」と()つて、349(をつと)(いへ)(とつ)いだ(とき)は、350いかなる不幸(ふかう)不満(ふまん)(こら)(しの)ばねばならぬ。351そして(しうと)(しうとめ)によく(つか)へ、352(おや)(をつと)無理(むり)平気(へいき)甘受(かんじゆ)せねばならぬものだ。353それが(をんな)として(もつと)(たふと)(つと)めだ。354その(かんが)へがなくちや到底(たうてい)(をんな)として()(こと)出来(でき)ないぞ。355それが(をんな)貞操(ていさう)だからのう』
356ス『ホヽヽヽ、357それだからお(とう)さまは(あたま)(ふる)いと()ふのですよ。358男女(だんぢよ)同権(どうけん)ぢやありませぬか。359男子(だんし)一個(いつこ)人格者(じんかくしや)ならば、360(をんな)だつてやつぱり一個(いつこ)人格者(じんかくしや)でせう。361人格(じんかく)人格(じんかく)との結合(けつがふ)によつて、362(はじ)めて完全(くわんぜん)恋愛(れんあい)(おこな)はれ、363結婚(けつこん)成立(せいりつ)するのでせう。364恋愛(れんあい)恋愛(れんあい)として、365どこ(まで)自由(じいう)でなけれねば、366結婚(けつこん)()関門(くわんもん)通過(つうくわ)した(をんな)(ほとん)奴隷(どれい)(てき)牢獄(らうごく)(とう)ぜられたやうなものです。367男子(だんし)()すつぽう(おの)(あい)する(をんな)幾人(いくにん)翻弄(ほんろう)し、368(をんな)一人(ひとり)貞操(ていさう)(まも)れと()ふのは不道理(ふだうり)至極(しごく)なやり(かた)ぢやありませぬか。369(たと)へば太子(たいし)(さま)(わらは)をラブし、370(わらは)太子(たいし)(さま)此上(こよ)なくラブしてる(あひだ)は、371(たがひ)貞操(ていさう)(たも)たれ、372完全(くわんぜん)結婚(けつこん)目的(もくてき)(たつ)するでせう。373もし太子(たいし)(さま)(おい)(わらは)以上(いじやう)(あい)する(をんな)出来(でき)(とき)は、374太子(たいし)恋愛(れんあい)(すで)(すで)(わらは)()つて()(をんな)(うつ)つてるぢやありませぬか。375それでも(わらは)(こひ)犠牲者(ぎせいしや)として霊的(れいてき)死者(ししや)位置(ゐち)(あま)んぜねばなりませぬか。376そんな不合理(ふがふり)(こと)が、377どこに(ござ)いませうぞ。378(これ)(はん)する場合(ばあひ)(すなは)(わらは)太子(たいし)(さま)以上(いじやう)恋愛(れんあい)する男子(だんし)(あら)はれた(とき)は、379(また)(その)男子(だんし)恋愛(れんあい)(うつ)すのは恋愛(れんあい)そのものにとり自然(しぜん)成行(なりゆき)でせう』
380シャ『オイ、381(むすめ)382(なん)()馬鹿(ばか)(こと)()ふか。383(たれ)にそんな悪知恵(わるぢゑ)をつけられたのだ』
384ス『ハイ、385(わらは)良心(りやうしん)が、386さう(ささや)いてゐます。387あのトンク霊界物語に「トンク」という名の人物は複数出るが、スバール姫の絡みで出るのは初めてである。山奥に一緒に住んでいてその後姿を消した「コルトン」の間違いか?だつて、388(わらは)始終(しじう)そんな(はなし)()かして()れましたよ』
389シャ『エー、390トンクの野郎(やらう)391(ろく)でもない(こと)(たましひ)()はらない愛娘(まなむすめ)()()みやがるものだから、392(むすめ)(こころ)白蟻(しらあり)がついて瑕物(きずもの)にして(しま)ひやがつた。393表面(うはべ)からは天成(てんせい)美人(びじん)も、394(はら)(なか)からは悪魔(あくま)(すで)()ぐつてゐる。395こんなものを(おそ)(おほ)くも太子(たいし)(つま)(たてまつ)(こと)出来(でき)ない。396エー、397(こま)つた(やつ)だな』
398(うで)()み、399(ふと)吐息(といき)をつく。
400ス『ホヽヽヽ、401(とう)さま、402(なん)でもない問題(もんだい)ぢやありませぬか。403よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。404女子(ぢよし)ばかりに貞操(ていさう)強要(きやうえう)して男子(だんし)貞操(ていさう)強要(きやうえう)せないのは家庭(かてい)紊乱(びんらん)(もとゐ)となり、405()いては国家(こくか)破滅(はめつ)(きた)源泉(げんせん)となるものですよ。406女子(ぢよし)貞操(ていさう)必要(ひつえう)なれば男子(だんし)にも貞操(ていさう)必要(ひつえう)でせう。407もし(をつと)たるもの408(その)(つま)(ほか)(つま)(まさ)つて(あい)する女子(ぢよし)出来(でき)409(ひそ)かに恋愛(れんあい)(あぢ)ははむとする場合(ばあひ)410その(つま)は、411その(をつと)(たい)して叱言(こごと)()つたり、412悋気(りんき)をしてはいけませぬ。413(しん)(をつと)(あい)するのならば(をつと)意志(いし)(まか)すのが(つま)たるものの雅量(がりやう)ぢやありませぬか。414女房(にようばう)(こひ)(をつと)強圧(きやうあつ)(てき)におさへ415自分(じぶん)無理(むり)(あい)せよ」と(せま)打擲(ちやうちやく)したりして「自分(じぶん)絶対(ぜつたい)(てき)(あい)せよ」と()ふのは(けつ)して理解(りかい)ある男子(だんし)とは()へませぬ。416それ(くらゐ)雅量(がりやう)がなくては、417どこに男子(だんし)価値(かち)がありますか。418(また)419(つま)(つま)で、420自分(じぶん)(あい)する(をつと)が、421その(つま)よりも(あい)する(をんな)出来(でき)(とき)422(をつと)(あい)する恋愛(れんあい)()げさしてこそ、423(しん)(をつと)(あい)すると()(こと)になるのでせう。424(をつと)(をんな)()より(かく)(しの)んで(わづか)恋愛(れんあい)(あぢ)はひ、425(つま)(つま)(また)ヒヤヒヤビクビクし(なが)(ほか)(をとこ)恋愛(れんあい)(あぢ)はふやうな(こと)で、426どうして家庭(かてい)円満(ゑんまん)()きませう』
427シャ『馬鹿(ばか)()ふな、428そりや畜生(ちくしやう)のする(こと)だ。429(おやぢ)勝手(かつて)女房(にようばう)以外(いぐわい)(をんな)()ち、430(をんな)(をつと)以外(いぐわい)(をとこ)をもち、431そんな不仕鱈(ふしだら)(こと)して家庭(かてい)円満(ゑんまん)(たも)たれるか。432家庭(かてい)円満(ゑんまん)()いて(あき)れるぢやないか』
433ス『ホヽヽヽ、434(とう)さまの没分暁漢(わからずや)には(こま)つて(しま)ふわ。435(をつと)(つま)恋愛(れんあい)嫉妬(しつと)したり妨害(ばうがい)したり、436(つま)(をつと)恋愛(れんあい)嫉妬(しつと)したり妨害(ばうがい)する(など)は、437(じつ)卑怯(ひけふ)未練(みれん)()ふべきものです。438人格(じんかく)(そな)へたもののなすべき(こと)ぢやありませぬ。439(この)タラハン(ごく)(くに)(ちひ)さいから人間(にんげん)(こころ)(まで)(ちひ)さい。440それで恋愛(れんあい)冷却(れいきやく)した(をんな)でさへ、441自分(じぶん)(はう)恋愛(れんあい)(のこ)つて()れば無理(むり)(おさ)へつけ、442一方(いつぱう)恋愛(れんあい)犠牲(ぎせい)にしようとするやうでは、443家庭(かてい)円満(ゑんまん)()きませぬよ。444(また)恋愛(れんあい)倫理(りんり)道徳(だうとく)範囲(はんゐ)(りつ)する(こと)出来(でき)ませぬ。445(とう)さまは倫理(りんり)道徳(だうとく)加味(かみ)した恋愛論(れんあいろん)ですから、446()はば(にせ)恋愛論(れんあいろん)です。447社会(しやくわい)秩序(ちつじよ)だとか、448家庭(かてい)円満(ゑんまん)だとか()つて、449煩悶(はんもん)焦慮(せうりよ)し、450(かへつ)狭苦(せまくる)しい道徳(だうとく)をふりまはして、451益々(ますます)家庭(かてい)紊乱(びんらん)し、452社会(しやくわい)秩序(ちつじよ)(みだ)すやうになるのですよ。453男子(だんし)女子(ぢよし)社会(しやくわい)一般(いつぱん)(ひと)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki