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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第68巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 名花移植
第1章 貞操論
第2章 恋盗詞
第3章 山出女
第4章 茶湯の艶
第2篇 恋火狼火
第5章 変装太子
第6章 信夫恋
第7章 茶火酌
第8章 帰鬼逸迫
第3篇 民声魔声
第9章 衡平運動
第10章 宗匠財
第11章 宮山嵐
第12章 妻狼の囁
第13章 蛙の口
第4篇 月光徹雲
第14章 会者浄離
第15章 破粋者
第16章 戦伝歌
第17章 地の岩戸
第5篇 神風駘蕩
第18章 救の網
第19章 紅の川
第20章 破滅
第21章 祭政一致
余白歌
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【第5話】Onidoとは何者?動画【最終回】
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第68巻(未の巻)
> 第3篇 民声魔声 > 第9章 衡平運動
<<< 帰鬼逸迫
(B)
(N)
宗匠財 >>>
第九章
衡平
(
かうへい
)
運動
(
うんどう
)
〔一七三三〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
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備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
文字数:
OBC :
rm6809
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
上
(
かみ
)
に
大名
(
だいみやう
)
あれ
共
(
ども
)
、
002
時代
(
じだい
)
を
解
(
かい
)
し
国家
(
こくか
)
永遠
(
えいゑん
)
の
神策
(
しんさく
)
を
弁
(
わきま
)
へたる
輔弼
(
ほひつ
)
棟梁
(
とうりやう
)
たるべき
小名
(
せうみやう
)
なく、
003
所在
(
あらゆる
)
虚偽
(
きよぎ
)
と
罪悪
(
ざいあく
)
と
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
を
以
(
もつ
)
て
施政
(
しせい
)
の
大本
(
たいほん
)
となし、
004
重税
(
ぢうぜい
)
を
課
(
くわ
)
して
膏血
(
こうけつ
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
005
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
てるブルジョア
階級
(
かいきふ
)
なる
者
(
もの
)
は、
006
肥馬
(
ひば
)
軽裘
(
けいきう
)
、
007
有
(
あ
)
らむ
限
(
かぎ
)
りの
贅
(
ぜい
)
を
尽
(
つく
)
し、
008
行人
(
かうじん
)
の
迷惑
(
めいわく
)
を
顧
(
かへり
)
みずブウブウと
自動車
(
じどうしや
)
を
飛
(
と
)
ばして、
009
臭気
(
しうき
)
紛々
(
ふんぷん
)
たる
屁
(
へ
)
と
土埃
(
つちぼこり
)
を
浴
(
あ
)
びせて
平気
(
へいき
)
に
行
(
ゆ
)
く。
010
貧民
(
ひんみん
)
の
子
(
こ
)
は
自動車
(
じどうしや
)
に
轢
(
ひ
)
き
殺
(
ころ
)
されても、
011
之
(
これ
)
を
訴
(
うつた
)
へ
出
(
い
)
づる
術
(
すべ
)
も
無
(
な
)
く、
012
強者
(
きやうしや
)
は
白昼
(
はくちう
)
強盗
(
がうとう
)
に
等
(
ひと
)
しき
行
(
おこな
)
ひを
為
(
な
)
して、
013
公々然
(
こうこうぜん
)
縦横
(
じうわう
)
に
濶歩
(
くわつぽ
)
し、
014
弱者
(
じやくしや
)
は
往来
(
わうらい
)
の
車馬
(
しやば
)
に
踏
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
られ
悲鳴
(
ひめい
)
を
上
(
あ
)
げ、
015
九死
(
きうし
)
の
境
(
さかひ
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
す。
016
文明
(
ぶんめい
)
利器
(
りき
)
の
交通
(
かうつう
)
機関
(
きくわん
)
は
可
(
か
)
なりに
進歩
(
しんぽ
)
し
完備
(
くわんび
)
すれども、
017
貧者
(
ひんじや
)
は
之
(
これ
)
を
利用
(
りよう
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず。
018
教育
(
けういく
)
機関
(
きくわん
)
は
立派
(
りつぱ
)
に
設
(
まう
)
けられたりと
雖
(
いへど
)
も、
019
貧者
(
ひんじや
)
は
是
(
これ
)
に
入学
(
にふがく
)
するを
得
(
え
)
ず。
020
寄席
(
よせ
)
劇場
(
げきぢやう
)
などは
市
(
まち
)
の
四方
(
しはう
)
に
建設
(
けんせつ
)
され
地上
(
ちじやう
)
の
楽園
(
らくゑん
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
すれども、
021
貧者
(
ひんじや
)
は
又
(
また
)
之
(
これ
)
に
一回
(
いつくわい
)
の
慰安
(
ゐあん
)
を
求
(
もと
)
むる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず。
022
病院
(
びやうゐん
)
は
各所
(
かくしよ
)
に
甍
(
いらか
)
を
列
(
つら
)
ねて
樹立
(
じゆりつ
)
すれども、
023
貧者
(
ひんじや
)
は
是
(
これ
)
に
入
(
い
)
つて
治療
(
ちりやう
)
を
受
(
う
)
くる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず。
024
美味
(
びみ
)
佳肴
(
かかう
)
は
料理屋
(
れうりや
)
の
店頭
(
てんとう
)
に
並
(
なら
)
べられたりと
雖
(
いへど
)
も、
025
貧者
(
ひんじや
)
又
(
また
)
此
(
この
)
恩恵
(
おんけい
)
に
浴
(
よく
)
するを
得
(
え
)
ず。
026
錦繍
(
きんしう
)
綾羅
(
りようら
)
を
店頭
(
てんとう
)
に
陳列
(
ちんれつ
)
せる
大
(
だい
)
呉服店
(
ごふくてん
)
は
市中
(
しちう
)
目抜
(
めぬき
)
の
場処
(
ばしよ
)
に
櫛比
(
しつぴ
)
すれども
貧者
(
ひんじや
)
は
一片
(
いつぺん
)
の
布
(
ぬの
)
も
購求
(
こうきう
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず。
027
日夜
(
にちや
)
飢
(
うゑ
)
に
泣
(
な
)
き
寒
(
さむ
)
さに
凍
(
こご
)
え、
028
空虚腹
(
すきはら
)
を
抱
(
かか
)
えて
半病人
(
はんびやうにん
)
の
如
(
ごと
)
く
路
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
を
悄々
(
しほしほ
)
と
喘
(
あえ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
くのみ。
029
富者
(
ふうしや
)
は
大小名
(
だいせうみやう
)
と
結托
(
けつたく
)
して
暴利
(
ばうり
)
を
貪
(
むさぼ
)
り、
030
物価
(
ぶつか
)
は
日
(
ひ
)
を
逐
(
お
)
うて
暴騰
(
ばうとう
)
し、
031
生存難
(
せいぞんなん
)
の
声
(
こゑ
)
は
日
(
ひ
)
を
逐
(
お
)
うて
喧
(
かまび
)
すしく、
032
淵川
(
ふちかは
)
に
身
(
み
)
を
投
(
な
)
ぐるもの、
033
鉄砲腹
(
てつぱうばら
)
を
為
(
な
)
すもの、
034
ブランコ
往生
(
わうじやう
)
を
演
(
えん
)
ずるもの、
035
線路
(
せんろ
)
を
枕
(
まくら
)
に
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
つるもの、
036
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
数
(
かず
)
限
(
かぎ
)
りも
無
(
な
)
く、
037
暗黒
(
あんこく
)
の
幕
(
まく
)
は
下層
(
かそう
)
社会
(
しやくわい
)
に
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
濃厚
(
のうこう
)
に
下
(
くだ
)
されて
来
(
き
)
た。
038
民衆
(
みんしう
)
の
憤怒
(
ふんど
)
怨嗟
(
ゑんさ
)
の
声
(
こゑ
)
、
039
号泣
(
がうきふ
)
の
叫
(
さけ
)
び、
040
恰
(
あたか
)
も
阿鼻
(
あび
)
叫喚
(
けうかん
)
041
地獄
(
ぢごく
)
の
状態
(
じやうたい
)
と
成
(
な
)
つて
来
(
き
)
た。
042
大小名
(
だいせうみやう
)
撲滅
(
ぼくめつ
)
の
声
(
こゑ
)
は
国内
(
こくない
)
各処
(
かくしよ
)
に
起
(
おこ
)
り、
043
市民
(
しみん
)
大会
(
たいくわい
)
、
044
民衆
(
みんしう
)
大会
(
たいくわい
)
其
(
その
)
他
(
た
)
所有
(
あらゆる
)
民衆
(
みんしう
)
の
会合
(
くわいがふ
)
は、
045
各処
(
かくしよ
)
に
開
(
ひら
)
かれ、
046
目付役
(
めつけやく
)
と
民衆
(
みんしう
)
の
争闘
(
さうとう
)
、
0461
絶間
(
たへま
)
なく
血腥
(
ちなまぐさ
)
き
風
(
かぜ
)
は
四方
(
しはう
)
に
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び、
047
流石
(
さすが
)
安逸
(
あんいつ
)
なりしタラハン
国
(
ごく
)
も、
048
今
(
いま
)
は
漸
(
やうや
)
く
修羅
(
しゆら
)
の
巷
(
ちまた
)
と
成
(
な
)
つて
了
(
しま
)
つた。
049
不逞団
(
ふていだん
)
歌劇団
(
かげきだん
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
各種
(
かくしゆ
)
の
団体
(
だんたい
)
は
期
(
き
)
せずして
都大路
(
みやこおほぢ
)
に
集
(
あつま
)
り、
050
タラハン
国
(
ごく
)
の
創立
(
さうりつ
)
記念日
(
きねんび
)
なる
五月
(
ごぐわつ
)
五日
(
いつか
)
を
期
(
き
)
して、
051
城下
(
じやうか
)
の
場所
(
ばしよ
)
に
一斉
(
いつせい
)
に
放火
(
はうくわ
)
を
始
(
はじ
)
め、
052
其
(
その
)
虚
(
きよ
)
に
乗
(
じやう
)
じて
血
(
ち
)
に
飢
(
う
)
ゑたる
民衆
(
みんしう
)
は
所有
(
あらゆる
)
悪業
(
あくげふ
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にし、
053
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
殆
(
ほと
)
んど
無取締
(
むとりしまり
)
の
状態
(
じやうたい
)
になりしが、
054
漸
(
やうや
)
くにして
侍
(
さむらひ
)
連
(
れん
)
の
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
つて
稀有
(
けう
)
の
騒乱
(
さうらん
)
を
鎮圧
(
ちんあつ
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
たので
有
(
あ
)
る。
055
此
(
この
)
騒擾
(
さうぜう
)
勃発
(
ぼつぱつ
)
の
為
(
ため
)
に、
056
富有
(
ふいう
)
連
(
れん
)
の
傍杖
(
そばづゑ
)
を
食
(
く
)
つて
僅
(
わづ
)
かの
財産
(
ざいさん
)
を
焼失
(
せうしつ
)
したるもの、
057
親
(
おや
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
058
妻
(
つま
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
059
夫
(
をつと
)
に
別
(
わか
)
れ、
060
或
(
あるひ
)
は
一家
(
いつか
)
全滅
(
ぜんめつ
)
したる
者
(
もの
)
数限
(
かずかぎ
)
りもなく、
0601
都大路
(
みやこおほぢ
)
は
流血
(
りうけつ
)
の
巷
(
ちまた
)
と
化
(
くわ
)
し、
061
死屍
(
しし
)
累々
(
るゐるゐ
)
として
目
(
め
)
も
当
(
あ
)
てられぬ
惨状
(
さんじやう
)
と
成
(
な
)
つた。
062
子
(
こ
)
は
母
(
はは
)
の
背
(
せ
)
にあつて
飢
(
うゑ
)
に
泣
(
な
)
き、
063
老人
(
らうじん
)
は
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
路傍
(
ろばう
)
に
倒
(
たふ
)
れ、
064
或
(
あるひ
)
は
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
、
065
重傷
(
ぢうしやう
)
を
負
(
お
)
うて
苦
(
くるし
)
む
者
(
もの
)
幾千
(
いくせん
)
人
(
にん
)
とも
数
(
かぞ
)
へ
切
(
き
)
れぬ
程
(
ほど
)
であつた。
066
有志
(
いうし
)
の
各団体
(
かくだんたい
)
は
罹災民
(
りさいみん
)
救護
(
きうご
)
の
為
(
ため
)
、
067
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
に
駆
(
かけ
)
まはり、
068
米
(
こめ
)
麦
(
むぎ
)
野菜
(
やさい
)
などをあさつて、
069
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
急
(
きふ
)
を
救
(
すく
)
はむとすれ
共
(
ども
)
、
070
到底
(
たうてい
)
其
(
その
)
一部
(
いちぶ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
充
(
みた
)
すにも
足
(
た
)
らなかつた。
071
流言
(
りうげん
)
蜚語
(
ひご
)
盛
(
さか
)
ンに
起
(
おこ
)
り、
072
人心
(
じんしん
)
恟々
(
きようきよう
)
として
安
(
やす
)
からず、
073
今
(
いま
)
にタラハン
国
(
ごく
)
は
滅亡
(
めつぼう
)
の
悲運
(
ひうん
)
に
向
(
むか
)
ふべしなどと
人々
(
ひとびと
)
の
口
(
くち
)
に
依
(
よ
)
つて
喧伝
(
けんでん
)
された。
074
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
肉体美
(
にくたいび
)
に
過
(
す
)
ぎた
大兵
(
だいひやう
)
肥満
(
ひまん
)
の
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
075
札
(
さつ
)
ビラを
路上
(
ろじやう
)
に
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らし
乍
(
なが
)
ら
声
(
こゑ
)
高々
(
たかだか
)
と
何事
(
なにごと
)
か
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
076
碁盤
(
ごばん
)
の
目
(
め
)
の
街
(
まち
)
を
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
と
駆
(
か
)
けめぐつてゐる。
077
女
(
をんな
)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
078
人
(
ひと
)
と
鬼
(
おに
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
079
天
(
てん
)
には
黒雲
(
くろくも
)
塞
(
ふさ
)
がりて
080
月日
(
つきひ
)
の
影
(
かげ
)
も
地
(
ち
)
に
照
(
て
)
らず
081
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
なる
人草
(
ひとぐさ
)
は
082
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
日
(
ひ
)
をかさね
083
強
(
つよ
)
きは
高
(
たか
)
く
登
(
のぼ
)
りつめ
084
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
の
有
(
あり
)
丈
(
たけ
)
を
085
尽
(
つく
)
して
下
(
しも
)
の
難儀
(
なんぎ
)
をば
086
空
(
そら
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
と
聞
(
き
)
き
流
(
なが
)
し
087
貧
(
まづ
)
しき
民
(
たみ
)
を
虐
(
しひた
)
げて
088
生血
(
いきち
)
を
絞
(
しぼ
)
り
脂
(
あぶら
)
をば
089
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
吸
(
すひ
)
取
(
と
)
れば
090
痩
(
や
)
せ
衰
(
おとろ
)
へて
餓鬼
(
がき
)
の
如
(
ごと
)
091
骨
(
ほね
)
と
皮
(
かは
)
とに
成
(
な
)
り
果
(
は
)
てぬ
092
神
(
かみ
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
在
(
ま
)
す
上
(
うへ
)
は
093
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
許
(
ゆる
)
し
玉
(
たま
)
はむや
094
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
095
万
(
よろづ
)
の
民
(
たみ
)
を
平等
(
べうどう
)
に
096
楽
(
たのし
)
く
嬉
(
うれ
)
しく
暮
(
くら
)
させて
097
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
神政
(
しんせい
)
を
098
布
(
し
)
かむが
為
(
ため
)
の
思召
(
おぼしめし
)
099
然
(
しか
)
るに
何
(
なん
)
ぞ
計
(
はか
)
らむや
100
上
(
かみ
)
は
左守
(
さもり
)
を
始
(
はじ
)
めとし
101
富有
(
ふいう
)
連
(
れん
)
や
長者
(
ちやうじや
)
等
(
ら
)
が
102
勝手
(
かつて
)
気儘
(
きまま
)
に
振
(
ふ
)
れ
舞
(
ま
)
ひて
103
下
(
しも
)
国民
(
くにたみ
)
を
苦
(
くる
)
しめし
104
報
(
むく
)
いは
忽
(
たちま
)
ち
目
(
ま
)
の
当
(
あた
)
り
105
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたか
左守司
(
さもりかみ
)
106
其
(
その
)
他
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
達
(
たち
)
107
今
(
いま
)
に
心
(
こころ
)
を
直
(
なほ
)
さねば
108
打
(
う
)
てや
懲
(
こ
)
らせと
民衆
(
みんしう
)
が
109
鬨
(
とき
)
を
作
(
つく
)
つて
攻
(
せめ
)
寄
(
よ
)
せる
110
其
(
その
)
凶兆
(
きようてう
)
はありありと
111
今
(
いま
)
より
伺
(
うかが
)
ひ
知
(
し
)
られたり
112
あゝ
民衆
(
みんしう
)
よ
民衆
(
みんしう
)
よ
113
必
(
かなら
)
ず
憂
(
うれ
)
ふる
事
(
こと
)
なかれ
114
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
神
(
かみ
)
さまは
115
必
(
かなら
)
ず
汝
(
なれ
)
が
窮状
(
きうじやう
)
を
116
何時
(
いつ
)
まで
見捨
(
みす
)
て
給
(
たま
)
はむや
117
必
(
かなら
)
ず
一陽
(
いちやう
)
来復
(
らいふく
)
の
118
春
(
はる
)
を
迎
(
むか
)
へて
永久
(
とこしへ
)
に
119
安
(
やす
)
き
楽
(
たのし
)
き
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
120
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
樹
(
た
)
て
玉
(
たま
)
ひ
121
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
下
(
しも
)
に
苦
(
くる
)
しみし
122
清
(
きよ
)
き
正
(
ただ
)
しき
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
を
123
高
(
たか
)
きに
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ふべし
124
天
(
てん
)
は
降
(
くだ
)
つて
地
(
つち
)
と
成
(
な
)
り
125
地
(
つち
)
は
上
(
のぼ
)
つて
天
(
てん
)
と
成
(
な
)
る
126
有為
(
うゐ
)
天変
(
てんぺん
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
127
何時
(
いつ
)
まで
大名
(
だいみやう
)
小名
(
せうみやう
)
の
128
自由
(
じいう
)
の
振舞
(
ふるまひ
)
許
(
ゆる
)
さむや
129
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
130
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にあり
131
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
132
愈々
(
いよいよ
)
時節
(
じせつ
)
が
参
(
まゐ
)
りなば
133
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
落
(
お
)
ち
居
(
ゐ
)
たる
134
百
(
もも
)
の
正
(
ただ
)
しき
神
(
かみ
)
さまは
135
数多
(
あまた
)
の
神軍
(
しんぐん
)
引率
(
いんそつ
)
し
136
悪
(
あく
)
を
亡
(
ほろぼ
)
しよこしまを
137
平
(
たひ
)
らげ
尽
(
つく
)
し
給
(
たま
)
ふべし
138
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
め
民衆
(
みんしう
)
よ
139
時
(
とき
)
は
来
(
きた
)
れり
時
(
とき
)
は
今
(
いま
)
140
神政
(
しんせい
)
復古
(
ふくこ
)
の
暁
(
あかつき
)
ぞ
141
不意
(
ふい
)
に
起
(
おこ
)
つた
大火災
(
だいくわさい
)
142
是
(
これ
)
ぞ
全
(
まつた
)
く
人間
(
にんげん
)
の
143
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ぶ
術
(
すべ
)
でない
144
何
(
いづ
)
れも
貴
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
145
悪
(
あく
)
に
対
(
たい
)
する
警戒
(
けいかい
)
ぞ
146
如何
(
いか
)
に
大名
(
だいみやう
)
小名
(
せうみやう
)
や
147
富有
(
ふいう
)
連
(
れん
)
が
覇張
(
はば
)
るとも
148
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
が
覇張
(
はば
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
149
最早
(
もはや
)
末期
(
まつご
)
と
成
(
な
)
りにけり
150
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
め
皆
(
みな
)
勇
(
いさ
)
め
151
民衆
(
みんしう
)
を
苦
(
くる
)
しむ
悪人
(
あくにん
)
を
152
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
踏
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
り
153
怯
(
お
)
めず
臆
(
おく
)
せず
堂々
(
だうだう
)
と
154
火
(
ひ
)
の
洗礼
(
せんれい
)
を
施
(
ほどこ
)
せよ
155
血汐
(
ちしほ
)
を
以
(
もつ
)
て
世
(
よ
)
を
洗
(
あら
)
へ
156
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
の
茶坊主
(
ちやばうず
)
が
157
館
(
やかた
)
に
後妻
(
ごさい
)
と
化
(
ば
)
けすまし
158
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
以来
(
このかた
)
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
み
159
富有
(
ふいう
)
連
(
れん
)
に
出入
(
でいり
)
する
160
彼
(
かれ
)
に
付
(
つ
)
き
添
(
そ
)
ひ
富有
(
ふいう
)
連
(
れん
)
の
161
事情
(
じじやう
)
を
査
(
しら
)
べ
居
(
ゐ
)
たりしが
162
最早
(
もはや
)
時節
(
じせつ
)
も
充
(
み
)
ちぬれば
163
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
に
命令
(
めいれい
)
し
164
火
(
ひ
)
の
洗礼
(
せんれい
)
を
為
(
さ
)
せたのは
165
大兵
(
だいひやう
)
肥満
(
ひまん
)
の
此
(
この
)
女
(
をんな
)
166
富有
(
ふいう
)
連中
(
れんちう
)
が
何
(
なに
)
恐
(
こは
)
い
167
大名
(
だいみやう
)
小名
(
せうみやう
)
糞喰
(
くそくら
)
へ
168
取締役
(
とりしまりやく
)
や
目付役
(
めつけやく
)
が
169
怖
(
こは
)
くて
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
られうか
170
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
め
民衆
(
みんしう
)
よ
171
女
(
をんな
)
乍
(
なが
)
らも
吾
(
わが
)
部下
(
ぶか
)
は
172
タラハン
国
(
ごく
)
の
山
(
やま
)
に
野
(
の
)
に
173
幾十万
(
いくじふまん
)
の
生身魂
(
いくみたま
)
174
腕
(
かひな
)
を
撫
(
ぶ
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
175
愈々
(
いよいよ
)
命令
(
めいれい
)
一下
(
いつか
)
すりや
176
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
の
隅々
(
すみずみ
)
ゆ
177
ドンドン
狼火
(
のろし
)
が
上
(
あが
)
るだろ
178
今
(
いま
)
の
好機
(
かうき
)
を
逸
(
いつ
)
せずに
179
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
世界
(
せかい
)
の
改造
(
かいざう
)
を
180
命
(
いのち
)
の
綱
(
つな
)
と
信
(
しん
)
じつつ
181
振
(
ふる
)
へよ
立
(
た
)
てよ
立上
(
たちあが
)
れ
182
民衆団
(
みんしうだん
)
の
頭目
(
とうもく
)
と
183
世
(
よ
)
に
聞
(
きこ
)
えたるバランスは
184
即
(
すなは
)
ち
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
事
(
こと
)
なるぞ
185
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
186
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
見
(
み
)
るに
付
(
つ
)
け
187
下
(
しも
)
人民
(
じんみん
)
の
傍杖
(
そばづゑ
)
は
188
実
(
じつ
)
に
涙
(
なみだ
)
の
種
(
たね
)
なれど
189
大小名
(
だいせうみやう
)
の
狼狽
(
らうばい
)
の
190
其
(
その
)
状態
(
ありさま
)
を
眺
(
なが
)
めては
191
少
(
すこ
)
しは
虫
(
むし
)
も
治
(
をさ
)
まらむ
192
更生院
(
かうせいゐん
)
が
何
(
なに
)
に
成
(
な
)
る
193
之
(
これ
)
も
矢
(
や
)
つ
張
(
ぱ
)
り
富有
(
ふいう
)
等
(
ら
)
の
194
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
民衆
(
みんしう
)
一般
(
いつぱん
)
の
195
生血
(
いきち
)
を
絞
(
しぼ
)
る
手品
(
てじな
)
ぞや
196
必
(
かなら
)
ず
迷
(
まよ
)
ふな
迷
(
まよ
)
はされな
197
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
村肝
(
むらきも
)
の
198
心
(
こころ
)
の
神
(
かみ
)
が
踊
(
をど
)
り
出
(
だ
)
す
199
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
200
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
へましませよ
201
奸侫
(
かんねい
)
邪智
(
じやち
)
の
輩
(
ともがら
)
の
202
目玉
(
めだま
)
飛出
(
とびだ
)
しましませよ』
203
十字
(
じふじ
)
街道
(
がいだう
)
に
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へて
居
(
ゐ
)
た
数百
(
すうひやく
)
の
目付隊
(
めつけたい
)
は
204
有無
(
うむ
)
を
言
(
い
)
はせずバラバラと
駆
(
か
)
け
寄
(
よ
)
つて
手
(
て
)
取
(
と
)
り
足
(
あし
)
取
(
と
)
り、
205
取縄
(
とりなは
)
を
以
(
もつ
)
て
雁字搦
(
がんじがら
)
みに
縛
(
しば
)
り
付
(
つ
)
け、
206
バランスを
荷車
(
にぐるま
)
に
乗
(
の
)
せて
横大路
(
よこおほぢ
)
の
取締所
(
とりしまりしよ
)
へと
運
(
はこ
)
び
込
(
こ
)
むで
了
(
しま
)
つた。
207
民衆
(
みんしう
)
に
化
(
ば
)
けて
居
(
ゐ
)
た
彼
(
かれ
)
の
子分
(
こぶん
)
はバランスを
取返
(
とりかへ
)
さむと
潮
(
うしほ
)
の
如
(
ごと
)
く
押寄
(
おしよ
)
せ、
208
目付
(
めつけ
)
と
団員
(
だんいん
)
との
闘争
(
とうさう
)
が
演出
(
えんしゆつ
)
された。
209
目付隊
(
めつけたい
)
は
既
(
すで
)
に
危
(
あやふ
)
く
見
(
み
)
えた
時
(
とき
)
、
210
喇叭
(
らつぱ
)
の
声
(
こゑ
)
も
勇
(
いさ
)
ましく
二千
(
にせん
)
人
(
にん
)
の
侍
(
さむらひ
)
は
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
り
211
銃
(
じう
)
を
擬
(
ぎ
)
して
威喝
(
ゐかつ
)
を
試
(
こころ
)
みたり。
212
素
(
もと
)
より
完全
(
くわんぜん
)
な
武器
(
ぶき
)
を
有
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
民衆
(
みんしう
)
は
歯
(
は
)
がみを
為
(
な
)
し
乍
(
なが
)
ら
213
見
(
み
)
す
見
(
み
)
す
大棟梁
(
だいとうりやう
)
を
奪
(
うば
)
はれしまま、
214
退却
(
たいきやく
)
するの
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ざるに
立至
(
たちいた
)
りける。
215
バランスは
目付頭
(
めつけがしら
)
の
前
(
まへ
)
に
引出
(
ひきだ
)
され、
216
厳重
(
げんぢう
)
なる
訊問
(
じんもん
)
を
受
(
う
)
けた。
217
バランスは
少
(
すこ
)
しも
怯
(
ひる
)
む
色
(
いろ
)
無
(
な
)
く
滔々
(
たうたう
)
として
目付頭
(
めつけがしら
)
に
食
(
く
)
つて
掛
(
か
)
かつた。
218
目付頭
(
めつけがしら
)
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
といふか』
219
バランス『
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
はバランスと
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
だ。
220
民衆
(
みんしう
)
救護団
(
きうごだん
)
の
大頭目
(
だいとうもく
)
だ。
221
有名
(
いうめい
)
なバランスの
面
(
つら
)
を
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
知
(
し
)
らぬようなウツソリした
事
(
こと
)
で、
222
何
(
ど
)
うして
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
が
勤
(
つと
)
まると
思
(
おも
)
ふか、
223
余
(
あま
)
り
平等
(
べうどう
)
を
欠
(
か
)
いだ
強食
(
きやうしやく
)
弱肉
(
じやくにく
)
の
現代
(
げんだい
)
だから、
224
バランスを
取
(
と
)
る
為
(
ため
)
にバランスと
命名
(
めいめい
)
したのだ』
225
目付頭
(
めつけがしら
)
『
其
(
そ
)
の
方
(
はう
)
は
民衆
(
みんしう
)
を
煽
(
おだ
)
て
上
(
あ
)
げ、
226
不逞
(
ふてい
)
の
徒
(
と
)
を
鳩集
(
きうしふ
)
し、
227
市街
(
しがい
)
に
火
(
ひ
)
を
放
(
はな
)
ち、
228
剰
(
あまつ
)
さへ
所在
(
あらゆる
)
悪業
(
あくげふ
)
を
敢
(
あへ
)
てし、
229
尚
(
なほ
)
飽
(
あ
)
き
足
(
た
)
らず
民衆
(
みんしう
)
を
煽動
(
せんどう
)
するとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ。
230
汝
(
なんぢ
)
の
如
(
ごと
)
き
極
(
ごく
)
重悪人
(
ぢうあくにん
)
は
裁判
(
さいばん
)
の
必要
(
ひつえう
)
も
無
(
な
)
い、
231
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
不愍
(
ふびん
)
ながら
銃殺
(
じうさつ
)
の
刑
(
けい
)
に
処
(
しよ
)
するに
仍
(
よ
)
つて、
232
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
名残
(
なごり
)
に
念仏
(
ねんぶつ
)
でも
唱
(
とな
)
へて
置
(
お
)
くが
可
(
よ
)
からうぞ』
233
バランスは
女
(
をんな
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
の
英雄
(
えいゆう
)
で
有
(
あ
)
る。
234
身動
(
みうご
)
きも
成
(
な
)
らぬ
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
縛
(
しば
)
られ
乍
(
なが
)
ら、
235
少
(
すこ
)
しも
恐
(
おそ
)
るる
色
(
いろ
)
なく
大口
(
おほぐち
)
開
(
あ
)
けて
高笑
(
たかわら
)
ひ、
236
バランス『アハヽヽヽ、
237
向
(
むか
)
ふの
見
(
み
)
えぬ
盲
(
めくら
)
ども、
238
銃殺
(
じうさつ
)
なつと
絞殺
(
かうさつ
)
なつと、
239
出来
(
でき
)
るなら
遣
(
や
)
つて
見
(
み
)
よ。
240
此
(
この
)
バランスの
命
(
いのち
)
はタラハン
国
(
ごく
)
全体
(
ぜんたい
)
とつり
代
(
かへ
)
の
命
(
いのち
)
だ。
241
数十万
(
すうじふまん
)
の
吾
(
わが
)
部下
(
ぶか
)
は
国内
(
こくない
)
の
各所
(
かくしよ
)
に
242
バランスが
殺
(
ころ
)
されたと
聞
(
き
)
くならば、
2421
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
蜂起
(
ほうき
)
するだらう。
243
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
如
(
ごと
)
き
悪目付
(
あくめつけ
)
共
(
ども
)
は
能
(
よ
)
く
後前
(
あとさき
)
の
成行
(
なりゆき
)
を
考
(
かんが
)
へて
手
(
て
)
を
下
(
くだ
)
したが
可
(
よ
)
からうぞ。
244
第一
(
だいいち
)
国民
(
こくみん
)
の
模範
(
もはん
)
たるべきものの
行状
(
ぎやうじやう
)
は
何
(
なん
)
だ。
245
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
の
畔
(
ほとり
)
に
住
(
す
)
む
茶坊主
(
ちやばうず
)
タルチンの
茅屋
(
ばうをく
)
に
年
(
とし
)
若
(
わか
)
き
女
(
をんな
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
246
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
労働者
(
らうどうしや
)
の
服
(
ふく
)
を
着
(
つ
)
けて
通
(
かよ
)
ひつめ、
247
恋
(
こひ
)
の
奴
(
やつこ
)
と
成
(
な
)
つて
脂下
(
やにさが
)
つて
居
(
ゐ
)
るで
無
(
な
)
いか、
248
斯様
(
かやう
)
な
事
(
こと
)
で、
249
如何
(
どう
)
して
世話
(
せわ
)
が
完全
(
くわんぜん
)
に
出来
(
でき
)
るか、
250
其
(
その
)
方
(
はう
)
共
(
ども
)
は
呑舟
(
どんしう
)
の
魚
(
うを
)
には
恐
(
おそ
)
れて
近寄
(
ちかよ
)
らず、
251
鮒
(
ふな
)
やモロコの
如
(
ごと
)
きウロクヅを
漁
(
あさ
)
つて
目付力
(
めつけりよく
)
が
何
(
ど
)
うの、
252
政治
(
せいぢ
)
が
如何
(
どう
)
のと、
253
好
(
え
)
え
気
(
き
)
に
成
(
な
)
つて
国
(
くに
)
の
滅亡
(
めつぼう
)
を
知
(
し
)
らない
馬鹿者
(
ばかもの
)
だ』
254
目付頭
(
めつけがしら
)
『バランス、
255
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふのか、
256
人民
(
じんみん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
257
その
行動
(
かうどう
)
を
云々
(
うんぬん
)
すると
云
(
い
)
ふ
不敵
(
ふてき
)
な
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
るか』
258
バランス『ハツハヽヽ、
259
それほどお
邪魔
(
じやま
)
に
成
(
な
)
りますかな。
260
然
(
しか
)
らば
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
は
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
を
願
(
ねが
)
つて
置
(
お
)
きませう。
261
能
(
よ
)
く
茶坊主
(
ちやばうず
)
を
呼出
(
よびだ
)
してお
査
(
しら
)
べなさい。
262
夫
(
それ
)
に
付
(
つい
)
ても
許
(
ゆる
)
し
難
(
がた
)
きは
左守
(
さもり
)
ガンヂーが
悴
(
せがれ
)
アリナと
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
263
不届
(
ふとどき
)
至極
(
しごく
)
にも
茶坊主
(
ちやばうず
)
を
取込
(
とりこ
)
み、
264
山出
(
やまだ
)
し
女
(
をんな
)
との
媒介
(
ばいかい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るのみならず、
265
自分
(
じぶん
)
は
殿中
(
でんちう
)
に
錦衣
(
きんい
)
を
着
(
つ
)
け、
266
偽
(
にせ
)
太将
(
たいしやう
)
と
成
(
な
)
り
代
(
かは
)
り、
267
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
の
目
(
め
)
を
眩
(
くら
)
まして
居
(
ゐ
)
るでは
無
(
な
)
いか。
268
大王
(
だいわう
)
殿下
(
でんか
)
は
御
(
ご
)
重病
(
ぢうびやう
)
にて
上下
(
しやうか
)
憂鬱
(
いううつ
)
に
沈
(
しづ
)
む
折柄
(
をりから
)
、
269
悴
(
せがれ
)
たるものは
女
(
をんな
)
に
狂
(
くる
)
ひ、
270
又
(
また
)
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
は
王位
(
わうゐ
)
を
奪
(
うば
)
はむとして
居
(
ゐ
)
る
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
の
曲者
(
くせもの
)
、
271
其
(
その
)
他
(
た
)
の
大名
(
だいみやう
)
共
(
ども
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても
推
(
お
)
して
知
(
し
)
るべしで
有
(
あ
)
る。
272
此
(
この
)
バランスはタラハン
国
(
ごく
)
民衆
(
みんしう
)
全部
(
ぜんぶ
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
だ、
273
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
は
言
(
い
)
はないぞ、
274
早速
(
さつそく
)
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
るが
宜
(
よ
)
からう』
275
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
目付頭
(
めつけがしら
)
も
並
(
な
)
み
居
(
ゐ
)
る
目付
(
めつき
)
等
(
ら
)
も
色
(
いろ
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
276
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
を
漏
(
も
)
らして
互
(
たがひ
)
に
面
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
すのみで
有
(
あ
)
つた。
277
又
(
また
)
もや
民衆
(
みんしう
)
と
目付役
(
めつけやく
)
と
闘
(
たたか
)
ふ
声
(
こゑ
)
、
278
庭
(
には
)
の
近辺
(
きんぺん
)
に
喧
(
やかま
)
しく
響
(
ひび
)
いて
来
(
き
)
た。
279
(
大正一四・一・六
新一・二九
於月光閣
松村真澄
録)
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