霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 紅(あけ)の川(かは)〔一七四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第5篇 神風駘蕩 よみ(新仮名遣い):しんぷうたいとう
章:第19章 紅の川 よみ(新仮名遣い):あけのかわ 通し章番号:1743
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
右守の手下、カークとサーマンは、太子とスバール姫が梅公別に助け出され、城に向かっていることを右守に注進しようと、インデス河の川辺を走っていた。
そこへ、右守の弟エールが、王女バンナを捜索しているのにでっくわした。カークとサーマンの報告を聞いたエールは、右守の計画の一大事と、梅公別一行を待ち伏せて、太子を亡き者にしてしまおうとたくらむ。
エールは社の陰から太子を狙って切り付けるが、太子は身をかわす。バランスはエールを捕まえ、急流に投げ込んでしまった。カーク、サーマンはそれを見て一目散に逃げ出してしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:2933 OBC :rm6819
愛善世界社版:258頁 八幡書店版:第12輯 248頁 修補版: 校定版:263頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 カーク、002サーマンの二人(ふたり)はインデス河(がは)の河辺(かはべり)を膝栗毛(ひざくりげ)に鞭(むち)うち一生(いつしやう)懸命(けんめい)に走(はし)り行(ゆ)く。003右手(めて)の草村(くさむら)より手招(てまね)きして『オーイオーイ』と叫(さけ)ぶ者(もの)がある。004二人(ふたり)は聞覚(ききをぼえ)のある声(こゑ)と立(たち)とまつて、005息(いき)をついでゐた。006そこへ萱草(かやくさ)を分(わ)けて、007のそりのそりとやつて来(き)たのは右守司(うもりのかみ)サクレンスが弟(おとうと)エールであつた。008二人(ふたり)はエールの顔(かほ)を見(み)るより、009地上(ちじやう)に蹲(うづく)まり、
010カーク『これはこれは、011エールの君様(きみさま)、012思(おも)はぬ所(ところ)でお目(め)にかかりました。013貴方(あなた)は又(また)斯様(かやう)な所(ところ)に何(なに)をしてゐらつしやるのですか』
014エール『イヤ、015一寸(ちよつと)秘密(ひみつ)の用向(ようむき)があつて』
016カ『秘密(ひみつ)の御(ご)用向(ようむき)と仰有(おつしや)るのは、017アリナの行衛(ゆくゑ)を捜(さが)してゐられるのでせう。018貴(たつと)き御(おん)身(み)を以(もつ)て供(とも)をも連(つ)れず、019只(ただ)一人(ひとり)なぜ斯(か)やうな所(ところ)にお出(で)ばりになつてゐられるのですか』
020エ『イヤ、021アリナの行衛(ゆくゑ)も捜索(そうさく)せなくてはならぬが、022王女(わうぢよ)バンナ姫(ひめ)様(さま)のお行衛(ゆくゑ)を尋(たづ)ねて、023此処(ここ)迄(まで)やつて来(き)たのだ。024此(この)少(すこ)し先方(むかふ)に賤(しづ)の岩屋(いはや)と云(い)つて岩窟(がんくつ)がある。025此処(ここ)はカラピン王(わう)様(さま)の御(ご)先祖(せんぞ)の奥津城(おくつき)の跡(あと)、026それ故(ゆゑ)若(もし)や、027バンナ姫(ひめ)様(さま)がお参(まゐ)りになつてゐるのではあるまいかと、028只(ただ)一人(ひとり)ワザとに捜(さが)しに来(き)たのだ』
029カ『姫(ひめ)様(さま)は、030そしてゐられましたか』
031エ『イヤ、032お姿(すがた)が見(み)えないのだ。033あゝ困(こま)つた事(こと)だワイ。034併(しか)しお前(まへ)は秋野(あきの)ケ原(はら)の水車(すいしや)小屋(ごや)の番(ばん)を仰(おほ)せつかつてゐた筈(はず)だが、035どうして又(また)帰(かへ)つて来(き)たのだ』
036カ『之(これ)に付(つ)いては大変(たいへん)な珍事(ちんじ)が突発(とつぱつ)致(いた)しました。037それ故(ゆゑ)御(ご)報告(ほうこく)がてら、038帰(かへ)つたので厶(ござ)います』
039エ『椿事(ちんじ)とは何事(なにごと)だ。040民衆(みんしう)救護団(きうごだん)でもやつて来(き)て、041太子(たいし)を奪(うばひ)取(と)つたのではないか』
042カ『ハイヽヽヽイエヽヽヽー、043さうでも厶(ござ)いませぬが、044三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)がやつて参(まゐ)りまして、045太子(たいし)殿下(でんか)及(および)スバール姫(ひめ)を救(すく)ひ出(だ)し、046たつた今(いま)駒(こま)に跨(またが)つて、047ここを通(とほ)るで厶(ござ)いませう。048太子(たいし)が城内(じやうない)へ帰(かへ)られたならば、049先(ま)づ第一(だいいち)に右守司(うもりのかみ)様(さま)の御(ご)迷惑(めいわく)、050用意(ようい)を遊(あそ)ばさねばなるまいと、051一生(いつしやう)懸命(けんめい)に御(ご)注進(ちうしん)に帰(かへ)る途中(とちう)で厶(ござ)います』
052エ『ヤ、053其奴(そいつ)ア大変(たいへん)だ。054オイ両人(りやうにん)、055事(こと)成就(じやうじゆ)の上(うへ)は汝(なんぢ)を立派(りつぱ)な役(やく)に使(つか)うてやるから、056どうだ、057此(この)少(すこ)し向方(むかふ)に、058一方(いつぱう)は河(かは)、059一方(いつぱう)は岩山(いはやま)、060其処(そこ)には古(ふる)ぼけた宮(みや)が建(た)つてゐる。061之(これ)から其(その)宮(みや)の後(うしろ)に三(さん)人(にん)忍(しの)び居(を)り、062太子(たいし)の帰(かへ)るのを待伏(まちぶ)せ、063太子(たいし)の命(いのち)を取(と)つて了(しま)ふか、064但(ただ)しは激流(げきりう)へ投込(なげこ)むか、065何(なん)とかして片付(かたづ)けねば成(な)らぬ、066どうだ、067俺(おれ)の命(めい)を聞(き)くか』
068カ『ハヽヽヽヽイ、069貴方(あなた)の御(ご)命令(めいれい)なれば、070決(けつ)して否(いなみ)は致(いた)しませぬが、071三五(あななひ)の宣伝使(せんでんし)といふ奴(やつ)、072到底(たうてい)一筋縄(ひとすぢなは)ではゆかぬ奴(やつ)で厶(ござ)いますから、073用心(ようじん)をせなくちやなりませぬ』
074エ『ナアニ、075あの地点(ちてん)は攻(せ)むるに難(かた)く防(ふせ)ぐに易(やす)きタラハン国(ごく)第一(だいいち)の険要(けんえう)の喉首(のどくび)だ。076彼処(あこ)にさへをれば、077仮令(たとへ)千万(せんまん)人(にん)の敵(てき)が来(き)ても大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
078カ『如何(いか)にも左様(さやう)、079成程(なるほど)御尤(ごもつと)も。080オイ、081サーマン汝(きさま)どうだ。082御(ご)命令(めいれい)を奉(ほう)ずるかな』
083サ『そら……、084俺(おれ)だつて、085出世(しゆつせ)のしたいのは同(おな)じ事(こと)だ。086そんな安全(あんぜん)な所(ところ)なら、087俺(おれ)も御用(ごよう)を承(うけたま)はらうかい』
088エ『ヤ、089両人(りやうにん)共(とも)、090合点(がつてん)がいたなれば、091早(はや)く岩山(いはやま)の森(もり)迄(まで)行(ゆ)かう。092軈(やが)て太子(たいし)の一行(いつかう)が帰(かへ)つて来(く)る時分(じぶん)だらう』
093といひ乍(なが)ら岩山(いはやま)の森(もり)を指(さ)して走(はし)り行(ゆ)く。
094 一方(いつぱう)アリナは体中(からだぢう)、095肉付(にくつき)のよいブクブクとした柔(やは)らかな背中(せなか)に負(お)はれ、096何(なん)となく妙(めう)な気分(きぶん)がして来出(きだ)した。097そしてバランスも亦(また)アリナのどこ共(とも)なく男(をとこ)らしく、098凛々(りり)しい姿(すがた)に、099……此(この)男(をとこ)ならば……といふ様(やう)な妙(めう)な気(き)になつて居(ゐ)た。100太子(たいし)は声(こゑ)も涼(すず)しく、101馬上(ばじやう)豊(ゆた)かに月光(げつくわう)を浴(あ)び乍(なが)ら行進歌(かうしんか)を歌(うた)ふ。
102『あゝ有難(ありがた)し有難(ありがた)し
103九死(きうし)一生(いつしやう)の苦(くるし)みを
104三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
105梅公司(うめこうつかさ)に助(たす)けられ
106妹背(いもせ)の縁(えにし)も恙(つつが)なく
107再(ふたた)びここに相生(あひおひ)の
108松(まつ)の緑(みどり)の色(いろ)深(ふか)く
109駿馬(しゆんめ)に跨(またが)り戞々(かつかつ)と
110峰(みね)の嵐(あらし)に吹(ふ)かれつつ
111インデス河(がは)の河辺(かはべり)を
112勇(いさ)み進(すす)んで上(のぼ)る内(うち)
113心(こころ)は頓(とみ)に冴(さ)えわたり
114神(かみ)のまします天国(てんごく)の
115旅路(たびぢ)を進(すす)む心地(ここち)せり
116月(つき)の光(ひかり)は波(なみ)の上(へ)に
117瞬(またた)き初(そ)めて麗(うるは)しく
118飛沫(ひまつ)の音(おと)はタラハンの
119国家(こくか)復興(ふくこう)を歌(うた)ふ如(ごと)
120耳(みみ)をすまして聞(きこ)え来(く)る
121あゝ勇(いさ)ましや勇(いさ)ましや
122神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
123善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)けて
124吾(わが)旧国(きうこく)を根底(ねそこ)より
125改(あらた)め給(たま)ひ民衆(みんしう)の
126永(なが)き平和(へいわ)と幸福(かうふく)を
127与(あた)へ給(たま)ふぞ嬉(うれ)しけれ
128吾(わが)師(し)の君(きみ)に従(したが)ひて
129川辺(かはべ)の森(もり)に来(き)てみれば
130月夜(つきよ)に瞬(またた)く篝火(かがりび)の
131影(かげ)に寄(よ)りそふ数十(すうじふ)人(にん)
132何(なに)をなすやと伺(うかが)へば
133網(あみ)にかかりし旅人(たびびと)の
134死骸(しがい)をあぶり肉体(からたま)の
135命(いのち)を救(すく)ひ助(たす)けむと
136民衆団(みんしうだん)の団長(だんちやう)が
137力(ちから)限(かぎ)りに介抱(かいはう)し
138心(こころ)を砕(くだ)く折(をり)もあれ
139吾(わが)師(し)の君(きみ)の言霊(ことたま)に
140死人(しにん)は漸(やうや)く甦(よみがへ)り
141よくよくみれば吾(わが)慕(した)ふ
142賢(かしこ)き友(とも)のアリナなり
143アリナは漸(やうや)く元気(げんき)づき
144バランス団長(だんちやう)に負(お)はれつつ
145河辺(かはべ)を伝(つた)ひスタスタと
146吾(われ)等(ら)一行(いつかう)に加(くは)はりて
147此処(ここ)迄(まで)無事(ぶじ)に帰(かへ)りけり
148あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
149神(かみ)の恵(めぐみ)の尊(たふと)さよ
150向方(むかふ)に見(み)ゆる岩山(いはやま)の
151神(かみ)を祀(まつ)りし森(もり)のかげ
152吾(われ)等(ら)は其処(そこ)迄(まで)駆(か)けつけて
153一先(ひとま)づ息(いき)を休(やす)めつつ
154神(かみ)のまにまに城内(じやうない)へ
155轡(くつわ)を並(なら)べて帰(かへ)るべし
156あゝ楽(たの)もしや楽(たの)もしや
157一陽(いちやう)来復(らいふく)春(はる)は来(き)ぬ
158あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
159御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
160 斯(か)く歌(うた)ひつつ、161駒(こま)の足音(あしおと)に大地(だいち)を響(ひび)かせ乍(なが)ら、162漸(やうや)くにして岩山(いはやま)の森蔭(もりかげ)、163古(ふる)き社(やしろ)の前(まへ)に着(つ)いた。164太子(たいし)一行(いつかう)はバランスやアリナの身(み)の疲(つか)れを休養(きうやう)さすべく、165ワザと此処(ここ)に駒(こま)を止(とど)めたのである。166梅公別(うめこうわけ)は早(はや)くも此(この)古社(ふるやしろ)の後(うしろ)に怪(あや)しき者(もの)ありと勘付(かんづ)いたが、167まさかの時(とき)には言霊(ことたま)を以(もつ)て霊縛(れいばく)せむものとタカをくくつて、168何食(なにく)はぬ顔(かほ)し乍(なが)ら、169一行(いつかう)五(ご)人(にん)一(いち)の字(じ)形(がた)になつて社前(しやぜん)の敷石(しきいし)に腰(こし)打(うち)かけ、170煙草(たばこ)を燻(くゆ)らして居(ゐ)た。171社(やしろ)の後(うしろ)には三(さん)人(にん)の囁(ささや)き声(ごゑ)、
172エ『オイ、173カーク、174来(き)たぞ来(き)たぞ。175サア俺(おれ)に忠義(ちうぎ)を尽(つく)すのは今(いま)だ。176彼(あ)の正中(まんなか)に居(ゐ)る奴(やつ)が太子(たいし)だ、177彼奴(あいつ)を矢庭(やには)に此(この)刀(かたな)を以(もつ)て袈裟掛(けさがけ)に切(き)り捨(す)てるのだ。178それさへすれば外(ほか)の奴(やつ)アどうでもよいから、179サア行(ゆ)け行(ゆ)け』
180カ『ハイ、181参(まゐ)ります。182併(しか)し、183旦那(だんな)様(さま)、184私(わたし)に跟(つ)いて来(き)て下(くだ)さい。185何(なん)と云(い)つても向方(むかふ)は五(ご)人(にん)、186そんな所(ところ)へ私(わたし)一人(ひとり)行(い)つた所(ところ)で駄目(だめ)で厶(ござ)いますからなア』
187エ『エー、188気(き)の弱(よわ)い奴(やつ)だな、189そんならサーマンと一緒(いつしよ)に飛(とび)出(だ)して行(ゆ)け』
190サ『ハイ行(ゆ)かぬこた厶(ござ)いませぬが、191何(なん)だか手足(てあし)がワナワナ致(いた)しまして、192怖(こは)くつて堪(たま)りませぬワ』
193エ『チヨツ、194エー口(くち)許(ばか)りの代物(しろもの)だなア。195サア俺(おれ)に跟(つ)いて来(こ)い。196そして俺(おれ)の手(て)ぎわを見(み)るがよい』
197と云(い)ひ乍(なが)ら、198バラバラと不意(ふい)に立(たち)出(い)で、199木下蔭(こしたかげ)を力(ちから)に太子(たいし)を目(め)がけて、200暗(やみ)に閃(ひらめ)く白刃(はくじん)の雷(いなづま)、201アワヤ太子(たいし)は真二(まつぷた)つと思(おも)ひきや、202ヒラリと体(たい)をかはし、203太子(たいし)は、
2031『曲者(くせもの)、204待(ま)てツ』
2041と大喝(だいかつ)したり。205バランスは之(これ)を見(み)るよりエールの腕(うで)を強力(がうりき)に任(まか)して撲(なぐ)りつけたる206其(その)途端(とたん)に腕(うで)はしびれ、207白刃(はくじん)はガチヤリと大地(だいち)に落(お)ちた。208バランスはエールの首筋(くびすぢ)を掴(つか)んで高(たか)く差上(さしあ)げ乍(なが)ら、209川辺(かはべり)に持(もち)行(ゆ)き、210月(つき)に曲者(くせもの)の面(つら)を照(てら)してみれば、211擬(まが)ふ方(かた)なきエールなりける。
212バラ『もしもし、213宣伝使(せんでんし)様(さま)、214太子(たいし)様(さま)、215一寸(ちよつと)御覧(ごらん)なさいませ。216此(この)面(つら)は右守(うもり)の弟(おとうと)エールの様(やう)に思(おも)ひますが、217お査(しら)べ下(くだ)さいませぬか』
218 太子(たいし)外(ほか)四(よ)人(にん)はバラバラとバランスの側(そば)に駆(か)けより、219曲者(くせもの)の面(つら)を眺(なが)め、
220太(たい)『ヤ、221如何(いか)にも此奴(こいつ)はエールだ。222怪(け)しからぬ事(こと)を致(いた)す、223悪党(あくたう)奴(め)』
224バラ『殿下(でんか)の御(ご)証明(しようめい)がある以上(いじやう)は、225此(この)エール、226此(この)世(よ)に活(い)かしておく代物(しろもの)では厶(ござ)いませぬ。227此奴(こいつ)の面(つら)には剣難(けんなん)の相(さう)が現(あら)はれてゐます。228何(いづ)れ遠(とほ)からぬ内(うち)、229漁業(ぎよげふ)団員(だんゐん)に命(いのち)を取(と)られる奴(やつ)、230エー邪魔臭(じやまくさ)い、231太子(たいし)様(さま)御(お)許(ゆる)し』
232といひ乍(なが)ら、233激流(げきりう)目(め)がけて、234小石(こいし)を投(な)ぐるが如(ごと)く、2341ドンブリと投(なげ)込(こ)んだ。235エールは投(なげ)込(こ)まれた途端(とたん)に、236川中(かはなか)の突(つき)出(で)た石(いし)に脳天(なうてん)を打割(うちわ)り川水(かはみづ)を紅(あけ)に染(そめ)て、237ドンドンと流(なが)れて了(しま)つた。238此(この)隙(すき)にカーク、239サーマンの二人(ふたり)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)倒(こ)けつ転(まろ)びつ、240命(いのち)あつての物種(ものだね)と右守(うもり)の館(やかた)を指(さ)して逃(に)げてゆく。
241(大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 松村真澄録)
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