霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 (すくひ)(あみ)〔一七四二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第5篇 神風駘蕩 よみ(新仮名遣い):しんぷうたいとう
章:第18章 救の網 よみ(新仮名遣い):すくいのあみ 通し章番号:1742
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
インデス河の激流の上にかかる橋の袂に、番小屋があった。月夜に比丘姿のアリナが、この番小屋で体を休めていた。
そこへ、アリナの行方を追ってきた右守サクレンスと、その部下たち捜索隊がやってきて、アリナと同席する。
アリナは修験者のふりをして右守の企みをすっぱ抜くが、最後に自分の素性を明かして、右守に挑みかかる。
アリナは追っ手の白刃をかわして逃げ出すが、橋杭につまづき、激流の中に落ち込んでしまった。右守はアリナが死んだものと思い、帰っていく。
一方、民衆救護団長のバランスは、その下流で子分たちと密漁をしていたが、その網にかかったのが、瀕死のアリナであった。
そこへ、城へ帰る途中の太子・スバール姫、梅公別一行が通りかかる。梅公別の祈願によってアリナは息を吹き返す。
バランスは、太子に禁漁法の廃止を訴える。太子はバランスの民衆を思う志に感心し、城内に入って自分の国政改革助けるよう求める。
一行は城を目指して夜道を進み行くこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6818
愛善世界社版:247頁 八幡書店版:第12輯 243頁 修補版: 校定版:251頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 浅倉(あさくら)山脈(さんみやく)千尾(ちを)千谷(ちだに)より(なが)()つる玉野川(たまのがは)下流(かりう)をインデス(がは)()ふ。002(この)(かは)はタラハン(ごく)中心(ちうしん)(なが)れ、003(きた)より(みなみ)(とほ)くカルマタ(こく)(うし)湖水(こすい)(そそ)いでゐる。004左守(さもり)(せがれ)アリナは005()なりも(かる)比丘姿(びくすがた)006深編笠(ふかあみがさ)(かぶ)(なが)ら、007十二夜(じふにや)(つき)(おぼろ)げに()(わた)野路(のぢ)辿(たど)つて008インデス(がは)(ほとり)()いた。009激流(げきりう)飛沫(ひまつ)()ばして淙々(そうそう)たる水音(みなおと)010()るも(すさま)じく川瀬(かはせ)(りう)(はね)るが(ごと)く、011(かは)一面(いちめん)散在(さんざい)せる(いは)にせかれて、012(みづ)白玉(しらたま)となつて(たか)(とび)()つてゐる。013アリナは(はし)(かたはら)藁小屋(わらごや)をみとめて、014(いき)(やす)むべく(くぐ)()つた。015ここは橋番(はしばん)出張(しゆつちやう)して、016通行人(つうかうにん)一人(ひとり)(たい)片道(かたみち)三厘(さんりん)橋銭(はしせん)()(ため)(こしら)へた小屋(こや)である。017アリナは(つき)(ひかり)(あふ)(なが)ら、018藁屋(わらや)()()けて、019(すず)しき(かぜ)()びてゐた。
020 ()かる(ところ)二三(にさん)(にん)(くろ)(かげ)021向岸(むかふぎし)より一本橋(いつぽんばし)(たわ)つかせ(なが)(わた)(きた)(もの)がある。022黒影(くろかげ)一人(ひとり)
023(かふ)『やア家来(けらい)(ども)024今日(けふ)大変(たいへん)草臥(くたび)れたであらう。025仲々(なかなか)捜索隊(さうさくたい)(ほね)()れるものだ。026やア(さいはひ)ここに橋番(はしばん)小屋(ごや)がある。027どうぢや、028まだ(うち)(かへ)るには四五十(しごじつ)(ちやう)(みち)のりがあるから、029此処(ここ)休息(きうそく)してボツボツ(かへ)らうぢやないか』
030(おつ)『ハイ、031休息(きうそく)して(かへ)りませう。032夜道(よみち)()()れませぬからなア』
033(かふ)夜道(よみち)(こは)(きさま)も、034今日(けふ)主人(しゆじん)一緒(いつしよ)だから大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
035(おつ)『ハイ左様(さやう)(ござ)います。036今日(けふ)旦那(だんな)(さま)()一緒(いつしよ)(ござ)いますから千人力(せんにんりき)(ござ)います。037(なに)(ほど)那美山(なみやま)(おほかみ)(うな)つた(ところ)で、038ビクとも(いた)しませぬわ』
039(へい)『アツハヽヽヽ旦那(だんな)(さま)040此奴(こいつ)評判(ひやうばん)臆病者(おくびやうもの)(ござ)いまして、041(いま)(まで)夜道(よみち)はした(こと)のない(やつ)(ござ)いますよ。042夜道(よみち)(ひる)でも(こは)い、043(その)(かは)夜食(やしよく)(ひる)でも(うま)いとぬかす(やつ)ですもの』
044(かふ)『アツハヽヽヽ』
045(おつ)馬鹿(ばか)()ふない。046(ひる)夜食(やしよく)何処(どこ)にあるかい。047(きさま)余程(よほど)()()けた(こと)をいふ(やつ)だな』
048(かふ)『ヤアどうやら(この)番小屋(ばんごや)には生物(いきもの)がゐる(やう)だ。049コリヤ コリヤ(その)(はう)何者(なにもの)だ』
050アリナ『拙僧(せつそう)諸国(しよこく)遍歴(へんれき)修験者(しゆげんじや)(ござ)る』
051(かふ)『ハヽア、052其処(そこら)(あた)りを法螺(ほら)()きまわる比丘(びく)だなア。053ヤア(わか)つた(わか)つた。054エー、055比丘(びく)ならばチツと(ばか)予言(よげん)神占(うかがひ)出来(でき)るだらう。056どうか(ひと)拙者(せつしや)(ねがひ)()いてくれまいかなア』
057ア『ハイ、058何事(なにごと)でも(うけたま)はりませう。059拙僧(せつそう)はスガ(さん)立籠(たてこも)つて仏道(ぶつだう)修業(しうげふ)(いた)天然坊(てんねんばう)(まを)(もの)060たいていの(こと)百発(ひやくぱつ)百中(ひやくちゆう)061天然坊(てんねんばう)星当(ほしあた)り、062()ふも不思議(ふしぎ)063()はぬも不思議(ふしぎ)064六十一(ろくじふいつ)(けい)筮竹(ぜいちく)変化(へんげ)()つて、065(あるひ)(やう)となり(いん)となり、066乾坤(けんこん)離兌(りだ)などと、067種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)変化(へんげ)(いた)すによつて、068拙僧(せつそう)神占(うかがひ)をよく翫味(ぐわんみ)なさらぬと間違(まちがひ)出来(でき)ますよ。069(まへ)さまはタラハン(じやう)(だい)権力者(けんりよくしや)070右守司(うもりのかみ)職掌(しよくしやう)(つと)めてゐらつしやる(かた)(ござ)らうがな』
071(かふ)『ヤ、072これは(おそ)()つた。073如何(いか)にも()(さつ)しの(とほ)り、074右守司(うもりのかみ)のサクレンスで(ござ)る』
075ア『アツハヽヽ、076貴殿(きでん)(なに)捜索物(そうさくぶつ)があるやうだが、077サクレンスといふ名前(なまへ)では、078紛失物(ふんしつぶつ)所在(ありか)到底(たうてい)サグレンスで(ござ)る。079貴殿(きでん)(たづ)ねらるる(もの)は、080物品(ぶつぴん)でもなく、081家畜(かちく)でもなく、082(こめ)()(むし)(ござ)らうがな』
083サクレンス『ハイ084(その)(とほ)りで(ござ)います。085()うしてマア其方(そなた)はそれ(ほど)()御存(ごぞん)じで(ござ)いますか』
086ア『アツハヽヽ拙僧(せつそう)(つき)(せい)より衆生(しゆじやう)済度(さいど)(ため)087(この)地上(ちじやう)(くだ)りし(もの)088悪人(あくにん)(こら)善人(ぜんにん)(すく)はむが(ため)089一笠(いちりつ)一蓑(いつさ)一杖(いちぢやう)(はつ)(しやく)()(まか)せ、090諸国(しよこく)遍歴(へんれき)(いた)してゐるが、091タラハン(ごく)大変(たいへん)騒動(さうだう)(おこ)つた様子(やうす)(ござ)るなア』
092サク『ハイ093(ひと)つお(うかが)ひを(いた)したう(ござ)いますが、094(わたし)希望(きばう)成就(じやうじゆ)するで御座(ござ)いませうか』
095ア『どういふ希望(きばう)だ。096有体(ありてい)()はつしやい。097道徳(だうとく)(まも)つて、098如何(いか)なる秘密(ひみつ)(けつ)して拙僧(せつそう)他言(たごん)(つかまつ)らぬ。099(こと)(しな)()つては、100其方(そなた)(ちから)になつて(しん)ぜたい』
101サク『ハイ、102有難(ありがた)(ござ)います。103(じつ)(ところ)はタラハン(ごく)大王(だいわう)殿下(でんか)(めい)旦夕(たんせき)(せま)り、104太子(たいし)(さま)(をんな)(うつつ)()かして、105()(おち)(あそ)ばし、106(いま)行衛(ゆくゑ)(わか)らず、107国家(こくか)滅亡(めつぼう)旦夕(たんせき)(せま)場合(ばあひ)108(それがし)右守司(うもりのかみ)として国家(こくか)窮状(きうじやう)をみるに(しの)びず、109(わが)(おとうと)エールを(もつ)て、110()むを()王位(わうゐ)にのぼせ、111(さいはひ)王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)(きさき)となし、112タラハン国家(こくか)復興(ふくこう)(くはだ)てつつある最中(さいちう)(ござ)います。113(この)目的(もくてき)(かなら)成功(せいこう)(いた)すで(ござ)いませうかな』
114ア『ハヽヽヽ、115(あやふ)(かな)(わざはひ)なる(かな)116其方(そなた)面相(めんさう)には殺気(さつき)(みなぎ)つて()りますよ。117そして眉間(みけん)(あひだ)有々(ありあり)剣難(けんなん)(さう)(あら)はれてゐる。118すぐ(さま)(その)野心(やしん)(あらた)めざるに(おい)ては、119(たちま)(わざはひ)()(およ)ぶで(ござ)らう。120其方(そなた)太子(たいし)殿下(でんか)何処(どこ)かへ(かく)し、121(ふたた)()にあげない(かんが)へで(ござ)らうがな。122拙僧(せつそう)(いささ)太子(たいし)由縁(ゆかり)のある(もの)123(その)行衛(ゆくゑ)(さが)さむ(ため)124(じつ)修騒者(しうげんじや)()け、125(この)界隈(かいわい)夜間(やかん)(うかが)126(じつ)(さが)してゐるのだ』
127サク『ナニ、128太子(たいし)殿下(でんか)由縁(ゆかり)のある(もの)とは、129何人(なにびと)(ござ)るかな』
130ア『アツハヽヽヽ右守(うもり)殿(どの)耄碌(まうろく)せられたなア、131そら(その)(はず)でもあらう。132(ふた)つの(まなこ)近眼(きんがん)でもあり、133片足(かたあし)不具(かたわ)でもあり、134左様(さやう)(むつかし)不完全(ふくわんぜん)なる(からだ)(うご)かして、135アリナの所在(ありか)(たづ)ねまわるとは、136テも(さて)()苦労千万(くらうせんばん)137右守(うもり)殿(どの)躍起(やくき)となつて(たづ)ねて()るアリナの(きみ)()(まを)拙僧(せつそう)(ござ)る。138美事(みごと)相手(あひて)になるならなつて()なされ、139アツハヽヽヽ』
140サク『最前(さいぜん)から(なん)だか(あや)しき(やつ)だと(おも)つてゐたが、141如何(いか)にも(その)(はう)左守(さもり)(せがれ)アリナに間違(まちがひ)ない。142ヤア()(ところ)出会(であ)うた。143オイ家来(けらい)(ども)144有無(うむ)をいはせず(この)アリナをふん(じば)れ』
145『アイ』
146(こた)えて両人(りやうにん)前後(ぜんご)よりアリナに武者(むしや)()りつかむとする。147アリナは飛鳥(ひてう)(ごと)()(かわ)し、148(みぎ)(ひだり)(てき)鋭鋒(えいほう)をさけ(なが)ら、149金剛杖(こんがうづゑ)にて、150白刃(しらは)(やいば)をうけ(なが)してゐる。151(しか)(なが)らアリナも到底(たうてい)多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)152グヅグヅしてゐて(いのち)()られちや大変(たいへん)と、153一本橋(いつぽんばし)一生(いつしやう)懸命(けんめい)西側(にしがは)(きし)(むか)つて(かけ)()途端(とたん)154粗末(そまつ)橋杭(はしぐひ)(つまづ)いて、155ザンブと(ばか)激流(げきりう)(なか)落込(おちこ)んで(しま)つた。156右守(うもり)(その)()家来(けらい)(ども)()()つて万歳(ばんざい)三唱(さんしやう)し、157肩肱(かたひぢ)(いか)らし(なが)(いさ)(すす)んで家路(いへぢ)をさして(かへ)りゆく。
158 民衆(みんしう)救護団(きうごだん)女団長(をんなだんちやう)バランスは159沢山(たくさん)乾児(こぶん)(やしな)(その)費用(ひよう)(きう)し、160右守(うもり)禁断(きんだん)場所(ばしよ)(さだ)めておいた、161(うを)(ふち)()ふインデス(がは)(やや)(みづ)(よど)んだ場所(ばしよ)(おい)て、162乾児(こぶん)(とも)網打(あみうち)月夜(つきよ)(さいは)(はじ)めてゐた。163(この)地点(ちてん)岸辺(きしべ)老木(らうぼく)繁茂(はんも)し、164(うを)集合所(しふがふしよ)には最適当(さいてきたう)場所(ばしよ)であり、165()沢山(たくさん)種々(いろいろ)魚介(ぎよかい)棲息(せいそく)してゐる。166万一(まんいち)(この)場所(ばしよ)(あみ)()れ、167役人(やくにん)()つからうものなら、168(たちま)石子責(いしこぜめ)(けい)(しよ)せらるるといふ(きび)しき(おきて)である。169バランスは数十(すうじふ)(にん)乾児(こぶん)見張(みはり)をさせ(なが)らバサリバサリと(あみ)()ち、170沢山(たくさん)(うを)捕獲(ほくわく)して()た。171十網(とをあみ)(ばか)()つた(とき)172非常(ひじやう)(おも)たいものが(あみ)にかかつた。173バランスは腕力(わんりよく)(まか)せて引上(ひきあ)げて()ると人間(にんげん)死骸(しがい)である。174義侠心(ぎけふしん)()める彼女(かのぢよ)は、
175(わが)(あみ)にかかるは(なに)かの因縁(いんねん)だらう。176何処(いづく)(ひと)かは()らね(ども)177モシ(いのち)(たす)かるものなら、178所在(あらゆる)手段(しゆだん)(つく)して(たす)けてやらねばなるまい』
179と、180乾児(こぶん)(めい)沢山(たくさん)焚物(たきもの)(あつ)めさせ181河縁(かはべり)()()いて(あたた)めてゐた。182そして人工(じんこう)呼吸(こきふ)や、183種々(いろいろ)手段(てだて)(つく)してみたが、184(いき)(ふき)(かへ)さず、185(ほと)んど絶望(ぜつばう)(ふち)(しづ)んでゐる(とき)しもあれ、186(こま)(またが)(この)()(あら)はれて()たのは、187水車(すいしや)小屋(ごや)(とら)はれてゐたスダルマン太子(たいし)一行(いつかう)である。188バランスは一目(ひとめ)()るより月影(つきかげ)にすかして、189スダルマン太子(たいし)たる(こと)()り、1891捨鉢(すてばち)気味(ぎみ)になり、190ゴテゴテぬかさば強力(がうりき)(まか)せ、191(うま)諸共(もろとも)河中(かちう)(とう)じてくれむものと、192身構(みがまへ)をした。193太子(たいし)(あと)振向(ふりむ)(なが)ら、
194宣伝使(せんでんし)(さま)195()うやら土左ヱ門(どざえもん)(あみ)にかかつたやうです。196(たす)けてやる(こと)出来(でき)ますまいかなア』
197(うめ)如何(いか)にも溺死者(できししや)とみえます。198(かみ)(さま)(いの)つて蘇生(そせい)さして(いただ)きませう』
199()(なが)ら、200(こま)をヒラリと飛下(とびお)り、201バランスの(まへ)(すす)みよつて、202丁寧(ていねい)(こし)(かが)め、
203()れば溺死人(できしにん)とみえますが、204貴方(あなた)(がた)親切(しんせつ)介抱(かいはう)して(ござ)様子(やうす)205(じつ)奇特(きとく)神妙(しんめう)(いた)りで(ござ)る』
206 バランスは(この)言葉(ことば)()いて、207(あん)相違(さうゐ)し、208(にぎ)りかためた(こぶし)のやり()(こま)つたといふ顔付(かほつき)にて、
209『ハイ、210(わたし)(じつ)(ところ)はバランスといふ漁業(ぎよげふ)団長(だんちやう)(ござ)いますが、211禁断(きんだん)場所(ばしよ)(をか)して魚族(うろくづ)捕獲(ほくわく)する(をり)しも、212(わが)(あみ)にかかつたのは比丘姿(びくすがた)旅人(たびびと)213どうかして(たす)けたいものだと、214(この)(とほ)()()いて(あたた)め、215いろいろと()(つく)しますれど最早(もはや)駄目(だめ)(ござ)います。216モシ(これ)蘇生(そせい)するものならば、217どうか宣伝使(せんでんし)のお(いの)りによつて(たす)けて(いただ)きたいもので(ござ)います』
218 梅公別(うめこうわけ)(ただち)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、219(あま)数歌(かずうた)(とな)死者(ししや)前額部(ぜんがくぶ)(みぎ)示指(ひとさし)をあてて220一生(いつしやう)懸命(けんめい)(れい)(おく)(こと)(ほとん)五分(ごふん)221不思議(ふしぎ)死人(しにん)はウンと(うな)()し、222(かす)かに手足(てあし)(うご)かし(はじ)めた。223バランスを(はじ)一同(いちどう)歓喜(くわんき)(たとふ)るに(もの)なき(ほど)であつた。224(やうや)くにして死人(しにん)元気(げんき)回復(くわいふく)し、225四辺(あたり)をキヨロキヨロと()まわし(なが)ら、226篝火(かがりび)にすかし()て、
227ア『ヤア貴方(あなた)はスダルマン太子(たいし)(さま)(ござ)いますか』
228(なに)229(なんぢ)はアリナであつたか、230ヤア()(ところ)其方(そなた)出会(であ)ひ、231()満足(まんぞく)だ』
232ス『アリナ(さま)233(わらは)はスバールで(ござ)います。234貴方(あなた)()んでいらつしやつたので(ござ)いますよ。235ここに(ござ)(おほ)きなお(かた)(あみ)にかかり貴方(あなた)(すく)はれたのです。236種々(いろいろ)(この)(かた)()介抱(かいはう)(あそ)ばしたさうで(ござ)いますが、237どうしても蘇生(そせい)(のぞ)みがないので、238失望(しつばう)落胆(らくたん)してゐられた(ところ)へ、239三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)梅公別(うめこうわけ)(さま)240(すなは)(この)()(かた)(かみ)(さま)(いの)つて、241貴方(あなた)(たす)けて(くだ)さつたのですよ。242サア()(れい)(まを)しなさい』
243ア『ハイ、244有難(ありがた)(ござ)います。245モシ宣伝使(せんでんし)(さま)246エー、247漁師(れふし)(さま)248再生(さいせい)御恩(ごおん)249末代(まつだい)(まで)(わす)れは(いた)しませぬ』
250簡単(かんたん)251落涙(らくるゐ)して感謝(かんしや)(ことば)(てい)する。
252(たい)『ヤア結構(けつこう)々々(けつこう)253(なんぢ)バランス、254禁断(きんだん)場所(ばしよ)(をか)した(つみ)国法(こくはふ)(じやう)(ゆる)(がた)いなれど、255(なんぢ)仁愛(じんあい)(こころ)(めん)(わす)れておく』
256バラ『(これ)(これ)太子(たいし)殿下(でんか)(ござ)いましたか。257()仁慈(じんじ)のお言葉(ことば)骨身(ほねみ)(こた)へて有難(ありがた)(ぞん)じます。258大体(だいたい)斯様(かやう)不公平(ふこうへい)法律(はふりつ)発布(はつぷ)し、259自然(しぜん)発生()魚族(うろくづ)右守(うもり)(かみ)特別(とくべつ)漁猟(ぎよれふ)区域(くゐき)となし、260人民(じんみん)一般(いつぱん)天然(てんねん)恩恵(おんけい)均霑(きんてん)させないといふのは(あま)矛盾(むじゆん)では(ござ)いますまいか。261(わたし)民衆(みんしう)味方(みかた)()つて()かる不公平(ふこうへい)なる法律(はふりつ)撤回(てつくわい)し、262四民(しみん)平等(べうどう)神意(しんい)(もとづ)き、263タラハン(ごく)政治(せいぢ)根本(こんぽん)(てき)改革(かいかく)(いた)()念願(ねんぐわん)して()ります。264斯様(かやう)(ところ)太子(たいし)(さま)(まをし)()げるのは(おそ)(おほ)うは(ござ)いまするが、265(わたし)一言(いちげん)国民(こくみん)全体(ぜんたい)(こゑ)御座(ござ)いますから、266何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)仁慈(じんじ)御心(みこころ)(もつ)て、267()かる狭苦(せまくる)しき法律(はふりつ)撤回(てつくわい)(あそ)ばす(やう)268違法(ゐはふ)ながら(つつ)しんで殿下(でんか)直訴(ぢきそ)(いた)します』
269(たい)『ヤ、270(じつ)天晴(あつぱれ)(なんぢ)(こころざし)271感心(かんしん)々々(かんしん)272()(これ)より城内(じやうない)(かへ)273国政(こくせい)大改革(だいかいかく)断行(だんかう)する(かんが)へだ。274(なんぢ)民衆(みんしう)(はは)として今日(こんにち)(まで)国家(こくか)(ため)大活動(だいくわつどう)をやつてゐた(こと)は、275うすうす()いてゐる。276()いてはどうだ、277()政治(せいぢ)(たす)けてくれる(こころ)はないか』
278バラ『ハイ、279(おも)ひもよらぬ殿下(でんか)思召(おぼしめし)280何分(なにぶん)(ひな)(そだ)つた不作法(ぶさはふ)(もの)281到底(たうてい)廟堂(べうだう)()(こと)出来(でき)ませぬ。282まして(いま)(まで)茶坊主(ちやばうず)(つま)(まで)成下(なりさが)つて()りました(いや)しき(をんな)(ござ)いまするから……』
283(たい)其方(そち)にも似合(にあ)はぬ(その)言葉(ことば)284国民(こくみん)救護(きうご)(ため)ならば、285(いさ)んで()言葉(ことば)()いても()いぢやないか。286(いま)(まで)(ごと)特権(とくけん)階級(かいきふ)威張(ゐば)()らし、287(しも)民衆(みんしう)難儀(なんぎ)()らず(がほ)に、288(わが)()勝手(かつて)(こと)(いた)すやうな悪政(あくせい)はやらせない(つもり)だ。289どうか()(たの)みを()いてはくれまいか』
290バラ『ハイ、291(おも)(がけ)なき殿下(でんか)()見出(みだ)しに(あづか)り、292日頃(ひごろ)願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)(とき)(まゐ)りました(やう)(ござ)います。293左様(さやう)ならば令旨(れいし)(したが)ひ、294殿下(でんか)付添(つきそ)入内(にふだい)(いた)すで(ござ)いませう』
295(たい)『ヤア満足(まんぞく)々々(まんぞく)296(とき)(うつ)さず、297(なんぢ)()について城内(じやうない)()てくれよ』
298バラ『(かしこ)まりました。299(しか)(なが)(この)アリナ(さま)到底(たうてい)(この)様子(やうす)では歩行(ほかう)(むつかし)からうと(ぞん)じますから、300(わらは)(うま)となり、301(せな)()ぶつてお(とも)(いた)しませう』
302(うめ)『ヤ、303バランスさま、304天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)305男子(だんし)にまさる貴女(あなた)勇気(ゆうき)306貴女(あなた)こそ(かみ)化身(けしん)とも()ふべきお(かた)(ござ)います』
307バラ『左様(さやう)にお()(くだ)さつてはお(はづか)しう(ござ)います。308サア(まゐ)りませう』
309とバランスはアリナを(せな)()(なが)ら、310駿足(しゆんそく)(あと)より(したが)()く。311(この)(とき)312大空(おほぞら)(つき)淡雲(あはくも)押分(おしわ)けてニコニコし(なが)ら、313一行(いつかう)()(にん)(よる)道芝(みちしば)(きよ)(あきら)けく(てら)させ(たま)うた。314インデス(がは)河波(かはなみ)月光(げつくわう)()びて金鱗(きんりん)(ごと)くキラリキラリと(またた)いてゐる。
315大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 松村真澄録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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