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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第68巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 名花移植
第1章 貞操論
第2章 恋盗詞
第3章 山出女
第4章 茶湯の艶
第2篇 恋火狼火
第5章 変装太子
第6章 信夫恋
第7章 茶火酌
第8章 帰鬼逸迫
第3篇 民声魔声
第9章 衡平運動
第10章 宗匠財
第11章 宮山嵐
第12章 妻狼の囁
第13章 蛙の口
第4篇 月光徹雲
第14章 会者浄離
第15章 破粋者
第16章 戦伝歌
第17章 地の岩戸
第5篇 神風駘蕩
第18章 救の網
第19章 紅の川
第20章 破滅
第21章 祭政一致
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第68巻(未の巻)
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<<< 宮山嵐
(B)
(N)
蛙の口 >>>
第一二章
妻狼
(
さいらう
)
の
囁
(
ささやき
)
〔一七三六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第3篇 民声魔声
よみ(新仮名遣い):
みんせいませい
章:
第12章 妻狼の囁
よみ(新仮名遣い):
さいろうのささやき
通し章番号:
1736
口述日:
1925(大正14)年01月30日(旧01月7日)
口述場所:
月光閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
この事態を尻目に、右守のサクレンスはタラハン国を乗っ取ろうと妻のサクラン姫と策略を練っていた。
太子の行方不明にかこつけて、王女バンナに自分の弟を娶わせて女王に立て、自分たちは外戚として権力を振るおうとしていた。
サクラン姫は、この計画の邪魔になる太子とアリナを探し出して亡き者にしようと計画する。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6812
愛善世界社版:
160頁
八幡書店版:
第12輯 210頁
修補版:
校定版:
161頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
若葉
(
わかば
)
はそよぐ
初夏
(
しよか
)
の
風
(
かぜ
)
002
山時鳥
(
やまほととぎす
)
四方
(
よも
)
八方
(
やも
)
の
003
密樹
(
みつじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
にひそみつつ
004
悲
(
かな
)
しき
声
(
こゑ
)
を
張
(
はり
)
上
(
あ
)
げて
005
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
りしタラハンの
006
国
(
くに
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
歎
(
かこ
)
つなり
007
李
(
すもも
)
杏
(
あんず
)
も
梅
(
うめ
)
の
実
(
み
)
も
008
色
(
いろ
)
づき
初
(
そ
)
めて
遠近
(
をちこち
)
の
009
田
(
た
)
の
面
(
も
)
に
数多
(
あまた
)
の
首陀
(
しゆだ
)
たちが
010
生命
(
いのち
)
の
苗
(
なへ
)
を
植
(
うゑ
)
つける
011
其
(
その
)
有様
(
ありさま
)
を
眺
(
なが
)
むれば
012
降
(
ふ
)
る
五月雨
(
さみだれ
)
に
蓑笠
(
みのかさ
)
を
013
おのもおのもにつけ
乍
(
なが
)
ら
014
三々
(
さんさん
)
伍々
(
ごご
)
と
隊
(
たい
)
をなし
015
田
(
た
)
の
面
(
も
)
に
唄
(
うた
)
ふ
勇
(
いさ
)
ましさ
016
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
三百
(
さんびやく
)
五十
(
ごじふ
)
日
(
にち
)
017
たつた
一度
(
いちど
)
の
植付
(
うゑつけ
)
の
018
好
(
かう
)
シーズンのめぐり
来
(
き
)
て
019
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
もせいぜいと
020
希望
(
きばう
)
に
充
(
み
)
てる
折
(
をり
)
もあれ
021
タラハン
市街
(
しがい
)
の
大火災
(
だいくわさい
)
022
忽
(
たちま
)
ち
暴徒
(
ばうと
)
蜂起
(
ほうき
)
して
023
特権
(
とくけん
)
階級
(
かいきふ
)
富有者
(
ふいうしや
)
共
(
ども
)
の
024
大邸宅
(
だいていたく
)
に
火
(
ひ
)
を
放
(
はな
)
ち
025
婦女
(
ふぢよ
)
をば
姦
(
かん
)
し
金銭
(
きんせん
)
を
026
不逞
(
ふてい
)
の
首陀団
(
しゆだだん
)
掠奪
(
りやくだつ
)
し
027
諸種
(
しよしゆ
)
の
主義者
(
しゆぎしや
)
は
一時
(
いちどき
)
に
028
手
(
て
)
に
唾
(
つばき
)
して
立上
(
たちあが
)
り
029
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
日頃
(
ひごろ
)
の
鬱憤
(
うつぷん
)
を
030
晴
(
は
)
らすは
今
(
いま
)
や
此
(
この
)
時
(
とき
)
と
031
警戒
(
けいかい
)
厳
(
きび
)
しき
警察
(
けいさつ
)
を
032
向方
(
むかふ
)
に
廻
(
まは
)
して
戦
(
たたか
)
ひし
033
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
は
枯野
(
かれの
)
をば
034
燃
(
も
)
えゆく
焔
(
ほのほ
)
の
如
(
ごと
)
くなり
035
茲
(
ここ
)
に
軍隊
(
ぐんたい
)
出動
(
しゆつどう
)
し
036
漸
(
やうや
)
く
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
暴徒
(
ばうと
)
も
037
鎮圧
(
ちんあつ
)
したれど
何時
(
いつ
)
か
又
(
また
)
038
大騒動
(
おほさうどう
)
が
起
(
おこ
)
らむと
039
期待
(
きたい
)
されたるタラハンの
040
城下
(
じやうか
)
の
人心
(
じんしん
)
恟々
(
きようきよう
)
と
041
安
(
やす
)
き
心
(
こころ
)
もなかりけり
042
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
の
神司
(
かむつかさ
)
043
吾
(
わが
)
権勢
(
けんせい
)
の
忽
(
たちま
)
ちに
044
おち
行
(
ゆ
)
く
虞
(
おそれ
)
ありとなし
045
所在
(
あらゆる
)
手段
(
しゆだん
)
をめぐらして
046
軍隊
(
ぐんたい
)
警察
(
けいさつ
)
召集
(
せうしふ
)
し
047
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ
用心
(
ようじん
)
に
048
流石
(
さすが
)
不平
(
ふへい
)
の
連中
(
れんちう
)
も
049
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
影
(
かげ
)
をひそめけり
050
カラピン
王
(
わう
)
は
重病
(
ぢうびやう
)
に
051
苦
(
くるし
)
み
玉
(
たま
)
ひて
国政
(
こくせい
)
を
052
見玉
(
みたま
)
ふ
術
(
すべ
)
も
更
(
さら
)
になく
053
太子
(
たいし
)
の
君
(
きみ
)
は
騒動
(
さうだう
)
に
054
紛
(
まぎ
)
れて
影
(
かげ
)
を
隠
(
かく
)
しまし
055
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
のガンヂーは
056
心
(
こころ
)
許
(
ばか
)
りは
焦
(
いら
)
て
共
(
ども
)
057
よる
年波
(
としなみ
)
に
力
(
ちから
)
落
(
お
)
ち
058
勇気
(
ゆうき
)
は
頓
(
とみ
)
に
阻喪
(
そさう
)
して
059
単
(
たん
)
に
無用
(
むよう
)
の
長物
(
ちやうぶつ
)
と
060
誹
(
そしら
)
れ
乍
(
なが
)
ら
気
(
き
)
がつかず
061
萎
(
しほ
)
れ
切
(
き
)
つたる
両腕
(
りやううで
)
を
062
ウンと
叩
(
たた
)
いて
雄健
(
をたけ
)
びし
063
敦圉
(
いきま
)
く
様
(
さま
)
は
螳螂
(
かまきり
)
が
064
斧
(
をの
)
を
揮
(
ふる
)
うて
立
(
た
)
てる
如
(
ごと
)
065
其
(
その
)
スタイルの
可笑
(
をか
)
しさよ
066
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
きサクレンス
067
此
(
この
)
有様
(
ありさま
)
を
見
(
み
)
るよりも
068
国家
(
こくか
)
の
前途
(
ぜんと
)
は
風前
(
ふうぜん
)
の
069
灯火
(
ともしび
)
の
如
(
ごと
)
しと
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
の
070
サクラン
姫
(
ひめ
)
と
頭
(
かしら
)
をば
071
傾
(
かたむ
)
け
前後
(
ぜんご
)
の
策略
(
さくりやく
)
を
072
めぐらしゐるこそうたてけれ。
073
サクレンス『サクラン
姫
(
ひめ
)
よ、
074
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
追々
(
おひおひ
)
と、
075
斯
(
か
)
う
物騒
(
ぶつそう
)
になつて
来
(
き
)
ては、
076
俺
(
おれ
)
もウツカリはして
居
(
を
)
れない。
077
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
とは
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が、
078
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
一変
(
いつぺん
)
し、
079
吾々
(
われわれ
)
如
(
ごと
)
き
特権
(
とくけん
)
階級
(
かいきふ
)
や
資本
(
しほん
)
階級
(
かいきふ
)
の
滅亡
(
めつぼう
)
する
時期
(
じき
)
が
迫
(
せま
)
つて
来
(
き
)
たやうだ。
080
此
(
この
)
儘
(
まま
)
に
放任
(
はうにん
)
しておけば、
081
タラハンの
国家
(
こくか
)
は
言
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
ばず、
082
王家
(
わうけ
)
も
吾々
(
われわれ
)
階級
(
かいきふ
)
も
遠
(
とほ
)
からぬ
内
(
うち
)
に
地獄
(
ぢごく
)
の
憂目
(
うきめ
)
を
見
(
み
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
はせまいかと
案
(
あん
)
じて
寝
(
ね
)
られないのだ。
083
お
前
(
まへ
)
は
一体
(
いつたい
)
、
084
今日
(
こんにち
)
の
世態
(
せたい
)
を
何
(
ど
)
う
成行
(
なりゆ
)
くと
考
(
かんが
)
へてるか』
085
サクラン『
仰
(
おほせ
)
の
通
(
とほ
)
り、
086
世
(
よ
)
はだんだんと
行詰
(
ゆきつま
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
087
経済界
(
けいざいかい
)
、
088
政治界
(
せいぢかい
)
、
089
宗教界
(
しうけうかい
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
090
実業
(
じつげふ
)
方面
(
はうめん
)
に
於
(
おい
)
ても
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
行
(
ゆき
)
詰
(
づま
)
り、
091
実
(
じつ
)
に
惨
(
みぢ
)
めな
状態
(
じやうたい
)
となりました。
092
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
窮
(
きう
)
すれば
通
(
つう
)
ずとか
申
(
まを
)
しまして、
093
禍
(
わざはひ
)
の
極端
(
きよくたん
)
に
達
(
たつ
)
した
時
(
とき
)
は、
094
キツト
幸
(
さいはひ
)
の
芽
(
め
)
を
吹
(
ふ
)
くもので
厶
(
ござ
)
います。
095
去
(
さ
)
る
五日
(
いつか
)
の
大火災
(
だいくわさい
)
にも、
096
城内
(
じやうない
)
の
茶寮
(
ちやれう
)
は
焼
(
や
)
け
落
(
お
)
ちて、
097
所在
(
あらゆる
)
国宝
(
こくほう
)
は
全部
(
ぜんぶ
)
灰燼
(
くわいじん
)
に
帰
(
き
)
し、
098
左守
(
さもり
)
の
邸宅
(
ていたく
)
迄
(
まで
)
、
099
あんな
惨
(
みじ
)
めな
事
(
こと
)
になりました。
100
それにも
拘
(
かかは
)
らず、
101
右守
(
うもり
)
の
邸宅
(
ていたく
)
は
一部分
(
いちぶぶん
)
暴徒
(
ばうと
)
に
破壊
(
はくわい
)
された
計
(
ばか
)
りで
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
安全
(
あんぜん
)
に
残
(
のこ
)
りましたのも
102
右守家
(
うもりけ
)
に、
1021
対
(
たい
)
し
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんのう
)
様
(
さま
)
が、
103
大
(
だい
)
なる
使命
(
しめい
)
のある
事
(
こと
)
を
暗示
(
あんじ
)
されたものと
考
(
かんが
)
へられます。
104
斯様
(
かやう
)
に
混乱
(
こんらん
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
つた
社会
(
しやくわい
)
では、
105
弱
(
よわ
)
いと
見
(
み
)
られたならば
忽
(
たちま
)
ち
叩
(
たた
)
き
潰
(
つぶ
)
され、
106
亡
(
ほろ
)
ぼされて
了
(
しま
)
ふものです。
107
それ
故
(
ゆゑ
)
此
(
この
)
際
(
さい
)
は
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
満身
(
まんしん
)
の
力
(
ちから
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
108
空前
(
くうぜん
)
絶後
(
ぜつご
)
の
大計画
(
だいけいくわく
)
を
遂行
(
すゐかう
)
して、
109
国民
(
こくみん
)
上下
(
じやうか
)
の
胆
(
たん
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
110
右守
(
うもり
)
の
威力
(
ゐりよく
)
を
現
(
あら
)
はし、
111
威圧
(
ゐあつ
)
と
権威
(
けんゐ
)
とを
示
(
しめ
)
して、
112
国民
(
こくみん
)
の
驕慢心
(
けうまんしん
)
を
抑
(
おさ
)
へ
付
(
つ
)
けねばなりますまい』
113
サクレ『お
前
(
まへ
)
のいふ
事
(
こと
)
も
一応
(
いちおう
)
尤
(
もつと
)
もの
様
(
やう
)
だが、
114
人心
(
じんしん
)
極端
(
きよくたん
)
に
悪化
(
あくくわ
)
し、
115
吾々
(
われわれ
)
の
階級
(
かいきふ
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
せむと
国民
(
こくみん
)
が
殆
(
ほと
)
んど
一致
(
いつち
)
して
時期
(
じき
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
時代
(
じだい
)
に
際
(
さい
)
し、
116
なまじひ
に
小刀
(
こがたな
)
細工
(
ざいく
)
を
施
(
ほどこ
)
してみた
所
(
ところ
)
が、
117
却
(
かへつ
)
て
万民
(
ばんみん
)
の
怒
(
いか
)
りを
買
(
か
)
ひ、
118
滅亡
(
めつぼう
)
を
早
(
はや
)
める
様
(
やう
)
なものだ。
119
ぢやと
云
(
い
)
つて
此
(
この
)
難関
(
なんくわん
)
を
打
(
うち
)
ぬけ、
120
民心
(
みんしん
)
を
収攬
(
しうらん
)
し、
121
太平
(
たいへい
)
無事
(
ぶじ
)
に
国家
(
こくか
)
を
復興
(
ふくこう
)
する
事
(
こと
)
は
難事中
(
なんじちう
)
の
難事
(
なんじ
)
だ。
122
如何
(
いか
)
なる
聖人
(
せいじん
)
賢人
(
けんじん
)
と
雖
(
いへど
)
、
123
此
(
この
)
際
(
さい
)
かかる
世態
(
せたい
)
に
対
(
たい
)
し、
124
メスを
揮
(
ふる
)
ふ
余地
(
よち
)
はあるまい。
125
あゝ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だワイ。
126
大王
(
だいわう
)
殿下
(
でんか
)
は
御
(
ご
)
重病
(
ぢうびやう
)
、
127
何時
(
いつ
)
お
国替
(
くにがへ
)
遊
(
あそ
)
ばすやら
計
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
今日
(
こんにち
)
の
有様
(
ありさま
)
、
128
太子
(
たいし
)
の
君
(
きみ
)
はお
行衛
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
らず、
129
左守司
(
さもりのかみ
)
は
老齢
(
らうれい
)
激務
(
げきむ
)
に
堪
(
た
)
へず、
130
又
(
また
)
彼
(
かれ
)
が
悴
(
せがれ
)
のアリナは
踪跡
(
そうせき
)
を
晦
(
くら
)
まし、
131
タラハン
国
(
ごく
)
はすべての
重鎮
(
ぢうちん
)
を
失
(
うしな
)
はむとしてゐる。
132
要
(
かなめ
)
のぬけた
扇
(
あふぎ
)
の
如
(
ごと
)
く
到底
(
たうてい
)
収拾
(
しうしふ
)
す
可
(
べか
)
らざる
内情
(
ないじやう
)
となつてゐる。
133
今後
(
こんご
)
亦
(
また
)
去
(
さ
)
る
五日
(
いつか
)
の
如
(
ごと
)
き
騒乱
(
さうらん
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
せうものなら、
134
夫
(
それ
)
こそ
王家
(
わうけ
)
を
始
(
はじ
)
め
貴族
(
きぞく
)
階級
(
かいきふ
)
の
断滅期
(
だんめつき
)
だ。
135
何
(
なん
)
とかして
此
(
この
)
頽勢
(
たいせい
)
を
挽回
(
ばんくわい
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
よまいかなア』
136
サクラ『
私
(
わたし
)
の
意見
(
いけん
)
としては
此
(
この
)
際
(
さい
)
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
大鉈
(
おほなた
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
137
大改革
(
だいかいかく
)
を
断行
(
だんかう
)
せねば、
138
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
139
老
(
おい
)
朽
(
く
)
ちて
将
(
まさ
)
に
倒
(
たふ
)
れむとする
老木
(
らうぼく
)
も
140
根元
(
ねもと
)
より
幹
(
みき
)
を
切
(
き
)
り
放
(
はな
)
たば、
1401
新
(
あたら
)
しき
芽
(
め
)
を
吹
(
ふ
)
き、
141
其
(
その
)
為
(
ため
)
再
(
ふたた
)
び
生命
(
せいめい
)
を
持続
(
ぢぞく
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るものです。
142
吾
(
わが
)
夫様
(
つまさま
)
、
143
此
(
この
)
際
(
さい
)
貴方
(
あなた
)
は
大
(
だい
)
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
144
国体
(
こくたい
)
を
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
改革
(
かいかく
)
遊
(
あそ
)
ばす
御
(
ご
)
所存
(
しよぞん
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬか』
145
サクレ『イヤ、
146
俺
(
おれ
)
にも
考案
(
かうあん
)
はない
事
(
こと
)
はないが、
147
さりとて
余
(
あま
)
りの
叛逆
(
はんぎやく
)
だからなア』
148
サクラ『ホヽヽヽ、
149
叛逆
(
はんぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
すのが
何故
(
なにゆゑ
)
に
叛逆
(
はんぎやく
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
150
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
151
大王
(
だいわう
)
様
(
さま
)
はあの
通
(
とほ
)
り、
152
太子
(
たいし
)
殿下
(
でんか
)
は
御
(
おん
)
行衛
(
ゆくへ
)
分
(
わか
)
らず、
153
左守
(
さもり
)
の
老衰
(
らうすゐ
)
、
154
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
国家
(
こくか
)
の
重鎮
(
ぢうちん
)
に
大損傷
(
だいそんしやう
)
を
来
(
きた
)
した
上
(
うへ
)
は、
155
最早
(
もはや
)
タラハン
国
(
ごく
)
に
於
(
お
)
ける
最大
(
さいだい
)
権力者
(
けんりよくしや
)
は
右守家
(
うもりけ
)
を
措
(
お
)
いて
外
(
ほか
)
にはないぢやありませぬか。
156
民心
(
みんしん
)
を
新
(
あらた
)
にする
為
(
ため
)
、
157
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
王女
(
わうぢよ
)
バンナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
表
(
おもて
)
に
立
(
た
)
て、
158
弟
(
おとうと
)
のエールを
王位
(
わうゐ
)
に
就
(
つ
)
かせ、
159
国民
(
こくみん
)
上下
(
じやうか
)
の
人心
(
じんしん
)
を
収攬
(
しうらん
)
し、
160
貴方
(
あなた
)
は
国務
(
こくむ
)
総監
(
そうかん
)
となつて、
161
無限
(
むげん
)
絶大
(
ぜつだい
)
なる
権威
(
けんゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
162
政治
(
せいぢ
)
の
改革
(
かいかく
)
を
断行
(
だんかう
)
なさるより
外
(
ほか
)
に、
163
国家
(
こくか
)
を
救
(
すく
)
ふ
道
(
みち
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい』
164
サクレ『
成程
(
なるほど
)
、
165
俺
(
おれ
)
も
其
(
その
)
事
(
こと
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
に
幾度
(
いくど
)
か
考
(
かんが
)
へてみた
事
(
こと
)
もあるが
166
余
(
あま
)
りの
陰謀
(
いんぼう
)
で、
167
女房
(
にようばう
)
の
其方
(
そなた
)
にも
言
(
い
)
ひ
兼
(
か
)
ねてゐたのだ。
168
お
前
(
まへ
)
が
其
(
その
)
心
(
こころ
)
なら、
169
俺
(
おれ
)
は
強力
(
きやうりよく
)
なる
味方
(
みかた
)
を
得
(
え
)
たも
同然
(
どうぜん
)
、
170
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
断行
(
だんかう
)
を
試
(
こころ
)
みやう。
171
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
172
ここ
暫
(
しばら
)
くは
秘密
(
ひみつ
)
を
厳守
(
げんしゆ
)
せなくてはならうまい。
173
万々一
(
まんまんいち
)
此
(
この
)
計画
(
けいくわく
)
が
夫婦
(
ふうふ
)
以外
(
いぐわい
)
に
洩
(
も
)
れ
散
(
ち
)
るやうな
事
(
こと
)
があれば、
174
それこそ
右守家
(
うもりけ
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
だ』
175
サクラ『
凡
(
すべ
)
て
大業
(
たいげふ
)
を
成
(
な
)
さむと
思
(
おも
)
へば、
176
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
るのが
肝心
(
かんじん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
177
暫
(
しばら
)
く
人心
(
じんしん
)
の
治
(
をさ
)
まつた
潮時
(
しほどき
)
を
考
(
かんが
)
へ、
178
公々然
(
こうこうぜん
)
と
天下
(
てんか
)
に
向
(
むか
)
つて
国政
(
こくせい
)
改革
(
かいかく
)
を
標榜
(
へうばう
)
し、
179
エールを
王位
(
わうゐ
)
に
上
(
のぼら
)
せ、
180
バンナ
姫
(
ひめ
)
を
王妃
(
わうひ
)
と
成
(
な
)
す
事
(
こと
)
を
発表
(
はつぺう
)
遊
(
あそ
)
ばせば、
181
茲
(
ここ
)
に
始
(
はじ
)
めて
維新
(
ゐしん
)
改革
(
かいかく
)
の
謀主
(
ぼうしゆ
)
として
貴方
(
あなた
)
を
国民
(
こくみん
)
が
欣慕
(
きんぼ
)
憧憬
(
どうけい
)
する
様
(
やう
)
になるで
厶
(
ござ
)
いませう。
182
それより
外
(
ほか
)
に
適当
(
てきたう
)
な
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい』
183
サクレ『それに
就
(
つい
)
ては、
184
第一
(
だいいち
)
気
(
き
)
に
懸
(
かか
)
るのは
太子
(
たいし
)
の
君
(
きみ
)
だ。
185
折角
(
せつかく
)
エールとバンナ
王女
(
わうぢよ
)
を
立
(
た
)
て、
186
国家
(
こくか
)
の
改造
(
かいざう
)
を
標榜
(
へうばう
)
してゐる
最中
(
さいちう
)
へ、
187
ヒヨツコリ
太子
(
たいし
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て、
188
異議
(
いぎ
)
を
唱
(
とな
)
へ
給
(
たま
)
ふやうな
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
れば、
189
吾々
(
われわれ
)
の
折角
(
せつかく
)
の
計画
(
けいくわく
)
も
水泡
(
すゐはう
)
に
帰
(
き
)
するのみならず、
190
右守
(
うもり
)
を
叛逆者
(
はんぎやくしや
)
として
大罪
(
だいざい
)
に
問
(
と
)
はるるかも
知
(
し
)
れぬ。
191
夫
(
それ
)
故
(
ゆゑ
)
俺
(
おれ
)
の
思
(
おも
)
ふには、
192
まづ
太子
(
たいし
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
から
片付
(
かたづ
)
けて
掛
(
かか
)
らねば
成
(
な
)
るまい』
193
サクラ『
成程
(
なるほど
)
、
194
それが
先決
(
せんけつ
)
問題
(
もんだい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
195
併
(
しか
)
し
幸
(
さいは
)
ひに
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
を
巧
(
うま
)
く
片付
(
かたづ
)
けた
所
(
ところ
)
で、
196
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
アリナが
此
(
こ
)
の
世
(
よ
)
に
在
(
あ
)
る
限
(
かぎ
)
りは、
197
再
(
ふたた
)
び
折角
(
せつかく
)
の
計画
(
けいくわく
)
を
覆
(
くつが
)
へさるる
虞
(
おそれ
)
が
御座
(
ござ
)
います。
198
之
(
これ
)
も
序
(
ついで
)
に
何
(
なん
)
とか
致
(
いた
)
さねばなりますまい』
199
サクレ『ウン、
200
それもさうだ。
201
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
両人
(
りやうにん
)
を
処置
(
しよち
)
するに
付
(
つ
)
いては、
202
石
(
いし
)
で
臨
(
のぞ
)
むか、
203
真綿
(
まわた
)
で
臨
(
のぞ
)
むか、
204
何
(
いづ
)
れかの
方法
(
はうはふ
)
を
取
(
と
)
らねば
成
(
な
)
るまい、
205
どちらが
能
(
よ
)
からうかなア』
206
サクラ『
天下
(
てんか
)
混乱
(
こんらん
)
の
際
(
さい
)
、
207
生温
(
なまぬる
)
い
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
では
駄目
(
だめ
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
208
疾風
(
しつぷう
)
迅雷
(
じんらい
)
耳
(
みみ
)
を
掩
(
おほ
)
ふに
暇
(
いとま
)
なき
早業
(
はやわざ
)
を
以
(
もつ
)
て
209
キツパリと、
2091
幹
(
みき
)
を
切
(
き
)
り
根
(
ね
)
を
絶
(
た
)
ち
葉
(
は
)
を
枯
(
か
)
らし、
210
新生面
(
しんせいめん
)
を
開
(
ひら
)
かねば
腐敗
(
ふはい
)
し
切
(
き
)
つたる
現代
(
げんだい
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ますまい。
211
但
(
ただ
)
し
其
(
その
)
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
は……
斯様
(
かやう
)
々々
(
かやう
)
』
212
とサクレンスの
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
をよせ、
213
奸侫
(
かんねい
)
邪智
(
じやち
)
のサクラン
姫
(
ひめ
)
は
何事
(
なにごと
)
か
右守
(
うもり
)
に
教唆
(
けうさ
)
した。
214
サクレンスは
幾度
(
いくたび
)
となくうなづき
乍
(
なが
)
ら、
215
サクレ『ウンウン
可
(
よ
)
からう。
216
中々
(
なかなか
)
お
前
(
まへ
)
も
隅
(
すみ
)
にはおけぬ
悪人
(
あくにん
)
だ。
217
悪
(
あく
)
にかけては
抜目
(
ぬけめ
)
のない
逸物
(
いつぶつ
)
だ、
218
ハヽヽヽ』
219
と
小声
(
こごゑ
)
に
笑
(
わら
)
ふ。
220
サクランは
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らせ
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせ
乍
(
なが
)
ら、
221
サクレンスの
膝
(
ひざ
)
を
叩
(
たた
)
いて
小声
(
こごゑ
)
になり、
222
サクラ『
国家
(
こくか
)
の
大改革
(
だいかいかく
)
を
断行
(
だんかう
)
し、
223
国民
(
こくみん
)
塗炭
(
とたん
)
の
苦
(
くるし
)
みを
救
(
すく
)
ひ、
224
国家
(
こくか
)
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
の
策
(
さく
)
を
立
(
た
)
つるのがそれ
程
(
ほど
)
悪
(
あく
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
225
どうも
腑
(
ふ
)
におちぬ
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
226
勝
(
か
)
てば
官軍
(
くわんぐん
)
負
(
ま
)
くれば
賊子
(
ぞくし
)
、
227
兎角
(
とかく
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
勢力
(
せいりよく
)
が
最後
(
さいご
)
の
勝利
(
しようり
)
を
占
(
し
)
めますよ。
228
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
躊躇
(
ちうちよ
)
逡巡
(
しゆんじゆん
)
せず、
229
ドンドンとやつて
下
(
くだ
)
さい。
230
妾
(
わらは
)
は
貴方
(
あなた
)
の
為
(
ため
)
、
231
いな
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
内々
(
ないない
)
奮闘
(
ふんとう
)
努力
(
どりよく
)
を
致
(
いた
)
しませう』
232
サクレ『ヤ、
233
頼母
(
たのも
)
しい。
234
お
前
(
まへ
)
は
見
(
み
)
かけによらぬ
偉女夫
(
ゐぢようぶ
)
だ。
235
此
(
この
)
夫
(
をつと
)
にして
此
(
この
)
妻
(
つま
)
ありだ。
236
俺
(
おれ
)
も
始
(
はじ
)
めてお
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
が
解
(
わか
)
り、
237
安心
(
あんしん
)
をしたよ』
238
サクラ『
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
も
夫婦
(
ふうふ
)
となつてゐ
乍
(
なが
)
ら、
239
まだ
妾
(
わらは
)
の
本心
(
ほんしん
)
が
解
(
わか
)
らなかつたのですか。
240
お
側
(
そば
)
に
近
(
ちか
)
く
寝食
(
しんしよく
)
を
共
(
とも
)
にする
妻
(
つま
)
の
心
(
こころ
)
が、
241
二十
(
にじふ
)
年目
(
ねんめ
)
に
始
(
はじ
)
めて
解
(
わか
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で、
242
能
(
よ
)
くマア
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
右守
(
うもり
)
の
職掌
(
しよくしやう
)
が
勤
(
つと
)
まつて
来
(
き
)
たものですなア。
243
本当
(
ほんたう
)
に
之
(
これ
)
こそ
天下
(
てんか
)
の
奇蹟
(
きせき
)
ですワ』
244
サクレ『オイ、
245
サクラン
姫
(
ひめ
)
、
246
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
247
政治家
(
せいぢか
)
は
政治家
(
せいぢか
)
としての
方法
(
はうはふ
)
があるのだ。
248
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
を
憂慮
(
いうりよ
)
する
余
(
あま
)
り、
249
小
(
ちひ
)
さい
家庭
(
かてい
)
などの
事
(
こと
)
に
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けてゐられうか』
250
サクラ『
家庭
(
かてい
)
も
治
(
をさ
)
まらず、
251
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
も
添
(
そ
)
うた
妻
(
つま
)
の
心
(
こころ
)
が
解
(
わか
)
らぬやうな
事
(
こと
)
で、
252
何
(
ど
)
うして
大
(
だい
)
政治家
(
せいぢか
)
が
勤
(
つと
)
まりませう。
253
まして
多数
(
たすう
)
国民
(
こくみん
)
の
心
(
こころ
)
を
収攬
(
しうらん
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか』
254
サクレ『ヤ、
255
さう
追撃
(
つゐげき
)
するものでない。
256
今
(
いま
)
の
大
(
だい
)
政治家
(
せいぢか
)
を
見
(
み
)
よ。
257
一家
(
いつか
)
を
治
(
をさ
)
める
事
(
こと
)
は
知
(
し
)
らいでも、
258
堂々
(
だうだう
)
として
政治
(
せいぢ
)
の
枢機
(
すうき
)
に
参与
(
さんよ
)
してゐるぢやないか。
259
左守
(
さもり
)
だつて、
260
決
(
けつ
)
して
家庭
(
かてい
)
は
円満
(
ゑんまん
)
でない。
261
又
(
また
)
左守
(
さもり
)
の
心
(
こころ
)
と
彼
(
かれ
)
が
悴
(
せがれ
)
アリナの
心
(
こころ
)
とは
正反対
(
せいはんたい
)
だ、
262
犬
(
いぬ
)
と
猿
(
さる
)
との
間柄
(
あひだがら
)
だ。
263
それさへあるに
国家
(
こくか
)
の
元老
(
げんらう
)
、
264
最大
(
さいだい
)
権力者
(
けんりよくしや
)
として
左守
(
さもり
)
は
立派
(
りつぱ
)
に
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
地位
(
ちゐ
)
を
保
(
たも
)
つて
来
(
き
)
たではないか』
265
サクラ『
自分
(
じぶん
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
保
(
たも
)
ち
得
(
え
)
たのみで
大
(
だい
)
政治家
(
せいぢか
)
とは
云
(
い
)
へませぬよ。
266
今日
(
こんにち
)
の
国家
(
こくか
)
の
不安
(
ふあん
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
つたのは、
267
輔弼
(
ほひつ
)
の
重臣
(
ぢうしん
)
たる
左守
(
さもり
)
様
(
さま
)
に
本当
(
ほんたう
)
の
技倆
(
ぎれう
)
が
欠
(
か
)
けてゐる
為
(
ため
)
ではありませぬか。
268
現代
(
げんだい
)
の
政治家
(
せいぢか
)
は
何
(
いづ
)
れも
皆
(
みな
)
袞竜
(
こんりう
)
の
袖
(
そで
)
に
隠
(
かく
)
れて、
269
僅
(
わづ
)
かに
其
(
その
)
地位
(
ちゐ
)
を
保
(
たも
)
ち、
270
国民
(
こくみん
)
を
威圧
(
ゐあつ
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
271
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
を
借
(
か
)
る
狐
(
きつね
)
の
輩
(
やから
)
です。
272
貴方
(
あなた
)
だつて、
273
ヤツパリさうでしよう。
274
真裸
(
まつぱだか
)
にして
市井
(
しせい
)
の
巷
(
ちまた
)
へ
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してみたならば、
275
履物
(
はきもの
)
直
(
なほ
)
しにもなれないぢやありませぬか』
276
サクレ『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
277
俺
(
おれ
)
だつて
曲人官
(
きよくにんくわん
)
位
(
ぐらゐ
)
にはなれるよ』
278
サクラ『
自惚
(
うぬぼれ
)
も
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
になさいませ。
279
貴方
(
あなた
)
は
大王
(
だいわう
)
殿下
(
でんか
)
のお
引立
(
ひきた
)
てがなく
裸一貫
(
はだかいつくわん
)
の
男
(
をとこ
)
として、
280
自分
(
じぶん
)
の
運命
(
うんめい
)
を
開拓
(
かいたく
)
遊
(
あそ
)
ばす
勇者
(
ゆうしや
)
とすれば、
281
精々
(
せいぜい
)
小学校
(
せうがくかう
)
のヘボ
教員
(
けうゐん
)
かポリス
位
(
ぐらゐ
)
が
関
(
せき
)
の
山
(
やま
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
282
それだから
国民
(
こくみん
)
が
貴方
(
あなた
)
を
称
(
しよう
)
して
死人官
(
しにんくわん
)
だと
云
(
い
)
つてゐるのですよ』
283
サクレ『エー、
284
モウそんな
小言
(
こごと
)
は
聞
(
きき
)
たくない。
285
主人
(
しゆじん
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしてゐるぢやないか』
286
サクラ『ホヽヽヽ、
287
馬鹿
(
ばか
)
にしたくても、
288
貴方
(
あなた
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
馬鹿
(
ばか
)
になれない
方
(
かた
)
だから
困
(
こま
)
りますワ。
289
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
才子
(
さいし
)
だとか
智者
(
ちしや
)
だとか
言
(
い
)
はれる
人
(
ひと
)
は
何時
(
いつ
)
も
失敗
(
しつぱい
)
許
(
ばか
)
りするものです。
290
それに
引替
(
ひきか
)
へ
馬鹿
(
ばか
)
とならば、
291
何事
(
なにごと
)
にかけても
無頓着
(
むとんちやく
)
で
292
如何
(
いか
)
なる
難関
(
なんくわん
)
に
出会
(
であ
)
つても、
2921
少
(
すこ
)
しも
恐
(
おそ
)
れず
又
(
また
)
後悔
(
こうくわい
)
する
事
(
こと
)
もなく、
293
物
(
もの
)
に
慌
(
あわ
)
てて
事
(
こと
)
に
驚
(
おどろ
)
き
気
(
き
)
をもんで、
294
無駄骨
(
むだぼね
)
折
(
をり
)
に
損
(
そん
)
をせない。
295
そして
禍
(
わざはひ
)
を
化
(
くわ
)
して
自然
(
しぜん
)
に
幸
(
さいはひ
)
になす
態
(
てい
)
の
馬鹿
(
ばか
)
になつて
頂
(
いただ
)
きたいものです』
296
サクレ『あゝあ、
297
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らなくなつて
来
(
き
)
たワイ。
298
さうすると
俺
(
おれ
)
もまだ
馬鹿
(
ばか
)
の
修業
(
しうげふ
)
が
足
(
た
)
らぬのかなア。
299
オイ、
300
何
(
なん
)
だか
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがしてならない。
301
一杯
(
いつぱい
)
つけてくれ、
302
熱燗
(
あつかん
)
でグツとやるから』
303
サクラ『お
酒
(
さけ
)
をおあがり
遊
(
あそ
)
ばすのも
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
304
大事
(
だいじ
)
の
前
(
まへ
)
の
小時
(
せうじ
)
、
305
茲
(
ここ
)
少時
(
しばらく
)
はお
窘
(
たしな
)
みなさるが
宜
(
よろ
)
しからう。
306
貴方
(
あなた
)
はお
酒
(
さけ
)
をおあがり
遊
(
あそ
)
ばすと、
307
精神
(
せいしん
)
錯乱
(
さくらん
)
して、
308
どんな
秘密
(
ひみつ
)
でも
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
に
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てるといふ、
309
つまらぬ
癖
(
くせ
)
がおありなさるから、
310
此
(
この
)
大望
(
たいまう
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
する
迄
(
まで
)
は
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんのう
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
にお
酒
(
さけ
)
を
断
(
た
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
311
サクレ『ヤ、
312
此奴
(
こいつ
)
ア
耐
(
たま
)
らぬ。
313
飯
(
めし
)
よりも
女房
(
にようばう
)
よりも
国家
(
こくか
)
よりも
大切
(
たいせつ
)
な
酒
(
さけ
)
を
断
(
た
)
つて、
314
おまけに
暗雲
(
やみくも
)
飛乗
(
とびの
)
りの
危
(
あやふ
)
い
芸当
(
げいたう
)
を
此
(
この
)
老人
(
としより
)
にやらさうとするのは、
315
随分
(
ずいぶん
)
ひどいぢやないか』
316
サクラ『
少時
(
しばらく
)
の
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
317
夜
(
よ
)
も
深更
(
しんかう
)
に
及
(
およ
)
びました。
318
サア
寝
(
やす
)
みませう』
319
と
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
に
導
(
みちび
)
き
行
(
ゆ
)
く。
320
二人
(
ふたり
)
は
之
(
これ
)
より
夜
(
よ
)
を
徹
(
てつ
)
して
細々
(
こまごま
)
と
寝物語
(
ねものがたり
)
の
幕
(
まく
)
をつづけた。
321
果
(
はた
)
して
何
(
なん
)
の
秘事
(
ひじ
)
が
画策
(
くわくさく
)
されたであらうか。
322
(
大正一四・一・七
新一・三〇
於月光閣
松村真澄
録)
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