霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第二章 波上(はじやう)の追懐(つゐくわい)〔一九五八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻 篇:第1篇 波濤の神光 よみ(新仮名遣い):はとうのしんこう
章:第2章 波上の追懐 よみ(新仮名遣い):はじょうのついかい 通し章番号:1958
口述日:1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日) 口述場所:大阪分院蒼雲閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
朝香比女の神が乗った磐楠船は、薄霞たなびく初夏の海原を、悠々としてたどって行った。
田族比女の神一行は、名残惜しみつつ、船が見えなくなるまで見送り、歌を歌った。
田族比女は、朝香比女の諭しに万里ケ島の経営に思いを新たにし、また朝香比女の御魂を祭る宮居を立てることを誓った。
従者神たち一同も、それぞれ別れの歌を歌った。
船が見えなくなると、一行は万里の聖所に戻ってきた。そして、さっそく火の若宮の工事に取り掛かったが、十日ほどで荘厳な若宮が完成した。
湯結比女の神はこの火の若宮に仕えて、主の神と朝香比女の神の生魂に、沸かした白湯を笹葉にひたして左右左に打ち振り御魂を清め、湯を奉って、まめやかに仕えた。
これより今の世に至るまで、神社には御巫(みかんのこ、神事に奉仕する未婚の女性)というものがあり、御湯を沸かして神明に奉ることとなった。
一方、朝香比女の神一行は、田族比女の神一行に別れを惜しみ、振り返り振り返り手を上げて歌を歌いつつ、進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3670 OBC :rm7802
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 35頁 修補版: 校定版:25頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)の乗(の)らせる磐楠舟(いはくすぶね)は、002薄霞(うすがすみ)棚引(たなび)く初夏(しよか)の海原(うなばら)を悠々(いういう)として辿(たど)り行(ゆ)くを、003御影(みかげ)の隠(かく)るるまで、004田族(たから)比女(ひめ)の神(かみ)の一行(いつかう)は名残(なごり)惜(を)しみつつ見送(みおく)らせ給(たま)ひ、005御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
006『天晴(あは)れ天晴(あは)れ光(ひかり)の神(かみ)は出(い)でましぬ
007浪(なみ)の秀(ほ)隈(くま)なく照(て)らし給(たま)ひつ
008懐(なつ)かしき光(ひかり)の神(かみ)に永久(とこしへ)に
009訣別(わか)ると思(おも)へば悲(かな)しき吾(われ)かも
010美(うる)はしき優(やさ)しき雄々(をを)しき比女神(ひめがみ)の
011御舟(みふね)を送(おく)る悲(かな)しき吾(われ)なり
012手(て)をあげて訣別(わかれ)を惜(を)しみ給(たま)ひつる
013比女(ひめ)の優(やさ)しき心(こころ)ばせかも
014顕津男(あきつを)の神(かみ)の天降(あも)らせ給(たま)ひてし
015思(おも)ひするかな比女(ひめ)の出(い)でましは
016顕津男(あきつを)の神(かみ)に訣別(わか)るる身(み)のつらさ
017思(おも)ひ浮(うか)べて悲(かな)しき吾(われ)なり
018此(この)広(ひろ)き神国(みくに)の親(おや)と選(えら)まれて
019吾(われ)は悲(かな)しき今日(けふ)に逢(あ)ひける
020今(いま)よりは心(こころ)の駒(こま)を立直(たてなほ)し
021比女(ひめ)の心(こころ)に報(むく)ひ奉(まつ)らむ
022八潮路(やしほぢ)の潮(しほ)の八百路(やほぢ)の八潮路(やしほぢ)を
023踏(ふ)み分(わ)け出(い)でます功(いさを)尊(たふと)き
024永久(とこしへ)に此(この)島ケ根(しまがね)に宮居(みや)建(た)てて
025比女(ひめ)の御心(みこころ)安(やす)んじ奉(まつ)らむ
026片時(かたとき)も早(はや)く御舎(みあらか)仕(つか)へ奉(まつ)り
027比女(ひめ)の御魂(みたま)を斎(いつ)き奉(まつ)らな
028御姿(みすがた)はよし見(み)えずとも神社(かむなび)に
029御魂(みたま)祀(まつ)りて御功(みいさを)偲(しの)ばむ
030刻々(こくこく)に遠(とほ)ざかり行(ゆ)く御(おん)舟(ふね)の
031御影(みかげ)は吾(われ)を泣(な)かしめにけり
032万斛(ばんこく)の涙(なみだ)湛(たた)へて御来矢(みくりや)の
033浜辺(はまべ)に御舟(みふね)を送(おく)り奉(まつ)るも
034主(ス)の神(かみ)の定(さだ)めと思(おも)へど今一度(いまいちど)
035会(あ)はまくほしき公(きみ)なりにけり
036八潮路(やしほぢ)の浪(なみ)の秀(ほ)の旅(たび)安(やす)かれと
037神言(かみごと)宣(の)りて御神(みかみ)に祈(いの)らむ』
038 輪守(わもり)比古(ひこ)の神(かみ)は海原(うなばら)を打見(うちみ)やりつつ御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
039『天晴(あは)れ天晴(あは)れ御舟(みふね)は遠(とほ)くなりにけり
040吾(われ)は悲(かな)しさ弥(いや)まさりつつ
041幾千代(いくちよ)も公(きみ)の御姿(みすがた)わが胸(むね)に
042輝(かがや)きまして忘(わす)れざるべし
043今日(けふ)の日(ひ)は浪(なみ)平(たひら)かに天津(あまつ)日(ひ)は
044うららに照(て)れり御舟(みふね)幸(さち)あれ
045振返(ふりかへ)り振返(ふりかへ)りつつ出(い)でませる
046神(かみ)の姿(すがた)の優(やさ)しくもあるか
047高地秀(たかちほ)の峰(みね)より天降(あも)りし神(かみ)なれば
048一入(ひとしほ)尊(たふと)く御(お)在(はし)ましける
049御姿(みすがた)に再(ふたた)び見(まみ)えむ術(すべ)なしと
050思(おも)へば今日(けふ)の訣別(わかれ)惜(を)しまる
051果(はて)しなき大海原(おほうなばら)の浪(なみ)別(わ)けて
052進(すす)ます公(きみ)の幸(さち)かれと思(おも)ふ』
053 霊山(たまやま)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
054『御(おん)訣別(わかれ)余(あま)り惜(を)しさに悲(かな)しさに
055われ言霊(ことたま)を参(まゐ)らせざりける
056万里(まで)の島(しま)の光(ひかり)を賜(たま)ひし比女神(ひめがみ)の
057出(い)でまし送(おく)りて何(なに)か淋(さび)しき
058朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の珍(めづら)しき出(い)でましに
059稚国原(わかくにはら)はよみがへりたり
060浪路(なみぢ)遥(はろ)かに御舟(みふね)小(ちひ)さくなりにつつ
061吾(わが)眼界(まなかひ)を離(はな)れむとすも』
062 保宗(もちむね)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
063『白馬(はくば)ケ岳(だけ)清(きよ)き姿(すがた)は弥永(いやなが)に
064公(きみ)の御行(みゆき)を送(おく)りまつらむ
065吾(わが)眼(まなこ)小(ちひ)さくあれば公(きみ)が行(ゆ)く
066御舟(みふね)は早(はや)くも見(み)えずなりけり
067白馬(はくば)ケ岳(だけ)の峰(みね)羨(うらや)ましも比女神(ひめがみ)の
068御行(みゆき)を永久(とは)に送(おく)りまつれば
069御来矢(みくりや)の浜辺(はまべ)に立(た)ちて送(おく)り奉(まつ)る
070御舟(みふね)は早(はや)くも目路(めぢ)を離(さか)りぬ
071永久(とこしへ)に留(とど)まりたまへと祈(いの)りてし
072光(ひかり)の公(きみ)は帰(かへ)りましける
073此(この)上(うへ)は御樋代(みひしろ)神(がみ)に真心(まごころ)を
074尽(つく)して国土(くに)に仕(つか)へまつらむ
075此(この)国土(くに)の宝(たから)と比女(ひめ)の賜(たま)ひたる
076燧石(ひうち)の光(ひかり)に世(よ)をまもらばや』
077 直道(なほみち)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
078『此(この)国土(くに)に光(ひかり)となりて天降(あも)りましし
079神(かみ)は情(つれ)なく帰(かへ)りましける
080会(あ)ふ事(こと)の嬉(うれ)しきものを今日(けふ)はしも
081悲(かな)しき訣別(わかれ)に御舟(みふね)送(おく)るも
082永久(とこしへ)に忘(わす)れぬ公(きみ)となりにけり
083此(この)稚国土(わかぐに)に光(ひかり)を賜(たま)へば
084朝夕(あさゆふ)に火(ひ)の若宮(わかみや)に仕(つか)へつつ
085公(きみ)の功(いさを)を讃(たた)へ奉(まつ)らむ
086心(こころ)清(きよ)く優(やさ)しくまして雄々(をを)しかる
087比女(ひめ)は真言(まこと)の神(かみ)なりにけり』
088 正道(まさみち)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
089『舷(ふなばた)に打寄(うちよ)す浪(なみ)の響(ひびき)さへ
090いや次々(つぎつぎ)に遠(とほ)ざかりける
091輝(かがや)ける白(しろ)き優(やさ)しき御面(みおもて)は
092浪(なみ)の秀(ほ)高(たか)く隠(かく)れましけり
093天津(あまつ)日(ひ)の浪(なみ)に沈(しづ)ます思(おも)ひかな
094光(ひかり)の神(かみ)は目路(めぢ)を離(さか)れり
095永遠(とこしへ)に仕(つか)へ奉(まつ)ると思(おも)ひてし
096朝香(あさか)の比女(ひめ)は此(この)国土(くに)になし
097田族(たから)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)に畏(かしこ)みて
098吾(われ)は朝夕(あさゆふ)仕(つか)へまつらむ
099白馬(はくば)ケ岳(だけ)の醜(しこ)の曲津(まがつ)も比女神(ひめがみ)の
100功(いさを)に驚(おどろ)き逃(に)げ失(う)せにけむ
101牛頭ケ峰(ごづがみね)白馬(はくば)ケ岳(だけ)の頂(いただき)を
102振返(ふりかへ)りつつ御覧(みそなは)すらむ
103白馬(はくば)ケ岳(だけ)の麓(ふもと)に小(ち)さき吾(われ)ありと
104偲(しの)ばせ給(たま)へ朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)』
105 雲川(くもかは)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
106『今(いま)となりて惜(を)しみ奉(まつ)るも詮(せん)なけれ
107只(ただ)真心(まごころ)を捧(ささ)げ御魂(みたま)に仕(つか)へむ
108御(おん)舟(ふね)の影(かげ)さへ見(み)えず歎(なげ)かひの
109涙(なみだ)しげしげまさり行(ゆ)くかも
110此(この)島(しま)の森羅万象(すべてのものら)おしなべて
111公(きみ)に名残(なごり)を惜(を)しみつつ泣(な)かむ
112百草(ももくさ)の花(はな)も萎(しを)れて今日(けふ)の日(ひ)の
113浜辺(はまべ)の訣別(わかれ)惜(を)しむがに見(み)ゆ
114御空(みそら)行(ゆ)く陽光(ひかげ)も薄(うす)ら曇(くも)らひつ
115今日(けふ)の訣別(わかれ)を惜(を)しませ給(たま)へる』
116 山跡(やまと)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
117『天(あめ)も地(つち)も照(て)らして隈(くま)なき比女神(ひめがみ)の
118御姿(みすがた)今(いま)は見(み)えずなりける
119せめてもの記念(かたみ)と賜(たま)ひし燧石(ひうちいし)は
120万里(まで)の神国(みくに)の光(ひかり)なるかも
121宝石(たからいし)の光(ひかり)は如何(いか)に貴(たか)くとも
122国土(くに)を救(すく)はむ代(しろ)にはならず
123奉(たてまつ)るものもなければ止(や)むを得(え)ず
124卑(いや)しき宝(たから)を奉(たてまつ)りける
125心(こころ)よく受(う)けさせ給(たま)ひし比女神(ひめがみ)の
126優(やさ)しき心(こころ)を忝(かたじけ)なみ思(おも)ふ
127如何(いか)にせむ光(ひかり)の神(かみ)は帰(かへ)りましぬ
128万里(まで)の海原(うなばら)の浪(なみ)踏(ふ)み別(わ)けて
129永久(とこしへ)に公(きみ)の功(いさを)を畏(かしこ)みて
130火(ひ)の若宮(わかみや)に仕(つか)へまつらむ』
131 千貝(ちかひ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
132『国土(くに)稚(わか)き万里(まで)の島根(しまね)に吾(われ)ありて
133今日(けふ)の悲(かな)しき訣別(わかれ)に遇(あ)ふも
134懐(なつ)かしく優(やさ)しく雄々(をを)しき比女神(ひめがみ)に
135吾(わが)魂線(たましひ)はいつかひにけり
136吾(わが)魂(たま)は公(きみ)の御(おん)身(み)にいつかひて
137海原(うなばら)遠(とほ)く守(まも)り行(ゆ)くらむ
138御功(みいさを)の尊(たふと)くませば比女神(ひめがみ)の
139霊衣(れいい)は広(ひろ)く四方(よも)を照(て)らせり
140真心(まごころ)の尊(たふと)さ始(はじ)めて覚(さと)りけり
141御身(みま)に溢(あふ)るる貴(うづ)の光(ひかり)に
142天(あめ)も地(つち)も公(きみ)の宣(の)らする言霊(ことたま)に
143従(したが)ひまつると思(も)へば畏(かしこ)し』
144 湯結(ゆむすび)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
145『今日(けふ)よりは比女(ひめ)の賜(たま)ひし燧石(ひうちいし)の
146功(いさを)に清(きよ)き湯(ゆ)をむすぶべし
147朝夕(あさゆふ)に火(ひ)の若宮(わかみや)に仕(つか)ふべく
148御湯(みゆ)をむすびて禊(みそぎ)せむかな
149みはるかす大海原(おほうなばら)は広(ひろ)らかに
150御舟(みふね)の影(かげ)も見(み)えずなりける
151いざさらば田族(たから)比女(ひめ)の神(かみ)の吾(わが)公(きみ)よ
152万里(まで)の聖所(すがど)に帰(かへ)りまさずや
153いつまでも浪(なみ)の秀(ほ)見(み)つつ偲(しの)ぶとも
154詮(せん)なきものを早(は)や帰(かへ)りませ』
155 茲(ここ)に田族(たから)比女(ひめ)の神(かみ)一行(いつかう)は、156目路(めぢ)を離(さか)りし御舟(みふね)に諦(あきら)めの心(こころ)を定(さだ)め、157雄々(をを)しくも駿馬(はやこま)の背(せ)に跨(またが)り蹄(ひづめ)の音(おと)も勇(いさ)ましく、158其(その)日(ひ)の黄昏(たそが)るる頃(ころ)、159無事(ぶじ)万里(まで)の丘(をか)の聖所(すがど)に帰(かへ)り着(つ)き給(たま)ひ、160時(とき)を移(うつ)さず夜(よ)を日(ひ)に継(つ)いで火(ひ)の若宮(わかみや)の工事(こうじ)にかからせ給(たま)ひけるが、161旬日(じゆんじつ)ならずして神(かみ)の幸(さちは)ひ弥厚(いやあつ)く、162荘厳(さうごん)なる若宮(わかみや)は築(きづ)かれにける。
163 茲(ここ)に湯結(ゆむすび)比女(ひめ)の神(かみ)は朝夕(あさゆふ)火(ひ)の若宮(わかみや)に仕(つか)へまし、164主(ス)の神(かみ)を始(はじ)め火(ひ)の神(かみ)と称(たた)へまつりし朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)の生魂(いくたま)に白湯(さゆ)を沸(わ)かして笹葉(ささば)に浸(ひた)し、165左右左(さいうさ)に打振(うちふ)り朝々(きぬぎぬ)の身魂(みたま)を清(きよ)め御湯(みゆ)を御前(みまへ)に奉(たてまつ)りて忠実(まめやか)に仕(つか)へ給(たま)ひける。166是(これ)より今(いま)の世(よ)に到(いた)るまで何(いづ)れの神社(じんじや)にも御巫(みかんのこ)なるものありて、167御湯(みゆ)を沸(わ)かせ、168神明(しんめい)に奉(たてまつ)る事(こと)とはなりたるなり。
169 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御来矢(みくりや)の浜(はま)を立出(たちい)で給(たま)ひ、170御舟(みふね)の中(なか)より田族(たから)比女(ひめ)の神(かみ)の一行(いつかう)に訣別(わかれ)を惜(を)しみつつ、171振返(ふりかへ)り振返(ふりかへ)り御手(みて)を挙(あ)げさせ給(たま)ひ御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
172『天晴(あは)れ天晴(あは)れ御樋代(みひしろ)神(がみ)の現(あ)れませる
173万里(まで)の島根(しまね)に訣別(わか)れむとすも
174神々(かみがみ)の優(やさ)しき心(こころ)に絆(ほだ)されて
175思(おも)はず月日(つきひ)を重(かさ)ねけるかも
176永久(とこしへ)に住(す)みたく思(おも)へど主(ス)の神(かみ)の
177依(よ)さしに背(そむ)く術(すべ)なき吾(われ)なり
178雄心(をごころ)の大和心(やまとごころ)を振(ふ)り起(おこ)し
179惜(を)しき訣別(わかれ)を告(つ)げにけるかな
180いつまでも訣別(わか)るる機会(しほ)のなかるらむ
181雄々(をを)しき健(たけ)き心(こころ)持(も)たずば
182神々(かみがみ)の心(こころ)知(し)らぬにあらねども
183神業(みわざ)思(おも)ひて吾(われ)は訣別(わか)れし
184神々(かみがみ)は浜辺(はまべ)に立(た)ちて吾(わが)舟(ふね)を
185心(こころ)優(やさ)しく見送(みおく)り給(たま)へる
186万世(よろづよ)の末(すゑ)の末(すゑ)まで忘(わす)れまじ
187真言(まこと)輝(かがや)く神々(かみがみ)の心(こころ)は
188百(ひやく)年(ねん)の親(した)しき友(とも)に会(あ)へる如(ごと)
189隔(へだ)てなかりし神々(かみがみ)を思(おも)ふ
190吾(わが)舟(ふね)は浪路(なみぢ)遥(はろ)けくなりにける
191島(しま)の神々(かみがみ)安(やす)くましませ
192真鶴(まなづる)の声(こゑ)も悲(かな)しく聞(きこ)えけり
193万里(まで)の新国土(にひくに)去(さ)らむと思(おも)へば』
194 初頭(うぶがみ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
195『二柱(ふたはしら)比女神(ひめがみ)等(たち)の神宣(みことのり)
196聞(き)くにつけても涙(なみだ)ぐまるる
197斯(かく)の如(ごと)優(やさ)しき清(きよ)き神々(かみがみ)の
198生言霊(いくことたま)を聞(き)かざりにけり
199比女神(ひめがみ)は斯(か)くあるべきを大方(おほかた)の
200心(こころ)は嫉(ねた)み妬(そね)みに満(み)つるも
201御樋代(みひしろ)の神(かみ)と神(かみ)との言問(ことと)ひの
202其(その)優(やさ)しさに涙(なみだ)ぐまれつ
203御来矢(みくりや)の浜辺(はまべ)にはろばろ見送(みおく)りし
204神(かみ)の優(やさ)しき心(こころ)ばせを思(おも)ふ
205地(つち)稚(わか)き国土(くに)を拓(ひら)かす苦(くる)しさを
206思(おも)へば吾(われ)は心(こころ)畏(かしこ)む
207真心(まごころ)の限(かぎ)りを尽(つく)し愛善(あいぜん)の
208道(みち)に進(すす)ます百神(ももがみ)天晴(あは)れ
209吾(わが)舟(ふね)は浪(なみ)の秀(ほ)遠(とほ)く離(さか)りつつ
210浜辺(はまべ)に立(た)たす神(かみ)見(み)えまさず
211次々(つぎつぎ)に舟(ふね)遠(とほ)ざかり行(ゆ)く海原(うなばら)に
212益々(ますます)近(ちか)く親(した)しき神々(かみがみ)よ
213神々(かみがみ)の御姿(みすがた)見(み)えなくなりにけり
214白馬(はくば)ケ岳(だけ)の峰(みね)は光(ひか)りつ
215白馬(はくば)ケ岳(だけ)聳立(そばた)つ国土(くに)におはします
216神々(かみがみ)等(たち)の御姿(みすがた)なつかし』
217 起立(おきたつ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
218『広(ひろ)き稚(わか)き国土(くに)は吾(わが)目路(めぢ)離(さか)りつつ
219白馬(はくば)ケ岳(だけ)の峰(みね)のみ光(ひか)れる
220万里(まで)の海(うみ)に浮(うか)べる万里(まで)の生島(いくしま)は
221永遠(とは)に栄(さか)えよ天地(あめつち)と共(とも)に
222刻々(こくこく)に遠(とほ)ざかり行(ゆ)く島ケ根(しまがね)を
223懐(なつ)かしみつつ吾(われ)は行(ゆ)くなり
224果(はて)しなき此(この)海原(うなばら)の中(なか)にして
225万里(まで)の島根(しまね)は恋(こひ)しき国土(くに)なり』
226 立世(たつよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
227『御樋代(みひしろ)の神(かみ)に仕(つか)へて万里(まで)ケ島(しま)の
228聖所(すがど)に清(きよ)く吾(われ)は遊(あそ)びぬ
229草(くさ)も木(き)も百鳥(ももどり)千鳥(ちどり)も稚国土(わかくに)の
230春(はる)をうたひて長閑(のどか)なりけり
231雲霧(くもきり)も隈(くま)なく晴(は)れて天津(あまつ)日(ひ)の
232御影(みかげ)清(すが)しき万里(まで)の国土(くに)はや
233御樋代(みひしろ)の神(かみ)御自(みみづか)ら御来矢(みくりや)の
234浜辺(はまべ)に公(きみ)を見送(みおく)りたまひし
235吾(わが)舟(ふね)は浪(なみ)の鼓(つづみ)を打(う)ちながら
236比女(ひめ)に訣別(わかれ)を告(つ)げにけらしな
237比女神(ひめがみ)の優(やさ)しき姿(すがた)目(め)に浮(う)きて
238忘(わす)れぬ君(きみ)となりにけらしな
239顕津男(あきつを)の神(かみ)に見合(みあ)ひす其(その)日(ひ)まで
240若(わか)く優(やさ)しくいませと祈(いの)るも』
241 天晴(あめはれ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
242『天(あめ)も地(つち)も晴(は)れ渡(わた)りたる海原(うなばら)を
243公(きみ)に訣別(わか)れて行(ゆ)くは淋(さび)しも
244比女神(ひめがみ)を始(はじ)め十柱神(とはしらかみ)等(たち)の
245優(やさ)しき心(こころ)仰(あふ)がるるかな
246優(やさ)しくて雄々(をを)しくいます神々(かみがみ)は
247醜(しこ)の曲神(まがみ)を退(やら)ひ給(たま)ひし
248漸(やうや)くに御来矢(みくりや)の浜(はま)も遠(とほ)くなりて
249白馬(はくば)ケ岳(だけ)はひとりかがよふ
250吾(わが)舟(ふね)は太平(たいへい)の浪(なみ)を辿(たど)りつつ
251公(きみ)を守(まも)りていや進(すす)むなり
252海原(うなばら)を包(つつ)みし霧(きり)も晴(は)れ渡(わた)り
253楽(たの)しき今日(けふ)の舟(ふね)の旅(たび)かも』
254(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→