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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第78巻(巳の巻)
序文
第1篇 波濤の神光
第1章 浜辺の訣別
第2章 波上の追懐
第3章 グロスの島
第4章 焼野の行進
第5章 忍ケ丘
第6章 焼野の月
第2篇 焼野ケ原
第7章 四神出陣
第8章 鏡の沼
第9章 邪神征服
第10章 地異天変
第11章 初対面
第12章 月下の宿り
第3篇 葦原新国
第13章 春野の進行
第14章 花見の宴
第15章 聖地惜別
第16章 天降地上
第17章 天任地命
第18章 神嘉言
第19章 春野の御行
第20章 静波の音
第4篇 神戦妖敗
第21章 怪体の島
第22章 歎声仄聞
第23章 天の蒼雲河
第24章 国津神島彦
第25章 歓の島根
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霊界物語
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天祥地瑞(第73~81巻)
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第78巻(巳の巻)
> 第3篇 葦原新国 > 第20章 静波の音
<<< 春野の御行
(B)
(N)
怪体の島 >>>
第二〇章
静波
(
せは
)
の
音
(
おと
)
〔一九七六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:
第3篇 葦原新国
よみ(新仮名遣い):
あしはらしんこく
章:
第20章 静波の音
よみ(新仮名遣い):
せはのおと
通し章番号:
1976
口述日:
1933(昭和8)年12月23日(旧11月7日)
口述場所:
大阪分院蒼雲閣
筆録者:
林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
朝香比女の神、葦原比女の神一行は、常磐の海辺の森に一夜を明かすのに、おのおの心が時めいて眠れず、広大な森をあちこち逍遥しながら、歌などを詠みふけって明け方を待った。
空の月は晧々とさえわたり、木立のまばらな清庭に白金の光を投げている。春の夜の風はおもむろに梢を吹き、平和の光景は天地にみなぎっていた。時々、海吹く風にあおられて、磯辺に寄せる潮騒の音が静かに聞こえるのみであった。
葦原比女の神は、この光景に新しい国の門出の平和を見取り、述懐と希望の歌を歌った。朝香比女の神は、葦原比女との明日の別れに思いを馳せ、また西方の国土を巡る顕津男の神を思い、葦原の国の将来の希望を歌った。
それぞれの従者神たちも、おのおの述懐の歌を歌つつ、常磐の森の一夜は明け放れ、東の空を明かしつつ新しい太陽は静かに昇ったのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7820
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 126頁
修補版:
校定版:
368頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
一行
(
いつかう
)
をはじめ、
002
見送
(
みおく
)
りまつりし
葦原
(
あしはら
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
主従
(
しゆじう
)
は、
003
漸
(
やうや
)
くにして
其
(
その
)
日
(
ひ
)
の
黄昏
(
たそが
)
るる
頃
(
ころ
)
、
004
常磐
(
ときは
)
の
海辺
(
うみべ
)
に
近
(
ちか
)
き
松
(
まつ
)
と
楠
(
くす
)
との
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じてそそりたつ
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
に
着
(
つ
)
かせ
給
(
たま
)
ひ、
005
一夜
(
いちや
)
を
此処
(
ここ
)
に
明
(
あ
)
かさせ
給
(
たま
)
ひつつ、
006
いづれの
神々
(
かみがみ
)
も
心
(
こころ
)
の
時
(
とき
)
めきに
眠
(
ねむ
)
り
給
(
たま
)
はず、
007
広大
(
くわうだい
)
なる
森
(
もり
)
を
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
と
逍遥
(
せうえう
)
しつつ、
008
御歌
(
みうた
)
など
詠
(
よ
)
みふけりて、
009
明方
(
あけがた
)
を
待
(
ま
)
たせ
給
(
たま
)
ひける。
010
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
は
皎々
(
かうかう
)
として
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
り、
011
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
の
樹立
(
こだち
)
まばらなる
清庭
(
すがには
)
に、
012
白金
(
はくきん
)
の
光
(
ひかり
)
を
投
(
な
)
げさせ
給
(
たま
)
ひ、
013
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
風
(
かぜ
)
はおもむろに
梢
(
こずゑ
)
を
吹
(
ふ
)
き、
014
実
(
げ
)
に
平和
(
へいわ
)
の
光景
(
くわうけい
)
は
天地
(
てんち
)
に
漲
(
みなぎ
)
り
渡
(
わた
)
れり。
015
時々
(
ときどき
)
に
海
(
うみ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
に
煽
(
あふ
)
られて、
016
磯辺
(
いそべ
)
によする
潮騒
(
しほざゐ
)
の
音
(
おと
)
静
(
しづ
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆるのみなりき。
017
葦原
(
あしはら
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は、
018
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
に
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
る
月影
(
つきかげ
)
を
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎながら、
019
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かに
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
020
『
新
(
あたら
)
しき
国土
(
くに
)
の
徴
(
しるし
)
と
大空
(
おほぞら
)
に
021
白金
(
プラチナ
)
の
月
(
つき
)
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
るかも
022
御光
(
みひかり
)
の
神
(
かみ
)
をはろばろ
送
(
おく
)
り
来
(
き
)
て
023
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
の
月
(
つき
)
に
親
(
した
)
しむ
024
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
楠
(
くす
)
の
梢
(
こずゑ
)
はそよ
風
(
かぜ
)
に
025
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
の
面
(
おも
)
を
撫
(
な
)
でつつ
026
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
長閑
(
のど
)
けき
空
(
そら
)
の
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
027
わが
魂線
(
たましひ
)
もうるほひにけり
028
潮騒
(
しほざゐ
)
の
音
(
おと
)
聞
(
きこ
)
ゆれど
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
029
海
(
うみ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
静
(
しづ
)
かなるかも
030
天津空
(
あまつそら
)
封
(
ふう
)
じて
茂
(
しげ
)
る
楠
(
くすのき
)
の
031
森
(
もり
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
るかな
032
こんもりと
永久
(
とは
)
に
茂
(
しげ
)
れる
楠
(
くすのき
)
の
033
森
(
もり
)
に
夜鷹
(
よたか
)
の
啼
(
な
)
く
音
(
ね
)
冴
(
さ
)
えつつ
034
梟
(
ふくろふ
)
は
楠
(
くす
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
翼
(
つばさ
)
休
(
やす
)
め
035
月
(
つき
)
の
清
(
きよ
)
さに
啼
(
な
)
き
渡
(
わた
)
るなり
036
常磐樹
(
ときはぎ
)
のかげまばらなる
砂
(
すな
)
の
上
(
へ
)
に
037
かがよふ
月
(
つき
)
の
光
(
かげ
)
は
白
(
しろ
)
しも
038
海原
(
うなばら
)
を
遠行
(
とほゆ
)
く
公
(
きみ
)
を
送
(
おく
)
り
来
(
き
)
つ
039
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
に
黄昏
(
たそが
)
れにけり
040
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
昇
(
のぼ
)
らす
暁
(
あかつき
)
待
(
ま
)
ち
待
(
ま
)
ちて
041
浜辺
(
はまべ
)
に
吾
(
われ
)
は
公
(
きみ
)
を
送
(
おく
)
らむ
042
御空
(
みそら
)
ゆくさやけき
月
(
つき
)
の
光
(
かげ
)
の
如
(
ごと
)
043
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
るらむ
葦原
(
あしはら
)
の
国土
(
くに
)
は
044
久方
(
ひさかた
)
の
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
ゆ
天降
(
あも
)
りましし
045
光
(
ひかり
)
の
神
(
かみ
)
の
別
(
わか
)
れ
惜
(
を
)
しまる
046
二十年
(
はたとせ
)
の
醜
(
しこ
)
の
艱
(
なや
)
みを
払
(
はら
)
ひましし
047
公
(
きみ
)
は
暁
(
あかつき
)
かけて
立
(
た
)
たすも』
048
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
049
『
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
ら
)
に
送
(
おく
)
られて
050
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
森
(
もり
)
に
着
(
つ
)
きにけらしな
051
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
の
短
(
みじか
)
き
夜半
(
よは
)
を
此
(
この
)
森
(
もり
)
に
052
月
(
つき
)
に
照
(
て
)
らされ
休
(
やす
)
らふ
清
(
すが
)
しさ
053
葦原
(
あしはら
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
らす
食国
(
をすくに
)
を
054
明日
(
あす
)
は
立
(
た
)
たなむ
神
(
かみ
)
のまにまに
055
わが
行
(
ゆ
)
かば
又
(
また
)
もや
醜
(
しこ
)
の
曲津見
(
まがつみ
)
は
056
窺
(
うかが
)
ひ
来
(
きた
)
らむ
心
(
こころ
)
し
給
(
たま
)
はれ
057
曲津見
(
まがつみ
)
の
猛
(
たけ
)
びいよいよ
強
(
つよ
)
ければ
058
燧石
(
ひうち
)
の
真火
(
まひ
)
に
払
(
はら
)
はせ
給
(
たま
)
へよ
059
こんもりと
茂
(
しげ
)
れる
楠
(
くす
)
の
梢
(
うれ
)
深
(
ふか
)
く
060
潜
(
ひそ
)
みて
鳴
(
な
)
ける
百鳥
(
ももとり
)
清
(
すが
)
しも
061
白々
(
しらじら
)
と
庭
(
には
)
の
真砂
(
まさご
)
も
光
(
ひか
)
るなり
062
この
新国土
(
にひくに
)
も
月
(
つき
)
の
守
(
まも
)
りに
063
明日
(
あす
)
されば
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
の
浪
(
なみ
)
分
(
わ
)
けて
064
ひたに
進
(
すす
)
まむ
西方
(
にしかた
)
の
国土
(
くに
)
へ
065
西方
(
にしかた
)
の
国土
(
くに
)
をめぐらす
顕津男
(
あきつを
)
の
066
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
侍
(
さむ
)
らふ
嬉
(
うれ
)
しさ
067
鋭敏鳴出
(
うなりづ
)
の
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りに
数々
(
かずかず
)
の
068
功
(
いさを
)
を
建
(
た
)
てて
国土
(
くに
)
生
(
う
)
みしはや
069
葦原
(
あしはら
)
の
国土
(
くに
)
の
果
(
は
)
てなるこの
浜辺
(
はまべ
)
を
070
明日
(
あす
)
は
離
(
はな
)
れむ
磐楠舟
(
いはくすぶね
)
にて
071
葦原
(
あしはら
)
の
国土
(
くに
)
に
仕
(
つか
)
ふる
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
も
072
国津
(
くにつ
)
神々
(
かみがみ
)
もまめやかにませよ』
073
野槌
(
ぬづち
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
074
『
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
のさやかなれば
075
茂
(
しげ
)
らふ
楠
(
くす
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
は
暗
(
くら
)
しも
076
御光
(
みひかり
)
の
神
(
かみ
)
を
送
(
おく
)
りて
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
077
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
の
月
(
つき
)
を
仰
(
あふ
)
ぐも
078
果
(
はて
)
しなき
御空
(
みそら
)
を
渡
(
わた
)
る
月舟
(
つきふね
)
の
079
清
(
きよ
)
きは
公
(
きみ
)
の
心
(
こころ
)
なるかも
080
海原
(
うなばら
)
を
隈
(
くま
)
なく
照
(
て
)
らして
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
る
081
月
(
つき
)
にもまして
光
(
ひか
)
らす
神
(
かみ
)
はも
082
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
のまします
夜
(
よ
)
の
森
(
もり
)
は
083
真昼
(
まひる
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
きて
居
(
を
)
り
084
千早振
(
ちはやぶ
)
る
神世
(
かみよ
)
もきかぬ
目出度
(
めでた
)
さに
085
あひにけらしな
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
吾
(
われ
)
は
086
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
風
(
かぜ
)
軟
(
やはら
)
かき
森蔭
(
もりかげ
)
に
087
暁
(
あかつき
)
を
待
(
ま
)
つ
心
(
こころ
)
は
淋
(
さび
)
しも
088
明日
(
あす
)
されば
帰
(
かへ
)
らす
公
(
きみ
)
と
思
(
おも
)
ふが
故
(
ゆゑ
)
に
089
この
淋
(
さび
)
しさをわが
抱
(
いだ
)
くなり
090
黄昏
(
たそがれ
)
の
森
(
もり
)
にも
百鳥
(
ももとり
)
千鳥
(
ちどり
)
なきて
091
明日
(
あす
)
の
御行
(
みゆき
)
を
惜
(
を
)
しむがに
聞
(
きこ
)
ゆ』
092
初頭
(
うぶがみ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
093
『
葦原
(
あしはら
)
の
国土
(
くに
)
の
広野
(
ひろの
)
をわたり
終
(
を
)
へて
094
海原
(
うなばら
)
進
(
すす
)
む
時
(
とき
)
は
近
(
ちか
)
めり
095
大空
(
おほぞら
)
に
輝
(
かがや
)
く
月
(
つき
)
の
光
(
かげ
)
見
(
み
)
つつ
096
思
(
おも
)
ふは
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
なりけり
097
潮騒
(
しほざゐ
)
の
音
(
おと
)
も
静
(
しづ
)
かにひびきけり
098
海
(
うみ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
も
穏
(
おだや
)
かにして
099
この
森
(
もり
)
はわが
目路
(
めぢ
)
遠
(
とほ
)
くひらかれて
100
海
(
うみ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
を
永久
(
とは
)
に
防
(
ふせ
)
ぐも
101
御空
(
みそら
)
ゆく
月
(
つき
)
も
暫
(
しば
)
しはこの
森
(
もり
)
に
102
蹄
(
ひづめ
)
を
止
(
と
)
めて
休
(
やす
)
らひ
給
(
たま
)
はむ
103
はろばろと
光
(
ひかり
)
の
神
(
かみ
)
に
従
(
したが
)
ひて
104
日々
(
ひび
)
面白
(
おもしろ
)
き
神業
(
みわざ
)
見
(
み
)
しかな
105
新
(
あたら
)
しき
国土
(
くに
)
の
生
(
うま
)
れし
喜
(
よろこ
)
びを
106
千代
(
ちよ
)
に
伝
(
つた
)
へて
寿
(
ことほ
)
ぎまつらむ』
107
高比古
(
たかひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
108
『
霧
(
きり
)
籠
(
こ
)
むる
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
渡
(
わた
)
らむと
109
光
(
ひかり
)
の
神
(
かみ
)
は
此処
(
ここ
)
に
着
(
つ
)
かせり
110
潮騒
(
しほざゐ
)
の
音
(
おと
)
も
静
(
しづ
)
かに
響
(
ひび
)
くなり
111
空
(
そら
)
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る
月
(
つき
)
の
下
(
した
)
びに
112
夜
(
よ
)
もすがら
月
(
つき
)
を
讃
(
ほ
)
めつつ
磯
(
いそ
)
に
寄
(
よ
)
す
113
波
(
なみ
)
の
音
(
ね
)
聞
(
き
)
きつ
暁
(
あかつき
)
待
(
ま
)
たむ
114
百鳥
(
ももとり
)
の
鳴
(
な
)
きたつ
声
(
こゑ
)
は
夜半
(
よは
)
ながら
115
森
(
もり
)
の
梢
(
こずゑ
)
の
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
116
天
(
あめ
)
も
地
(
つち
)
も
蘇
(
よみがへ
)
りたる
心地
(
ここち
)
して
117
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
の
月
(
つき
)
に
親
(
した
)
しむ』
118
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
119
『
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
に
天地
(
あめつち
)
の
120
雲霧
(
くもきり
)
晴
(
は
)
れてかがよふ
月光
(
つきかげ
)
121
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
の
霧
(
きり
)
も
晴
(
は
)
れなむ
御光
(
みひかり
)
の
122
神
(
かみ
)
の
出
(
い
)
でます
潮
(
しほ
)
の
八百路
(
やほぢ
)
は
123
この
森
(
もり
)
の
月
(
つき
)
に
一夜
(
ひとよ
)
を
明
(
あか
)
しつつ
124
笑
(
ゑ
)
み
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
かむ
万里
(
まで
)
の
海路
(
うなぢ
)
を
125
暖
(
あたた
)
かく
夜半
(
よは
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
にわが
袖
(
そで
)
は
126
蝶々
(
てふてふ
)
の
如
(
ごと
)
翻
(
ひるがへ
)
るなり
127
白梅
(
しらうめ
)
の
花
(
はな
)
のかたへに
夜
(
よ
)
の
森
(
もり
)
の
128
水火
(
いき
)
清
(
きよ
)
まりて
匂
(
にほ
)
ひ
満
(
み
)
ちたり
129
葦原
(
あしはら
)
の
国土
(
くに
)
は
目出度
(
めでた
)
しところどころに
130
白梅
(
しらうめ
)
の
花
(
はな
)
の
匂
(
にほ
)
ひ
出
(
い
)
づれば』
131
照比古
(
てるひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
132
『
乱
(
みだ
)
れ
果
(
は
)
てしグロスの
国
(
くに
)
の
雲霧
(
くもきり
)
を
133
晴
(
は
)
らして
光
(
ひかり
)
の
神
(
かみ
)
はたたすか
134
御光
(
みひかり
)
の
神
(
かみ
)
の
御後
(
みあと
)
に
従
(
したが
)
ひて
135
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
つるも
136
明日
(
あす
)
よりは
御光
(
みひかり
)
の
神
(
かみ
)
のましまさずと
137
思
(
おも
)
へば
淋
(
さび
)
し
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
吾
(
われ
)
は
138
八潮路
(
やしほぢ
)
の
潮
(
しほ
)
の
八百路
(
やほぢ
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
139
光
(
ひかり
)
の
神
(
かみ
)
は
明日
(
あす
)
たたすかも
140
とどめまつる
術
(
すべ
)
さへもなき
悲
(
かな
)
しさに
141
真心
(
まごころ
)
の
限
(
かぎ
)
り
送
(
おく
)
り
来
(
き
)
つるも
142
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
の
悲
(
かな
)
しき
別
(
わか
)
れ
忍
(
しの
)
びつつ
143
月
(
つき
)
見
(
み
)
る
吾
(
わが
)
眼
(
め
)
も
曇
(
くも
)
らひにける
144
御空
(
みそら
)
渡
(
わた
)
る
月
(
つき
)
のさやけさ
仰
(
あふ
)
ぎつつ
145
曇
(
くも
)
るわが
目
(
め
)
の
涙
(
なみだ
)
熱
(
あつ
)
きも』
146
立世
(
たつよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
147
『
神々
(
かみがみ
)
の
清
(
きよ
)
き
真言
(
まこと
)
に
照
(
て
)
らされて
148
思
(
おも
)
ひもかけず
日
(
ひ
)
を
重
(
かさ
)
ねける
149
葦原
(
あしはら
)
の
神国
(
みくに
)
を
明日
(
あす
)
は
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
150
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
霧
(
きり
)
分
(
わ
)
け
進
(
すす
)
まむ
151
新
(
あたら
)
しき
国土生
(
くにう
)
みの
旅
(
たび
)
を
重
(
かさ
)
ねます
152
朝香
(
あさか
)
の
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
功
(
いさを
)
よ
153
言霊
(
ことたま
)
の
光
(
ひか
)
り
充
(
み
)
ちぬるわが
公
(
きみ
)
の
154
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へて
潮路
(
しほぢ
)
をゆかむ
155
月読
(
つきよみ
)
は
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
の
空
(
そら
)
高
(
たか
)
く
156
澄
(
す
)
みきらひつつ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
照
(
て
)
らせり
157
百鳥
(
ももとり
)
も
歓
(
ゑら
)
ぎ
勇
(
いさ
)
むか
照
(
て
)
る
月
(
つき
)
の
158
したびにうたひて
眠
(
ねむ
)
らずゐるも』
159
清比古
(
きよひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
160
『
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
の
列
(
つら
)
に
選
(
えら
)
まれ
間
(
ま
)
もあらず
161
光
(
ひかり
)
の
公
(
きみ
)
を
送
(
おく
)
り
来
(
き
)
つるも
162
力
(
ちから
)
なき
吾
(
われ
)
なりながら
御樋代
(
みひしろ
)
の
163
神
(
かみ
)
を
送
(
おく
)
りて
仕
(
つか
)
ふる
畏
(
かしこ
)
さ
164
天地
(
あめつち
)
を
永久
(
とは
)
に
包
(
つつ
)
みし
雲霧
(
くもきり
)
も
165
隈
(
くま
)
なく
晴
(
は
)
れて
国土
(
くに
)
の
秀
(
ほ
)
見
(
み
)
ゆるも
166
豊
(
ゆたか
)
なる
国土
(
くに
)
の
秀
(
ほ
)
見
(
み
)
えて
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
167
光
(
ひかり
)
の
限
(
かぎ
)
りを
光
(
ひか
)
らせ
給
(
たま
)
へり』
168
天晴
(
あめはれ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
169
『
天晴
(
あめは
)
れし
今日
(
けふ
)
のよき
日
(
ひ
)
に
御光
(
みひかり
)
の
170
神
(
かみ
)
に
従
(
したが
)
ひ
此処
(
ここ
)
に
来
(
き
)
つるも
171
こんもりと
常磐
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
や
楠
(
くすのき
)
の
172
茂
(
しげ
)
れる
森
(
もり
)
のかげに
休
(
やす
)
らふ
173
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けて
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
は
傾
(
かたむ
)
きつ
174
声
(
こゑ
)
騒
(
さわ
)
がしき
浜千鳥
(
はまちどり
)
かな
175
浜千鳥
(
はまちどり
)
よび
交
(
か
)
はす
声
(
こゑ
)
のたしたしに
176
聞
(
きこ
)
えて
小夜
(
さよ
)
は
更
(
ふ
)
け
渡
(
わた
)
りぬる
177
明日
(
あす
)
されば
公
(
きみ
)
に
仕
(
つか
)
へて
霧
(
きり
)
こむる
178
海路
(
うなぢ
)
をゆかむ
吾
(
われ
)
ぞ
楽
(
たの
)
しき』
179
晴比古
(
はるひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
180
『
公
(
きみ
)
が
行
(
ゆ
)
く
明日
(
あす
)
の
海原
(
うなばら
)
晴
(
は
)
れよかし
181
風
(
かぜ
)
も
穏
(
おだひ
)
に
御舟
(
みふね
)
を
守
(
まも
)
れ
182
御
(
おん
)
舟
(
ふね
)
は
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
すくすくと
183
艱
(
なや
)
みもあらに
進
(
すす
)
みますらむ
184
有明
(
ありあけ
)
の
月
(
つき
)
は
白
(
しら
)
けて
東
(
ひむがし
)
の
185
御空
(
みそら
)
に
茜
(
あかね
)
の
雲
(
くも
)
は
湧
(
わ
)
き
立
(
た
)
ちぬ
186
鵲
(
かささぎ
)
の
声
(
こゑ
)
はさやかに
朝明
(
あさあけ
)
の
187
御空
(
みそら
)
の
幸
(
さち
)
を
寿
(
ことほ
)
ぎて
鳴
(
な
)
くも』
188
漸
(
やうや
)
くにして
常磐
(
ときは
)
の
森
(
もり
)
の
一夜
(
ひとよさ
)
はからりと
明
(
あ
)
け
放
(
はな
)
れ、
189
東
(
ひむがし
)
の
御空
(
みそら
)
を
明
(
あ
)
かしつつ
新
(
あたら
)
しき
太陽
(
たいやう
)
は
晃々
(
くわうくわう
)
と
下界
(
げかい
)
を
照
(
てら
)
し、
190
静
(
しづ
)
かに
静
(
しづ
)
かに
昇
(
のぼ
)
らせ
給
(
たま
)
ひける。
191
(
昭和八・一二・二三
旧一一・七
於大阪分院蒼雲閣
林弥生
謹録)
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