霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 花見(はなみ)の宴(えん)〔一九七〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻 篇:第3篇 葦原新国 よみ(新仮名遣い):あしはらしんこく
章:第14章 花見の宴 よみ(新仮名遣い):はなみのえん 通し章番号:1970
口述日:1933(昭和8)年12月22日(旧11月6日) 口述場所:大阪分院蒼雲閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
葦原比女は、桜ケ丘の聖所に朝香比女の神一行を招いて大宴会を開いた。国津神たちは、高地秀の宮から天津神が救いにやってきたと聞いて、集まって踊り狂い、感謝と歓喜を表した。
葦原比女のもてなしに朝香比女は感謝の歌を歌った。そして、田族比女の神から送られたダイヤモンドを、天の真火の火打石とともに、贈り物として葦原比女に与えた。
そして、ダイヤモンドの光よりも、真火こそが真の夜光の玉である、と歌い諭した。
葦原比女をはじめ、従者神たちは感謝の意を歌に表した。一方、朝香比女の従者神たちも、桜ケ丘ののどかで美しい様を詠み、葦原比女の神にもてなしへの感謝を表した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-12 15:35:56 文字数:3105 OBC :rm7814
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 92頁 修補版: 校定版:244頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)の廿年来(にじふねんらい)鎮(しづ)まりいます桜ケ丘(さくらがをか)の聖所(すがど)は、002面積(めんせき)比較(ひかく)的(てき)広(ひろ)く、003東西(とうざい)一(いち)里(り)南北(なんぼく)二(に)里(り)に亘(わた)り、004梅(うめ)、005桃(もも)、006桜(さくら)、007楓(かへで)、008無花果(いちじゆく)、009橘(たちばな)、010椿(つばき)、011山吹(やまぶき)等(とう)の果樹(くわじゆ)の彼方(あなた)此方(こなた)に塩梅(あんばい)よく植(う)ゑ込(こ)まれ、012其(その)周囲(しうゐ)には曲津(まがつ)神(かみ)の襲来(しふらい)を防(ふせ)ぐべく深(ふか)き濠(ほり)を囲(めぐ)らし、013表門(おもてもん)には一筋(ひとすぢ)の岩(いは)以(も)て造(つく)りたる橋(はし)を架(か)け渡(わた)し、014風光(ふうくわう)絶佳(ぜつか)の妙境(めうきやう)なりける。015今(いま)を盛(さか)りと咲(さ)き揃(そろ)ひたる梅(うめ)、016桃(もも)、017桜(さくら)の花(はな)は芳香(はうかう)を四辺(しへん)に薫(くん)じ小鳥(ことり)は歌(うた)ひ蝶(てふ)は舞(ま)ひ、018此(この)聖所(すがど)の彼方(あなた)此方(こなた)には丹頂(たんちやう)の鶴(つる)、019鷺(さぎ)など春(はる)の陽気(やうき)をうたひ喜(よろこ)び遊(あそ)べる状態(さま)は、020恰(あたか)も広重(ひろしげ)の画(ゑ)を見(み)る如(ごと)き光景(くわうけい)なりける。
021 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は遠来(ゑんらい)の客(きやく)を心(こころ)の限(かぎ)りを尽(つく)して犒(ねぎら)はむとし、022諸神(ももがみ)に命(めい)じて種々(くさぐさ)の珍(めづら)しき果物(くだもの)等(など)を横山(よこやま)の如(ごと)く置(お)き足(た)らはし、023五柱(いつはしら)の神々(かみがみ)を正賓(せいひん)として大宴会(だいえんくわい)を開(ひら)かせ給(たま)ひける。
024 茲(ここ)に数多(あまた)の国津(くにつ)神(かみ)は、025高地秀(たかちほ)の宮居(みや)より救(すく)ひの神(かみ)現(あ)れますを伝(つた)へ聞(き)き、026先(さき)を争(あらそ)ひ集(つど)ひ来(きた)り、027濠(ほり)の外側(そとがは)に「ウオウオ」と叫(さけ)びながら踊(をど)り狂(くる)ひ跳(と)び廻(まは)り、028感謝(かんしや)と歓喜(くわんき)の至誠(まこと)を表(あらは)しにける。
029 茲(ここ)に朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は百花(ひやくくわ)の爛漫(らんまん)と咲(さ)き乱(みだ)れたる状(さま)を珍(めづら)しみ給(たま)ひ、030庭(には)の面(おもて)に立出(たちい)で給(たま)へば、031数多(あまた)の国津(くにつ)神(かみ)は濠(ほり)を隔(へだ)てて其(その)輝(かがや)ける御姿(みすがた)を拝(はい)し奉(たてまつ)り、032天(あま)の岩屋戸(いはやど)の開(ひら)けたる如(ごと)く、033各自(おのもおのも)に言霊(ことたま)のあらむ限(かぎ)りを鳴(な)り出(い)で、034仰(あふ)ぎつ俯(ふ)しつ感謝(かんしや)と歓喜(くわんき)の声(こゑ)は、035天地(てんち)も為(ため)に覆(くつが)へるばかり思(おも)はれにける。
036 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は四辺(あたり)の珍(うづ)の景色(けしき)を暫(しば)し眺(なが)めつつ再(ふたた)び八尋殿(やひろどの)に帰(かへ)り、037設(まう)けの席(せき)に着(つ)かせ給(たま)へば葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は敬意(けいい)を表(へう)すべく、038あらむ限(かぎ)りの盛装(せいさう)を尽(つく)して種々(くさぐさ)の美味物(うましもの)を御手(みて)づから朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)に奉(たてまつ)り、039且(か)つ打解(うちと)けて国土(くに)の現状(ありさま)など包(つつ)まず隠(かく)さず語(かた)らひ給(たま)ふにぞ、040朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)も其(その)隔(へだ)てなき真心(まごころ)を甚(いた)く喜(よろこ)ばせ給(たま)ひ、041御歌(みうた)もて心(こころ)のたけを宣(の)らせ給(たま)ふ。
042『隔(へだ)てなき葦原(あしはら)比女(ひめ)の神宣(みことのり)
043聞(き)きて吾(わが)魂(たま)清(すが)しく生(い)くるも
044風光(ふうくわう)の殊(こと)に勝(すぐ)れし桜ケ丘(さくらがをか)の
045聖所(すがど)に吾(われ)は命(いのち)を延(の)ばせり
046心(こころ)あつき神々(かみがみ)等(たち)の待遇(もてなし)に
047感謝(ゐやひ)の涙(なみだ)湧(わ)き出(い)づるかも
048美(うる)はしき浄(きよ)き装(よそほ)ひ凝(こ)らしまして
049吾(われ)等(ら)を迎(むか)へし神(かみ)の尊(たふと)さ
050いつの世(よ)にか吾(われ)忘(わす)れめや清(すが)しかる
051花(はな)の神苑(みその)に一日(ひとひ)を遊(あそ)びて
052美(うる)はしく装(よそほ)ひませど光(ひかり)ある
053宝石(はうせき)の飾(かざ)りなきが床(ゆか)しき』
054 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)もて酬(こた)へ給(たま)ふ。
055『葦原(あしはら)の国土(くに)には葭葦(よしあし)萱草(かやくさ)の
056生(お)ふるのみにて宝石(はうせき)はなし
057音(おと)に聞(き)く万里(まで)の島根(しまね)はダイヤモンド
058其(その)他(た)の宝石(はうせき)沢(さは)なりと聞(き)く』
059 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
060『この光(ひか)るダイヤモンドは万里(まで)の島(しま)の
061田族(たから)比女(ひめ)より賜(たま)はりしはや
062吾(われ)こそは光(ひかり)の神(かみ)となりければ
063ダイヤモンドの光(ひかり)はいらなく
064此(この)玉(たま)を燧石(ひうち)と共(とも)に葦原(あしはら)比女(ひめ)の
065神(かみ)の御前(みまへ)に贈(おく)らむと思(おも)ふ
066いざさらば受(う)けさせ給(たま)へ常闇(とこやみ)の
067夜(よる)さへ光(ひか)るダイヤモンドよ』
068 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)しながら御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
069『葦原(あしはら)の国土(くに)の鎮(しづ)めの燧石(ひうちいし)を
070賜(たま)ひし上(うへ)に玉(たま)を賜(たま)ふか
071有難(ありがた)し公(きみ)が賜(たま)ひし此(この)玉(たま)を
072国土(くに)の宝(たから)と永遠(とは)に伝(つた)へむ
073月(つき)のなき夜(よる)は此(この)玉(たま)を力(ちから)とし
074曲津(まがつ)を避(さ)けて国土(くに)を守(まも)らむ』
075 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
076『吾(わが)贈(おく)るダイヤモンドの光(ひかり)よりも
077真火(まひ)こそ夜光(やくわう)の玉(たま)にぞありける
078此(この)真火(まひ)の功(いさを)によりて常世(とこよ)ゆく
079闇(やみ)の幕(とばり)も清(きよ)く晴(は)るべし』
080 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
081『真言(まこと)ある公(きみ)の御教(みをしへ)畏(かしこ)みて
082国津神(くにつかみ)等(ら)を導(みちび)かむと思(おも)ふ
083竜(たつ)大蛇(をろち)醜(しこ)の曲津見(まがつ)も今日(けふ)よりは
084公(きみ)の光(ひかり)に滅(ほろ)び行(ゆ)くべし
085此(この)国土(くに)を豊葦原(とよあしはら)の中津国(なかつくに)と
086永遠(とは)に定(さだ)めて国魂(くにたま)生(う)まむ
087五千(ごせん)方里(はうり)の国土(くに)広(ひろ)ければ端々(はしばし)は
088未(ま)だ潜(ひそ)むなり醜(しこ)の曲津見(まがつ)は
089今日(けふ)よりは百神(ももがみ)等(たち)と村肝(むらきも)の
090心(こころ)を合(あは)せ曲津(まが)を罰(きた)めむ』
091 真以(まさもち)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
092『吾(わが)公(きみ)は夜光(やくわう)の玉(たま)を得(え)ましけり
093朝香(あさか)比女神(ひめがみ)の心(こころ)の光(ひかり)に
094曲津見(まがつみ)を焼(や)き尽(つく)すべき燧石(ひうちいし)と
095玉(たま)を賜(たま)ひし光(ひかり)の神(かみ)はや
096常闇(とこやみ)を隈(くま)なく照(て)らす御光(みひかり)の
097神(かみ)現(あ)れましぬ桜ケ丘(さくらがをか)に
098春風(はるかぜ)に桜(さくら)の花弁(はなびら)ひらひらと
099散(ち)り込(こ)みにけり八尋(やひろ)の殿(との)に
100盃(さかづき)の波(なみ)に一(ひと)ひら浮(う)きて匂(にほ)ふ
101桜(さくら)は国土(くに)の花(はな)にぞありける
102葦原(あしはら)の国土(くに)の標章(しるし)と今日(けふ)よりは
103桜(さくら)の花(はな)を旗(はた)に印(しる)さむ』
104 成山(なりやま)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
105『葦原(あしはら)の国土(くに)の曲津見(まがつみ)言向(ことむ)けし
106光(ひかり)の神(かみ)と伊向(いむか)ひ居(ゐ)るかも
107何(なに)よりも尊(たふと)き玉(たま)を賜(たま)ひけり
108真火(まひ)の燧石(ひうち)と夜光(やくわう)の玉(たま)を
109吾(わが)公(きみ)の御胸(みむね)に翳(かざ)し花(はな)の丘(をか)に
110立(た)たせ給(たま)へば美(うる)はしからむを
111比女神(ひめがみ)の髪(かみ)の翳(かざ)しの桜花(さくらばな)も
112夜光(やくわう)の玉(たま)には及(およ)ばざりける』
113 初頭(うぶがみ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
114『此処(ここ)に来(き)て春(はる)の弥生(やよひ)の心(こころ)しぬ
115花(はな)の林(はやし)に百鳥(ももとり)の声(こゑ)
116百鳥(ももとり)は花(はな)の梢(こずゑ)を飛(と)び交(か)ひつ
117吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)に香(かを)りを散(ち)らせり
118いつまでも花(はな)の盛(さか)りのあれかしと
119願(ねが)ふは一人(ひとり)吾(われ)のみならじ
120万里(まで)の島(しま)は初夏(はつなつ)なりしに此処(ここ)に来(き)て
121若(わか)やぎにけり春(はる)の花(はな)見(み)つ』
122 栄春(さかはる)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
123『春(はる)の日(ひ)の栄(さか)えを吾(われ)は目(ま)の前(あた)り
124桜ケ丘(さくらがをか)に清(すが)しみ見(み)るも
125御光(みひかり)の神(かみ)の現(あ)れます此(この)丘(をか)は
126梅(うめ)桃(もも)桜(さくら)一度(いちど)に笑(わら)へり
127花(はな)笑(わら)ふ春(はる)の弥生(やよひ)を嬉(うれ)しみて
128小鳥(ことり)はうたひ蝶(てふ)は舞(ま)ふなり
129葦原(あしはら)の国土(くに)の常世(とこよ)の春(はる)うたふ
130山鶯(やまうぐひす)は神(かみ)の御声(みこゑ)か
131鶯(うぐひす)も迦陵(かりよう)頻伽(びんが)も花(はな)の春(はる)を
132終日(ひねもす)あかずうたひ続(つづ)くる』
133 起立(おきたつ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
134『荒(あ)れ果(は)てし此(この)新国土(あらくに)にも斯(かく)の如(ごと)
135聖所(すがど)ありとは知(し)らざりにけり
136葦原(あしはら)の此処(ここ)は地上(ちじやう)の天国(てんごく)か
137国津神(くにつかみ)等(ら)の歓(ゑら)ぎの声(こゑ)すも
138常磐樹(ときはぎ)の松(まつ)の緑(みどり)の下蔭(したかげ)に
139百花(ももばな)千花(ちばな)咲(さ)き匂(にほ)ひつつ
140地(ち)の上(うへ)に天国(てんごく)建(た)つる御樋代(みひしろ)の
141神(かみ)の功(いさを)と仰(あふ)がれにけり
142願(ねが)はくは幾億万(いくおくまん)年(ねん)の末(すゑ)までも
143梅(うめ)桃(もも)桜(さくら)は伝(つた)へたきかな
144仰(あふ)ぎ見(み)る紫微(しび)天界(てんかい)の中(なか)にして
145斯(か)く麗(うるは)しき神苑(みその)は見(み)ざりき
146八十(やそ)の国(くに)八十島(やそしま)まぎて吾(われ)は今(いま)
147地上(ちじやう)天界(てんかい)の苑(その)に遊(あそ)びぬ
148仰(あふ)ぎ見(み)る雲井(くもゐ)の空(そら)に屹然(きつぜん)と
149春(はる)めき立(た)てる鷹巣(たかし)の山(やま)かも
150白雲(しらくも)の帯(おび)を締(し)めたる鷹巣山(たかしやま)の
151春(はる)の姿(すがた)は一入(ひとしほ)さやけし
152今日(けふ)までは鷹巣(たかし)の山(やま)も黒雲(くろくも)に
153非時(ときじく)包(つつ)まれ雨(あめ)を降(ふ)らしつ
154盃(さかづき)の数(かず)重(かさ)なりて吾(われ)は今(いま)
155心(こころ)狂(くる)はしく勇(いさ)みたつなり』
156 八栄(やさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
157『広々(ひろびろ)と廻(めぐ)れる濠(ほり)の面(おも)蒼(あを)み
158真鯉(まごひ)緋鯉(ひごひ)の跳(は)ぬる春(はる)なり
159水(みづ)の面(も)に跳(と)び上(あが)りつつ真鯉(まなこひ)は
160春(はる)の光(ひかり)に鱗(うろこ)を照(て)らせり』
161 立世(たつよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
162『聞(き)くからに名(な)も怖(おそ)ろしきグロノスや
163ゴロスの潜(ひそ)みし島(しま)とは思(おも)へず
164斯(かく)の如(ごと)き浄(きよ)き清(すが)しき桜ケ丘(さくらがをか)に
165春(はる)の旅路(たびぢ)の疲(つか)れを慰(なぐさ)む
166気魂(からたま)も神魂(みたま)も春(はる)の光(ひかり)見(み)つ
167蘇(よみがへ)りたる桜ケ丘(さくらがをか)かも
168山(やま)も野(の)も春霞(はるがすみ)してそよろ吹(ふ)く
169風(かぜ)は千花(ちばな)の香(かを)り含(ふく)めり
170はしけやし桜(さくら)咲(さ)くなり此(この)丘(をか)に
171御樋代(みひしろ)神(がみ)と春(はる)を親(した)しむ』
172 霊生(たまなり)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
173『曲津見(まがつみ)の醜(しこ)の荒(すさ)びに艱(なや)みてしを
174安(やす)けく春(はる)に今日(けふ)を逢(あ)ひける
175御光(みひかり)の神(かみ)の天降(あも)りの無(な)かりせば
176桜(さくら)の薫(かを)る春(はる)は来(きた)らじ
177七八年(ななやとせ)梅(うめ)桃(もも)桜(さくら)の花(はな)咲(さ)かず
178風(かぜ)冷(ひ)えにつつ曇(くも)らひにつつ
179花(はな)の木(き)は数多(あまた)あれども曲津見(まがつみ)の
180邪気(いき)に曇(くも)りて春(はる)はなかりき
181昨日(きのふ)まで冷(ひ)え渡(わた)りたる天地(あめつち)の
182冬(ふゆ)は忽(たちま)ち春(はる)となりける
183二十年(はたとせ)を此(この)島ケ根(しまがね)に住(す)みにつつ
184花(はな)咲(さ)く春(はる)に逢(あ)はざりにけり
185梓弓(あづさゆみ)春(はる)の永日(ながひ)も傾(かたむ)きて
186黄昏(たそがれ)の幕(まく)は降(お)りにけらしな
187天津(あまつ)日(ひ)は隠(かく)ろひ給(たま)へど大空(おほぞら)を
188渡(わた)らふ月(つき)の光(かげ)のさやけさ
189常磐樹(ときはぎ)の森(もり)に眺(なが)めし月舟(つきふね)を
190今宵(こよひ)は桜ケ丘(さくらがをか)に見(み)るかも
191桜木(さくらぎ)の花(はな)の梢(こずゑ)の露(つゆ)照(て)りて
192其(その)美(うる)はしさ弥(いや)まさりつつ
193御空(みそら)行(ゆ)く月(つき)も愛(め)でさせ給(たま)ふらむ
194桜ケ丘(さくらがをか)の花(はな)の盛(さか)りを』
195 天晴(あめはれ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
196『珍(めづら)しき月(つき)の光(ひかり)に照(て)らさるる
197夜(よる)の桜(さくら)は又(また)も珍(めづら)し
198草枕(くさまくら)旅(たび)の疲(つか)れも桜ケ丘(さくらがをか)の
199月(つき)と花(はな)とに忘(わす)らひにけり
200爛漫(らんまん)と咲(さ)き乱(みだ)れたる梅(うめ)桃(もも)桜(さくら)の
201春(はる)の姿(すがた)を公(きみ)に見(み)るかな
202月(つき)も花(はな)もたぐはむ術(すべ)もなかるべし
203朝香(あさか)の比女(ひめ)の神(かみ)の光(ひかり)に
204葦原(あしはら)の国土(くに)の真秀良場(まほらば)に新(あたら)しく
205清(すが)しく建(た)てる八尋殿(やひろどの)はも
206八尋殿(やひろどの)に夕(ゆふべ)を立(た)ちて花(はな)に照(て)る
207御空(みそら)の月(つき)に吾(わが)魂(たま)生(い)かしつ
208いつまでも花(はな)は梢(こずゑ)に止(とど)まらで
209嵐(あらし)に散(ち)り行(ゆ)く思(おも)へば惜(を)しきも
210鶯(うぐひす)も迦陵(かりよう)頻伽(びんが)も百鳥(ももとり)も
211今日(けふ)の一日(ひとひ)を楽(たの)しく遊(あそ)べよ
212今日(けふ)こそは花(はな)の真盛(まさか)りよ明日(あす)されば
213此(この)清庭(すがには)に花筵(はなむしろ)せむ』
214 斯(か)く神々(かみがみ)は月(つき)と花(はな)とを賞(ほ)め讃(たた)へ乍(なが)ら、215終日(ひねもす)旅(たび)の疲(つか)れを休(やす)らひ、216常世(とこよ)の春(はる)を言祝(ことほ)ぎ給(たま)ひける。
217(昭和八・一二・二二 旧一一・六 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)
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