霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 天降(てんかう)地上(ちじやう)〔一九七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻 篇:第3篇 葦原新国 よみ(新仮名遣い):あしはらしんこく
章:第16章 天降地上 よみ(新仮名遣い):てんこうちじょう 通し章番号:1972
口述日:1933(昭和8)年12月22日(旧11月6日) 口述場所:大阪分院蒼雲閣 筆録者:林弥生 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
一行は忍ケ丘の上に葦の畳を敷き並べ、おのおの生言霊を宣り、また歌を詠みながら、夜が明けるのを待った。
天の一方を眺めると、一塊の雲もない空に、上弦の月が下界を照らし、月の右下方に金星が寄り添って燦爛と輝き、月の右上方三寸ばかりのところに土星が、光薄く光っていた。これは三千年に一度やってくる天の奇現象であり、稀有のことであると神々はおのおの空を仰ぎ、葦原の国を改革すべき時が来たことを感知した。
葦原比女の神は、朝香比女の神にこの現象の意味の言解きを願った。朝香比女の神は答えて、土星は天津神の言霊が濁り、光があせていることを現している、と解いた。金星は、国津神の中から光が現れて世を守る、と言解きをした。そして、月は葦原比女自身を現している、と。
葦原比女の従者神、真以(まさもち)比古は驚いて、知らず知らず心がおごり、主の神に仕える道を怠っていたことに思い至った。そして、今まで邪神が荒んでいたのも、葦原比女につかえる天津神たちの曇りが原因だったことを悟り、御樋代神に許しを乞うた。
葦原比女の神は、土星に光が戻るまで地に下って世に尽くす役目を真以比古の神に命じ、代わって忍ケ丘の国津神・野槌彦の神を司に取り立て、野槌の神を改名するよう命じた。
野槌彦は辞退するが、葦原比女の神は、謹んで命を受けるように改めて命じた。そして、国津神の中からも、清く正しい御魂を選んで、天津神業を任せるように用いる、と宣言した。
朝香比女の神はこの英断に感じて歌を詠じた。葦原比女に仕えていたその他の天津神たちも、自らの心持に思いを致して驕り高ぶりの罪を認め、今までの罪を悔い、野槌彦の魂の清さを認め、野に下って田畑を拓く決心を述懐した。
朝香比女の神は、葦原の国に天の時・地の時が至ったことを宣言し、今日から葦原の国の標章をスの玉(⦿)とし、玉を十並べて「真言の国土の標章」と定めるように命じた。葦原比女の神は、国の旗標まで朝香比女より賜ったことに感謝の歌を歌った。
野槌比古の神は、国津神の中から高彦、照彦、清彦、晴彦を選んで、天津神に連なる国の補佐として推薦した。葦原比女は、それぞれ高比古の神、照比古の神、清比古の神、晴比古の神と改名するように命じた。そして、急遽召集を受けた四柱の国津神たちは、夜がふける頃忍ケ丘に到着し、葦原比女の神の宣旨のもとに、天津神の列に加わった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-07-07 12:25:19 文字数:3304 OBC :rm7816
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 102頁 修補版: 校定版:281頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)の一行(いつかう)は、002朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)の一行(いつかう)を送(おく)りまゐらせつつ、003忍ケ丘(しのぶがをか)の山麓(さんろく)に春(はる)の永日(ながひ)は黄昏(たそが)れければ、004ここに一夜(いちや)の露(つゆ)の宿(やど)りを定(さだ)めまし、005常磐樹(ときはぎ)生(お)へる丘(をか)の上(うへ)に各自(おのもおのも)登(のぼ)らせ給(たま)ひ、006葭葦(よしあし)をもて国津(くにつ)神(かみ)の編(あ)み作(つく)りたる清畳(すがだだみ)を、007いやさやさやに敷(し)き並(なら)べ、008御空(みそら)の月(つき)のさやけさに溶(と)け入(い)りながら、009各自(おのもおのも)に生言霊(いくことたま)を宣(の)り、010或(あるひ)は御歌(みうた)を詠(よ)ませつつ暁(あかつき)の至(いた)るを待(ま)たせ給(たま)ひける。
011 天(てん)の一方(いつぱう)を眺(なが)むれば、012一塊(いつくわい)の雲片(くもきれ)もなき紺青(こんじやう)の空(そら)に、013上弦(じやうげん)の月(つき)は下界(げかい)を照(てら)し給(たま)ひ、014月舟(つきふね)の右下方(みぎかはう)に金星(きんせい)附着(ふちやく)して燦爛(さんらん)と輝(かがや)き渡(わた)り、015月舟(つきふね)の右上方(みぎじやうはう)三寸(さんすん)ばかりの処(ところ)に土星(どせい)の光(かげ)薄(うす)く光(ひか)れるを打(う)ち眺(なが)めつつ、016三千(さんぜん)年(ねん)に一度(いちど)来(きた)る天(てん)の奇現象(きげんしやう)にして稀有(けう)の事(こと)なりと、017神々(かみがみ)は各自(おのもおのも)御空(みそら)を仰(あふ)ぎ、018葦原(あしはら)の国土(くに)の改革(かいかく)すべき時(とき)の到(いた)れるを感知(かんち)し給(たま)ひつつ、019御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
020 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
021『澄(す)みきらふ御空(みそら)の海(うみ)を照(て)らしつつ
022月(つき)の御舟(みふね)は静(しづ)かに懸(かか)れり
023よく見(み)れば月(つき)の真下(ました)にきらきらと
024光(ひかり)の強(つよ)き金星(きんせい)懸(かか)れり
025月舟(つきふね)の右(みぎ)りの上方(ほつへ)に光(ひかり)薄(うす)く
026輝(かがや)く土星(どせい)の光(かげ)のさみしも
027天界(てんかい)にかかる異変(いへん)のあるといふは
028葦原(あしはら)の動(うご)くしるしなるべし
029光(ひか)り薄(うす)き土星(どせい)は天津(あまつ)神(かみ)にして
030金星(きんせい)即(すなは)ち国津(くにつ)神(かみ)なり
031上(うへ)に立(た)つ土星(どせい)の光(かげ)は光(ひか)り薄(うす)し
032月(つき)の光(ひかり)に遮(さえ)られにつつ
033下(した)に照(て)る金星(きんせい)の光(ひかり)はいと強(つよ)し
034月(つき)の御舟(みふね)の光(ひかり)支(ささ)へて
035葦原(あしはら)の国土(くに)に天降(あも)りし天津(あまつ)神(かみ)の
036心(こころ)をただす時(とき)は近(ちか)めり
037朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)よ月(つき)と星(ほし)の
038今宵(こよひ)の状(さま)を言解(ことと)き給(たま)はれ』
039 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)もて詠(よ)ませ給(たま)ふ。
040『天津(あまつ)神(かみ)の言霊(ことたま)濁(にご)り水火(いき)濁(にご)り
041光(ひかり)の褪(あ)せし土星(どせい)なりけり
042国津(くにつ)神(かみ)の中(なか)より光(ひか)り現(あら)はれて
043世(よ)を守(まも)るてふ金星(きんせい)の光(ひかり)よ
044月舟(つきふね)の清(きよ)き光(ひかり)は葦原(あしはら)比女(ひめ)の
045神(かみ)の御魂(みたま)の光(ひか)りなるぞや
046此処(ここ)にます天津神(あまつかみ)等(たち)心(こころ)せよ
047朝(あさ)な夕(ゆふ)なに神(かみ)を斎(いつ)きて
048天津(あまつ)神(かみ)は神(かみ)を認(みと)めず国津(くにつ)神(かみ)は
049真言(まこと)の神(かみ)を斎(いつ)きまつれる
050千早振(ちはやぶ)る神(かみ)は光(ひかり)に在(おは)しませば
051神(かみ)にかなへる魂(たま)はかがよふ
052神(かみ)を背(せ)にし信仰(あななひ)の道(みち)欠(か)くならば
053神魂(みたま)の光(ひか)り次(つ)ぎ次(つ)ぎに失(う)せむ』
054 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
055『有難(ありがた)し光(ひかり)の神(かみ)の神宣(みことのり)を
056宜(うべ)よとわれは頷(うなづ)かれける
057二十年(はたとせ)を曲津(まがつ)の神(かみ)に艱(なや)みしも
058神(かみ)に離(はな)れし報(むく)いなりける
059主(ス)の宮居(みや)に仕(つか)ふる天津神(あまつかみ)等(たち)は
060心(こころ)を清(きよ)め魂(たま)を磨(みが)けよ
061主(ス)の神(かみ)は天津(あまつ)御空(みそら)に奇(くしび)なる
062兆(しるし)を見(み)せて警(いまし)め給(たま)ふも』
063 真以(まさもち)比古(ひこ)の神(かみ)は驚(おどろ)きて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
064『知(し)らず識(し)らず心(こころ)傲(おご)りて主(ス)の神(かみ)に
065仕(つか)ふる道(みち)を怠(をこた)りにけり
066朝香(あさか)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)の御教(みをしへ)に
067わが魂線(たましひ)は戦(をのの)きにけり
068国津(くにつ)神(かみ)の艱(なや)みを思(おも)ひて朝夕(あさゆふ)に
069主(ス)の大神(おほかみ)に祈(いの)りまつらむ
070葦原(あしはら)比女(ひめ)神(かみ)の御魂(みたま)は御空(みそら)行(ゆ)く
071月(つき)の光(ひかり)と輝(かがや)き給(たま)へる
072かくの如(ごと)輝(かがや)き給(たま)ふ葦原(あしはら)比女(ひめ)の
073神(かみ)とは知(し)らず過(す)ぎにけらしな
074光(ひかり)薄(うす)き土星(どせい)の魂(たま)を持(も)ちながら
075月(つき)の光(ひかり)の上(うへ)にのぼりつ
076貴身(きみ)小身(をみ)の道(みち)を乱(みだ)しし報(むく)いかも
077今(いま)まで曲津(まが)の猛(たけ)びたりしは
078葦原(あしはら)の国土(くに)の守(まも)りの吾(われ)にして
079御樋代(みひしろ)司(つかさ)をうとみけるかも
080御樋代(みひしろ)神(がみ)よ許(ゆる)させ給(たま)へ今日(けふ)よりは
081真言(まこと)をもちて仕(つか)へまつらむ』
082 御樋代(みひしろ)神(かみ)は御歌(みうた)もて答(こた)へ給(たま)ふ。
083『汝(なれ)こそは真言(まこと)をもちて大前(おほまへ)に
084仕(つか)へまつらむ御名(みな)なりにけり
085曲津見(まがつみ)に清(きよ)き御魂(みたま)を曇(くも)らされ
086土星(どせい)の如(ごと)く薄(うす)らぎて居(を)り
087とにかくに土星(どせい)の光(ひかり)出(い)づるまで
088地(つち)に降(くだ)りて世(よ)に尽(つく)せかし
089金星(きんせい)は国津神(くにつかみ)等(ら)の仰(あふ)ぎつる
090野槌(ぬづち)の彦(ひこ)の御魂(みたま)なりける
091今日(けふ)よりは野槌彦(ぬづちひこ)をば天津(あまつ)神(かみ)の
092列(つら)に加(くは)へて司(つかさ)と為(な)さむ
093真以(まさもち)比古(ひこ)其(その)他(た)の神々(かみがみ)悉(ことごと)く
094地(つち)に降(くだ)りて魂(たま)を清(きよ)めよ
095野槌彦(ぬづちひこ)は今日(けふ)より其(そ)の名(な)を改(あらた)めて
096野槌(ぬづち)の神(かみ)と仕(つか)へまつれよ』
097 野槌彦(ぬづちひこ)は答(こた)ふ。
098『国津(くにつ)神(かみ)賤(いや)しき吾(われ)は如何(いか)にして
099国土(くに)の宮居(みやゐ)に仕(つか)へ得(う)べきや
100如何(いか)に吾(われ)金星(きんせい)の光(ひかり)保(たも)つとも
101一柱(ひとはしら)もて仕(つか)へむ術(すべ)なし』
102 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)はこれに答(こた)へて、103御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
104『天津(あまつ)神(かみ)の野槌(ぬづち)の神(かみ)よわが宣(の)れる
105言霊(ことたま)謹(つつし)み国土(くに)に仕(つか)へよ
106国津(くにつ)神(かみ)の清(きよ)き正(ただ)しき魂(たま)選(え)りて
107天津(あまつ)神業(みわざ)を言依(ことよ)さすべし
108葦原(あしはら)の国土(くに)のことごとまぎ求(もと)め
109清(きよ)き御魂(みたま)を選(えら)びて用(もち)ひむ』
110 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は、111葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)の大英断(だいえいだん)に感(かん)じて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
112『葦原(あしはら)比女(ひめ)神(かみ)の神言(みこと)の雄々(をを)しさよ
113天(あめ)と地(つち)とを立替(たてか)へ給(たま)ひぬ
114光(ひかり)なくば黒雲(くろくも)包(つつ)む葦原(あしはら)は
115黒白(あやめ)も分(わ)かぬ闇(やみ)の世(よ)なるよ
116常世(とこよ)ゆく万(よろづ)の災(わざはひ)群(むら)起(お)きるも
117曇(くも)れる神(かみ)のたてばなりけり
118御樋代(みひしろ)神(がみ)の上(うへ)に輝(かがや)く神々(かみがみ)の
119土星(どせい)の御魂(みたま)を浄(きよ)めさせ給(たま)へ
120今(いま)すぐに金星(きんせい)の如(ごと)光(ひか)らねど
121倦(う)まずば遂(つひ)に御楯(みたて)とならむ
122久方(ひさかた)の空(そら)に奇瑞(きずゐ)の現(あら)はれしは
123我(わが)国土(くに)生(い)かさむ御(ご)神慮(しんりよ)なりける』
124 成山(なりやま)比古(ひこ)の神(かみ)は驚(おどろ)きて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
125『桜ケ丘(さくらがをか)の宮居(みや)に二十年(はたとせ)仕(つか)へ来(き)て
126わが魂線(たましひ)は世(よ)を濁(にご)らせる
127今(いま)となりうら恥(は)づかしく思(おも)ふかな
128御空(みそら)に魂(たま)の性(さが)現(あら)はれつ
129御樋代(みひしろ)の神(かみ)の言葉(ことば)を畏(かしこ)みて
130吾(われ)今日(けふ)よりは地(つち)に降(くだ)らむ
131国津(くにつ)神(かみ)の列(つら)に加(くは)はり斎鋤(いむすき)を
132持(も)ちて田畑(たはた)を耕(たがや)し生(い)きむ
133葦原(あしはら)の国土(くに)に涌(わ)き立(た)ちし黒雲(くろくも)も
134吾(われ)等(ら)が為(た)めと思(おも)へば恐(おそ)ろし
135天地(あめつち)の神(かみ)の御恵(みめぐみ)深(ふか)くして
136わが過(あやまち)を許(ゆる)させ給(たま)ひぬ』
137 霊生(たまなり)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
138『吾(われ)も亦(また)土星(どせい)の魂(たま)となり果(は)てて
139この国原(くにはら)を乱(みだ)しけるかも
140これよりは土星(どせい)の性(さが)にふさはしき
141地(つち)に降(くだ)りて田畑(たはた)を拓(ひら)かむ
142地(つち)の性(さが)持(も)てる賤(いや)しき魂線(たましひ)の
143如何(いか)で御空(みそら)に光(ひか)るべしやは
144今迄(いままで)は真言(まこと)の天津(あまつ)神(かみ)なりと
145心(こころ)傲(おご)りつつ年(とし)を経(へ)にけり
146わが魂(たま)の曇(くも)りは土星(どせい)と現(あら)はれて
147忍ケ丘(しのぶがをか)の地(つち)に墜(お)ちける
148御樋代(みひしろ)の神(かみ)の言葉(ことば)は主(ス)の神(かみ)の
149御水火(みいき)なりせば背(そむ)かむ由(よし)なし
150国津(くにつ)神(かみ)の照(て)れる御魂(みたま)を引(ひ)き上(あ)げて
151豊葦原(とよあしはら)の国土(くに)守(まも)りませ
152御(おん)供(とも)に仕(つか)へまつるも畏(かしこ)しと
153思(おも)へばわが身(み)戦(をのの)き止(や)まずも
154久方(ひさかた)の天津空(あまつそら)より荒金(あらがね)の
155地(つち)に降(くだ)りし今宵(こよひ)の吾(われ)かも
156知(し)らず識(し)らず御魂(みたま)曇(くも)りて天津(あまつ)神(かみ)の
157位置(くら)は地上(ちじやう)にうつらひにけり』
158 栄春(さかはる)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
159『栄春(さかはる)比女(ひめ)神(かみ)と仕(つか)へて朝夕(あさゆふ)に
160御樋代(みひしろ)神(がみ)の御魂(みたま)汚(けが)せし
161主(ス)の神(かみ)の尊(たふと)き御前(みまへ)を知(し)らず識(し)らず
162礼(ゐや)なく仕(つか)へしわが罪(つみ)恐(おそ)ろし
163鷹巣山(たかしやま)に雲(くも)わき立(た)ちて葦原(あしはら)の
164この稚国土(わかくに)は風(かぜ)荒(すさ)びたり
165野槌(ぬづち)比古(ひこ)神(かみ)の清(すが)しき魂線(たましひ)は
166御樋代(みひしろ)神(がみ)の司(つかさ)となりませり
167今日(けふ)よりは野槌(ぬづち)の神(かみ)の御光(みひかり)の
168隈(くま)なく照(て)らむ葦原(あしはら)の国土(くに)に
169曇(くも)り果(は)て乱(みだ)れ果(は)てたる国原(くにはら)を
170救(すく)ふは野槌(ぬづち)の神(かみ)の功(いさを)よ』
171 八栄(やさか)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
172『東(ひむがし)の国土(くに)の果(は)てなる桜ケ丘(さくらがをか)に
173仕(つか)へし吾(われ)の終(をは)りは来(き)にけり
174おほけなくも女神(めがみ)の身(み)ながら宮居(みや)の辺(べ)に
175仕(つか)へまつりし事(こと)を悔(く)ゆるも
176今(いま)となりて何(なに)を歎(なげ)かむ村肝(むらきも)の
177心(こころ)の曇(くも)りの報(むく)いなりせば
178朝夕(あさゆふ)に神(かみ)の供前(みまへ)に太祝詞(ふとのりと)
179吾(われ)怠(おこた)りつ今(いま)に及(およ)べり
180主(ス)の神(かみ)の御水火(みいき)になりし葦原(あしはら)比女(ひめ)の
181神(かみ)さげしみし罪(つみ)を恐(おそ)るる
182吾(われ)なくば葦原(あしはら)の国土(くに)は治(をさ)まらじと
183思(おも)ひけるかな愚心(おろかごころ)に
184愛善(あいぜん)の神(かみ)は今(いま)までわが罪(つみ)を
185許(ゆる)させ給(たま)ひし事(こと)のかしこさ
186畏(かしこ)しと宣(の)る言(こと)の葉(は)も口籠(くちごも)り
187わが胸(むね)の火(ひ)は燃(も)え盛(さか)るなり
188今宵限(こよひかぎ)り天津(あまつ)神(かみ)なる位置(くら)を捨(す)てて
189野(や)に降(くだ)りつつ田畑(たはた)を拓(ひら)かむ』
190 朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)は又(また)もや御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
191『天(てん)の時(とき)地(ち)の時(とき)到(いた)りて葦原(あしはら)の
192国土(くに)の光(ひかり)は現(あら)はれにけり
193葦原(あしはら)の国土(くに)の標章(しるし)と今日(けふ)よりは
194⦿(ス)の玉(たま)の旗(はた)を翻(ひるがへ)しませ
195⦿(ス)の玉(たま)を並(なら)べ足(た)らはし十(たり)と為(な)し
196真言(まこと)の国土(くに)の標章(しるし)と定(さだ)めよ』
197 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
198『有難(ありがた)し国土(くに)の始(はじ)めの旗標(はたじるし)まで
199賜(たま)ひし公(きみ)の功(いさを)は貴(たか)し
200万世(よろづよ)に吾(われ)は伝(つた)へてこの旗(はた)を
201国土(くに)の生命(いのち)と祀(まつ)らせまつらむ
202天津(あまつ)神(かみ)の野槌(ぬづち)の神(かみ)は国(くに)の柱(はしら)
203定(さだ)めて吾(われ)に奉(たてまつ)れかし』
204 野槌(ぬづち)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
205『有難(ありがた)し葦原(あしはら)比女(ひめ)の神宣(みことのり)
206吾(われ)選(えら)ぶべし四柱(よはしら)の神(かみ)を
207天津(あまつ)神(かみ)の列(つら)に加(くは)はる神柱(みはしら)は
208高(たか)照(てる)清(きよ)晴(はる)彦(ひこ)を選(えら)ばむ』
209 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
210『高彦(たかひこ)を高比古(たかひこ)の神(かみ)照彦(てるひこ)を
211照比古(てるひこ)の神(かみ)と名(な)を改(あらた)めよ
212清彦(きよひこ)は清比古(きよひこ)の神(かみ)晴彦(はるひこ)は
213晴比古(はるひこ)の神(かみ)と名乗(なの)り仕(つか)へよ』
214 野槌(ぬづち)比古(ひこ)の神(かみ)は感謝(かんしや)しながら御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
215『有難(ありがた)し天津(あまつ)神(かみ)の位置(くら)に選(えら)まれし
216吾(われ)等(ら)五柱(いつはしら)は身(み)をもて仕(つか)へむ
217今宵(こよひ)すぐに駿馬使(はやこまつかひ)を馳(は)せにつつ
218四柱神(よはしらがみ)を招(まね)き仕(つか)へむ』
219 葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
220『一時(ひととき)も早(はや)く此(こ)の場(ば)に招(まね)き寄(よ)せて
221この葦原(あしはら)の神柱(みはしら)たてよ』
222 かくして、223四柱(よはしら)の神(かみ)は小夜更(さよふ)くる頃(ころ)、224駿馬(はやこま)に鞭(むち)うたせつつ、225此処(ここ)に集(あつま)り来(きた)り、226葦原(あしはら)比女(ひめ)の神(かみ)の宣示(せんじ)のもとに、227かしこまり天津(あまつ)神(かみ)の列(れつ)に加(くは)はり給(たま)ひぬ。
228 夜(よ)は森々(しんしん)と更(ふ)け渡(わた)り、229暁(あかつき)近(ちか)く百鳥(ももとり)の声(こゑ)は爽(さわや)かに響(ひび)き、230春野(はるの)を渡(わた)る風(かぜ)は、231かむばしき梅ケ香(うめがか)を送(おく)り田鶴(たづ)は九皐(きうかう)に瑞祥(ずゐしやう)をうたひ、232鵲(かささぎ)は常磐(ときは)の松(まつ)の梢(こずゑ)に黎明(れいめい)を告(つ)げて寿(ことほ)ぐが如(ごと)し。
233 ああ惟神(かむながら)恩頼(みたまのふゆ)ぞ畏(かしこ)けれ。
234(昭和八・一二・二二 旧一一・六 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)
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