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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
第1章 天橋立
第2章 暗夜の邂逅
第3章 門番の夢
第4章 夢か現か
第5章 秋山館
第6章 石槍の雨
第7章 空籠
第8章 衣懸松
第9章 法螺の貝
第10章 白狐の出現
第2篇 深遠微妙
第11章 宝庫の鍵
第12章 捜索隊
第13章 神集の玉
第14章 鵜呑鷹
第15章 谷間の祈
第16章 神定の地
第17章 谷の水
第3篇 真奈為ケ原
第18章 遷宅婆
第19章 文珠如来
第20章 思はぬ歓
第21章 御礼参詣
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
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<<< 総説歌
(B)
(N)
暗夜の邂逅 >>>
第一章
天橋立
(
あまのはしだて
)
〔五九一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第1篇 神軍霊馬
よみ(新仮名遣い):
しんぐんれいば
章:
第1章 天橋立
よみ(新仮名遣い):
あまのはしだて
通し章番号:
591
口述日:
1922(大正11)年04月05日(旧03月09日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
顕恩郷を鬼雲彦から取り戻した神素盞嗚大神の娘たち・八乙女らだったが、鬼雲彦は東に逃げて教線を延ばした。
神素盞嗚大神が千座の置戸を負って追放された後は、五人の娘たちは邪神に囚われて、小さな舟に乗せられて海原に捨てられてしまった。
英子姫は従者の悦子姫とともに舟に捨てられ、長く苦しい航海の末に天の橋立の竜燈松の根元に着いた。
そこへ四五人のバラモン教の捕り手が現れて、英子姫らを探し始めた。しかし捕り手たちは酒に酔っている。鬼虎は英子姫を幽霊だと思って腰を抜かしてしまう。
悦子姫は捕り手たちに霊縛をかけて、その間に主従二人はその場を逃げ出す。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-05 22:20:25
OBC :
rm1601
愛善世界社版:
11頁
八幡書店版:
第3輯 405頁
修補版:
校定版:
11頁
普及版:
4頁
初版:
ページ備考:
001
葦原
(
あしはら
)
の
瑞穂
(
みづほ
)
の
国
(
くに
)
に
名
(
な
)
にしおふ
002
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
003
ノアの
子孫
(
しそん
)
と
生
(
うま
)
れたる
004
ハムの
一族
(
いちぞく
)
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
005
バラモン
教
(
けう
)
を
楯
(
たて
)
となし
006
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
を
標榜
(
へうぼう
)
し
007
現
(
うつつ
)
の
世
(
よ
)
をば
軽
(
かろ
)
んじて
008
魂
(
たま
)
の
行方
(
ゆくへ
)
の
幽界
(
かくりよ
)
を
009
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
の
住所
(
すみか
)
ぞと
010
教
(
をし
)
へ
諭
(
さと
)
すはよけれども
011
名実
(
めいじつ
)
共
(
とも
)
に
叶
(
かな
)
はねば
012
醜
(
しこ
)
の
曲事
(
まがごと
)
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
013
潮
(
うしほ
)
の
如
(
ごと
)
く
拡
(
ひろ
)
がりて
014
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
なる
神人
(
しんじん
)
は
015
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
え
村肝
(
むらきも
)
の
016
心
(
こころ
)
ねぢけて
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
017
世
(
よ
)
は
常暗
(
とこやみ
)
と
曇
(
くも
)
り
行
(
ゆ
)
く
018
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
019
醜神
(
しこがみ
)
率
(
ひき
)
ゐる
曲鬼
(
まがおに
)
を
020
言向和
(
ことむけやは
)
し
豊
(
ゆたか
)
なる
021
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
を
樹
(
た
)
てむとて
022
恵
(
めぐみ
)
も
広
(
ひろ
)
き
瑞霊
(
みづみたま
)
023
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
024
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
く
八乙女
(
やおとめ
)
の
025
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
をば
遣
(
つか
)
はして
026
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
身辺
(
しんぺん
)
を
027
見守
(
みまも
)
り
給
(
たま
)
ひ
曲神
(
まがかみ
)
の
028
醜
(
しこ
)
の
健
(
たけ
)
びを
鎮
(
しづ
)
めむと
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
030
肝太玉
(
きもふとだま
)
の
命
(
みこと
)
をば
031
遣
(
つか
)
はし
給
(
たま
)
ひ
八乙女
(
やおとめ
)
と
032
心
(
こころ
)
を
併
(
あは
)
せ
力
(
ちから
)
をば
033
一
(
ひと
)
つになして
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
034
治
(
をさ
)
め
給
(
たま
)
ひし
折柄
(
をりから
)
に
035
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りし
036
バラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
037
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
一類
(
いちるゐ
)
は
038
フサの
国
(
くに
)
をば
打渡
(
うちわた
)
り
039
あちらこちらに
教線
(
けうせん
)
を
040
布
(
し
)
きつつ
進
(
すす
)
む
魔
(
ま
)
の
力
(
ちから
)
041
斯
(
か
)
かる
時
(
とき
)
しも
天教山
(
てんけうざん
)
の
042
高天原
(
たかあまはら
)
に
大御神
(
おほみかみ
)
は
043
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
に
隠
(
かく
)
ろひて
044
暗
(
くら
)
さは
暗
(
くら
)
し
烏羽玉
(
うばたま
)
の
045
闇
(
やみ
)
に
徨
(
さまよ
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
046
人
(
ひと
)
の
憂
(
うれ
)
ひに
附
(
つ
)
け
入
(
い
)
りて
047
時
(
とき
)
を
得顔
(
えがほ
)
の
曲神
(
まがかみ
)
は
048
益々
(
ますます
)
荒
(
すさ
)
び
初
(
そ
)
めにけり
049
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
050
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
はせつつ
051
何処
(
いづく
)
を
当
(
あて
)
と
長
(
なが
)
の
旅
(
たび
)
052
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
して
千万
(
ちよろづ
)
の
053
悩
(
なや
)
みに
遭
(
あ
)
はせ
給
(
たま
)
ひつつ
054
八千八
(
はつせんや
)
声
(
こゑ
)
の
時鳥
(
ほととぎす
)
055
血
(
ち
)
を
吐
(
は
)
く
思
(
おも
)
ひの
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
056
遠
(
とほ
)
き
近
(
ちか
)
きの
隔
(
へだ
)
てなく
057
八洲
(
やしま
)
の
国
(
くに
)
を
漂浪
(
さすらひ
)
の
058
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
果
(
はて
)
ぞ
憐
(
あはれ
)
なる
059
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
き
竜神
(
たつがみ
)
も
060
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
ざれば
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め
061
蠑螈
(
いもり
)
蚯蚓
(
みみづ
)
と
成
(
な
)
り
果
(
は
)
てて
062
塵
(
ちり
)
や
芥
(
あくた
)
に
潜
(
ひそ
)
むごと
063
高天原
(
たかあまはら
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
064
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
弟
(
おとうと
)
と
065
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
大神
(
おほかみ
)
も
066
いと
浅猿
(
あさま
)
しき
罪神
(
つみがみ
)
の
067
怪
(
あや
)
しき
御名
(
みな
)
に
包
(
つつ
)
まれて
068
心
(
こころ
)
も
曇
(
くも
)
る
五月空
(
さつきぞら
)
069
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
の
果
(
はて
)
しなく
070
親
(
おや
)
に
離
(
はな
)
れし
雛鳥
(
ひなどり
)
の
071
愛
(
いと
)
しき
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
姫御子
(
ひめみこ
)
は
072
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
曲神
(
まがかみ
)
の
073
捕虜
(
とりこ
)
となりて
痛
(
いた
)
はしく
074
塩
(
しほ
)
の
八百路
(
やほぢ
)
の
八潮路
(
やしほぢ
)
の
075
大海原
(
おほうなばら
)
に
捨小船
(
すてをぶね
)
076
波
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
ひつ
077
海路
(
うなぢ
)
も
遠
(
とほ
)
き
竜宮
(
りうぐう
)
の
078
魔神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
ぶ
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
079
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
や
錫蘭
(
しろ
)
の
島
(
しま
)
080
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
や
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
081
波
(
なみ
)
のまにまに
流
(
なが
)
されて
082
ここに
姉妹
(
おとどひ
)
五柱
(
いつはしら
)
083
詮術
(
せんすべ
)
さへも
浪
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
084
涙
(
なみだ
)
の
雨
(
あめ
)
にうるほひつ
085
雨
(
あめ
)
風
(
かぜ
)
霜
(
しも
)
に
打
(
う
)
たれつつ
086
漂泊
(
さすら
)
ひ
給
(
たま
)
ふぞ
苛
(
いぢら
)
しき
087
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
088
霊
(
みたま
)
に
生
(
あ
)
れます
八柱
(
やはしら
)
の
089
乙女
(
おとめ
)
の
中
(
なか
)
にも
秀
(
ひい
)
でたる
090
姿
(
すがた
)
優
(
やさ
)
しき
英子姫
(
ひでこひめ
)
091
容
(
みめ
)
も
貌
(
かたち
)
も
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
092
待女
(
じぢよ
)
を
引
(
ひき
)
つれ
朽
(
く
)
ち
果
(
は
)
てし
093
危
(
あやふ
)
き
生命
(
いのち
)
の
捨小船
(
すてをぶね
)
094
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
日数
(
ひかず
)
を
重
(
かさ
)
ね
095
年
(
とし
)
も
二八
(
にはち
)
の
若狭湾
(
わかさわん
)
096
身
(
み
)
の
行先
(
ゆくさき
)
はどうなりと
097
成生
(
なりふ
)
の
岬
(
みさき
)
を
後
(
あと
)
にして
098
昨日
(
きのふ
)
や
経
(
きやう
)
ケ
岬
(
みさき
)
をば
099
右手
(
めて
)
に
眺
(
なが
)
めて
宮津湾
(
みやづわん
)
100
神
(
かむ
)
伊弉諾
(
いざなぎ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
101
いねます
間
(
うち
)
に
倒
(
たふ
)
れしと
102
言
(
い
)
ひ
伝
(
つた
)
へたる
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
103
長
(
なが
)
く
浮
(
う
)
かべる
橋立
(
はしだて
)
の
104
切
(
き
)
り
戸
(
ど
)
を
越
(
こ
)
えて
成相
(
なりあひ
)
の
105
山
(
やま
)
の
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
かれつつ
106
漸
(
やうや
)
く
心地
(
ここち
)
も
与謝
(
よさ
)
の
海
(
うみ
)
107
波
(
なみ
)
も
柔
(
やはら
)
ぐ
竜灯
(
りうとう
)
の
108
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
着
(
つ
)
きにける。
109
二人
(
ふたり
)
は
舟
(
ふね
)
を
棄
(
す
)
てて、
110
竜灯松
(
りうとうまつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
漸
(
やうや
)
く
上陸
(
じやうりく
)
したり。
111
折柄
(
をりから
)
の
烈風
(
れつぷう
)
海面
(
かいめん
)
を
撫
(
な
)
で、
112
峰
(
みね
)
吹
(
ふ
)
き
渡
(
わた
)
る
松風
(
まつかぜ
)
の
音
(
おと
)
は、
113
一層
(
ひとしほ
)
寂寥
(
せきれう
)
の
感
(
かん
)
を
与
(
あた
)
へたり。
114
寒
(
さむ
)
さ
身
(
み
)
に
沁
(
し
)
む
夕暮
(
ゆふぐれ
)
の
空
(
そら
)
、
115
ねぐら
求
(
もと
)
めて
立帰
(
たちかへ
)
る
烏
(
からす
)
の
群
(
むれ
)
幾千羽
(
いくせんば
)
、
116
カワイカワイと
啼
(
な
)
き
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
117
大江山
(
おほえやま
)
の
方面
(
はうめん
)
指
(
さ
)
して
翔
(
かけ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
118
雲
(
くも
)
の
衣
(
ころも
)
は
破
(
やぶ
)
れて、
119
処々
(
ところどころ
)
より
天書
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
瞬
(
またた
)
き
始
(
はじ
)
めける。
120
二人
(
ふたり
)
は
路傍
(
ろばう
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
し、
121
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
行末
(
ゆくすゑ
)
の
身
(
み
)
を
案
(
あん
)
じ
煩
(
わづら
)
ひつつ、
122
ヒソビソ
物語
(
ものがた
)
る。
123
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
124
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
を
立出
(
たちい
)
でましてより、
125
情無
(
つれな
)
き
魔神
(
まがみ
)
の
為
(
ため
)
に、
126
朽
(
く
)
ち
果
(
は
)
てたる
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられ、
127
押流
(
おしなが
)
された
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
128
夢
(
ゆめ
)
の
様
(
やう
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
129
それにしても、
130
君子姫
(
きみこひめ
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め、
131
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は、
132
どふやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
しうなられましたでせう、
133
……
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
に
此処
(
ここ
)
へお
着
(
つ
)
きになつたに
就
(
つ
)
いて、
134
四柱
(
よはしら
)
の
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
135
心
(
こころ
)
にかかる
冬
(
ふゆ
)
の
空
(
そら
)
、
136
情
(
つれ
)
無
(
な
)
き
凩
(
こがらし
)
に
吹
(
ふ
)
き
捲
(
ま
)
くられ、
137
冷
(
つめ
)
たき
人
(
ひと
)
のさいなみに、
138
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
かせ
給
(
たま
)
ふやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
し、
139
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此処
(
ここ
)
もやつぱり
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
縄張
(
なはばり
)
の
内
(
うち
)
、
140
ウカウカすれば、
141
又
(
また
)
もや
如何
(
いか
)
なる
憂目
(
うきめ
)
にあはされむも
計
(
はか
)
られませぬ。
142
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
森林
(
しんりん
)
に
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
び、
143
一夜
(
ひとや
)
を
明
(
あ
)
かし、
144
山越
(
やまごし
)
に
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
参
(
まゐ
)
りませうか』
145
英子姫
(
ひでこひめ
)
『アさうだな、
146
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れ、
147
何
(
なん
)
とかせなくてはなりますまい。
148
それに
就
(
つい
)
ても
姉妹
(
きやうだい
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
149
今頃
(
いまごろ
)
は
何処
(
いづく
)
の
果
(
はて
)
に
悩
(
なや
)
み
煩
(
わづら
)
ふならむか』
150
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
151
暫
(
しば
)
し
涙
(
なみだ
)
に
沈
(
しづ
)
む。
152
暫
(
しば
)
しあつて
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
頭
(
かうべ
)
をあげ、
153
英子姫
『アヽ
思
(
おも
)
ふまい
思
(
おも
)
ふまい、
154
何事
(
なにごと
)
も
刹那心
(
せつなしん
)
、
155
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
すより
途
(
みち
)
はない、
156
サア
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
157
急
(
いそ
)
ぎませう』
158
と
立上
(
たちあが
)
らむとする
所
(
ところ
)
へ、
159
近付
(
ちかづ
)
き
来
(
きた
)
る
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
の
声
(
こゑ
)
、
160
ハツと
驚
(
おどろ
)
き
逃
(
に
)
げむとする
時
(
とき
)
しも
如何
(
いかが
)
はしけむ、
161
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
にピタリと
倒
(
たふ
)
れたり。
162
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
探
(
さぐ
)
り
探
(
さぐ
)
りて
磯端
(
いそばた
)
の
水
(
みづ
)
を
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
ひ
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
み、
163
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
面部
(
めんぶ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
を
吹
(
ふ
)
きかけたるに、
164
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
顔
(
かほ
)
をあげ、
165
英子姫
『アヽ
悦子姫
(
よしこひめ
)
どの、
166
又
(
また
)
もや
吾身
(
わがみ
)
を
襲
(
おそ
)
ふ
持病
(
ぢびやう
)
の
癪
(
しやく
)
、
167
モウ
斯
(
か
)
うなつては
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
かれませぬ、
168
敵
(
てき
)
に
捉
(
とら
)
はれては
一大事
(
いちだいじ
)
、
169
そなたは
妾
(
わらは
)
に
構
(
かま
)
はず
疾
(
と
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
びなさい。
170
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
171
と
苦
(
くる
)
しき
息
(
いき
)
の
下
(
した
)
より
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
つるを、
172
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
173
悦子姫
『
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
174
何
(
なん
)
と
仰
(
あふ
)
せられます。
175
大切
(
たいせつ
)
な
主人
(
しゆじん
)
の
危難
(
きなん
)
を
見棄
(
みす
)
てて、
176
どうして
是
(
こ
)
れが
逃
(
に
)
げられませうか、
177
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
る
共
(
とも
)
、
178
主従
(
しゆじゆう
)
死生
(
しせい
)
を
共
(
とも
)
にし、
179
未来
(
みらい
)
は
必
(
かなら
)
ず
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
と
詔
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
ひしお
詞
(
ことば
)
は、
180
妾
(
わらは
)
が
胸
(
むね
)
に
深
(
ふか
)
く
刻
(
きざ
)
み
込
(
こ
)
まれ、
181
一日
(
ひとひ
)
片時
(
かたとき
)
も
忘
(
わす
)
れた
暇
(
ひま
)
とては
御座
(
ござ
)
いませぬ。
182
どうぞ
妾
(
わらは
)
に
介抱
(
かいほう
)
させて
下
(
くだ
)
さいませ』
183
と
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにければ、
184
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
185
英子姫
『エヽ
聞分
(
ききわ
)
けのない
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
186
妾
(
わらは
)
は
病身
(
びやうしん
)
の
体
(
からだ
)
、
187
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
遁
(
のが
)
るればとて、
188
再
(
ふたた
)
び
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
の、
189
何時
(
いつ
)
病
(
やまひ
)
に
犯
(
をか
)
され、
190
悪神
(
あくがみ
)
の
為
(
ため
)
に
捉
(
とら
)
はるるやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
し、
191
汝
(
なんぢ
)
は
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
192
聖地
(
せいち
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
かれよ』
193
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
り、
194
悦子姫
『イエイエ、
195
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられても、
196
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
去
(
さ
)
ることは
忍
(
しの
)
ばれませぬ』
197
英子姫
『エヽ
聞分
(
ききわ
)
けのない、
198
主人
(
しゆじん
)
の
言葉
(
ことば
)
を
汝
(
なんぢ
)
は
背
(
そむ
)
くか。
199
妾
(
わらは
)
は
今
(
いま
)
より
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
るぞゑ』
200
悦子姫
『
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
201
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
るとはお
情
(
なさけ
)
無
(
な
)
い
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
……』
202
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
203
暗
(
やみ
)
に
閃
(
ひらめ
)
く
両刃
(
もろは
)
の
短刀
(
たんたう
)
、
204
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
205
病
(
やまひ
)
に
苦
(
くるし
)
む
身
(
み
)
を
打忘
(
うちわす
)
れ、
206
手早
(
てばや
)
く
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
腕
(
うで
)
を、
207
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
め、
208
涙声
(
なみだごゑ
)
、
209
英子姫
『
逸
(
はや
)
まるな
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
210
其方
(
そなた
)
は
壮健
(
さうけん
)
なる
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
211
一日
(
ひとひ
)
も
永
(
なが
)
く
生
(
い
)
き
長
(
なが
)
らへて、
212
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ、
213
妾
(
わらは
)
姉妹
(
おとどひ
)
が
消息
(
せうそく
)
を
伝
(
つた
)
へて
呉
(
く
)
れねばならぬ。
214
サアどうぞ
気
(
き
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
215
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
216
………アレあの
通
(
とほ
)
り
間近
(
まぢか
)
く
聞
(
きこ
)
える
人々
(
ひとびと
)
の
声
(
こゑ
)
、
217
見付
(
みつ
)
けられては
一大事
(
いちだいじ
)
、
218
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く……』
219
と
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
て
玉
(
たま
)
へば、
220
悦子姫
『ぢやと
申
(
まを
)
して
此
(
こ
)
れが、
221
どうして
見逃
(
みのが
)
せませう。
222
仮令
(
たとへ
)
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
は
切
(
き
)
られても、
223
是
(
こ
)
れが
見棄
(
みす
)
てて
行
(
ゆ
)
けませうか』
224
英子姫
『
主人
(
しゆじん
)
が
一生
(
いつしやう
)
の
頼
(
たの
)
みぢや、
225
どうぞ
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
226
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
間
(
うち
)
にも
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
227
と
小声
(
こごゑ
)
に
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てる。
228
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
後髪
(
うしろがみ
)
引
(
ひ
)
かるる
心地
(
ここち
)
して、
229
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
見棄
(
みす
)
てかね、
230
心
(
こころ
)
二
(
ふた
)
つに
身
(
み
)
は
一
(
ひと
)
つ、
231
胸
(
むね
)
を
砕
(
くだ
)
く
時
(
とき
)
こそあれ、
232
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
233
稍
(
やや
)
酒気
(
しゆき
)
を
帯
(
お
)
びたる
銅羅声
(
どらごゑ
)
にて、
234
男(鬼虎)
『ナナ
何
(
なん
)
だ、
235
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れとは、
236
それや
誰
(
たれ
)
に
吐
(
ぬ
)
かすのだい、
237
立去
(
たちさ
)
るも、
238
立去
(
たちさ
)
らぬ、
239
もあつたものかい、
240
俺
(
おれ
)
は
今
(
いま
)
大江山
(
おほえやま
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしよう
)
の
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて、
241
此処
(
ここ
)
へ
漂着
(
へうちやく
)
して
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
の、
242
二人
(
ふたり
)
の
女
(
あま
)
つちよ
を
捉
(
とら
)
まへようと
思
(
おも
)
つて、
243
立現
(
たちあら
)
はれた
所
(
ところ
)
だ。
244
立去
(
たちさ
)
れも
糞
(
くそ
)
も
有
(
あ
)
つたものかい、
245
………ヘン、
246
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
247
石熊
(
いしくま
)
の
野郎
(
やらう
)
め、
248
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
も
暗
(
くら
)
がりになると
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
の
悪
(
わる
)
い、
249
女
(
をんな
)
の
泣声
(
なきごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて………チツト
男
(
をとこ
)
らしうせないかい』
250
と
云
(
い
)
ひつつ
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて、
251
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
をポカンと
打
(
う
)
つたり。
252
石熊
(
いしくま
)
は、
253
石熊
『アイタタ、
254
コラ
鬼虎
(
おにとら
)
の
奴
(
やつ
)
、
255
馬鹿
(
ばか
)
にしやがるない』
256
と
又
(
また
)
もや、
257
石熊
(
いしくま
)
は、
258
石熊
『サア
返礼
(
へんれい
)
だ』
259
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
260
鬼虎
(
おにとら
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
を
続
(
つづ
)
け
打
(
うち
)
に、
261
腕
(
うで
)
の
折
(
を
)
れるほど
擲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
ける。
262
其
(
その
)
機
(
はづみ
)
に
鬼虎
(
おにとら
)
はヨロヨロとヨロめいて、
263
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
の
上
(
うへ
)
にドサンと
倒
(
たふ
)
れ、
264
鬼虎
(
おにとら
)
は、
265
鬼虎
『ワアー、
266
恐
(
おそ
)
ろしい、
267
……ヤイヤイ
出
(
で
)
やがつた、
268
毛
(
け
)
の
長
(
なが
)
い……
色
(
いろ
)
の
青
(
あを
)
い、
269
冷
(
つめた
)
い
奴
(
やつ
)
ぢや。
270
コラ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
271
俺
(
おれ
)
を
伴
(
つ
)
れて
逃
(
に
)
げぬかい』
272
石熊
(
いしくま
)
は、
273
暗
(
くら
)
がりより、
274
石熊
『アハヽヽヽ、
275
態
(
ざま
)
ア
見
(
み
)
やがれ、
276
臆病者
(
おくびやうもの
)
奴
(
め
)
が……オイオイ
皆
(
みな
)
の
連中
(
れんぢう
)
、
277
彼奴
(
あいつ
)
ア、
278
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つて、
279
あんな
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
やがつたのだ、
280
ウツカリ
傍
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
かうものなら、
281
暗
(
くら
)
がりに
握拳
(
にぎりこぶし
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
されて、
282
目玉
(
めだま
)
が
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
るような
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はされるぞ。
283
……
行
(
ゆ
)
くな
行
(
ゆ
)
くな、
284
まあジツと
酔
(
よ
)
ひの
醒
(
さ
)
める
迄
(
まで
)
、
285
容子
(
ようす
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
らうぢやないか……アーア
俺
(
おれ
)
も
大分
(
だいぶ
)
に
酔
(
ゑひ
)
がまはつた、
286
どうやら
足
(
あし
)
が
隠居
(
いんきよ
)
した
様
(
やう
)
だワイ』
287
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
大声
(
おほごゑ
)
で、
288
男(熊鷹)
『
一体
(
いつたい
)
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
、
289
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
手当
(
てあて
)
を
貰
(
もら
)
つて
偵察
(
ていさつ
)
に
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだい……
其
(
その
)
足
(
あし
)
は
何
(
なん
)
だ、
290
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
正念場
(
しやうねんば
)
になつて、
291
足
(
あし
)
を
取
(
と
)
られると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものかい、
292
チツと
確
(
しつか
)
りせないか』
293
石熊
(
いしくま
)
『
有
(
あ
)
るとも
有
(
あ
)
るとも、
294
俺
(
おれ
)
やアル
中
(
ちう
)
だ』
295
男
(熊鷹)
『アルチウと
云
(
い
)
つても、
296
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
らぬぢやないか』
297
石熊
『アルコール
中毒
(
ちうどく
)
だ、
298
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
いから、
299
アル
中
(
ちう
)
と
云
(
い
)
つたのだい、
300
………アーア、
301
もう
一足
(
ひとあし
)
もアル
中
(
ちう
)
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬ
様
(
やう
)
になつたワイ………。
302
コラ
熊鷹
(
くまたか
)
の
野郎
(
やらう
)
、
303
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
だ、
304
他人
(
ひと
)
にばつかり
偉相
(
えらさう
)
に
云
(
い
)
ひよつて……
貴様
(
きさま
)
も
足
(
あし
)
が
変
(
へん
)
テコぢやないか』
305
熊鷹
(
くまたか
)
『チチチツと、
306
なんだ、
307
何
(
なん
)
して……
居
(
ゐ
)
るものだから、
308
いまこそは、
309
千鳥
(
ちどり
)
にあらめノチハ、
310
ナトリニアラムヲ、
311
イノチハ、
312
ナシセタマヘソ、
313
イシトウヤ、
314
アマハセヅカイ、
315
アマノハシダテ、
316
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
317
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
に、
318
コトノカタリゴトモコウバだ、
319
アハヽヽヽ。
320
アヲヤマニ、
321
ヒガカクラバ、
322
ヌバタマノヨハイデナン、
323
アサヒノ、
324
エミサカヘキテ、
325
タクヅヌノ、
326
シロキタダムキ、
327
アワユキノ、
328
ワカヤルムネヲ、
329
ソダタキ、
330
タタキマナガリ、
331
マタマデタマデ、
332
サシマキ、
333
モモナガニ、
334
イヲシナセ、
335
トヨミキタテマツラセ……てな
事
(
こと
)
を
宅
(
うち
)
の
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
奴
(
め
)
が
仰有
(
おつしや
)
りまして、
336
ついトヨミキをアカニノホに
飲
(
きこ
)
し
召
(
め
)
したのだ。
337
神酒
(
みき
)
は
甕瓶
(
みかのへ
)
高
(
たか
)
しり、
338
甕
(
みか
)
のはら
満
(
み
)
て
並
(
なら
)
べて、
339
海河
(
うみかは
)
山野
(
やまぬの
)
種々
(
くさぐさ
)
の
珍物
(
うましもの
)
を
横山
(
よこやま
)
の
如
(
ごと
)
く、
340
うまらに、
341
つばらに
飲食
(
きこしめ
)
し、
342
大海原
(
おほうなばら
)
に
船
(
ふね
)
充
(
み
)
ち
続
(
つづ
)
けて、
343
陸
(
くが
)
より
行
(
ゆ
)
く
路
(
みち
)
を、
344
荷
(
に
)
の
緒
(
を
)
結
(
ゆひ
)
かため、
345
駒
(
こま
)
の
蹄
(
つめ
)
の
至
(
いた
)
り
止
(
とど
)
まる
限
(
かぎ
)
り、
346
………
熊鷹
(
くまたか
)
の
爪
(
つめ
)
は、
347
随分
(
ずゐぶん
)
長
(
なが
)
いぞ。
348
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬ
)
かすと、
349
石熊
(
いしくま
)
の
菊石面
(
あばたづら
)
を
抓
(
つめ
)
つてやらう、
350
イヤサ
掻
(
か
)
きむしらうかい、
351
ウーンウン アハヽヽヽ』
352
石熊
(
いしくま
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだい、
353
お
役目
(
やくめ
)
大切
(
たいせつ
)
に
致
(
いた
)
さぬかい、
354
コンナ
処
(
ところ
)
へ、
355
暗
(
くら
)
まぎれに、
356
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
が
遣
(
や
)
つて
来
(
き
)
よつたら、
357
貴様
(
きさま
)
どうする
積
(
つも
)
りだ。
358
彼奴
(
あいつ
)
ア、
359
中々
(
なかなか
)
女
(
をんな
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
腕利
(
うでき
)
きと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ、
360
経
(
きよう
)
ケ
岬
(
みさき
)
の
虎彦
(
とらひこ
)
が
急報
(
きふはう
)
に
依
(
よ
)
つて、
361
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
より
火急
(
くわきふ
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
362
しつかり
致
(
いた
)
さぬと、
363
反対
(
あべこべ
)
にやられて
了
(
しま
)
ふぞ。
364
アーツ、
365
エーツ、
366
ガ、
367
ガアー、
368
ガラガラガラガラ』
369
熊鷹
(
くまたか
)
は、
370
熊鷹
『アア
臭
(
くさ
)
いワイ、
371
酒
(
さけ
)
や
飯
(
めし
)
の
混合
(
こんがふ
)
した
滝
(
たき
)
を、
372
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
の
上
(
うへ
)
へ
流
(
なが
)
しよつて、
373
……
胸
(
むね
)
の
悪
(
わる
)
い……エエ、
374
アどうやら
俺
(
おれ
)
もへへへへ、
375
へどが
出
(
で
)
さうな。
376
オイコラ、
377
おとら……ヲヲ
桶
(
をけ
)
を
持
(
も
)
て
来
(
こ
)
い、
378
………
背
(
せなか
)
を
叩
(
たた
)
け、
379
ガアヽヽヽガラガラガラガラ』
380
鬼虎
(
おにとら
)
は
震
(
ふる
)
ひ
声
(
ごゑ
)
で、
381
鬼虎
『オオオイ、
382
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ、
383
早
(
はや
)
く
来
(
こ
)
ぬかい、
384
俺
(
おれ
)
をかたげて
逃
(
に
)
げてくれ、
385
何
(
なん
)
だか
怪体
(
けたい
)
な、
386
ババ
化州
(
ばけしう
)
が
出
(
で
)
やがつたゾ』
387
石熊
(
いしくま
)
は、
388
石熊
『エー
喧
(
やかま
)
し
吐
(
ぬか
)
すない、
389
……
俺
(
おれ
)
の
口
(
くち
)
から
大洪水
(
だいこうずゐ
)
が
出
(
で
)
て、
390
人家
(
じんか
)
殆
(
ほとん
)
ど
流失
(
りうしつ
)
、
391
死傷
(
ししやう
)
算
(
さん
)
なしと
云
(
い
)
ふ
惨状
(
さんじやう
)
だ、
392
貴様
(
きさま
)
を
助
(
たす
)
ける
所
(
どころ
)
かい、
393
非常組
(
ひじやうぐみ
)
でも
繰出
(
くりだ
)
して
救援
(
きうゑん
)
に
向
(
むか
)
はぬかい、
394
ガラガラガラガラ』
395
熊鷹
(
くまたか
)
『エー
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
の
悪
(
わる
)
い、
396
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
夜
(
よ
)
さだナア、
397
此処
(
ここ
)
まで
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
へば、
398
俄
(
にはか
)
にピタリと
足
(
あし
)
が
止
(
と
)
まり、
399
まるで
地
(
つち
)
から
生
(
は
)
えた
木
(
き
)
の
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
400
……ヤイ
何
(
なん
)
とかして
俺
(
おれ
)
の
足
(
あし
)
を
動
(
うご
)
く
様
(
やう
)
にせぬかい』
401
暗
(
くら
)
がりより、
402
高(?)
『
動
(
うご
)
く
様
(
やう
)
にせいと
云
(
い
)
つたつて、
403
俄
(
にはか
)
に、
404
鋸
(
のこ
)
の
持合
(
もちあは
)
せがないから、
405
根
(
ね
)
から
伐
(
き
)
つてやる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
406
マア
冬
(
ふゆ
)
が
来
(
き
)
て、
407
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
が
散
(
ち
)
り、
408
枯木
(
かれき
)
になる
迄
(
まで
)
辛抱
(
しんばう
)
したが
宜
(
よ
)
からう。
409
さうすりや
又
(
また
)
、
410
三五教
(
あななひけう
)
ぢやないが、
411
枯木
(
かれき
)
に
冷
(
つめ
)
たい
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
かうも
知
(
し
)
れぬぞ、
412
ワハヽヽヽ』
413
熊鷹
(
くまたか
)
『エ、
414
エ、
415
どいつも
此奴
(
こいつ
)
も、
416
腰
(
こし
)
の
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
許
(
ばか
)
りだナア』
417
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤーイ、
418
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
419
どうやら
此奴
(
こいつ
)
ア、
420
目的
(
もくてき
)
の
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
らしいぞ、
421
しつかりして
生捕
(
いけどり
)
にせうぢやないか』
422
石熊
(
いしくま
)
『ナ、
423
ナ、
424
何
(
なん
)
ぢやア、
425
貴様
(
きさま
)
、
426
最前
(
さいぜん
)
から
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたと
吐
(
ぬ
)
かしよつて、
427
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
の
二人
(
ふたり
)
の
上
(
うへ
)
に、
428
ムツクリと
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
よつたのか、
429
抜目
(
ぬけめ
)
のない
奴
(
やつ
)
だのう』
430
鬼虎
(
おにとら
)
『まだ
目
(
め
)
は
抜
(
ぬ
)
けぬが、
431
サツパリ
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたのだ。
432
……
誰
(
たれ
)
か
腰
(
こし
)
の
抜
(
ぬ
)
けぬ
奴
(
やつ
)
、
433
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
此奴
(
こいつ
)
を
縛
(
しば
)
らないか。
434
どうやら
癪
(
しやく
)
を
起
(
お
)
こして
居
(
ゐ
)
るらしい、
435
今
(
いま
)
フン
縛
(
じば
)
るのなら、
436
容易
(
ようい
)
なものだ……コラ
石熊
(
いしくま
)
、
437
熊鷹
(
くまたか
)
、
438
早
(
はや
)
く
来
(
き
)
て
捕縛
(
ほばく
)
せよ』
439
熊鷹
(
くまたか
)
『
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
日和
(
ひより
)
が
悪
(
わる
)
いので、
440
キヽヽ
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬので……ヲヽヽ
叔母
(
をば
)
の
命日
(
めいにち
)
だから
殺生
(
せつしやう
)
は
廃
(
や
)
めとこかい、
441
……コラ、
442
ヤイヤイ
石熊
(
いしくま
)
、
443
今日
(
けふ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
番
(
ばん
)
だ、
444
貴様
(
きさま
)
に
手柄
(
てがら
)
を
譲
(
ゆづ
)
つてやらう』
445
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
気
(
き
)
が
進
(
すす
)
まぬワイ、
446
女房
(
にようばう
)
の
命日
(
めいにち
)
だから、
447
殺生
(
せつしやう
)
はやめとこかい』
448
熊鷹
(
くまたか
)
『アハヽヽヽ、
449
貴様
(
きさま
)
、
450
女房
(
にようばう
)
も
持
(
も
)
つた
事
(
こと
)
のないのに、
451
命日
(
めいにち
)
が
何処
(
どこ
)
にあるか、
452
馬鹿
(
ばか
)
にするない』
453
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
は
貴様
(
きさま
)
知
(
し
)
らぬのか、
454
ザツと
十八
(
じふはち
)
人
(
にん
)
だ、
455
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
一番
(
いちばん
)
大事
(
だいじ
)
のお
春
(
はる
)
が
今日
(
けふ
)
死
(
し
)
ンだ
日
(
ひ
)
ぢや、
456
彼女
(
あれ
)
が
俺
(
おれ
)
の
霊
(
みたま
)
の
女房
(
にようばう
)
だ。
457
アーア
思
(
おも
)
へば
可哀相
(
かはいさう
)
な
事
(
こと
)
をしたワイ、
458
オンオンだ』
459
鬼虎
(
おにとら
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬ
)
かしやがる、
460
ソラ
隣
(
となり
)
の
八兵衛
(
はちべゑ
)
の
女房
(
にようばう
)
だらう、
461
間違
(
まちが
)
へると
云
(
い
)
つても、
462
嬶
(
かかあ
)
を
取違
(
とりちが
)
へる
奴
(
やつ
)
がどこにあるかい』
463
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
は
勝手
(
かつて
)
に
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
で
女房
(
にようばう
)
にして
居
(
を
)
つたのだ。
464
アンアンアン、
465
思
(
おも
)
へば
可憐
(
いぢ
)
らしい
事
(
こと
)
をしたワイの、
466
オンオンだい』
467
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
468
英子姫
『ヤア
悦子姫
(
よしこひめ
)
殿
(
どの
)
、
469
妾
(
わらは
)
も
其方
(
そなた
)
の
親切
(
しんせつ
)
なる
介抱
(
かいほう
)
で
快
(
こころよ
)
くなりました。
470
サアサア
二人
(
ふたり
)
揃
(
そろ
)
うて
行
(
ゆ
)
きませう』
471
悦子姫
『ハア
夫
(
そ
)
れは
夫
(
そ
)
れは
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います、
472
是
(
こ
)
れと
申
(
まを
)
すも
全
(
まつた
)
く
御
(
おん
)
父
(
ちち
)
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の……』
473
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
小声
(
こごゑ
)
で、
474
英子姫
『シツ』
475
と
制
(
せい
)
しながら、
476
口
(
くち
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てたまへば、
477
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
早速
(
さつそく
)
の
頓智
(
とんち
)
、
478
悦子姫
『
是
(
こ
)
れと
申
(
まを
)
すも
全
(
まつた
)
くお
酒
(
さけ
)
の
爛
(
かん
)
が
荒
(
すさ
)
びましたので、
479
皆様
(
みなさま
)
があの
通
(
とほ
)
り、
480
妾
(
わらは
)
達
(
たち
)
に
余興
(
よきよう
)
をして
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さいますのですなア。
481
ここへお
月様
(
つきさま
)
でも
上
(
あが
)
つて
下
(
くだ
)
さいましたら、
482
さぞ
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
でせうに、
483
………お
声
(
こゑ
)
許
(
ばか
)
りで
見栄
(
みばえ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ、
484
耳
(
みみ
)
で
見
(
み
)
て、
485
目
(
め
)
で
聞
(
き
)
けとの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
教
(
をしへ
)
、
486
ホヽヽヽ』
487
熊鷹
(
くまたか
)
『ヤイヤイヤイ、
488
貴様
(
きさま
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
娘
(
むすめ
)
であらう、
489
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだい、
490
耳
(
みみ
)
で
見
(
み
)
るの
目
(
め
)
で
聞
(
き
)
くのと、
491
まるでババ
化物
(
ばけもの
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
す
奴
(
やつ
)
だ。
492
コリヤ
女
(
をんな
)
、
493
そこ
動
(
うご
)
くなツ』
494
悦子姫
(
よしこひめ
)
は、
495
悦子姫
『オホヽヽヽ
皆
(
みな
)
さま、
496
動
(
うご
)
くなと
仰有
(
おつしや
)
つても、
497
何
(
なん
)
だか
体
(
からだ
)
が
独
(
ひと
)
り
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
動
(
うご
)
いて
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ、
498
皆
(
みな
)
さまは
動
(
うご
)
きたいと
思
(
おも
)
つても
動
(
うご
)
けますまい、
499
妾
(
わらは
)
が
一寸
(
ちよつと
)
霊縛
(
れいばく
)
をかけて
置
(
お
)
きましたからネー、
500
マアマア
御寛
(
ごゆる
)
りと
管
(
くだ
)
でも
巻
(
ま
)
いて
夜徹
(
よあ
)
かしをなさいませ、
501
……
左様
(
さやう
)
ならば
皆
(
みな
)
さま、
502
お
気
(
き
)
の
毒様
(
どくさま
)
乍
(
なが
)
ら、
503
お
先
(
さき
)
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
します………あの、
504
もし
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
505
サア
斯
(
こ
)
うお
出
(
い
)
でなさいませ』
506
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
507
英子姫
『ホヽヽヽ
皆様
(
みなさま
)
、
508
御寛
(
ごゆる
)
りと、
509
何
(
なに
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬが、
510
ヘドなつと
掻
(
か
)
き
集
(
あつ
)
めて、
511
ネーおあがり
遊
(
あそ
)
ばせ。
512
あなたのお
身
(
み
)
の
内
(
うち
)
から
出
(
で
)
た
物
(
もの
)
、
513
あなたの
又
(
また
)
お
身
(
み
)
の
内
(
うち
)
へお
入
(
い
)
れ
遊
(
あそ
)
ばすのだ。
514
人
(
ひと
)
を
呪
(
のろ
)
はば
穴
(
あな
)
二
(
ふた
)
つ、
515
おのれに
出
(
い
)
でて
己
(
おの
)
れに
帰
(
かへ
)
るとかや、
516
あな
有難
(
ありがた
)
や
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
守
(
まも
)
り』
517
と
行
(
ゆ
)
かむとするを、
518
鬼虎
(
おにとら
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つた
儘
(
まま
)
放
(
はな
)
さぬ。
519
英子姫
(
ひでこひめ
)
『ヤア
厭
(
いや
)
なこと、
520
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
、
521
妾
(
わらは
)
の
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つてチツとも
放
(
はな
)
して
呉
(
く
)
れないワ』
522
悦子姫
(
よしこひめ
)
『どうしませう………アヽさうさう、
523
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
が
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
のお
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つた
儘
(
まま
)
霊縛
(
れいばく
)
をかけられたものですから、
524
其
(
その
)
儘
(
まま
)
凝
(
かたま
)
つて
了
(
しま
)
つたのでせう。
525
ホヽヽヽ、
526
是
(
こ
)
れは
偉
(
えら
)
い
不調法
(
ぶてうはふ
)
致
(
いた
)
しました。
527
……コリヤコリヤ
此
(
この
)
鬼
(
おに
)
の
様
(
やう
)
な
片腕
(
かたかいな
)
、
528
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いて
遣
(
や
)
る、
529
サア
放
(
はな
)
せ』
530
『ウン』と
一声
(
ひとこゑ
)
、
531
鬼虎
(
おにとら
)
の
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
はパラリと
解
(
と
)
けたりける。
532
英子姫
(
ひでこひめ
)
『アヽ
有難
(
ありがた
)
う、
533
是
(
こ
)
れで
放
(
はな
)
れました』
534
石熊
(
いしくま
)
『ヤイヤイ
鬼虎
(
おにとら
)
の
奴
(
やつ
)
、
535
案
(
あん
)
に
違
(
たが
)
はず、
536
女
(
をんな
)
の
裾
(
すそ
)
をひつぱつて
居
(
ゐ
)
やがつたな、
537
ナマクラな
奴
(
やつ
)
だ。
538
よしよし
貴様
(
きさま
)
の
嬶
(
かかあ
)
に、
539
明朝
(
みやうてう
)
早々
(
さうさう
)
告発
(
こくはつ
)
だ、
540
さう
覚悟
(
かくご
)
致
(
いた
)
せ』
541
熊鷹
(
くまたか
)
『ナニ
心配
(
しんぱい
)
するな、
542
俺
(
おれ
)
が
特別
(
とくべつ
)
弁護人
(
べんごにん
)
になつて
喋々
(
てふてふ
)
と
弁論
(
べんろん
)
をまくし
立
(
た
)
ててやるから、
543
キツト
石熊
(
いしくま
)
の
敗訴
(
はいそ
)
だ、
544
無罪
(
むざい
)
放免
(
はうめん
)
になつた
上
(
うへ
)
、
545
損害
(
そんがい
)
賠償
(
ばいしやう
)
を
此方
(
こちら
)
から
提起
(
ていき
)
してやらうか、
546
アハヽヽヽ』
547
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
548
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れてスタスタと、
549
何処
(
いづく
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
没
(
ぼつ
)
したりける。
550
後
(
あと
)
には
海面
(
かいめん
)
を
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
、
551
天鼓
(
てんこ
)
の
如
(
ごと
)
くドドンドドンと
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
きぬ。
552
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
暗
(
くら
)
がりより、
553
破
(
やぶ
)
れ
太鼓
(
だいこ
)
の
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
554
五人
『オーイオーイ、
555
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
、
556
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
てい。
557
オーイオーイ、
558
かやせ、
559
戻
(
もど
)
せい……』
560
と
熊谷
(
くまがい
)
もどきに
叫
(
さけ
)
び
居
(
ゐ
)
たりけり。
561
(
大正一一・四・五
旧三・九
松村真澄
録)
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