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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
第1章 天橋立
第2章 暗夜の邂逅
第3章 門番の夢
第4章 夢か現か
第5章 秋山館
第6章 石槍の雨
第7章 空籠
第8章 衣懸松
第9章 法螺の貝
第10章 白狐の出現
第2篇 深遠微妙
第11章 宝庫の鍵
第12章 捜索隊
第13章 神集の玉
第14章 鵜呑鷹
第15章 谷間の祈
第16章 神定の地
第17章 谷の水
第3篇 真奈為ケ原
第18章 遷宅婆
第19章 文珠如来
第20章 思はぬ歓
第21章 御礼参詣
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
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第16巻(卯の巻)
> 第3篇 真奈為ケ原 > 第19章 文珠如来
<<< 遷宅婆
(B)
(N)
思はぬ歓 >>>
第一九章
文珠
(
もんじゆ
)
如来
(
によらい
)
〔六〇九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第3篇 真奈為ケ原
よみ(新仮名遣い):
まないがはら
章:
第19章 文珠如来
よみ(新仮名遣い):
もんじゅにょらい
通し章番号:
609
口述日:
1922(大正11)年04月16日(旧03月20日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫は今度は、悦子姫に説教を始める。黒姫は大風呂敷を広げて素盞嗚尊の悪口を言い、変性男子の系統の日の出神の生き宮に従うように、と悦子姫に迫る。
一同は黒姫に係わり合いになっていると足止めを食うので、そのまま過ぎ去ろうとするが、黒姫が引き止めにかかるが、鬼虎、加米彦は先へ促す。
音彦は黒姫の偵察をしようと付いてきたわけを明かし、ウラナイ教の教理は取るに足らないことがわかったから、もう三五教に戻って一緒に行こう、という。
黒姫はしきりに大風呂敷を広げて一同をウラナイ教に引き込もうとするが、説得力がなく、三五教の一行は去っていく。
一行は途中、文珠堂を見つけてそこで一夜の宿を取る。鬼虎は、かつて竜灯松の麓へ悦子姫らを召捕りに行った晩のことを思い出している(第一章)。青彦、音彦、加米彦らもかつての遍歴を思い起こして語り出す。
鬼虎は寝ずの番を買って出るが、寝ぼけて夢を見ている。その間に、天から竜灯松をめがけて火団が落下して物凄い音を立てた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-02-08 18:22:04
OBC :
rm1619
愛善世界社版:
227頁
八幡書店版:
第3輯 484頁
修補版:
校定版:
231頁
普及版:
102頁
初版:
ページ備考:
001
ヤンチヤ
婆
(
ばば
)
アの
黒姫
(
くろひめ
)
は、
002
性来
(
しやうらい
)
の
聞
(
き
)
かぬ
気
(
き
)
を
極度
(
きよくど
)
に
発揮
(
はつき
)
し、
003
青彦
(
あをひこ
)
、
004
音彦
(
おとひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
に
向
(
むか
)
つて
舌端
(
ぜつたん
)
黒煙
(
こくえん
)
を
吐
(
は
)
き、
005
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
さず
紅蓮
(
ぐれん
)
の
焔
(
ほのほ
)
に
焼
(
や
)
き
尽
(
つく
)
さむと
凄
(
すさま
)
じき
勢
(
いきほひ
)
なり。
006
黒姫
(
くろひめ
)
『コレコレ、
007
最前
(
さいぜん
)
から
其処
(
そこ
)
に、
008
男
(
をとこ
)
とも、
009
女
(
をんな
)
とも、
010
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
風
(
ふう
)
をして
居
(
ゐ
)
る
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
011
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
暇
(
いとま
)
乞
(
ご
)
ひをしても
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
阿婆擦
(
あばず
)
れ
女
(
をんな
)
、
012
沢山
(
たくさん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
を
引
(
ひ
)
きつれて、
013
女王
(
ぢよわう
)
気取
(
きど
)
りで、
014
傲然
(
ごうぜん
)
と
構
(
かま
)
へて
御座
(
ござ
)
るが、
015
チト
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
アが
天地
(
てんち
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
道理
(
だうり
)
を
噛
(
か
)
みて
啣
(
ふく
)
める
様
(
やう
)
に
言
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かしてやるから、
016
ソンナ
蓑笠
(
みのかさ
)
をスツパリと
脱
(
ぬ
)
いで、
017
此処
(
ここ
)
へ
御座
(
ござ
)
れ、
018
滅多
(
めつた
)
にウラナイ
教
(
けう
)
の
為
(
ため
)
に
悪
(
わる
)
い
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
さぬ。
019
問
(
と
)
ふは
当座
(
たうざ
)
の
恥
(
はぢ
)
、
020
知
(
し
)
らぬは
末代
(
まつだい
)
の
恥
(
はぢ
)
だ、
021
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
で
結構
(
けつこう
)
な
神徳
(
しんとく
)
を
戴
(
いただ
)
いて、
022
又
(
また
)
都会
(
ひろみ
)
へ
出
(
で
)
たら、
023
自分
(
じぶん
)
が
発明
(
はつめい
)
した
様
(
やう
)
に、
024
宣伝使
(
せんでんし
)
面
(
づら
)
を
提
(
さ
)
げて
歩
(
ある
)
かうと
儘
(
まま
)
ぢや。
025
何
(
なん
)
でも
聴
(
き
)
いて
置
(
お
)
けば
損
(
そん
)
は
往
(
ゆ
)
かぬ。
026
サアサア
婆
(
ばば
)
アの
渋茶
(
しぶちや
)
でも
呑
(
の
)
みて、
027
トツクリと
身魂
(
みたま
)
の
洗濯
(
せんたく
)
をしなされ。
028
チツト
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はお
前
(
まへ
)
も
顔色
(
かほいろ
)
が
悪
(
わる
)
い。
029
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
脈
(
みやく
)
を
執
(
と
)
つて
上
(
あ
)
げよう。
030
……どうやら
浮中沈
(
ふちうちん
)
、
031
七五三
(
しちごさん
)
の
脈膊
(
みやくはく
)
が
混乱
(
こんらん
)
して
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
ぢや、
032
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
療養
(
れうやう
)
せぬと、
033
丸気違
(
まるきちがひ
)
になつて
了
(
しま
)
ふぜ。
034
今
(
いま
)
でさへも
半気違
(
はんきちがひ
)
ぢや。
035
神霊
(
しんれい
)
注射
(
ちうしや
)
を
行
(
や
)
つてあげようか。
036
それが
利
(
き
)
かなくば、
037
モルヒネ
注射
(
ちうしや
)
でもしてやらうかい。
038
サアサア トツトと
前
(
まへ
)
へ
来
(
き
)
なさい』
039
悦子姫
(
よしこひめ
)
『それはそれは、
040
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
御
(
お
)
心
(
こころ
)
を
附
(
つ
)
けられまして、
041
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
042
黒姫
(
くろひめ
)
『
有難
(
ありがた
)
いか、
043
ウラナイ
教
(
けう
)
は
親切
(
しんせつ
)
なものだらう。
044
頭
(
あたま
)
の
先
(
さき
)
から
足
(
あし
)
の
爪先
(
つまさき
)
、
045
神経
(
しんけい
)
系統
(
けいとう
)
から
運動
(
うんどう
)
機関
(
きくわん
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
046
食道
(
しよくだう
)
、
047
消化
(
せうくわ
)
機関
(
きくわん
)
から
生殖器
(
せいしよくき
)
、
048
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
迄
(
まで
)
、
049
チヤンと
気
(
き
)
をつけて、
050
根本
(
こつぽん
)
から
説
(
と
)
き
明
(
あ
)
かし、
051
病
(
やまひ
)
の
根
(
ね
)
を
断
(
き
)
る
重宝
(
ちようほう
)
な
教
(
をしへ
)
ぢや。
052
お
前
(
まへ
)
も
神経
(
しんけい
)
中枢
(
ちうすう
)
に
多少
(
たせう
)
異状
(
いじやう
)
があると
見
(
み
)
えて、
053
三五教
(
あななひけう
)
の
木花姫
(
このはなひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
様
(
やう
)
に、
054
女
(
をんな
)
だてら、
055
男
(
をとこ
)
の
風采
(
なり
)
をして、
056
男
(
をとこ
)
を
同伴
(
つら
)
つて、
057
そこら
中
(
ぢう
)
を
歩
(
ある
)
きまはすのは、
058
普通
(
ひととほり
)
ではない。
059
此
(
この
)
儘
(
まま
)
放
(
ほ
)
つとくと、
060
巣鴨
(
すがも
)
行
(
ゆき
)
をせなければならぬかも
知
(
し
)
れやしない。
061
………サアサア
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
は
耆婆
(
きば
)
扁鵲
(
へんじやく
)
も
跣足
(
はだし
)
で
逃
(
に
)
げると
云
(
い
)
ふ
義理
(
ぎり
)
堅
(
がた
)
い
義婆
(
ぎば
)
ぢや。
062
世間
(
せけん
)
の
奴
(
やつ
)
は
訳
(
わけ
)
も
知
(
し
)
らずに、
063
黒姫
(
くろひめ
)
を
何
(
なん
)
の
彼
(
かん
)
のと
申
(
まを
)
すけれども、
064
燕雀
(
えんじやく
)
何
(
な
)
ンぞ
大鵬
(
たいほう
)
の
志
(
こころざし
)
を
知
(
し
)
らむやだ。
065
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
しの
根本
(
こつぽん
)
を
探
(
さぐ
)
ると
云
(
い
)
ふ、
066
大望
(
たいまう
)
なウラナイ
教
(
けう
)
を、
067
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
位
(
くらゐ
)
に
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
るものか。
068
お
前
(
まへ
)
が
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
たのも、
069
みなウラナイ
教
(
けう
)
を
守護
(
しゆご
)
し
給
(
たま
)
ふ、
070
尊
(
たふと
)
き
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せぢや。
071
躓
(
つまづ
)
く
石
(
いし
)
も
縁
(
えん
)
の
端
(
はし
)
と
言
(
い
)
つて、
072
世界
(
せかい
)
には
道
(
みち
)
を
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
ると、
073
沢山
(
たくさん
)
な
石
(
いし
)
が
転
(
ころ
)
がつて
居
(
ゐ
)
る。
074
其
(
その
)
幾十万
(
いくじふまん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
石
(
いし
)
の
中
(
うち
)
に、
075
躓
(
つまづ
)
く
石
(
いし
)
と
云
(
い
)
つたら、
076
僅
(
わづか
)
に
一
(
ひと
)
つか
二
(
ふた
)
つ
位
(
くらゐ
)
なものだよ。
077
これも
因縁
(
いんねん
)
が
無
(
な
)
ければ
蹴躓
(
けつまづ
)
く
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
なければ、
078
蹴躓
(
けつまづ
)
かれる
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
やしない。
079
同
(
おな
)
じ
時代
(
じだい
)
に
生
(
うま
)
れ、
080
同
(
おな
)
じお
土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
に
居
(
を
)
つても、
081
コンナ
結構
(
けつこう
)
なウラナイ
教
(
けう
)
を
知
(
し
)
らずに、
082
三五教
(
あななひけう
)
にとぼけて
一生
(
いつしやう
)
を
送
(
おく
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
詰
(
つま
)
らぬぢやないか。
083
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引合
(
ひきあは
)
せ、
084
惟神
(
かむながら
)
の
御
(
ご
)
摂理
(
せつり
)
、
085
縁
(
えん
)
あればこそ、
086
斯
(
か
)
うしてお
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ……イヤイヤ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
られて
来
(
き
)
たのだ。
087
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
黒姫
(
くろひめ
)
の
我
(
が
)
で
云
(
い
)
うと
思
(
おも
)
つたら
量見
(
りやうけん
)
が
違
(
ちが
)
ひますデ、
088
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
るのだ。
089
今迄
(
いままで
)
永
(
なが
)
らく
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
のお
住居
(
すまゐ
)
で、
090
沢山
(
たくさん
)
の
宝
(
たから
)
を
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
に
蓄
(
たくは
)
へて
居
(
を
)
られたのぢやが、
091
今度
(
こんど
)
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
が
世
(
よ
)
にお
上
(
あが
)
りなさるに
就
(
つい
)
て、
092
物質
(
ぶつしつ
)
的
(
てき
)
の
宝
(
たから
)
よりも、
093
誠
(
まこと
)
の
宝
(
たから
)
が
良
(
よ
)
いと
云
(
い
)
つて、
094
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
為
(
ため
)
に、
095
惜
(
を
)
しげも
無
(
な
)
く
綺麗
(
きれい
)
サツパリと、
096
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
さまに
御
(
お
)
渡
(
わた
)
しなされると
云
(
い
)
ふ
段取
(
だんど
)
りぢや。
097
併
(
しか
)
し
人間
(
にんげん
)
は
誠
(
まこと
)
の
宝
(
たから
)
も
結構
(
けつこう
)
ぢやが、
098
肉体
(
にくたい
)
の
有
(
あ
)
る
限
(
かぎ
)
り、
099
家
(
いへ
)
も
建
(
た
)
てねばならず、
100
着物
(
きもの
)
も
着
(
き
)
ねばならず、
101
美味
(
うま
)
いものも
食
(
く
)
はねばならず、
102
あいさには
酒
(
さけ
)
もチヨツピリ
飲
(
の
)
みたいと
云
(
い
)
ふ
代物
(
しろもの
)
だから、
103
形
(
かたち
)
のある
宝
(
たから
)
も
必要
(
ひつえう
)
ぢや。
104
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
は「この
世
(
よ
)
の
宝
(
たから
)
は、
105
錆
(
さび
)
、
106
腐
(
くさ
)
り、
107
焼
(
や
)
け、
108
溺
(
おぼ
)
れ、
109
朽果
(
くちは
)
つる
宝
(
たから
)
だ、
110
無形
(
むけい
)
の
宝
(
たから
)
を
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
に
積
(
つ
)
め」なぞと、
111
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
で
屁
(
へ
)
を
放
(
こ
)
いた
様
(
やう
)
な
屁理屈
(
へりくつ
)
を
言
(
い
)
つて、
112
世界
(
せかい
)
の
奴
(
やつ
)
を
誤魔化
(
ごまくわ
)
して
居
(
ゐ
)
るが、
113
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
も
大方
(
おほかた
)
其
(
その
)
部類
(
くち
)
だらう……イヤ
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り
宣伝
(
せんでん
)
して
歩
(
ある
)
くのだらう。
114
……
能
(
よ
)
う
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
なされ。
115
お
前
(
まへ
)
だつて
食
(
く
)
はず
飲
(
の
)
まずに、
116
内的
(
ないてき
)
生活
(
せいくわつ
)
ばかり
主張
(
しゆちやう
)
して
居
(
を
)
つて、
117
堂
(
だう
)
して
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
の
宣伝
(
せんでん
)
に
歩行
(
ある
)
けるか。
118
これ
程
(
ほど
)
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つた
現実
(
げんじつ
)
の
道理
(
だうり
)
を
無視
(
むし
)
すると
云
(
い
)
ふ
教
(
をしへ
)
はヤツパリ
邪教
(
じやけう
)
ぢや。
119
瑞霊
(
みづのみたま
)
の
吐
(
ぬか
)
す
事
(
こと
)
は、
120
概
(
がい
)
して
皆
(
みな
)
コンナものだ。
121
言
(
い
)
ふ
可
(
べ
)
くして
行
(
おこな
)
ふ
可
(
べか
)
らざる
教
(
をしへ
)
が
何
(
なに
)
になるものか。
122
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
と
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
正中
(
まんなか
)
を
言
(
い
)
ふのが
当世
(
たうせい
)
ぢや。
123
当世
(
たうせい
)
に
合
(
あは
)
ぬ
様
(
やう
)
な
教
(
をしへ
)
をしたつて
誰
(
たれ
)
が
聴
(
き
)
くものか。
124
神
(
かみ
)
の
清
(
きよ
)
き
御心
(
みこころ
)
に
合
(
あは
)
むとすれば、
125
暗黒
(
あんこく
)
なる
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
に
合
(
あは
)
ず、
126
俗悪
(
ぞくあく
)
世界
(
せかい
)
の
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
に
合
(
あは
)
むとすれば、
127
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
に
叶
(
かな
)
はず……なぞと
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つた
小理屈
(
こりくつ
)
を、
128
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
馬鹿神
(
ばかがみ
)
が
囀
(
さえづ
)
りよつて、
129
易
(
やす
)
きを
棄
(
す
)
て
難
(
かた
)
きに
就
(
つ
)
かむとする、
130
迂遠
(
うゑん
)
極
(
きは
)
まる
盲信教
(
まうしんけう
)
だから、
131
根
(
ね
)
つから、
132
葉
(
は
)
つから、
133
羽
(
はね
)
が
生
(
は
)
えぬのぢや。
134
ウラナイ
教
(
けう
)
は
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても、
135
今
(
いま
)
は
雌伏
(
しふく
)
時代
(
じだい
)
ぢや。
136
軍備
(
ぐんび
)
を
充実
(
じゆうじつ
)
した
上
(
うへ
)
で、
137
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢうらい
)
、
138
回天
(
くわいてん
)
動地
(
どうち
)
の
大活動
(
だいくわつどう
)
を
演
(
えん
)
じ、
139
それこそ
開
(
あ
)
いた
口
(
くち
)
が
塞
(
ふさ
)
がらぬ、
140
牛
(
うし
)
の
糞
(
くそ
)
が
天下
(
てんか
)
を
取
(
と
)
る、
141
アンナ
者
(
もの
)
がコンナ
者
(
もの
)
になると
云
(
い
)
ふ
仕組
(
しぐみ
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
を
現
(
あら
)
はして、
142
天
(
てん
)
の
御
(
ご
)
三体
(
さんたい
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかける、
143
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
ぢや。
144
三五教
(
あななひけう
)
は
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
の
教
(
をしへ
)
を
樹
(
た
)
てとる
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
して
居
(
ゐ
)
るが、
145
本当
(
ほんたう
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
教
(
をしへ
)
が
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
ぢや。
146
黒姫
(
くろひめ
)
はそれがズンとモウ
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬので、
147
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
の
肉体
(
にくたい
)
の、
148
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
み、
149
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
となつて、
150
外国
(
ぐわいこく
)
の
行方
(
やりかた
)
を、
151
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
迄
(
まで
)
調
(
しら
)
べあげて、
152
今度
(
こんど
)
の
天
(
あま
)
の
岩戸開
(
いはとびらき
)
に、
153
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
大活動
(
だいくわつどう
)
をするのぢや。
154
お
前
(
まへ
)
も、
155
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
ぢやが、
156
名
(
な
)
はどうでもよい、
157
お
三体
(
さんたい
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
と
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
を
聴
(
き
)
きさへすれば
宜
(
よ
)
いのだらう。
158
サアサア
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
化物
(
ばけもの
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
の
吐
(
ぬか
)
す
事
(
こと
)
を、
159
弊履
(
へいり
)
の
如
(
ごと
)
く
打棄
(
うちす
)
てて、
160
最勝
(
さいしよう
)
最妙
(
さいめう
)
、
161
至貴
(
しき
)
至尊
(
しそん
)
、
162
無限
(
むげん
)
絶対
(
ぜつたい
)
、
163
無始
(
むし
)
無終
(
むしう
)
の
神徳
(
しんとく
)
輝
(
かがや
)
く、
164
ウラナイ
教
(
けう
)
に
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
いで、
165
迷夢
(
めいむ
)
を
醒
(
さ
)
まし、
166
綺麗
(
きれい
)
サツパリと
改心
(
かいしん
)
して、
167
ウラナイ
教
(
けう
)
を
迷信
(
めいしん
)
なされ、
168
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬ、
169
ギヤツハヽヽヽ』
170
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽ、
171
アハヽヽヽ、
172
あのマア
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
黒
(
くろ
)
い
口
(
くち
)
、
173
……
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
口
(
くち
)
の
端
(
はた
)
に
乳
(
ちち
)
の
附
(
つ
)
いてる
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
では、
174
到底
(
たうてい
)
あなたの
舌鋒
(
ぜつぽう
)
に
向
(
むか
)
つて
太刀打
(
たちうち
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
175
あなたは
何時
(
いつ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
にお
成
(
な
)
りになりましたか、
176
随分
(
ずゐぶん
)
円転
(
ゑんてん
)
滑脱
(
かつだつ
)
、
177
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
布留那
(
ふるな
)
の
弁
(
べん
)
、
178
懸河
(
けんが
)
の
論説
(
ろんせつ
)
滔々
(
たうたう
)
として
瀑布
(
ばくふ
)
の
落
(
お
)
ちるが
如
(
ごと
)
くですナ』
179
黒姫
(
くろひめ
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だよ。
180
入信
(
にふしん
)
してからまだ
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
にはならぬ。
181
夫
(
そ
)
れでも
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りの
雄弁家
(
ゆうべんか
)
だ、
182
是
(
こ
)
れには
素養
(
そやう
)
がある。
183
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から
諸国
(
しよこく
)
を
遍歴
(
へんれき
)
して、
184
言霊
(
ことたま
)
を
練習
(
れんしふ
)
し、
185
唄
(
うた
)
であらうが、
186
浄瑠璃
(
じやうるり
)
であらうが、
187
浪花節
(
なにはぶし
)
であらうが、
188
音曲
(
おんきよく
)
と
云
(
い
)
ふ
音曲
(
おんきよく
)
は
残
(
のこ
)
らず
上達
(
じやうたつ
)
して
鍛
(
きた
)
へたのぢや。
189
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
、
190
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
口車
(
くちぐるま
)
、
191
十万
(
じふまん
)
馬力
(
ばりき
)
を
掛
(
か
)
けた
輪転機
(
りんてんき
)
の
様
(
やう
)
に、
192
廻転
(
くわいてん
)
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
ぢや、
193
オホヽヽヽ』
194
加米彦
(
かめひこ
)
『モシモシ
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま、
195
コンナ
婆
(
ばば
)
アに、
196
何時
(
いつ
)
までも
相手
(
あひて
)
になつとると、
197
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れますで、
198
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
に
向
(
むか
)
ひませうか』
199
悦子姫
(
よしこひめ
)
『アヽさうだ、
200
折角
(
せつかく
)
の
尊
(
たふと
)
いお
説教
(
せつけう
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
うて、
201
お
名残
(
なごり
)
惜
(
を
)
しいが、
202
先
(
さき
)
が
急
(
せ
)
きますから
此処
(
ここ
)
らで
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませうか』
203
鬼虎
(
おにとら
)
『アーア、
204
最前
(
さいぜん
)
から
黙
(
だま
)
つて
聴
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
205
随分
(
ずゐぶん
)
能
(
よ
)
く
囀
(
さへづ
)
つたものだ。
206
一寸
(
ちよつと
)
謂
(
い
)
はれを
聞
(
き
)
けば、
207
根
(
ね
)
つから
葉
(
は
)
つから
有難
(
ありがた
)
い
様
(
やう
)
だが、
208
執拗
(
しつこ
)
う
聞
(
き
)
けば、
209
向
(
むか
)
つ
腹
(
ぱら
)
が
立
(
た
)
つ……お
婆
(
ば
)
アさま、
210
ゆつくり、
211
膝
(
ひざ
)
とも
談合
(
だんがふ
)
、
212
膝坊主
(
ひざばうず
)
でも
抱
(
かか
)
へて、
213
自然
(
しぜん
)
に
言霊
(
ことたま
)
の
停電
(
ていでん
)
するまで、
214
馬力
(
ばりき
)
をかけ、
215
メートルを
上
(
あ
)
げなさい。
216
アリヨース』
217
黒姫
(
くろひめ
)
『
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
218
大
(
おほ
)
いにアリヨースだ、
219
様子
(
やうす
)
あつて
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
アは、
220
此
(
この
)
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
に
仮小屋
(
かりごや
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
221
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たのだ。
222
往
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
つたつて、
223
一寸
(
いつすん
)
だつて、
224
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
が、
225
是
(
こ
)
れと
睨
(
にら
)
みたら
動
(
うご
)
かすものか』
226
鬼虎
(
おにとら
)
『まるで
蛇
(
へび
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
ぢやナア。
227
執念深
(
しふねんぶか
)
い……
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
228
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
魅入
(
みい
)
れよつたのぢやナ』
229
黒姫
(
くろひめ
)
『さうぢや、
230
魅
(
み
)
を
入
(
い
)
れたのぢや、
231
お
前
(
まへ
)
もチツト
身入
(
みい
)
れて
聞
(
き
)
いたが
宜
(
よ
)
からう、
232
蛇
(
くちなは
)
に
狙
(
ねら
)
はれた
蛙
(
かへる
)
の
様
(
やう
)
なものぢや、
233
此処
(
ここ
)
を
かへる
と
云
(
い
)
つたつて、
234
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
様
(
やう
)
に、
235
チヤーンと
霊縛
(
れいばく
)
が
加
(
くは
)
へてある。
236
悪霊
(
あくれい
)
注射
(
ちうしや
)
も
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずの
間
(
あひだ
)
に、
237
チヤアンと
行
(
や
)
つて
了
(
しま
)
うた。
238
サア
動
(
うご
)
くなら
動
(
うご
)
いて
見
(
み
)
よれ』
239
鬼虎
(
おにとら
)
『アハヽヽ、
240
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
241
動
(
うご
)
けぬと
云
(
い
)
つたつて、
242
俺
(
おれ
)
の
体
(
からだ
)
を
動
(
うご
)
かすのは、
243
俺
(
おれ
)
の
自由
(
じいう
)
権利
(
けんり
)
だ。
244
……ソレ……どうだ。
245
これでも
動
(
うご
)
かぬのか』
246
黒姫
(
くろひめ
)
『それでも
動
(
うご
)
かぬぞ。
247
お
前
(
まへ
)
が
今晩
(
こんばん
)
真名井
(
まなゐ
)
ケ
原
(
はら
)
に
着
(
つ
)
いて、
248
草臥
(
くたび
)
れて、
249
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず、
250
寝
(
やす
)
ンだ
時
(
とき
)
は、
251
ビクとも
体
(
からだ
)
を
動
(
うご
)
かぬ
様
(
やう
)
にしてやるワイ』
252
鬼虎
(
おにとら
)
『アハヽヽヽ、
253
大方
(
おほかた
)
ソンナ
事
(
こと
)
ぢやろと
思
(
おも
)
うた。
254
……ヤイヤイ
黒姫
(
くろひめ
)
、
255
三五教
(
あななひけう
)
は
起
(
お
)
きとる
人間
(
にんげん
)
を、
256
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
で
霊縛
(
れいばく
)
して
動
(
うご
)
けぬ
様
(
やう
)
にするのぢやぞ。
257
一
(
ひと
)
つやつてやらうか、
258
……
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
……』
259
黒姫
(
くろひめ
)
『
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
心地
(
ここち
)
よろづウ……ソラ
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのぢや、
260
それぢやから
三五教
(
あななひけう
)
は
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
と
云
(
い
)
ふのぢや。
261
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
262
算盤
(
そろばん
)
はぢく
様
(
やう
)
に
数
(
かず
)
を
数
(
かぞ
)
へて、
263
一
(
いち
)
から
十
(
じふ
)
まで
千
(
せん
)
から
万
(
まん
)
まで……
取
(
と
)
り
込
(
こ
)
む
事
(
こと
)
につけては
抜目
(
ぬけめ
)
のない
教
(
をしへ
)
ぢや。
264
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
は
無形
(
むけい
)
に
視
(
み
)
、
265
無算
(
むさん
)
に
数
(
かぞ
)
へ、
266
無声
(
むせい
)
に
聞
(
き
)
くと
云
(
い
)
ふのぢやないか、
267
…
何
(
な
)
ンぢや、
268
小学校
(
せうがくかう
)
の
生徒
(
せいと
)
の
様
(
やう
)
に、
269
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つと
勿体
(
もつたい
)
らしさうに、
270
……ソンナことは、
271
三
(
み
)
つ
児
(
ご
)
でも
知
(
し
)
つてるワイ。
272
……
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
273
アオウエイぢやの、
274
カコクケキぢやのアタ
阿呆
(
あはう
)
らしい、
275
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのぢやい……
白髪
(
しらが
)
を
蓬々
(
ぼうぼう
)
と
生
(
は
)
やしよつた
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
が
見
(
み
)
つともない、
276
桶伏山
(
をけぶせやま
)
の
上
(
うへ
)
へあがつて、
277
イロハからの
勉強
(
べんきやう
)
ぢやと
云
(
い
)
ひよつてな、
278
……
小学校
(
せうがくかう
)
の
生徒
(
せいと
)
が
笑
(
わら
)
うて
居
(
を
)
るのも
知
(
し
)
らぬのか、
279
…
良
(
い
)
い
腰抜
(
こしぬけ
)
だなア、
280
それよりも
天地
(
てんち
)
根本
(
こつぽん
)
の
大先祖
(
おほせんぞ
)
の
因縁
(
いんねん
)
を
知
(
し
)
らずに
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
が
樹
(
た
)
つものか、
281
三五教
(
あななひけう
)
の
様
(
やう
)
な
阿呆
(
あはう
)
ばつかりなら
宜
(
よ
)
いが、
282
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には
三
(
さん
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
、
283
目
(
め
)
の
開
(
あ
)
いた
人間
(
にんげん
)
も
無
(
な
)
いとは
謂
(
ゐ
)
はれぬ。
284
其
(
その
)
時
(
とき
)
に、
285
昔
(
むかし
)
の
昔
(
むかし
)
のサル
昔
(
むかし
)
からの
因縁
(
いんねん
)
を
知
(
し
)
らずに、
286
どうして
教
(
をしへ
)
が
出来
(
でき
)
るか、
287
馬鹿
(
ばか
)
も
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
にしといたが
宜
(
よ
)
からう。
288
鎮魂
(
ちんこん
)
ぢや、
289
暗魂
(
あんこん
)
ぢやとか
云
(
い
)
ひよつて、
290
糞詰
(
ふんづま
)
りが
雪隠
(
せんち
)
へでも
行
(
い
)
つた
様
(
やう
)
に、
291
ウンウンと
汗
(
あせ
)
をかきよつて、
292
何
(
なん
)
のザマぢやい、
293
尻
(
しり
)
の
穴
(
あな
)
が
詰
(
つま
)
つて
穴無
(
あなな
)
い
教
(
けう
)
と
云
(
い
)
ふのか、
294
阿呆
(
あはう
)
らしい、
295
進
(
すす
)
むばつかりの
行方
(
やりかた
)
で、
296
尻
(
しり
)
の
締
(
しま
)
りの
出来
(
でき
)
ぬ
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
紊
(
みだ
)
れた
教
(
をしへ
)
、
297
何
(
なに
)
が
夫
(
それ
)
程
(
ほど
)
有難
(
ありがた
)
いのぢや、
298
勿体
(
もつたい
)
ないのぢや、
299
サア
鎮魂
(
ちんこん
)
とやらをかけるのなら、
300
懸
(
か
)
けて
見
(
み
)
い、
301
……ソンナ
糞垂腰
(
ばばたれごし
)
で
鎮魂
(
ちんこん
)
が
掛
(
かか
)
つてたまるかイ。
302
グヅグヅすると、
303
妾
(
わし
)
の
方
(
はう
)
から、
304
暗魂
(
あんこん
)
をかけてやらうか』
305
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
時刻
(
じこく
)
が
移
(
うつ
)
る、
306
婆
(
ば
)
アさま、
307
又
(
また
)
ゆつくりと、
308
後日
(
ごじつ
)
お
目
(
め
)
にかかりませう』
309
黒姫
(
くろひめ
)
『
後日
(
ごじつ
)
お
目
(
め
)
にかからうと
云
(
い
)
つたつて、
310
一寸先
(
いつすんさき
)
は
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
ぢや。
311
逢
(
あ
)
うた
時
(
とき
)
に
笠脱
(
かさぬ
)
げと
云
(
い
)
ふぢやないか、
312
此
(
この
)
笠松
(
かさまつ
)
の
下
(
した
)
でスツクリと
改心
(
かいしん
)
して、
313
宣伝使
(
せんでんし
)
の
笠
(
かさ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
314
蓑
(
みの
)
を
除
(
と
)
り、
315
ウラナイ
教
(
けう
)
に
改悪
(
かいあく
)
しなさい。
316
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
う
慢心
(
まんしん
)
をせぬと、
317
大峠
(
おほたうげ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
に
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
へぬぞや』
318
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
319
オイ
婆
(
ば
)
アさま、
320
お
前
(
まへ
)
さま
本気
(
ほんき
)
で
言
(
い
)
つてるのかい、
321
お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
支離
(
しり
)
滅裂
(
めつれつ
)
、
322
雲煙
(
うんえん
)
模糊
(
もこ
)
、
323
捕捉
(
ほそく
)
す
可
(
べか
)
らずだがナア』
324
黒姫
(
くろひめ
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だイ、
325
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
326
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまのお
宿
(
やど
)
ぢや、
327
捕捉
(
ほそく
)
す
可
(
べか
)
らざるは
竜神
(
りうじん
)
の
本体
(
ほんたい
)
ぢや、
328
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
様
(
やう
)
な
凡夫
(
ぼんぶ
)
が、
329
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
の
尻尾
(
しつぽ
)
でも
捉
(
とら
)
へようと
思
(
おも
)
ふのが
誤
(
あやま
)
りぢや、
330
ギヤツハヽヽヽ』
331
音彦
(
おとひこ
)
『アヽ
是
(
こ
)
れは
是
(
こ
)
れは、
332
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
333
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
ぢやつたナア』
334
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
聞覚
(
ききおぼ
)
えのある
声
(
こゑ
)
だが、
335
……その
顔
(
かほ
)
はナンダ、
336
真黒
(
まつくろ
)
けぢやないか、
337
炭焼
(
すみやき
)
の
爺
(
ぢい
)
かと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た、
338
……
一体
(
いつたい
)
お
前
(
まへ
)
は
誰
(
たれ
)
だ』
339
音彦
(
おとひこ
)
『
音彦
(
おとひこ
)
だよ、
340
北山村
(
きたやまむら
)
より
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
アの
後
(
あと
)
に
従
(
つ
)
いて、
341
ドンナ
事
(
こと
)
をしよるかと
思
(
おも
)
つて、
342
ウラナイ
教
(
けう
)
に
化
(
ば
)
け
込
(
こ
)
み
伴
(
つ
)
いて
来
(
き
)
たのだ。
343
イヤモウ
言語
(
ごんご
)
道断
(
どうだん
)
、
344
表
(
おもて
)
は
立派
(
りつぱ
)
で、
345
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
ると、
346
シヤツチもないものだ、
347
伏見
(
ふしみ
)
人形
(
にんぎやう
)
の
様
(
やう
)
に、
348
表
(
おもて
)
ばつかり
飾
(
かざ
)
り
立
(
た
)
てよつて、
349
裏
(
うら
)
へ
這入
(
はい
)
ればサツパリぢや。
350
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
はガラガラぢや。
351
ウラナイ
教
(
けう
)
は
侮
(
あなど
)
る
可
(
べか
)
らざる
強敵
(
きやうてき
)
と
思
(
おも
)
つて
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
細心
(
さいしん
)
の
注意
(
ちうい
)
を
怠
(
おこた
)
らなかつたが、
352
噂
(
うはさ
)
の
様
(
やう
)
にない
微弱
(
びじやく
)
なものぢや、
353
何程
(
なにほど
)
高姫
(
たかひめ
)
や、
354
黒姫
(
くろひめ
)
が
車輪
(
しやりん
)
になつても、
355
最早
(
もはや
)
前途
(
ぜんと
)
は
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
る。
356
吾々
(
われわれ
)
もモウ
安心
(
あんしん
)
だ。
357
到底
(
たうてい
)
歯牙
(
しが
)
に
掛
(
か
)
くるに
足
(
た
)
らない
教理
(
けうり
)
だから、
358
わしもお
前
(
まへ
)
の
後
(
あと
)
に
伴
(
つ
)
いて、
359
今
(
いま
)
より
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
公然
(
こうぜん
)
名乗
(
なの
)
つて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
にしよう。
360
此
(
この
)
婆
(
ば
)
アさまは、
361
如何
(
どう
)
しても
駄目
(
だめ
)
だ。
362
改心
(
かいしん
)
の
望
(
のぞ
)
みが
付
(
つ
)
かぬ、
363
縁
(
えん
)
なき
衆生
(
しゆじやう
)
は
済度
(
さいど
)
し
難
(
がた
)
し、
364
……エー
可憐相
(
かはいさう
)
乍
(
なが
)
ら、
365
見殺
(
みごろ
)
しかいなア』
366
黒姫
(
くろひめ
)
『アーア
音彦
(
おとひこ
)
も
可憐相
(
かはいさう
)
なものだナア。
367
如何
(
どう
)
ぞして
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かしてやらうと
思
(
おも
)
ふのに、
368
魂
(
たましひ
)
が
痺
(
しび
)
れ
切
(
き
)
つて
居
(
を
)
るから、
369
食塩
(
しよくえん
)
注射
(
ちうしや
)
位
(
くらゐ
)
では
効験
(
かうけん
)
がない
哩
(
わい
)
、
370
アーア
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ぢや、
371
いぢらしい
者
(
もの
)
ぢや……それに
付
(
つ
)
けても
青彦
(
あをひこ
)
の
奴
(
やつ
)
、
372
可憐相
(
かはいさう
)
で
堪
(
たま
)
らぬ。
373
……コラコラ
青彦
(
あをひこ
)
モ
一遍
(
いつぺん
)
、
374
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
375
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
能
(
よ
)
う
省
(
かへり
)
みて、
376
ウラナイ
教
(
けう
)
に
救
(
すく
)
はれると
云
(
い
)
ふ
気
(
き
)
はないか。
377
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
はお
前
(
まへ
)
の
行先
(
ゆくさき
)
が
案
(
あん
)
じられてならぬワイ』
378
青彦
(
あをひこ
)
『アーア、
379
黒姫
(
くろひめ
)
婆
(
ば
)
アさま、
380
お
前
(
まへ
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
い、
381
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
382
個人
(
こじん
)
としては
其
(
その
)
親切
(
しんせつ
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
感謝
(
かんしや
)
する、
383
が、
384
主義
(
しゆぎ
)
主張
(
しゆちやう
)
に
於
(
おい
)
ては、
385
全然
(
ぜんぜん
)
反対
(
はんたい
)
ぢや、
386
人情
(
にんじやう
)
を
以
(
もつ
)
て
真理
(
しんり
)
を
曲
(
ま
)
げる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ、
387
真理
(
しんり
)
は
鉄
(
てつ
)
の
棒
(
ぼう
)
の
如
(
ごと
)
きもの、
388
曲
(
ま
)
げたり、
389
ゆがめたり、
390
折
(
を
)
つたりは
出来
(
でき
)
ない、
391
公私
(
こうし
)
の
区別
(
くべつ
)
は
明
(
あきら
)
かにせなくては、
392
信仰
(
しんかう
)
の
真諦
(
しんたい
)
を
誤
(
あやま
)
るからナア、
393
……
左様
(
さやう
)
なら…
御
(
ご
)
ゆるりと
御
(
お
)
休
(
やす
)
みなされませ、
394
私
(
わたくし
)
は
是
(
こ
)
れから、
395
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
のお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
396
一行
(
いつかう
)
花々
(
はなばな
)
しく、
397
悪魔
(
あくま
)
の
征討
(
せいたう
)
に
向
(
むか
)
ひます。
398
ウラナイ
教
(
けう
)
が
何程
(
なにほど
)
、
399
シヤチになつても、
400
釣鐘
(
つりがね
)
に
蚊
(
か
)
が
襲撃
(
しふげき
)
する
様
(
やう
)
なものだ。
401
三五教
(
あななひけう
)
は
穴
(
あな
)
が
無
(
な
)
いから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
402
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
、
403
御縁
(
ごえん
)
が
有
(
あ
)
つたら
又
(
また
)
お
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りませう』
404
黒姫
(
くろひめ
)
『アーア、
405
縁
(
えん
)
なき
衆生
(
しゆじやう
)
は
度
(
ど
)
し
難
(
がた
)
しか、
406
……エー
仕方
(
しかた
)
がないワイ………ウラナイ
教
(
けう
)
大明神
(
だいみやうじん
)
、
407
叶
(
かな
)
はぬから
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
408
叶
(
かな
)
はぬから
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
409
……ポンポン』
410
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
が
411
伏屋
(
ふせや
)
の
軒
(
のき
)
に
暇
(
いとま
)
乞
(
ご
)
ひ
412
日
(
ひ
)
は
西山
(
せいざん
)
に
傾
(
かたむ
)
いて
413
附近
(
あたり
)
を
陰
(
かげ
)
に
包
(
つつ
)
めども
414
四方
(
よも
)
の
景色
(
けしき
)
は
悦子姫
(
よしこひめ
)
415
松
(
まつ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音彦
(
おとひこ
)
や
416
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
門番
(
もんばん
)
と
417
身
(
み
)
をやつしたる
加米彦
(
かめひこ
)
が
418
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
さへ
青彦
(
あをひこ
)
を
419
伴
(
とも
)
なひ
進
(
すす
)
む
九十九
(
つくも
)
折
(
をり
)
420
鬼
(
おに
)
の
棲処
(
すみか
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
421
大江
(
おほえ
)
の
本城
(
ほんじやう
)
左手
(
ゆんで
)
に
眺
(
なが
)
め
422
鬼彦
(
おにひこ
)
、
鬼虎
(
おにとら
)
、
岩
(
いは
)
、
市
(
いち
)
、
勘公
(
かんこう
)
引連
(
ひきつ
)
れて
423
さしも
嶮
(
けは
)
しき
坂路
(
さかみち
)
を
424
喘
(
あへ
)
ぎ
喘
(
あへ
)
ぎて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
425
地
(
ち
)
は
一面
(
いちめん
)
の
銀世界
(
ぎんせかい
)
426
脛
(
すね
)
を
没
(
ぼつ
)
する
雪路
(
ゆきみち
)
を
427
転
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ
汗水
(
あせみづ
)
を
428
垂
(
た
)
らして
進
(
すす
)
む
岩戸口
(
いはとぐち
)
429
折柄
(
をりから
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
雪
(
ゆき
)
しばき
430
面
(
おもて
)
を
向
(
む
)
くべき
由
(
よし
)
もなく
431
笠
(
かさ
)
を
翳
(
かざ
)
して
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く
432
夜
(
よる
)
の
帳
(
とばり
)
はおろされて
433
遠音
(
とほね
)
に
響
(
ひび
)
く
波
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
434
松
(
まつ
)
の
響
(
ひびき
)
も
成相
(
なりあひ
)
の
435
空
(
そら
)
吹
(
ふ
)
き
渡
(
わた
)
る
天
(
あま
)
の
原
(
はら
)
436
天
(
あま
)
の
橋立
(
はしだて
)
下
(
した
)
に
見
(
み
)
て
437
雪路
(
ゆきみち
)
渉
(
わた
)
る
一行
(
いつかう
)
は
438
勇気
(
ゆうき
)
日頃
(
ひごろ
)
に
百倍
(
ひやくばい
)
し
439
気焔
(
きえん
)
万丈
(
ばんぢやう
)
止
(
と
)
め
度
(
ど
)
なく
440
文珠
(
もんじゆ
)
の
切戸
(
きりど
)
に
着
(
つ
)
きにけり。
441
青彦
(
あをひこ
)
『アーア、
442
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れたし、
443
前途
(
ぜんと
)
遼遠
(
れうゑん
)
、
444
足
(
あし
)
も
良
(
よ
)
い
程
(
ほど
)
疲労
(
くたび
)
れました。
445
アヽ
文珠堂
(
もんじゆだう
)
の
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
つて
一夜
(
いちや
)
を
凌
(
しの
)
ぎ、
446
団子
(
だんご
)
でも
噛
(
かぢ
)
つて
休息
(
きうそく
)
致
(
いた
)
しませうか』
447
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
何
(
いづ
)
れもさま
方
(
がた
)
、
448
随分
(
ずゐぶん
)
御
(
お
)
疲労
(
つかれ
)
でせう。
449
青彦
(
あをひこ
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り、
450
あのお
堂
(
だう
)
の
中
(
なか
)
で、
451
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
休息
(
きうそく
)
致
(
いた
)
しませうか』
452
一同
(
いちどう
)
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に『オウ』と
答
(
こた
)
へて、
453
急
(
いそ
)
ぎ
文珠堂
(
もんじゆだう
)
に
向
(
むか
)
つて
駆
(
か
)
けり
行
(
ゆ
)
く。
454
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤア
此処
(
ここ
)
へ
来
(
く
)
ると、
455
何時
(
いつ
)
やらの
事
(
こと
)
を
連想
(
れんさう
)
するワイ、
456
恰度
(
ちやうど
)
今夜
(
こんや
)
の
様
(
やう
)
な
晩
(
ばん
)
ぢやつた。
457
此
(
この
)
様
(
やう
)
に
雪
(
ゆき
)
は
積
(
つも
)
つて
居
(
を
)
らぬので、
458
あたりは
真暗
(
まつくら
)
がり、
459
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
の
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて、
460
あの
竜灯松
(
りうたうまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
へ、
461
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま
達
(
たち
)
を
召捕
(
めしとり
)
に
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
462
全然
(
まるで
)
夢
(
ゆめ
)
のやうだ。
463
昨日
(
きのふ
)
の
敵
(
てき
)
は
今日
(
けふ
)
の
味方
(
みかた
)
、
464
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
に
敵
(
てき
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
は
無
(
な
)
きものぞと、
465
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
、
466
つくづくと
偲
(
しの
)
ばれます。
467
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまに
霊縛
(
れいばく
)
をかけられた
時
(
とき
)
は、
468
どうせうかと
思
(
おも
)
つた。
469
本当
(
ほんたう
)
に
貴女
(
あなた
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
悪戯好
(
いたづらずき
)
の
方
(
かた
)
でしたなア』
470
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
471
鬼彦
(
おにひこ
)
『オイオイ
鬼虎
(
おにとら
)
、
472
貴様
(
きさま
)
はお
二人
(
ふたり
)
の
中央
(
まんなか
)
にドツカリ
坐
(
すわ
)
りよつて、
473
良
(
い
)
い
気
(
き
)
になつて
居
(
ゐ
)
たのだらう』
474
鬼虎
(
おにとら
)
『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
へ、
475
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか、
476
柔
(
やはら
)
かいものの
上
(
うへ
)
に、
477
ぶつ
倒
(
たふ
)
れて、
478
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
いの、
479
悪
(
わる
)
くないのつて、
480
何分
(
なにぶん
)
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
らぬものだから、
481
ホーズの
化物
(
ばけもの
)
が
出
(
で
)
たかと
思
(
おも
)
つて
気
(
き
)
が
気
(
き
)
ぢやなかつたよ、
482
それに
就
(
つ
)
けても、
483
生者
(
しやうじや
)
必滅
(
ひつめつ
)
会者
(
ゑしや
)
定離
(
ぢやうり
)
、
484
栄枯
(
ゑいこ
)
盛衰
(
せいすゐ
)
、
485
有為
(
うゐ
)
転変
(
てんぺん
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
無常
(
むじやう
)
迅速
(
じんそく
)
の
感
(
かん
)
愈
(
いよいよ
)
深
(
ふか
)
しだ。
486
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
も
落
(
おと
)
す
勢
(
いきほひ
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
は、
487
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
の
為
(
ため
)
に
伊吹山
(
いぶきやま
)
に
遁走
(
とんそう
)
し、
488
吾々
(
われわれ
)
は
四天王
(
してんわう
)
と
呼
(
よ
)
ばれ、
489
随分
(
ずゐぶん
)
羽振
(
はぶり
)
を
利
(
き
)
かした
者
(
もの
)
だが、
490
変
(
かは
)
れば
替
(
か
)
はる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
491
あの
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
492
長者
(
ちやうじや
)
と
乞食
(
こじき
)
程
(
ほど
)
の
懸隔
(
けんかく
)
がある。
493
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
卵
(
たまご
)
になつて
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまのお
供
(
とも
)
と
迄
(
まで
)
、
494
成
(
な
)
り
下
(
さが
)
つたのか、
495
成上
(
なりあ
)
がつたのか
知
(
し
)
らぬが、
496
モ
一度
(
いちど
)
、
497
あの
時
(
とき
)
の
四天王
(
してんわう
)
振
(
ぶり
)
が
発揮
(
はつき
)
したい
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
もせぬ
事
(
こと
)
はない。
498
アーア
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
は
結構
(
けつこう
)
なものの、
499
辛
(
つら
)
いものだ。
500
あひ
見
(
み
)
ての
後
(
のち
)
の
心
(
こころ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
昔
(
むかし
)
は
物
(
もの
)
を
思
(
おも
)
はざりけり
501
だ。
502
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
区別
(
くべつ
)
も
知
(
し
)
らず、
503
天下
(
てんか
)
を
吾物顔
(
わがものがほ
)
に、
504
利己主義
(
われよし
)
の
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
を
採
(
と
)
つた
時
(
とき
)
の
方
(
はう
)
が、
505
何程
(
なにほど
)
愉快
(
ゆくわい
)
だつたか
知
(
し
)
れやしない、
506
吁
(
あゝ
)
、
507
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人間
(
にんげん
)
は
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
を
畏
(
おそ
)
れねばならぬ、
508
今
(
いま
)
の
苦労
(
くらう
)
は
末
(
すゑ
)
の
為
(
ため
)
だ。
509
アーア コンナ
世迷言
(
よまひごと
)
はヨウマイ ヨウマイ。
510
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
511
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
512
私
(
わたくし
)
は
今日
(
こんにち
)
限
(
かぎ
)
り、
513
今迄
(
いままで
)
の
繰言
(
くりごと
)
を
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
します。
514
アヽ、
515
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
516
青彦
(
あをひこ
)
『
因縁
(
いんねん
)
と
云
(
い
)
ふものは
妙
(
めう
)
なものですな、
517
同
(
おな
)
じ
此
(
この
)
竜灯
(
りうとう
)
の
松
(
まつ
)
の
下蔭
(
したかげ
)
に
於
(
おい
)
て、
518
捉
(
とら
)
へようとした
宣伝使
(
せんでんし
)
を
師匠
(
ししやう
)
と
仰
(
あふ
)
いで、
519
お
伴
(
とも
)
をなさるのは、
520
反対
(
あべこべ
)
に
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
の
擒
(
とりこ
)
となつた
様
(
やう
)
なものだ。
521
アハヽヽヽ、
522
吾々
(
われわれ
)
も
全
(
まつた
)
く
三五教
(
あななひけう
)
の
捕虜
(
ほりよ
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
523
それに
就
(
つ
)
けても、
524
執拗
(
しつえう
)
なのは
黒姫
(
くろひめ
)
ぢや、
525
何故
(
なぜ
)
あれ
程
(
ほど
)
頑固
(
ぐわんこ
)
なか
知
(
し
)
らぬ、
526
どうしても
彼奴
(
あいつ
)
ア
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ぬと
見
(
み
)
えますなア』
527
音彦
(
おとひこ
)
『
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
でせう。
528
私
(
わたくし
)
もフサの
国
(
くに
)
の
北山
(
きたやま
)
のウラナイ
教
(
けう
)
の
本山
(
ほんざん
)
へ、
529
信者
(
しんじや
)
となり
化
(
ば
)
け
込
(
こ
)
みて、
530
内
(
うち
)
の
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
れば、
531
何
(
ど
)
れも
此
(
こ
)
れも
盲
(
めくら
)
と
聾
(
つんぼ
)
ばつかり、
532
桶屋
(
をけや
)
さまぢやないが、
533
輪変
(
わがへ
)
吾善
(
わがへ
)
と
思
(
おも
)
つてる
奴
(
やつ
)
ばつかり、
534
中
(
なか
)
にも
蠑螈別
(
いもりわけ
)
だの、
535
魔我彦
(
まがひこ
)
だのと
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
536
素的
(
すてき
)
に
頑固
(
ぐわんこ
)
な
分
(
わか
)
らぬ
屋
(
や
)
だ。
537
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
と
来
(
き
)
たら、
538
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でもいく
奴
(
やつ
)
ぢやない。
539
どうかして
帰順
(
きじゆん
)
さしたいと
思
(
おも
)
ひ、
540
千辛
(
せんしん
)
万苦
(
ばんく
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
541
黒姫
(
くろひめ
)
の
荷持役
(
にもちやく
)
とまで
漕
(
こ
)
ぎつけ、
542
遥々
(
はるばる
)
と
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
まで
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て、
543
折
(
をり
)
に
触
(
ふ
)
れ
物
(
もの
)
に
接
(
せつ
)
し、
544
チヨイチヨイと
注意
(
ちうい
)
を
与
(
あた
)
へたが、
545
元来
(
ぐわんらい
)
が
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
の
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
だから、
546
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
547
私
(
わたし
)
も
加米彦
(
かめひこ
)
さまに
会
(
あ
)
うたのを
限
(
きり
)
として、
548
此処迄
(
ここまで
)
来
(
き
)
たのだが、
549
随分
(
ずゐぶん
)
ウラナイ
教
(
けう
)
は
頑固者
(
ぐわんこもの
)
の
寄合
(
よりあひ
)
ですよ』
550
加米彦
(
かめひこ
)
『フサの
国
(
くに
)
で、
551
あなたが
宣伝
(
せんでん
)
をして
居
(
を
)
られた
時
(
とき
)
、
552
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むな
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むなと
厳
(
きび
)
しい
御
(
ご
)
説教
(
せつけう
)
、
553
私
(
わたし
)
はムカついて、
554
お
前
(
まへ
)
サンの
横面
(
よこづら
)
を、
555
七
(
なな
)
つ
八
(
や
)
つ
擲
(
なぐ
)
つた。
556
其
(
その
)
時
(
とき
)
にお
前
(
まへ
)
サンは、
557
痛
(
いた
)
さを
堪
(
こら
)
へて、
558
ニコニコと
笑
(
わら
)
ひ、
559
禁酒
(
きんしゆ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
うて
御座
(
ござ
)
つた、
560
その
熱心
(
ねつしん
)
に
感
(
かん
)
じ、
561
三五教
(
あななひけう
)
を
信
(
しん
)
じて、
562
村中
(
むらぢう
)
に
弘
(
ひろ
)
めて
居
(
を
)
つた
処
(
ところ
)
、
563
バラモン
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
に
嗅付
(
かぎつ
)
けられ、
564
可愛
(
かはい
)
い
妻子
(
つまこ
)
を
捨
(
す
)
てて、
565
夜昼
(
よるひる
)
なしに、
566
トントントンと
東
(
ひがし
)
を
指
(
さ
)
して
駆出
(
かけだ
)
し、
567
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
まで
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
568
此処
(
ここ
)
にもバラモン
教
(
けう
)
の
勢力
(
せいりよく
)
盛
(
さか
)
ンにして、
569
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ず、
570
西蔵
(
チベツト
)
を
越
(
こ
)
え、
571
蒙古
(
もうこ
)
に
渡
(
わた
)
り、
572
天
(
あめ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
を
横断
(
よこぎ
)
つて
暴風
(
ばうふう
)
に
遭
(
あ
)
ひ、
573
船
(
ふね
)
は
沈
(
しづ
)
み、
574
底
(
そこ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
となつたと
思
(
おも
)
ひきや、
575
気
(
き
)
が
附
(
つ
)
けば
由良
(
ゆら
)
の
湊
(
みなと
)
に
真裸
(
まつぱだか
)
の
儘
(
まま
)
横
(
よこ
)
たはり、
576
火
(
ひ
)
を
焚
(
た
)
いて
焙
(
あぶ
)
られて
居
(
ゐ
)
た。
577
「アーア
世界
(
せかい
)
に
鬼
(
おに
)
は
無
(
な
)
い、
578
何処
(
どこ
)
の
何方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
579
生命
(
いのち
)
を
御
(
お
)
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う」と
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
し
見
(
み
)
れば
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
、
580
生命
(
いのち
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
貰
(
もら
)
うた
恩返
(
おんがへ
)
しに、
581
門番
(
もんばん
)
となり、
582
馬鹿
(
ばか
)
に
成
(
な
)
りすまし
勤
(
つと
)
めて
来
(
き
)
たが、
583
人間
(
にんげん
)
の
身
(
み
)
は
変
(
かは
)
れば
替
(
か
)
はるものぢや、
584
世界
(
せかい
)
は
広
(
ひろ
)
い
様
(
やう
)
なものの
狭
(
せま
)
いものぢや。
585
フサの
国
(
くに
)
で、
586
あなたを
虐待
(
ぎやくたい
)
した
私
(
わたくし
)
が、
587
又
(
また
)
あの
様
(
やう
)
な
破
(
やぶ
)
れ
小屋
(
ごや
)
でお
目
(
め
)
にかからうとは
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
計
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
人
(
ひと
)
の
運命
(
うんめい
)
だ…………アヽ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
588
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
589
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れと
人
(
ひと
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
、
590
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
貴神
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
自由
(
じいう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
591
どうぞ
前途
(
ぜんと
)
幸福
(
かうふく
)
に、
592
無事
(
ぶじ
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
出来
(
でき
)
まする
様
(
やう
)
、
593
特別
(
とくべつ
)
の
御
(
ご
)
恩寵
(
おんちやう
)
を
垂
(
た
)
れさせ
給
(
たま
)
はむ
事
(
こと
)
を
偏
(
ひとへ
)
に
希
(
こひねが
)
ひ
上
(
あ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
ります』
594
悦子姫
(
よしこひめ
)
『サアサア
皆
(
みな
)
さま、
595
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
致
(
いた
)
しませう』
596
一同
(
いちどう
)
は『オウ』と
答
(
こた
)
へ、
597
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
る。
598
悦子姫
(
よしこひめ
)
『サア
皆
(
みな
)
さま、
599
坊主
(
ばうず
)
は
経
(
きやう
)
が
大事
(
だいじ
)
、
600
吾々
(
われわれ
)
は
又
(
また
)
明日
(
あす
)
が
大切
(
だいじ
)
だ。
601
ゆつくりとお
休
(
やす
)
みなされませ。
602
妾
(
わたし
)
は
皆
(
みな
)
さまの
安眠
(
あんみん
)
を
守
(
まも
)
る
為
(
ため
)
、
603
今晩
(
こんばん
)
は
不寝番
(
ねずのばん
)
を
勤
(
つと
)
めませう』
604
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤア
滅相
(
めつさう
)
な、
605
あなたは
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
の
為
(
ため
)
には
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
だ。
606
不寝番
(
ねずのばん
)
は
此
(
この
)
鬼虎
(
おにとら
)
が
仕
(
つかまつ
)
りませう。
607
どうぞお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
608
悦子姫
(
よしこひめ
)
『さうかナ、
609
鬼虎
(
おにとら
)
さまに
今晩
(
こんばん
)
は
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
にならうか』
610
と
蓑
(
みの
)
を
纒
(
まと
)
うた
儘
(
まま
)
、
611
静
(
しづ
)
かに
横
(
よこ
)
たはる。
612
一同
(
いちどう
)
は
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひに
横
(
よこ
)
になり、
613
忽
(
たちま
)
ち
鼾声
(
かんせい
)
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
く
四辺
(
あたり
)
の
空気
(
くうき
)
を
動揺
(
どうえう
)
させつつ、
614
華胥
(
くわしよ
)
の
国
(
くに
)
に
入
(
い
)
る。
615
鬼虎
(
おにとら
)
は
不寝番
(
ねずのばん
)
の
退屈
(
たいくつ
)
紛
(
まぎ
)
れに
雪路
(
ゆきぢ
)
をノソノソと
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
し、
616
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら、
617
竜灯
(
りうとう
)
の
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
着
(
つ
)
き、
618
ふつと
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
き、
619
鬼虎
『あゝ
此処
(
ここ
)
だ
此処
(
ここ
)
だ、
620
悦子姫
(
よしこひめ
)
に
霊縛
(
れいばく
)
をかけられた
古戦場
(
こせんじやう
)
だ。
621
折
(
をり
)
から
火光
(
くわくわう
)
天
(
てん
)
を
焦
(
こが
)
して
竜灯
(
りうとう
)
の
松
(
まつ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて、
622
ブーンブーンと
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
遣
(
や
)
つて
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
の
凄
(
すさま
)
じさ、
623
今
(
いま
)
思
(
おも
)
つても
竦然
(
ぞつ
)
とするワイ。
624
あれは
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
の
火
(
ひ
)
だらう。
625
人
(
ひと
)
の
能
(
よ
)
く
言
(
い
)
ふ
鬼火
(
おにび
)
では
有
(
あ
)
るまいか。
626
鬼虎
(
おにとら
)
が
居
(
を
)
ると
思
(
おも
)
つて、
627
鬼火
(
おにび
)
の
奴
(
やつ
)
、
628
握手
(
あくしゆ
)
でもせうと
思
(
おも
)
ひよつたのかナア。
629
霊魂
(
みたま
)
もお
肉体
(
にくたい
)
もあの
時
(
とき
)
はビリビリのブルブルぢやつた。
630
どうやら
空
(
そら
)
の
様子
(
やうす
)
が
可笑
(
をか
)
しいぞ、
631
真黒
(
まつくろ
)
けの
鬼
(
おに
)
が
東北
(
とうほく
)
の
天
(
てん
)
に
渦巻
(
うづま
)
き
始
(
はじ
)
めた。
632
今度
(
こんど
)
こそ
遣
(
や
)
つて
来
(
き
)
よつた
位
(
くらゐ
)
なら、
633
一
(
ひと
)
つ
奮戦
(
ふんせん
)
激闘
(
げきとう
)
、
634
正体
(
しやうたい
)
を
見届
(
みとど
)
けてやらねばなるまい。
635
是
(
こ
)
れが
宣伝使
(
せんでんし
)
の
肝試
(
きもだめ
)
しだ。
636
オーイ、
637
オイ、
638
鬼火
(
おにび
)
の
奴
(
やつ
)
、
639
鬼虎
(
おにとら
)
さまの
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
だ、
640
三五教
(
あななひけう
)
の
俄
(
にはか
)
宣伝使
(
せんでんし
)
鬼虎
(
おにとら
)
の
命
(
みこと
)
此処
(
ここ
)
に
在
(
あ
)
り、
641
得体
(
えたい
)
の
知
(
し
)
れぬ
火玉
(
ひだま
)
となつて
現
(
あら
)
はれ
来
(
く
)
る
鬼火
(
おにび
)
の
命
(
みこと
)
に
対面
(
たいめん
)
せむ』
642
とお
山
(
やま
)
の
大将
(
たいしやう
)
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
気取
(
きどり
)
になつて、
643
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
に
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
644
忽
(
たちま
)
ち
一道
(
いちだう
)
の
火光
(
くわくわう
)
、
645
天
(
てん
)
の
一方
(
いつぱう
)
に
閃
(
ひらめ
)
き
始
(
はじ
)
めた。
646
鬼虎
『ヤア
天晴
(
あつぱれ
)
々々
(
あつぱれ
)
、
647
噂
(
うはさ
)
をすれば
影
(
かげ
)
とやら、
648
呼
(
よ
)
ぶより
譏
(
そし
)
れとは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
649
鬼虎
(
おにとら
)
の
言霊
(
ことたま
)
は、
650
マアざつと
斯
(
か
)
くの
通
(
とほ
)
りぢや。
651
一声
(
いつせい
)
風雲
(
ふううん
)
を
捲
(
ま
)
き
起
(
おこ
)
し、
652
一音
(
いちおん
)
天火
(
てんび
)
を
喚起
(
よびおこ
)
す。
653
斯
(
か
)
うなつては
天晴
(
あつぱ
)
れ
一人前
(
いちにんまへ
)
のネツトプライス、
654
チヤキチヤキの
宣伝使
(
せんでんし
)
ぢや、
655
イザ
来
(
こ
)
い
来
(
きた
)
れ、
656
天火
(
てんびの
)
命
(
みこと
)
、
657
此
(
この
)
鬼虎
(
おにとら
)
が
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
活動振
(
くわつどうぶ
)
り……イヤサ
厳
(
いづ
)
の
雄猛
(
をたけ
)
び
踏
(
ふ
)
み
健
(
たけ
)
び
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れむ』
658
言下
(
げんか
)
に
東北
(
とうほく
)
の
天
(
てん
)
に
現
(
あら
)
はれたる
火光
(
くわくわう
)
は、
659
巨大
(
きよだい
)
なる
火団
(
くわだん
)
となりて、
660
中空
(
ちうくう
)
を
掠
(
かす
)
め、
661
四辺
(
あたり
)
を
照
(
てら
)
し、
662
竜灯
(
りうとう
)
の
松
(
まつ
)
目蒐
(
めが
)
けて
下
(
くだ
)
り
来
(
く
)
る。
663
鬼虎
(
おにとら
)
『ヨウ
大分
(
だいぶ
)
に
張込
(
はりこ
)
みよつたな、
664
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
奴
(
やつ
)
の
事
(
こと
)
思
(
おも
)
へば、
665
余程
(
よほど
)
ネオ
的
(
てき
)
だとみえる。
666
容積
(
ようせき
)
に
於
(
おい
)
て、
667
光沢
(
くわうたく
)
に
於
(
おい
)
て
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
だ……
否
(
いな
)
天上
(
てんじやう
)
一品
(
いつぴん
)
だ。
668
サア
是
(
こ
)
れから
腹帯
(
はらおび
)
でもシツカリ
締
(
しめ
)
て、
669
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
でも
致
(
いた
)
さうかい、
670
腹
(
はら
)
の
帯
(
おび
)
が
緩
(
ゆる
)
むとまさかの
時
(
とき
)
に
忍耐
(
こば
)
れぬぞよと、
671
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた。
672
サアサア
鬼虎
(
おにとら
)
さまの
肝玉
(
きもだま
)
が
大
(
おほ
)
きいか、
673
天火
(
てんび
)
の
命
(
みこと
)
の
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
が
大
(
おほ
)
きいか、
674
大
(
おほ
)
きさ
比
(
くら
)
べぢや』
675
火団
(
くわだん
)
は
竜灯
(
りうとう
)
の
松
(
まつ
)
を
中心
(
ちうしん
)
に、
676
円
(
ゑん
)
を
描
(
ゑが
)
き、
677
地上
(
ちじやう
)
五六
(
ごろく
)
尺
(
しやく
)
の
所
(
ところ
)
まで
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
678
ブーンブーンと
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
て、
679
ジヤイロコンパスの
様
(
やう
)
に、
680
急速度
(
きふそくど
)
を
以
(
もつ
)
てクルクルと
回転
(
くわいてん
)
し
居
(
ゐ
)
たり。
681
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤイヤイ
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
、
682
何時
(
いつ
)
までも
宙
(
ちう
)
にぶら
下
(
さ
)
がつて
居
(
ゐ
)
るのは、
683
チツト、
684
ノンセンスだないか、
685
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はし、
686
此
(
この
)
方
(
はう
)
さまと
握手
(
あくしゆ
)
をしたらどうだい。
687
お
前
(
まへ
)
は
天
(
てん
)
の
鬼火
(
おにびの
)
命
(
みこと
)
、
688
俺
(
おれ
)
は
地
(
ち
)
の
鬼虎
(
おにとらの
)
命
(
みこと
)
だ、
689
天地
(
てんち
)
合体
(
がつたい
)
和合
(
わがふ
)
一致
(
いつち
)
して、
690
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
せうではないか。
691
是
(
こ
)
れからは
火
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
守護
(
しゆご
)
になるのだから、
692
貴様
(
きさま
)
のやうな
奴
(
やつ
)
は
時代
(
じだい
)
に
匹敵
(
ひつてき
)
した
代物
(
しろもの
)
だ……イヤ
無
(
な
)
くて
叶
(
かな
)
はぬ
人物
(
じんぶつ
)
だ。
693
サアサア
早
(
はや
)
く、
694
天
(
てん
)
と
地
(
ち
)
との
障壁
(
しやうへき
)
を
打破
(
だは
)
して、
695
開放
(
かいはう
)
的
(
てき
)
にならぬかい。
696
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
と
互
(
たがひ
)
にハーモニーすれば、
697
ドンナ
事
(
こと
)
でも
天下
(
てんか
)
に
成
(
な
)
らざるなしだ』
698
火団
(
くわだん
)
は
忽
(
たちま
)
ち
掻
(
か
)
き
消
(
け
)
す
如
(
ごと
)
く、
699
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しけるが、
700
鬼虎
(
おにとら
)
の
前
(
まへ
)
に
忽然
(
こつぜん
)
として
現
(
あら
)
はれた
白面
(
はくめん
)
白衣
(
びやくい
)
のうら
若
(
わか
)
き
美女
(
びぢよ
)
、
701
紅
(
くれなゐ
)
の
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
き、
702
女
『ホヽヽヽヽ、
703
お
前
(
まへ
)
は
鬼虎
(
おにとら
)
さまか、
704
ようマア
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつたナア』
705
鬼虎
(
おにとら
)
『
何
(
なん
)
ぢやア、
706
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
も
無
(
な
)
い、
707
雪
(
ゆき
)
ン
婆
(
ば
)
アの
様
(
やう
)
な
真白
(
まつしろ
)
けの
美人
(
びじん
)
に
化
(
ば
)
けよつて、
708
雪
(
ゆき
)
に
白鷺
(
しらさぎ
)
が
下
(
お
)
りた
様
(
やう
)
に、
709
白
(
しろ
)
い
処
(
ところ
)
へ
白
(
しろ
)
い
者
(
もの
)
、
710
一寸
(
ちよつと
)
見当
(
けんたう
)
の
取
(
と
)
れぬ
代物
(
しろもの
)
だナア。
711
俺
(
おれ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るとは
一体
(
いつたい
)
どうした
訳
(
わけ
)
だ、
712
俺
(
おれ
)
は
生
(
うま
)
れてから、
713
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
美人
(
びじん
)
に
会
(
あ
)
つた
事
(
こと
)
は
一度
(
いちど
)
も
無
(
な
)
い、
714
何時
(
いつ
)
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのだ』
715
女
『ホヽヽヽヽ、
716
モウ
忘
(
わす
)
れなさつたのかいなア、
717
覚
(
おぼ
)
えの
悪
(
わる
)
い
此方
(
こち
)
の
人
(
ひと
)
、
718
お
前
(
まへ
)
は
今
(
いま
)
から
五十六
(
ごじふろく
)
億
(
おく
)
七千万
(
しちせんまん
)
年
(
ねん
)
のツイ
昔
(
むかし
)
、
719
妾
(
わらは
)
が
文珠
(
もんじゆ
)
菩薩
(
ぼさつ
)
と
現
(
あら
)
はれて、
720
此
(
この
)
切戸
(
きりど
)
に
些
(
ささ
)
やかな
家
(
いへ
)
を
作
(
つく
)
り、
721
一人
(
ひとり
)
住居
(
ずまゐ
)
をして
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
へ、
722
年
(
とし
)
も
二八
(
にはち
)
の
優姿
(
やさすがた
)
、
723
在原
(
ありはら
)
の
業平
(
なりひら
)
朝臣
(
あそん
)
の
様
(
やう
)
な、
724
綺麗
(
きれい
)
な
顔
(
かほ
)
をして
烏帽子
(
ゑぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
で、
725
此処
(
ここ
)
を
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしただらう。
726
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
妾
(
わらは
)
は
物書
(
ものか
)
きをして
居
(
を
)
つたが、
727
何
(
なん
)
だか
香
(
かん
)
ばしき
匂
(
にほ
)
ひがすると
思
(
おも
)
つて、
728
窓
(
まど
)
から
覗
(
のぞ
)
けば、
729
絵
(
ゑ
)
にある
様
(
やう
)
な
殿御
(
とのご
)
のお
姿
(
すがた
)
、
730
ホヽヽヽヽおお
恥
(
はづか
)
し……
其
(
その
)
一刹那
(
いちせつな
)
に
互
(
たがひ
)
に
見合
(
みあは
)
す
顔
(
かほ
)
と
顔
(
かほ
)
、
731
お
前
(
まへ
)
の
涼
(
すず
)
しい……
彼
(
あ
)
の
時
(
とき
)
の
眼
(
め
)
、
732
何百
(
なんびやく
)
年
(
ねん
)
経
(
た
)
つても
忘
(
わす
)
られようか、
733
妾
(
わらは
)
が
目
(
め
)
の
電波
(
でんぱ
)
は
直射
(
ちよくしや
)
的
(
てき
)
にお
前
(
まへ
)
の
目
(
め
)
に
送
(
おく
)
られた。
734
お
前
(
まへ
)
も
亦
(
また
)
「オウ」とも
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
はずに、
735
電波
(
でんぱ
)
を
返
(
かへ
)
した……。
736
あの
時
(
とき
)
のローマンスをモウお
前
(
まへ
)
は
忘
(
わす
)
れたのかいなア。
737
エーエ
変
(
か
)
はり
易
(
やす
)
きは
殿御
(
とのご
)
の
心
(
こころ
)
、
738
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
ぢやないが、
739
最早
(
もはや
)
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
の
枝
(
えだ
)
から、
740
花
(
はな
)
は
嵐
(
あらし
)
に
打
(
う
)
たれて
散
(
ち
)
つたのかい……、
741
アーア
残念
(
ざんねん
)
や、
742
口惜
(
くちを
)
しや、
743
男心
(
をとこごころ
)
と
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
、
744
妾
(
わらは
)
は
神
(
かみ
)
や
仏
(
ほとけ
)
に
心願
(
しんぐわん
)
掛
(
か
)
けて、
745
やつと
思
(
おも
)
ひの
叶
(
かな
)
うた
時
(
とき
)
は、
746
時
(
とき
)
ならぬ
顔
(
かほ
)
に
紅葉
(
もみぢ
)
を
散
(
ち
)
らした
哩
(
わい
)
なア、
747
オホヽヽヽ、
748
恥
(
はづか
)
しやなア』
749
鬼虎
(
おにとら
)
『さう
言
(
い
)
へば、
750
ソンナ
気
(
き
)
もせぬでも
無
(
な
)
いやうだ。
751
何分
(
なにぶん
)
色男
(
いろをとこ
)
に
生
(
うま
)
れたものだから、
752
お
門
(
かど
)
が
広
(
ひろ
)
いので、
753
スツカリ
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
からお
前
(
まへ
)
の
記憶
(
きおく
)
を
磨滅
(
まめつ
)
して
居
(
ゐ
)
たのだ。
754
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
気強
(
きづよ
)
い
男
(
をとこ
)
と
恨
(
うら
)
めて
呉
(
く
)
れな。
755
是
(
こ
)
れでも
血
(
ち
)
も
有
(
あ
)
り、
756
涙
(
なみだ
)
も
有
(
あ
)
る。
757
物
(
もの
)
の
哀
(
あは
)
れは
百
(
ひやく
)
も
承知
(
しようち
)
、
758
千
(
せん
)
も
合点
(
がてん
)
だ。
759
サア
是
(
こ
)
れから
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
とり
)
かはし、
760
死
(
し
)
なば
諸共
(
もろとも
)
、
761
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
や
死出
(
しで
)
の
山
(
やま
)
、
762
蓮
(
はす
)
の
台
(
うてな
)
に
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
、
763
弥勒
(
みろく
)
の
代
(
よ
)
までも
楽
(
たのし
)
みませう』
764
女
(
をんな
)
『ホヽヽヽ、
765
好
(
す
)
かぬたらしいお
方
(
かた
)
、
766
誰
(
たれ
)
がオ
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
山葵卸
(
わさびおろし
)
の
様
(
やう
)
な
剽男
(
ひよつとこ
)
野郎
(
やらう
)
に
心中立
(
しんぢうだて
)
するものかいナ。
767
妾
(
わらは
)
は
今
(
いま
)
其処
(
そこ
)
に、
768
天
(
てん
)
から
下
(
お
)
りて
御座
(
ござ
)
つた
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
にお
話
(
はなし
)
をしとるのだよ。
769
良
(
よ
)
い
気
(
き
)
になつて、
770
お
前
(
まへ
)
が
話
(
はなし
)
の
横取
(
よこど
)
りをして、
771
色男
(
いろをとこ
)
気取
(
きど
)
りになつて……
可笑
(
をか
)
しいワ、
772
ホヽヽヽ』
773
鬼虎
(
おにとら
)
『エーツ
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ。
774
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしよるな、
775
まるで
夢
(
ゆめ
)
のやうな
話
(
はなし
)
だワイ』
776
女
(
をんな
)
『ホヽヽヽ、
777
夢
(
ゆめ
)
になりとも
会
(
あ
)
ひたいと
云
(
い
)
ふぢやないか。
778
妾
(
わし
)
の
様
(
やう
)
な
女神
(
めがみ
)
を
掴
(
つか
)
まへて、
779
スヰートハートせうとは、
780
身分
(
みぶん
)
不相応
(
ふさうおう
)
ですよ。
781
馬
(
うま
)
は
馬
(
うま
)
連
(
づ
)
れ、
782
牛
(
うし
)
は
牛
(
うし
)
連
(
づ
)
れ、
783
烏
(
からす
)
の
女房
(
にようばう
)
はヤツパリ
烏
(
からす
)
ぢや。
784
此
(
この
)
雪
(
ゆき
)
の
降
(
ふ
)
つた
白
(
しろ
)
い
世界
(
せかい
)
に
烏
(
からす
)
の
下
(
お
)
りたよな
黒
(
くろ
)
い
男
(
をとこ
)
を、
785
誰
(
たれ
)
がラブする
物好
(
ものずき
)
があるものか。
786
自惚
(
うぬぼれ
)
も
程々
(
ほどほど
)
になさいませ。
787
オツホヽヽヽ、
788
おかしいワ……』
789
鬼虎
(
おにとら
)
『エー
馬鹿
(
ばか
)
にするな、
790
俺
(
おれ
)
を
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
791
大江山
(
おほえやま
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
四天王
(
してんわう
)
と
呼
(
よ
)
ばれたる、
792
剛力
(
がうりき
)
無双
(
むさう
)
のジヤンヂヤチツクのジヤンジヤ
馬
(
うま
)
、
793
鬼虎
(
おにとら
)
さまとは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だよ。
794
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
795
暴言
(
ばうげん
)
を
吐
(
は
)
くにも
程
(
ほど
)
が
有
(
あ
)
る。
796
サアもう
量見
(
りやうけん
)
ならぬ。
797
この
蠑螺
(
さざえ
)
の
壺焼
(
つぼやき
)
を
喰
(
く
)
つて
斃
(
くた
)
ばれ』
798
と
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに、
799
ウンと
斗
(
ばか
)
り
擲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
けたり。
800
悦子姫
(
よしこひめ
)
『アイタタタ…
誰
(
たれ
)
だイ、
801
人
(
ひと
)
が
休眠
(
やす
)
みてるのに、
802
……
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
頭
(
あたま
)
を
擲
(
な
)
ぐるとはあまりぢやありませぬか』
803
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤア、
804
済
(
す
)
みませぬ。
805
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまで
御座
(
ござ
)
いましたか。
806
ツイ
別嬪
(
べつぴん
)
に
翫弄
(
おもちや
)
にしられた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
まして、
807
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
擲
(
なぐ
)
つたと
思
(
おも
)
へば、
808
貴女
(
あなた
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
809
ヤア
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しました。
810
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
811
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
812
悪気
(
わるぎ
)
でやつたのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ』
813
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽ、
814
三五教
(
あななひけう
)
に
這入
(
はい
)
つても、
815
ヤツパリ
美人
(
びじん
)
の
事
(
こと
)
は
忘
(
わす
)
れられませぬなア』
816
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤアもう
申訳
(
まをしわけ
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
817
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
女
(
をんな
)
がなくては、
818
人間
(
にんげん
)
の
種
(
たね
)
が
絶
(
た
)
えまする。
819
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
も
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
も、
820
世界
(
せかい
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
は、
821
みな
女
(
をんな
)
から
生
(
うま
)
れたのです。
822
故郷
(
ふるさと
)
の
穴太
(
あなを
)
の
少
(
すこ
)
し
上小口
(
うへこぐち
)
ただぼうぼうと
生
(
は
)
えし
叢
(
くさむら
)
823
とか
申
(
まを
)
しまして、
824
女
(
をんな
)
位
(
くらゐ
)
、
825
夢
(
ゆめ
)
に
見
(
み
)
ても
気分
(
きぶん
)
の
良
(
よ
)
い
者
(
もの
)
は
有
(
あ
)
りませぬワ、
826
アハヽヽヽ』
827
鬼彦
(
おにひこ
)
『ナヽ
何
(
な
)
ンぢや、
828
夜
(
よる
)
の
夜中
(
よなか
)
に
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
笑
(
わら
)
ひよつて、
829
良
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
寝
(
ね
)
ぬかイ。
830
明日
(
あす
)
が
大事
(
だいじ
)
ぢやぞ。
831
貴様
(
きさま
)
は、
832
……
今晩
(
こんばん
)
私
(
わたくし
)
が
不寝番
(
ねずのばん
)
を
致
(
いた
)
します……なぞと、
833
怪体
(
けたい
)
な
事
(
こと
)
をぬかすと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、
834
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまの
綺麗
(
きれい
)
な
顔
(
かほ
)
を、
835
穴
(
あな
)
の
開
(
あ
)
く
程
(
ほど
)
覗
(
のぞ
)
いて
居
(
ゐ
)
よつただらう。
836
デレ
助
(
すけ
)
だなア』
837
鬼虎
(
おにとら
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
言
(
い
)
ふない。
838
俺
(
おれ
)
は
職務
(
しよくむ
)
忠実
(
ちうじつ
)
に
勤
(
つと
)
める
積
(
つも
)
りで
居
(
を
)
つたのに、
839
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
840
ウトウト
睡魔
(
すゐま
)
に
襲
(
おそ
)
はれ、
841
竜灯松
(
りうとうまつ
)
の
下
(
した
)
へ
行
(
い
)
つて
別嬪
(
べつぴん
)
に
逢
(
あ
)
うた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのぢや。
842
聖人
(
せいじん
)
君子
(
くんし
)
でなくてはアンナ
愉快
(
ゆくわい
)
な
夢
(
ゆめ
)
は
見
(
み
)
られないぞ。
843
貴様
(
きさま
)
のやうな
身魂
(
みたま
)
の
曇
(
くも
)
つた
人間
(
にんげん
)
は、
844
到底
(
たうてい
)
アンナ
夢
(
ゆめ
)
は
末代
(
まつだい
)
に
一度
(
いちど
)
だつて
見
(
み
)
られるものかい』
845
鬼彦
(
おにひこ
)
『アツハヽヽヽ、
846
その
後
(
あと
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はうかい。
847
他人
(
ひと
)
の
恋女
(
こひをんな
)
に
岡惚
(
をかぼれ
)
しよつて、
848
色男
(
いろをとこ
)
気取
(
きど
)
りになつて、
849
肱鉄
(
ひぢてつ
)
を
喰
(
くら
)
つた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
よつたのだらう。
850
大抵
(
たいてい
)
ソンナものだよ、
851
アハヽヽヽ。
852
早
(
はや
)
く
寝
(
ね
)
ぬかい、
853
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けたら
又
(
また
)
、
854
テクつかねばならぬぞ』
855
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
天
(
てん
)
の
一方
(
いつぱう
)
より、
856
今度
(
こんど
)
は
真正
(
しんせい
)
の
火団
(
くわだん
)
閃
(
ひらめ
)
くよと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
857
竜灯松
(
りうとうまつ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて、
858
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
て
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
降
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
859
一同
(
いちどう
)
の
前
(
まへ
)
にズドンと
大音響
(
だいおんきやう
)
を
発
(
はつ
)
し、
860
爆発
(
ばくはつ
)
したり。
861
火光
(
くわくわう
)
はたちまち、
862
花火
(
はなび
)
の
如
(
ごと
)
く
四方
(
よも
)
に
散乱
(
さんらん
)
し、
863
数百千
(
すうひやくせん
)
の
小
(
ちひ
)
さき
火球
(
くわきう
)
となつて、
864
地上
(
ちじやう
)
二三丈
(
にさんぢやう
)
許
(
ばか
)
りの
所
(
ところ
)
を、
865
青
(
あを
)
、
866
赤
(
あか
)
、
867
白
(
しろ
)
、
868
紫
(
むらさき
)
、
869
各種
(
かくしゆ
)
の
色
(
いろ
)
に
変
(
へん
)
じ、
870
蚋
(
ぶと
)
の
餅搗
(
もちつき
)
する
如
(
ごと
)
くに
浮動
(
ふどう
)
飛散
(
ひさん
)
し
始
(
はじ
)
めたる。
871
其
(
その
)
壮観
(
さうくわん
)
に
一同
(
いちどう
)
魂
(
たま
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
見惚
(
みと
)
れ
居
(
ゐ
)
る。
872
吁
(
あゝ
)
、
873
此
(
この
)
火光
(
くわくわう
)
は
何神
(
なにがみ
)
の
変化
(
へんげ
)
なりしか。
874
(
大正一一・四・一六
旧三・二〇
松村真澄
録)
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【第19章 文珠如来|第16巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1619】
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