霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 白狐(びやくこ)の出現(しゆつげん)〔六〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻 篇:第1篇 神軍霊馬 よみ(新仮名遣い):しんぐんれいば
章:第10章 白狐の出現 よみ(新仮名遣い):びゃっこのしゅつげん 通し章番号:600
口述日:1922(大正11)年04月14日(旧03月18日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
鬼雲彦が無念の思いにその場に沈んでいると、鬼雲彦妻子の死体は巨大な白狐に還元し、這い出した。手下と見えた鬼彦らも、白狐の正体をあらわして、鬼雲彦を取り囲む。
鬼雲彦は暴れ狂い、鬼ケ城山を指して逃げていった。多くの従卒も鬼雲彦に続いた。しかし鬼ケ城山方面からは、亀彦宣伝使らが向かって来た。鬼雲彦は元来た道を逃げ戻り、大江山本城に逃げ込んだ。
本城で妻の鬼雲姫と合流したが、夫婦共に城内の井戸に落ち込んでしまった。そこを亀彦に引き上げられた。
一方、鬼武彦はさいぜん、鬼彦らを閉じ込めた洞窟の蓋岩を開けた。鬼彦一行は大江山本城に戻ってみると、鬼雲彦夫婦が、亀彦らに囲まれて説諭を受けていた。
鬼彦一行は亀彦らと宣伝歌を唱和した。いたたまれなくなった鬼雲彦夫婦は、一目散に駆け出して伊吹山方面指して逃げていった。
鬼武彦は、大江山は邪神の集まる霊界の四辻であるので、神政成就の暁まで、自分がここを守護することを宣言した。
亀彦、英子姫、悦子姫は鬼武彦の働きと神術を激賞した。そして東を指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-01-27 17:11:26 文字数:2673 OBC :rm1610
愛善世界社版:126頁 八幡書店版:第3輯 447頁 修補版: 校定版:130頁 普及版:56頁 初版: ページ備考:
001八洲(やしま)の国(くに)を駆(か)け巡(めぐ)り
002この世(よ)を曇(くも)らす自在天(じざいてん)
003自由(じいう)自在(じざい)の活動(くわつどう)を
004続(つづ)けて茲(ここ)に婆羅門(ばらもん)の
005大棟梁(だいとうりやう)と仰(あふ)がれし
006鬼雲彦(おにくもひこ)の猛将(まうしやう)も、
007 最愛(さいあい)の妻(つま)の非業(ひがう)の最後(さいご)に又(また)もや続(つづ)いて子女(しぢよ)の浅(あさ)ましき此(この)姿(すがた)を見(み)て胸(むね)も張(は)り裂(さ)く許(ばか)り、008魂(こん)消(き)え、009魄(はく)亡(ほろ)びる如(ごと)き心地(ここち)し乍(なが)らドツカと其(その)場(ば)に打倒(うちたふ)れ無念(むねん)の涙(なみだ)にくれ居(ゐ)たり。010鬼彦(おにひこ)は肩(かた)を揺(ゆす)り乍(なが)ら大口(おほぐち)開(あ)けて高笑(たかわら)ひ、
011鬼彦(正体は鬼武彦)『アハヽヽヽ、012吾(われ)こそは鬼彦(おにひこ)とは詐(いつは)り誠(まこと)は大江山(たいかうざん)に現(あら)はれし白狐(びやくこ)の鬼武彦(おにたけひこ)、013汝(なんぢ)悪神(あくがみ)の計略(けいりやく)を根底(こんてい)より覆(くつが)へさむと千変(せんぺん)万化(ばんくわ)の活動(くわつどう)を続(つづ)け、014神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の大命(たいめい)を奉(ほう)じ、015汝(なんぢ)が一類(いちるゐ)を征服(せいふく)に向(むか)うたり、016汝(なんぢ)が力(ちから)と恃(たの)む鬼彦(おにひこ)は魔窟(まくつ)ケ原(はら)の岩窟(がんくつ)に匿(かくま)ひあれば汝(なんぢ)が神力(しんりき)を以(もつ)て索(もと)め出(だ)せよ、017さり乍(なが)ら彼(かれ)は最早(もはや)汝(なんぢ)の意志(いし)に従(したが)ふ者(もの)に非(あら)ず、018立派(りつぱ)なる三五教(あななひけう)の信者(しんじや)となりて居(ゐ)るぞ、019汝(なんぢ)が妻(つま)と見(み)えしは汝(なんぢ)が眼(め)の誤(あやま)り、020吾(わが)眷族(けんぞく)の名(な)もなき白狐(びやくこ)の変化(へんげ)』
021と言葉(ことば)終(をは)らずに鬼雲姫(おにくもひめ)は忽(たちま)ち巨大(きよだい)なる白狐(びやくこ)となつてノソリノソリと這(は)ひ始(はじ)め、022鬼雲彦(おにくもひこ)に向(むか)つて眼(め)を光(ひか)らせ牙(きば)を剥(む)き飛(と)びかからむとする勢(いきほひ)を示(しめ)し居(ゐ)る。023鬼虎(おにとら)は又(また)もや威丈(ゐだ)け高(だか)に胸(むね)を打(う)ち乍(なが)ら大口(おほぐち)開(あ)けて高笑(たかわら)ひ、
024鬼虎(正体は旭)『アハヽヽヽ、025吾(われ)こそは大江山(たいかうざん)に現(あら)はれて四方(よも)の魔神(まがみ)を征服(せいふく)し言向(ことむ)け和(やは)す神(かみ)の使(つかひ)、026旭(あさひ)の白狐(びやくこ)が化身(けしん)なるぞ、027汝(なんぢ)が力(ちから)と恃(たの)む四天王(してんわう)の随一(ずゐいつ)と聞(きこ)えたる鬼虎(おにとら)は前非(ぜんぴ)を悔(く)い今(いま)は三五教(あななひけう)の信者(しんじや)となれり、028魔窟(まくつ)ケ原(はら)の岩窟(がんくつ)に匿(かくま)ひあれば未練(みれん)あらば汝(なんぢ)自由(じいう)に岩戸(いはと)を開(ひら)いて面会(めんくわい)せよ、029汝(なんぢ)が伜(せがれ)と見(み)えたるは、030之(これ)も白狐(びやくこ)の化身(けしん)なり、031汝(なんぢ)が妻子(さいし)は手段(てだて)を以(もつ)て、032或(ある)処(ところ)に匿(かく)まひあれば改心(かいしん)次第(しだい)にて親子(おやこ)夫婦(ふうふ)の対面(たいめん)を許(ゆる)し呉(く)れむ』
033と言葉(ことば)終(をは)らぬに又(また)もや一(ひと)つの網代籠(あじろかご)よりノソノソ這(は)ひ出(で)た巨大(きよだい)の白狐(びやくこ)、034以前(いぜん)の如(ごと)く鬼雲彦(おにくもひこ)が身辺(しんぺん)に目(め)を睜(いか)らし牙(きば)を剥(む)きつつ進(すす)み寄(よ)る。035熊鷹(くまたか)は又(また)もや立(た)ち上(あが)り、
036熊鷹(正体は高倉)『吾(われ)こそは神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の立(た)てさせ給(たま)ふ三五(あななひ)の教(をしへ)に仕(つか)ふる白狐(びやくこ)の高倉(たかくら)、037熊鷹(くまたか)と見(み)えしは此(この)方(はう)が化身(けしん)』
038と言葉(ことば)終(をは)らぬに又(また)もや這(は)ひ出(で)た巨大(きよだい)の白狐(びやくこ)、039同(おな)じく鬼雲彦(おにくもひこ)に向(むか)つて襲(おそ)ひ行(ゆ)く。040石熊(いしくま)は又(また)もや立(た)ち上(あが)り、
041石熊(正体は月日明神)『吾(われ)こそは月日(つきひ)明神(みやうじん)と名(な)を頂(いただ)きし常夜(とこよ)の国(くに)の大江山(たいかうざん)に現(あら)はれたる白狐(びやくこ)なるぞ、042汝(なんぢ)は今(いま)より前非(ぜんぴ)を悔(く)い婆羅門(ばらもん)教(けう)を振(ふ)り棄(す)てて三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)に信従(しんじゆう)するか、043違背(ゐはい)に及(およ)ばば大江(おほえ)の山(やま)は木端(こつぱ)微塵(みぢん)に踏(ふ)み砕(くだ)き、044草(くさ)の片葉(かきは)に至(いた)る迄(まで)焼(や)き亡(ほろ)ぼさむ、045返答(へんたふ)如何(いか)に』
046と詰(つ)めかける。047又(また)もや一(ひと)つの駕籠(かご)よりは巨大(きよだい)の白狐(びやくこ)現(あら)はれて鬼雲彦(おにくもひこ)を前後(ぜんご)左右(さいう)より取(と)り巻(ま)きコンコンと啼(な)き立(た)て乍(なが)ら改心(かいしん)を迫(せま)る。048鬼雲彦(おにくもひこ)は忽(たちま)ち精神(せいしん)錯乱(さくらん)して大刀(だいたう)を引(ひ)き抜(ぬ)き前後(ぜんご)左右(さいう)に荒(あ)れ狂(くる)ひ、049館(やかた)を後(あと)に木(き)の茂(しげ)みを指(さ)して姿(すがた)を隠(かく)したり。050数多(あまた)の従卒(じゆうそつ)共(ども)は鬼雲彦(おにくもひこ)が後(あと)を追(お)ひ、051山(やま)を越(こ)え谷(たに)を渉(わた)り鬼(おに)ケ城(じやう)山(ざん)の方面(はうめん)さして力(ちから)限(かぎ)りに遁走(とんそう)したりける。
052 鬼(おに)ケ城(じやう)山(ざん)の方面(はうめん)より亀彦(かめひこ)を先登(せんとう)に英子姫(ひでこひめ)、053悦子姫(よしこひめ)は宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ乍(なが)ら此方(こちら)に向(むか)つて前進(ぜんしん)し来(きた)る。054流石(さすが)の鬼雲彦(おにくもひこ)も前後(ぜんご)に敵(てき)を受(う)け死物狂(しにものぐるひ)の勇気(ゆうき)を現(あら)はし、055長刀(ちやうたう)を引(ひ)き抜(ぬ)いて亀彦(かめひこ)目蒐(めが)けて斬(き)つて掛(かか)るを、056心得(こころえ)たりと亀彦(かめひこ)は右(みぎ)に左(ひだり)に身(み)を躱(かは)し飛鳥(ひてう)の如(ごと)く挑(いど)み戦(たたか)へば鬼雲彦(おにくもひこ)は踵(きびす)を返(かへ)し、057もと来(き)し道(みち)を一目散(いちもくさん)に帰(かへ)り行(ゆ)く。058数多(あまた)の従卒(じゆうそつ)は吾(われ)後(おく)れじと三十六(さんじふろく)計(けい)の奥(おく)の手(て)を出(だ)して散(ち)り散(ち)りバラバラ、059足(あし)に任(まか)せて逃(に)げて行(ゆ)く。060何時(いつ)の間(ま)にやら鬼雲彦(おにくもひこ)は又(また)もや本城(ほんじやう)の門前(もんぜん)に帰(かへ)り来(き)たりぬ。061門内(もんない)には鬼雲姫(おにくもひめ)が叫(さけ)び声(ごゑ)、
062鬼雲姫『鬼雲彦(おにくもひこ)の夫(をつと)はあらざるか、063虎彦(とらひこ)、064亀彦(かめひこ)、065山姫(やまひめ)、066河姫(かはひめ)は何所(いづこ)ぞ』
067と身(み)を藻掻(もが)き声(こゑ)を限(かぎ)りに叫(さけ)び居(を)る。068鬼雲彦(おにくもひこ)は息(いき)も絶(た)え絶(だ)え門戸(もんこ)を敲(たた)き、
069鬼雲彦『ヤアさう言(い)ふ声(こゑ)は女房(にようばう)なるか、070俺(おれ)は無事(ぶじ)に此処(ここ)まで帰(かへ)つて来(き)たぞよ。071鬼武彦(おにたけひこ)は如何(どう)なつた、072白狐(びやくこ)の奴(やつ)等(ら)は何処(どこ)へ行(い)つた、073返答(へんたふ)せよ』
074と呶鳴(どな)り立(た)てる。075鬼雲姫(おにくもひめ)は門内(もんない)より、
076鬼雲姫『アヽ恋(こひ)しき吾(わが)夫(をつと)、077能(よ)くも無事(ぶじ)に帰(かへ)らせ給(たま)ひしぞ』
078と中(なか)より門(もん)を颯(さつ)と押(お)し開(ひら)き鬼雲彦(おにくもひこ)が手(て)を執(と)つて奥(おく)へ奥(おく)へと進(すす)み行(ゆ)く。079余(あま)りの嬉(うれ)しさに足許(あしもと)見(み)えず鬼雲姫(おにくもひめ)は夫(をつと)の手(て)を携(たづさ)へたる儘(まま)、080かねて穿(うが)ち置(お)いたる城内(じやうない)の井戸(ゐど)に夫婦(ふうふ)共々(ともども)にドスンと許(ばか)り陥(おちこ)みぬ。081大江山(おほえやま)の本城(ほんじやう)は敵(てき)も味方(みかた)も影(かげ)を隠(かく)し幽(かす)かに鼠(ねずみ)の泣(な)き声(ごゑ)のみ聞(きこ)え居(ゐ)る。082門前(もんぜん)には大江山(おほえやま)の山颪(やまおろし)、083岩(いは)も飛(と)べよと許(ばか)り吹(ふ)き荒(すさ)みゐる。084月(つき)は早(はや)西(にし)に没(ぼつ)し黒雲(こくうん)四辺(しへん)を包(つつ)み咫尺(しせき)を弁(べん)ぜず、085暗黒(あんこく)の帳(とばり)は下(おろ)されたり。086鬼雲彦(おにくもひこ)夫婦(ふうふ)は千仭(せんじん)の井戸(ゐど)の底(そこ)に数多(あまた)の蝮(まむし)と諸共(もろとも)に世間(せけん)知(し)らずの楽隠居(らくいんきよ)、087否(いな)蝮(まむし)地獄(ぢごく)の苦(くるし)き生活(せいくわつ)哀(あは)れなりける次第(しだい)なり。
088 かかる処(ところ)へ後(あと)追(お)ひ来(き)たる亀彦(かめひこ)はツカツカと門内(もんない)に進(すす)み入(い)り城内(じやうない)隈(くま)なく探(さが)せども人影(ひとかげ)さへも見(み)えざれば如何(いかが)せしやと三(さん)人(にん)は四辺(あたり)に心(こころ)を配(くば)りつつ窺(うかが)ふ折(をり)しも井戸(ゐど)の底(そこ)より怪(あや)しき叫(さけ)び声(ごゑ)、089はて訝(いぶ)かしやと手燭(てしよく)を点(とぼ)して覗(うかが)へば紛(まぎ)ふ方(かた)なき鬼雲彦(おにくもひこ)が夫婦(ふうふ)の者(もの)、090九死(きうし)一生(いつしやう)の此(この)苦(くるし)みを見(み)るに見(み)かね館(やかた)の井桁(ゐげた)に太縄(ふとなは)を打(う)ち掛(か)けツルツルと井中(ゐなか)に釣(つ)り下(おろ)せば、091鬼雲彦(おにくもひこ)夫婦(ふうふ)は無我(むが)夢中(むちう)になつて手早(てばや)く此(この)綱(つな)に跳(と)び付(つ)くや否(いな)や綱(つな)はツルツルと何物(なにもの)にか引(ひ)き上(あ)げられて再(ふたた)び旧(もと)の処(ところ)へ帰(かへ)り行(い)きぬ。092暗(やみ)を通(とほ)して聞(きこ)ゆる三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)、093鬼雲彦(おにくもひこ)夫婦(ふうふ)は叶(かな)はぬ時(とき)の神頼(かみだの)み、094婆羅門(ばらもん)教(けう)の神歌(しんか)を唱(とな)へ声(こゑ)を限(かぎ)りに哀願(あいぐわん)する。095一方(いつぱう)鬼武彦(おにたけひこ)は先(さき)に据(す)ゑ置(お)きたる千引(ちびき)の岩(いは)を取(と)り除(のぞ)き岩蓋(いはぶた)をサツと開(ひら)けば待(ま)ちかねたる如(ごと)く現(あら)はれ来(きた)る鬼彦(おにひこ)、096鬼虎(おにとら)、097熊鷹(くまたか)、098石熊(いしくま)其(その)他(た)数多(あまた)の帰順(きじゆん)せし人々(ひとびと)は、099枯木(かれき)に花(はな)の咲(さ)きしが如(ごと)く喜(よろこ)び勇(いさ)み、100大江山(おほえやま)の本城(ほんじやう)目蒐(めが)けて帰(かへ)り来(き)たりぬ。
101 東(あづま)の空(そら)はホンノリと白(しら)み初(そ)め、102明(あ)けの鵲(からす)がカアカアと啼(な)き初(はじ)めたり。103漸(やうや)く山上(さんじやう)の鬼雲彦(おにくもひこ)が門前(もんぜん)に立(た)ち帰(かへ)れば亀彦(かめひこ)、104英子姫(ひでこひめ)、105悦子姫(よしこひめ)の三(さん)人(にん)に取(と)り巻(ま)かれ、106鬼雲彦(おにくもひこ)夫婦(ふうふ)は何事(なにごと)か説諭(せつゆ)を受(う)けつつありぬ。107鬼彦(おにひこ)初(はじ)め一同(いちどう)は亀彦(かめひこ)一行(いつかう)に一礼(いちれい)し天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)を声(こゑ)を揃(そろ)へて宣(の)りつれば、108鬼雲彦(おにくもひこ)夫婦(ふうふ)は居(ゐ)たたまらず館(やかた)を捨(す)てて一目散(いちもくさん)に雲(くも)を霞(かすみ)と駆(か)け出(だ)し伊吹山(いぶきやま)の方面(はうめん)を目蒐(めが)けて天(あま)の岩船(いはふね)に手早(てばや)く打乗(うちの)り夫婦(ふうふ)諸共(もろとも)中空(ちうくう)を翔(かけ)り行(ゆ)く。
109 亀彦(かめひこ)、110英子姫(ひでこひめ)、111悦子姫(よしこひめ)は、112鬼武彦(おにたけひこ)の神(かみ)を言霊(ことたま)を以(もつ)てさし招(まね)けば忽(たちま)ち昼(ひる)の天(てん)を掠(かす)め白煙(はくえん)となりて南方(なんぱう)より現(あら)はれ来(きた)り忽(たちま)ち三(さん)人(にん)の前(まへ)に英姿(えいし)を現(あら)はしたり。
113亀彦(かめひこ)『ヤア鬼武彦(おにたけひこ)殿(どの)、114貴下(きか)の活動(くわつどう)天晴(あつぱ)れ天晴(あつぱ)れ、115吾(われ)は之(これ)より聖地(せいち)に向(むか)つて再(ふたた)び進(すす)まむ。116貴下(きか)は此処(ここ)に留(とど)まり給(たま)ひて、117旭(あさひ)、118高倉(たかくら)、119月日(つきひ)の諸使(しよし)と共(とも)に悪魔(あくま)征服(せいふく)の守護(しゆご)をなし給(たま)へ』
120鬼武彦(おにたけひこ)『委細(ゐさい)承知(しようち)仕(つかまつ)る、121当山(たうざん)は天下(てんか)の邪神(じやしん)集(あつ)まり来(きた)る霊界(れいかい)の四辻(よつつじ)なれば国武彦(くにたけひこ)の大神(おほかみ)、122以前(いぜん)の如(ごと)く国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)と現(あら)はれ給(たま)ひ、123神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)、124瑞(みづ)の御霊(みたま)と現(あら)はれて、125神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の暁(あかつき)まで代(かは)る代(がは)る当山(たうざん)を守護(しゆご)し奉(たてまつ)らむ、126吾々(われわれ)此処(ここ)にあらむ限(かぎ)りは豊葦原(とよあしはら)の中津国(なかつくに)なる自転倒(おのころ)島(じま)は先(ま)づ先(ま)づ安心(あんしん)なされ度(た)し、127貴下(きか)は素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)様(さま)の御(おん)後(あと)に従(したが)ひ天下(てんか)に蟠(わだかま)る八岐(やまた)の大蛇(をろち)を言向(ことむ)けて神政(しんせい)復古(ふくこ)の神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)されよ、128万一(まんいち)御(おん)身(み)の上(うへ)に危急(ききふ)の事(こと)あらば土地(とち)の遠近(をちこち)を問(と)はず、129鬼武彦(おにたけひこ)、130旭(あさひ)、131高倉(たかくら)、132月日(つきひ)の名(な)を呼(よ)ばせ給(たま)へば、133時刻(じこく)を移(うつ)さず出張(しゆつちやう)応援(おうゑん)仕(つかまつ)らむ』
134 亀彦(かめひこ)、135英子姫(ひでこひめ)、136悦子姫(よしこひめ)は一度(いちど)に満足(まんぞく)の意(い)を表(へう)し鬼武彦(おにたけひこ)の千変(せんぺん)万化(ばんくわ)の神業(かむわざ)を激賞(げきしやう)し此処(ここ)に目出度(めでた)く袂(たもと)を分(わか)ち東(ひがし)を指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
137(大正一一・四・一四 旧三・一八 北村隆光録)
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