霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 空籠(からかご)〔五九七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻 篇:第1篇 神軍霊馬 よみ(新仮名遣い):しんぐんれいば
章:第7章 空籠 よみ(新仮名遣い):からかご 通し章番号:597
口述日:1922(大正11)年04月14日(旧03月18日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
鬼彦らはすっかり改心して、神素盞嗚大神の前に感謝を述べた。しかし、亀彦が大江山本城に進むため、このまま囚人の駕籠に乗せて本城まで運ぶように頼むと、多勢に無勢を心配して、進軍を思い直すようにと忠告した。
そこへ、本城から鬼雲彦の手下らが迎え出てきた。すると不思議にもそれまで鬼彦らと話をしていた亀彦ら囚われの一行は、姿が消えてしまった。
しかし鬼彦は、迎えに来た鬼雲彦の手下らに対して、自分たちは三五教に改心したから、そう鬼雲彦に伝えるように、と述べて返してしまう。
そこへ、二人の男女が現れて、鬼彦を挑発すると、地下の洞窟に誘い入れた。しかし鬼武彦が現れて、洞窟の入口に岩で蓋をし、鬼彦一行と怪しい男女の出口をふさいでしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-06-18 15:18:25 文字数:3687 OBC :rm1607
愛善世界社版:90頁 八幡書店版:第3輯 433頁 修補版: 校定版:94頁 普及版:38頁 初版: ページ備考:愛世版・校定版・普及版ともに「籠」を使っている。
001 秋山彦(あきやまひこ)が心(こころ)籠(こ)めたる宣伝歌(せんでんか)に鬼彦(おにひこ)、002鬼虎(おにとら)、003石熊(いしくま)、004熊鷹(くまたか)其(その)他(た)の面々(めんめん)は心(こころ)の底(そこ)より前非(ぜんぴ)を悔(く)い、005一行(いつかう)の前(まへ)に鰭伏(ひれふ)して両手(りやうて)を合(あは)せ、006覚束(おぼつか)なき言霊(ことたま)の息(いき)を固(かた)めて秋山彦(あきやまひこ)の後(あと)につき天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、007宣伝歌(せんでんか)を唱(とな)へ帰順(きじゆん)の意(い)を表(へう)したりけり。
008鬼彦(おにひこ)『素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)様(さま)を始(はじ)め御(ご)一同(いちどう)の方々(かたがた)に御(お)礼(れい)申(まを)し上(あ)げます、009吾々(われわれ)の如(ごと)き悪魔(あくま)の容器(いれもの)赦(ゆる)し難(がた)き罪人(ざいにん)の危難(きなん)をお救(すく)ひ下(くだ)され、010其(その)上(うへ)にも大慈(だいじ)大悲(だいひ)の大神(おほかみ)の大御心(おほみこころ)を以(もつ)て身体(しんたい)不自由(ふじゆう)の吾々(われわれ)をお助(たす)け下(くだ)されし御(おん)志(こころざし)何(なん)と御(お)礼(れい)を申(まを)し上(あ)げて宜(よろ)しいやら、011今後(こんご)は心(こころ)の底(そこ)より悔(く)い改(あらた)めます、012サアサ何卒(なにとぞ)一刻(いつこく)も早(はや)く此(この)場(ば)を御(お)立退(たちの)き下(くだ)さいませ、013此(この)魔窟(まくつ)ケ原(はら)をズツト奥(おく)へ進(すす)みますれば愈(いよいよ)鬼雲彦(おにくもひこ)の岩窟(いはや)の棲家(すみか)、014又(また)立派(りつぱ)なる本城(ほんじやう)が御座(ござ)いまする、015其処(そこ)へ参(まゐ)れば数多(あまた)の邪人(まがびと)共(ども)手具脛(てぐすね)引(ひ)いて待(ま)ち構(かま)へ居(を)れば、016如何(いか)に勇猛(ゆうまう)なる貴神(あなた)様(さま)も多少(たせう)御(お)苦(くるし)みの事(こと)と存(ぞん)じますれば、017吾々(われわれ)の言葉(ことば)をお用(もち)ひ下(くだ)さいまして、018何卒(なにとぞ)此(この)場(ば)より御(お)逃(のが)れ下(くだ)さいますよう』
019と真心(まごころ)を面(おもて)に表(あら)はして忠告(ちゆうこく)する。020亀彦(かめひこ)は揶揄(からかひ)半分(はんぶん)に、
021亀彦『ホー鬼彦(おにひこ)の大将(たいしやう)、022随分(ずゐぶん)智慧(ちゑ)が能(よ)く廻(まは)るぢやないか、023親切(しんせつ)ごかしに吾々(われわれ)の勇将(ゆうしやう)を撃退(げきたい)し暫時(ざんじ)の猶予(いうよ)を貪(むさぼ)らむとする猾(ずる)い計略(けいりやく)、024今(いま)此処(ここ)に於(おい)て吾(われ)ら一行(いつかう)を苦(くるし)めむとせし処(ところ)、025天罰(てんばつ)立所(たちどころ)に致(いた)り過(あやま)つて味方(みかた)の石弾(いしだま)、026征矢(そや)に中(あた)り零敗(ゼロはい)の大見当(おほあて)違(ちが)ひを演(えん)じ懲(こ)り懲(こ)りしたと見(み)えるワイ。027然(しか)し乍(なが)ら吾々(われわれ)は決(けつ)して婆羅門(ばらもん)教(けう)の如(ごと)く、028否(いな)鬼雲彦(おにくもひこ)の如(ごと)く善(ぜん)の仮面(かめん)を被(かぶ)り天下(てんか)を攪乱(かくらん)せむとするものに非(あら)ず、029之(これ)より鬼雲彦(おにくもひこ)に面会(めんくわい)し彼(かれ)をして汝(なんぢ)等(ら)の如(ごと)く心(こころ)の底(そこ)より悔(く)い改(あらた)めしめねばならぬ、030今(いま)よりは吾々(われわれ)一行(いつかう)を旧(もと)の如(ごと)くに高手(たかて)小手(こて)に縛(いまし)め、031御(ご)苦労(くらう)乍(なが)ら、032此(この)網代籠(あじろかご)に乗(の)せて担(かつ)いで行(い)つて呉(く)れよ』
033鬼彦(おにひこ)『イヤ滅相(めつさう)な、034貴神(あなた)等(がた)の如(ごと)きお方(かた)を本城(ほんじやう)へ迎(むか)へ入(い)れるが最後(さいご)、035天地(てんち)転動(てんどう)の大騒動(おほさうどう)、036大江山(おほえやま)の城内(じやうない)は乱離(らんり)骨灰(こつぱい)、037落花(らくくわ)微塵(みぢん)の惨状(さんじやう)を演出(えんしゆつ)するは明鏡(めいきやう)の物(もの)を照(てら)して余蘊(ようん)なきが如(ごと)しであります、038何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)此(この)場(ば)をお引(ひ)き取(と)り下(くだ)さいませ』
039亀彦(かめひこ)『貴様(きさま)は矢(や)つ張(ぱ)り鬼雲彦(おにくもひこ)の贔屓(ひいき)を致(いた)して居(を)るな、040ヤア感心(かんしん)々々(かんしん)、041一旦(いつたん)大将(たいしやう)と恃(たの)みた者(もの)に対(たい)してそれ丈(だ)けの心遣(こころづか)ひを致(いた)すは人間(にんげん)の真心(まごころ)の発露(はつろ)である。042併(しか)し乍(なが)ら此処迄(ここまで)思(おも)ひ立(た)つたる吾々(われわれ)の心中(しんちゆう)、043中途(ちうと)に駒(こま)の頭(かしら)を立(た)て直(なほ)す事(こと)は男子(だんし)として忍(しの)び難(がた)き処(ところ)だ、044如何(どう)しても聞(き)かねば吾々(われわれ)は之(これ)より強行(きやうかう)的(てき)行脚(あんぎや)を続(つづ)け大江山(おほえやま)の本城(ほんじやう)に立向(たちむか)ふであらう』
045とそろそろ歩(あゆ)み初(はじ)めたれば、046鬼彦(おにひこ)は泣声(なきごゑ)を出(だ)し、
047鬼彦『モシモシ、048タヽヽヽ大変(たいへん)で御座(ござ)います、049如何(いか)に貴神(あなた)方(がた)が英雄(えいゆう)なればとて多勢(たぜい)に対(たい)する無勢(ぶぜい)、050御(ご)苦戦(くせん)の程(ほど)お察(さつ)し申(まを)す』
051と真心(まごころ)より止(と)める。052部下(ぶか)の一同(いちどう)は驚異(きやうい)の面相(めんさう)を陳列(ちんれつ)して鬼彦(おにひこ)の顔(かほ)をうち衛(まも)り居(ゐ)る。
053亀彦(かめひこ)『何(なん)だ、054女々(めめ)しい事(こと)を言(い)ふな、055貴様(きさま)も鬼雲彦(おにくもひこ)の左守(さもり)と迄(まで)言(い)はれた男(をとこ)じやないか、056それに何(なん)ぞや、057亡国(ばうこく)的(てき)哀音(あいおん)を立(た)て絶望(ぜつばう)的(てき)悲調(ひてう)の涙(なみだ)を湛(たた)へて吾々(われわれ)を止(とど)めむとするは其(その)意(い)を得(え)ない、058之(これ)には何(なに)か深(ふか)き謀計(ぼうけい)のある事(こと)ならむ、059吾(われ)等(ら)一行(いつかう)は自由(じいう)自在(じざい)に山中(さんちゆう)徒歩(とほ)の権利(けんり)を有(いう)す、060サアサ御(ご)一同(いちどう)様(さま)、061進(すす)みて参(まゐ)りませう。062仮令(たとへ)鬼雲彦(おにくもひこ)百万(ひやくまん)の大軍(たいぐん)を擁(よう)し防(ふせ)ぎ戦(たたか)うとも此(この)亀彦(かめひこ)が只(ただ)一人(ひとり)あれば沢山(たくさん)なり。063強風(きやうふう)の砂塵(さぢん)を捲(ま)き上(あ)ぐる如(ごと)く、064吾(わが)一言(いちごん)の息吹(いぶき)によつて根底(こんてい)より悔(く)い改(あらた)めしめ、065悪魔(あくま)の巣窟(さうくつ)をして天国(てんごく)楽園(らくゑん)と化(くわ)せしめむ。066ヤア面白(おもしろ)し、067勇(いさ)ましし』
068と独語(ひとりご)ちつつ肩(かた)を怒(いか)らし気焔(きえん)万丈(ばんぢやう)当(あた)るべからず、069足(あし)踏(ふ)み鳴(な)らし雄猛(をたけ)びする。
070鬼彦(おにひこ)『亀彦(かめひこ)様(さま)、071大変(たいへん)な勢(いきほひ)でメートルをお上(あ)げになつて居(を)られますな』
072亀彦(かめひこ)『オウさうだ、073敵(てき)の敗亡(はいばう)目前(もくぜん)にメートルだ、074某(それがし)の前進(ぜんしん)を妨(さまた)げむとしてメートルの事(こと)致(いた)すと量見(りやうけん)ならぬぞ、075ジヤンジヤ、076ヒエールの某(それがし)を何(なん)と心得(こころえ)てるか』
077鬼彦(おにひこ)『ジヤンジヤ、078ヒエールか、079ジヤンジヤ馬(うま)か存(ぞん)じませぬが能(よ)う貴下(あなた)はジヤンジヤを捏(こ)ねるお方(かた)ですな』
080亀彦(かめひこ)『エーエ、081ジヤンジヤマ臭(くさ)い、082愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると折角(せつかく)上(のぼ)つたメートルがヒエールだ、083サアサ行(ゆ)かう』
084と又(また)もや行(ゆ)かむとする。
085鬼彦(おにひこ)『アヽア、086行(い)つて下(くだ)さるなと親切(しんせつ)に申(まを)し上(あ)げても貴下(あなた)は何処(どこ)までも行(ゆ)かむとする御(おん)気色(けしき)、087モウ斯(こ)うなつてはゆかん乍(なが)らゆかんともする事(こと)が出来(でき)ませぬ哩(わい)』
088亀彦(かめひこ)『エ、089洒落(しやれ)どころかい、090愚図(ぐづ)々々(ぐづ)吐(ぬか)さずと此(この)方(はう)を縛(しば)り上(あ)げて本城(ほんじやう)へ担(かつ)ぎ込(こ)まぬか』
091鬼彦(おにひこ)『ソヽヽヽそれが大変(たいへん)で御座(ござ)います、092今迄(いままで)の私(わたくし)なれば貴下(あなた)等(がた)が何程(なにほど)行(ゆ)かむと仰(おつ)しやつても連(つ)れて行(い)つて手柄(てがら)に致(いた)しまするが、093最早(もはや)天地(てんち)の因果(いんぐわ)を悟(さと)り悪(あく)を悔(く)い改(あらた)めた上(うへ)は、094如何(どう)して之(これ)が黙(だま)つて居(を)られませう、095人(ひと)の性(せい)は善(ぜん)で御座(ござ)います、096決(けつ)して悪(わる)い事(こと)は申(まを)しませぬ』
097亀彦(かめひこ)『ヤア仕方(しかた)のない弱虫(よわむし)ばかりだナア、098鬼雲彦(おにくもひこ)もコンナ連中(れんちう)を養(やしな)つて居(を)れば並大抵(なみたいてい)の事(こと)でもあるまい、099思(おも)へば思(おも)へば鬼雲彦(おにくもひこ)の御(ご)心中(しんちう)お可憐相(かはいさう)である哩(わい)』
100 斯(か)かる処(ところ)へ二本(にほん)の角(つの)をニユツと生(はや)した鬘(かづら)を被(かぶ)つた五(ご)人(にん)の男(をとこ)、101ノソリノソリと手槍(てやり)を提(ひつさ)げ、102此(この)場(ば)に現(あら)はれ来(きた)り、
103男(をとこ)『ヤア、104鬼彦(おにひこ)の大将(たいしやう)、105お手柄(てがら)お手柄(てがら)、106サア之(これ)から吾々(われわれ)が御(ご)案内(あんない)申(まを)さう、107鬼雲彦(おにくもひこ)の御(おん)大将(たいしやう)様子(やうす)如何(いか)にと首(くび)を長(なが)うしてお待(ま)ちかね、108嘸(さぞ)お骨折(ほねをり)で御座(ござ)つたらう』
109と言(い)ひ乍(なが)ら駕籠(かご)の中(なか)を一々(いちいち)覗(のぞ)きこみ、
110男(をとこ)『ヤア何(なん)だ、111空籠(からかご)じやないか、112素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)其(その)他(た)は如何(どう)なされた、113首尾(しゆび)克(よ)う生擒(いけど)つたとの御(ご)注進(ちうしん)ではなかつたか』
114 鬼虎(おにとら)、115熊鷹(くまたか)、116石熊(いしくま)、117鬼彦(おにひこ)は四辺(あたり)を見(み)れば此(こ)は如何(いか)に、118今迄(いままで)盛(さかん)にメートルを上(あ)げて居(ゐ)た亀彦(かめひこ)の姿(すがた)も素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)、119国武彦(くにたけひこ)其(その)他(た)一行(いつかう)の影(かげ)も形(かたち)もなくなつて居(ゐ)る。
120鬼彦(おにひこ)『ヤア、121此奴(こいつ)は不思議(ふしぎ)だ、122今迄(いままで)此(この)網代籠(あじろかご)に乗(の)せて来(き)た一同(いちどう)の神人(しんじん)、123ではない囚人(めしうど)何処(どこ)へ姿(すがた)を隠(かく)しよつたか、124合点(がてん)の往(ゆ)かぬ事(こと)である哩(わい)』
125熊鷹(くまたか)『サア此処(ここ)は名(な)に負(お)ふ魔窟(まくつ)ケ原(はら)、126目(め)に見(み)えない悪魔(あくま)が出(で)て来(き)よつて吾々(われわれ)が知(し)らぬ間(あひだ)に喰(く)つて仕舞(しま)つたのか、127但(ただし)は鬼雲彦(おにくもひこ)の大将(たいしやう)の威勢(ゐせい)に恐(おそ)れて自然(しぜん)消滅(せうめつ)致(いた)したか、128何(なん)に付(つ)けても合点(がてん)の往(ゆ)かぬ事(こと)である哩(わい)。129ヤア五(ご)人(にん)の方々(かたがた)、130一(いち)時(じ)も早(はや)く本城(ほんじやう)へ立(た)ち帰(かへ)り此(この)由(よし)早(はや)く注進(ちうしん)致(いた)すな』
131 五(ご)人(にん)の中(なか)の一人(ひとり)、132目(め)を円(まる)くし、
133男(をとこ)『ヤア何(なん)と仰(あふ)せられます、134一(いち)時(じ)も早(はや)く注進(ちうしん)致(いた)すなとは合点(がてん)が承知(しようち)仕(つかまつ)らぬ』
135熊鷹(くまたか)『俺(おれ)は昨日(きのふ)迄(まで)の熊鷹(くまたか)ではない、136今日(けふ)は立派(りつぱ)な三五教(あななひけう)の信者(しんじや)であるぞ、137之(これ)より本城(ほんじやう)へ逆襲(ぎやくしふ)なし鬼雲彦(おにくもひこ)が素首(そつくび)捻切(ねぢき)り引(ひ)きちぎり八岐(やまた)大蛇(をろち)の身魂(みたま)を片(かた)つ端(ぱし)より言向和(ことむけやは)し、138勝鬨(かちどき)あげるは瞬(またた)く間(うち)だ、139汝(なんぢ)は一刻(いつこく)も早(はや)く此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)り吾々(われわれ)が寄(よ)せ手(て)の軍勢(いくさ)に向(むか)つて防戦(ばうせん)の用意(ようい)オサオサ怠(おこた)るな』
140 五(ご)人(にん)は一度(いちど)にいぶかり乍(なが)ら、
141五人『ソヽヽヽそれは真実(しんじつ)で御座(ござ)るか』
142熊鷹(くまたか)『真偽(しんぎ)は今(いま)に分(わか)るであらう、143汝(なんぢ)は早(はや)く此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)れ』
144 この権幕(けんまく)に五(ご)人(にん)は互(たがひ)に顔(かほ)見合(みあは)せて、
145五人『何(なん)だ、146鬼彦(おにひこ)の大将(たいしやう)と言(い)ひ、147熊鷹(くまたか)の阿兄(あにい)と言(い)ひ、148其(その)他(た)一同(いちどう)の顔(かほ)の紐(ひも)は薩張(さつぱり)解(ほど)けて仕舞(しま)ひ、149今迄(いままで)の鬼面(おにづら)は忽(たちま)ち変(へん)じて光(ひかり)眩(まばゆ)き女神(めがみ)の様(やう)な顔色(かほいろ)に堕落(だらく)して仕舞(しま)ひよつた、150ハテ困(こま)つた事(こと)だワイ、151善(ぜん)の道(みち)へ堕落(だらく)するとコンナ腰抜(こしぬ)けに成(な)つて仕舞(しま)ふものかなア』
152 五(ご)人(にん)は踵(きびす)を返(かへ)し一目散(いちもくさん)に彼方(かなた)を指(さ)して逃(に)げ帰(かへ)る。153鬼彦(おにひこ)は衝立(つつた)ち上(あが)り三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ終(をは)り、
154鬼彦『サア一同(いちどう)の方々(かたがた)、155如何(いかが)で御座(ござ)る、156何(なん)だか拍子抜(へうしぬ)けがした様(やう)には御座(ござ)らぬか』
157一同(いちどう)『左様(さやう)で御座(ござ)る、158折角(せつかく)張(は)り詰(つ)めた今迄(いままで)の悪心(あくしん)は水(みづ)の中(なか)で屁(へ)を放(ひ)つた様(やう)にブルブルと泡(あわ)となつて消(き)え失(う)せました、159誰(たれ)も彼(かれ)もアルコールの脱(ぬ)けた甘酒(あまざけ)の様(やう)になつて仕舞(しま)つた、160亀彦(かめひこ)が意見(いけん)をして呉(く)れたが之(これ)も余(あま)り拠(よ)り所(どころ)が無(な)い、161甘(うま)い様(やう)な辛(から)い様(やう)な、162厳(きび)しい様(やう)な寛(ゆるや)かな様(やう)な訳(わけ)の分(わか)らぬ言葉(ことば)であつた。163丁度(ちやうど)甘酒(あまざけ)に、164生姜(しやうが)の汁(しる)を入(い)れて飲(の)む様(やう)なものだ、165親爺(おやぢ)の強意見(こわいけん)を聞(き)き乍(なが)らソツとお金(かね)を貰(もら)ふ様(やう)な心持(こころもち)だつた、166サアサ之(これ)から入信(にふしん)の記念(きねん)として大江山(おほえやま)の本城(ほんじやう)に駆(か)け向(むか)ひ鬼雲彦(おにくもひこ)の素首(そつくび)、167オツト、168ドツコイ悪神(あくがみ)の魂(たま)を抜(ぬ)いて助(たす)けてやらねばなるまい』
169 一同(いちどう)拍手(はくしゆ)して賛成(さんせい)の意(い)を表(へう)し、170鬼彦(おにひこ)を先頭(せんとう)に宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひつつ、171凩(こがらし)荒(すさ)ぶ荒野原(あれのはら)や谷川(たにがは)を右(みぎ)に左(ひだり)に跳(と)び越(こ)え進(すす)む折(をり)しも、172忽然(こつぜん)として叢(くさむら)の中(なか)より現(あら)はれ出(い)でたる男女(だんぢよ)の二人(ふたり)[※高姫と青彦]、173鬼彦(おにひこ)一行(いつかう)の姿(すがた)を目蒐(めが)けて冷(ひや)やかに笑(わら)ひ乍(なが)ら、
174男女二人(高姫、青彦)『ヤア貴方(あなた)は大江山(おほえやま)の英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)と聞(きこ)えたる御(おん)方(かた)、175然(しか)るに今日(けふ)のお姿(すがた)は如何(どう)で御座(ござ)る。176薩張(さつぱり)台(だい)なしでは御座(ござ)らぬか、177玉(たま)の落(お)ちたラムネの様(やう)な判然(はつきり)致(いた)さぬ其(その)顔付(かほつき)、178狐(きつね)にでも欺(だま)されなさつたか、179イヤ、180エ、181素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)の悪神(あくがみ)の口車(くちぐるま)に乗(の)せられて胆(きも)をとられ腰(こし)を抜(ぬ)かしたのではあるまいか、182何(いづ)れにしても合点(がてん)の往(ゆ)かぬ耄碌姿(まうろくすがた)、183耄碌(まうろく)魂(だましひ)、184脆(もろ)くも敵(てき)に翻弄(ほんろう)されてノソノソと帰(かへ)り来(く)るとは言(い)ひ甲斐(がひ)なき鬼彦(おにひこ)一同(いちどう)の面々(めんめん)、185鬼雲彦(おにくもひこ)の大将(たいしやう)に於(お)かせられても嘸々(さぞさぞ)お喜(よろこ)び遊(あそ)ばす事(こと)であらう、186持(も)つべきものは家来(けらい)なりけりと団栗(どんぐり)の様(やう)な涙(なみだ)を流(なが)してお喜(よろこ)びになるであらう、187アハヽヽヽ、188オホヽヽヽ』
189と笑(わら)ひ転(こ)ける。190鬼彦(おにひこ)はムツト顔(がほ)にて、
191鬼彦『エー、192何処(どこ)の何奴(どやつ)か知(し)らぬが吾々(われわれ)は吾々(われわれ)としての自由(じいう)の権利(けんり)を実行(じつかう)したのだ、193汝(なんぢ)等(ら)の如(ごと)きものの容喙(ようかい)すべき処(ところ)でない、194愚図(ぐづ)々々(ぐづ)吐(ぬか)すと言霊(ことたま)の発射(はつしや)を致(いた)してやらうか。195蠑螺(さざえ)の如(ごと)き鉄拳(てつけん)、196否(いな)牡丹餅(ぼたもち)で貴様(きさま)の頬辺(ほつぺた)を殴(なぐ)つてやらうか』
197男女二人(高姫、青彦)『アハヽヽヽ、198オホヽヽヽ、199ヤア皆(みな)の方々(かたがた)、200此方(こちら)へ御座(ござ)れ、201サアサ早(はや)く』
202と岩(いは)をクレツと剥(めく)れば、203中(なか)には階段(かいだん)がついて居(ゐ)る。
204鬼彦(おにひこ)『ヤア何時(いつ)も吾々(われわれ)のお通(とほ)り路(みち)だがコンナ処(ところ)に穴(あな)があるとは今迄(いままで)知(し)らなかつた。205こいつは妙(めう)だ、206ヤイ鬼虎(おにとら)、207熊鷹(くまたか)、208石熊(いしくま)其(その)他(た)の面々(めんめん)一同(いちどう)、209見学(けんがく)の為(た)めに岩窟(がんくつ)の探険(たんけん)と出掛(でかけ)ようではないか』
210 鬼虎(おにとら)は、
211鬼虎『面白(おもしろ)からう』
212と先(さき)に立(た)つて下(くだ)り行(ゆ)く。213数百(すうひやく)人(にん)の荒男(あらをとこ)は残(のこ)らず好奇心(かうきしん)に駆(か)られて岩窟(がんくつ)の中(なか)にガラガラツと田螺(たにし)の殻(から)を山(やま)の上(うへ)から打(ぶ)ちあけた様(やう)な勢(いきほひ)で一人(ひとり)も残(のこ)らず転(ころ)げ込(こ)むだ。214忽然(こつぜん)として現(あら)はれたる鬼武彦(おにたけひこ)は岩石(いはいし)の蓋(ふた)をピタリと閉(し)め其(その)上(うへ)に千引(ちびき)の岩(いは)をドスンと載(の)せ、
215鬼武彦『アハヽヽヽ、216マア之(これ)で暫(しばら)くは安心(あんしん)だワイ』
217(大正一一・四・一四 旧三・一八 北村隆光録)
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