霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 神集(かうづ)(たま)〔六〇三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻 篇:第2篇 深遠微妙 よみ(新仮名遣い):しんえんびみょう
章:第13章 神集の玉 よみ(新仮名遣い):こうづのたま 通し章番号:603
口述日:1922(大正11)年04月15日(旧03月19日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
亀彦、英子姫、悦子姫は秋山彦の館に戻ってきたが、門番らは宣伝使は鍵盗人に違いない、と言い張って中に入れず、ちょっとした騒ぎになっていた。
秋山彦はそこへやってきて、亀彦らに宝庫の鍵が盗まれた経緯を知らせた。亀彦は鬼武彦に祈願をこらすと、鬼武彦はたちまち現れた。そして神力で、高姫らが冠島・沓島に向かって漕ぎ出していることを突き止めた。
さっそく、鬼武彦と亀彦は、秋山彦の家の郎党十数人を引率して、高姫を追いかけた。
高姫はすでに、冠島に上陸して、素盞嗚尊が秘め置いた如意宝珠を取り出し、木の根元に埋めて隠していた。
そして鰐に守られた沓島に近づき、鰐の背を渡って上陸した。そして頂上の岩窟に入り、金剛不壊の宝玉を盗ろうとしたが、この宝玉は巌に密着していてなかなか取れない。
そうしているうちに鬼武彦らは追いついて、岩窟に蓋をして、高姫と青彦を閉じ込めてしまった。
高姫と鬼武彦・亀彦は交渉の末、如意宝珠の玉を返す代わりに、岩窟から高姫らを出すこととなった。
高姫は冠島で如意宝珠の玉を隠し場所から掘り出すと、しっかりと握って、田辺の港で返すと言って船に乗り込んだ。
この如意宝珠の玉は、一名神集の玉と言い、近代の蓄音機の玉のような活動をする宝玉である。現在はウラナイ教の末流の悪神の手によって、ドイツのある地点に深く秘蔵されているという。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:ドイツ(独逸) データ凡例: データ最終更新日:2021-01-27 17:26:42 OBC :rm1613
愛善世界社版:157頁 八幡書店版:第3輯 458頁 修補版: 校定版:161頁 普及版:70頁 初版: ページ備考:
001 秋山館(あきやまやかた)門番(もんばん)なる銀公(ぎんこう)002加米公(かめこう)両人(りやうにん)由良(ゆら)(みなと)立出(たちいで)船出(ふなで)用意(ようい)(いた)さむと表門(おもてもん)()()す。003(をり)から(あら)はれし一男(いちなん)二女(にぢよ)宣伝使(せんでんし)004宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)悠々(いういう)として門内(もんない)()らむとする。005銀公(ぎんこう)006加米公(かめこう)大手(おほて)(ひろ)げて、
007銀公、加米公(その)(はう)亀彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)008鍵盗人(かぎぬすびと)同類(どうるゐ)であらう。009もうもうもう宣伝使(せんでんし)()()いても(いや)になる(わい)010最前(さいぜん)()やがつた二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)()が、011大切(たいせつ)なる(かぎ)ちよろまかして裏門(うらもん)より逃失(にげう)せやがつた。012それが()めに当館(たうやかた)(うち)(うへ)(した)への大騒動(おほさうどう)だ、013貴様(きさま)ももう駄目(だめ)だ、014肝腎要(かんじんかなめ)(かぎ)(さき)宣伝使(せんでんし)()つて(かへ)つた、015神秘(しんぴ)(かぎ)(ぬす)まれ当館(たうやかた)空前(くうぜん)絶後(ぜつご)大混雑(だいこんざつ)016(これ)から沢山(たくさん)番犬(ばんけん)でもかり(あつ)めてかぎ(さが)させる(ところ)だ、017貴様(きさま)()加減(かげん)(かへ)れ』
018亀彦(かめひこ)(これ)心得(こころえ)其方(そなた)言葉(ことば)019吾々(われわれ)(たい)盗人(どろぼう)(あつか)ひをなさるのか』
020加米公(かめこう)(きま)つた(こと)だよ、021宣伝使(せんでんし)()へば鍵盗人(かぎぬすびと)代名詞(だいめいし)だ、022(とほ)(こと)(まか)りならぬ、023貴様(きさま)(やう)(もの)(おく)へふみ()まさうものなら、024それこそ大変(たいへん)だ』
025亀彦(かめひこ)一応(いちおう)合点(がてん)()かぬ(なんじ)言葉(ことば)026二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)とはウラナイ(けう)宣伝使(せんでんし)であらう、027吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)だ、028神秘(しんぴ)(かぎ)(あた)へる(もの)だ』
029銀公(ぎんこう)(なに)030神秘(しんぴ)(かぎ)(あた)へるとな、031サア(はや)(その)(かぎ)()せて()れ、032(かぎ)(わた)せば通行(つうかう)(ゆる)して()らう、033宣伝使(せんでんし)()へば何奴(どいつ)此奴(こいつ)(みんな)鍵盗人(かぎぬすびと)(やう)()がする、034貴様(きさま)何処(どこ)神秘(しんぴ)(かぎ)とやらを(ぬす)みて()たのだ、035サアサ(はや)()(わた)せ』
036亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、037(わけ)(わか)からぬ門番(もんばん)だな、038サアサ英子姫(ひでこひめ)さま悦子姫(よしこひめ)さま(まゐ)りませう』
039()かむとする。040銀公(ぎんこう)041加米公(かめこう)大声(おほごゑ)をあげて呶鳴(どな)()てる。042(この)(こゑ)()きつけたる秋山彦(あきやまひこ)何事(なにごと)ならむと(おもて)()()(いた)()れば亀彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)なりけり。
043秋山彦(あきやまひこ)『ア、044(これ)(これ)亀彦(かめひこ)(さま)045英子姫(ひでこひめ)(さま)046悦子姫(よしこひめ)(さま)()()らせられました。047(すこ)(ばか)取込(とりこみ)出来(でき)ましたので大騒(おほさわ)ぎを(いた)して()ります、048素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)よりお(あづか)(まを)した大切(たいせつ)なる玉鍵(たまかぎ)何者(なにもの)かに(ぬす)まれ、049唯今(ただいま)(しもべ)(ども)四方(しはう)(つか)はし探索(たんさく)最中(さいちう)御座(ござ)います』
050亀彦(かめひこ)『ア、051それで(わか)りました、052門番(もんばん)(ども)(わたくし)(たい)鍵盗人(かぎぬすびと)だとか(なん)だとか大変(たいへん)(こと)()つて()ました、053(しか)しそれは大事(おほごと)ですな、054(なに)心当(こころあた)りは御座(ござ)いますまいか』
055秋山彦(あきやまひこ)先程(さきほど)ウラナイ(けう)高姫(たかひめ)056青彦(あをひこ)()二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)玄関(げんくわん)まで来訪(らいはう)(いた)し、057(その)(まま)姿(すがた)(かく)しました。058あとを()れば玄関(げんくわん)()(がく)(うら)(しま)()きたる大切(たいせつ)玉鍵(たまかぎ)紛失(ふんしつ)(いた)して()ります、059(ひと)(うたが)ふは(けつ)して()(こと)ではありませぬが、060よもやと(おも)(こころ)(うち)(つみ)(つく)つて()ります』
061亀彦(かめひこ)『ヤア、062それは()心配(しんぱい)063(さつ)(まを)す、064吾々(われわれ)共々(ともども)力添(ちからぞへ)(いた)しまして、065(かぎ)所在(ありか)捜索(そうさく)(いた)しませう』
066秋山彦(あきやまひこ)『あの(かぎ)冠島(かむりじま)067沓島(くつじま)(たから)(かぎ)御座(ござ)いますれば、068万々一(まんまんいち)(その)(かぎ)(もつ)両島(りやうたう)()(わた)り、069如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)(ぬす)()(やう)(こと)御座(ござ)いましては、070折角(せつかく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)基礎(きそ)滅茶(めちや)々々(めちや)になつて仕舞(しま)ひまする、071生命(いのち)()へても(この)(かぎ)(たま)とは(まも)らねばなりませぬ』
072亀彦(かめひこ)『アヽ、073さうぢや、074()ういふ(とき)こそ鬼武彦(おにたけひこ)殿(どの)にお(たの)(まを)さねばなるまい』
075大江山(たいこうざん)(はう)(むか)つて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)救援(きうゑん)(もと)めたるに、076言下(げんか)に、
077『オウ』
078(こた)へて(あら)はれ(きた)覆面(ふくめん)大男(おほをとこ)079()()()れば鬼武彦(おにたけひこ)なりける。
080亀彦(かめひこ)『ヤア貴下(あなた)鬼武彦(おにたけひこ)(さま)081()うこそ()入来(じゆらい)(くだ)さいました、082(ねが)ひの(すぢ)()()く』
083(かぎ)紛失(ふんしつ)せし(こと)詳細(しやうさい)物語(ものがた)れば、084鬼武彦(おにたけひこ)暫時(しばし)(かうべ)(かたむ)()()()たりしが(たちま)顔色(かほいろ)(はなやか)に、
085鬼武彦『アハヽヽヽ、086(この)(かぎ)掠奪者(りやくだつしや)はウラナイ(けう)宣伝使(せんでんし)高姫(たかひめ)087青彦(あをひこ)()(やつ)088只今(ただいま)由良(ゆら)(みなと)より(ふね)()博奕(ばくち)(さき)(まで)()()して()りまする、089サア吾々(われわれ)がお(とも)(いた)しませう、090(ふね)()しなさいませ、091秋山彦(あきやまひこ)殿(どの)092()心配(しんぱい)()無用(むよう)だ』
093秋山彦(あきやまひこ)有難(ありがた)御座(ござ)います、094何卒(なにとぞ)何卒(なにとぞ)(よろ)しく()(ねがひ)(まを)します』
095鬼武彦(おにたけひこ)(それがし)(これ)より亀彦(かめひこ)(とも)(ふね)準備(しつら)冠島(かむりじま)096沓島(くつじま)(むか)ひませう、097秋山彦(あきやまひこ)(はじ)英子姫(ひでこひめ)098悦子姫(よしこひめ)当館(たうやかた)にあつて吾々(われわれ)(かへ)るを()()けられよ、099亀彦(かめひこ)(きた)れ』
100()ふより(はや)く、101加米公(かめこう)その()秋山彦(あきやまひこ)(いへ)()郎党(らうたう)十数(じふすう)(にん)引率(いんそつ)三艘(さんそう)小船(こぶね)艤装(ぎさう)して由良(ゆら)(みなと)(つき)()海原(うなばら)艪櫂(ろかい)(おと)(いさ)ましく()()したり。102三五(さんご)(つき)海底(かいてい)(ふか)姿(すがた)()かべ、103(ふね)動揺(どうえう)につれて(たちま)上下(じやうげ)左右(さいう)延長(えんちやう)海底(かいてい)銀竜(ぎんりう)姿(すがた)(げん)じつつ、104うつ(なみ)博奕(ばくち)(さき)(あと)()(しほ)飛沫(ひまつ)をカブラ(いは)105(けう)(みさき)左手(ゆんで)(なが)高雲山(かううんざん)右手(めて)(のぞ)()()(ごと)高姫(たかひめ)(あと)()ひしき()きぬ。
106 高姫(たかひめ)二時(ふたとき)ばかり以前(いぜん)冠島(かむりじま)上陸(じやうりく)玉鍵(たまかぎ)(もつ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)()()かれたる如意(によい)宝珠(ほつしゆ)()()し、107山上(さんじやう)大桑樹(だいさうじゆ)根元(ねもと)(ひそか)(うづ)目標(めじるし)をなし、108(また)もや青彦(あをひこ)(とも)(ふね)()沓島(くつじま)(むか)ひける。
109 巨大(きよだい)なる(わに)(かず)(かぎ)りなく沓島(くつじま)周辺(しうへん)()(かこ)(かた)(まも)()る、110(わに)(むれ)(あつ)せられて、111(ふね)最早(もは)(いつ)(しやく)(すす)(こと)(あた)はず、112高姫(たかひめ)(ふね)(つな)(こし)(むす)()(わに)()(わた)つて青彦(あをひこ)諸共(もろとも)(やうや)断崖(だんがい)(のぼ)()きぬ。113(この)(かん)(ほとん)二時(ふたとき)(ばか)りを(えう)したりける。114鬼武彦(おにたけひこ)115亀彦(かめひこ)一行(いつかう)(たちま)(この)()()ひつきける。116数多(あまた)(わに)左右(さいう)(わか)船路(ふなぢ)(ひら)く。117一同(いちどう)(ただち)(しま)()(あが)頂上(ちやうじやう)岩窟(がんくつ)(むか)つて(のぼ)()く。118釣鐘岩(つりがねいは)絶頂(ぜつちやう)直立(ちよくりつ)一丈(いちぢやう)(ばか)りの岩窟(がんくつ)あり。119其処(そこ)には()120(くれなゐ)121(あを)122(あか)123(むらさき)(その)()色々(いろいろ)光彩(くわうさい)(はな)てる金剛(こんがう)不壊(ふゑ)宝玉(ほうぎよく)(かく)されあり。124二人(ふたり)余念(よねん)なく(その)岩窟(がんくつ)()()(たま)()らむとて(あせ)(どろ)になつて(はたら)()る。125(かぎ)(あな)(ふち)大切相(だいじさう)木葉(このは)()いて()きありぬ。126亀彦(かめひこ)手早(てばや)(その)(かぎ)をとり()懐中(ふところ)()()みける。127金剛(こんがう)不壊(ふゑ)(この)(たま)は、128地底(ちてい)世界(せかい)より突出(とつしゆつ)せしものにして(いはほ)尖端(せんたん)密着(みつちやく)しあれば容易(ようい)摂取(せつしゆ)する(こと)(あた)はず、129鬼武彦(おにたけひこ)(ひそか)(かたはら)大岩石(だいがんせき)()()(きた)岩穴(いはあな)(うへ)にドスンと()せたり。130二人(ふたり)徳利口(とくりぐち)(ふさ)がれて如何(いかん)ともする(こと)(あた)はず悲鳴(ひめい)をあげて()(さけ)ぶ。
131 鬼武彦(おにたけひこ)(はじ)一同(いちどう)此処(ここ)悠然(いうぜん)として天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)宣伝歌(せんでんか)(とな)(かつ)その周囲(しうゐ)蝟集(ゐしふ)して休息(きうそく)雑談(ざつだん)(ふけ)りぬ。132(いは)(いは)との隙間(すきま)より二人(ふたり)藻掻(もが)(さま)歴然(れきぜん)()()たり。133亀彦(かめひこ)隙間(すきま)よりヌツと(なか)(のぞ)けば、134(あな)(なか)より高姫(たかひめ)亀彦(かめひこ)(かほ)見上(みあ)げ、
135高姫(たかひめ)『ヤア(なんぢ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)136吾々(われわれ)神勅(しんちよく)(ほう)じて(この)(たま)をお(むか)へに(まゐ)つたもの、137神業(しんげふ)妨害(ばうがい)すると地獄(ぢごく)(かま)真逆(まつさか)(さま)(おと)されるぞ、138(はや)悪戯(いたづら)をやめて(まこと)(みち)()(かへ)り、139(この)(いは)()けて()出神(でのかみ)にお(わび)(まを)さぬか、140不届(ふとどき)(やつ)めが』
141亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、142末代(まつだい)(あが)れぬ岩穴(いはあな)()()まれて()らず(ぐち)(たた)くな、143(この)(いは)巨大(きよだい)なる千引岩(ちびきいは)144仮令(たとへ)(ひやく)(にん)(せん)(にん)(きた)るとも容易(ようい)(うご)かぬ代物(しろもの)だ、145マアマア(ゆる)りと此処(ここ)安居(あんきよ)して沈思(ちんし)黙考(もくかう)なされませ、146吾々(われわれ)(これ)より聖地(せいち)()してお(さき)御免(ごめん)(かうむ)る』
147高姫(たかひめ)岩石(がんせき)()らぬなら()らぬで()い、148(その)(かは)りに冠島(かむりじま)(たま)所在(ありか)(わか)るまい、149(たま)所在(ありか)()()くば(この)(いは)()()けて吾々(われわれ)二人(ふたり)(すく)()(ふね)()鄭重(ていちよう)田辺(たなべ)(みなと)まで(おく)(かへ)せ、150如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)()しくは()いか』
151亀彦(かめひこ)『エー、152()()のない(やつ)だ、153鬼武彦(おにたけひこ)さま、154如何(どう)(いた)しませうか、155貴方(あなた)天眼力(てんがんりき)で、156(たま)所在(ありか)をお(さが)(くだ)さらぬか』
157鬼武彦(おにたけひこ)一旦(いつたん)悪神(あくがみ)()(わた)つた如意(によい)宝珠(ほつしゆ)なれば外部(ぐわいぶ)(けが)(くも)一向(いつかう)霊気(れいき)放射(はうしや)(いた)さぬ、158あの(たま)(ふたた)(もち)ひむとすれば七日(なぬか)七夜(ななよ)(あひだ)159和知(わち)清泉(せいせん)(きよ)めて(みが)かねばなりませぬ、160さりとて、161所在(ありか)(わか)らねばこれ(また)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)(たい)して(まを)(わけ)()たぬ、162エー仕方(しかた)がない、163高姫(たかひめ)164青彦(あをひこ)両人(りやうにん)白状(はくじやう)させるより(ほか)(みち)はありますまい』
165亀彦(かめひこ)(こま)つたな、166万劫(まんがふ)末代(まつだい)(この)岩穴(いはあな)(ふう)()めて()らうと(おも)つたに()しい(こと)だ、167オイ、168高姫(たかひめ)169青彦(あをひこ)両人(りやうにん)170貴様(きさま)()(ぽど)幸福者(しあはせもの)だ、171(たま)所在(ありか)逐一(ちくいち)(まを)せ、172(しか)らば(この)(いは)()(のぞ)いて()らう』
173高姫(たかひめ)『ドツコイ、174さうは()きませぬぞ、175岩石(がんせき)(のぞ)いて吾々(われわれ)冠島(かむりじま)(まで)(おく)(とど)けなければ仲々(なかなか)白状(はくじやう)(いた)さぬ、176万一(まんいち)迂濶(うつかり)所在(しよざい)()らすが最後(さいご)(この)(まま)にして()かれては吾々(われわれ)()()()い、177吾々(われわれ)(すく)方法(はうはふ)(たま)所在(ありか)()らさぬ一法(いつぱふ)あるのみだ、178ホヽヽヽ』
179亀彦(かめひこ)『エー、180()でも蒟蒻(こんにやく)でも()かぬ(やつ)だ、181一歩(いつぽ)(ゆづ)つて(この)(いは)()()けて(たす)けて()ろか、182()たぬ博奕(ばくち)(まけ)たと(おも)うて辛抱(しんばう)するかなア』
183(つぶや)(なが)鬼武彦(おにたけひこ)目配(めくば)せすれば鬼武彦(おにたけひこ)はウンと一声(ひとこゑ)184(ちから)をこめて(いは)()る、185岩石(がんせき)はガラガラガラツ、186ドドンツと音響(おんきやう)()眼下(がんか)紫色(むらさきいろ)海中(かいちう)(むか)つて水柱(みづばしら)をたてつつドブンと()()みぬ。187高姫(たかひめ)188青彦(あをひこ)(やうや)()(あが)り、
189高姫、青彦『ヤア(みな)さま、190()心配(しんぱい)()けました。191(かげ)さまで(たす)けて(もら)ひました。192サアサ、193(かへ)りませう』
194亀彦(かめひこ)『コレヤコレヤさうは()かぬ、195何処(どこ)(かく)した、196白状(はくじやう)(いた)さぬか』
197 高姫(たかひめ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)冠島(かむりじま)(かく)してある。198此処(ここ)では()い、199(はや)(ふね)()しなさい、200愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると荒風(あらかぜ)()いて(かへ)(こと)出来(でき)なくなる』
201 鬼武彦(おにたけひこ)一行(いつかう)釣鐘岩(つりがねいは)(から)うじて(くだ)(ふね)()()みぬ。202高姫(たかひめ)203青彦(あをひこ)鬼武彦(おにたけひこ)204亀彦(かめひこ)(ふね)分乗(ぶんじやう)せしめ(かれ)()(きた)りし(ふね)には秋山彦(あきやまひこ)(しもべ)()せ、205艪櫂(ろかい)(おと)(いさ)ましく冠島(かむりじま)(むか)つて()(かへ)る。206高姫(たかひめ)冠島(かむりじま)()くや(いな)や、207(ましら)(ごと)山上(さんじやう)()(のぼ)り、208手早(てばや)(たま)()()懐中(ふところ)捻込(ねぢこ)み、
209高姫『サア如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(これ)御座(ござ)る、210(いま)(わた)しすると貴方(あなた)都合(つがふ)(よろ)しからうが(わたし)都合(つがふ)一寸(ちよつと)(わる)い、211万一(まんいち)船中(せんちう)(おい)海中(かいちう)()()まれでもしては大変(たいへん)だ、212もし()()まれたら懐中(ふところ)(たま)一緒(いつしよ)(しづ)覚悟(かくご)だ、213サアサ田辺(たなべ)(みなと)でお(わた)(まを)す』
214亀彦(かめひこ)何処迄(どこまで)注意(ちうい)周到(しうたう)(やつ)だナア、215吾々(われわれ)(けつ)して(なんぢ)()(くる)しめる(かんが)へでは()い、216(いま)(すぐ)(わた)して()れよ。217屹度(きつと)田辺(たなべ)(おく)()けてやる』
218高姫(たかひめ)滅相(めつさう)もない、219其方(そちら)出様(でやう)次第(しだい)()つて(この)(たま)岩石(がんせき)打付(ぶつつ)けて(くだ)いて仕舞(しま)ふか、220(きず)をつけるか、221海中(かいちう)()()むか、222(いま)見当(けんたう)()いて()らぬ。223(わた)(わた)さぬは田辺(たなべ)()いた(うへ)(こと)だ、224オホヽヽヽ』
225亀彦(かめひこ)『ソンナラ貴様(きさま)だけ(ふね)()せてやる、226青彦(あをひこ)(この)(しま)暫時(ざんじ)()つて修業(しうげふ)をしたが(よろ)しからう』
227高姫(たかひめ)滅相(めつさう)な、228(くるま)両輪(りやうりん)229二本(にほん)(あし)230()神酒(みき)徳利(どつくり)231(のみ)(つち)232二人(ふたり)()らねば何事(なにごと)一人(ひとり)では物事(ものごと)成就(じやうじゆ)(いた)さぬ、233一本(いつぽん)では(ある)けない。234青彦(あをひこ)一緒(いつしよ)()れて(かへ)れ』
235亀彦(かめひこ)何処迄(どこまで)図々(づづ)しい(やつ)だ、236それ(くらゐ)でなくては三五教(あななひけう)()(くづ)しは到底(たうてい)出来(でき)よまい、237アア感心(かんしん)感心(かんしん)238韓信(かんしん)股潜(またくぐ)りだ、239アハヽヽヽ』
240鬼武彦(おにたけひこ)『サア亀彦(かめひこ)さま、241(はなし)(ゆる)りと船中(せんちう)でなさいませ、242東北(とうほく)(てん)(あた)つて怪雲(くわいうん)(あら)はれました。243暴風(ばうふう)襲来(しふらい)刻々(こくこく)(せま)つて()ました。244サア(はや)(はや)く』
245()()てる。246亀彦(かめひこ)247高姫(たかひめ)(その)()一同(いちどう)四艘(しさう)(ふね)分乗(ぶんじやう)艪櫂(ろかい)(おと)(いさ)ましく田辺(たなべ)()して(かへ)()る。248アヽ(この)宝珠(ほつしゆ)如何(どう)なるであらうか。
249 (ちなみ)()ふ、250(この)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)一名(いちめい)言霊(ことたま)(しよう)(また)神集(かうづ)(たま)とも()言語(げんご)(はつ)する不可思議(ふかしぎ)生玉(いきたま)である。251丁度(ちやうど)近代(きんだい)流行(りうかう)蓄音器(ちくおんき)(たま)(やう)活動(くわつどう)をする宝玉(ほうぎよく)にして(いま)はウラナイ(けう)末流(まつりう)たる悪神(あくがみ)()保存(ほぞん)せられ独逸(ドイツ)(ある)地点(ちてん)(ふか)秘蔵(ひざう)されありと()ふ。
252大正一一・四・一五 旧三・一九 北村隆光録)
253(昭和一〇・五・二六 天恩郷 王仁校正)
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