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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
第1章 天橋立
第2章 暗夜の邂逅
第3章 門番の夢
第4章 夢か現か
第5章 秋山館
第6章 石槍の雨
第7章 空籠
第8章 衣懸松
第9章 法螺の貝
第10章 白狐の出現
第2篇 深遠微妙
第11章 宝庫の鍵
第12章 捜索隊
第13章 神集の玉
第14章 鵜呑鷹
第15章 谷間の祈
第16章 神定の地
第17章 谷の水
第3篇 真奈為ケ原
第18章 遷宅婆
第19章 文珠如来
第20章 思はぬ歓
第21章 御礼参詣
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
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如意宝珠(第13~24巻)
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第16巻(卯の巻)
> 第2篇 深遠微妙 > 第13章 神集の玉
<<< 捜索隊
(B)
(N)
鵜呑鷹 >>>
第一三章
神集
(
かうづ
)
の
玉
(
たま
)
〔六〇三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第2篇 深遠微妙
よみ(新仮名遣い):
しんえんびみょう
章:
第13章 神集の玉
よみ(新仮名遣い):
こうづのたま
通し章番号:
603
口述日:
1922(大正11)年04月15日(旧03月19日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
亀彦、英子姫、悦子姫は秋山彦の館に戻ってきたが、門番らは宣伝使は鍵盗人に違いない、と言い張って中に入れず、ちょっとした騒ぎになっていた。
秋山彦はそこへやってきて、亀彦らに宝庫の鍵が盗まれた経緯を知らせた。亀彦は鬼武彦に祈願をこらすと、鬼武彦はたちまち現れた。そして神力で、高姫らが冠島・沓島に向かって漕ぎ出していることを突き止めた。
さっそく、鬼武彦と亀彦は、秋山彦の家の郎党十数人を引率して、高姫を追いかけた。
高姫はすでに、冠島に上陸して、素盞嗚尊が秘め置いた如意宝珠を取り出し、木の根元に埋めて隠していた。
そして鰐に守られた沓島に近づき、鰐の背を渡って上陸した。そして頂上の岩窟に入り、金剛不壊の宝玉を盗ろうとしたが、この宝玉は巌に密着していてなかなか取れない。
そうしているうちに鬼武彦らは追いついて、岩窟に蓋をして、高姫と青彦を閉じ込めてしまった。
高姫と鬼武彦・亀彦は交渉の末、如意宝珠の玉を返す代わりに、岩窟から高姫らを出すこととなった。
高姫は冠島で如意宝珠の玉を隠し場所から掘り出すと、しっかりと握って、田辺の港で返すと言って船に乗り込んだ。
この如意宝珠の玉は、一名神集の玉と言い、近代の蓄音機の玉のような活動をする宝玉である。現在はウラナイ教の末流の悪神の手によって、ドイツのある地点に深く秘蔵されているという。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
ドイツ(独逸)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-27 17:26:42
OBC :
rm1613
愛善世界社版:
157頁
八幡書店版:
第3輯 458頁
修補版:
校定版:
161頁
普及版:
70頁
初版:
ページ備考:
001
秋山館
(
あきやまやかた
)
の
門番
(
もんばん
)
なる
銀公
(
ぎんこう
)
、
002
加米公
(
かめこう
)
両人
(
りやうにん
)
は
由良
(
ゆら
)
の
港
(
みなと
)
に
立出
(
たちいで
)
て
船出
(
ふなで
)
の
用意
(
ようい
)
致
(
いた
)
さむと
表門
(
おもてもん
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す。
003
折
(
をり
)
から
現
(
あら
)
はれし
一男
(
いちなん
)
二女
(
にぢよ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
004
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謳
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
悠々
(
いういう
)
として
門内
(
もんない
)
に
入
(
い
)
らむとする。
005
銀公
(
ぎんこう
)
、
006
加米公
(
かめこう
)
は
大手
(
おほて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
007
銀公、加米公
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
008
鍵盗人
(
かぎぬすびと
)
の
同類
(
どうるゐ
)
であらう。
009
もうもうもう
宣伝使
(
せんでんし
)
の
せ
の
字
(
じ
)
を
聞
(
き
)
いても
嫌
(
いや
)
になる
哩
(
わい
)
、
010
最前
(
さいぜん
)
来
(
き
)
やがつた
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
奴
(
め
)
が、
011
大切
(
たいせつ
)
なる
鍵
(
かぎ
)
を
ちよろ
まかして
裏門
(
うらもん
)
より
逃失
(
にげう
)
せやがつた。
012
それが
為
(
た
)
めに
当館
(
たうやかた
)
の
中
(
うち
)
は
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
への
大騒動
(
おほさうどう
)
だ、
013
貴様
(
きさま
)
ももう
駄目
(
だめ
)
だ、
014
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
鍵
(
かぎ
)
は
先
(
さき
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
つた、
015
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
盗
(
ぬす
)
まれ
当館
(
たうやかた
)
は
空前
(
くうぜん
)
絶後
(
ぜつご
)
の
大混雑
(
だいこんざつ
)
、
016
之
(
これ
)
から
沢山
(
たくさん
)
な
番犬
(
ばんけん
)
でもかり
集
(
あつ
)
めて
かぎ
探
(
さが
)
させる
処
(
ところ
)
だ、
017
貴様
(
きさま
)
も
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
帰
(
かへ
)
れ』
018
亀彦
(
かめひこ
)
『
之
(
これ
)
は
心得
(
こころえ
)
ぬ
其方
(
そなた
)
の
言葉
(
ことば
)
、
019
吾々
(
われわれ
)
に
対
(
たい
)
し
盗人
(
どろぼう
)
扱
(
あつか
)
ひをなさるのか』
020
加米公
(
かめこう
)
『
極
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だよ、
021
宣伝使
(
せんでんし
)
と
言
(
い
)
へば
鍵盗人
(
かぎぬすびと
)
の
代名詞
(
だいめいし
)
だ、
022
通
(
とほ
)
る
事
(
こと
)
罷
(
まか
)
りならぬ、
023
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
を
奥
(
おく
)
へふみ
込
(
こ
)
まさうものなら、
024
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ』
025
亀彦
(
かめひこ
)
『
一応
(
いちおう
)
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
汝
(
なんじ
)
が
言葉
(
ことば
)
、
026
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
とはウラナイ
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
であらう、
027
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ、
028
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
与
(
あた
)
へる
者
(
もの
)
だ』
029
銀公
(
ぎんこう
)
『
何
(
なに
)
、
030
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
与
(
あた
)
へるとな、
031
サア
早
(
はや
)
く
其
(
その
)
鍵
(
かぎ
)
を
見
(
み
)
せて
呉
(
く
)
れ、
032
鍵
(
かぎ
)
を
渡
(
わた
)
せば
通行
(
つうかう
)
を
許
(
ゆる
)
して
与
(
や
)
らう、
033
宣伝使
(
せんでんし
)
と
言
(
い
)
へば
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
皆
(
みんな
)
鍵盗人
(
かぎぬすびと
)
の
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がする、
034
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
で
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
とやらを
盗
(
ぬす
)
みて
来
(
き
)
たのだ、
035
サアサ
早
(
はや
)
く
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
せ』
036
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
037
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
からぬ
門番
(
もんばん
)
だな、
038
サアサ
英子姫
(
ひでこひめ
)
さま
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま
参
(
まゐ
)
りませう』
039
と
行
(
ゆ
)
かむとする。
040
銀公
(
ぎんこう
)
、
041
加米公
(
かめこう
)
は
大声
(
おほごゑ
)
をあげて
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てる。
042
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけたる
秋山彦
(
あきやまひこ
)
は
何事
(
なにごと
)
ならむと
表
(
おもて
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し
到
(
いた
)
り
見
(
み
)
れば
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
一行
(
いつかう
)
なりけり。
043
秋山彦
(
あきやまひこ
)
『ア、
044
之
(
これ
)
は
之
(
これ
)
は
亀彦
(
かめひこ
)
様
(
さま
)
、
045
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
046
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
克
(
よ
)
く
入
(
い
)
らせられました。
047
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
取込
(
とりこみ
)
が
出来
(
でき
)
ましたので
大騒
(
おほさわ
)
ぎを
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります、
048
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
よりお
預
(
あづか
)
り
申
(
まを
)
した
大切
(
たいせつ
)
なる
玉鍵
(
たまかぎ
)
を
何者
(
なにもの
)
かに
盗
(
ぬす
)
まれ、
049
唯今
(
ただいま
)
僕
(
しもべ
)
共
(
ども
)
を
四方
(
しはう
)
に
遣
(
つか
)
はし
探索
(
たんさく
)
の
最中
(
さいちう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
050
亀彦
(
かめひこ
)
『ア、
051
それで
分
(
わか
)
りました、
052
門番
(
もんばん
)
共
(
ども
)
が
私
(
わたくし
)
に
対
(
たい
)
し
鍵盗人
(
かぎぬすびと
)
だとか
何
(
なん
)
だとか
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ました、
053
然
(
しか
)
しそれは
大事
(
おほごと
)
ですな、
054
何
(
なに
)
か
心当
(
こころあた
)
りは
御座
(
ござ
)
いますまいか』
055
秋山彦
(
あきやまひこ
)
『
先程
(
さきほど
)
ウラナイ
教
(
けう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
、
056
青彦
(
あをひこ
)
と
言
(
い
)
ふ
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
玄関
(
げんくわん
)
まで
来訪
(
らいはう
)
致
(
いた
)
し、
057
其
(
その
)
儘
(
まま
)
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しました。
058
あとを
見
(
み
)
れば
玄関
(
げんくわん
)
の
間
(
ま
)
の
額
(
がく
)
の
裏
(
うら
)
に
匿
(
しま
)
ひ
置
(
お
)
きたる
大切
(
たいせつ
)
な
玉鍵
(
たまかぎ
)
が
紛失
(
ふんしつ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります、
059
人
(
ひと
)
を
疑
(
うたが
)
ふは
決
(
けつ
)
して
良
(
い
)
い
事
(
こと
)
ではありませぬが、
060
よもやと
思
(
おも
)
ひ
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
に
罪
(
つみ
)
を
作
(
つく
)
つて
居
(
を
)
ります』
061
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア、
062
それは
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
、
063
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
す、
064
吾々
(
われわれ
)
も
共々
(
ともども
)
に
力添
(
ちからぞへ
)
を
致
(
いた
)
しまして、
065
鍵
(
かぎ
)
の
所在
(
ありか
)
を
捜索
(
そうさく
)
致
(
いた
)
しませう』
066
秋山彦
(
あきやまひこ
)
『あの
鍵
(
かぎ
)
は
冠島
(
かむりじま
)
、
067
沓島
(
くつじま
)
の
宝
(
たから
)
の
鍵
(
かぎ
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
068
万々一
(
まんまんいち
)
其
(
その
)
鍵
(
かぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
両島
(
りやうたう
)
に
押
(
お
)
し
渡
(
わた
)
り、
069
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
盗
(
ぬす
)
み
取
(
と
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いましては、
070
折角
(
せつかく
)
の
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
基礎
(
きそ
)
も
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
になつて
仕舞
(
しま
)
ひまする、
071
生命
(
いのち
)
に
代
(
か
)
へても
此
(
この
)
鍵
(
かぎ
)
と
玉
(
たま
)
とは
守
(
まも
)
らねばなりませぬ』
072
亀彦
(
かめひこ
)
『アヽ、
073
さうぢや、
074
斯
(
か
)
ういふ
時
(
とき
)
こそ
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
殿
(
どの
)
にお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
さねばなるまい』
075
と
大江山
(
たいこうざん
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
つて
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
救援
(
きうゑん
)
を
求
(
もと
)
めたるに、
076
言下
(
げんか
)
に、
077
『オウ』
078
と
答
(
こた
)
へて
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
覆面
(
ふくめん
)
の
大男
(
おほをとこ
)
、
079
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
れば
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
なりける。
080
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
貴下
(
あなた
)
は
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
様
(
さま
)
、
081
能
(
よ
)
うこそ
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました、
082
お
願
(
ねが
)
ひの
筋
(
すぢ
)
は
斯
(
か
)
く
斯
(
か
)
く』
083
と
鍵
(
かぎ
)
の
紛失
(
ふんしつ
)
せし
事
(
こと
)
を
詳細
(
しやうさい
)
に
物語
(
ものがた
)
れば、
084
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
は
暫時
(
しばし
)
頭
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
目
(
め
)
を
閉
(
と
)
ぢ
居
(
ゐ
)
たりしが
忽
(
たちま
)
ち
顔色
(
かほいろ
)
華
(
はなやか
)
に、
085
鬼武彦
『アハヽヽヽ、
086
此
(
この
)
鍵
(
かぎ
)
の
掠奪者
(
りやくだつしや
)
はウラナイ
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
高姫
(
たかひめ
)
、
087
青彦
(
あをひこ
)
と
言
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
088
只今
(
ただいま
)
由良
(
ゆら
)
の
港
(
みなと
)
より
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
博奕
(
ばくち
)
ケ
岬
(
さき
)
迄
(
まで
)
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
して
居
(
を
)
りまする、
089
サア
吾々
(
われわれ
)
がお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう、
090
船
(
ふね
)
を
出
(
だ
)
しなさいませ、
091
秋山彦
(
あきやまひこ
)
殿
(
どの
)
、
092
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だ』
093
秋山彦
(
あきやまひこ
)
『
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
094
何卒
(
なにとぞ
)
何卒
(
なにとぞ
)
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
095
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
『
某
(
それがし
)
は
之
(
これ
)
より
亀彦
(
かめひこ
)
と
共
(
とも
)
に
船
(
ふね
)
を
準備
(
しつら
)
へ
冠島
(
かむりじま
)
、
096
沓島
(
くつじま
)
に
向
(
むか
)
ひませう、
097
秋山彦
(
あきやまひこ
)
を
始
(
はじ
)
め
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
098
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
当館
(
たうやかた
)
にあつて
吾々
(
われわれ
)
が
帰
(
かへ
)
るを
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
けられよ、
099
亀彦
(
かめひこ
)
来
(
きた
)
れ』
100
と
言
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
101
加米公
(
かめこう
)
その
他
(
た
)
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
家
(
いへ
)
の
子
(
こ
)
郎党
(
らうたう
)
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
を
引率
(
いんそつ
)
し
三艘
(
さんそう
)
の
小船
(
こぶね
)
を
艤装
(
ぎさう
)
して
由良
(
ゆら
)
の
港
(
みなと
)
の
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
海原
(
うなばら
)
を
艪櫂
(
ろかい
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさ
)
ましく
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
したり。
102
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
は
海底
(
かいてい
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
を
浮
(
う
)
かべ、
103
船
(
ふね
)
の
動揺
(
どうえう
)
につれて
忽
(
たちま
)
ち
上下
(
じやうげ
)
左右
(
さいう
)
に
延長
(
えんちやう
)
し
海底
(
かいてい
)
に
銀竜
(
ぎんりう
)
の
姿
(
すがた
)
を
現
(
げん
)
じつつ、
104
うつ
波
(
なみ
)
の
博奕
(
ばくち
)
ケ
岬
(
さき
)
を
後
(
あと
)
に
見
(
み
)
て
潮
(
しほ
)
の
飛沫
(
ひまつ
)
をカブラ
岩
(
いは
)
、
105
経
(
けう
)
ケ
岬
(
みさき
)
を
左手
(
ゆんで
)
に
眺
(
なが
)
め
高雲山
(
かううんざん
)
を
右手
(
めて
)
に
望
(
のぞ
)
み
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
高姫
(
たかひめ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひしき
行
(
ゆ
)
きぬ。
106
高姫
(
たかひめ
)
は
二時
(
ふたとき
)
ばかり
以前
(
いぜん
)
に
冠島
(
かむりじま
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
玉鍵
(
たまかぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
が
秘
(
ひ
)
め
置
(
お
)
かれたる
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
107
山上
(
さんじやう
)
の
大桑樹
(
だいさうじゆ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
密
(
ひそか
)
に
埋
(
うづ
)
め
目標
(
めじるし
)
をなし、
108
又
(
また
)
もや
青彦
(
あをひこ
)
と
共
(
とも
)
に
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
沓島
(
くつじま
)
に
向
(
むか
)
ひける。
109
巨大
(
きよだい
)
なる
鰐
(
わに
)
は
数
(
かず
)
限
(
かぎ
)
りなく
沓島
(
くつじま
)
の
周辺
(
しうへん
)
を
取
(
と
)
り
囲
(
かこ
)
み
堅
(
かた
)
く
守
(
まも
)
り
居
(
ゐ
)
る、
110
鰐
(
わに
)
の
群
(
むれ
)
に
圧
(
あつ
)
せられて、
111
船
(
ふね
)
は
最早
(
もは
)
や
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
も
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はず、
112
高姫
(
たかひめ
)
は
船
(
ふね
)
の
綱
(
つな
)
を
腰
(
こし
)
に
結
(
むす
)
び
付
(
つ
)
け
鰐
(
わに
)
の
背
(
せ
)
を
渡
(
わた
)
つて
青彦
(
あをひこ
)
諸共
(
もろとも
)
漸
(
やうや
)
く
断崖
(
だんがい
)
に
登
(
のぼ
)
り
着
(
つ
)
きぬ。
113
此
(
この
)
間
(
かん
)
殆
(
ほとん
)
ど
二時
(
ふたとき
)
許
(
ばか
)
りを
要
(
えう
)
したりける。
114
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
、
115
亀彦
(
かめひこ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
追
(
お
)
ひつきける。
116
数多
(
あまた
)
の
鰐
(
わに
)
は
左右
(
さいう
)
に
分
(
わか
)
れ
船路
(
ふなぢ
)
を
開
(
ひら
)
く。
117
一同
(
いちどう
)
は
直
(
ただち
)
に
島
(
しま
)
に
駆
(
か
)
け
上
(
あが
)
り
頂上
(
ちやうじやう
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
向
(
むか
)
つて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
118
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
に
直立
(
ちよくりつ
)
一丈
(
いちぢやう
)
許
(
ばか
)
りの
岩窟
(
がんくつ
)
あり。
119
其処
(
そこ
)
には
黄
(
き
)
、
120
紅
(
くれなゐ
)
、
121
青
(
あを
)
、
122
赤
(
あか
)
、
123
紫
(
むらさき
)
其
(
その
)
他
(
た
)
色々
(
いろいろ
)
の
光彩
(
くわうさい
)
を
放
(
はな
)
てる
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
が
匿
(
かく
)
されあり。
124
二人
(
ふたり
)
は
余念
(
よねん
)
なく
其
(
その
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
跳
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
らむとて
汗
(
あせ
)
み
泥
(
どろ
)
になつて
働
(
はたら
)
き
居
(
ゐ
)
る。
125
鍵
(
かぎ
)
は
穴
(
あな
)
の
端
(
ふち
)
に
大切相
(
だいじさう
)
に
木葉
(
このは
)
を
敷
(
し
)
いて
置
(
お
)
きありぬ。
126
亀彦
(
かめひこ
)
は
手早
(
てばや
)
く
其
(
その
)
鍵
(
かぎ
)
をとり
上
(
あ
)
げ
懐中
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢ
込
(
こ
)
みける。
127
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
此
(
この
)
玉
(
たま
)
は、
128
地底
(
ちてい
)
の
世界
(
せかい
)
より
突出
(
とつしゆつ
)
せしものにして
巌
(
いはほ
)
の
尖端
(
せんたん
)
に
密着
(
みつちやく
)
しあれば
容易
(
ようい
)
に
摂取
(
せつしゆ
)
する
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はず、
129
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
は
密
(
ひそか
)
に
傍
(
かたはら
)
の
大岩石
(
だいがんせき
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き
来
(
きた
)
り
岩穴
(
いはあな
)
の
上
(
うへ
)
にドスンと
載
(
の
)
せたり。
130
二人
(
ふたり
)
は
徳利口
(
とくりぐち
)
を
塞
(
ふさ
)
がれて
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はず
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
131
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
は
此処
(
ここ
)
に
悠然
(
いうぜん
)
として
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
唱
(
とな
)
へ
且
(
かつ
)
その
周囲
(
しうゐ
)
に
蝟集
(
ゐしふ
)
して
休息
(
きうそく
)
し
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
りぬ。
132
岩
(
いは
)
と
岩
(
いは
)
との
隙間
(
すきま
)
より
二人
(
ふたり
)
の
藻掻
(
もが
)
く
態
(
さま
)
は
歴然
(
れきぜん
)
と
見
(
み
)
え
居
(
ゐ
)
たり。
133
亀彦
(
かめひこ
)
は
隙間
(
すきま
)
よりヌツと
中
(
なか
)
を
覗
(
のぞ
)
けば、
134
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
より
高姫
(
たかひめ
)
は
亀彦
(
かめひこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見上
(
みあ
)
げ、
135
高姫
(
たかひめ
)
『ヤア
汝
(
なんぢ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
136
吾々
(
われわれ
)
は
神勅
(
しんちよく
)
を
奉
(
ほう
)
じて
此
(
この
)
玉
(
たま
)
をお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
つたもの、
137
神業
(
しんげふ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
すると
地獄
(
ぢごく
)
の
釜
(
かま
)
に
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
落
(
おと
)
されるぞ、
138
早
(
はや
)
く
悪戯
(
いたづら
)
をやめて
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
立
(
た
)
ち
復
(
かへ
)
り、
139
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
除
(
の
)
けて
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
にお
詫
(
わび
)
を
申
(
まを
)
さぬか、
140
不届
(
ふとどき
)
な
奴
(
やつ
)
めが』
141
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
142
末代
(
まつだい
)
上
(
あが
)
れぬ
岩穴
(
いはあな
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれて
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
くな、
143
此
(
この
)
岩
(
いは
)
は
巨大
(
きよだい
)
なる
千引岩
(
ちびきいは
)
、
144
仮令
(
たとへ
)
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
千
(
せん
)
人
(
にん
)
来
(
きた
)
るとも
容易
(
ようい
)
に
動
(
うご
)
かぬ
代物
(
しろもの
)
だ、
145
マアマア
悠
(
ゆる
)
りと
此処
(
ここ
)
に
安居
(
あんきよ
)
して
沈思
(
ちんし
)
黙考
(
もくかう
)
なされませ、
146
吾々
(
われわれ
)
は
之
(
これ
)
より
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
してお
先
(
さき
)
へ
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
る』
147
高姫
(
たかひめ
)
『
岩石
(
がんせき
)
を
取
(
と
)
らぬなら
取
(
と
)
らぬで
宜
(
よ
)
い、
148
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
冠島
(
かむりじま
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
は
分
(
わか
)
るまい、
149
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
が
知
(
し
)
り
度
(
た
)
くば
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けて
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
を
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せ
鄭重
(
ていちよう
)
に
田辺
(
たなべ
)
の
港
(
みなと
)
まで
送
(
おく
)
り
帰
(
かへ
)
せ、
150
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
は
欲
(
ほ
)
しくは
無
(
な
)
いか』
151
亀彦
(
かめひこ
)
『エー、
152
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
のない
奴
(
やつ
)
だ、
153
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
さま、
154
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませうか、
155
貴方
(
あなた
)
の
天眼力
(
てんがんりき
)
で、
156
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
をお
探
(
さが
)
し
下
(
くだ
)
さらぬか』
157
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
『
一旦
(
いつたん
)
悪神
(
あくがみ
)
の
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
つた
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
なれば
外部
(
ぐわいぶ
)
は
穢
(
けが
)
れ
曇
(
くも
)
り
一向
(
いつかう
)
霊気
(
れいき
)
を
放射
(
はうしや
)
致
(
いた
)
さぬ、
158
あの
玉
(
たま
)
を
再
(
ふたた
)
び
用
(
もち
)
ひむとすれば
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
間
(
あひだ
)
、
159
和知
(
わち
)
の
清泉
(
せいせん
)
に
清
(
きよ
)
めて
磨
(
みが
)
かねばなりませぬ、
160
さりとて、
161
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
らねばこれ
亦
(
また
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
に
対
(
たい
)
して
申
(
まを
)
し
訳
(
わけ
)
が
立
(
た
)
たぬ、
162
エー
仕方
(
しかた
)
がない、
163
高姫
(
たかひめ
)
、
164
青彦
(
あをひこ
)
両人
(
りやうにん
)
に
白状
(
はくじやう
)
させるより
外
(
ほか
)
に
道
(
みち
)
はありますまい』
165
亀彦
(
かめひこ
)
『
困
(
こま
)
つたな、
166
万劫
(
まんがふ
)
末代
(
まつだい
)
此
(
この
)
岩穴
(
いはあな
)
に
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
めて
与
(
や
)
らうと
思
(
おも
)
つたに
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
だ、
167
オイ、
168
高姫
(
たかひめ
)
、
169
青彦
(
あをひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
170
貴様
(
きさま
)
は
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
幸福者
(
しあはせもの
)
だ、
171
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
逐一
(
ちくいち
)
申
(
まを
)
せ、
172
然
(
しか
)
らば
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
取
(
と
)
り
除
(
のぞ
)
いて
与
(
や
)
らう』
173
高姫
(
たかひめ
)
『ドツコイ、
174
さうは
往
(
ゆ
)
きませぬぞ、
175
岩石
(
がんせき
)
を
除
(
のぞ
)
いて
吾々
(
われわれ
)
を
冠島
(
かむりじま
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けなければ
仲々
(
なかなか
)
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さぬ、
176
万一
(
まんいち
)
迂濶
(
うつかり
)
所在
(
しよざい
)
を
知
(
し
)
らすが
最後
(
さいご
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
かれては
吾々
(
われわれ
)
の
立
(
た
)
つ
瀬
(
せ
)
が
無
(
な
)
い、
177
吾々
(
われわれ
)
を
救
(
すく
)
ふ
方法
(
はうはふ
)
は
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らさぬ
一法
(
いつぱふ
)
あるのみだ、
178
ホヽヽヽ』
179
亀彦
(
かめひこ
)
『エー、
180
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でも
往
(
ゆ
)
かぬ
奴
(
やつ
)
だ、
181
一歩
(
いつぽ
)
譲
(
ゆづ
)
つて
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けて
助
(
たす
)
けて
与
(
や
)
ろか、
182
打
(
う
)
たぬ
博奕
(
ばくち
)
に
負
(
まけ
)
たと
思
(
おも
)
うて
辛抱
(
しんばう
)
するかなア』
183
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
に
目配
(
めくば
)
せすれば
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
はウンと
一声
(
ひとこゑ
)
、
184
力
(
ちから
)
をこめて
岩
(
いは
)
を
蹴
(
け
)
る、
185
岩石
(
がんせき
)
はガラガラガラツ、
186
ドドンツと
音響
(
おんきやう
)
を
立
(
た
)
て
眼下
(
がんか
)
の
紫色
(
むらさきいろ
)
の
海中
(
かいちう
)
に
向
(
むか
)
つて
水柱
(
みづばしら
)
をたてつつドブンと
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
みぬ。
187
高姫
(
たかひめ
)
、
188
青彦
(
あをひこ
)
は
漸
(
やうや
)
く
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り、
189
高姫、青彦
『ヤア
皆
(
みな
)
さま、
190
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
を
掛
(
か
)
けました。
191
お
蔭
(
かげ
)
さまで
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ひました。
192
サアサ、
193
帰
(
かへ
)
りませう』
194
亀彦
(
かめひこ
)
『コレヤコレヤさうは
往
(
ゆ
)
かぬ、
195
何処
(
どこ
)
に
隠
(
かく
)
した、
196
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さぬか』
197
高姫
(
たかひめ
)
『
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
は
冠島
(
かむりじま
)
に
隠
(
かく
)
してある。
198
此処
(
ここ
)
では
無
(
な
)
い、
199
早
(
はや
)
く
船
(
ふね
)
を
出
(
だ
)
しなさい、
200
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
荒風
(
あらかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なくなる』
201
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
一行
(
いつかう
)
は
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
を
辛
(
から
)
うじて
下
(
くだ
)
り
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
みぬ。
202
高姫
(
たかひめ
)
、
203
青彦
(
あをひこ
)
は
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
、
204
亀彦
(
かめひこ
)
の
船
(
ふね
)
に
分乗
(
ぶんじやう
)
せしめ
彼
(
かれ
)
が
乗
(
の
)
り
来
(
きた
)
りし
船
(
ふね
)
には
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
僕
(
しもべ
)
を
乗
(
の
)
せ、
205
艪櫂
(
ろかい
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさ
)
ましく
冠島
(
かむりじま
)
に
向
(
むか
)
つて
漕
(
こ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
る。
206
高姫
(
たかひめ
)
は
冠島
(
かむりじま
)
へ
着
(
つ
)
くや
否
(
いな
)
や、
207
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
山上
(
さんじやう
)
に
駆
(
か
)
け
上
(
のぼ
)
り、
208
手早
(
てばや
)
く
珠
(
たま
)
を
掘
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
し
懐中
(
ふところ
)
に
捻込
(
ねぢこ
)
み、
209
高姫
『サア
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
之
(
これ
)
で
御座
(
ござ
)
る、
210
今
(
いま
)
お
渡
(
わた
)
しすると
貴方
(
あなた
)
は
都合
(
つがふ
)
が
宜
(
よろ
)
しからうが
妾
(
わたし
)
の
都合
(
つがふ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
悪
(
わる
)
い、
211
万一
(
まんいち
)
船中
(
せんちう
)
に
於
(
おい
)
て
海中
(
かいちう
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれでもしては
大変
(
たいへん
)
だ、
212
もし
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれたら
懐中
(
ふところ
)
の
玉
(
たま
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
沈
(
しづ
)
む
覚悟
(
かくご
)
だ、
213
サアサ
田辺
(
たなべ
)
の
港
(
みなと
)
でお
渡
(
わた
)
し
申
(
まを
)
す』
214
亀彦
(
かめひこ
)
『
何処迄
(
どこまで
)
も
注意
(
ちうい
)
周到
(
しうたう
)
な
奴
(
やつ
)
だナア、
215
吾々
(
われわれ
)
は
決
(
けつ
)
して
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
を
苦
(
くる
)
しめる
考
(
かんが
)
へでは
無
(
な
)
い、
216
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
に
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れよ。
217
屹度
(
きつと
)
田辺
(
たなべ
)
に
送
(
おく
)
り
着
(
つ
)
けてやる』
218
高姫
(
たかひめ
)
『
滅相
(
めつさう
)
もない、
219
其方
(
そちら
)
の
出様
(
でやう
)
次第
(
しだい
)
に
依
(
よ
)
つて
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
岩石
(
がんせき
)
に
打付
(
ぶつつ
)
けて
砕
(
くだ
)
いて
仕舞
(
しま
)
ふか、
220
疵
(
きず
)
をつけるか、
221
海中
(
かいちう
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
むか、
222
未
(
いま
)
だ
見当
(
けんたう
)
が
付
(
つ
)
いて
居
(
を
)
らぬ。
223
渡
(
わた
)
す
渡
(
わた
)
さぬは
田辺
(
たなべ
)
へ
着
(
つ
)
いた
上
(
うへ
)
の
事
(
こと
)
だ、
224
オホヽヽヽ』
225
亀彦
(
かめひこ
)
『ソンナラ
貴様
(
きさま
)
だけ
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せてやる、
226
青彦
(
あをひこ
)
は
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
暫時
(
ざんじ
)
居
(
を
)
つて
修業
(
しうげふ
)
をしたが
宜
(
よろ
)
しからう』
227
高姫
(
たかひめ
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
228
車
(
くるま
)
の
両輪
(
りやうりん
)
、
229
二本
(
にほん
)
の
脚
(
あし
)
、
230
御
(
お
)
神酒
(
みき
)
徳利
(
どつくり
)
、
231
鑿
(
のみ
)
と
槌
(
つち
)
、
232
二人
(
ふたり
)
居
(
を
)
らねば
何事
(
なにごと
)
も
一人
(
ひとり
)
では
物事
(
ものごと
)
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
さぬ、
233
一本
(
いつぽん
)
では
歩
(
ある
)
けない。
234
青彦
(
あをひこ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
れ』
235
亀彦
(
かめひこ
)
『
何処迄
(
どこまで
)
も
図々
(
づづ
)
しい
奴
(
やつ
)
だ、
236
それ
位
(
くらゐ
)
でなくては
三五教
(
あななひけう
)
の
切
(
き
)
り
崩
(
くづ
)
しは
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
よまい、
237
アア
感心
(
かんしん
)
感心
(
かんしん
)
、
238
韓信
(
かんしん
)
の
股潜
(
またくぐ
)
りだ、
239
アハヽヽヽ』
240
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
『サア
亀彦
(
かめひこ
)
さま、
241
話
(
はなし
)
は
悠
(
ゆる
)
りと
船中
(
せんちう
)
でなさいませ、
242
東北
(
とうほく
)
の
天
(
てん
)
に
当
(
あた
)
つて
怪雲
(
くわいうん
)
が
現
(
あら
)
はれました。
243
暴風
(
ばうふう
)
の
襲来
(
しふらい
)
刻々
(
こくこく
)
に
迫
(
せま
)
つて
来
(
き
)
ました。
244
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
245
と
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てる。
246
亀彦
(
かめひこ
)
、
247
高姫
(
たかひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
一同
(
いちどう
)
は
四艘
(
しさう
)
の
船
(
ふね
)
に
分乗
(
ぶんじやう
)
し
艪櫂
(
ろかい
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさ
)
ましく
田辺
(
たなべ
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
来
(
く
)
る。
248
アヽ
此
(
この
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
如何
(
どう
)
なるであらうか。
249
因
(
ちなみ
)
に
言
(
い
)
ふ、
250
此
(
この
)
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
は
一名
(
いちめい
)
言霊
(
ことたま
)
と
称
(
しよう
)
し
又
(
また
)
神集
(
かうづ
)
の
玉
(
たま
)
とも
言
(
い
)
ひ
言語
(
げんご
)
を
発
(
はつ
)
する
不可思議
(
ふかしぎ
)
の
生玉
(
いきたま
)
である。
251
丁度
(
ちやうど
)
近代
(
きんだい
)
流行
(
りうかう
)
の
蓄音器
(
ちくおんき
)
の
玉
(
たま
)
の
様
(
やう
)
な
活動
(
くわつどう
)
をする
宝玉
(
ほうぎよく
)
にして
今
(
いま
)
はウラナイ
教
(
けう
)
の
末流
(
まつりう
)
たる
悪神
(
あくがみ
)
の
手
(
て
)
に
保存
(
ほぞん
)
せられ
独逸
(
ドイツ
)
の
或
(
ある
)
地点
(
ちてん
)
に
深
(
ふか
)
く
秘蔵
(
ひざう
)
されありと
言
(
い
)
ふ。
252
(
大正一一・四・一五
旧三・一九
北村隆光
録)
253
(昭和一〇・五・二六 天恩郷 王仁校正)
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