霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第三章 門番(もんばん)の夢(ゆめ)〔五九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻 篇:第1篇 神軍霊馬 よみ(新仮名遣い):しんぐんれいば
章:第3章 門番の夢 よみ(新仮名遣い):もんばんのゆめ 通し章番号:593
口述日:1922(大正11)年04月05日(旧03月09日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
亀彦は追っ手を切り立てて追い詰める。追い立てられた捕り手は、亀彦に英子姫・悦子姫のことを思い出させて窮地を脱する。亀彦は姫らの安否を気遣って、元来た道を走って戻っていく。
一方、英子姫と悦子姫は、由良の港の秋山彦の館の門前にたたずんでいた。しかし門番によって見つけられ、館の中に連れ込まれてしまう。
そこへ亀彦が追いついて、門を叩き始める。門番の銀公と加米公は、亀彦とおかしな問答を繰り広げる。
門番が門を開けると、亀彦は姫の行方を追って中にどんどん入ろうとする。二人の門番は亀彦の足に食らいついて止めようとするが、亀彦は二人を引きずりながら館に近づいていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-09-29 16:40:06 文字数:3291 OBC :rm1603
愛善世界社版:38頁 八幡書店版:第3輯 415頁 修補版: 校定版:39頁 普及版:16頁 初版: ページ備考:
001夜(よ)は深々(しんしん)と更(ふ)け渡(わた)る
002水(みづ)さへ音(おと)なき丑(うし)の刻(こく)
003波(なみ)を照(てら)して一塊(いつくわい)の
004巨大(きよだい)な光(ひかり)嚠々(りうりう)と
005呻(うな)りを立(た)てて竜灯(りうとう)の
006松(まつ)を目蒐(めが)けて走(はし)り来(く)る。
007 火光(くわくわう)は一旦(いつたん)松(まつ)の周囲(しうゐ)を廻転(くわいてん)し、008梢(こづゑ)に光(ひかり)皎々(かうかう)と留(とど)まり輝(かがや)きぬ。009樹下(じゆか)に倒(たふ)れた五(ご)人(にん)の男(をとこ)は、010吃驚(びつくり)仰天(ぎやうてん)目(め)を覚(さ)まし、011アフンと許(ばか)り空(そら)を眺(なが)め鰐口(わにぐち)開(あ)けて、012天(てん)から降(ふ)つた牡丹餅(ぼたもち)を頂(いただ)く様(やう)な為体(ていたらく)なり。013棚(たな)からさへも牡丹餅(ぼたもち)は容易(ようい)に落(お)ちて来(こ)ないのに、014木(き)から落(お)ちたる猿(さる)の如(ごと)く、015老木(おいき)の下(した)に腰(こし)を抜(ぬ)かし、016夜(よ)の明(あ)け行(ゆ)くを松(まつ)の下(した)、017可笑(をか)しかりける次第(しだい)なり。
018 東(ひがし)の方(かた)より数十(すうじふ)人(にん)の消魂(けたた)ましき足音(あしおと)するに眼(まなこ)を転(てん)じて眺(なが)むれば、019東雲(しののめ)近(ちか)き薄明(うすあか)り、020鬼雲彦(おにくもひこ)の手下(てした)の者(もの)共(ども)、021一人(ひとり)の男(をとこ)に追(お)はれつつ、022生命(いのち)からがら逃(に)げ来(きた)る。023腰(こし)を抜(ぬ)かした五人(ごにん)連(づれ)に、024先(さき)に立(た)ちたる四五(しご)人(にん)は、025足(あし)引(ひ)つかけて顛倒(てんたふ)し、026次(つぎ)から次(つぎ)へ出(で)て来(く)る奴(やつ)は折(を)り重(かさ)なつて、027相互怨(かたみうら)みの無(な)い様(やう)に、028交際(つきあひ)の良(よ)い社会(しやくわい)主義(しゆぎ)、029民衆(みんしう)運動(うんどう)の花(はな)咲(さ)きて、030転(ころ)んで土(つち)食(く)ふ奴(やつ)ばかりなり。
031亀彦(かめひこ)『ヤア其(そ)の方(はう)等(ら)は大江山(おほえやま)に本拠(ほんきよ)を構(かま)ふる鬼雲彦(おにくもひこ)の乾児(こぶん)の奴輩(やつばら)、032片(かた)つ端(ぱし)から撫(な)で切(ぎ)りに致(いた)し呉(く)れむ、033覚悟(かくご)をせよ』
034と両刃(もろは)の剣(つるぎ)を逆手(さかて)に持(も)ち真向(まつかう)上段(じやうだん)に振(ふ)り翳(かざ)したり。
035石熊(いしくま)『ヤイ、036其(その)方(はう)は肝腎(かんじん)の二人(ふたり)の娘(むすめ)を如何(どう)致(いた)した、037コンナ処(ところ)へ踏(ふ)ん迷(まよ)うて来(く)る処(ところ)ぢやあるまいぞ、038二人(ふたり)の女(をんな)を早(はや)く助(たす)けてやらぬか、039そしたら吾々(われわれ)もお蔭(かげ)で助(たす)かる哩(わい)、040アハヽヽヽ』
041亀彦(かめひこ)『オー、042さうじや、043余(あま)り勢(いきほひ)に乗(じやう)じて英子姫(ひでこひめ)様(さま)を念頭(ねんとう)より遺失(ゐしつ)して仕舞(しま)つた、044此奴(こいつ)堪(たま)らぬ。045愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)れば磨滅(まめつ)の厄(やく)に遭(あ)ひ給(たま)ふやも図(はか)り難(がた)い、046オイ敵(かたき)の奴輩(やつばら)、047木端(こつぱ)武者(むしや)能(よ)く注意(ちうい)して呉(く)れた、048汝(なんぢ)の手柄(てがら)に免(めん)じて今日(けふ)は之(これ)にて許(ゆる)してやらう』
049と云(い)ふより早(はや)く踵(きびす)を返(かへ)し、050矢(や)を射(い)る如(ごと)くもと来(き)し道(みち)に引(ひ)き返(かへ)す。
051石熊(いしくま)『オイ、052鬼虎(おにとら)、053熊鷹(くまたか)の阿兄(あにい)、054何(ど)うだ、055此(この)方(はう)の文珠(もんじゆ)の智慧(ちゑ)、056貴様(きさま)の様(やう)な天(あま)の橋立(はしだて)ない智慧(ちゑ)の持主(もちぬし)では仕方(しかた)がない、057斯(こ)んな時(とき)に、058ちつとも間(ま)に合(あ)はぬ。059当意(たうい)即妙(そくめう)、060智謀(ちぼう)絶倫(ぜつりん)、061文珠(もんじゆ)菩薩(ぼさつ)も石熊(いしくま)親分(おやぶん)の無量智(むりやうち)には尻(しり)はし居(を)つてスタコラ、062ヨイヤサと御(ご)遁走(とんさう)、063持(も)つべきものは知識(ちしき)なりけりだ、064アハヽヽヽ、065オホヽヽヽ、066エヘヽヽヽ』
067 不思議(ふしぎ)なる哉(かな)、068此(この)樹下(じゆか)に来(き)たものは一人(ひとり)も残(のこ)らず一蓮(いちれん)托生(たくしやう)、069腰(こし)が薩張(さつぱ)り抜(ぬ)けて仕舞(しま)つた。070一同(いちどう)の魔神(まがみ)は叶(かな)はぬときの神頼(かみだの)み、071悪(あく)にも三分(さんぶ)の理屈(りくつ)がある、072神(かみ)の救(すく)ひを求(もと)めむと十能(じうのう)の様(やう)な大(おほ)きい手(て)を合(あは)し、
073一同『阿耨(あのく)多羅(たら)三藐(さんみやく)三菩提(さんぼだい)、074南無(なむ)与仏(よぶつ)有縁(うえん)与仏(よぶつ)、075有縁(うえん)仏法僧(ぶつぽふそう)、076縁(えん)常(じやう)楽(らく)我(が)長(ちやう)、077朝念(てうねん)観世音(くわんぜおん)、078暮念(ぼねん)観世音(くわんぜおん)、079念々(ねんねん)従信起(じうしんき)、080念々(ねんねん)不離心(ふりしん)』[※仏典の『十句観音経』だと思われるが、一部語句が異なる。]
081と手(て)と口(くち)とは自由権(じいうけん)を許(ゆる)されて、082甲乙(かふおつ)の区別(くべつ)もなく平等(べうどう)に言霊(ことたま)を連続(れんぞく)発射(はつしや)して居(を)る。
083 話(はなし)変(かは)つて英子姫(ひでこひめ)は器量(きりやう)も愛想(あいさう)も悦子姫(よしこひめ)、084由良(ゆら)の港(みなと)の国司(くにつかさ)秋山彦(あきやまひこ)の門前(もんぜん)に佇(たたず)み乍(なが)ら夜(よ)の明(あ)け行(ゆ)くを待(ま)ち居(ゐ)たりしが、085忽(たちま)ちガラリと開(あ)いた表門(おもてもん)、086門番(もんばん)は二人(ふたり)の姿(すがた)を見(み)るより顔色(かほいろ)を変(か)へて一散走(いちさんばし)り、087彼方(かなた)を指(さ)して隠(かく)れ行(ゆ)く。088忽(たちま)ち四五(しご)の荒男(あらをとこ)、089十手(じつて)打(う)ち振(ふ)り打(う)ち振(ふ)りつ、090二人(ふたり)の前(まへ)に塞(ふさ)がりて有無(うむ)を言(い)はせず手(て)とり足(あし)とり、091口(くち)には嵌(は)ます猿轡(さるぐつわ)、092何(なに)と応答(いらへ)もなくばかり、093身(み)を藻掻(もが)けども容赦(ようしや)なく、094竈(かまど)の下(した)の灰猫(はひねこ)が、095小鼠(こねずみ)を喰(く)はへて行(ゆ)く様(やう)に、096二人(ふたり)を奥(おく)へ担(かつ)ぎ入(い)る。
097○
098 又(また)もや続(つづ)いて一人(ひとり)の男(をとこ)、099此(この)門前(もんぜん)に現(あら)はれて、100割(わ)るる許(ばか)りに戸(と)を敲(たた)き、101『開(ひら)け開(ひら)け』と呶鳴(どな)り居(を)る。102門番(もんばん)は不性(ふしよう)不性(ぶしよう)に、
103門番(銀公)『アヽア今日(けふ)は怪(け)つ体(たい)な日(ひ)ぢや、104朝(あさ)つぱらから門(もん)を開(あ)けるなり、105弁才天(べんざいてん)の様(やう)な別嬪(べつぴん)が来(き)よつて、106ヤレしてやつたりと喜(よろこ)ぶ間(ま)もなく館(やかた)の御(おん)大将(たいしやう)、107有無(うむ)を言(い)はせず奥(おく)へ連(つ)れて行(い)つて仕舞(しま)つた。108アヽ之(これ)を思(おも)へば大将(たいしやう)になりたいものだな。109何処(どこ)の唐変木(たうへんぼく)か知(し)らぬが怪(け)つ体(たい)な声(こゑ)を出(だ)しよつて、110腹(はら)が立(た)つ程(ほど)門(もん)を敲(たた)きよる、111エー仕方(しかた)がない、112之(これ)も門番(もんばん)の職務(しよくむ)だ。113朝(あさ)つぱらから酒(さけ)に喰(くら)ひ酔(よ)うて呶鳴(どな)つて居(ゐ)よるが、114まだちつと位(くらゐ)瓢箪(へうたん)に残(のこ)して居(ゐ)よるかも知(し)れぬ、115それでも奪(ひつたく)つて埋(うづ)め合(あは)せをやらうかい。116オイ加米公(かめこう)、117何(なに)を愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)るのだ、118貴様(きさま)も可(い)い加減(かげん)に起(お)きぬかい、119それだから夜遊(よあそ)びをするなと言(い)ふのだ。120夜遊(よあそ)びするのなら人(ひと)に起(お)こされぬ様(やう)に、121起(お)きる時分(じぶん)には起(お)きて勤(つと)めるのだぞ』
122 門(もん)を敲(たた)く声(こゑ)、123益々(ますます)猛烈(まうれつ)になつて来(き)た。
124銀公(ぎんこう)『オイ、125加米公(かめこう)、126早(はや)う起(お)きて貴様(きさま)開(あ)けてやれ』
127 亀彦(かめひこ)、128門前(もんぜん)にて、
129亀彦『ヤア、130何(なん)だ、131此奴(こいつ)は怪(あや)しいぞ、132コンナ遠国(ゑんごく)に吾々(われわれ)の名(な)を知(し)つてる奴(やつ)は無(な)い筈(はず)だが、133何(なに)は兎(と)もあれ、134一(ひと)つ掛合(かけあ)うて見(み)よう……………………亀公(かめこう)は門外(もんぐわい)に待(ま)つて居(ゐ)るのだ、135勝手(かつて)に開(ひら)けと言(い)うた所(ところ)で、136其方(そちら)から開(あ)けて呉(く)れなくちや這入(はい)れないワイ』
137銀公(ぎんこう)『これや加米(かめ)の奴(やつ)、138上役(うはやく)に向(むか)つて何(なん)と言(い)ふ無礼(ぶれい)な事(こと)を申(まを)す、139俺(おれ)は命令権(めいれいけん)を有(も)つて居(ゐ)るのだ、140貴様(きさま)は開(あ)ける役(やく)だ、141開(あ)けて呉(く)れとは何(なん)だ、142何(なん)の為(た)めに結構(けつこう)な扶持(ふち)を頂(いただ)いて居(ゐ)るのだい』
143加米公(かめこう)『アーン、144アンアンアン、145さう叱(しか)つて呉(く)れないやい。146俺(おれ)は何(なに)もまだ一言(ひとこと)も言(い)つては居(ゐ)ないワ』
147銀公(ぎんこう)『それでも今(いま)、148加米(かめ)だと言(い)つたぢやないか、149俺(おれ)の耳(みみ)はまだ隠居(いんきよ)はして居(を)らぬぞ』
150 加米公(かめこう)は、151門(もん)の閂(かんぬき)の前(まへ)に進(すす)み寄(よ)り、
152加米公『アヽア、153銀公(ぎんこう)の大将(たいしやう)、154無茶(むちや)ばかり云(い)ひよる、155もの言(い)へば唇(くちびる)寒(さむ)し秋(あき)の風(かぜ)、156ものも言(い)はぬのに言(い)うたと云(い)うて因縁(いんねん)をつけられ、157本当(ほんたう)に馬鹿(ばか)らしい哩(わい)、158俺(おれ)の心(こころ)の中(うち)を開(ひら)いて見(み)せてやり度(た)いもんだな』
159 外(そと)より亀彦(かめひこ)、
160亀彦『すつた、161もんだ吐(ぬか)さず、162亀公(かめこう)さまの御(お)出(い)でだ、163早(はや)く開(あ)けぬか』
164銀公(ぎんこう)『貴様(きさま)はまだ此(この)銀公司(ぎんこうつかさ)に命令(めいれい)をするのか、165「開(あ)けて見(み)たいもんだな」ナンテ当然(あたりまへ)だ、166早(はや)く門(もん)を開(あ)けてやらぬかい』
167と拳骨(げんこつ)を固(かた)めて頭(あたま)を三(み)つ四(よ)つポカポカと喰(くら)はしたり。
168加米公『アイタヽ、169アイタ アイタ アイタ、170あかんもんだ。171コンナ奴(やつ)に三(み)つ四(よ)つ殴(なぐ)られて、172でけもんが出来(でき)るとは余(よ)つ程(ぽど)、173引(ひ)き合(あ)はぬもんだな』
174銀公(ぎんこう)『あいたあいたと吐(ぬか)すがまだ門(もん)は開(あ)いて居(を)らぬぢやないか、175弱(よわ)いもんだとは、176それや何(なに)を吐(ぬか)す、177御(ご)主人(しゆじん)様(さま)が心魂(しんこん)を錬(ね)つて選(よ)りに選(よ)つて立派(りつぱ)な材木(ざいもく)で拵(こしら)へになつた、178コンナ綺麗(きれい)な表門(おもてもん)が何(なん)で弱(よわ)いのだい』
179と酒(さけ)の酔(よ)ひに舌(した)も廻(まは)らずぐぜつて居(ゐ)る。180加米公(かめこう)は泣(な)き泣(な)き閂(かんぬき)を外(はづ)し、
181加米公『さア、182何処(どこ)のお方(かた)か存(ぞん)じませぬが、183愚図(ぐづ)々々(ぐづ)致(いた)さずとトツトと這入(はい)りやがれ』
184亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、185之(これ)は之(これ)は門番(もんばん)どの、186朝(あさ)早(はや)くからお邪魔(じやま)を致(いた)しました、187貴方(あなた)は初(はじ)めは非常(ひじやう)に御(ご)丁寧(ていねい)で後(あと)ほどお言葉(ことば)が荒(あら)くなりますなア』
188加米公『きまつた事(こと)だい、189先(さき)の半分(はんぶん)は加米(かめ)の本(ほん)守護神(しゆごじん)だ、190後(あと)から言(い)うた奴(やつ)は副(ふく)守護神(しゆごじん)が言(い)つたのだ、191閂(かんぬき)もんのかん懸(がか)りだよ』
192亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、193お前(まへ)も矢張(やつぱり)カメサンと言(い)ふのだな、194同(おな)じ名(な)が門(もん)の内(うち)と外(そと)とにあつて大変(たいへん)に面倒(めんだう)臭(くさ)いワ』
195加米公『お前(まへ)は亀(かめ)さまだから千(せん)年(ねん)も万(まん)年(ねん)も門(もん)の外(そと)で長立(ながだ)ちをさして上(あ)げやうと思(おも)つたが、196此(この)頃(ごろ)は世界中(せかいぢう)不景気(ふけいき)風(かぜ)が吹(ふ)き廻(まは)つて、197物価(ぶつか)下落(げらく)で俺(おれ)も投売(なげうり)をする考(かんが)へで安(やす)く開(ひら)いてやつたのだ、198世(よ)の中(なか)は能(よ)くも行(ゆ)き詰(つま)つたもんぢやなア』
199亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、200貴様(きさま)は余(よ)つ程(ぽど)、201能(よ)く洒落(しやれ)るもんだなア。202問答(もんだふ)も、203もう之(これ)位(くらゐ)で廃(や)めて置(お)かう、204此処(ここ)へ二人(ふたり)の女(をんな)は出(で)て来(こ)なかつたか』
205加米公『ヤアお前(まへ)はあの女(をんな)のこれだなア』
206と親指(おやゆび)をニユツと出(だ)して見(み)せる。
207亀彦『それや何(なん)だ、208指(ゆび)ぢやないか』
209加米(かめ)『何(なん)だかゆびありげな汝(なんぢ)の顔付(かほつき)、210ゆびにも忘(わす)れぬれこの後(あと)を何(なに)しようと思(おも)うて来(き)たのだらう。211二人(ふたり)の女(をんな)は、212とつくの昔(むかし)に何々(なになに)が何々(なになに)して今頃(いまごろ)は何々(なになに)の何々(なになに)ぢや、213俺(おれ)達(たち)も何々(なになに)し度(た)いと思(おも)つて居(を)つたのに何々(なになに)が来(き)よつて何々(なになに)して何々(なになに)しよつたもんだから薩張(さつぱり)駄目(だめ)だよ』
214亀彦『貴様(きさま)の言(い)ふ事(こと)は何(なに)が何(なん)ぢややら薩張(さつぱ)り訳(わけ)が分(わか)らぬぢやないか、215も少(すこ)し、216はつきりと打明(うちあ)けて言(い)はないか』
217銀公(ぎんこう)『やい、218カメカメの両人(りやうにん)、219何々(なになに)が聞(き)きたければ何々(なになに)を出(だ)せ、220さうしたら俺(おれ)が何々(なになに)に何々(なになに)して何々(なになに)の何々(なになに)を何々(なになに)してやらう。221ナント言(い)つても銀行(ぎんかう)いや銀公(ぎんこう)が肝心(かんじん)だ』
222亀彦(かめひこ)『益々(ますます)分(わか)らぬ奴(やつ)だナ、223エー無理(むり)もない、224門番(もんばん)位(くらゐ)に尋(たづ)ね様(やう)とするのが此方(こつち)の不覚(ふかく)だ』
225と奥(おく)へ進(すす)まむとする。
226銀公(ぎんこう)『何(なに)、227深(ふか)く、228さう深(ふか)く進(すす)んでは無礼(ぶれい)だぞ。229暫時(しばらく)待(ま)つて、230俺(おれ)が何々(なになに)に会(あ)うて何々(なになに)の様子(やうす)を何々(なになに)して来(き)てやらう、231地獄(ぢごく)の沙汰(さた)も何々(なになに)次第(しだい)だからノウ』
232と手(て)を重(かさ)ねて前(まへ)に突(つ)き出(だ)す。
233亀彦(かめひこ)『ハヽヽヽヽ、234何処迄(どこまで)も物質(ぶつしつ)主義(しゆぎ)だな、235黄金(わうごん)万能(ばんのう)主義(しゆぎ)の悪風(あくふう)は神聖(しんせい)なる自転倒(おのころ)島(じま)まで吹(ふ)き荒(すさ)むで居(を)るか、236吁(あゝ)、237世(よ)も終(をは)りじや、238尾張(をはり)大根(だいこん)だ。239形(かたち)ばつかり立派(りつぱ)でも味(あぢ)もしやしやりもない、240水(みづ)臭(くさ)い世(よ)の中(なか)になつたものだ哩(わい)』
241 亀彦(かめひこ)は委細(ゐさい)構(かま)はず奥(おく)へ進(すす)み行(ゆ)かむとする。242二人(ふたり)は亀彦(かめひこ)の両足(りやうあし)にグツと喰(くら)ひ付(つ)き、
243二人『何々(なになに)する迄(まで)通(とほ)す事(こと)罷(まか)りならぬ』
244と噛(しが)み付(つ)く。245亀彦(かめひこ)は二人(ふたり)の男(をとこ)に足(あし)を捉(とら)へられ乍(なが)ら、246ノソリノソリと二人(ふたり)を小付(こづ)けにして奥(おく)を目蒐(めが)けて進(すす)み行(ゆ)く。
247(大正一一・四・五 旧三・九 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→