霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 魂(たま)の洗濯(せんたく)〔九二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻 篇:第3篇 時節到来 よみ(新仮名遣い):じせつとうらい
章:第14章 魂の洗濯 よみ(新仮名遣い):たまのせんたく 通し章番号:929
口述日:1922(大正11)年08月28日(旧07月6日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年11月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
テーリスタンは、カール並みに滑稽な歌を歌いながら坂道を下り、一行は腹をかかえて笑いながら下って行った。
一行は乾の滝に着いた。見れば男が一人、禊を修しているのが見えた。高姫はまっさきに滝壺めがけて飛び込んだが、それきり見えなくなってしまった。竜国別たちはあわてて滝壺を捜索したが、高姫は見つからなかった。
滝で禊をしていた男は、鷹依姫の前に来ると挨拶をなした。鷹依姫は男に、一行の一人が滝壺で姿が見えなくなり、探しているところだと窮状を訴えた。
男は高島丸の船長をしていたタルチールだと名乗った。そして、高姫は神様に祈願もせずに真っ先に滝壺に飛び込んでしまったため、神様に修行をさせられているが、命に別状はないだろうと答えた。
やがて、滝壺の捜索から上がってきた常彦は、タルチールを見知っていて、高島丸での道中を思い起こしてしばらく話にふけっていた。
そのうちに、高姫が茂みの中から美しい女二人に手を引かれて姿を現した。高姫は心配をかけたお詫びを述べると、滝壺の中で真っ赤な者が自分の足を加えて引っ張って行き、浅い池に導かれ、その池の岩島から二人の女が現れて自分を導いてくれたのだ、と語った。
女は比沼の真奈井の宝座に仕えていた清子姫、もう一人は妹の照子姫であると語った。二人は琉球の近海で言依別命から高姫や鷹依姫一行の玉探しのことを聞かされ、常世の国の宣伝を命じられた後、この場所で一行が来るのを待っていたのだと語った。
そして、自分たちも修した、結構な乾の滝の水くぐりの修行ができた高姫は、もう大丈夫だと太鼓判を押した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:乾の瀑布(乾の滝) データ凡例: データ最終更新日:2022-08-24 19:54:34 文字数:4118 OBC :rm3314
愛善世界社版:152頁 八幡書店版:第6輯 307頁 修補版: 校定版:159頁 普及版:56頁 初版: ページ備考:
001 テーリスタンは坂(さか)を降(くだ)りつつカールもどきに歌(うた)を唄(うた)ひ、002足拍子(あしびやうし)を取(と)り乍(なが)ら下(くだ)つて行(ゆ)く。003一行(いつかう)五(ご)人(にん)は腹(はら)を抱(かか)へ、004笑(わら)ひ乍(なが)ら、005一歩(ひとあし)々々(ひとあし)趾(ゆび)の先(さき)に力(ちから)を入(い)れて、006覚束(おぼつか)なげに杖(つゑ)を力(ちから)に下(くだ)り行(ゆ)く。
007テーリスタン『テル山峠(やまたうげ)の頂上(ちやうじやう)は
008今(いま)を去(さ)ること一昔(ひとむかし)
009昔(むかし)と云(い)つても三十年(みそとせ)だ
010正鹿(まさか)山津見(やまづみ)神(かみ)さまが
011五月(さつき)の姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
012ウヅの館(やかた)にましまして
013教(をしへ)を開(ひら)き民(たみ)を撫(な)で
014三五教(あななひけう)の御御(みをしへ)を
015アルゼンチンの空(そら)高(たか)く
016照(てら)し玉(たま)ひしウヅ都(みやこ)
017後(あと)に眺(なが)めて三(さん)人(にん)の
018松竹梅(まつたけうめ)の宣伝使(せんでんし)
019此(この)頂上(ちやうじやう)に登(のぼ)り詰(つ)め
020名残(なごり)を惜(をし)み蚊々虎(かがとら)の
021神(かみ)の化身(けしん)と諸共(もろとも)に
022歌(うた)ひ玉(たま)ひし旧跡地(きうせきち)
023高姫(たかひめ)さまが言霊(ことたま)を
024ウヅの館(やかた)に差向(さしむ)けて
025法界(ほふかい)悋気(りんき)の物凄(ものすご)さ
026側(そば)に聞(き)いてるテーリスタン
027実(まこと)に情(なさ)けなくなつた
028雀(すずめ)百(ひやく)まで牡鳥(おんどり)を
029忘(わす)れないとは能(よ)く言(い)うた
030高姫(たかひめ)さまも是(これ)からは
031心(こころ)が和(やは)らぎ来(き)たならば
032物(もの)の憐(あは)れも知(し)るであろ
033固(かた)い計(ばか)りが能(のう)でない
034オツトドツコイ危(あぶ)ないぞ
035うつかりしてると石車(いしぐるま)
036乗(の)つて転(こ)けては堪(たま)らない
037玉(たま)ぢや玉(たま)ぢやと喧(やか)ましく
038騒(さわ)いでゐたが此(この)道(みち)に
039沢山(たくさん)転(ころ)げた石玉(いしだま)を
040持(も)つて御(お)帰(かへ)り遊(あそ)ばして
041黒姫(くろひめ)さまに見(み)せたなら
042喜(よろこ)び飛(と)びつきしがみつき
043固(かた)く喜(よろこ)びなさるだろ
044ウントコドツコイ ドツコイシヨ
045高姫(たかひめ)さまよ如何(どう)なさる
046石(いし)でもヤツパリ丸(まる)ければ
047玉(たま)に能(よ)う似(に)て居(を)りまする
048国依別(くによりわけ)が釣(つ)り上(あ)げた
049お前(まへ)は魚(さかな)を頂(いただ)いて
050怒(おこ)つたことがあるさうな
051ウントコドツコイ コレワイシヨ
052グヅグヅしてると転(ころ)げるぞ
053国依別(くによりわけ)や末子姫(すゑこひめ)
054二人(ふたり)のお方(かた)も今頃(いまごろ)は
055スツカリ転(ころ)んで御座(ござ)るだろ
056同(おな)じ転(ころ)ぶにしたとこが
057ここで転(ころ)ぶはたまらない
058是(これ)から少(すこ)し下(くだ)つたら
059末子(すゑこ)の姫(ひめ)が石熊(いしくま)を
060お助(たす)けなさつた滝(たき)がある
061皆(みな)さま寄(よ)つて行(ゆ)きませうか
062高砂島(たかさごじま)を去(さ)るにつけ
063汗(あせ)をば流(なが)し垢(あか)を取(と)り
064身魂(みたま)を浄(きよ)めてスクスクと
065大海原(おほうなばら)を打渡(うちわた)り
066いよいよ目出(めで)たく自凝(おのころ)の
067神(かみ)のまします真秀良場(まほらば)へ
068帰(かへ)ると思(おも)へば有難(ありがた)い
069ドツコイシヨ、ドツコイシヨ
070神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
071善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
072国依別(くによりわけ)の神(かみ)さまは
073善(ぜん)の酬(むく)いが廻(めぐ)り来(き)て
074珍(うづ)の司(つかさ)とならしやつた
075私(わたし)は身魂(みたま)が悪(わる)いので
076高姫(たかひめ)さまと同(おな)じよに
077折角(せつかく)出(で)て来(き)た此(この)島(しま)で
078一(ひと)つの玉(たま)をも能(よ)う取(と)らず
079やみやみ帰(かへ)るか情(なさ)けない
080何(なん)の因果(いんぐわ)で此(この)様(やう)に
081拍子(ひやうし)の悪(わる)い身魂(みたま)だろ
082あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
083御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ
084ウントコドツコイ ドツコイシヨ
085皆(みな)さま気(き)をつけ危(あぶ)ないぞ
086それ又(また)そこに石(いし)ころだ
087辷(すべ)つて転(ころ)んで泡(あわ)吹(ふ)いて
088高姫(たかひめ)さまの御(ご)厄介(やくかい)
089ならない様(やう)にしておくれ
090テーリスタンが心(こころ)から
091気(き)をつけますぞや皆(みな)の人(ひと)
092人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
093とは云(い)ふものの今(いま)の人(ひと)
094何(いづ)れも神(かみ)の仇(あだ)となり
095悪魔(あくま)の宮(みや)となつてゐる
096乾(いぬゐ)の滝(たき)に出(い)で立(た)ちて
097心(こころ)を清(きよ)め身(み)を浄(きよ)め
098ついた曲津(まがつ)を放(はう)り出(だ)して
099誠(まこと)の神(かみ)の御子(みこ)となり
100神(かみ)の宮居(みやゐ)となりませう
101あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる』
103 高姫(たかひめ)一行(いつかう)はテル山峠(やまたうげ)を西(にし)へ西(にし)へと下(くだ)りつつ、104瀑布(ばくふ)の音(おと)凄(すさま)じく聞(きこ)えたるテル山峠(やまたうげ)の中腹(ちうふく)に下(くだ)り着(つ)いた。105これより高姫(たかひめ)一行(いつかう)は乾(いぬゐ)の瀑布(ばくふ)をさして、106御禊(みそぎ)を修(しう)すべく、107音(おと)を尋(たづ)ねて探(さぐ)り寄(よ)つた。108相当(さうたう)に幅(はば)の広(ひろ)い高(たか)い瀑布(ばくふ)である。109此処(ここ)はバラモン教(けう)の神司(かむつかさ)石熊(いしくま)が水垢離(みづごり)を取(と)つてゐる際(さい)、110大蛇(をろち)に魅(み)せられて九死(きうし)一生(いつしやう)の破目(はめ)に陥(おちい)りたる折(をり)、111末子姫(すゑこひめ)の一行(いつかう)に救(すく)はれた有名(いうめい)な瀑布(ばくふ)である。112近(ちか)づき見(み)れば大(だい)の男(をとこ)が只(ただ)一人(ひとり)、113一心(いつしん)不乱(ふらん)に滝(たき)にかかつてゐる。
114 高姫(たかひめ)は委細(ゐさい)構(かま)はず、115薄衣(うすぎぬ)を脱(ぬ)ぎすて、116滝壺(たきつぼ)目(め)がけてザンブと許(ばか)り飛(と)び込(こ)みしが、117如何(いかが)はしけむ、118高姫(たかひめ)の姿(すがた)はそれ切(き)り、119何(なに)も見(み)えなくなつて了(しま)つた。120竜国別(たつくにわけ)、121テー、122カー、123常彦(つねひこ)の四(よ)人(にん)は慌(あわ)ただしく、124赤裸(まつぱだか)となつて、125滝壺(たきつぼ)に探(さぐ)り探(さぐ)り這入(はい)つて、126高姫(たかひめ)の肉体(にくたい)の若(も)しや水底(みなそこ)に沈(しづ)み居(を)らざるかと、127一生(いつしやう)懸命(けんめい)に捜索(そうさく)し始(はじ)めた。128されど如何(どう)しても所在(ありか)が分(わか)らぬ。129何(いづ)れも途方(とはう)に暮(く)れて、130一(いち)時(じ)も早(はや)く高姫(たかひめ)の肉体(にくたい)の浮(う)き上(あが)ることを祈願(きぐわん)するのであつた。
131 一人(ひとり)の男(をとこ)は悠々(いういう)として水垢離(みづごうり)を終(をは)り、132タオルにて体(からだ)を拭(ふ)き乍(なが)ら、133鷹依姫(たかよりひめ)の前(まへ)に来(きた)り、
134男(をとこ)『随分(ずゐぶん)暑(あつ)いことで御座(ござ)いますな。135貴方(あなた)も一(ひと)つ滝(たき)におかかりになつては如何(いかが)ですか。136随分(ずゐぶん)涼(すず)しい滝(たき)で、137身魂(みたま)の垢(あか)がスツカリと除(と)れた様(やう)な気分(きぶん)が致(いた)しますよ』
138鷹依姫(たかよりひめ)『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います。139併(しか)し乍(なが)ら只(ただ)今(いま)私(わたくし)の同行者(どうかうしや)の一人(ひとり)なる高姫(たかひめ)さまと云(い)ふ方(かた)が、140滝壺(たきつぼ)へ飛込(とびこ)み、141其(その)儘(まま)お姿(すがた)がなくなつて了(しま)ひましたので……アレあの通(とほ)り、142四(よ)人(にん)の男(をとこ)が赤裸(まつぱだか)になり、143水底(みなそこ)を探(さぐ)つて居(を)ります。144どうで御座(ござ)いませうか、145此(この)滝壺(たきつぼ)はそれ程(ほど)深(ふか)いので御座(ござ)いませうか』
146男(をとこ)『別(べつ)に大(たい)した深(ふか)い滝壺(たきつぼ)では御座(ござ)いませぬが、147私(わたくし)が最前(さいぜん)滝(たき)にかかつて居(を)ります際(さい)、148高姫(たかひめ)さまは衣類(いるゐ)を脱(ぬ)ぎすて、149神(かみ)様(さま)にお願(ねがひ)もせず、150先頭一(せんとういち)に飛(と)び込(こ)みました。151併(しか)し乍(なが)ら生命(いのち)に別状(べつじやう)はありますまい。152神(かみ)様(さま)から御禊(みそぎ)の行(ぎやう)をさせられて居(を)られるのでせう』
153鷹依姫(たかよりひめ)『それぢやと申(まを)して、154モウ大分(だいぶん)にタイムが経(た)ちます。155人間(にんげん)の肉体(にくたい)を以(もつ)てさう永(なが)らく水中(すゐちう)に生(いき)て居(を)られる筈(はず)が御座(ござ)いませぬ。156如何(どう)したら助(たす)かりませうかなア』
157男(をとこ)『私(わたくし)は高島丸(たかしままる)の船長(せんちやう)をやつて居(を)つた、158タルチールと云(い)ふ者(もの)で御座(ござ)いますが、159随分(ずゐぶん)高姫(たかひめ)と云(い)ふ人(ひと)は我慢(がまん)の強(つよ)い方(かた)ですから、160此(この)高砂島(たかさごじま)を離(はな)れるに際(さい)し、161神(かみ)様(さま)の修祓(しうばつ)を受(う)けて居(ゐ)るのでせう。162マア御(ご)心配(しんぱい)なされますな』
163と平気(へいき)な顔(かほ)にて笑(わら)つてゐる。164竜国別(たつくにわけ)外(ほか)三(さん)人(にん)は滝壺(たきつぼ)を隈(くま)なく捜(さが)し、165どうしても高姫(たかひめ)の姿(すがた)の見(み)えざるに絶望(ぜつばう)の声(こゑ)を放(はな)ち乍(なが)ら、166二人(ふたり)の前(まへ)に赤裸(まつぱだか)の儘(まま)、167集(あつ)まり来(きた)り、
168竜国別(たつくにわけ)『お母(か)アさま、169如何(どう)しても駄目(だめ)ですワ。170仮令(たとへ)肉体(にくたい)が現(あら)はれた所(ところ)で、171最早(もはや)縡切(ことき)れて了(しま)つてゐるに違(ちが)ひありませぬ。172困(こま)つたことが出来(でき)ましたなあ』
173と思案顔(しあんがほ)にうなだれる。
174タルチール『あなたは三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)竜国別(たつくにわけ)さまで御座(ござ)いましたか』
175竜国別(たつくにわけ)『ヤア貴方(あなた)は何処(いづこ)のお方(かた)か存(ぞん)じませぬが、176余(あま)りあわてまして、177此処(ここ)にお居(ゐ)でになるのも気(き)が着(つ)かず、178失礼(しつれい)致(いた)しました。179どうでせう、180高姫(たかひめ)さまはモウ駄目(だめ)でせうかなあ』
181タルチール『マア気(き)を落(おち)つけなさい。182何事(なにごと)も惟神(かむながら)に任(まか)すより仕方(しかた)がありませぬ。183高姫(たかひめ)さまは随分(ずゐぶん)我(が)の強(つよ)い人(ひと)ですから、184こんな事(こと)がなくては本当(ほんたう)の身魂研(みたまみが)きは出来(でき)ませぬからなア』
185常彦(つねひこ)『貴方(あなた)は高島丸(たかしままる)の船長(せんちやう)タルチールさまでは御座(ござ)いませぬか。186私(わたくし)は常彦(つねひこ)と申(まを)す者(もの)、187久(ひさ)し振(ぶ)りでお目(め)にかかります』
188竜国別(たつくにわけ)『常彦(つねひこ)さま、189此(この)方(かた)を如何(どう)して知(し)つてゐるのだ』
190常彦(つねひこ)『高姫(たかひめ)さまと春彦(はるひこ)と吾々(われわれ)三(さん)人(にん)が高砂島(たかさごじま)へ小舟(こぶね)に乗(の)つて出(で)て来(く)る途中(とちう)、191助(たす)けて下(くだ)さつた御(お)方(かた)です』
192竜国別(たつくにわけ)『珍(めづ)らしい所(ところ)でお目(め)にかかりました。193何(なに)かの御縁(ごえん)で御座(ござ)いませう。194さうして又(また)貴方(あなた)は斯様(かやう)な所(ところ)へお越(こ)しになつたのは、195何(なに)か深(ふか)い訳(わけ)があるのでは御座(ござ)いませぬか』
196タルチール『私(わたくし)は高島丸(たかしままる)の船中(せんちう)に於(おい)て、197言依別(ことよりわけの)命(みこと)、198国依別(くによりわけ)様(さま)より三五教(あななひけう)の教理(けうり)を聞(き)かして頂(いただ)き、199直(ただ)ちに入信(にふしん)致(いた)しまして、200船長(せんちやう)を伜(せがれ)のテルチルに譲(ゆづ)り、201私(わたくし)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)、202国依別(くによりわけ)様(さま)に従(したが)ひ、203ハラの港(みなと)へ上陸(じやうりく)し、204言依別(ことよりわけ)様(さま)の命令(めいれい)に依(よ)つて、205テルの国(くに)の宣伝(せんでん)を言(い)ひ付(つ)けられ、206此(こ)の乾(いぬゐ)の滝(たき)に時々(ときどき)身魂研(みたまみが)きに参(まゐ)つて居(を)りました。207今日(けふ)は端(はし)なくも三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)にお出会(であ)ひ申(まを)し、208実(じつ)に愉快(ゆくわい)な気分(きぶん)に打(う)たれました』
209竜国別(たつくにわけ)『それは不思議(ふしぎ)の御縁(ごえん)で御座(ござ)いますなア、210併(しか)し乍(なが)ら高姫(たかひめ)さまの身(み)の上(うへ)が案(あん)じられて、211ゆつくり御(お)話(はなし)を承(うけたま)はる気(き)も致(いた)しませぬ。212今一度(いまいちど)捜索(そうさく)を行(や)つて見(み)ますから、213後(あと)でゆるゆる御(お)話(はなし)を承(うけたま)はりませう』
214タルチール『決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)なさいますな。215此(この)滝壺(たきつぼ)には横穴(よこあな)があつて、216そこから水(みづ)が或(あ)る地点(ちてん)へ流出(りうしゆつ)して居(を)ります。217大方(おほかた)其(その)穴(あな)へ吸(す)ひ込(こ)まれたのでせう。218キツト今頃(いまごろ)は無事(ぶじ)でいらつしやいませう。219貴方(あなた)もお望(のぞ)みならば、220滝壺(たきつぼ)の横穴(よこあな)を潜(くぐ)り、221私(わたくし)と一緒(いつしよ)に高姫(たかひめ)さまの所(ところ)へ行(ゆ)かうぢやありませぬか』
222竜国別(たつくにわけ)『合点(がつてん)の行(ゆ)かぬ事(こと)を仰(あふ)せられます。223うつかりして居(ゐ)ると、224幽冥界(いうめいかい)へ往(い)つて了(しま)ふのではありますまいかな』
225タルチール『別状(べつじやう)は御座(ござ)いますまい』
226と話(はな)して居(ゐ)る。227傍(かたはら)の木(き)の茂(しげ)みより、228高姫(たかひめ)は赤裸(まつばだか)の儘(まま)、229二人(ふたり)の美(うる)はしい女(をんな)に手(て)を引(ひ)かれ、230一行(いつかう)の前(まへ)に帰(かへ)つて来(き)た。
231竜国別(たつくにわけ)『ヤアこれは高姫(たかひめ)さま、232能(よ)うマア無事(ぶじ)で帰(かへ)つて来(き)て下(くだ)さいました。233吾々(われわれ)四(よ)人(にん)は貴方(あなた)のお姿(すがた)が見(み)えなくなつたので、234滝壺(たきつぼ)へ飛(と)び込(こ)み捜(さが)してゐた所(ところ)で御座(ござ)います』
235高姫(たかひめ)『ハイ有難(ありがた)う、236エライ心配(しんぱい)をかけました。237何(なん)とはなしに飛(と)び込(こ)むや否(いな)や、238真赤(まつか)いけの者(もの)がやつて来(き)て、239私(わたし)の足(あし)を銜(くわ)へたと思(おも)つたら、240ドンドンドンドンと矢(や)の如(ごと)く深(ふか)い水(みづ)の中(なか)を流(なが)され、241パツと明(あか)くなつたと思(おも)へば、242大変(たいへん)な広(ひろ)い底(そこ)の浅(あさ)い池(いけ)へ流(なが)されました。243其(その)池(いけ)の中(なか)に美(うつく)しい岩島(いはしま)があり、244其(その)上(うへ)に綺麗(きれい)な小(ちい)さい家(いへ)が建(た)つてゐました。245其(その)家(いへ)の中(なか)から此(この)お二人(ふたり)の方(かた)が現(あら)はれて、246私(わたし)の手(て)を取(と)り救(すく)ひあげ、247ここ迄(まで)連(つ)れて来(き)て下(くだ)さつたのですよ。248どうぞ御(お)礼(れい)を申(まを)して下(くだ)さいませ』
249竜国別(たつくにわけ)『これはどうも御(お)二人(ふたり)様(さま)、250偉(えら)い御(お)世話(せわ)になりました。251竜国別(たつくにわけ)、252一同(いちどう)を代表(だいへう)して御(お)礼(れい)を申上(まをしあ)げます。253貴方(あなた)は何(なん)と云(い)ふ御(お)方(かた)で御座(ござ)いますか、254お差支(さしつかへ)なくば、255何卒(どうぞ)お名(な)をお名乗(なの)り下(くだ)さいませ。256私(わたくし)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)竜国別(たつくにわけ)と申(まを)す者(もの)で御座(ござ)います』
257女(をんな)の一(いち)『貴方(あなた)が噂(うはさ)に高(たか)き竜国別(たつくにわけ)様(さま)で御座(ござ)いましたか。258黄金(わうごん)の玉(たま)の詮索(せんさく)に、259はるばる高砂島(たかさごじま)まで、260親子(おやこ)共(とも)にお越(こ)しになつたと云(い)ふ事(こと)を、261言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)より承(うけたま)はつて居(を)りました。262其(その)玉(たま)は此(この)島(しま)には御座(ござ)いますまいがなア』
263竜国別(たつくにわけ)『何(なん)と詳(くは)しいことを御存(ごぞん)じですな、264さうして言依別(ことよりわけ)様(さま)には何時(いつ)御(お)会(あ)ひになりましたか』
265女(をんな)の一(いち)『ハイ、266琉球(りうきう)の近海(きんかい)でお目(め)にかかり、267高姫(たかひめ)さまが後(あと)を追(お)うて御(お)いでになることやら、268鷹依姫(たかよりひめ)様(さま)がそれに先(さき)んじて玉詮議(たませんぎ)にお越(こ)しになつたことを一伍(いちぶ)一什(しじう)承(うけたま)はりました』
269竜国別(たつくにわけ)『さうして貴女(あなた)のお名(な)は何(なん)と申(まを)しますか』
270女(をんな)の一(いち)『ハイ、271私(わたくし)は永(なが)らく比沼(ひぬ)の真名井(まなゐ)の宝座(ほうざ)に仕(つか)へて居(ゐ)ました清子姫(きよこひめ)で御座(ござ)います。272一人(ひとり)は私(わたくし)の妹(いもうと)で照子(てるこ)と申(まを)します。273言依別(ことよりわけ)の神(かみ)様(さま)より、274常世(とこよ)の国(くに)の宣伝(せんでん)を仰(あふ)せ付(つ)けられましたので、275一巡(いちじゆん)常世(とこよ)の国(くに)を渡(わた)り、276神界(しんかい)の都合(つがふ)に依(よ)つて、277一(いつ)ケ月(げつ)程(ほど)以前(いぜん)に此処(ここ)に参(まゐ)り、278身魂(みたま)を清(きよ)め、279貴方(あなた)方(がた)のここをお通(とほ)り遊(あそ)ばすことを知(し)つて、280お待受(まちう)けして居(を)りました。281高姫(たかひめ)様(さま)も結構(けつこう)な水(みづ)くぐりの御(ご)修業(しうげふ)が出来(でき)ましたから、282最早(もはや)これで大丈夫(だいぢやうぶ)で御座(ござ)います。283妾(わらは)姉妹(おとどい)も一度(いちど)此(この)経路(けいろ)を踏(ふ)んだので御座(ござ)います』
284竜国別(たつくにわけ)『何(なん)と不思議(ふしぎ)な修業場(しうげふば)もあるものですな。285吾々(われわれ)の様(やう)な身魂(みたま)の汚(けが)れた者(もの)は到底(たうてい)無事(ぶじ)に通過(つうくわ)することは出来(でき)ますまい』
286清子姫(きよこひめ)『これ位(くらゐ)の水道(すゐだう)が通過(つうくわ)出来(でき)ない様(やう)な事(こと)では、287到底(たうてい)肝腎(かんじん)の御(ご)神業(しんげふ)は勤(つと)まりませぬよ。288皆(みな)さま如何(いかが)です。289一度(いちど)御(ご)修行(しうぎやう)遊(あそ)ばしましたら……』
290竜国別(たつくにわけ)『イヤもう結構(けつこう)で御座(ござ)います』
291と気味(きみ)悪(わる)さうに慄(ふる)うて居(ゐ)る。
292清子姫(きよこひめ)『ホヽヽヽヽ』
293(大正一一・八・二八 旧七・六 松村真澄録)
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