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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第33巻(申の巻)
序歌
瑞祥
第1篇 誠心誠意
第1章 高論濁拙
第2章 灰猫婆
第3章 言霊停止
第4章 楽茶苦
第2篇 鶴亀躍動
第5章 神寿言
第6章 皮肉歌
第7章 心の色
第8章 春駒
第9章 言霊結
第10章 神歌
第11章 波静
第12章 袂別
第3篇 時節到来
第13章 帰途
第14章 魂の洗濯
第15章 婆論議
第16章 暗夜の歌
第17章 感謝の涙
第18章 神風清
第4篇 理智と愛情
第19章 報告祭
第20章 昔語
第21章 峯の雲
第22章 高宮姫
第23章 鉄鎚
第24章 春秋
第25章 琉の玉
第26章 若の浦
伊豆温泉旅行につき訪問者人名詠込歌
附記 湯ケ島所感
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第33巻(申の巻)
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<<< 昔語
(B)
(N)
高宮姫 >>>
第二一章
峯
(
みね
)
の
雲
(
くも
)
〔九三六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
篇:
第4篇 理智と愛情
よみ(新仮名遣い):
りちとあいじょう
章:
第21章 峯の雲
よみ(新仮名遣い):
みねのくも
通し章番号:
936
口述日:
1922(大正11)年09月19日(旧07月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年11月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫と玉治別の出自と半生の歌を聞いて、東助は両手を組み頭をうなだれて太い息をつきながらこの光景を見守っていた。
一方、高山彦も自身の懺悔の歌を歌い始めた。高山彦はコーカス山の大気津姫の重臣であった父母の間に生まれたが、黄泉比良坂の戦いで大気津姫一派はコーカス山を追われてアーメニヤに逃げた。
兄が家を継いだので、高山彦は気ままに育ち、若い女と駆け落ちして都を出たという。しかしその途上、女は谷底へ落ちて死んでしまった。嘆き悲しむ高山彦が柏井川に来たところ、その女にどことなく似た女と行き会い関係を持ったが、人の足音に驚いて逃げ去ってしまったという。
それ以来その女を探していたが、黒姫の昔語りを聞いて、まさにそれが現在の妻である黒姫であったと悟り、また玉治別が自分の実子であることを悟ったことを明かした。
高山彦の告白に、ここに夫婦親子の対面はなり、高山彦、黒姫、玉治別は互いに取りすがり、嬉し涙を流した。
高姫はこの光景に驚きながらも、自分はまだ罪障が取れずに悩みが解決しないのだと語った。黒姫は、高姫も若いころに捨て子をしたと聞いたのだが、そのことなのかと問いかけた。そしてその捨て子の守り刀の様子や、幼名や年までも言い当てて高姫を驚かせた。
黒姫は、自分が探索に出かけた筑紫の島で、国の神司である建国別に面会したことを歌って聞かせた。建国別は捨て子であったが国司・建日別の婿となった人物であった。そして真の父母を探しているという。
黒姫は建国別の話を聞いて、高姫の昔語りを思いだし、もしや建国別は高姫の子ではないかと思いながらも、高姫本人に確認しようと筑紫の国では何も語らずに自転倒島まで戻ってきたことを明かした。
玉治別も、黒姫の話を聞いてもしや建国別は高姫の息子ではないかと、筑紫の島までの案内を買ってでた。高姫はしばしうなだれてお礼を述べるのみであった。そしてそんな高姫を東助は顔色を変えて見つめていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-06 05:03:38
OBC :
rm3321
愛善世界社版:
230頁
八幡書店版:
第6輯 335頁
修補版:
校定版:
241頁
普及版:
91頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
『
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば、
002
実
(
じつ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
さまも
奇妙
(
きめう
)
な
運命
(
うんめい
)
を
辿
(
たど
)
られたものですな。
003
随分
(
ずゐぶん
)
貴女
(
あなた
)
も
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
引手
(
ひくて
)
数多
(
あまた
)
の
花菖蒲
(
はなあやめ
)
、
004
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
に
随分
(
ずゐぶん
)
チヤホヤされたでせう。
005
何処
(
どこ
)
ともなしに
床
(
ゆか
)
しい
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
が
未
(
いま
)
だに
備
(
そな
)
はつて
居
(
ゐ
)
ますよ。
006
オホヽヽヽ……
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らこんなお
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
007
私
(
わたし
)
も
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
に
会
(
あ
)
うた
様
(
やう
)
に
嬉
(
うれ
)
しうなつて
来
(
き
)
ました。
008
……
高山彦
(
たかやまひこ
)
さま、
009
貴方
(
あなた
)
も
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
に
子
(
こ
)
でも
生
(
う
)
みつけて
置
(
お
)
きなされば、
010
今頃
(
いまごろ
)
はさぞ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
が
出来
(
でき
)
御
(
ご
)
愉快
(
ゆくわい
)
で
御座
(
ござ
)
いませうがな』
011
黒姫
(
くろひめ
)
『ハイ、
012
誠
(
まこと
)
に
恥
(
はづ
)
かしい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
013
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
頂
(
いただ
)
いた
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
を
捨
(
す
)
てたり、
014
こんな
罰当
(
ばちあた
)
りの
私
(
わたし
)
でも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
015
斯
(
こ
)
んな
嬉
(
うれ
)
しい
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
をさして
下
(
くだ
)
さいました。
016
随分
(
ずゐぶん
)
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
気儘
(
きまま
)
の
事
(
こと
)
をして
廻
(
まは
)
り、
017
両親
(
りやうしん
)
の
事
(
こと
)
は
左程
(
さほど
)
にも
思
(
おも
)
はず、
018
夫
(
をつと
)
の
事
(
こと
)
や
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
の
事
(
こと
)
ばかり
尋
(
たづ
)
ねて
居
(
を
)
りました。
019
私
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
も
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
るか
居
(
を
)
らぬか
知
(
し
)
りませぬが、
020
私
(
わたし
)
が
子
(
こ
)
に
恋
(
こ
)
ひ
焦
(
こが
)
れる
様
(
やう
)
に
私
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
も
嘸
(
さぞ
)
や
嘸
(
さぞ
)
私
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
を
気
(
き
)
にかけて
居
(
を
)
られるでせう。
021
本当
(
ほんたう
)
に
親
(
おや
)
の
心
(
こころ
)
と
云
(
い
)
ふものは
何処
(
どこ
)
まで
慈愛
(
じあい
)
の
深
(
ふか
)
いものか
分
(
わか
)
りませぬ。
022
斯
(
か
)
うなつて
来
(
く
)
ると
両親
(
りやうしん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
も
案
(
あん
)
じられ、
023
又
(
また
)
伜
(
せがれ
)
の
玉治別
(
たまはるわけ
)
が
折角
(
せつかく
)
母親
(
ははおや
)
に
会
(
あ
)
うて
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
を
)
りますが、
024
屹度
(
きつと
)
父親
(
てておや
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
りたいと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひ
御座
(
ござ
)
いませぬ。
025
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
私
(
わたし
)
の
不心得
(
ふこころえ
)
から、
026
一人
(
ひとり
)
の
伜
(
せがれ
)
までに
切
(
せつ
)
ない
思
(
おも
)
ひをさせます。
027
あゝ
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
028
何卒
(
どうぞ
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい。
029
屹度
(
きつと
)
私
(
わたし
)
がお
前
(
まへ
)
のお
父
(
とう
)
さまを
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
けても
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
し、
030
お
会
(
あ
)
はせしませうから……』
031
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
勿体
(
もつたい
)
ない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな。
032
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
033
何時
(
いつ
)
まで
探
(
さが
)
しても
分
(
わか
)
りさうな
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
034
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さらうと
思召
(
おぼしめ
)
したら
屹度
(
きつと
)
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さいますから……そんな
事
(
こと
)
に
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
まさず、
035
一心
(
いつしん
)
に
母子
(
おやこ
)
が
揃
(
そろ
)
うて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
を
勤
(
つと
)
めさして
頂
(
いただ
)
きませうか』
036
黒姫
(
くろひめ
)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますな。
037
母子
(
おやこ
)
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
き
合
(
あ
)
うて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
しませう』
038
東助
(
とうすけ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み
頭
(
かしら
)
を
項垂
(
うなだ
)
れ、
039
時々
(
ときどき
)
太
(
ふと
)
い
息
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
き、
040
物
(
もの
)
をも
言
(
い
)
はず
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
打看守
(
うちみまも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
041
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
042
高山彦
『コーカス
山
(
ざん
)
に
現
(
あら
)
はれし
043
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
の
八王
(
やつこす
)
と
044
仕
(
つか
)
へまつりし
千代彦
(
ちよひこ
)
や
045
万代姫
(
よろづよひめ
)
の
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
046
生
(
うま
)
れし
吾
(
われ
)
は
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
047
隙間
(
すきま
)
の
風
(
かぜ
)
にも
当
(
あ
)
てられず
048
蝶
(
てふ
)
よ
花
(
はな
)
よと
育
(
はぐく
)
まれ
049
栄耀
(
えいやう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
育
(
そだ
)
ちしが
050
松
(
まつ
)
、
竹
(
たけ
)
、
梅
(
うめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
051
石凝姥
(
いしこりどめ
)
や
高彦
(
たかひこ
)
や
052
其
(
その
)
他
(
た
)
数多
(
あまた
)
の
神司
(
かむつかさ
)
053
コーカス
山
(
ざん
)
に
現
(
あら
)
はれて
054
言霊戦
(
ことたません
)
を
開
(
ひら
)
きてゆ
055
老
(
おい
)
たる
父母
(
ふぼ
)
は
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
の
056
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
057
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
先
(
さき
)
はアーメニヤ
058
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
に
隠
(
かく
)
れまし
059
ウラルの
神
(
かみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
060
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
守
(
まも
)
りつつ
061
世人
(
よびと
)
を
導
(
みちび
)
き
給
(
たま
)
ひけり
062
吾
(
われ
)
には
三人
(
みたり
)
の
兄弟
(
おとどひ
)
が
063
いと
健
(
まめ
)
やかに
生
(
お
)
ひ
育
(
そだ
)
ち
064
父
(
ちち
)
の
家
(
いへ
)
をば
嗣
(
つ
)
ぎまして
065
暮
(
くら
)
し
玉
(
たま
)
へど
弟
(
おとうと
)
と
066
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
吾
(
われ
)
こそは
067
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
身
(
み
)
なりとて
068
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
館
(
やかた
)
を
抜
(
ぬ
)
け
出
(
いだ
)
し
069
若
(
わか
)
き
女
(
をんな
)
と
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて
070
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
にフサの
国
(
くに
)
071
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
折
(
をり
)
しも
両人
(
りやうにん
)
は
072
新井
(
あらゐ
)
の
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
ゆる
折
(
をり
)
073
谷
(
たに
)
に
架
(
か
)
けたる
丸木橋
(
まるきばし
)
074
危
(
あやふ
)
く
之
(
これ
)
を
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
し
075
二人
(
ふたり
)
は
千尋
(
ちひろ
)
の
谷底
(
たにそこ
)
に
076
落
(
お
)
ちて
果敢
(
あへ
)
なくなりにけり
077
かかる
処
(
ところ
)
へ
杣人
(
そまびと
)
が
078
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りて
吾
(
わが
)
身
(
み
)
をば
079
種々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
介抱
(
かいほう
)
し
080
吾
(
われ
)
は
危
(
あやふ
)
き
生命
(
せいめい
)
を
081
助
(
たす
)
かりたれど
吾
(
わが
)
恋
(
こ
)
ふる
082
女
(
をんな
)
のお
里
(
さと
)
は
影
(
かげ
)
見
(
み
)
えず
083
深谷川
(
ふかたにがは
)
の
激流
(
げきりう
)
に
084
流
(
なが
)
されたるは
是非
(
ぜひ
)
もなし
085
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
永
(
なが
)
らへて
086
一人
(
ひとり
)
暮
(
くら
)
すも
詮
(
せん
)
なしと
087
柏井川
(
かしはゐがは
)
に
架
(
か
)
け
渡
(
わた
)
す
088
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
089
夜目
(
よめ
)
には
確
(
しつか
)
と
分
(
わか
)
らねど
090
お
里
(
さと
)
の
顔
(
かほ
)
によく
似
(
に
)
たり
091
何
(
いづ
)
れの
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
にて
092
危
(
あやふ
)
き
生命
(
いのち
)
を
免
(
のが
)
れしか
093
不思議
(
ふしぎ
)
なことと
擦
(
す
)
り
寄
(
よ
)
つて
094
よくよく
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
むれば
095
女
(
をんな
)
はお
里
(
さと
)
に
非
(
あら
)
ずして
096
色香
(
いろか
)
勝
(
すぐ
)
れし
真娘
(
まなむすめ
)
097
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
の
曲者
(
くせもの
)
に
098
取
(
と
)
り
挫
(
ひし
)
がれて
懊悩
(
あうなう
)
の
099
雲
(
くも
)
はいつしか
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
り
100
再
(
ふたた
)
び
陽気
(
やうき
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り
101
擦
(
す
)
れつ
縺
(
もつ
)
れつ
顔
(
かほ
)
と
顔
(
かほ
)
102
眺
(
なが
)
めて
忽
(
たちま
)
ち
恋
(
こひ
)
の
糸
(
いと
)
103
搦
(
から
)
まるままに
傍
(
かたはら
)
の
104
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
ち
入
(
い
)
りて
105
○○○の
折柄
(
をりから
)
に
106
けたたましくも
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
る
107
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
耳
(
みみ
)
につき
108
パツと
驚
(
おどろ
)
き
立
(
た
)
ち
別
(
わか
)
れ
109
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りぬ
110
吾
(
われ
)
はそれよりフサの
国
(
くに
)
111
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
と
逍遥
(
さまよ
)
ひつ
112
若
(
もし
)
やお
里
(
さと
)
は
現世
(
うつしよ
)
に
113
生永
(
いきなが
)
らへて
居
(
ゐ
)
はせぬか
114
飽
(
あく
)
まで
探
(
さが
)
し
求
(
もと
)
めむと
115
雲
(
くも
)
をば
掴
(
つか
)
む
頼
(
たよ
)
りなき
116
詮議
(
せんぎ
)
に
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
りしが
117
今
(
いま
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
物語
(
ものがたり
)
118
聞
(
き
)
いて
驚
(
おどろ
)
く
胸
(
むね
)
の
裡
(
うち
)
119
柏井川
(
かしはゐがは
)
の
橋
(
はし
)
の
上
(
へ
)
で
120
会
(
あ
)
うたる
女
(
をんな
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
か
121
さすれば
玉治別
(
たまはるわけの
)
神
(
かみ
)
122
全
(
まつた
)
く
吾
(
われ
)
の
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
123
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
124
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
山
(
やま
)
よりも
125
勝
(
すぐ
)
れて
高
(
たか
)
く
海
(
うみ
)
よりも
126
いやまし
深
(
ふか
)
く
思
(
おも
)
はれて
127
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
は
雨
(
あめ
)
となり
128
降
(
ふ
)
り
注
(
そそ
)
ぐなる
今日
(
けふ
)
の
宵
(
よひ
)
129
玉治別
(
たまはるわけ
)
よ
黒姫
(
くろひめ
)
よ
130
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
汝
(
な
)
が
父
(
ちち
)
ぞ
131
汝
(
なれ
)
が
昔
(
むかし
)
の
夫
(
をつと
)
ぞや
132
親子
(
おやこ
)
の
縁
(
えにし
)
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
133
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
く
明
(
あきら
)
かに
134
なりたる
上
(
うへ
)
は
今
(
いま
)
よりは
135
親子
(
おやこ
)
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せつつ
136
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
137
誠
(
まこと
)
を
捧
(
ささ
)
げて
朝夕
(
あさゆふ
)
に
138
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
尽
(
つ
)
くすべし
139
昔
(
むかし
)
の
罪
(
つみ
)
が
廻
(
めぐ
)
り
来
(
き
)
て
140
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
141
憂目
(
うきめ
)
を
忍
(
しの
)
び
迷
(
まよ
)
ひたる
142
夫婦
(
ふうふ
)
の
仲
(
なか
)
も
皇神
(
すめかみ
)
の
143
恵
(
めぐみ
)
の
鞭
(
むち
)
の
戒
(
いまし
)
めか
144
今
(
いま
)
は
心
(
こころ
)
も
打
(
う
)
ち
解
(
と
)
けて
145
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
は
殊更
(
ことさら
)
に
146
弥
(
いや
)
明
(
あきら
)
けく
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
は
147
弥
(
いや
)
清
(
きよ
)
らけくなりにけり
148
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
も
今
(
いま
)
までの
149
悲哀
(
ひあい
)
の
音
(
おと
)
は
何処
(
どこ
)
へやら
150
千代
(
ちよ
)
を
祝
(
しゆく
)
する
歓
(
ゑら
)
ぎ
声
(
ごゑ
)
151
小雲
(
こくも
)
の
流
(
なが
)
れもサヤサヤと
152
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
親子
(
おやこ
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
を
153
祝
(
いは
)
ふが
如
(
ごと
)
く
聞
(
きこ
)
ゆなり
154
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
155
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
156
黒姫
(
くろひめ
)
、
157
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
物語
(
ものがたり
)
に
二度
(
にど
)
吃驚
(
びつく
)
り、
158
……あの
時
(
とき
)
の
青年
(
せいねん
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
様
(
さま
)
であつたか……
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
であつたか……と
双方
(
さうはう
)
より
取縋
(
とりすが
)
り
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかき
暮
(
く
)
れる
様
(
さま
)
、
159
実
(
じつ
)
に
割
(
わり
)
なく
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
160
高姫
(
たかひめ
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
161
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
が
重
(
かさ
)
なれば
重
(
かさ
)
なるものですな。
162
お
前
(
まへ
)
さまも
全
(
まつた
)
く
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
罪障
(
めぐり
)
がとれたと
見
(
み
)
えて、
163
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
をさして
下
(
くだ
)
さつたのですよ。
164
そして
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまは
露
(
つゆ
)
の
契
(
ちぎり
)
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
165
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
の
貴方
(
あなた
)
のラバーしたお
方
(
かた
)
、
166
なんとまア
夢
(
ゆめ
)
に
牡丹餅
(
ぼたもち
)
を
喰
(
く
)
つた
様
(
やう
)
な
甘
(
うま
)
い
話
(
はなし
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
167
それにつけても
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
はまだ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
許
(
ゆる
)
しがないと
見
(
み
)
えまして、
168
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
大変
(
たいへん
)
な
悩
(
なや
)
みを
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
169
あゝ
如何
(
どう
)
かして
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く、
170
此
(
この
)
悩
(
なや
)
みの
雲
(
くも
)
が
晴
(
は
)
れ、
171
青天
(
せいてん
)
白日
(
はくじつ
)
、
172
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
の
様
(
やう
)
にサラリとなり
度
(
た
)
いものです。
173
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
174
と
涙声
(
なみだごゑ
)
になつて
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
祈
(
いの
)
りゐる。
175
黒姫
(
くろひめ
)
『
貴女
(
あなた
)
も
何時
(
いつ
)
かのお
話
(
はなし
)
の
序
(
ついで
)
に
一寸
(
ちよつと
)
承
(
うけたま
)
はりましたが、
176
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
に
捨児
(
すてご
)
をなされたさうですが、
177
貴方
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
な
気丈
(
きぢやう
)
なお
方
(
かた
)
でも
矢張
(
やは
)
り
気
(
き
)
にかかりますか』
178
高姫
(
たかひめ
)
『
親子
(
おやこ
)
の
情
(
じやう
)
といふものは
誰
(
たれ
)
しも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
です。
179
年
(
とし
)
が
寄
(
よ
)
れば
寄
(
よ
)
る
程
(
ほど
)
子
(
こ
)
が
恋
(
こ
)
ひしくなるものです。
180
アーア、
181
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
元
(
もと
)
の
親子
(
おやこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
対面
(
たいめん
)
を
遊
(
あそ
)
ばしたに
就
(
つ
)
いて、
182
一入
(
ひとしほ
)
昔
(
むかし
)
の
事
(
こと
)
が
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
され、
183
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
に
一度
(
いちど
)
会
(
あ
)
ひ
度
(
た
)
くなつて
堪
(
たま
)
りませぬ。
184
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
夫
(
をつと
)
は
今
(
いま
)
は
何処
(
どこ
)
に
如何
(
どう
)
して
居
(
を
)
られますやら……
今日
(
けふ
)
となつては
其
(
その
)
夫
(
をつと
)
と
出会
(
であ
)
つた
処
(
ところ
)
が、
185
夫婦
(
ふうふ
)
となる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬなれども、
186
せめて……お
前
(
まへ
)
はあの
時
(
とき
)
の
妻
(
つま
)
であつたか、
187
夫
(
をつと
)
であつたか、
188
子
(
こ
)
であつたか……と
名乗
(
なの
)
り
合
(
あ
)
つて
見
(
み
)
たう
御座
(
ござ
)
います』
189
と
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
き
沈
(
しづ
)
む。
190
黒姫
(
くろひめ
)
は
確信
(
かくしん
)
あるものの
如
(
ごと
)
くニツコリと
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
191
黒姫
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
192
あまり
迂濶
(
うつかり
)
して
居
(
を
)
つて
貴女
(
あなた
)
のお
話
(
はなし
)
を
十分
(
じふぶん
)
に
記憶
(
きおく
)
して
居
(
を
)
りませぬが、
193
何
(
なん
)
でも
貴女
(
あなた
)
のお
捨
(
す
)
てになつたお
子
(
こ
)
さまには、
194
守刀
(
まもりがたな
)
に
真珠
(
しんじゆ
)
で
十
(
じふ
)
の
字
(
じ
)
の
印
(
しるし
)
を
入
(
い
)
れ
柄元
(
つかもと
)
に「
東
(
ひがし
)
」と「
高
(
たか
)
」との
印
(
しるし
)
をお
入
(
い
)
れになつたぢや
御座
(
ござ
)
いませぬでしたかな』
195
高姫
(
たかひめ
)
『ナニ、
196
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
197
そんな
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
を
私
(
わたし
)
は
申上
(
まをしあ
)
げた
様
(
やう
)
な
記憶
(
きおく
)
はありませぬが、
198
左様
(
さやう
)
の
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げた
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますかな』
199
黒姫
(
くろひめ
)
『そのお
子
(
こ
)
さまの
名
(
な
)
は
金太郎
(
きんたらう
)
とは
申
(
まを
)
しませなんだか、
200
丁度
(
ちやうど
)
今年
(
ことし
)
で
私
(
わたくし
)
と
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
に
三十五
(
さんじふご
)
年
(
ねん
)
になるのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか』
201
東助
(
とうすけ
)
の
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
が
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くよりサツと
変
(
かは
)
つた。
202
高姫
(
たかひめ
)
の
顔
(
かほ
)
も
亦
(
また
)
俄
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
り、
203
目
(
め
)
は
円
(
まる
)
くなり
口先
(
くちさき
)
が
尖
(
とが
)
つて
来
(
き
)
出
(
だ
)
した。
204
高姫
(
たかひめ
)
『
何
(
なん
)
とまあ、
205
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
を
御存
(
ごぞん
)
じで
御座
(
ござ
)
いますな。
206
私
(
わたし
)
はそこ
迄
(
まで
)
お
話
(
はな
)
した
覚
(
おぼ
)
えは
御座
(
ござ
)
いませぬが、
207
如何
(
どう
)
してまアそんな
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
がお
分
(
わか
)
りで
御座
(
ござ
)
いますか。
208
これには
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
のある
事
(
こと
)
でせう。
209
何卒
(
どうぞ
)
明
(
あか
)
らさまに
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
210
黒姫
(
くろひめ
)
は
歌
(
うた
)
を
以
(
もつ
)
てこれに
答
(
こた
)
へける。
211
黒姫
『
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
212
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ
213
建日
(
たけひ
)
の
港
(
みなと
)
を
後
(
あと
)
にして
214
筑紫
(
つくし
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
215
高山峠
(
たかやまたうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
216
其
(
その
)
頂上
(
ちやうじやう
)
となりし
時
(
とき
)
217
傍
(
かたへ
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
218
玉公
(
たまこう
)
、
虎公
(
とらこう
)
面々
(
めんめん
)
の
219
人
(
ひと
)
の
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
きつれば
220
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
の
神司
(
かむつかさ
)
221
建日別
(
たけひわけ
)
の
御
(
おん
)
息女
(
むすめ
)
222
建能姫
(
たけのひめ
)
の
夫
(
つま
)
として
223
誉
(
ほまれ
)
も
高
(
たか
)
き
建国別
(
たけくにわけ
)
の
224
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
は
何人
(
なにびと
)
の
225
捨
(
す
)
てたる
児
(
こ
)
とも
分
(
わか
)
らずに
226
三十五
(
さんじふご
)
才
(
さい
)
の
今年
(
ことし
)
まで
227
父母
(
ふぼ
)
両親
(
りやうしん
)
の
所在
(
ありか
)
をば
228
尋
(
たづ
)
ね
居
(
ゐ
)
ますと
聞
(
き
)
きしより
229
遥々
(
はるばる
)
館
(
やかた
)
に
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
つて
230
夫婦
(
めをと
)
の
神
(
かみ
)
に
面会
(
めんくわい
)
し
231
もしや
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
にあらぬかと
232
昔
(
むかし
)
の
来歴
(
らいれき
)
物語
(
ものがた
)
り
233
種々
(
いろいろ
)
調
(
しら
)
べ
見
(
み
)
たりしに
234
建国別
(
たけくにわけ
)
の
宣
(
の
)
らす
様
(
やう
)
235
吾
(
われ
)
は
如何
(
いか
)
なる
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
か
236
未
(
いま
)
だに
分
(
わか
)
らぬ
悲
(
かな
)
しさに
237
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
三五
(
あななひ
)
の
238
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へて
父母
(
ちちはは
)
の
239
行方
(
ゆくへ
)
を
尋
(
たづ
)
ね
求
(
もと
)
めつつ
240
其
(
その
)
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
る
悲
(
かな
)
しさよ
241
汝
(
なれ
)
の
命
(
みこと
)
は
遠近
(
をちこち
)
と
242
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へつつ
243
出
(
い
)
でます
身
(
み
)
なれば
父母
(
ちちはは
)
に
244
もしもや
会
(
あ
)
はせ
給
(
たま
)
ひなば
245
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
吾
(
わが
)
許
(
もと
)
に
246
知
(
し
)
らさせ
給
(
たま
)
へ
幼名
(
をさなな
)
は
247
聞
(
き
)
くも
目出
(
めで
)
たき
金太郎
(
きんたらう
)
248
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
添
(
そ
)
へたる
綾錦
(
あやにしき
)
249
守袋
(
まもりぶくろ
)
に
名
(
な
)
を
記
(
しる
)
し
250
守刀
(
まもりがたな
)
に
真珠
(
しんじゆ
)
にて
251
十字
(
じふじ
)
の
印
(
しるし
)
を
描
(
ゑが
)
き
出
(
だ
)
し
252
鍔元
(
つばもと
)
篤
(
とく
)
と
眺
(
なが
)
むれば
253
「
東
(
ひがし
)
」と「
高
(
たか
)
」の
印
(
しるし
)
あり
254
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
に
哺
(
はぐく
)
まれ
255
漸
(
やうや
)
く
成人
(
せいじん
)
なせしもの
256
誠
(
まこと
)
の
生
(
う
)
みの
父母
(
ちちはは
)
が
257
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
ゐ
)
ます
事
(
こと
)
ならば
258
一目
(
ひとめ
)
なりとも
会
(
あ
)
ひたやと
259
嘆
(
なげ
)
かせ
給
(
たま
)
ふを
聞
(
き
)
くにつけ
260
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
も
胸
(
むね
)
迫
(
せま
)
り
261
名乗
(
なの
)
り
上
(
あ
)
げむかと
思
(
おも
)
へども
262
いや
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
263
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
に
面会
(
めんくわい
)
し
264
詳
(
くは
)
しき
事
(
こと
)
を
更
(
あらた
)
めて
265
承
(
うけたま
)
はらずは
軽々
(
かるがる
)
に
266
名乗
(
なの
)
りもならずと
口許
(
くちもと
)
へ
267
出
(
で
)
かけた
言葉
(
ことば
)
を
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
268
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
を
装
(
よそほ
)
ひつ
269
此処
(
ここ
)
まで
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
りけり
270
まさかに
汝
(
なれ
)
の
生
(
う
)
みませし
271
御子
(
みこ
)
にはあるまじさり
乍
(
なが
)
ら
272
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬは
三年前
(
みとせまへ
)
273
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
物語
(
ものがたり
)
274
朧気
(
おぼろげ
)
ながら
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し
275
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
に
包
(
つつ
)
まれて
276
名乗
(
なの
)
りも
得
(
え
)
ざりしもどかしさ
277
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
278
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
幸
(
さち
)
はひて
279
高姫
(
たかひめ
)
さまが
愛
(
いと
)
し
子
(
ご
)
に
280
目出度
(
めでたく
)
会
(
あ
)
はせ
給
(
たま
)
ふべき
281
時
(
とき
)
こそ
来
(
きた
)
れるなるべしと
282
何
(
なん
)
とはなしに
勇
(
いさ
)
ましく
283
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
も
晴
(
は
)
れにけり
284
高姫
(
たかひめ
)
さまよ
黒姫
(
くろひめ
)
が
285
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
諾
(
うべな
)
ひて
286
お
心当
(
こころあた
)
りのあるならば
287
人
(
ひと
)
を
遥々
(
はるばる
)
遣
(
つか
)
はして
288
今一度
(
まいちど
)
調
(
あらた
)
め
給
(
たま
)
へかし
289
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
290
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
291
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
屹度
(
きつと
)
建国別
(
たけくにわけの
)
命
(
みこと
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
子息
(
しそく
)
に
間違
(
まちが
)
ひありますまい。
292
如何
(
どう
)
も
私
(
わたし
)
はその
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
します。
293
さうであつたならば、
294
実
(
じつ
)
に
此
(
この
)
上
(
うへ
)
ない
目出
(
めで
)
たい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますがな。
295
私
(
わたくし
)
は
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
両親
(
りやうしん
)
に
邂逅
(
めぐりあ
)
ひ、
296
斯
(
こ
)
んな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
297
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
も、
298
一度
(
いちど
)
遠方
(
ゑんぱう
)
なれども
私
(
わたくし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しますから、
299
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
までお
調
(
しら
)
べにお
出
(
い
)
でになつたら
如何
(
どう
)
でせう』
300
高姫
(
たかひめ
)
『ハイ、
301
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
302
と
言
(
い
)
つたきり
稍
(
やや
)
少時
(
しばし
)
頭
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れ
吐息
(
といき
)
を
洩
(
も
)
らし
居
(
ゐ
)
る。
303
東助
(
とうすけ
)
も
亦
(
また
)
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へ
高姫
(
たかひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
穴
(
あな
)
のあく
程
(
ほど
)
見詰
(
みつ
)
め
居
(
ゐ
)
たり。
304
(
大正一一・九・一九
旧七・二八
北村隆光
録)
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