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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第33巻(申の巻)
序歌
瑞祥
第1篇 誠心誠意
第1章 高論濁拙
第2章 灰猫婆
第3章 言霊停止
第4章 楽茶苦
第2篇 鶴亀躍動
第5章 神寿言
第6章 皮肉歌
第7章 心の色
第8章 春駒
第9章 言霊結
第10章 神歌
第11章 波静
第12章 袂別
第3篇 時節到来
第13章 帰途
第14章 魂の洗濯
第15章 婆論議
第16章 暗夜の歌
第17章 感謝の涙
第18章 神風清
第4篇 理智と愛情
第19章 報告祭
第20章 昔語
第21章 峯の雲
第22章 高宮姫
第23章 鉄鎚
第24章 春秋
第25章 琉の玉
第26章 若の浦
伊豆温泉旅行につき訪問者人名詠込歌
附記 湯ケ島所感
余白歌
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第33巻(申の巻)
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<<< 魂の洗濯
(B)
(N)
暗夜の歌 >>>
第一五章
婆
(
ばば
)
論議
(
ろんぎ
)
〔九三〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
篇:
第3篇 時節到来
よみ(新仮名遣い):
じせつとうらい
章:
第15章 婆論議
よみ(新仮名遣い):
ばばろんぎ
通し章番号:
930
口述日:
1922(大正11)年08月28日(旧07月6日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年11月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
高姫一行は清子姫・照子姫と別れて、ハラの港を目指して行く。
清子姫と照子姫は琉球を出て高砂島にやってきたとき、言依別命の命によって三倉山の谷川に進んで国魂神・竜世姫命の宮に詣で、国人たちを教え導いていたのであった。
そしてヒル、カル、間の国を経て常世の国にわたり、鬼武彦ら白狐神たちに守られてロッキー山の鬼城山に至り三五の道を宣伝した。その後清子姫は日の出神の命によりヒルの都の楓別命の妻となり、照子姫とともにこの瀑布にやってきて百日百夜の修行をしようとしていたところに、高姫一行に出会ったのであった。
後に照子姫は国依別の媒酌によって石熊の妻となった。石熊は国依別から光国別という名を授かり、高照山の館に三五教を開いた。そして楓別命夫婦と合い協力して、ヒル、カルの国にまだ残っていた大蛇を退治する大神業に奉仕することとなった。
ウヅの国に残った春彦は、タルチールとともに常世の国を越えて北方の雪国まで進み、抜群の功名を立てたが、その物語はまた後日とする。
高姫たちはハラの港から高島丸に乗り込んだ。高姫は船中の人々の雑談を聞くともなしに聞いている。松公と鶴公は、高姫が高砂島にやってきたときの無茶な振る舞いを話のネタにして、わざと船中の人々に聞こえよがしに高姫を非難している。
テーリスタンが話に割ってはいると、二人は実はウヅの館の松若彦の命で、高姫を追ってきた三五教の宣伝使だと明かした。二人は、神素盞嗚大神様の御内命で、高姫たちに麻邇の宝珠の誠の御用がさせたいために、付いて教訓を垂れていたのだと語った。
そしてまた、自転倒島に着いたらさらに明かす秘密があると言い、一行は道中を共にすることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
松公(松彦)、鶴公(鶴彦)
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-08-25 23:03:08
OBC :
rm3315
愛善世界社版:
164頁
八幡書店版:
第6輯 311頁
修補版:
校定版:
171頁
普及版:
61頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
はタルチール、
002
清子姫
(
きよこひめ
)
、
003
照子姫
(
てるこひめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
ち、
004
ハラの
港
(
みなと
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
005
因
(
ちなみ
)
に
清子姫
(
きよこひめ
)
は
妹
(
いもうと
)
照子姫
(
てるこひめ
)
と
共
(
とも
)
に
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
り、
006
三倉山
(
みくらやま
)
の
谷川
(
たにがは
)
に
進
(
すす
)
み、
007
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
竜世姫
(
たつよひめの
)
命
(
みこと
)
の
宮
(
みや
)
に
詣
(
まう
)
で、
008
数多
(
あまた
)
の
国人
(
くにびと
)
を
教
(
をし
)
へ
導
(
みちび
)
き、
009
それよりヒル、
010
カル、
011
間
(
はざま
)
の
国
(
くに
)
を
経
(
へ
)
て、
012
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
渡
(
わた
)
り、
013
ロツキー
山
(
ざん
)
に
進
(
すす
)
み、
014
鬼城山
(
きじやうざん
)
に
到
(
いた
)
り、
015
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
以下
(
いか
)
の
白狐神
(
びやくこしん
)
に
守
(
まも
)
られ、
016
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
を
宣伝
(
せんでん
)
し、
017
清子姫
(
きよこひめ
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
りて、
018
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
楓別
(
かへでわけの
)
命
(
みこと
)
の
妻
(
つま
)
となり、
019
ヒルの
館
(
やかた
)
を
立出
(
たちい
)
で、
020
妹
(
いもうと
)
照子姫
(
てるこひめ
)
と
共
(
とも
)
に
此
(
この
)
瀑布
(
ばくふ
)
[
※
前章に出た「乾の滝」のこと
]
に
立向
(
たちむか
)
ひ、
021
山中
(
さんちう
)
の
玉
(
たま
)
の
池
(
いけ
)
の
中心
(
ちうしん
)
に
屹立
(
きつりつ
)
せる
岩石
(
がんせき
)
の
上
(
うへ
)
に
小
(
ちひ
)
さき
亭
(
ちん
)
を
建
(
た
)
て、
022
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
百夜
(
ひやくや
)
の
修行
(
しうぎやう
)
をせむとしてゐたのであつた。
023
又
(
また
)
照子姫
(
てるこひめ
)
は
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
の
媒酌
(
ばいしやく
)
に
依
(
よ
)
つて、
024
バラモン
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
たりし
石熊
(
いしくま
)
の
妻
(
つま
)
となり、
025
高照山
(
たかてるやま
)
の
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て
三五教
(
あななひけう
)
を
開
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
となつた。
026
さうして
石熊
(
いしくま
)
は
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
より、
027
光国別
(
てるくにわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
神名
(
しんめい
)
を
頂
(
いただ
)
き、
028
夫婦
(
ふうふ
)
相和
(
あひわ
)
して
大蛇
(
をろち
)
退治
(
たいぢ
)
の
大神業
(
だいしんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
する
事
(
こと
)
となつた。
029
アマゾン
河
(
がは
)
の
魔神
(
まがみ
)
及
(
および
)
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
の
猛獣
(
まうじう
)
は
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
等
(
ら
)
の
尽力
(
じんりよく
)
に
依
(
よ
)
りて、
030
何
(
いづ
)
れも
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
に
救
(
すく
)
はれたれ
共
(
ども
)
、
031
未
(
いま
)
だヒルの
国
(
くに
)
の
一部
(
いちぶ
)
及
(
および
)
カルの
国
(
くに
)
の
森林
(
しんりん
)
には、
032
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
系統
(
けいとう
)
の
邪神
(
じやしん
)
数多
(
あまた
)
棲息
(
せいそく
)
して
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
033
人民
(
じんみん
)
を
苦
(
くる
)
しめ
居
(
ゐ
)
たれば、
034
茲
(
ここ
)
に
光国別
(
てるくにわけ
)
、
035
楓別
(
かへでわけの
)
命
(
みこと
)
の
両
(
りやう
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
て、
036
苦心
(
くしん
)
惨憺
(
さんたん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
037
漸
(
やうや
)
く
邪神
(
じやしん
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すことが
出来
(
でき
)
たのである。
038
さうして
高姫
(
たかひめ
)
に
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
りし
春彦
(
はるひこ
)
は、
039
タルチールと
共
(
とも
)
に
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
え、
040
遠
(
とほ
)
く
北方
(
ほくぱう
)
の
雪国
(
ゆきぐに
)
に
進
(
すす
)
み、
041
抜群
(
ばつぐん
)
の
功名
(
こうみやう
)
を
立
(
た
)
てたのである。
042
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
は
後日
(
ごじつ
)
更
(
あらた
)
めて
述
(
の
)
ぶることに
致
(
いた
)
しませう。
043
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
はハラの
港
(
みなと
)
より
又
(
また
)
もや
都合
(
つがふ
)
よく
高島丸
(
たかしままる
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
み、
044
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
向
(
むか
)
つて
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
となつた。
045
海上
(
かいじやう
)
波
(
なみ
)
静
(
しづ
)
かにして、
046
さしもに
広
(
ひろ
)
き
大西洋
(
たいせいやう
)
も
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
く
凪
(
な
)
ぎわたつて
居
(
ゐ
)
る。
047
船中
(
せんちう
)
の
無聊
(
むれう
)
を
慰
(
なぐさ
)
むる
為
(
ため
)
、
048
あちらの
隅
(
すみ
)
にも、
049
こちらの
隅
(
すみ
)
にも
雑談
(
ざつだん
)
が
始
(
はじ
)
まつて
居
(
ゐ
)
る。
050
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
静
(
しづ
)
かに
諸人
(
もろびと
)
の
雑談
(
ざつだん
)
をゆかしげに
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
051
高姫
(
たかひめ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
座
(
ざ
)
を
占
(
し
)
めた
三人
(
さんにん
)
連
(
づ
)
れの
男
(
をとこ
)
、
052
チビリチビリと
瓢
(
ひさご
)
の
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら、
053
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
りゐたり。
054
甲
(
かふ
)
(松公)
『
先
(
さき
)
の
年
(
とし
)
、
055
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
からテルの
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
途中
(
とちう
)
、
056
ヤツパリ
此
(
この
)
高島丸
(
たかしままる
)
に
乗
(
の
)
つて
帰
(
かへ
)
つたが、
057
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
妙
(
めう
)
なことがあつたよ。
058
小
(
ちひ
)
さい
舟
(
ふね
)
に
婆
(
ばば
)
が
一人
(
ひとり
)
、
059
屈強
(
くつきやう
)
な
男
(
をとこ
)
が
二人
(
ふたり
)
乗
(
の
)
つて
来
(
き
)
て
暗礁
(
あんせう
)
に
舟
(
ふね
)
を
当
(
あ
)
て、
060
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
061
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
にも
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
を
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
した
所
(
ところ
)
、
062
俄
(
にはか
)
の
暴風
(
ばうふう
)
で
波
(
なみ
)
は
高
(
たか
)
くなり、
063
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
064
高島丸
(
たかしままる
)
がそこを
通
(
とほ
)
り
合
(
あは
)
せ、
065
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げた
事
(
こと
)
がある。
066
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
何
(
なん
)
でも、
067
高姫
(
たかひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
だと
記憶
(
きおく
)
して
居
(
ゐ
)
るが、
068
舟
(
ふね
)
の
上
(
うへ
)
から
真逆
(
まつさか
)
さまに
海中
(
かいちう
)
へ
墜落
(
つゐらく
)
し、
069
連
(
つ
)
れの
男
(
をとこ
)
に
助
(
たす
)
けられて、
070
反対
(
はんたい
)
に
理屈
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
うた
悪垂婆
(
あくたればば
)
アが
乗
(
の
)
つてゐた。
071
随分
(
ずゐぶん
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には
妙
(
めう
)
な
婆
(
ばば
)
アもあるものぢやないか』
072
乙
(
おつ
)
(鶴公)
『
高姫
(
たかひめ
)
に
限
(
かぎ
)
らず、
073
どこの
婆
(
ばば
)
アでも
中々
(
なかなか
)
意地
(
いぢ
)
の
悪
(
わる
)
いものだよ。
074
それだから
老婆心
(
らうばしん
)
と
云
(
い
)
うて
人
(
ひと
)
が
厭
(
いや
)
がるのだ。
075
婆
(
ばば
)
アに
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
ア
一人
(
ひとり
)
もありやしない。
076
俺
(
おれ
)
んとこも
女房
(
にようばう
)
が
来
(
き
)
てから、
077
今迄
(
いままで
)
大切
(
たいせつ
)
にしてくれた
内
(
うち
)
の
母者人
(
ははじやしと
)
も
俄
(
にはか
)
に
心機
(
しんき
)
一転
(
いつてん
)
して、
078
一人
(
ひとり
)
息子
(
むすこ
)
の
俺
(
おれ
)
に
対
(
たい
)
してさへ、
079
何
(
なん
)
とか
彼
(
かん
)
とか
云
(
い
)
つて
強
(
つよ
)
く
当
(
あた
)
るのだものなア。
080
嫁
(
よめ
)
と
名
(
な
)
がつきや
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
も
憎
(
にく
)
いとか
云
(
い
)
つて
婆
(
ばば
)
アのつむじ
曲
(
まが
)
りは、
081
如何
(
どう
)
にも
斯
(
か
)
うにも
仕方
(
しかた
)
がないものだ。
082
余
(
あま
)
り
内
(
うち
)
の
婆
(
ばば
)
アが
嫁
(
よめ
)
につらく
当
(
あた
)
つて
苛
(
いぢ
)
め
散
(
ち
)
らすものだから、
083
俺
(
おれ
)
も
見
(
み
)
るに
見
(
み
)
かねて……
婆
(
ばあ
)
さま、
084
まだ
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
い
嫁
(
よめ
)
だから、
085
経験
(
けいけん
)
がないのは
無理
(
むり
)
はない。
086
これからボツボツと
教
(
をし
)
へ
込
(
こ
)
んで、
087
家風
(
かふう
)
に
合
(
あ
)
ふ
様
(
やう
)
に、
088
婆
(
ば
)
アさまのお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るやうにさすから、
089
暫
(
しばら
)
く
女房
(
にようばう
)
のする
事
(
こと
)
は、
090
うるさくても
目
(
め
)
をつぶつてゐて
下
(
くだ
)
さい……と
頼
(
たの
)
み
込
(
こ
)
んだ
所
(
ところ
)
、
091
婆
(
ば
)
アさまの
怒
(
おこ
)
るの
怒
(
おこ
)
らないのつて、
092
忽
(
たちま
)
ち
目
(
め
)
を
縦
(
たて
)
にして
了
(
しま
)
ひ……お
前
(
まへ
)
は
今迄
(
いままで
)
私
(
わし
)
に
随分
(
ずゐぶん
)
孝行
(
かうかう
)
にして
呉
(
く
)
れたが、
093
あのお
亀
(
かめ
)
が
来
(
き
)
てから、
094
俄
(
にはか
)
に
了見
(
りやうけん
)
が
悪
(
わる
)
くなり、
095
親不孝
(
おやふかう
)
になりよつた。
096
これと
云
(
い
)
ふのも、
097
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
が
悪
(
わる
)
いのぢやない。
098
あのお
亀
(
かめ
)
奴
(
め
)
が
此
(
この
)
年老
(
としより
)
を
邪魔者
(
じやまもの
)
扱
(
あつか
)
ひにして、
099
早
(
はや
)
くあの
婆
(
ばば
)
アが
死
(
し
)
んでくれれば
良
(
い
)
いがと
毎朝
(
まいあさ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
祈願
(
きぐわん
)
をこめて
居
(
ゐ
)
やがる。
100
私
(
わたし
)
の
血統
(
ちすぢ
)
にはそんな
不孝
(
ふかう
)
な
子
(
こ
)
は
生
(
うま
)
れる
気遣
(
きづか
)
ひはない、
101
鶴公
(
つるこう
)
は
性来
(
しやうらい
)
がおとなしい
孝行者
(
かうかうもの
)
だ。
102
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
女房
(
にようばう
)
が
悪
(
わる
)
いのだ……などと、
103
勝手
(
かつて
)
な
理屈
(
りくつ
)
を
云
(
い
)
つて、
104
俺
(
おれ
)
も
実
(
じつ
)
は
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
105
婆
(
ばば
)
アになるとなぜあの
様
(
やう
)
に、
106
奴根性
(
どこんじやう
)
が
悪
(
わる
)
くなるのかなア』
107
甲
(
かふ
)
(松公)
『
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
な
無理
(
むり
)
云
(
い
)
ふ
婆
(
ばば
)
は
別
(
べつ
)
に
珍
(
めづら
)
しい
事
(
こと
)
はないワ。
108
村中
(
むらぢう
)
九分
(
くぶ
)
通
(
どほり
)
まで
其
(
その
)
式
(
しき
)
の
婆
(
ばば
)
ばかりだ。
109
併
(
しか
)
し
婆
(
ばば
)
は
家
(
いへ
)
の
宝
(
たから
)
だから
先
(
ま
)
づ
尊敬
(
そんけい
)
を
払
(
はら
)
はねばなるまい、
110
が、
111
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
高姫婆
(
たかひめばば
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
ア、
112
又
(
また
)
特別製
(
とくべつせい
)
の
代物
(
しろもの
)
でそんなヘドロイ
婆
(
ばあ
)
さまぢやないワ。
113
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
か
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
か、
114
モールバンドかと
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
なエグイ
婆
(
ばば
)
アだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だよ。
115
何
(
なん
)
でも
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
とか、
116
其
(
その
)
外
(
ほか
)
いろいろの
立派
(
りつぱ
)
な
玉
(
たま
)
を
呑
(
の
)
んだり
吐
(
は
)
いたりする、
117
鵜
(
う
)
の
如
(
や
)
うな
婆
(
ばば
)
アださうぢや。
118
其奴
(
そいつ
)
が
貴様
(
きさま
)
、
119
高砂島
(
たかさごじま
)
まではるばるやつて
来
(
き
)
よつて
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
のモールバンドに
出会
(
でくわ
)
し、
120
其奴
(
そいつ
)
と
角力
(
すまふ
)
とつて、
121
彼奴
(
あいつ
)
の
尻
(
しり
)
の
剣
(
けん
)
を
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
り、
122
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
とかで
威張
(
ゐば
)
り
散
(
ち
)
らさうと
云
(
い
)
ふ
途方
(
とはう
)
途轍
(
とてつ
)
もない
悪垂婆
(
あくたればば
)
アの
鬼婆
(
おにばば
)
だからなア』
123
鶴公
(
つるこう
)
『オイ
松公
(
まつこう
)
、
124
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
広
(
ひろ
)
い
様
(
やう
)
でも
狭
(
せま
)
いものだぞ。
125
そんなこと
言
(
い
)
ふとると、
126
其
(
その
)
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
が
若
(
も
)
しや
此
(
この
)
船
(
ふね
)
にでも
乗
(
の
)
つて
居
(
を
)
らうものなら、
127
サツパリ
始末
(
しまつ
)
に
終
(
を
)
へぬぞ。
128
チト
気
(
き
)
をつけぬかい』
129
松公
(
まつこう
)
『
何
(
いづ
)
れ
此
(
この
)
船
(
ふね
)
には
人間
(
にんげん
)
計
(
ばか
)
りが
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
130
婆
(
ばば
)
だつて、
131
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
は
居
(
を
)
るだらう。
132
高姫
(
たかひめ
)
に
能
(
よ
)
う
似
(
に
)
た
面
(
つら
)
した
奴
(
やつ
)
も
俺
(
おれ
)
の
近所
(
きんじよ
)
に
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がするのだ。
133
それだから
高姫
(
たかひめ
)
類似者
(
るゐじしや
)
の
霊
(
れい
)
が
俺
(
おれ
)
に
憑
(
うつ
)
りよつて、
134
高姫
(
たかひめ
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
はせ、
135
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
136
話
(
はな
)
さなければならなくなつたのだ。
137
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神
(
かみ
)
さまも、
138
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
意茶
(
いちや
)
つかさずに、
139
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
高姫
(
たかひめ
)
に
呑
(
の
)
ましてやると、
140
根性
(
こんじやう
)
が
直
(
なほ
)
るのだけれどなア。
141
虎
(
とら
)
でも
狼
(
おほかみ
)
でも
腹
(
はら
)
がふくれて
居
(
を
)
れば、
142
メツタに
人間
(
にんげん
)
にかぶりつくものぢやない。
143
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
たら
直
(
すぐ
)
にカブリついて、
144
ワンワン
吐
(
ぬか
)
す
痩犬
(
やせいぬ
)
でも
腹
(
はら
)
さへふくらしてやれば、
145
すぐに
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
つておとなしくなる
様
(
やう
)
なもので、
146
高姫
(
たかひめ
)
だつて、
147
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
腹
(
はら
)
に
詰
(
つ
)
め
込
(
こ
)
んでおきさへすりや、
148
おとなしうなつて、
149
言依別
(
ことよりわけ
)
さまとやらを、
150
夜叉
(
やしや
)
の
様
(
やう
)
に、
151
こんな
所
(
ところ
)
まで
追
(
お
)
ひかけて
来
(
き
)
やしようまいになア』
152
鶴公
(
つるこう
)
『まるで
人間
(
にんげん
)
を
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
に
譬
(
たと
)
へとるぢやないか。
153
高姫
(
たかひめ
)
が
聞
(
き
)
いたら、
154
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にすると
云
(
い
)
うて
怒
(
おこ
)
るだらうよ』
155
松公
(
まつこう
)
『ナーニ、
156
高姫
(
たかひめ
)
だつて、
157
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
のサツクだ。
158
宣伝使
(
せんでんし
)
とか
云
(
い
)
ふ
雅号
(
ががう
)
を
持
(
も
)
つてるだけで、
159
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
奴
(
やつ
)
の
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
へるだけだ。
160
宣伝服
(
せんでんふく
)
を
脱
(
ぬ
)
がし
赤裸
(
まつぱだか
)
にして
見
(
み
)
よ。
161
俺
(
おれ
)
んとこのお
竹
(
たけ
)
よりも
年
(
とし
)
が
老
(
よ
)
つとるだけ
値打
(
ねうち
)
がなくて、
162
おまけに
見
(
み
)
つともない。
163
尊敬
(
そんけい
)
の
念
(
ねん
)
はチツトも
起
(
おこ
)
りやしないよ。
164
男
(
をとこ
)
でも
女
(
をんな
)
でも
赤裸
(
まつぱだか
)
にして
見
(
み
)
なくちや、
165
本当
(
ほんたう
)
の
価値
(
かち
)
は
分
(
わか
)
るものぢやない。
166
大将
(
たいしやう
)
だとか
頭
(
かしら
)
だとか
偉相
(
えらさう
)
に
言
(
い
)
つて、
167
立派
(
りつぱ
)
な
風呂敷
(
ふろしき
)
を
被
(
かぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
168
大将
(
たいしやう
)
らしう
見
(
み
)
えたり、
169
頭
(
かしら
)
らしう
見
(
み
)
えるのだが、
170
裸
(
はだか
)
にすりや
俺
(
おれ
)
たちと
別
(
べつ
)
にどこも
変
(
かは
)
つたところはありやアしない。
171
どうぞ
赤裸
(
まつぱだか
)
な
人間
(
にんげん
)
ばかり
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
る、
172
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
来
(
き
)
て
欲
(
ほ
)
しいものだなア』
173
鶴公
(
つるこう
)
『
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
婆
(
ばば
)
アも、
174
アリナの
滝
(
たき
)
で
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて、
175
沢山
(
たくさん
)
の
玉
(
たま
)
を
集
(
あつ
)
め、
176
終局
(
しまひ
)
の
果
(
は
)
てにや、
177
ヒルの
国
(
くに
)
のテーナの
里
(
さと
)
から
納
(
をさ
)
まつた
黄金
(
わうごん
)
の
玉
(
たま
)
をチヨロまかし、
178
夜裏
(
よさり
)
の
間
(
ま
)
に
同類
(
どうるゐ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が、
179
随徳寺
(
ずゐとくじ
)
をきめこみ、
180
荒野
(
あらの
)
ケ
原
(
はら
)
で
神
(
かみ
)
さまに
散々
(
さんざん
)
に
膏
(
あぶら
)
を
絞
(
しぼ
)
られ、
181
とうとう
改心
(
かいしん
)
とか
安心
(
あんしん
)
とかしよつて、
182
アマゾン
河
(
がは
)
の
畔
(
ほとり
)
で
兎
(
うさぎ
)
の
王
(
わう
)
になつたとか
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
があるが、
183
貴様
(
きさま
)
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るか』
184
松公
(
まつこう
)
『ソラ
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
185
何程
(
なにほど
)
大
(
おほ
)
きうても、
186
牛
(
うし
)
の
尻尾
(
しつぽ
)
になるよりも、
187
鶏
(
にはとり
)
の
頭
(
あたま
)
になる
方
(
はう
)
が
人間
(
にんげん
)
としての
理想
(
りさう
)
だから、
188
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
余程
(
よほど
)
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
だと、
189
俺
(
おれ
)
は
何時
(
いつ
)
も
感心
(
かんしん
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
190
あの
婆
(
ばば
)
アも、
191
ヤツパリ
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
から
高姫
(
たかひめ
)
の
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
に
依
(
よ
)
つて
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
たと
云
(
い
)
ふ
話
(
はなし
)
だ。
192
本当
(
ほんたう
)
に
高姫
(
たかひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
193
他人
(
たにん
)
が
聞
(
き
)
いても、
194
向
(
むか
)
つ
腹
(
ぱら
)
の
立
(
た
)
つ
悪垂婆
(
あくたればば
)
アだなア』
195
鶴公
(
つるこう
)
『オイ
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
言
(
い
)
ふない。
196
お
前
(
まへ
)
の
後
(
うしろ
)
に
居
(
ゐ
)
る
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
アが、
197
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
して、
198
ベソをかきかけて
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
199
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ、
200
テーリスタンはスタスタとやつて
来
(
き
)
て、
201
テーリスタン
『
松公
(
まつこう
)
、
202
鶴公
(
つるこう
)
とやら、
203
随分
(
ずゐぶん
)
婆論
(
ばばろん
)
がはづんで
居
(
を
)
りますな』
204
松公
(
まつこう
)
『オー、
205
はづんで
居
(
ゐ
)
る。
206
随分
(
ずゐぶん
)
威張
(
ゐば
)
り
散
(
ち
)
らす
高姫
(
たかひめ
)
の
噂
(
うはさ
)
を
摘発
(
てきはつ
)
して
罵詈
(
ばり
)
ついて
居
(
ゐ
)
るのだ。
207
そこに
居
(
ゐ
)
る
婆々
(
ババ
)
ンツは、
208
昨年
(
さくねん
)
此
(
この
)
船
(
ふね
)
で
見
(
み
)
た
高姫
(
たかひめ
)
にどつか
似
(
に
)
たやうな
気
(
き
)
がするが、
209
併
(
しか
)
しあんな
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
ぢやなかつた。
210
お
前
(
まへ
)
は
一体
(
いつたい
)
其
(
その
)
高姫
(
たかひめ
)
に
関係
(
くわんけい
)
のある
代物
(
しろもの
)
かなア』
211
テーリスタン『
関係
(
くわんけい
)
があるでもなし、
212
ないでもなし、
213
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
妙
(
めう
)
な
話
(
はなし
)
を
面白
(
おもしろ
)
さうにやつてるから、
214
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひたいと
思
(
おも
)
つて、
215
チツト
耳
(
みみ
)
が
遠
(
とほ
)
いものだから、
216
近
(
ちか
)
う
寄
(
よ
)
せて
貰
(
もら
)
うたのだ』
217
鶴公
(
つるこう
)
『マア
一杯
(
いつぱい
)
やれ、
218
酒
(
さけ
)
もなしに
此
(
この
)
長
(
なが
)
の
道中
(
だうちう
)
、
219
勤
(
つと
)
まりつこはない』
220
と
瓢
(
ひさご
)
をさし
出
(
だ
)
す。
221
テーリスタン『ソリヤ
有難
(
ありがた
)
う。
222
併
(
しか
)
し
折角
(
せつかく
)
だが、
223
私
(
わたし
)
は
下戸
(
げこ
)
だから
一滴
(
いつてき
)
もいかないのだ』
224
鶴公
(
つるこう
)
『ナヽ
何
(
なん
)
だ、
225
ここは
下戸
(
げこ
)
共
(
ども
)
の
来
(
く
)
る
所
(
ところ
)
ぢやない。
226
折角
(
せつかく
)
の
興味
(
きようみ
)
が
醒
(
さ
)
めて
了
(
しま
)
ふワイ』
227
テーリスタン『ナイスの
話
(
はなし
)
なれば、
228
酒
(
さけ
)
の
味
(
あぢ
)
も
甘
(
うま
)
からうが、
229
婆
(
ばば
)
ア
話
(
ばなし
)
では
根
(
ね
)
つから
酒
(
さけ
)
も
甘
(
うま
)
くはありますまいなア』
230
松公
(
まつこう
)
『
甘
(
うま
)
くないのは
承知
(
しようち
)
だが、
231
一遍
(
いつぺん
)
高姫
(
たかひめ
)
オツトドツコイ、
232
そこらの
婆
(
ばば
)
アに、
233
聞
(
き
)
けよがしに
云
(
い
)
うておかねばならぬ
事
(
こと
)
があるからなア』
234
鶴公
(
つるこう
)
『そんな
事
(
こと
)
、
235
誰
(
たれ
)
から
頼
(
たの
)
まれたのだい』
236
松公
(
まつこう
)
『
松若彦
(
まつわかひこ
)
、
237
オツトドツコイ、
238
此
(
この
)
松
(
まつ
)
さまが
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から、
239
婆
(
ばば
)
アが
嫌
(
きら
)
ひでなア、
240
そこへ
婆
(
ばば
)
アの
海
(
うみ
)
へおちたのを、
241
去年
(
きよねん
)
此
(
この
)
船
(
ふね
)
で
見
(
み
)
たものだから、
242
今日
(
けふ
)
は
又
(
また
)
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
光景
(
くわうけい
)
が
記憶
(
きおく
)
に
浮
(
うか
)
んで
来
(
き
)
て、
243
いつとはなしに
婆
(
ばあ
)
さま
話
(
ばなし
)
にバサンと
深
(
ふか
)
みへ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つたのだ。
244
モウ
斯
(
こ
)
んなババイ
話
(
はなし
)
はこれ
限
(
かぎ
)
りやめにしようかい』
245
テーリスタン『コレ
松公
(
まつこう
)
、
246
お
前
(
まへ
)
はレコの
間者
(
まはしもの
)
ぢやなア』
247
松公
(
まつこう
)
『バカ
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れない。
248
まはし
者
(
もの
)
なんて、
249
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
が
気
(
き
)
をまはし
者
(
もの
)
だ。
250
人
(
ひと
)
の
褌
(
まはし
)
で
相撲
(
すまふ
)
とるよなズルイ
事
(
こと
)
をする
松公
(
まつこう
)
とは、
251
チツト
違
(
ちが
)
ひますワイ……ナア
鶴公
(
つるこう
)
、
252
お
前
(
まへ
)
私
(
わし
)
の
平常
(
へいぜい
)
を
知
(
し
)
つとるぢやらう』
253
鶴公
(
つるこう
)
『
貴様
(
きさま
)
は
服
(
ふく
)
をつけて、
254
ウヅの
都
(
みやこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
ゐ
)
やがるが、
255
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふとサツパリ
駄目
(
だめ
)
だな。
256
ヤツパリ
元
(
もと
)
がウラル
教
(
けう
)
だから、
257
其
(
その
)
癖
(
くせ
)
が
直
(
なほ
)
らぬと
見
(
み
)
えるワイ』
258
松公
(
まつこう
)
『コリヤ、
259
人
(
ひと
)
の
秘密
(
ひみつ
)
をあばく
奴
(
やつ
)
があるか、
260
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ』
261
鶴公
(
つるこう
)
『モシモシ
高姫
(
たかひめ
)
さまに
能
(
よ
)
う
似
(
に
)
たお
方
(
かた
)
、
262
其
(
その
)
他
(
た
)
の
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
様
(
さま
)
、
263
此
(
この
)
松公
(
まつこう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
264
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふとサツパリ
地金
(
ぢがね
)
が
現
(
あら
)
はれ
駄目
(
だめ
)
だと
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
の
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げましたが、
265
松公
(
まつこう
)
の
請求
(
せいきう
)
に
依
(
よ
)
つて、
266
更
(
あらた
)
めて
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
します、
267
決
(
けつ
)
して
宣伝使
(
せんでんし
)
ではないと
思
(
おも
)
うて
下
(
くだ
)
さい。
268
アハヽヽヽ』
269
テーリスタン『アハー、
270
ヤツパリ、
271
デモ
宣伝使
(
せんでんし
)
だな。
272
一体
(
いつたい
)
どこへ
行
(
ゆ
)
く
積
(
つも
)
りだ。
273
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
最早
(
もはや
)
かくすのは
駄目
(
だめ
)
だ、
274
サア
事実
(
じじつ
)
を
言
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
はう、
275
私
(
わたし
)
もウヅの
都
(
みやこ
)
から
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
た
者
(
もの
)
でヤツパリ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
端
(
はし
)
くれだ』
276
松公
(
まつこう
)
『そんなら、
277
白状
(
はくじやう
)
しませう。
278
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
松若彦
(
まつわかひこ
)
さまに
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて、
279
お
前
(
まへ
)
さま
一行
(
いつかう
)
の
後
(
あと
)
をつけて
来
(
き
)
たのだ。
280
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
い
考
(
かんが
)
へを
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たのぢやない。
281
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
内命
(
ないめい
)
に
依
(
よ
)
つて
高姫
(
たかひめ
)
さまや
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
282
竜国別
(
たつくにわけ
)
様
(
さま
)
に、
283
麻邇
(
まに
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
誠
(
まこと
)
の
御用
(
ごよう
)
がさせたいから、
284
同
(
おな
)
じ
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて
高姫
(
たかひめ
)
の
慢心
(
まんしん
)
をせない
様
(
やう
)
、
285
いろいろとそれとはなしに、
286
教訓
(
けうくん
)
をしてくれよとの
事
(
こと
)
で、
287
選
(
えら
)
まれて、
288
多勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
からやつて
来
(
き
)
たのだよ』
289
テーリスタン『さうか、
290
それは
大
(
おほ
)
いに
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だ。
291
併
(
しか
)
しそれ
計
(
ばか
)
りぢやあるまい。
292
何
(
なに
)
か
外
(
ほか
)
に
折入
(
をりい
)
つて
大切
(
だいじ
)
な
使命
(
しめい
)
を
帯
(
お
)
びてゐるのだらう。
293
否
(
いや
)
秘密
(
ひみつ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
握
(
にぎ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだらう。
294
それを
今
(
いま
)
ここでソツと
俺
(
おれ
)
に
言
(
い
)
つてくれる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬか』
295
松公
(
まつこう
)
『
秘密
(
ひみつ
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
秘密
(
ひみつ
)
だ。
296
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
着
(
つ
)
く
迄
(
まで
)
は、
297
これ
計
(
ばか
)
りは
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
298
併
(
しか
)
し
今
(
いま
)
之
(
これ
)
を
言
(
い
)
ふと、
299
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
手柄
(
てがら
)
が
出来
(
でき
)
ないから、
300
後
(
あと
)
の
楽
(
たのし
)
みに
除
(
の
)
けておかう』
301
テーリスタン『
秘密
(
ひみつ
)
とあれば、
302
どこ
迄
(
まで
)
も
追求
(
つゐきう
)
する
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
くまい。
303
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
さまの
道
(
みち
)
を
歩
(
あゆ
)
む
宣伝使
(
せんでんし
)
だから、
304
互
(
たがひ
)
に
気
(
き
)
をつけあうて、
305
仲良
(
なかよ
)
くして
行
(
ゆ
)
かうぢやないか』
306
松公
(
まつこう
)
『お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とは
仲良
(
なかよ
)
うしよう。
307
また
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
、
308
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
309
若
(
も
)
しや
此
(
この
)
船
(
ふね
)
に
居
(
を
)
られたら、
310
これは
仲良
(
なかよ
)
うして
貰
(
もら
)
ひたいものだ。
311
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
高姫婆
(
たかひめばあ
)
さまだけは、
312
マア
一寸
(
ちよつと
)
暫
(
しば
)
らく
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りたいなア』
313
テーリスタン『オイ、
314
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
言
(
い
)
ふな。
315
そこに
本当
(
ほんたう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまが
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いで
居眠
(
ゐねむ
)
つたやうな
顔
(
かほ
)
して
聞
(
き
)
いて
御座
(
ござ
)
るぞ』
316
と
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
あて、
317
小声
(
こごゑ
)
にささやく。
318
船
(
ふね
)
は
順風
(
じゆんぷう
)
に
帆
(
ほ
)
を
孕
(
はら
)
み、
319
勢
(
いきほひ
)
よく
海上
(
かいじやう
)
を
辷
(
すべ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
320
(
大正一一・八・二八
旧七・六
松村真澄
録)
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