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第六章 茶袋(ちやぶくろ)〔一四八一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第2篇 湖上神通 よみ(新仮名遣い):こじょうじんつう
章:第6章 茶袋 よみ(新仮名遣い):ちゃぶくろ 通し章番号:1481
口述日:1923(大正12)年03月28日(旧02月12日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三千彦は先に立ってテルモン山の中腹を南へ下って行く。比較的険峻な坂道を拍子をとって下って行く。三千彦は一同に気を付けるよう促す宣伝歌を歌う。真純彦と伊太彦は、三千彦が妻を同道していることをからかう歌を歌ってなごませる。
デビス姫は、これから悪魔の征討に向かう神業に夫と共に参加することの決意を歌に歌い、真純彦と伊太彦のからかいに釘を刺した。こうして、さすがの坂道もにぎにぎしく笑いに興じながら下って行った。
ようやくにして三里の急坂を越えてテルモン湖のほとりについた。ここは東西百里、南北二百里の大湖水で、魚鱗の波をたたえて洋々として静かに横たわっている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5806
愛善世界社版:73頁 八幡書店版:第10輯 398頁 修補版: 校定版:79頁 普及版:29頁 初版: ページ備考:
001 三千彦(みちひこ)(さき)()ちテルモン(ざん)中腹(ちうふく)(みなみ)(みなみ)へと(くだ)()く。002比較(ひかく)(てき)嶮峻(けんしゆん)坂道(さかみち)足許(あしもと)(すこ)しも目放(めはな)しが出来(でき)ぬ。003金剛杖(こんがうづゑ)(ちから)(ゆび)(さき)全身(ぜんしん)重味(おもみ)集中(しふちう)(なが)拍子(ひやうし)をとつて(くだ)()く。
004三千彦(みちひこ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
005如何(いか)なる(てき)(おそ)れねど
006(いた)()てたる坂道(さかみち)
007ヌルリヌルリと(すべ)るのは
008(まこと)閉口(へいこう)(つかまつ)
009玉国別(たまくにわけ)()(きみ)
010デビスの(ひめ)()をつけて
011転倒(てんたう)せぬ(やう)になされませ
012(つき)(みやこ)立向(たちむか)
013神力(しんりき)無双(むさう)宣伝使(せんでんし)
014(その)首途(かどいで)(あやま)つて
015もしも転倒(てんたう)したならば
016それこそ前途(ぜんと)()にかかる
017御幣(ごへい)(かつ)ぐぢやなけれども
018今日(けふ)大切(だいじ)出陣(しゆつぢん)
019(かは)らぬ(やう)(たび)(そら)
020天津(あまつ)御空(みそら)()をやらず
021(しば)らく(あし)爪先(つまさき)
022(まなこ)(そそ)()(くば)
023ウントコドツコイ、ズウズウズウ
024()ふより(はや)(あし)(すべ)
025ドスンと()いた尻餅(しりもち)
026(われ)()前途(ぜんと)(しゆく)すべく
027(そら)(かがや)望月(もちづき)
028(みづ)御霊(みたま)(おん)(まも)
029前途(ぜんと)(かなら)吉祥(きつしやう)
030直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)
031(あし)もワナワナ(くだ)(ざか)
032面白(おもしろ)をかしく(すね)(わら)
033今日(けふ)旅出(たびで)(いさ)ましさ
034朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
035(つき)()つとも()くるとも
036(こずゑ)(せみ)(ほえ)るとも
037(あせ)何程(なにほど)()るとても
038(あたま)(うへ)からカンカンと
039()大神(おほかみ)()らすとも
040(かみ)(まか)せし(この)(からだ)
041(いは)より(かた)(たましひ)
042常磐(ときは)(まつ)(いは)()
043生茂(おひしげ)りたる(ごと)くなり
044ウントコドツコイ ドツコイシヨ
045よくまあ(すべ)(さか)だなア
046赭土(あかつち)(ばか)りがピカピカと
047(ひか)つた(うへ)湿(しめ)りをば
048(おび)()るのでよく(すべ)
049(たれ)(とほ)つたか()らないが
050こりや(また)えらい(みが)けよう
051流石(さすが)のスマートさまでさへ
052(よつ)つの(あし)()(なが)
053あれ、あの(とほ)りチガチガと
054(からだ)(はす)(かま)へつつ
055(くだ)つて()くのを(なが)むれば
056余程(よつぽど)きつい坂道(さかみち)
057これから(さき)はテルモンの
058(おと)名高(なだか)(みづうみ)
059(われ)()一行(いつかう)宣伝使(せんでんし)
060この(みづうみ)(わた)らねば
061(つき)御国(みくに)にや()かれない
062ウントコドツコイ、ズウズウズウ
063ほんに危険(きけん)(すべ)(ざか)
064坊主頭(ばうずあたま)瓢箪(へうたん)
065()でてる(やう)足具合(あしぐあひ)
066うつかりすると転倒(てんたう)
067天狗(てんぐ)(めん)やお多福(たふく)
068(たま)御舟(みふね)雨曝(あまざら)
069せなくちやならぬ(こは)(みち)
070()をつけなされ(みな)さまよ
071ウントコドツコイ ドツコイシヨ
072どうやら(さか)(ゆる)うなつた
073ここで油断(ゆだん)をしちやならぬ
074バラモン(けう)悪神(あくがみ)
075(われ)()一行(いつかう)前途(ぜんと)をば
076(よう)して()ちさうな(ところ)だぞ
077何程(なにほど)(てき)(きた)るとも
078(うで)(おぼ)えのある(うへ)
079(けつ)して(ひる)まぬ大和魂(やまとだま)
080ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
081(かみ)のまにまに(くだ)()く』
082 真純彦(ますみひこ)(また)(うた)ふ。
083『テルモン(ざん)南坂(みなみざか)
084(うなぎ)(やう)(すべ)(みち)
085三千彦(みちひこ)さまが(さき)()
086(わが)()(きみ)若草(わかくさ)
087(つま)(みこと)のデビス(ひめ)
088二人(ふたり)()をば()(なが)
089真純彦(ますみひこ)とも伊太公(いたこう)とも
090仰有(おつしや)らないのは何事(なにごと)
091ほんにお(まへ)水臭(みづくさ)
092玉国別(たまくにわけ)()(きみ)
093(おん)()()んで親切(しんせつ)
094注意(ちうい)をしたのは表向(おもてむ)
095実地(じつち)(まこと)(はら)(なか)
096新婚(しんこん)旅行(りよかう)のデビス(ひめ)
097その()(うへ)()にかかり
098義理(ぎり)()くかで()(きみ)
099()()んだに(ちが)ひない
100アハハハハツハ、アハハハハ
101現銀(げんぎん)至極(しごく)(をとこ)だな
102それだによつて宣伝(せんでん)
103途中(とちう)(おい)若者(わかもの)
104女房(にようばう)()たすと(たましひ)
105(くだ)けて(まこと)()()はぬ
106(をんな)(こころ)()かされて
107大切(だいじ)大切(だいじ)使命(しめい)をば
108(おこた)(こと)があるものだ
109さはさり(なが)三千彦(みちひこ)
110(かみ)使(つかひ)格別(かくべつ)
111(あん)ずる(こと)はなけれども
112第一(だいいち)(をんな)()をとられ
113(たま)中有(ちうう)()()りて
114肝腎要(かんじんかなめ)足許(あしもと)
115()につかないか二度(にど)三度(さんど)
116スウ スウ スウと(すべ)りよつた
117肝腎要(かんじんかなめ)(さき)()
118道案内(みちあんない)三千彦(みちひこ)
119(すべ)つて()けて吾々(われわれ)
120無事(ぶじ)(この)(さか)(くだ)るのは
121(なに)(ひと)つの原因(げんいん)
122なければならぬ道理(だうり)ぞや
123(かへり)(たま)三千彦(みちひこ)
124ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
125(かみ)(かは)りて()をつける』
126 伊太彦(いたひこ)(また)(うた)ふ。
127伊太彦(いたひこ)『ウントコドツコイ ドツコイシヨ
128悪魔(あくま)()るとも()ぐるとも
129憑物(つきもの)(みんな)()()すも
130(この)坂道(さかみち)になつたなら
131どうしても(からだ)草臥(くたびれ)
132さはさり(なが)最愛(さいあい)
133女房(にようばう)()れた三千彦(みちひこ)
134(さぞ)(たの)しい(こと)だらう
135元気(げんき)日頃(ひごろ)百倍(ひやくばい)
136意気(いき)揚々(やうやう)(ひぢ)()
137六方(ろくぱう)()んで坂道(さかみち)
138八王神(やつこす)(あゆ)みそのままに
139エンヤラ エンヤラ エンヤラと
140そのスタイルは蟷螂(かまきり)
141(ただし)(かはづ)手踊(てをどり)
142(また)(ちが)ふたら山猿(やまざる)
143ステテコ(をど)りと()(やう)
144さても(あや)しきスタイルだ
145アハハハハツハ、ズウズウズウ
146オツトドツコイ(あし)(すべ)
147(しり)をドンと()ちました
148天狗(てんぐ)(めん)茶袋(ちやぶくろ)
149(かみ)()(かげ)()安全(あんぜん)
150(ふた)つの(たま)完全(くわんぜん)
151(なか)(なか)()(あが)
152大急行(だいきふかう)洋行(やうかう)した
153ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
154目玉(めだま)のとび()るきつい(さか)
155土蟹(づがに)ぢやないが横歩(よこある)
156正面(まとも)(あし)(はこ)べない
157三千彦(みちひこ)さまの()夫婦(ふうふ)
158()けよと(たふ)れよと(かま)はぬが
159(わが)()(きみ)真純彦(ますみひこ)
160何卒(なにとぞ)用心(ようじん)(あそ)ばして
161(この)(さか)無事(ぶじ)(くだ)りませ
162(なつ)木立(こだち)()(せみ)
163(こゑ)はミンミン(ねむ)たげに
164寝言交(ねごとまじ)りに(うた)ふて()
165そんな陽気(やうき)(こと)かいな
166(この)坂道(さかみち)命懸(いのちが)
167どうして(これ)(ねむ)られよか
168(あし)のこぶらがブクブクと
169酒徳利(さけどつくり)(やう)になつた
170ズウズウズウズウ アイタタツタ
171ヤツパリ(さか)(くだ)るのは
172(くち)(つま)へて俯向(うつむ)いて
173(くだ)らにやならぬと()(こと)
174(はじ)めて体得(たいとく)(いた)しました
175三千彦(みちひこ)(つかさ)(さき)()
176くだらぬ(うた)(しやべ)(ゆゑ)
177真純(ますみ)(ひこ)伊太彦(いたひこ)
178つひ()()されウツカリと
179退屈(たいくつ)(まぎ)れに(しやべ)つたが
180それが(わが)()(あだ)となり
181デツカイお(しり)()ちました
182ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
183こんな(こと)だと()つたなら
184ワックスさまが馬場(ばんば)にて
185笞刑(ちけい)()けた(とき)のやうに
186銅盥(あかがねだらひ)(しり)につけ
187(くだ)つて()れば()かつたに
188下司(げす)知識(ちしき)(あと)からと
189(ひと)()ふのも無理(むり)()
190ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
191これこれデビスのお(ひめ)さま
192(まへ)(ひと)附合(つきあ)ひに
193(この)坂道(さかみち)(くだ)りつつ
194下坂(げはん)(うた)(うた)ひませ
195三千彦(みちひこ)さまの機嫌(きげん)のみ
196とらず吾々(われわれ)一行(いつかう)
197チツとは(こころ)(なぐさ)めて
198平和(へいわ)女神(めがみ)本領(ほんりやう)
199発揮(はつき)(たま)惟神(かむながら)
200(かみ)使(つかひ)宣伝使(せんでんし)
201伊太彦(いたひこ)さまが(たの)みます
202ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
203御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
204デビス(ひめ)(わらは)三千彦(みちひこ)宣伝使(せんでんし)
205(をつと)()つたデビス(ひめ)
206(かみ)のお(みち)(つか)()
207夫婦(ふうふ)ありては肝腎(かんじん)
208御用(ごよう)出来(でき)ぬと()きました
209()()ふものの(たま)()
210(いのち)(たす)(くだ)さつた
211大恩(たいおん)(ふか)神司(かむづかさ)
212悪魔(あくま)(たけ)(くる)ふなる
213荒野(あらの)(はら)打渉(うちわた)
214雲霞(うんか)(ごと)敵軍(てきぐん)
215(なか)(むか)つて(すす)()
216その雄々(をを)しさを(おも)()
217(をんな)(なが)らもジツとして
218どうして(やかた)()られませう
219(をんな)(をつと)(したが)ひて
220(ちから)(つく)()(かば)
221マサカの(とき)()()たら
222(いのち)(まと)(わが)(つま)
223使命(しめい)(まつた)()げさせて
224(をんな)(みち)(つく)さねば
225()まぬ(こと)だと覚悟(かくご)して
226()心地(ここち)よき(わが)(やかた)
227(あと)(なが)めて遥々(はるばる)
228()みも(なら)はぬ旅枕(たびまくら)
229苦労(くらう)覚悟(かくご)()きまする
230陽気(やうき)浮気(うはき)()んな(こと)
231どうして繊弱(かよわ)(をんな)()
232出来(でき)そな(こと)がありませうか
233揶揄(からか)ひなさるも(ほど)がある
234(わらは)(こころ)真剣(しんけん)
235(ひと)(わら)ふが(そし)らうが
236一旦(いつたん)(をつと)(たましひ)
237(からだ)(とも)(まか)したら
238(けつ)して中途(ちうと)(ひる)まない
239(をんな)(なが)らも天晴(あつぱれ)
240貴方(あなた)(おと)らぬ功績(いさをし)
241()てて(おん)()にかけまする
242玉国別(たまくにわけ)()(きみ)
243真純(ますみ)(ひこ)神司(かむつかさ)
244伊太彦(いたひこ)(つかさ)諸共(もろとも)
245(わらは)(こころ)(きよ)きをば
246真面目(まじめ)(さと)らせ(たま)へかし
247(けつ)して(いろ)(こひ)のため
248菊石(あばた)出来(でき)宣伝使(せんでんし)
249三千彦(みちひこ)さまに()れませう
250何程(なにほど)(かほ)(みにく)ても
251肝腎要(かんじんかなめ)(たましひ)
252三五(さんご)(つき)姿(すがた)より
253百倍(ひやくばい)()して(うつく)しく
254(こころ)(かがみ)(うつ)りしゆ
255(かみ)(おん)(ため)()(ため)
256かかる健気(けなげ)武士(もののふ)
257一度(ひとたび)(うで)(より)かけて
258世界(せかい)(ため)(つく)さむと
259(おも)ふばかりの真心(まごころ)
260()(かた)まりし今日(けふ)(たび)
261(わら)はせ(たま)(こと)もなく
262繊弱(かよわ)(をんな)()なれども
263(ゆる)させ(たま)何処(どこ)(まで)
264(われ)()夫婦(ふうふ)(したが)へて
265(すす)ませ(たま)惟神(かむながら)
266(かみ)御前(みまへ)誠心(まごころ)
267(ちか)ひて告白(こくはく)(つかまつ)
268ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
269御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
270(うた)(をは)流石(さすが)坂道(さかみち)賑々(にぎにぎ)しく(わら)(きよう)(なが)ら、271揶揄(からか)半分(はんぶん)(くだ)()く。272(やうや)くにして(くだ)(さん)()急坂(きふはん)()えテルモン()(ほとり)()いた。273坂道(さかみち)(しぼ)つた(あせ)湖面(こめん)()涼風(りやうふう)()(はら)はれ、274()()はれぬ爽快(さうくわい)気分(きぶん)(ただよ)ふた。275東西(とうざい)(ひやく)()南北(なんぽく)二百(にひやく)()大湖水(だいこすい)金銀色(きんぎんしよく)魚鱗(ぎよりん)(なみ)(たた)へ、276洋々(やうやう)として(しづ)かに(よこ)たはつて()る。
277大正一二・三・二八 旧二・一二 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
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