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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第58巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 玉石混淆
第1章 神風
第2章 多数尻
第3章 怪散
第4章 銅盥
第5章 潔別
第2篇 湖上神通
第6章 茶袋
第7章 神船
第8章 孤島
第9章 湖月
第3篇 千波万波
第10章 報恩
第11章 欵乃
第12章 素破抜
第13章 兎耳
第14章 猩々島
第15章 哀別
第16章 聖歌
第17章 怪物
第18章 船待
第4篇 猩々潔白
第19章 舞踏
第20章 酒談
第21章 館帰
第22章 獣婚
第23章 昼餐
第24章 礼祭
第25章 万歳楽
余白歌
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第58巻(酉の巻)
> 第3篇 千波万波 > 第15章 哀別
<<< 猩々島
(B)
(N)
聖歌 >>>
第一五章
哀別
(
あいべつ
)
〔一四九〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻
篇:
第3篇 千波万波
よみ(新仮名遣い):
せんぱばんぱ
章:
第15章 哀別
よみ(新仮名遣い):
あいべつ
通し章番号:
1490
口述日:
1923(大正12)年03月29日(旧02月13日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉国別一行は初稚丸を猩々島の磯辺に付けた。見れば、大なる猩々が人間とも猿ともわからぬ子を抱いている。その傍には髯をむしゃむしゃと生やした人間が立っている。
伊太彦の呼びかけに、バーチルは答えて身の上を話しだした。猩々たちは人間たちがたくさんやってきたので遠巻きにして様子をうかがっている。
玉国別はバーチルとの間に子をなした猩々を憐れに思い、一緒に船に乗せて帰ることはできないかと聞いた。バーチルは、この猩々の女王は自分の群れを島のさまざまな危険から守っているため、仲間を捨てて人間と共に島を出ることはないだろうと答えた。
ともあれ、バーチルを故郷に帰すことになった。バラモン組のヤッコス、サボール、ハールの三人が猩々の子供らを追いかけて遊んでいる間に、初稚丸はバーチルを乗せて島を離れた。
猩々の女王はバーチルが去っていくのを見て悲鳴を上げ、子供を示してバーチルの帰還を促したが、バーチルが帰ってこないのを悟ると、子供を絞め殺して自分も藤蔓に重い石をくくりつけて入水してしまった。この惨状を船上から見て、玉国別の一行は悲嘆にくれた。
ヤッコス、サボール、ハールの三人は自分たちが置いて行かれたことに気が付いて磯端で地団太を踏んで叫んでいる。メートとダルの二人は、悪事を企んだ報いだと三人を嘲笑した。初稚丸は西南指して進んで行く。
船上の一行は、猩々島での一件を述懐の歌にそれぞれ歌いこんだ。船は潮流に乗って進んでいたが、イールは船が魔の海の潮流に流れ込み、方向転換ができないことを告げた。バーチルの故郷・スマの港には遠回りになるが、それほど危険はないことを宣伝使たちに報告した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5815
愛善世界社版:
178頁
八幡書店版:
第10輯 434頁
修補版:
校定版:
190頁
普及版:
71頁
初版:
ページ備考:
001
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
初稚丸
(
はつわかまる
)
を
猩々島
(
しやうじやうじま
)
の
磯辺
(
いそべ
)
につけ、
002
よくよく
見
(
み
)
れば、
003
勝
(
すぐ
)
れて
大
(
だい
)
なる
猩々
(
しやうじやう
)
が、
004
人間
(
にんげん
)
とも
猿
(
さる
)
とも
知
(
し
)
れぬ
子
(
こ
)
を
抱
(
だ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
005
傍
(
そば
)
に
髯
(
ひげ
)
むしやむしやと
生
(
は
)
えた、
006
人間
(
にんげん
)
か
猿
(
さる
)
か
分
(
わか
)
らぬ
人間
(
にんげん
)
が
一人
(
ひとり
)
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
007
伊太彦
(
いたひこ
)
は
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
に
向
(
むか
)
つて、
008
伊太
(
いた
)
『オイ
其処
(
そこ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
るのは
人間
(
にんげん
)
か、
009
人間
(
にんげん
)
ならものを
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ』
010
バーチルは
三年振
(
さんねんぶ
)
りで
人間
(
にんげん
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
、
011
人間
(
にんげん
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
012
懐
(
なつか
)
しさ
嬉
(
うれ
)
しさに、
013
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
した。
014
そして、
015
バーチル『ハイ
私
(
わたくし
)
は
人間
(
にんげん
)
です。
016
どうか
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい、
017
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
に
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
漂着
(
へうちやく
)
し、
018
此
(
こ
)
の
通
(
とほ
)
り
猩々
(
しやうじやう
)
の
群
(
むれ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
淋
(
さび
)
しい
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
を
)
りました』
019
伊太
(
いた
)
『ヤア、
020
そいつは
奇妙
(
きめう
)
な
話
(
はなし
)
だ、
021
深
(
ふか
)
い
様子
(
やうす
)
があるだらう。
022
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
023
とつくりと
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はう。
024
もし
先生
(
せんせい
)
、
025
こいつは
一
(
ひと
)
つ
上陸
(
じやうりく
)
して
見
(
み
)
ませう。
026
ひよつ
としたら
宝石
(
はうせき
)
の
島
(
しま
)
かも
知
(
し
)
れませぬぞや』
027
玉国
(
たまくに
)
『ウン、
028
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
上陸
(
じやうりく
)
して、
029
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
よう。
030
サア
皆
(
みな
)
さま
一同
(
いちどう
)
上陸
(
じやうりく
)
しなさい』
031
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
032
ポイと
飛
(
と
)
んで
磯辺
(
いそばた
)
に
降
(
くだ
)
つた。
033
続
(
つづ
)
いて
一同
(
いちどう
)
は
船頭
(
せんどう
)
を
残
(
のこ
)
したまま、
034
皆
(
みな
)
好奇心
(
かうきしん
)
にかられて
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た。
035
猩々
(
しやうじやう
)
は
沢山
(
たくさん
)
の
凛々
(
りり
)
しい
男
(
をとこ
)
がやつて
来
(
き
)
たので、
036
稍
(
やや
)
怯気
(
おぢけ
)
を
生
(
しやう
)
じ、
037
猩々
(
しやうじやう
)
の
王
(
わう
)
は
児
(
こ
)
を
抱
(
だ
)
いて
七八間
(
しちはちけん
)
も
後
(
あと
)
に
退
(
しりぞ
)
き、
038
首
(
くび
)
を
傾
(
かた
)
げて
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
039
沢山
(
たくさん
)
の
小猿
(
こざる
)
は
一緒
(
いつしよ
)
に
集
(
あつ
)
まつてキャキャ
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
瞬
(
またた
)
きもせず、
040
瞠
(
みつ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
041
玉国
(
たまくに
)
『アア、
042
お
前
(
まへ
)
さまはどこの
人
(
ひと
)
ですか。
043
どうしてまアこんな
離
(
はな
)
れ
島
(
じま
)
に
猩々
(
しやうじやう
)
なんかと
同棲
(
どうせい
)
して
居
(
ゐ
)
たのです。
044
一通
(
ひととほ
)
り
話
(
はな
)
して
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい。
045
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
046
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのが
役
(
やく
)
です。
047
決
(
けつ
)
して
御
(
お
)
案
(
あん
)
じなさるやうな
人間
(
にんげん
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
048
安心
(
あんしん
)
してお
話
(
はなし
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
049
バーチル『ハイ、
050
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
051
私
(
わたくし
)
はイヅミの
国
(
くに
)
、
052
スマの
里
(
さと
)
の
首陀
(
しゆだ
)
で、
053
バーチルと
申
(
まを
)
す
百姓
(
ひやくしやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
054
大変
(
たいへん
)
漁
(
れふ
)
が
好
(
す
)
きな
所
(
ところ
)
より、
055
荒
(
あ
)
れ
模様
(
もやう
)
の
海
(
うみ
)
を
犯
(
をか
)
して
僕
(
しもべ
)
と
共
(
とも
)
に
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
に
湖中
(
こちう
)
遠
(
とほ
)
く
漁
(
すなどり
)
をやつて
居
(
を
)
りますと、
056
俄
(
にはか
)
に
暴風
(
しけ
)
に
遇
(
あ
)
ひ
船体
(
せんたい
)
は
浪
(
なみ
)
にのまれ、
057
私
(
わたくし
)
はお
蔭
(
かげ
)
で
此
(
この
)
島
(
しま
)
につき、
058
猩々
(
しやうじやう
)
の
王
(
わう
)
に
助
(
たす
)
けられ
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
059
嘸
(
さぞ
)
国元
(
くにもと
)
には
女房
(
にようばう
)
が
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
060
何卒
(
どうぞ
)
お
助
(
たす
)
けをお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
061
玉国
(
たまくに
)
『
成程
(
なるほど
)
それは
御
(
ご
)
難儀
(
なんぎ
)
でしたらう。
062
もう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさるな。
063
此
(
この
)
船
(
ふね
)
に
貴方
(
あなた
)
を
救
(
すく
)
ふて
帰
(
かへ
)
りませう』
064
バーチル『ハイ、
065
何分
(
なにぶん
)
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まをし
)
ます。
066
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
以来
(
いらい
)
此
(
この
)
島
(
しま
)
で
猩々
(
しやうじやう
)
に
助
(
たす
)
けられ
食物
(
しよくもつ
)
に
不自由
(
ふじゆう
)
は
致
(
いた
)
しませぬが、
067
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふても
相手
(
あひて
)
が
畜生
(
ちくしやう
)
の
事
(
こと
)
、
068
言葉
(
ことば
)
が
通
(
つう
)
じないので
困
(
こま
)
りました』
069
かく
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
、
070
猩々
(
しやうじやう
)
の
王
(
わう
)
は
赤
(
あか
)
ン
坊
(
ばう
)
を
抱
(
だ
)
いて
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
071
児
(
こ
)
を
指
(
ゆびさ
)
しては
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
をキャキャと
叫
(
さけ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
072
伊太彦
(
いたひこ
)
はつくづくと
其
(
その
)
子
(
こ
)
を
見
(
み
)
て、
073
伊太
(
いた
)
『アア
此
(
この
)
児
(
こ
)
は
人間
(
にんげん
)
と
猿
(
さる
)
との
混血児
(
あひのこ
)
ぢやな。
074
ハハア
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
があるものだ。
075
若
(
も
)
しバーチルさま、
076
こりやお
前
(
まへ
)
さまと
猩々
(
しやうじやう
)
さまとの
中
(
なか
)
に
出来
(
でき
)
た
鎹
(
かすがひ
)
ぢやなからうなア』
077
バーチル『ハイ、
078
実
(
じつ
)
にお
恥
(
はづ
)
かしい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
079
あの
猩々
(
しやうじやう
)
の
王
(
わう
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になつたお
蔭
(
かげ
)
で、
080
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
命
(
いのち
)
が
保
(
たも
)
てたので
厶
(
ござ
)
います。
081
因果
(
いんぐわ
)
の
種
(
たね
)
が
宿
(
やど
)
つてあのやうな
児
(
こ
)
が
出来
(
でき
)
ました。
082
実
(
じつ
)
に
困
(
こま
)
つたもので
厶
(
ござ
)
います。
083
畜生
(
ちくしやう
)
の
腹
(
はら
)
に
出来
(
でき
)
たとは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたくし
)
も
実
(
じつ
)
に
未練
(
みれん
)
が
残
(
のこ
)
ります。
084
併
(
しか
)
しあんなものを
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
参
(
まゐ
)
りませず、
085
又
(
また
)
猩々
(
しやうじやう
)
の
女房
(
にようばう
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
参
(
まゐ
)
りませぬ。
086
実
(
じつ
)
に
畜生
(
ちくしやう
)
と
云
(
い
)
ひながら
親切
(
しんせつ
)
なもので
厶
(
ござ
)
います。
087
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
りたいは
山々
(
やまやま
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
088
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
へばお
笑
(
わら
)
ひなさるか
知
(
し
)
れませぬが、
089
実
(
じつ
)
にあの
猩々
(
しやうじやう
)
が
可愛
(
かあい
)
さうです』
090
玉国
(
たまくに
)
『
実
(
じつ
)
にお
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
091
こりや
可愛
(
かあい
)
さうな
事
(
こと
)
だ。
092
バーチルさまを
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
れば
家
(
いへ
)
の
奥
(
おく
)
さまはお
喜
(
よろこ
)
びなさるだらうが、
093
第二
(
だいに
)
夫人
(
ふじん
)
の
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
の
心
(
こころ
)
が
察
(
さつ
)
せらるる。
094
何
(
なん
)
とかして
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまいかな』
095
バーチル『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
096
併
(
しか
)
し
猩々
(
しやうじやう
)
は
決
(
けつ
)
して
此
(
この
)
島
(
しま
)
を
離
(
はな
)
れは
致
(
いた
)
しませぬ。
097
あれだけ
沢山
(
たくさん
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
が、
098
時々
(
ときどき
)
現
(
あら
)
はれる
大蛇
(
をろち
)
にも
呑
(
の
)
まれず、
099
ああして
居
(
ゐ
)
るのはあの
王
(
わう
)
があるからで
厶
(
ござ
)
います。
100
あの
猩々
(
しやうじやう
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
れば
眷族
(
けんぞく
)
を
見殺
(
みごろし
)
にせねばなりませぬ。
101
又
(
また
)
猩々
(
しやうじやう
)
は
自分
(
じぶん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
を
見殺
(
みごろし
)
にして
吾々
(
われわれ
)
に
跟
(
つ
)
いては
参
(
まゐ
)
りますまい、
102
実
(
じつ
)
に
情
(
なさけ
)
深
(
ぶか
)
い
動物
(
どうぶつ
)
ですから』
103
伊太
(
いた
)
『
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
畜生
(
ちくしやう
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
夫婦
(
ふうふ
)
となつて
暮
(
くら
)
して
居
(
ゐ
)
たとすれば、
104
さうも
未練
(
みれん
)
が
残
(
のこ
)
るものかな。
105
アアてもさても
人間
(
にんげん
)
の
心理
(
しんり
)
状態
(
じやうたい
)
と
云
(
い
)
ふものは
分
(
わか
)
らぬものだなア』
106
玉国
(
たまくに
)
『
人間
(
にんげん
)
であらうが
獣
(
けだもの
)
であらうが、
107
決
(
けつ
)
して
愛情
(
あいじやう
)
に
変
(
かは
)
りはない。
108
況
(
まし
)
て
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
少
(
すこ
)
しく
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はねば
女房
(
にようばう
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
したり、
109
夫
(
をつと
)
を
捨
(
す
)
てたりするものだが、
110
畜生
(
ちくしやう
)
は
其
(
その
)
点
(
てん
)
になれば
偉
(
えら
)
いものだ。
111
空
(
そら
)
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
さへも
一方
(
いつぱう
)
が
人
(
ひと
)
に
取
(
と
)
られるとか、
112
又
(
また
)
は
死
(
し
)
んで
仕舞
(
しま
)
ふとかすれば、
113
仮
(
かり
)
にも
二度目
(
にどめ
)
の
雄
(
をす
)
を
持
(
も
)
つたり、
114
雌
(
めす
)
を
持
(
も
)
つたりしないものだ。
115
これを
思
(
おも
)
へば、
116
人間
(
にんげん
)
は
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
に
劣
(
おと
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうだ』
117
伊太
(
いた
)
『
成程
(
なるほど
)
感心
(
かんしん
)
なものですな。
118
これ
三千彦
(
みちひこ
)
さま、
119
お
前
(
まへ
)
さまも
今
(
いま
)
の
先生
(
せんせい
)
のお
話
(
はなし
)
を
腹
(
はら
)
に
入
(
い
)
れて、
120
決
(
けつ
)
してデビス
姫
(
ひめ
)
を
出
(
だ
)
したりしてはなりませぬぞや。
121
又
(
また
)
仮令
(
たとへ
)
奥
(
おく
)
さまが
亡
(
な
)
くなつても、
122
二度目
(
にどめ
)
の
奥
(
おく
)
さまは
持
(
も
)
たないやうになさいませ。
123
奥
(
おく
)
さまも
奥
(
おく
)
さまですよ、
124
どんな
事
(
こと
)
があつても
決
(
けつ
)
して
二度目
(
にどめ
)
の
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つたり、
125
臀
(
しり
)
をふつてはなりませぬぞや』
126
三千
(
みち
)
『ハハハ。
127
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
迄
(
まで
)
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
128
決
(
けつ
)
して
仰
(
おほせ
)
に
背
(
そむ
)
くやうな
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
しませぬから、
129
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
130
伊太
(
いた
)
『
本当
(
ほんたう
)
だよ、
131
決
(
けつ
)
して
伊太彦
(
いたひこ
)
の
話
(
はなし
)
を
軽
(
かる
)
く
聞
(
き
)
いてはなりませぬぞや。
132
いやもう、
133
今
(
いま
)
の
話
(
はなし
)
で
実
(
じつ
)
に
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れました』
134
玉国
(
たまくに
)
『どうも、
135
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
悔
(
くや
)
んで
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
で
仕方
(
しかた
)
がない、
136
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
バーチルさま
此
(
この
)
船
(
ふね
)
にお
乗
(
の
)
りなさい。
137
一先
(
ひとま
)
づ
帰
(
かへ
)
つて
奥
(
おく
)
さまに
安心
(
あんしん
)
させたが
宜
(
よろ
)
しからう』
138
バーチル『ハイ、
139
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
140
何卒
(
どうぞ
)
宜
(
よろ
)
しく
願
(
ねが
)
ひます』
141
子猿
(
こざる
)
はキャッキャッと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
142
追々
(
おひおひ
)
と
近
(
ちか
)
よつて
来
(
く
)
る。
143
バラモン
組
(
ぐみ
)
のヤッコス、
144
ハール、
145
サボールの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
小猿
(
こざる
)
の
群
(
むれ
)
を
面白
(
おもしろ
)
がつて
追
(
お
)
つかけ
乍
(
なが
)
ら、
146
荒
(
あ
)
れ
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
147
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
船
(
ふね
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
残
(
のこ
)
して、
148
磯辺
(
いそばた
)
を
七八間
(
しちはちけん
)
許
(
ばか
)
り
離
(
はな
)
れた。
149
猩々
(
しやうじやう
)
の
王
(
わう
)
は
悲鳴
(
ひめい
)
を
上
(
あ
)
げて
磯辺
(
いそばた
)
に
佇
(
たたず
)
み、
150
赤
(
あか
)
ン
坊
(
ばう
)
をつき
出
(
だ
)
し、
151
バーチルの
顔
(
かほ
)
を
眺
(
なが
)
めて
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
し、
152
口
(
くち
)
には
云
(
い
)
はねど、
153
『
此
(
この
)
子
(
こ
)
は
貴方
(
あなた
)
、
154
可愛
(
かあい
)
う
厶
(
ござ
)
いませぬか。
155
妻
(
つま
)
を
見捨
(
みす
)
てて
帰
(
かへ
)
るとは
惨酷
(
ざんこく
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬか』との
表情
(
へうじやう
)
を
示
(
しめ
)
し、
156
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
157
時々
(
ときどき
)
小猿
(
こざる
)
を
股
(
また
)
から
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
く
様
(
さま
)
を
見
(
み
)
せて
脅喝
(
けふかつ
)
を
試
(
こころ
)
みた。
158
併
(
しか
)
し
一同
(
いちどう
)
心
(
こころ
)
を
鬼
(
おに
)
にして、
159
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ぬ
今日
(
けふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
と
船
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
初
(
はじ
)
めた。
160
猩々王
(
しやうじやうわう
)
は、
161
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
の
喉
(
のど
)
を
締
(
し
)
めて
殺
(
ころ
)
し、
162
自分
(
じぶん
)
は
藤蔓
(
ふぢかづら
)
に
重
(
おも
)
い
石
(
いし
)
を
縛
(
くく
)
りつけ、
163
ドンブと
許
(
ばか
)
り
海中
(
かいちう
)
に
身
(
み
)
を
投
(
とう
)
じて
仕舞
(
しま
)
つた。
164
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
見
(
み
)
て、
165
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
悲歎
(
ひたん
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れた。
166
ヤッコス、
167
ハール、
168
サボールの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
船
(
ふね
)
が
出
(
で
)
たのを
見
(
み
)
て
驚
(
おどろ
)
き
磯辺
(
いそばた
)
に
慌
(
あわ
)
ただしく
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
り、
169
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『オーイ オーイ
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
170
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
此処
(
ここ
)
に
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
171
其
(
その
)
船
(
ふね
)
返
(
かへ
)
せ』
172
と
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
叫
(
さけ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
173
メート、
174
ダルの
二人
(
ふたり
)
は、
175
舷頭
(
げんとう
)
に
立
(
た
)
ち
妙
(
めう
)
な
恰好
(
かつかう
)
して
腮
(
あご
)
をしやくり、
176
幾度
(
いくたび
)
となく
拳骨
(
げんこつ
)
で
空
(
くう
)
を
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
177
『イヒヒヒ、
178
ウフフフ。
179
オーイ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
悪人
(
あくにん
)
奴
(
め
)
、
180
貴様
(
きさま
)
はキヨの
港
(
みなと
)
で
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
一同
(
いちどう
)
を
捕縛
(
ほばく
)
する
計略
(
けいりやく
)
をやつて
居
(
ゐ
)
るやうだが、
181
そんな
事
(
こと
)
はちやんと
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
も
御存
(
ごぞん
)
じだ。
182
夫
(
それ
)
だから
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
此処
(
ここ
)
に
置
(
お
)
き
去
(
ざ
)
りにしてお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばすのだ。
183
まア
猿島
(
さるじま
)
の
王
(
わう
)
となり、
184
猿
(
さる
)
と
夫婦
(
めをと
)
となり
子孫
(
しそん
)
繁栄
(
はんゑい
)
の
道
(
みち
)
を
講
(
かう
)
じたらよからう。
185
アバヨ、
186
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
様
(
さま
)
、
187
御悠
(
ごゆつく
)
りと、
188
左様
(
さやう
)
なら』
189
と
所有
(
あらゆる
)
嘲笑
(
てうせう
)
をなし、
190
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
磯辺
(
いそばた
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をしながら、
191
折
(
をり
)
から
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る、
192
微風
(
びふう
)
に
帆
(
ほ
)
を
上
(
あ
)
げて
西南
(
せいなん
)
の
方
(
はう
)
さして
辷
(
すべ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
193
船頭
(
せんどう
)
は
櫓
(
ろ
)
をゆるやかに
操
(
あやつ
)
り
乍
(
なが
)
ら
涼
(
すず
)
しい
声
(
こゑ
)
で
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
194
船頭
(
せんどう
)
『ヤンサモンサで
沖
(
おき
)
を
漕
(
こ
)
ぐ
船
(
ふね
)
は
195
女郎
(
ぢよらう
)
が
招
(
まね
)
けば
何
(
な
)
んと
磯
(
いそ
)
による、
196
ヤンサ、
女郎
(
ぢよらう
)
が
招
(
まね
)
くとも
197
磯
(
いそ
)
にども
寄
(
よ
)
るな
198
ナント
女郎
(
ぢよらう
)
は
化物
(
ばけもの
)
昼狐
(
ひるぎつね
)
199
ヤンサヨー
200
泥坊
(
どろばう
)
の
泥坊
(
どろばう
)
の
三人
(
さんにん
)
連
(
づれ
)
が
201
声
(
こゑ
)
を
涸
(
か
)
らして
招
(
まね
)
くとも
202
ヤンサー、
磯
(
いそ
)
には
寄
(
よ
)
るな
203
彼奴
(
あいつ
)
ア
盗人
(
ぬすびと
)
昼狐
(
ひるぎつね
)
204
キヨの
港
(
みなと
)
についたなら
205
ヤンサー、エンサー
206
ヤンヤーノヤー
207
目付
(
めつけ
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
と
諜
(
しめ
)
し
合
(
あ
)
ひ
208
数百
(
すうひやく
)
の
手下
(
てした
)
を
引
(
ひ
)
き
率
(
つ
)
れて
209
ヤンサー コレワイサー
210
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
211
其
(
その
)
外
(
ほか
)
一同
(
いちどう
)
の
生神
(
いきがみ
)
を
212
一網
(
いちまう
)
打尽
(
だじん
)
にして
呉
(
く
)
りよと
213
手具脛
(
てぐすね
)
引
(
ひ
)
いて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
214
其
(
その
)
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
つて
耐
(
たま
)
らうか
215
ヤンサ、エーンサーノ
216
エンヤラヤー
217
猩々
(
しやうじやう
)
の
島
(
しま
)
にと
蟄居
(
ちつきよ
)
して
218
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
をば
嫁
(
よめ
)
に
取
(
と
)
り
219
結構
(
けつこう
)
毛
(
け
)
だらけ
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
んで
220
キヤツキヤツと
泣
(
な
)
いて
暮
(
くら
)
しやんせ
221
これが
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
懲戒
(
みせしめ
)
か
222
ほんにお
前
(
まへ
)
は
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
223
猩々
(
しやうじやう
)
の
島
(
しま
)
の
王
(
わう
)
となり
224
治外
(
ちぐわい
)
法権
(
はふけん
)
の
生涯
(
しやうがい
)
を
225
送
(
おく
)
らしやんせよいつ
迄
(
まで
)
も
226
これもお
前
(
まへ
)
さまの
身
(
み
)
の
錆
(
さび
)
だ
227
折角
(
せつかく
)
命
(
いのち
)
助
(
たす
)
けられ
228
ヤンサ、エンサ
229
エンヤラサー
230
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
に
悪企
(
わるだく
)
み
231
それを
悟
(
さと
)
つた
宣伝使
(
せんでんし
)
232
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
もすつかり
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
る
233
ほんに
貴様
(
きさま
)
は
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ぢや
234
月
(
つき
)
は
照
(
て
)
る
照
(
て
)
る
涼風
(
すずかぜ
)
は
吹
(
ふ
)
く
235
浪
(
なみ
)
も
静
(
しづか
)
にさやさやと
236
面白
(
おもしろ
)
おかしく
潔
(
いさぎよ
)
く
237
キヨの
港
(
みなと
)
にや
着
(
つ
)
かないで
238
イヅミの
国
(
くに
)
のスマの
浦
(
うら
)
239
バラモン
教
(
けう
)
の
目付
(
めつけ
)
等
(
ら
)
が
240
鼻
(
はな
)
をあかして
241
吃驚
(
びつくり
)
さしてやらう
242
エンサ、エンサノ
243
エンヤラヤー』
244
と
手
(
て
)
をふり
足
(
あし
)
をふり
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
嘲弄
(
てうろう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
245
追々
(
おひおひ
)
島
(
しま
)
に
遠
(
とほ
)
ざかり
行
(
ゆ
)
く。
246
バーチル『
久方
(
ひさかた
)
の
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
救
(
すく
)
ひ
神
(
がみ
)
247
天降
(
あもり
)
ましたる
今日
(
けふ
)
ぞ
嬉
(
うれ
)
しき。
248
さりながら
三年
(
みとせ
)
の
間
(
あひだ
)
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
と
249
慈
(
いつくしみ
)
たる
姫
(
ひめ
)
こそ
哀
(
あは
)
れ。
250
猩々
(
しやうじやう
)
の
姫
(
ひめ
)
に
宿
(
やど
)
りし
吾
(
わが
)
胤
(
たね
)
を
251
見殺
(
みごろし
)
にする
心
(
こころ
)
苦
(
くる
)
しさ。
252
妻
(
つま
)
となり
夫
(
をつと
)
となるも
前
(
さき
)
の
世
(
よ
)
の
253
深
(
ふか
)
き
縁
(
えにし
)
と
白浪
(
しらなみ
)
の
上
(
うへ
)
。
254
白浪
(
しらなみ
)
の
上
(
うへ
)
漕
(
こ
)
ぎ
渡
(
わた
)
る
此
(
この
)
船
(
ふね
)
は
255
百
(
もも
)
の
哀
(
あは
)
れを
乗
(
の
)
せて
走
(
はし
)
れる。
256
訪
(
と
)
ふ
人
(
ひと
)
もなき
荒島
(
あらしま
)
に
残
(
のこ
)
されし
257
三人
(
みたり
)
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
しのばゆ。
258
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
にせめられて
259
かく
浅
(
あさ
)
ましき
身
(
み
)
とぞなりしか』
260
真純彦
(
ますみひこ
)
『
大空
(
おほぞら
)
も
水
(
みづ
)
の
底
(
そこ
)
ひもすみ
渡
(
わた
)
る
261
さはさり
乍
(
なが
)
ら
心
(
こころ
)
悲
(
かな
)
しき。
262
猩々
(
しやうじやう
)
の
憐
(
あはれ
)
な
最後
(
さいご
)
を
見
(
み
)
るにつけ
263
耐
(
こら
)
へ
兼
(
か
)
ねたる
吾
(
わが
)
涙
(
なみだ
)
かな』
264
メート『
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
悪漢
(
わるもの
)
どもを
島
(
しま
)
におき
265
帰
(
かへ
)
りて
行
(
ゆ
)
かむ
吾
(
われ
)
ぞ
嬉
(
うれ
)
しき。
266
ヤッコスは
嘸
(
さぞ
)
今頃
(
いまごろ
)
は
磯辺
(
いそばた
)
に
267
吾
(
わが
)
船
(
ふね
)
眺
(
なが
)
め
泣
(
な
)
きくづれ
居
(
ゐ
)
む』
268
ダル『
何事
(
なにごと
)
も
心
(
こころ
)
の
罪
(
つみ
)
の
播
(
ま
)
きし
種
(
たね
)
269
猩々
(
しやうじやう
)
の
島
(
しま
)
に
生
(
は
)
えしなるらむ。
270
少々
(
せうせう
)
の
過
(
あやま
)
ちなれば
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
271
空
(
そら
)
怖
(
おそ
)
ろしき
曲神
(
まがかみ
)
の
罪
(
つみ
)
』
272
三千彦
(
みちひこ
)
『
悲
(
かな
)
しさは
涙
(
なみだ
)
の
壺
(
つぼ
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
の
273
汲
(
く
)
むすべもなき
今日
(
けふ
)
の
哀
(
あは
)
れさ』
274
デビス
姫
(
ひめ
)
『
三柱
(
みはしら
)
の
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
も
皇神
(
すめかみ
)
の
275
厚
(
あつ
)
き
守
(
まも
)
りに
安
(
やす
)
く
住
(
す
)
むらむ』
276
玉国別
(
たまくにわけ
)
『スマの
浦
(
うら
)
浪
(
なみ
)
打
(
う
)
ち
際
(
ぎは
)
につきし
上
(
うへ
)
は
277
態人
(
わざびと
)
をもて
向
(
むか
)
ひ
助
(
たす
)
けむ』
278
と
各
(
おのおの
)
述懐
(
じゆつくわい
)
を
述
(
の
)
べ
乍
(
なが
)
ら、
279
潮流
(
てうりう
)
に
乗
(
の
)
つて
湖上
(
こじやう
)
を
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
辷
(
すべ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
280
遙
(
はる
)
か
前方
(
ぜんぱう
)
に
当
(
あた
)
つて
霞
(
かすみ
)
のやうに
浮
(
うか
)
びたる
小
(
ちひ
)
さき
島影
(
しまかげ
)
が
目
(
め
)
についた。
281
イールは
目敏
(
めざと
)
く
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
282
イール『ああ
仕舞
(
しま
)
つた、
283
たうとう
魔
(
ま
)
の
海
(
うみ
)
に
船
(
ふね
)
が
流
(
なが
)
れ
込
(
こ
)
みました。
284
あれへ
廻
(
まは
)
れば
三四十
(
さんしじふ
)
里
(
り
)
の
廻
(
まは
)
り
道
(
みち
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
285
この
湖
(
みづうみ
)
はもうあの
潮流
(
てうりう
)
に
乗
(
の
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
286
方向
(
はうかう
)
を
転
(
てん
)
ずる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
287
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
暗礁
(
あんせう
)
のない
限
(
かぎ
)
り
滅多
(
めつた
)
に
危険
(
きけん
)
な
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
288
皆
(
みな
)
さま
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
289
スマの
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
かうと
思
(
おも
)
へば
余程
(
よほど
)
の
廻
(
まは
)
りですが、
290
これも
成
(
な
)
り
行
(
ゆき
)
だと
諦
(
あきら
)
めて
下
(
くだ
)
さい』
291
玉国
(
たまくに
)
『
何
(
なに
)
かの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
だらう。
292
浪
(
なみ
)
のまにまに
任
(
まか
)
して、
293
充分
(
じゆうぶん
)
気
(
き
)
をつけてやつて
呉
(
く
)
れ。
294
又
(
また
)
大変
(
たいへん
)
な
獲物
(
えもの
)
があるかも
知
(
し
)
れないから』
295
イール『ハイ、
296
有難
(
ありがた
)
う、
297
それで
私
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました』
298
と
鉢巻
(
はちまき
)
をしながら、
299
八
(
はち
)
人
(
にん
)
の
水夫
(
かこ
)
を
指揮
(
しき
)
し、
300
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
301
真裸体
(
まつぱだか
)
となつて
漕
(
こ
)
ぎ
初
(
はじ
)
めた。
302
船
(
ふね
)
は
蜒々
(
えんえん
)
として
浪
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
303
(
大正一二・三・二九
旧二・一三
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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