霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一四章 猩々島(しやうじやうじま)〔一四八九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第3篇 千波万波 よみ(新仮名遣い):せんぱばんぱ
章:第14章 猩々島 よみ(新仮名遣い):しょうじょうじま 通し章番号:1489
口述日:1923(大正12)年03月29日(旧02月13日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
印度の国の北端、テルモン湖水を南に渡ったイヅミの国のスマの里に、バーチルという豪農があった。バーチルは何不自由なき身の上でありながら魚を取ることが好きで、妻のサーベルの諌めも聞かず、財産の整理もせずに舟を出して網を打ち釣り糸を垂れる毎日であった。
ある夜、バーチルは妻が寝静まった後に、僕のアンチーを連れて舟を出した。魚がよく釣れるのでそれに心を奪われていると、にわかに黒雲が起こって空には一点の星影も見えなくなり、激しい嵐にさらされた。
バーチルは動転して、取った魚を守るためにアンチーを舟から下ろそうとするほどであったが、ようやく我に返ってアンチーと二人で舟を転覆から守るために魚を湖水に抛りこみ始めた。しかし時すでに遅く、大津波に舟は飲まれて主従は湖水に投げ出されてしまった。
気が付くとバーチルは孤島に漂着し、たくさんの猩々に囲まれていた。すると一匹の大なる猩々が自分の顔を覗き込んで、同情の涙に暮れている。
この大きな猩々は女王であった。猩々の女王はバーチルを棲家に連れて行って介抱した。バーチルは三年の月日をこの猩々ヶ島で過ごした。二年目には猩々とバーチルの間に赤ん坊も生まれていた。
バーチルは何とか猩々の目を盗んで故郷へ帰ろうという思いから、猩々たちを連れて浜遊びに出た。たちまち二三丁ばかり沖合を通る船を認め、バーチルは両手を振って船に合図を送った。
猩々ヶ島の沖合に現れたのは、玉国別たちの船・初稚丸であった。伊太彦は人間が浜辺で手を振っているのを認めた。ヤッコスは恐ろしい猩々の島に上陸することを反対したが、玉国別は人間がいるなら助けなければならないと、上陸を決めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5814
愛善世界社版:167頁 八幡書店版:第10輯 430頁 修補版: 校定版:178頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 印度(ツキ)(くに)北端(ほくたん)002テルモンの湖水(こすい)(みなみ)(わた)つたイヅミの(くに)のスマの(さと)にバーチルと()豪農(がうのう)があつた。003バーチルは(なに)不自由(ふじいう)なき()であり(なが)ら、004(ひま)ある(ごと)湖水(こすい)(ふね)(うか)べ、005(うを)(あさ)(こと)唯一(ゆゐいつ)(たのし)みとして()た。006(つま)のサーベルは何時(いつ)も『危険(きけん)漁業(ぎよげふ)()めて(いへ)におとなしく()つて財産(ざいさん)整理(せいり)をせよ』と諫言(かんげん)したが、007どうしても()かうとはせず、008女房(にようばう)寝静(ねしづ)まつたのを(かんが)浜辺(はまべ)()(れい)(ごと)(あみ)をうち(つり)()れ、009あまり面白(おもしろ)いので何時(いつ)とはなしに(おき)(おき)へと(なが)()で、010到底(たうてい)(いち)(にち)(かへ)(こと)出来(でき)ない地点(ちてん)(まで)()つて(しま)つた。011(ふね)()した()()(はな)れ、012その()(また)ズツポリ()れて、013()(うつ)るを(わす)れて一生(いつしやう)懸命(けんめい)一人(ひとり)(しもべ)(とも)によく()れるのに(こころ)()られて()た。
014 満天(まんてん)(にはか)黒雲(くろくも)(おこ)り、015一点(いつてん)星影(ほしかげ)さへも()えなくなり、016雨風(あめかぜ)(はげ)しく(なみ)(たか)沢山(たくさん)(うお)(ふね)()んで()ては到底(たうてい)危険(きけん)(まぬが)(がた)くなつて()た。017されど折角(せつかく)(ほね)()つて()つた(さかな)をムザムザ湖中(こちう)()げて(しま)ふのは、018どうも()しくて(たま)らない、019だと()つて(すこ)しは(おも)みを(かる)くせなくては到底(たうてい)(ふね)覆没(ふくぼつ)(まぬが)れなくなつて()た。020(しもべ)のアンチーは(ふる)(をのの)き、021泣声(なきごゑ)()して、
022アンチー『旦那(だんな)(さま)023どう(いた)しませう。024到底(たうてい)(この)(くら)がりに大暴風(おほあらし)()ては(たす)かりこはありますまい。025貴方(あなた)折角(せつかく)()りになつた(この)(さかな)(ひと)つも(のこ)らず(うみ)(とう)じて(しま)ひませう。026さうすれば(ふね)(かる)くなり、027どうなり、028こうなり()()(しま)()いて(いのち)(たも)(こと)出来(でき)ませう。029何卒(どうぞ)一匹(いつぴき)(のこ)らず()てさして(くだ)さいませぬか』
030泣声(なきごゑ)になつて歎願(たんぐわん)した。031バーチルは(しもべ)言葉(ことば)(はら)()て、032(こゑ)(とが)らして、
033バーチル『こりやアンチー、034(おれ)がこれ()危険(きけん)(をか)して折角(せつかく)()つた(さかな)(みな)(なが)せとは、035(なん)()失礼(しつれい)(こと)()ふ。036(さかな)(おも)たくて(ふね)(かへ)(おそれ)があると()ふのなら、037貴様(きさま)のやうな重量(ぢうりやう)(おほ)い、038柄見倒(がらみだふ)しが(うみ)()()めば(この)(ふね)余程(よほど)(かる)くなつて(さかな)(たす)かるのだ』
039半狂(はんきやう)(をとこ)とて(さかな)にかけたら()(はな)もない。040(しもべ)(たい)して(じつ)無慈悲(むじひ)(きは)まる叱言(こごと)()つた。
041アンチー『旦那(だんな)さま、042(わたし)(をさな)(とき)から貴方(あなた)(うち)(やしな)はれた(しもべ)ですから、043貴方(あなた)のお(いのち)(かか)はる(やう)(こと)あれば、044身代(みがは)りとなる(こと)覚悟(かくご)(まへ)(ござ)います。045(しか)何程(なにほど)(しもべ)()つても、046矢張(やつぱ)人間(にんげん)(ござ)います。047(さかな)幾何(いくら)でも()れませうが、048(この)アンチーの(からだ)世界(せかい)(ひと)つほか()りませぬから、049そんな無慈悲(むじひ)(こと)仰有(おつしや)らずに(はや)(この)(さかな)()てさせて(くだ)さいませ』
050バーチル『その(はう)主人(しゆじん)危難(きなん)(すく)ふと(いま)(まを)しただらう。051主人(しゆじん)大切(たいせつ)丹精(たんせい)()らして()つた(この)(うを)(たす)けて、052何故(なぜ)(その)(はう)重量(ぢうりやう)(げん)ずるために(うみ)()()まないのか。053そんな(こと)(しもべ)(つと)めが(つと)まるのか。054(わけ)(わか)らぬ代物(しろもの)だな』
055アンチー『旦那(だんな)(さま)056()んだ(さかな)よりも(わたし)(いのち)(はう)余程(よつぽど)(やす)いので(ござ)いますか。057そりや(あんま)没義道(もぎだう)ぢや(ござ)いませぬか』
058バーチル『馬鹿(ばか)(まを)せ。059(さかな)(うち)()つて(かへ)れば自分(じぶん)(たの)しみ村中(むらぢう)(やつ)にも刺身(つくり)にしたり、060煮〆(にしめ)にしても、061()いて()はさうと(まま)だ。062何程(なにほど)肥太(こえふと)つて()ても貴様(きさま)(からだ)刺身(さしみ)にもなるかい。063(たれ)だつて一人(ひとり)でも(よろこ)んで(いただ)くものはない。064(おれ)忠義(ちうぎ)(つく)さうと(おも)ふなら(はや)貴様(きさま)(はう)から()()まぬか。065グヅグヅして()ると(ふね)転覆(てんぷく)して(しま)ふぢやないか。066貴様(きさま)一人(ひとり)(いのち)()くするか、067二人(ふたり)(いのち)()くするかと()瀬戸際(せとぎは)だ。068さア(はや)()()かして()()め』
069アンチー『これは(また)()しからぬ(こと)仰有(おつしや)います。070貴方(あなた)はどうかして()りますな。071(にはか)仰有(おつしや)(こと)へんになつたぢやありませぬか』
072 バーチルは(しば)らく俯向(うつむ)いて(かんが)へて()たが(にはか)に、073(おどろ)いた(やう)(こゑ)で、
074バーチル『やア如何(いか)にもさうだ。075(あんま)吃驚(びつくり)して(さかな)人間(にんげん)軽重(けいぢう)(あやま)つて()つた。076やア(こら)へて()れ、077せうもない(こと)()つたものだ。078(あんま)(さかな)()をとられ(あたま)()()んだものか、079(めう)幻覚(げんかく)(おこ)したものだ。080さアお(まへ)()(とほ)りにする。081さアさア(さかな)()つた()つた』
082と、083ここに主従(しゆじゆう)一生(いつしやう)懸命(けんめい)折角(せつかく)()つた(さかな)(つか)んでは海中(かいちう)()げ、084(つか)んでは()げして、085(やうや)半分(はんぶん)(ばか)(ほか)()したと(おも)時分(じぶん)に、086(とら)()ゆるが(ごと)(おと)をして(おそ)ふて()大海嘯(おほつなみ)にバツサリと()まれて、087(ふね)諸共(もろとも)(なみ)()()まれて(しま)つた。088二人(ふたり)暗夜(あんや)荒湖(あらうみ)()()み、089最早(もは)如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ないので(うん)(てん)(まか)して()た。
090イヅミの(くに)のスマの(さと)
091首陀(しゆだ)豪農(がうのう)バーチルは
092(つま)(いさ)めも()かばこそ
093気色(けしき)(わる)(よる)(うみ)
094こんな(とき)には何時(いつ)よりも
095獲物(えもの)(おほ)いと()(なが)
096(しもべ)アンチー(ともな)ひて
097スマの(うら)より(ふね)()
098何時(いつ)もにもなき豊漁(ほうれふ)
099うつつを()かし()らぬ()
100沖合(おきあひ)(とほ)(なが)()
101一夜(いちや)()かし(あした)より
102(また)もや黄昏(たそがれ)()ぐる(まで)
103一心(いつしん)不乱(ふらん)(すなど)りし
104夜中(よなか)(ころ)となりし(とき)
105一天(いつてん)(にはか)()(くも)
106黒白(あやめ)()かぬ(やみ)となり
107(たちま)(おそ)暴風雨(ばうふうう)
108(なみ)(たか)まり白波(しらなみ)
109(たてがみ)(ふる)釣舟(つりぶね)
110()みつき(きた)(おそ)ろしさ
111(とら)()(たけ)(りよう)(ぎん)
112獅子(しし)(たけ)びの物凄(ものすご)
113(かぜ)(なみ)との(うな)(ごゑ)
114(たゆ)まず(くつ)せずバサバサと
115(あみ)打下(うちお)ろし様々(さまざま)
116(おほ)きな(さかな)(あさ)りつつ
117(うつつ)になれる(をり)もあれ
118漁船(ぎよせん)()()()(ごと)
119上下(じやうげ)左右(さいう)翻弄(ほんろう)
120身辺(しんぺん)(あやふ)くなりければ
121ここに主従(しゆじゆう)二人(ふたり)()
122種々(いろいろ)雑多(ざつた)(あらそ)ひつ
123折角(せつかく)()らへし魚族(ぎよぞく)をば
124スツカリ(うみ)()げやりて
125せめて(いのち)(ひろ)はむと
126あせる(をり)しも山岳(さんがく)
127(やう)なる(なみ)船体(せんたい)
128(たちま)()まれて無残(むざん)にも
129(みづ)藻屑(もくず)となりにけり
130僕男(しもべをとこ)のアンチーは
131行衛(ゆくゑ)不明(ふめい)となり()てて
132()べど(かへ)らぬ死出(しで)(たび)
133()くも(あは)れな次第(しだい)なり
134大海中(おほわだなか)()()てる
135(ひと)(おそ)れて()りつかぬ
136猩々(しやうじやう)(しま)磯端(いそばた)
137打上(うちあ)げられしバーチルが
138(なみ)(からだ)翻弄(ほんろう)され
139(いき)()()えになりし(とき)
140猩々(しやうじやう)(わう)(あら)はれて
141手早(てばや)(くが)(すく)()
142真水(まみづ)(くち)(ふく)ませて
143(やうや)(いのち)(すく)ひける
144()面白(おもしろ)物語(ものがたり)
145(たたみ)(なみ)(うか)びたる
146長方形(ちやうはうけい)(ふね)()
147敷島(しきしま)煙草(たばこ)(くゆ)らせて
148ここ(まで)()べて北村(きたむら)
149隆光彦(たかてるひこ)(ふで)(さき)
150(うつ)して千代(ちよ)(つた)へむと
151万年筆(まんねんひつ)剣尖(けんさき)
152原稿(げんかう)用紙(ようし)につきつけて
153あらあらここに(しる)()
154ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
155御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
156 バーチルはフツと()がつけば()(すで)()(はな)れ、157自分(じぶん)()()らぬ孤島(こたう)磯端(いそばた)横臥(わうぐわ)し、158沢山(たくさん)猩々(しやうじやう)(あつ)まり(きた)つて『キヤーキヤー』と()()(なが)自分(じぶん)周囲(しうゐ)(あり)(ごと)取巻(とりま)いて()る。159(かたはら)(すぐ)れて(だい)なる一匹(いつぴき)猩々(しやうじやう)自分(じぶん)(かほ)()てさも同情(どうじやう)()へざるものの(ごと)(くび)(かたむ)(なみだ)(なが)して()る。160よくよく()れば(うはさ)()いた猩々(しやうじやう)(しま)である。
161バーチル『ああ(わし)(おそ)ろしい()んな(しま)漂着(へうちやく)したのか。162あまり自我心(じがしん)(つよ)(ため)女房(にようばう)(いさ)めも()かず(かく)れて(れふ)()たのが一生(いつしやう)不覚(ふかく)だつた。163さうして(しもべ)のアンチーは如何(どう)なつたであらう。164ああ(おそ)ろしい(こと)になつた。165(かへ)らうと(おも)つても(ふね)はなし、166猩々(しやうじやう)(ゑじき)になつて(しま)ふのか』
167恐怖心(きようふしん)()られて(おそ)(をのの)いて()た。
168 意外(いぐわい)にも猩々(しやうじやう)(わう)とも(おぼ)しき大猿(おほざる)親切(しんせつ)さうにバーチルに(せな)()け、169(わが)()()はれよ』との()形容(けいよう)(しめ)して()る。170バーチルは『もう()うなつては因果腰(いんぐわごし)()めるより仕方(しかた)がない。171(かれ)()()すがままに(まか)さむ』かと猩々(しやうじやう)(せな)怖々(こはごは)(なが)()きついた。172猩々(しやうじやう)()()ふたまま、173きつい岩山(いはやま)をいと安々(やすやす)(のぼ)り、174頂上(ちやうじやう)屏風(びやうぶ)()てた(やう)(いは)穿()いてある(ふか)洞穴(ほらあな)(なか)へ、175サツサと()()んで(しま)つた。176バーチルは岩窟(いはや)(なか)(みちび)かれ、177(むね)(とどろ)かして()ると、178(めづ)らしき果物(くだもの)小猿(こざる)むしら(きた)つて(かは)()(など)して、179(これ)()へよと(すす)めるのである。180意外(いぐわい)猩々(しやうじやう)態度(たいど)に、181ヤツと(むね)()()ろし、182(からだ)(つか)れて(なは)(やう)にグニヤグニヤになつて()るのを、183(しば)休養(きうやう)せむとゴロリと(よこ)になつた。184猩々(しやうじやう)()()(なかば)(かわ)いたのを(あつ)()いて、185バーチルを(かか)自分(じぶん)手枕(てまくら)をして母親(ははおや)(あか)(ばう)添乳(そへち)をする(やう)に、186いと親切(しんせつ)体中(からだぢう)()(さす)り、187介抱(かいはう)熱中(ねつちう)して()る。188かくの(ごと)くしてバーチルは(さん)(ねん)月日(つきひ)(この)猩々(しやうじやう)(しま)(おく)(こと)となつた。189(この)猩々(しやうじやう)(めす)であつて(この)(しま)動物(どうぶつ)(わう)である。190猩々(しやうじやう)(ほか)鹿(しか)(うさぎ)()んで()た。191されど(うさぎ)鹿(しか)時々(ときどき)猩々王(しやうじやうわう)(そば)にやつて()(むつ)まじげに(あそ)んで()る。
192 二年目(にねんめ)猩々(しやうじやう)とバーチルの(あひだ)半人(はんにん)半獣(はんじう)(めう)(あか)(ばう)(うま)れた。193猩々(しやうじやう)(わう)掌中(しやうちう)(たま)(いつくし)み、194バーチルに自慢(じまん)さうに(いだ)かせたり、195自分(じぶん)(かほ)()めたり(ちち)()まして(その)()成人(せいじん)()つものの(ごと)くであつた。196バーチルも(くに)(かへ)らうと(おも)つても肝腎(かんじん)(ふね)はなし、197(また)猩々王(しやうじやうわう)()(しの)んで(かへ)(わけ)にも()かなかつた。198バーチルは(さん)(ねん)(あひだ)猩々(しやうじやう)同棲(どうせい)し、199大抵(たいてい)表情(へうじやう)(もつ)意志(いし)(つう)ずる(こと)出来(でき)(やう)になつて()た。200(なん)となく浜辺(はまべ)()たくなつて(たま)らないので猩々王(しやうじやうわう)身振(みぶり)(もつ)浜辺(はまべ)(あそ)びに()かうかと()つた。201猩々王(しやうじやうわう)(うれ)しげに(うなづ)いて()()(なが)数多(あまた)小猿(こざる)(したが)へ、202バーチルの身辺(しんぺん)(まも)(なが)ら、203嶮峻(けんしゆん)岩山(いはやま)(くだ)つて磯端(いそばた)()(かに)()ひかけたり、204(すな)()つたり、205色々(いろいろ)(なぐさ)みをして(うれ)しさうに(なつ)磯辺(いそべ)(あそ)びをやつて()た。
206 (たちま)二三丁(にさんちやう)ばかり沖合(おきあひ)白帆(しらほ)()げて(とほ)(ふね)がある。207(この)附近(ふきん)容易(ようい)(ふね)(とほ)(こと)出来(でき)ない、208暗礁(あんせう)点綴(てんてつ)危険(きけん)区域(くゐき)である。209バーチルは(この)(ふね)()るより両手(りやうて)打振(うちふ)打振(うちふ)り、210人間(にんげん)(この)(しま)漂着(へうちやく)して()ると()合図(あひづ)(しめ)した。211船頭(せんどう)のイールはフツと(この)姿(すがた)()(おどろ)いた(やう)(こゑ)で、
212イール『あ、213皆様(みなさま)214一寸(ちよつと)御覧(ごらん)なさいませ。215あの(しま)猩々(しやうじやう)(しま)()つて猩々(しやうじやう)ばかりが()んで()ますが、216不思議(ふしぎ)(こと)には人間(にんげん)らしいものが磯端(いそばた)()つて、217数多(あまた)猩々(しやうじやう)取囲(とりかこ)まれ、218()()つて()ります。219随分(ずいぶん)沢山(たくさん)猩々(しやうじやう)ですよ』
220伊太(いた)(なに)221猩々(しやうじやう)(しま)222そりや面白(おもしろ)からう』
223()ふより(はや)苫屋根(とまやね)(なか)から(へさき)()()てよくよく()れば、224イールの()つた(とほ)人間(にんげん)らしいものが(しき)りに(うで)()つて()る。
225伊太(いた)『もし、226先生(せんせい)227どうやら、228あの(しま)人間(にんげん)漂着(へうちやく)して()様子(やうす)です。229(ひと)(なん)とかして(ふね)()調(しら)べて()かうぢやありませぬか』
230ヤッコス『あれは大変(たいへん)(わる)猩々(しやうじやう)()るのです。231あんな(ところ)()かうものなら、232(みな)両眼(りやうがん)()()かれ(いのち)()られて(しま)ひます。233そんな険呑(けんのん)(ところ)()くものぢやありませぬ。234(けつ)して(わる)(こと)(まを)しませぬ。235()めなさいませ』
236伊太(いた)先生(せんせい)237(そば)まで(ふね)()せて調(しら)べて()ようぢやありませぬか。238(べつ)上陸(じやうりく)さへせなければ危険(きけん)はありませぬ。239()(かく)人間(にんげん)(けだもの)か、240よく調(しらべ)て、241人間(にんげん)ならば(たす)けてやらねばなりますまい。242是非(ぜひ)とも(ふね)()()いものですな』
243玉国(たまくに)成程(なるほど)244(まへ)()(とほ)りだ。245どうも人間(にんげん)らしい。246あんな無人島(むじんたう)(けだもの)同棲(どうせい)してるのだらう。247(なに)面白(おもしろ)(はなし)()けるかも()れない。248()(かく)(わず)二三丁(にさんちやう)(ところ)だから、249船頭(せんどう)さま、250一寸(ちよつと)(ふね)をつけて()れまいか』
251イール『はい、252初稚(はつわか)(さま)()ふお(かた)沢山(たくさん)なお(かね)(いただ)き、253(また)宣伝使(せんでんし)仰有(おつしや)(とほ)りにして()れとのお(たの)みで(ござ)いますから(おほ)せに(したが)ひませう』
254玉国(たまくに)『や、255そりや有難(ありがた)い、256そんなら(たの)む』
257 『はい』と(こた)えてイールは(へさき)(てん)水先(みづさき)(かんが)(なが)(やうや)くにして磯辺(いそべ)()いた。
258大正一二・三・二九 旧二・一三 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki