霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 舞踏(ぶたふ)〔一四九四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第4篇 猩々潔白 よみ(新仮名遣い):しょうじょうけっぱく
章:第19章 舞踏 よみ(新仮名遣い):ぶとう 通し章番号:1494
口述日:1923(大正12)年03月30日(旧02月14日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
アキスとカールが期待して眺めていると、白帆を掲げた船は三五教の宣伝使が乗っているようであった。そしてバラモンの捕り手の船に取り囲まれて追いかけっこをしている。
これを見て二人はバーチルが乗っている船ではなかろうと気を落とすが、主人のサーベル姫の命令に背くわけには行かないと、浜辺に留まって歌を詠んで気を紛らわせている。
いつの間にかバラモンの捕り手の船たちは見えなくなり、白帆を立てた船が一艘だけ、こちらに近づいてくる。アキスとカールはこれに力を得て歌いだし、踊り出した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5819
愛善世界社版:235頁 八幡書店版:第10輯 454頁 修補版: 校定版:249頁 普及版:95頁 初版: ページ備考:
001 酷熱(こくねつ)太陽(たいやう)は、002脳天(なうてん)から()()びせるやうに()りつける。003スマの浜辺(はまべ)小芝草(こしばぐさ)は、004暑熱(しよねつ)()()ねて(のど)(かわ)かし、005(いづ)れの()もキリキリと(うづ)()ひて、006(はり)のやうになつて()る。007アキス、008カールの二人(ふたり)はサーベル(ひめ)命令(めいれい)()つて炎天(えんてん)太陽(たいやう)()びながら、009(あさ)から(ばん)(まで)(おき)(なが)めて(あて)もなき(あるじ)(かへ)()るを夢路(ゆめぢ)辿(たど)心地(ここち)()つて()る。
010 (はるか)沖合(おきあひ)白帆(しらほ)が、011ポツと()(うつ)つた。012二人(ふたり)はこれこそ主人(しゆじん)(かへ)()(ふね)であらうか、013(ただ)しは他人(たにん)航海船(かうかいせん)だらうかと、014半信(はんしん)半疑(はんぎ)ながらも(やや)(のぞみ)(しよく)して()た。015白帆(しらほ)刻々(こくこく)(ちか)より()る。016二人(ふたり)()(つな)いで磯辺(いそべ)芝草(しばくさ)(うへ)に、017まだ(わか)らぬ主人(しゆじん)帰国(きこく)を、018(よろこ)びながらダンスをやつて()る。019(こころ)のせいか頭上(づじやう)()諸鳥(もろどり)二人(ふたり)のダンスに()して、020主人(しゆじん)帰国(きこく)(しゆく)する(ごと)(おも)はれ、021上下(じやうげ)一致(いつち)抃舞(べんぶ)雀躍(じやくやく)光景(くわうけい)(たれ)(はばか)らず(てい)して()る。
022 二人(ふたり)汗塗(あせみどろ)になつて(いき)(はづ)ませ、023少時(しばらく)(いき)をやすめて(おき)()()る。024(たちま)沖合(おきあひ)より七八艘(しちはつそう)(ふね)025垢染(あかじん)()()げ、026()()(うち)白帆(しらほ)(ふね)前後(ぜんご)左右(さいう)より()(かこ)んでしまつた。027茶色(ちやいろ)()(なな)(やつ)ツ、028白帆(しらほ)(ひと)(たがひ)(おひ)()はれつ(なみ)(しづ)かなる湖上(こじやう)(てふ)()(ごと)活動(くわつどう)(はじ)めて()る。
029アキス『おイ、030カールもう駄目(だめ)だ、031(また)(ちが)つたやうだ。032あの白帆(しらほ)をあげたのは()うやら三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()つて()(ふね)らしいぞ。033さうして垢染(あかじん)()()げて()(ふね)はバラモンの捕吏(とりて)(ふね)だ。034旦那(だんな)(さま)がお()(あそ)ばして()(ふね)ならばバラモン信者(しんじや)だから、035滅多(めつた)()ひかける(はず)がない。036(まへ)どう(おも)ふか』
037カール『どうも合点(がつてん)()かぬぢやないか、038折角(せつかく)ながらもう(あきら)めて(しばら)く、039アヅモス(さん)木蔭(こかげ)へでも這入(はい)つて(あつ)さを(しの)がうぢやないか。040いつ(まで)もこんな(とこ)()つては日射病(につしやびやう)(かか)つて仕舞(しま)ふよ。041アアあれ()よ、042白帆(しらほ)()えなくなつたぢやないか、043まさか沈没(ちんぼつ)したのぢやあるまいなア。044(あつ)いから(かへ)らうぢやないか、045アヅモス(さん)木蔭(こかげ)(まで)
046アキス『それでも主命(しゆめい)(そむ)(わけ)には()かない。047心頭(しんとう)(めつ)すれば()(また)(おのづか)(すず)し」と()ふぢやないか。048(ひと)此処(ここ)(うた)でも()んで(こころ)()(なほ)し、049元気(げんき)をつけて()ようかい。050()兼題(けんだい)として(なつ)(うた)で、051()(おれ)から(はじ)めて()よう』
052アキス『(なつ)
053人間(にんげん)にとりて
054(やす)むべき(とき)ではない
055むしろ一層(いつそう)(つよ)
056(はたら)くべき(とき)
057()
058()(てん)(かがや)
059雷霆(らいてい)(とどろ)
060人間(にんげん)周囲(しうゐ)にある
061(くさ)()
062(この)(とき)孳々(しし)として
063(さか)んに生長(せいちやう)繁茂(はんも)しあるに
064人間(にんげん)のみ安閑(あんかん)として
065ひとり
066徒然(とぜん)として
067避暑(ひしよ)(ふけ)
068遊惰(いうだ)にこの好日(かうじつ)
069銷過(せうくわ)することが出来(でき)やうか
070国祖(こくそ)大神(おほかみ)
071開闢(かいびやく)太初(はじめ)より今日(こんにち)(いた)(まで)
072(いち)(にち)
073片時(かたとき)秒間(べうかん)
074休養(きうやう)せずに吾人(ごじん)のために
075(はたら)きたまふではないか
076(しん)
077天地(てんち)(あひだ)流行(りうかう)する
078この孟然(まうぜん)たる
079至大(しだい)霊活(れいくわつ)一気(いつき)
080感得(かんとく)するものにありては
081労働(らうどう)こそ
082(かへつ)無上(むじやう)唯一(ゆゐいつ)安息(あんそく)である
083(けだ)
084(しん)安息(あんそく)
085()臍帯(せいたい)によりて
086母体(ぼたい)気息(きそく)通同(つうどう)する
087胎児(たいじ)のそれの(ごと)
088自然(しぜん)法界(はふかい)霊運(れいうん)
089順応(じゆんおう)する生活(せいくわつ)
090活動(くわつどう)(うち)(そん)する而已(のみ)である』
091カール『成程(なるほど)そいつは面白(おもしろ)い、092万木(ばんぼく)万草(ばんさう)のせつせつと繁茂(はんも)する(なつ)はよいシーズンだ。093人間(にんげん)(なつ)()れば(ふゆ)()(こと)(のぞ)み、094(ふゆ)()れば(また)(なつ)()(こと)希望(きばう)する、095勝手(かつて)厄介(やくかい)代物(しろもの)だ。096(おれ)(ひと)(なつ)(うた)()んで()よう、
097(なつ)()
098(けつ)して(あつ)いものではない
099またしても またしても
100吾人(ごじん)(こころ)()えつく
101名利(みやうり)肉楽(にくらく)欲火(よくくわ)(あつ)いのだ
102(うま)れながら
103吾人(ごじん)心中(しんちう)()えてゐる
104貪瞋(どんしん)痴愛(ちあい)
105毒燄(どくえん)があついのだ
106()()永久(とこしへ)
107(ふき)わたる
108聖霊(せいれい)涼風(りやうふう)()れて
109かの欲火(よくくわ)
110毒炎(どくえん)とを
111()すことを(さまた)ぐる
112(ひそか)
113(とざ)された
114(こころ)頑壁(ぐわんぺき)そのものが
115清涼(せいりやう)なるべき(なつ)
116さながら焦熱(せうねつ)地獄(ぢごく)
117(かん)ぜしむるのだ
118吾人(ごじん)聖霊(せいれい)涼風(りやうふう)
119()かれて
120天国(てんごく)(はる)(すす)むべきのみだ』
121アキス『アハハハハ、122如何(いか)にも(なつ)らしいなつかしき(うた)だ。123(しか)(なが)(くち)では(つよ)(こと)()つて()るものの、124矢張(やは)(あつ)(とき)(あつ)いなア。125この芝草(しばぐさ)もたうとう屁古垂(へこた)れたと()えて、126(きり)のやうに(ちぢ)かんだぢやないか。127(はた)()(ほこ)(をさ)めて、128炎熱軍(えんねつぐん)追撃(つゐげき)され、129山寨(さんさい)()(こも)つたと()体裁(ていさい)だ。130ほんたうに夏草(なつぐさ)先生(せんせい)131このアキスも同情(どうじやう)(いた)しますよ。132(おれ)(なん)だか(にはか)急性(きふせい)退屈炎(たいくつえん)勃発(ぼつぱつ)しさうだ。133エ、134気分直(きぶんなほ)しに(あき)(うた)でも()んで()よう。
135(すず)しい(あき)()
136そして何処(どこ)ともなしに
137もの(さび)しい
138(とほ)(ちか)四方(よも)山野(やまの)
139(にしき)織出(おりだ)した佐保姫(さほひめ)姿(すがた)
140満目(まんもく)光耀(くわうえう)として
141(こころ)(こま)
142いやに落付(おちつ)
143(あか)萌黄(もえぎ)(いろ)あでやかな
144(かへで)
145日夜(にちや)(その)()発揮(はつき)
146万丈(ばんじやう)(ころも)(さら)すに()たり
147山奥(やまおく)(つま)()
148小男鹿(さをしか)(こゑ)
149偕老(かいらう)々々(かいらう)(きこ)ゆれど
150(なん)となく悲調(ひてう)あり
151小夜砧(さよぎぬた)(おと)もまばらになりて
152(しも)()(かこ)つか
153日鶏(ちやぼ)(うた)(こゑ)
154いとど(あは)れを(もよほ)
155四方(よも)()()
156黄金(こがね)(なみ)(ただよ)
157御代(みよ)富貴(ふうき)(ほこ)りつ
158(くは)()りし農夫(のうふ)
159()()時期(じき)とはなりぬ
160アア()れど
161自然界(しぜんかい)太陽(たいやう)
162(ひか)益々(ますます)(つよ)くして
163その愛熱(あいねつ)(おとろ)
164秋霜(しうさう)烈日(れつじつ)(かがや)
165(ななめ)万木(ばんぼく)万草(ばんさう)
166(なや)ませしへたげ滅尽(めつじん)()へねば
167休止(きうし)せない(いきほひ)である
168アア地上(ちじやう)草木(さうもく)
169(ねつ)(とほ)ざかり
170(ひか)りに(そこな)はれ
171()()つることありとも
172(ゆふべ)(むし)数々(かずかず)
173(こゑ)(そろ)へて果敢(はか)なげに
174()(なげ)くとも
175(たふと)大神(おほかみ)
176愛善(あいぜん)神熱(しんねつ)
177(あたたか)みの()もれる
178神光(しんくわう)十二分(じふにぶん)(あた)えられた
179吾人(ごじん)所謂(いはゆる)
180万物(ばんぶつ)霊長(れいちやう)
181天地(てんち)(はな)果実(くわじつ)
182永遠(ゑいゑん)()(にほ)
183天界(てんかい)地上(ちじやう)(はな)
184(かみ)生宮(いきみや)
185天人(てんにん)前身(ぜんしん)
186()天人(てんにん)霊身(れいしん)
187自然界(しぜんかい)肉身(にくしん)相応神(さうおうしん)たる
188吾人(ごじん)には
189(あき)()ければ
190(ふゆ)さえも(きた)らない
191(ただ)永遠(えいゑん)(はな)()(にほ)
192(とり)(うた)(てふ)()(あそ)
193(はる)()
194万木(ばんぼく)万草(ばんさう)(しげ)栄行(さかゆ)
195天恵(てんけい)(てき)(なつ)(ばか)りだ
196()れば吾人(ごじん)
197(あき)(ふゆ)()にはならない
198()(かみ)内流(ないりう)(てき)神格(しんかく)
199(めぐ)まれた()ける身魂(みたま)たる以上(いじやう)
200永遠(えいゑん)無窮(むきう)
201天国(てんごく)地上(ちじやう)(はな)
202(つるぎ)をかざして万有(ばんいう)(せま)霜柱(しもばしら)
203(つめ)たき(そら)残月(ざんげつ)()(おそ)ろしさ
204(われ)はこの惨憺(さんたん)たる光景(くわうけい)()
205天人(てんにん)(しろ)(やはら)かき
206温情(をんじやう)(こも)
207(はだへ)(かん)ずるのだ
208(また)ピユウ ピユウと()(すさ)
209けたたましい木枯(こがらし)(おと)
210天津(あまつ)乙女(をとめ)(かな)づる
211(しやう)()とぞ()
212アア面白(おもしろ)きかな
213天国(てんごく)(はる)
214人間(にんげん)世界(せかい)(あき)よ』
215カール『成程(なるほど)216(えら)馬力(ばりき)だ。217(うま)(こと)()ふなア。218(しか)しお(まへ)にそれだけの覚悟(かくご)があるのか、219ちつと(あや)しいものだなア』
220アキス『アキスだから、221()(かく)(あき)(うた)()んで()たまでだ。222(すべ)詩人(しじん)()ふものは空想(くうさう)(ゑが)いたり、223上手(じやうず)(うそ)をつくもの、224三十五万(さんじふごまん)(ねん)未来(みらい)桃中軒(たうちうけん)雲右衛門(くもゑもん)だつて、225武士道(ぶしだう)鼓吹(こすゐ)だとか、226勧善(くわんぜん)懲悪(ちようあく)だとか聖人(せいじん)らしい(こと)()つて()るが、227(その)内実(ないじつ)はお師匠(ししやう)さまの女房(にようばう)横領(わうりやう)して平気(へいき)演台(えんだい)()つて()るのだからなア、228近頃(ちかごろ)雨後(うご)(たけのこ)のやうに、229ムクムク(かしら)()げだした道学(だうがく)先生(せんせい)だつて、230バラモンの宣伝使(せんでんし)だつて、231(みな)裏面(りめん)這入(はい)つて()ればよい加減(かげん)なものだよ。232(かへつ)俗人(ぞくじん)(はう)がどの(くらゐ)(ただ)しいか(わか)らぬからなア。233偽善者(きぜんしや)悪人(あくにん)(たふと)まれる(やみ)()(なか)だもの、234(おれ)だつて(はら)(そこ)(たた)けば矢張(やつぱり)偽善者(きぜんしや)仲間(なかま)かも()れないよ』
235カール『ウンさうすると(おれ)矢張(やつぱ)偽善者(きぜんしや)かなア。236(なん)だか自分(じぶん)(こころ)(にく)らしうなつて()た』
237アキス『オイ、238あれを()よ、239何時(いつ)()にか沢山(たくさん)(ふね)()えなくなり、240(ただ)一艘(いつそう)此方(こちら)(むか)つて(あわただ)しく()いで()るぢやないか。241矢張(やつぱ)りあれは、242旦那(だんな)(さま)()(ふね)かも()れぬぞ。
243()るか()るかと(はま)()()れば
244(こころ)(うれ)しき(ふね)()る』
245カール『(おき)浪間(なみま)白帆(しらほ)()えるヨー
246あれは主人(あるじ)()ます(ふね)。ア、コラコラ』
247(とみ)元気(げんき)回復(くわいふく)して、248二人(ふたり)(また)もやダンスを(はじ)めかけた。249(ふね)八挺櫓(はつちやうろ)()いで船首(せんしゆ)白浪(しらなみ)()(なが)宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(とも)(ちか)より()る。
250大正一二・三・三〇 旧二・一四 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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