霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二五章 万歳楽(ばんざいらく)〔一五〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第4篇 猩々潔白 よみ(新仮名遣い):しょうじょうけっぱく
章:第25章 万歳楽 よみ(新仮名遣い):ばんざいらく 通し章番号:1500
口述日:1923(大正12)年03月30日(旧02月14日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
テクは番頭頭になった気持ちで蔵から酒を担ぎ出し、酒を飲みながら他愛もなくしゃべり続けている。邸内には数百人の里人が、庄屋の旦那が帰られたとのことでお祝いに詰めかけ、酒を飲んで歌い舞い踊りなどして騒いでいる。
テクは番頭頭気分で、アキスとカールによく気を付けてお客様の世話をするようにと酔って説教をしている。アキスとカールは適当にいなし、ア主人夫婦に天王の森の猩々の霊が憑いているといったうわさ話にふけっている。
門の方がにぎやかになってきたので二人が表口へ駆け出すと、テクが大柄杓を肩にかけながら、酔った勢いで勝手な歌を歌い踊っている。
そこへキヨの港を守るバラモン軍のキャプテン・チルテルが数十人の部下を連れてやってきた。チルテルは、三五教の宣伝使・玉国別たちがこの館に潜んでいるとの情報で召し捕りにやってきたと大音声に告げた。
テク、アキス、カールは酒をなみなみと汲んで、チルテルの前に突きだした。チルテルは酒と聞いてたまらず、馬を下りてガブリガブリと呑みはじめた。チルテルの部下も群衆に交じって酒を飲み、肝心の使命を忘れて踊っている。
空中には迦陵頻伽、鳳凰、孔雀らの瑞鳥が舞っている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5825
愛善世界社版:300頁 八幡書店版:第10輯 476頁 修補版: 校定版:318頁 普及版:122頁 初版: ページ備考:
001 テクは、002アキス、003カールと(とも)番頭頭(ばんとうがしら)になつたやうな気持(きもち)で、004捻鉢巻(ねぢはちまき)をしながら(まはし)(ひと)つになり(くら)から(さけ)(かつ)()し、005(たる)(つめ)()いて、006柄杓(ひしやく)(くち)からグイと一口(ひとくち)()んでは他愛(たあい)もなく(しやべ)りつづけて()る。007数百(すうひやく)(にん)里人(さとびと)貴賤(きせん)老若(らうにやく)(へだ)てなく、
008『バーチルさまが(かへ)られた。009旦那(だんな)(さま)無事(ぶじ)(かへ)りだ』
010()やに()めた()アさま、011(はな)()らしたお(ぢい)さま、012鼻曲(はなまが)り、013(つんぼ)014(めくら)(まで)()()(きた)り、015(ひろ)邸内(ていない)酒樽(さかだる)(かがみ)()いて一生(いつしやう)懸命(けんめい)(うた)()ひなどして(そこ)ぬけ(さわ)ぎをして()る。016テクは得意(とくい)頂上(ちやうじやう)(たつ)し、
017テク『オイ、018アキス、019カール(しつか)りせないか、020よくお(きやく)さまの様子(やうす)調(しら)べ、021()()のないやうに一人(ひとり)もお神酒(みき)(いただ)かぬ落伍者(らくごしや)のないやう()をつけるのだよ。022(なに)()ふても(おれ)のやうな清浄(しやうじやう)潔白(けつぱく)(みたま)でないものは隅々(すみずみ)(まで)()()かないからな。023(はし)(もと)024雪隠(せつちん)(なか)025物置(ものおき)隅々(すみずみ)(まで)()()(やつ)でないと(まこと)御用(ごよう)(つと)まらぬぞよ。026ああ(うま)(さけ)だ。027(おれ)(この)(いへ)部下(ぶか)だ、028猩々(しやうじやう)(ぐらゐ)()(たふ)したつて、029(なん)()つたつてイヅミの(くに)()つての豪家(がうか)だから(たい)したものだ。030立寄(たちよ)れば大樹(たいじゆ)(かげ)だ。031(はし)親方(おやかた)(おほ)きなのがよい」と()ふから、032(おれ)今日(けふ)からスパイを()めて、033バーチルさまの(いち)番頭(ばんとう)自分(じぶん)から()めて()つたのだから、034今後(こんご)(おれ)命令(めいれい)(したが)ふのだよ。035よいか、036アキス、037カール、038のうアキス、039カール、040それでよいだらう。041ヨイトサのヨイトサ、042()(さけ)043()(さけ)044()うて()うておいしうてようて、045(よひ)(まは)つて、046()うて、047(うま)うて()うて、048ヨイヨイのテクテクだ。049猩々彦(しやうじやうひこ)()()のテクさまと()へば(おれ)(こと)だぞ。050なんぼテクさまと()ふても手癖(てくせ)(わる)くないから、051(その)(つもり)()つて()れ』
052アキス『ヘン、053(にはか)番頭顔(ばんとうがほ)をしよつて(えら)さうに()ふない。054(しか)(なが)今日(けふ)はお目出度(めでた)()だから、055喧嘩(けんくわ)はやめて()かう。056今日(けふ)(いち)(にち)番頭(ばんとう)だから、057(なん)なりと勝手(かつて)(ねつ)()いたがよいわ。058のうカール』
059カール『ウンさうだ。060テクが()つて()るのぢやない、061振舞(ふるま)(ざけ)()つて()るのだ。062(さけ)()ふものは狂水(きやうすい)()ふが、063ほんとに面白(おもしろ)いものだなア。064(おれ)(たち)下戸(げこ)でも一口(ひとくち)()めば気持(きもち)がハキハキして()るやうだ』
065アキス『オイ、066たつた一口(ひとくち)()ふたが、067最前(さいぜん)から随分(ずゐぶん)沢山(どつさり)()つかけたぢやないか。068まるで(うし)(ざう)かが、069雑水(ざふすゐ)()むやうだつたよ』
070カール『()まつた(こと)だよ。071五升(ごしよう)徳利(どつくり)一口(ひとくち)ぢやほんの少々(せうせう)ながら、072ごしよごしよとやつて()たら、073(おれ)(ほほ)べたにほんのりと(くれなゐ)(はな)()きかけたのだ、074エヘヘヘヘ』
075アキス『オイ貴様(きさま)奥様(おくさま)から、076(あま)(まる)(かほ)をして()るので望月(もちづき)とか(もち)()きだとか()はれたぢやないか。077(もち)()きな(やつ)(さけ)()まぬものだが、078貴様(きさま)山川(やまかは)道楽(だうらく)だな。079(おれ)(さけ)一滴(いつてき)()まないと()ふて(あか)(かほ)をしたり、080熟柿(じゆくし)(くさ)(いき)をしたりしたのは内証(ないしよう)()んで()たのだな、081たうとう(ばけ)(あら)はしやがつたな、082化虎(ばけとら)め』
083カール『(きま)つた(こと)だい。084いつも酒倉(さかぐら)(ばん)(ばか)りやらされて()るのだもの、085(たる)錐穴(きりあな)をあけ、086麦藁(むぎわら)()()んで、087チウチウと鼠鳴(ねずみな)きをして()たのだ。088そして(その)(あと)(くぎ)()()んで()くのだ。089貴様(きさま)(なが)らく(おれ)一緒(いつしよ)奉公(ほうこう)しておきながらノロ(さく)だなア』
090アキス『(しか)此方(こなた)旦那(だんな)(さま)は、091(むかし)から(さけ)(ばか)沢山(たくさん)(つく)つて()るでもなく、092二十(にじつ)戸前(とまへ)(くら)(さけ)(たくは)へて()るのは不思議(ふしぎ)(おも)つて()たら、093矢張(やつぱり)()()(とき)()(あは)さうと(おも)つて準備(じゆんび)して()たのだな。094ほんとに(えら)(ひと)ぢやないか』
095カール『(しか)しアキス、096旦那(だんな)(さま)(おく)さまに天王(てんのう)(もり)猩々(しやうじやう)(つい)()ると()(こと)ぢやないか。097(おれ)一寸(ちよつと)(つぎ)()から()いて()たが、098ほんとに不思議(ふしぎ)(こと)だ。099貴様(きさま)どう(おも)ふか』
100アキス『ウンそれが、101しやうじやうむく清浄(しやうじやう)無垢(むく))の(みたま)()ふのだらうかい。102(なん)()つても旦那(だんな)(さま)奥様(おくさま)人民(じんみん)(あはれ)みなさるから里人(さとびと)人望(うけ)はよし、103あんな慈悲(じひ)(ぶか)(ひと)が、104なぜ(さん)(ねん)離島(はなれじま)()つて苦労(くらう)をなさつたかと(おも)へば、105(かみ)(ほとけ)(この)()()(こと)かと(おも)ふは。106(しか)しまアまア(かへ)つて(くだ)さつて奥様(おくさま)()ふに(およ)ばず、107スマの里人(さとびと)がどれ()(よろこ)(こと)()れないのう。108(なん)ぢや(もん)(はう)大変(たいへん)(にぎや)かうなつて()た。109(ひと)調(しら)べて()ようか』
110表口(おもてぐち)()()して()た。
111 ()ればテクは大柄杓(おほびしやく)(かた)にかつぎ(なが)大勢(おほぜい)中央(まんなか)()つて、112(みずか)(をど)(くる)うて()る。113大勢(おほぜい)(はや)()てて()る。
114テク『エーーーさても目出(めで)たや
115此方(こなた)(やかた)、ヨイヨイ
116三年振(さんねんぶり)()主人(しゆじん)
117目出度(めでたく)(かへ)(あそ)ばした
118第一(だいいち)(おく)さまのお(よろこ)
119(その)(つぎ)(ぼつ)ちやま番頭(ばんとう)さま
120アキス、カールを(はじ)めとし
121ヨイヨイ
122イヅミの(くに)のスマの(さと)
123老若(らうにやく)男女(なんによ)がより(つど)
124二十(にじつ)戸前(とまへ)酒倉(さかぐら)
125ヨイヨイ
126開放(かいはう)(あそ)ばし(みな)さまに
127()んで()れよと()()した
128その肝玉(きもだま)(ふと)(こと)
129ヨイヨイ
130(この)テクさまは今日(けふ)よりは
131バーチル(やかた)番頭(ばんとう)さま
132バラモン(けう)のスパイをば
133さつぱりこんと辞職(じしよく)して
134(さけ)(くら)監督(かんとく)
135(みな)さま(いさ)んで(くだ)さんせ
136ヨイヨイ
137これからテクが()(うへ)
138これの(やかた)(こめ)(むぎ)
139(さけ)をどつさり(みな)さまに
140(のぞ)(どほ)りに(あた)へませう
141なに(ほど)(たから)があつたとて
142(いのち)がなければ仕様(しやう)がない
143ヨイヨイ
144()んだと(おも)ふた(あるじ)さま
145目出度(めでたく)(いへ)(かへ)られて
146(いはひ)(しるし)(みな)さまに
147(さけ)振舞(ふるまひ)なさるのだ
148(かた)(むす)んだ(にぎ)(めし)
149(なか)(ふく)れて瓢箪(へうたん)
150なる(とこ)までも()はしやんせ
151ヨイヨイ
152ほんに目出度(めでた)いお目出度(めでた)
153天王(てんわう)(もり)(かみ)さまが
154()守護(しゆご)(あそ)ばし()夫婦(ふたり)
155目出度(めでたく)(ここ)(かほ)(あは)
156(うれ)(なみだ)をドツサリと
157(なが)させ(たま)ふた有難(ありがた)
158ヨイヨイ
159(その)(かみ)(さま)のお(かげ)にて
160(うま)れて此方(このかた)一度(ひとたび)
161(あぢ)はふた(こと)のない甘酒(うまざけ)
162鱈腹(たらふく)()んで(いさ)ましく
163()へよ(くる)へよ(をど)れよと
164(かみ)直々(ぢきぢき)()命令(めいれい)
165こんな(うれ)しい(こと)あろか
166ヨイヨイ
167アキスやカールの番頭(ばんとう)さま
168元来(ぐわんらい)肝玉(きもだま)(ちひ)さくて
169是程(これほど)沢山(たくさん)ある(さけ)
170番頭(ばんとう)(しよく)にありながら
171(おのれ)()まず(ひと)さまに
172振舞(ふるま)ひもせず()()いた
173冥加(みやうが)()らずの罰当(ばちあた)
174ヨイヨイ
175テクが(これ)から(この)(いへ)
176(いち)番頭(ばんとう)となるからは
177ケチなやり(かた)(いた)さない
178村中(むらぢう)上下(うへした)(へだ)てなく
179(むつ)(した)しみ(かみ)(さま)
180(めぐみ)(つゆ)感謝(かんしや)して
181神酒(みき)沢山(たくさん)(いただ)けよ
182こんな目出度(めでた)(こと)あろか
183ヨイヨイ
184猩々(しやうじやう)(ひこ)猩々姫(しやうじやうひめ)
185不思議(ふしぎ)(えん)(めぐ)()
186夫婦(ふたり)(さま)(たい)()
187これの(やかた)のお夫婦(ふたり)
188(あし)(ふた)つに()()ツつ
189夫婦(ふうふ)(あは)して()つの(あし)
190十二(じふに)のお手々(てて)()()らし
191アヅモス(さん)(かみ)(さま)
192御前(みまへ)感謝(かんしや)太祝詞(ふとのりと)
193()らせたまへる崇高(けだか)さよ
194ヨイヨイ
195三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
196()玉国別(たまくにわけ)宣伝使(せんでんし)
197(こころ)まつ(くろ)真純彦(ますみひこ)
198(あたま)たたかれ伊太彦(いたひこ)
199(さけ)(たる)三千彦(みちひこ)
200綺麗(きれい)なお(かか)のデビス(ひめ)
201デビスかエビスか()らねども
202大黒(だいこく)さまの(ふく)(かみ)
203(くだ)つて()いたる(この)(いへ)
204(さけ)のイヅミの国人(くにびと)
205(さぞ)(よろこ)(こと)だらう
206(みな)さま(そろ)ふて()()てよ
207ヨイヨイ
208(よひ)(まは)つたテクさまは
209(いき)(くる)しうなつて()
210(みな)さまこれから(かく)(げい)
211(つつ)まず(かく)さず()()して
212今日(けふ)目出度(めでた)いお(いはひ)
213(はな)()かして(くだ)されよ
214ヨイヨイ』
215一生(いつしやう)懸命(けんめい)音頭(おんどう)()り、216数百(すうひやく)(にん)老若(らうにやく)男女(なんによ)()()(をど)(くる)うて()る。217()かる(ところ)へキヨの(みなと)関所(せきしよ)(かた)めて()るバラモン(ぐん)のチルテルは数十(すうじふ)(にん)部下(ぶか)引率(ひきつ)(うま)(またが)り、218シトシトと門内(もんない)さして(すす)()り、219馬上(ばじやう)()ちて大音声(だいおんじやう)
220チルテル『ヤアヤア(それがし)はバラモン(けう)関所(せきしよ)(まも)る、221キャプテンのチルテルだ。222当館(たうやかた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)223玉国別(たまくにわけ)以下(いか)(ひそ)みゐると、224スパイの注進(ちうしん)により召捕(めしとり)(むか)ふたり。225ヤアヤア村人(むらびと)ども宣伝使(せんでんし)所在(ありか)案内(あんない)(いた)せ』
226呶鳴(どな)りつけて()る。227これを()くより、228柄杓(ひしやく)にテク、229アキス、230カールは(さけ)をなみなみと()みチルテルの鼻先(はなさき)()()した。231チルテルは(さけ)()くより()(たて)(たま)らず(うま)をヒラリと()()り、232餓鬼(がき)(みづ)()むやうな(いきほひ)で、233ガブリガブリと()(はじ)めた。234(したが)(きた)れる数多(あまた)部下(ぶか)群衆(ぐんしう)(まじ)つて、235(われ)(おと)らずガブ()みを(はじ)め、236肝腎(かんじん)使命(しめい)(わす)れ、237(おのおの)捻鉢巻(ねぢはちまき)をして、238(しり)ふりながら、239ステテコ(をどり)夢中(むちう)になつてやつて()る。240中空(ちうくう)には迦陵(かりよう)頻伽(びんが)241鳳凰(ほうわう)242孔雀(くじやく)瑞鳥(ずゐてう)243(つばさ)(ゆた)かに()(くる)うて()る。244ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
245大正一二・三・三〇 旧二・一四 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
246(昭和一〇・六・一五 王仁校正)
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