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惟神の道
序
1 壬申所感
2 昭和維新の途上
3 神の経綸
4 活きた宗教の建設
5 愛善の道
6 青年の意気を持て
7 世界よ何処へ行く
8 愛善道の根本義
9 救世主義
10 現代と天の岩戸隠れ
11 世界に範を示せ
12 天災と人震
13 世界の大神楽
14 社会の改善と国民性
15 自主的精神に基け
16 神人の心
17 永遠の生命
18 神国に報ずるの覚悟
19 敬神と愛国
20 日本国民の本性に復れ
21 神国と太古の文明
22 言霊の活用
23 真の宗教
24 天地神明の恩恵
25 挙国更生
26 大自然と人間
27 惟神の真理
28 昭和八年を語る
29 学者の態度
30 善悪の標準
31 信教の自由
32 国防について
33 非常時の覚悟
34 日本と満州国
35 戦争と神意発動
36 神と皇上の殊恩
37 軽挙妄動を慎め
38 精神的訓練の必要
39 皇道の本義
40 天神地祇の佑護
41 教育の大本
42 信仰の異同
43 神剣の発動
44 国際経済会議の雲行
45 日本国民の自覚
46 天地自然の大法
47 皇国の天職
48 人生の本分
49 神国の大使命
50 光は東方より
51 神秘荘厳の国
52 国体を闡明せよ
53 現代の急務
54 天地の祖神を敬祭せよ
55 勤皇報国
56 斯ノ道
57 神の正道
58 敬称の精神
59 難局打開の鍵
60 大和民族の大使命
61 マツリゴトの言霊解
62 敬神の観念
63 麻柱の道
64 政治の大本
65 神習の道
66 満蒙出征の辞
67 神約の秋来る
68 教育の本領
69 日本と世界の縮図
70 真理の三階級
71 信仰即忠孝
72 帝国と皇国
73 皇国の言霊
74 世界非常時の真因
75 不言の教
76 皇道経済の確立
77 皇道の神政策
78 万民和楽の神策
79 天皇と皇帝
80 皇道経済我観
81 神聖運動について
82 皇国民に激す
83 勇往邁進あるのみ
84 汚穢物を取除け
85 皇道の輝くところ
86 神聖無比の皇国
87 天立君主立憲国
88 皇国の姿に還れ
89 宗教と政治
90 天国の国体や如何
91 ダニエルの予言と神国日本
92 霊の本の力
93 皇典と財政経済の真諦
94 皇典の奥義に徹せよ
95 愛善の実行
96 日本人の信仰
97 昭和神聖の意義
98 天を畏れよ
99 神を信じ得る幸福
100 直感の力を養へ
101 魂魄は滅びず
102 応病施薬
103 皇道は神に基く
104 皇道と人類愛善
105 天意に順応せよ
106 霊国日本
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> 81 神聖運動について
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神聖運動について
インフォメーション
題名:
神聖運動について
著者:
出口王仁三郎
ページ:
245
目次メモ:
概要:
備考:
『人類愛善新聞』昭和9年(1934年)10月中旬号から12月中旬号にかけて「昭和神聖会南桑支部発会式に於ける出口王仁三郎氏の講演大要」という題で7回連載された(同年9月13日に南桑支部発会式が行われた)。/『神聖』昭和9年11月号所収「肇国皇道の大精神」とほぼ同じ(『大本史料集成2』に収録)
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-04-20 17:23:47
OBC :
B123900c081
001
今日は「非常時日本」と総ての者が言つて居るが、
002
しかし何が非常時かと問へば、
003
それを明瞭に答へ得る人は極めて少数である。
004
表面から見るとダンスホールやカフエーや、
005
また男か女か性の解らないやうな女学生が沢山に殖えたくらゐなものである。
006
よく考へて見ると日本の非常時はそんなところにあるのではない。
007
今やウラルの嵐はいつ日本の本土に向つて吹き付けて来るか知れないまでの危局に直面し、
008
また一方太平洋の荒浪はこの大和島根を呑まむとして居る非常時なのである。
009
もしわれわれ国民が今日のままで非常時打開の方法を講じなかつたならば、
010
或ひは外国のやうに窮乏、
011
没落の難局に立つかも知れないのである。
012
しかしながら我が国は肇国以来天津日嗣天皇を主と仰ぎ師と仰ぎ親と仰ぎ、
013
さうして大家族精神を以て今日まで栄えて来た国であつて、
014
諸外国の如くいろいろの新政体ではないのである。
015
それが為に一致団結が速いのである。
016
一致団結の力があれば如何なる難関が来ようとも凶を転じて吉となし、
017
禍
(
くわ
)
を転じて福とすることが出来るのである。
018
故に我が国の「非常時」の声は皇運発展の大宣言でもあり、
019
道義的世界統一の提唱でもある。
020
しかしてまたこの秋この際、
021
日本の窮状を挽回すべき大聖雄の出現を待望する叫びでもあり、
022
天皇陛下の御稜威によつて全人類を愛善の大道に導くところの題目でもあると私は思ふのである。
023
これに反し外国で謂つてゐるところの非常時なるものは困窮、
024
没落、
025
暗黒の極、
026
手も足も出すことが出来なくなつたところの叫びである。
027
時あたかも
伊太利
(
イタリー
)
にムツソリーニが現はれ、
028
独逸
(
ドイツ
)
にはヒツトラーが現はれ、
029
大勢挽回に勉めて居るが、
030
前にも述ベた通り我が国もこのままで行つたならばどうなるか知れないといふやうな気運の中にある。
031
そこで私は本年(昭和九年)一月以来東京に上り政治家、
032
その他各要路の人々の意見を叩いて見たが、
033
大抵の人はこの大難局を目前に見ながら、
034
総てが自己主義であり、
035
事なかれ主義である。
036
いはゆるスローモーシヨンであり或ひはノーモーシヨンである。
037
これではいけないと私は深く感じ、
038
身命を賭しても我が皇国の非常時を打開し、
039
天津日の大神の御神勅通りに日本の光を世界各国に輝かさねばならないと固く決心したのである。
040
然るに今日の総ての学者、
041
総ての教育家、
042
総ての政治家たちは居睡りどころかみな精神肉体ともに麻痺して了ひ、
043
突いたくらゐのことでは眼も醒めないで、
044
身体
(
からだ
)
にも応へないのである。
045
これを見れば我が国は実に何とも云ひやうのないところの難局に向つて直行しつつあることを痛感したるあまり、
046
ここに昭和神聖会を組織し、
047
この大難局打開に邁進することとなつたのである。
048
ついては、
049
本会の主義綱領について簡単なる解釈を試みたいと思ふのである。
050
主義
051
本会は神聖なる神国日本の大道、
052
皇道に則り万世一系の聖天子の天業を翼賛し奉り、
053
肇国の精神を遵奉し、
054
皇国の大使命と皇国民天賦の使命達成を期す
055
神聖といふ言葉は我が日本神国よりほかには用ふる資格がないのである。
056
我が国の憲法にも「天皇ハ神聖ニシテ冒スベカラズ」とあり、
057
日本国もまた神聖にして冒すべからざる国土である。
058
即ち神聖なる神国日本である。
059
日本がなぜ神国であるかと言へば、
060
これは我が国の歴史を溯ると、
061
天之御中主大神を初め天照皇大神が日本の国を豊葦原の瑞穂国中津国と神定めに定め給ひて、
062
国を樹て統を垂れ給ひ、
063
皇孫瓊々杵尊をしてこの国土に君臨せしめ給ふた故である。
064
外国にはかういふ尊い
大君
(
おほぎみ
)
も国土も一ケ国たりともない。
065
それで日本は天立君主国と申すのである。
066
即ち天より君臨された大君が吾々の大君であらせられるのである。
067
この神国日本の大道、
068
即ち皇道はいはゆる宗教ではなく、
069
すめらぎ
の道であつて天皇陛下の御道である。
070
天が下を安国と平けく安らけく知食すべき御大道である。
071
儒教の五倫五常といふやうなものは極く枝葉のものであつて、
072
皇道とは総てのものに関係のある、
073
総ての根本である道といふ意味である。
074
それで「
天壌
(
あめつち
)
と
与
(
とも
)
に
窮
(
きはま
)
りなかるべし」といふ天祖の御神勅によつて、
075
我が国の大君は万世一系である。
076
外国のやうに禅譲あり、
077
放伐あり、
078
勢威あれば君となり、
079
勢威を失へば奴隷となり、
080
家来となり、
081
或ひは殺されるといふやうな見識のない政体とは違ふのである。
082
我が国の大君は現人神にてあらせられ、
083
吾々が朝夕に敬ひ奉る活きたる神様である。
084
外国にはかういふ尊い活きた神様がないので、
085
キリスト教の必要が起つたり、
086
釈迦の宗教の必要が起るのである。
087
頼るところがないから、
088
さういふ死神死仏を引張り出して慰安の道具にしてゐるだけでその実は泡抹に等しいものである。
089
次に「肇国の精神を遵奉し」とあるが、
090
肇国の精神とは国を肇め給ふところの精神である。
091
この肇国の精神といふことは
御肇国天皇
(
はつくにしらすすめらみこと
)
、
092
即ち神武天皇が初めて御神代からの神様の系統を
継承
(
つ
)
いで
人皇
(
にんわう
)
の
祖
(
そ
)
とならせられた時からの
神言
(
しんげん
)
である。
093
外国には建国があつても肇国の神定はないのである。
094
日本国と世界とは丁度相向ひ合うて
蜻蛉
(
あきつ
)
が
臀呫
(
となめ
)
せるような地形になつてゐる。
095
この神武天皇のお言葉にある「
蜻蛉
(
あきつ
)
のとなめせる国」とは日本のみならず五大洲全体のことであるから、
096
もちろん皇祖の御意志を継いでこの五大洲を安国と平けく治め給ふ御意志がその御言葉に
はつきり
現はれてゐるのである。
097
吾々はその御聖慮を奉体して日本の神国臣民たる使命を果すべく、
098
ここに昭和神聖会を起し皇国民天賦の使命を国民に自覚せしめ、
099
日本皇国の真相を日本人に再認識せしめたい為に敢然立ち上つたのである。
100
綱領
101
一、
102
皇道の本義に基き祭政一致の確立を期す
103
日本国には帝道といふものはない。
104
皇道はあつても帝道はないのである。
105
また天皇はあつても皇帝はない。
106
大日本史を初め六国史、
107
その他の日本歴史を隅から隅まで調べて見ても皇帝と記されたところはどこにもないのである。
108
詩書などには「神武帝」「醍醐帝」などといふ言葉が出て居るけれども、
109
これは正史ではなく作詩上の都合でただその中に織り込んだ言葉なのである。
110
故に我が国には天立君主たる天皇即ち
すめらぎのみこと
がおはしまして、
111
外国の皇帝や王や、
112
その他の主権者とは根底から違ふのである。
113
支那には三皇といふものがあり、
114
その次に五帝といふものが出来、
115
秦の始皇帝が始めて皇帝と名乗つたのである。
116
しかしながら支那の国は禅譲あり、
117
放伐あり、
118
時々姓を変へるが、
119
日本の陛下には苗字といふものはない。
120
天を父とし地を母とせられて居られるからである。
121
宇宙そのものの表現が即ち我が国の天津日嗣天皇でおはすのである。
122
それ故に皇帝ではない。
123
皇帝といふものは憲法を以て権力を定めたものである。
124
立憲君主とは憲法に依つて認めたところの君主である。
125
日本は天立君主立憲制であつて、
126
君主が吾々に憲法を賜はつたのであるから、
127
他国の憲法とは天地
霄壌
(
せいじやう
)
の差があることはこれによつても明かである。
128
それ故に吾々は、
129
帝国議会といふことを非常に耳障りに思ふのである。
130
これは皇国議会でなければならない。
131
また帝国憲法は皇国憲法でなければならないと思ふのである。
132
しかしながら明治維新の際は
兵馬倥偬
(
へいばこうそう
)
の際でもあり、
133
あまり皇道に熟達した学者がなかつた為に、
134
外国流に日本帝国と謂ひ、
135
或ひは帝国軍人と謂ひ、
136
帝国議会と謂ひ、
137
帝国憲法と謂ふやうになつたのである。
138
けれども今日はもうこれを改むべき時が来てゐることを私は信ずるのである。
139
東郷元帥は皇国と言つて居られる。
140
彼の日本海大海戦の際「皇国の興廃この一戦に在り」と云はれ、
141
決して帝国とは言うて居られないのである。
142
東郷さんはこの点においては非常に日本の惟神の道に通じた方だと、
143
私はその時に感じて居つたのである。
144
この時代に皇国というた学者は一人もなかった、
145
ただ東郷元帥のその言葉に現はれただけである。
146
皇道の本義は祭政一致にあるのである。
147
祭政といふことは、
148
私が十年事件の際、
149
裁判所に呼び出された時に司法官は「大本は祭政一致といふが怪しからぬ」とかういつたので「何故か」と問ふと「祭といふのは宗教家の仕事で、
150
政治は天皇陛下の御仕事ではないか、
151
祭の字を上にやつて天皇陛下の政治を下に置くといふ
不埓
(
ふらち
)
があるか」とこんな解釈をしてゐるのである。
152
しかしながら明治三年正月三日、
153
明治天皇のお下しになつた宣布大教の
詔
(
みことのり
)
に、
154
155
「祭政一致、
156
億兆同心、
157
治教上ニ明カニ、
158
風俗下ニ美ハシ。
159
而シテ中世以降、
160
時ニ汚隆アリ、
161
道ニ顕晦有リ」
162
云々と示され、
163
また
164
「因テ新ニ宣教使ヲ命シ、
165
天下ニ布教ス」
166
とある。
167
人民の罪を裁くべき役人がこれを知らないとは、
168
実に外国魂が日本に浸潤して、
169
日本皇国の
教
(
をしへ
)
といふものがほとんど
すたれ
切つてゐるところのこの状況を見て、
170
私はあまりにも当局の無智蒙昧なるに呆れたのである。
171
要するに祭政一致と政教一致を混同した意見である。
172
宮中には八神殿が
斎
(
まつ
)
つてあり、
173
陛下が
政治
(
まつりごと
)
をなさるには、
174
必ず八神殿のお
祭祀
(
まつり
)
をして、
175
それから総理大臣その他に、
176
すべてのことを仰せられるのが祭政一致なのである。
177
別に宗教のやうなケチ臭いものではないのである。
178
それで祭政一致の制によつて到るところの
諸官衙
(
しよくわんが
)
にも神殿を造り、
179
天照皇大神を敬斎し、
180
さうして大神様の御心のままに文武百般の政治に奉仕せなければならない。
181
これが即ち祭政一致の政治なのである。
182
学校にも役所にも神様を
斎
(
まつ
)
つて、
183
すべてのことを神様の御心のままに行ふ、
184
これを祭政一致の政治といふのである。
185
宣布大教の詔はかういふ御聖旨であると私は拝察するのである。
186
これを忘れては国民として済まないのである。
187
いよいよこの祭政一致の御詔勅を実現すべき時機が来たことを深く感ずる次第である。
188
一、
189
天祖の神勅並に聖詔を奉戴し、
190
神国日本の大使命遂行を期す
191
天祖の御神勅とは
192
「豊葦原ノ千五百秋ノ瑞穂国ハ、
193
コレ
吾
(
あ
)
ガ
子孫
(
うみのこ
)
ノ
王
(
きみ
)
トマスベキ
地
(
くに
)
ナリ、
194
爾
(
みまし
)
皇孫
(
すめみま
)
就
(
いでまし
)
テ
治
(
し
)
ラセ、
195
サキクマセ、
196
宝祚
(
あまつひつぎ
)
ノ
隆
(
さか
)
エマサンコト、
197
天壌
(
あめつち
)
ト
与
(
とも
)
ニ
窮
(
きは
)
マリナカルベシ」
198
と仰せられた、
199
あの御神勅である。
200
延喜式の祝詞にも
201
「
狭
(
さ
)
き国は広く
峻
(
さか
)
しき国は平けく遠き国は
八十綱
(
やそつな
)
懸けて引寄する事の如く
皇孫尊
(
すめみまのみこと
)
の
御前
(
みまへ
)
に仕へ
奉
(
まつ
)
れ云々」
202
とある。
203
この天祖の御神勅、
204
並びに延喜式の祝詞に云はれてゐるその御心を心として、
205
勇壮なる日本国民は今日まで進んで来たものである。
206
それ故に一回も外国の侮辱を受けたこともなく、
207
辺境を侵されたこともないところの万邦無比の尊い神国である。
208
故に、
209
日本皇国の使命もまた大きいのであつて、
210
この豊葦原の瑞穂国即ち地球全体に、
211
日本が率先して総ての軌範を示し、
212
御神慮たる人類愛善の大道によつて、
213
これを護り導かなければならないのである。
214
然るに現代は天祖の御神勅、
215
皇国の大道を忘れたが為に政治も経済も産業も何もかも行き詰り、
216
悲惨事が到るところに突発するやうになつたのである。
217
畏くも天祖の御神勅を遵奉して、
218
日本国の大使命が解つたならば、
219
日本は安全無事に明日からでも行けるところの尊い国なのである。
220
それ故にわが神聖会は神国日本の大使命遂行を期して
起
(
た
)
つたのである。
221
一、
222
万邦無比の国体を闡明し、
223
皇道経済、
224
皇道外交の確立を期す
225
日本の国は前にも申した通り、
226
万邦にその比を見ざるところの結構な尊い国である。
227
故にまた国体においても無比であり、
228
かつ真に国体と言ひ得る国体を持つてゐるのは日本だけである。
229
一天万乗の大君様が厳然と現はれまして、
230
一つに治められる国である。
231
天皇陛下は人間の身体にたとへたならば
頭部
(
あたま
)
であり、
232
吾々は手足胴体となつて働くべきもので、
233
これがいはゆる国の
身体
(
からだ
)
即ち御国体である。
234
外国には国体といふものがない。
235
全部
(
みな
)
政体といふものを作つてゐるのである。
236
立憲政体、
237
共和政体、
238
みな持ち寄り合ひ拵ヘ合ふのであつて、
239
主義の
凝塊
(
かたまり
)
であり、
240
別に一つの
体
(
たい
)
をなして居らぬのである。
241
この日本の尊い国体を闡明し、
242
国民一般に解らしめ、
243
かつ海外諸国の民衆にもこれを悟らしめて、
244
その上に皇道経済の実行、
245
皇道外交の確立をなさねばならないのである。
246
ここにこの「皇道経済」といふことについて少しく申し上げるが、
247
日本に通貨が出来たのは元明天皇の和銅元年で、
248
その時銀と銅とで和同開珍といふ通貨を
鋳
(
つく
)
つたので、
249
米一石の価銀銭一文なるに至る云々と我が歴史に出てゐる。
250
故に旅する時は一石の米を用意して行くよりも銀銭一文を持つて行つたならば、
251
到るところで一石の米と換へることが出来る。
252
即ち軽いものを以て重いものと交換出来るから通貨の価値があつたのである。
253
ところが今日は少し贅沢な果物、
254
メロンとか少し変つた西洋から来たものは目方をかけて売るが、
255
それが銅貨の十倍ぐらゐの価である。
256
つまり一貫目の果物を買ふには十貫目の銅貨が要る。
257
銀貨にしてもまだ銀貨のほうが重たいぐらゐである。
258
かういふことではどこに通貨の値打があるか判らなくなる。
259
それからこの「皇道経済」といふものは、
260
総てこの世界──普天の下、
261
率土
(
そつと
)
の
浜
(
ひん
)
に到るまで皇土ならざるなし──で天皇陛下の御国土である。
262
即ち神様からお引継ぎになつたところの国土である。
263
明治維新までは諸大名が、
264
土地を自由に私有して乱暴なことをやつてゐた。
265
その結果が明治維新となつて土地を陛下に奉還してしまつた。
266
さうすれば残らず天津日嗣天皇の
御物
(
ぎよぶつ
)
である。
267
故に人民の所有権といふものは外国にはあつても日本にはなかつたのである。
268
しかし外国流にまた土地の所有権といふものが明治七、
269
八年頃から出来たのである。
270
しかしながらこれは元来皆神様の土地であり陛下の土地である。
271
それで今陛下からお借りしてゐると思つたらいいのである。
272
所有権ではなしに拝借権と思つて居つたらよいのである。
273
自分の地面だと思つたら
あて
が違ふ。
274
今日の経済は金銀為本の経済で、
275
総てが金銀を以て代用する経済であるが、
276
これを土地為本の経済にすれば、
277
日本全体は、
278
拝借権は別として、
279
全部天皇陛下の御物である。
280
そこで天皇陛下の御心のままに必要に応じて御稜威紙幣をお出しになれば、
281
日本の人民は喜んでこれを迎へるものと私は考へてゐるのである。
282
現在日本の正貨は四億に足るか足らぬかであるが、
283
公債その他の発行高を合すれば実に莫大なものである。
284
もしこれが外国であつたならば、
285
公債を二十億も発行して正貨が四億しかないといふことになれば、
286
たちまちその価値が正貨に準じて下つて来るのである。
287
即ち二十億が四億の価値しかなくなるのであるが、
288
日本の国は一天万乗の大君の御稜威が輝いてゐる為に、
289
今の紙幣が本当の不換紙幣と同じやうなものであつても価値に変動がない。
290
今の兌換紙幣を日本銀行に持つて行つて金貨に取換へようとしても換へてくれない。
291
それでも天皇陛下がましますが故に国民全体が安心してゐるのである。
292
それでもう一歩を進めて、
293
金銀為本を
廃
(
や
)
め、
294
土地為本の制度にするが最も平易にして簡単で、
295
効力の多い御稜威為本としたならば、
296
必要な金はいくらでも出すことで出来る。
297
もちろん無茶苦茶に出してはいけないが、
298
先づ日本を徹底的に建直すにおいては、
299
一千億円の金が要ると思ふのである。
300
この一千億円の紙幣を陛下の御稜威によつて御発行になつたならば、
301
農民も商工業者も、
302
その他総ての苦しんでゐる人達を救ふことが出来るのである。
303
つまりその紙幣によつて、
304
日本国がすつくりと建直るまでは五年でも六年でも総ての××
[
※
伏せ字は「税金」だと思われる
]
を免除する。
305
さうしたならば日本の国は数年ならずして本当の元の天国浄土に立還ることが出来得るのである。
306
これは経済機構の都合で何でもない仕事である。
307
今更云ふまでもなく天津日嗣天皇は我が日本国の同胞のみならず世界万民を安らけく平けく治め給ふ御天職を惟神に具有し給ふのである。
308
それ故に先づ日本からそれをお始めになるやうに吾々国民は力を合せて請願したいといふ考へを持つてゐるのである。
309
外国貿易はどうするのかといろいろ尋ねる人々があるが、
310
今でも外国とは物々交換をやつてゐるやうなものである。
311
要するに物と物とを交換すればよいのである。
312
さうして米を主として物価を公定すれば百姓はよくなり、
313
従つて商工業者も潤ひ蘇つて来るのである。
314
また皇道経済になれば、
315
一日として休みなく国家の為に働いてゐるところの軍人は、
316
一兵卒に至るまで相当な月給を渡すことが出来るのである。
317
さうして一人たりとも苦しむものはなく、
318
富士山の頂上も太平洋の底も、
319
みな同じ慈雨に潤ふことが出来るのである。
320
三井や鴻池を叩き潰して、
321
下層階級の苦しみを救ひ一様に引きならすといふやうな、
322
そんな無理なことをしなくとも、
323
富士山は富士山のまま、
324
太平洋は太平洋のままにしておいて、
325
とにかく一切に
慈
(
めぐ
)
みの雨を降らし、
326
国民がその恩沢に浴したならば、
327
初めて本当の地上天国になるのである。
328
これはやり方一つ、
329
政治機構一つで出来るのである。
330
日本の国は今や全く行き詰つてゐるのは事実だ。
331
あるところでは学校の教員の給金も払へなかつたり、
332
小学校の生徒は弁当を持たずに学校に来る。
333
二三日食はない生徒もある。
334
着物も着られないといふやうな有様であるが、
335
東京あたりに行つて見ると空家が何程でもある。
336
着物も会社の倉庫には沢山積んである。
337
米もないところにはないが、
338
あるところには日本国民が全部食うても余るだけの米がかびてゐる。
339
かやうに衣食住は有り余つてゐるのである。
340
これは政治機構が悪いからかういふことになつて居るのであつて、
341
実際から言へば日本に物資が少くて国民が生活に悩んでゐるのではなくて、
342
政治のやり方、
343
運用が悪いからである。
344
どうしても、
345
これは根本的に変へなければならないと思ふのである。
346
皇道経済についてはあまり突飛な話で合点の行かない人があるかも知れぬが、
347
しかし陛下の御稜威によつたならば、
348
どんなことでも出来るといふことを私を確信してゐるのである。
349
外交も従来のやうに弱腰では全然駄目である。
350
日本は世界の親国であり、
351
神様の御子孫がお降りになつてゐるところの
皇国
(
すめらみくに
)
であるから、
352
五、
353
五、
354
三といふやうな区別を立てられて、
355
二等国の扱ひをされて我慢をしてゐるやうな、
356
そんな腰抜けの国ではないのである。
357
外交といふものは日本から通告を出して、
358
ああせい、
359
かうせいと各国に示すのが日本本来の使命である。
360
それにワシントン会議でも五、
361
五、
362
三などといふ──丁度、
363
英米は国が大きく日本は小さい、
364
日本は子供だ、
365
俺は大人だから五本の指が要るが、
366
日本は子供だから三本でよいではないか、
367
といふのと同様で、
368
かういう道理がどこにあるか、
369
大人でも子供でも矢張り五本の指が必要である。
370
しかるにさういふところへ行つて、
371
ハイハイと言つて調印して来た偉いお方が日本には沢山ある。
372
吾々はかくの如き国辱的な扱ひを払ひ退けて、
373
どこまでも自主的外交を以て行かなければならない。
374
いつまでも追随外交で外国の言うた通りに、
375
何を言はれても
随
(
つ
)
いて行くやうなことでは断じてならないのだ。
376
言葉から言つても、
377
日本人は七十五音を正確に発するが、
378
英語とかその他の外国語は大抵二十四音である。
379
それも拗音とか促音とかの、
380
捻ったり曲つたりした音ばかりである。
381
よく考ヘて見るのに高等動物ほど言葉数が多いのである。
382
牛や馬は「モーモー」「ヒンヒン」だけで、
383
猫は「ニヤンニヤン」雀は「チユーチユー」烏は「カーカー」といふやうに下等動物ほど言葉数が少くなつて来る。
384
西洋人はこれから見たならば日本人の七十五声に対して二十四声だから三分の一の力しかない。
385
丁度日本人と獣の中間ぐらゐにしか見られないのである。
386
かういふ国のいふことを喜んで聴いてゐる腰抜けは、
387
最早日本人ではなくして外国の家来なのである、
388
奴隷である。
389
東京あたりに行つて見ても女が百人通る中で日本の風をして通る者はない、
390
たまたま通つたなと思つて見ると下層労働者の妻君ぐらゐなものであつて、
391
大抵の女は、
392
男か女か判らぬやうな風をしてゐる。
393
これが皇国日本の都かと思へば実に憤慨に堪へなくなつて来る。
394
さうしてその風俗が変つてゐるだけ矢張り精神も変つてゐる。
395
昔は大和民族は民といへどもみな刀を一本差して居つた。
396
武士
(
さむらひ
)
は二本差して居つたのである。
397
その時には道義心も固く、
398
廉恥心も強かつた。
399
それが外国にそそのかされて丸腰になつてからは、
400
文官を初め大抵の者は自分だけよければよいといふやうな外国魂になつてしまつたのである。
401
その証拠には、
402
皇国軍人と警察官とは剣を帯びてゐる故に、
403
日本国民が堕落した中にもその割に堕落してゐない。
404
それで私は帯剣は必要であると思つてゐる。
405
一、
406
皇道を国教と信奉し、
407
国民教育指導精神の確立を期す
408
皇道は即ち国の教である。
409
天津日嗣天皇が世界を安国と治め給ふ治教である。
410
既成宗教のやうな
けち
なものとは違ふ。
411
宗教といふものは数千年前に人心を収攬すべき必要があつて起つた便宜上の教なのである。
412
釈迦もキリストも二千年、
413
三千年後にこれだけ立派な寺や教会が沢山出来、
414
坊主や宣教師が沢山に出来るとは思はなかつたであらう。
415
しかしながら死んだ虎よりも生きた鼠の方がよほどいい。
416
小さな鼠でも死んだ虎ならその皮を引張つて行く。
417
釈迦でもキリストでも、
418
過去の死んだ虎である、
419
死神死仏
(
ししんしぶつ
)
である。
420
吾等の天皇陛下は天照皇大神様直々の生きた本当の神様である。
421
また何千年前の国民に適した宗教は、
422
いはゆる厳寒時代に着る綿入れを暑い夏に「着よ」といふのと同じことである。
423
またある宗教はアダムとイヴが神様の禁断の
果実
(
このみ
)
を食つたが為に、
424
神の規則に背いて何千万年の末に至るまでその子孫たる人民が地獄の火の中に突込まれる、
425
それが可哀さうだからこれを助ける為に神が独り子を十字架にかけて、
426
そのキリストを通じて天に願ふ者は助けてやるといふ事になつたのだといふ。
427
自分の可愛いい子を殺しておいて、
428
それに願つたら助けてやらうなどと、
429
そんな馬鹿なことがどこにあらうか。
430
何千万年前の先祖がどんなことをしたか知らないが、
431
今日の人間の作つた不完全な法律でさへも、
432
親が泥棒したからと言つて子供まで罰するといふことはしないのである。
433
まして、
434
至仁至愛公平無私な神様がそんな不公平な訳の解らないことをなさるはずがない。
435
そんな神様があつたらこの宇宙間より籍を除いてしまうても差支へがない。
436
外教その他の宗教で地獄極楽説に脅迫され、
437
立派な髯を生やした紳士が涙声になつて感謝したり
謝罪
(
あや
)
まつてゐるのは、
438
吾らの先祖が借りもしないのに、
439
金を貸したからと責められて、
440
また改めて証文を書き、
441
それに利子を附けて取られるのと同じ事である。
442
かういふ矛盾はもう皇国日本からは取去らなければならない時機に到達したことを諸君は御覚悟になつて然るべきだと思ふ。
443
一、
444
国防の充実と農工商の
隆昌
(
りうしやう
)
を図り、
445
国本
(
こくほん
)
の基礎確立を期す
446
国防は元々国をとる為や、
447
人民を殺戮する為の国防ではないのだ。
448
我が国は我が国としての資格を保ち、
449
かつ天定の大使命により世界に号令するところの威容を保持する為に必要なものである。
450
どうしても国防は充実しておかねば今日のところまだ世界を導く訳には行かないのである。
451
御即位式には三種の神器即ち
璽鏡剣
(
じきやうけん
)
の三つがなければならない。
452
璽や鏡ばかりでは完全でない。
453
どうしても剣といふものが最後になければならない。
454
この国防といふものはいはゆるこの神剣である。
455
また農工商は今日の状態のままでおいたならばもう破滅するほかに道はないのである。
456
この農工商の隆昌を図るといふことは、
457
先づ第一に皇道経済の実行を先にし、
458
それからぼつぼつ教育なり或ひは総てのものを変へて行かねばならないのであるが、
459
今日のやうに窮乏してしまつては、
460
一日も早く皇道経済の実行によつて農工商の復活を図るよりほかに断じて道はないのである。
461
一、
462
神聖皇道を宣布発揚し、
463
人類愛善の実践を期す
464
神聖なる日本の皇道をあまねく中外に宣布し発揚すべき秋は今である。
465
さうして天津日嗣天皇の御政治は征伐に非ず、
466
侵略にあらず、
467
また併呑に非ず、
468
万民ことごとくを
赤子
(
せきし
)
として愛し給ふところの御精神の発露であり経綸である。
469
これがいはゆる人類愛善の実践である。
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