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嗚呼歌人

インフォメーション
題名:嗚呼歌人 著者:出口王仁三郎
ページ:573 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例:旧仮名遣いを新仮名遣いに改めた。 データ最終更新日:2016-11-28 14:55:31 OBC :B121805c263
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]『庚午日記 七の巻』昭和5年7月31日
 昔から歌人と言えば十中の八九はいずれも世捨人の寝言であったかの感じがする。故に英雄豪傑と言わるる人の歌はあまり専門的に多作は無いようだ。しかしながら日本は言霊の幸わう国である以上、あまり世捨人や坊主や医者にのみ任しておきたくない。それで自分は努めて和歌を作り新進の空気を社会に注入し、活発なる社会を造り万民の幸福をはからんと明光誌を発行しつつあるのである。現代の歌壇を一通り見渡すに、いずれも貧弱なる思想と生活にあえぐ小人鼠輩(しょうじんそはい)の集合で、一として豪放さも真面目さも無く、いたずらに世を呪い強者を敵視し外来思想にかぶれたるものばかりである。敷島の歌なぞと実に敷島の道が聞いて涙をこぼすであろう。自分は今まで日本現代の歌壇を買いかぶっていたことを今さら悔ゆる次第である。とうてい物にならないのは現代の歌壇だ。
 貧乏生活をさらけ出して得意気に歌ってみたり、悲観的な辞句を際限もなく長々と羅列したり、細心的な小心翼々たる文句を並べ立てて、どこに日本男子の本領があるか。女々しい泣き言を上手に言ったのが佳作としている現代の歌人なるものは決して正気の沙汰とは思われない。活字から目を放せば皆目記憶に残らず、歌を誦読すれば舌を噛むような音律の乱れたるもののみにして、その心事の狭隘なる、卑劣なる、実に言句も出ない有様である。もはや現代の歌壇においては、一人として吾が恐るべき作歌者の無きを看破した自分は、吾が明光社員の高尚優美なる歌に対して力強く感ずる次第である。
 俗に言う、牛は牛連れ馬は馬連れだ。なまじいに人間が牛の中へ飛んで出ても意志と想念に天地の差があるのだから、あまりかれこれ言うのも口の汚れだ。筆の損失だ。とは言ふものの惟神の大道をあまねく天下に宣布して理想天国を地上に建設し、世界万民永遠の幸福と安心を得させんとする機関明光社の歌と、人類の生活のみに即して不平を並べ立てる歌壇の人たちとは、根本的にそりが合わないのはむしろ当然だとすれば、現代歌壇に対してあまりこき下ろすのも可愛想でもあり、また無理かも知れない。日本には立派な言霊が幸わっていながら努めてそれに遠ざかり、かつ喜んで脱線せんとする現状は(まこと)に憐れむべき状態である。明光社人よ、必ず国風(くにぶり)の粋を学びて大成されんことを切望する。
   ○
 天下経綸の大神業に奉仕し、世界永遠の平和と幸福を(こいねが)う吾々大本人(おおもとじん)にとっては、現代の歌壇の趨勢や歌の作意を見て、たちまち心性の堕落を感じ、天国より急転直下、地獄道に墜落したる観念底本では「感念」が起こってくるようで実に不快である。自分が今回歌壇に入ったのも、その新しきを憧憬してでも無く、現代のいわゆる歌人なるものの心理状態を探らんがためであった。しかしながら天下有用の材を今の歌壇に求めんとするは労して功なく、意志想念の概して地獄的であり、自己本位であり、生活のみに没頭して我が国体の精神を知らざるもの多く、否、知りても知らぬ顔する小人(しょうじん)の多きに愛想をつかしてしまったのである。これから考えてみても、吾が明光社は国家のため、斯道(しどう)擁護のため、層一層奮励(ふんれい)努力せざるべからざるを切に感ずるものである。
(昭和五・七・三一 庚午日記 七の巻)
   
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