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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第13巻(子の巻)
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凡例
総説
第1篇 勝利光栄
第1章 言霊開
第2章 波斯の海
第3章 波の音
第4章 夢の幕
第5章 同志打
第6章 逆転
第2篇 洗礼旅行
第7章 布留野原
第8章 醜の窟
第9章 火の鼠
第3篇 探険奇聞
第10章 巌窟
第11章 怪しの女
第12章 陥穽
第13章 上天丸
第4篇 奇窟怪巌
第14章 蛙船
第15章 蓮花開
第16章 玉遊
第17章 臥竜姫
第18章 石門開
第19章 馳走の幕
第20章 宣替
第21章 本霊
第5篇 膝栗毛
第22章 高加索詣
第23章 和解
第24章 大活躍
信天翁(三)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第13巻(子の巻)
> 第2篇 洗礼旅行 > 第7章 布留野原
<<< 逆転
(B)
(N)
醜の窟 >>>
第七章
布留野
(
ふるの
)
原
(
はら
)
〔五三三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第2篇 洗礼旅行
よみ(新仮名遣い):
せんれいりょこう
章:
第7章 布留野原
よみ(新仮名遣い):
ふるのはら
通し章番号:
533
口述日:
1922(大正11)年03月17日(旧02月19日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行七人は北へ北へと進み、フル野ケ原に進み入ってきた。ここで一行は野宿をすることになった。日の出別命はすぐにごろりと横になり、寝についてしまう。
一同は日の出別命の豪胆さと刹那心に感心していたが、言い争っているうちに日の出別命の姿は消えてしまった。六人は騒いでいると、血なまぐさい風がさっと吹いてきた。
生い茂る茅の中から、黒い顔がぬっと現れて六人に笑い、吠えだした。岩彦は化け物に対して憎まれ口をたたき、尻を叩いて挑発する。
化け物は、岩彦の尻に食いつこうと言うと、岩彦は腰を抜かして動けなくなってしまう。鷹彦は岩彦をたしなめてからかっている。そのうちに、化け物は挨拶をして消えてしまった。
化け物が去ったので、腰が立った岩彦はまた調子に乗って法螺を吹いている。どこからともなく、化け物が三五教の宣伝歌で、またしても岩彦の脂を絞ってやろうか、と歌っている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-12-03 17:47:04
OBC :
rm1307
愛善世界社版:
85頁
八幡書店版:
第3輯 62頁
修補版:
校定版:
85頁
普及版:
35頁
初版:
ページ備考:
001
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
002
雲霧
(
くもきり
)
開
(
ひら
)
く
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
003
珎
(
ウヅ
)
の
御言
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
004
天教山
(
てんけうざん
)
を
立出
(
たちい
)
でて
005
遠
(
とほ
)
き
海原
(
うなばら
)
うち
渡
(
わた
)
り
006
いよいよここにフサの
海
(
うみ
)
007
タルの
港
(
みなと
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
008
心
(
こころ
)
も
漸
(
や
)
つとシヅの
森
(
もり
)
009
木蔭
(
こかげ
)
に
憩
(
いこ
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
010
闇
(
やみ
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
011
眠
(
ねむり
)
覚
(
さ
)
ませば
岩彦
(
いはひこ
)
が
012
部下
(
ぶか
)
に
仕
(
つか
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
013
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つ
014
むつみ
合
(
あ
)
うたる
其
(
その
)
仲
(
なか
)
も
015
時
(
とき
)
に
浪風
(
なみかぜ
)
立騒
(
たちさわ
)
ぎ
016
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
暗
(
くら
)
まぎれ
017
闘
(
たたか
)
ふ
間
(
うち
)
に
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
018
神
(
かみ
)
の
真道
(
まみち
)
を
言別
(
ことわ
)
けて
019
漸
(
やうや
)
く
一同
(
いちどう
)
シヅの
森
(
もり
)
020
岩
(
いは
)
に
等
(
ひと
)
しき
岩彦
(
いはひこ
)
の
021
固
(
かた
)
き
心
(
こころ
)
をなごめつつ
022
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅ケ香
(
うめがか
)
の
023
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
服従
(
まつろ
)
はせ
024
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
きフル
野原
(
のはら
)
025
さやる
魔神
(
まがみ
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
026
亀
(
かめ
)
の
齢
(
よはひ
)
の
何時
(
いつ
)
までも
027
動
(
うご
)
かぬ
神代
(
かみよ
)
を
築
(
きづ
)
かむと
028
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むちう
)
ちて
029
雀
(
すずめ
)
の
群
(
むれ
)
に
翔
(
か
)
け
下
(
くだ
)
る
030
鷹
(
たか
)
の
勢
(
いきほひ
)
勇
(
いさ
)
ましく
031
草
(
くさ
)
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
る
広野原
(
ひろのはら
)
032
タルの
大河
(
おほかは
)
右
(
みぎ
)
に
見
(
み
)
て
033
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
034
一行
(
いつかう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
は
脚
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せてフル
野ケ原
(
のがはら
)
を
奥深
(
おくふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
035
又
(
また
)
もや
真黒
(
しんこく
)
の
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
はおろされて、
036
四辺
(
しへん
)
暗澹
(
あんたん
)
たる
光景
(
くわうけい
)
となりて
来
(
き
)
たりぬ。
037
東北
(
とうほく
)
の
風
(
かぜ
)
はヒユーヒユーと
草野
(
くさの
)
を
撫
(
な
)
でて
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
り
小雨
(
こあめ
)
さへ
混
(
まじ
)
り
居
(
ゐ
)
る。
038
鷹彦
(
たかひこ
)
『
昨夜
(
ゆふべ
)
は、
039
シヅの
森
(
もり
)
で、
040
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎをおつぱじめ、
041
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
居中
(
きよちう
)
調停
(
てうてい
)
の
効果
(
かうくわ
)
によりて、
042
まづ
平和
(
へいわ
)
克復
(
こくふく
)
の
曙光
(
しよくわう
)
を
認
(
みと
)
め、
043
今日
(
けふ
)
は
天地
(
てんち
)
にかはる
大変動
(
だいへんどう
)
、
044
三五教
(
あななひけう
)
を
仇敵
(
きうてき
)
の
如
(
ごと
)
く
見做
(
みな
)
して
居
(
ゐ
)
た、
045
ウラル
教
(
けう
)
のヘボ
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
046
今日
(
けふ
)
は
同行
(
どうぎやう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
の
三五教
(
あななひけう
)
、
047
変
(
かは
)
れば
替
(
かは
)
るものだワイ。
048
サア
今晩
(
こんばん
)
は、
049
このフル
野ケ原
(
のがはら
)
の
草
(
くさ
)
を
衾
(
しとね
)
に、
050
平和
(
へいわ
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
結
(
むす
)
ばうぢやないか。
051
モシモシ
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
052
此
(
この
)
フル
野ケ原
(
のがはら
)
は、
053
一時
(
ひととき
)
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
つては、
054
また
一時
(
ひととき
)
晴
(
は
)
れるといふ
芸当
(
げいたう
)
を
繰返
(
くりかへ
)
すのですから
漫然
(
うつかり
)
安眠
(
あんみん
)
も
出来
(
でき
)
ますまいが、
055
蓑笠
(
みのかさ
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
056
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませうか』
057
日の出別
『アヽそれも
宜
(
よ
)
からう。
058
先
(
ま
)
づ
今晩
(
こんばん
)
はゆつくりと
足
(
あし
)
を
伸
(
の
)
ばして
寝
(
ね
)
ませう』
059
岩彦
(
いはひこ
)
『それは
有難
(
ありがた
)
い、
060
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らこのフル
野ケ原
(
のがはら
)
は、
061
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
の
隠顕
(
いんけん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
常
(
つね
)
ならざる、
062
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
であるから、
063
あまり
安眠
(
あんみん
)
も
出来
(
でき
)
ますまい。
064
併
(
しか
)
しコンパスを
休養
(
きうやう
)
させる
為
(
ため
)
に、
065
横
(
よこ
)
に
立
(
た
)
てつて、
066
空
(
そら
)
の
黒雲
(
くろくも
)
と
睨
(
にら
)
みつこでも
致
(
いた
)
しませうか』
067
梅彦
(
うめひこ
)
『アヽモウ
草臥
(
くたび
)
れた。
068
タルの
河
(
かは
)
の
河縁
(
かはべり
)
を
伝
(
つた
)
うて
来
(
き
)
たお
蔭
(
かげ
)
で、
069
草鞋
(
わらぢ
)
に
泥埃
(
どろぼこり
)
の
寄生虫
(
きせいちう
)
が
群生
(
ぐんせい
)
して、
070
十足
(
じつそく
)
ぶりの
重
(
おも
)
みを
感
(
かん
)
じた。
071
アーア
疲労
(
くたび
)
れた
時
(
とき
)
に
休
(
やす
)
む
程
(
ほど
)
楽
(
らく
)
なものはない。
072
可愛
(
かあい
)
い
子
(
こ
)
には
旅
(
たび
)
をさせとやら、
073
本当
(
ほんたう
)
に、
074
風
(
かぜ
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
ぶ
埃道
(
ほこりみち
)
を、
075
目的場所
(
あてど
)
もなしにテクツク
位
(
くらゐ
)
苦
(
くる
)
しい
事
(
こと
)
はない。
076
其
(
その
)
苦
(
くる
)
しみを
癒
(
い
)
やす
為
(
ため
)
に、
077
足
(
あし
)
を
伸
(
の
)
ばして
休
(
やす
)
む
時
(
とき
)
の
楽
(
たの
)
しさ、
078
少々
(
せうせう
)
小雨
(
こあめ
)
が
降
(
ふ
)
つた
位
(
くらゐ
)
はナンの
苦
(
く
)
にもなるものでないわ』
079
亀彦
(
かめひこ
)
『わしも
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
から
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
、
080
船
(
ふね
)
に
揺
(
ゆ
)
られて、
081
サツパリ
足
(
あし
)
の
魂
(
たましひ
)
が、
082
どつかへ
移住
(
いぢゆう
)
したと
見
(
み
)
えて、
083
ナンダか、
084
他人
(
ひと
)
の
足
(
あし
)
の
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がして
仕方
(
しかた
)
がない。
085
マアゆつくりと
今夜
(
こんや
)
は
此処
(
ここ
)
で
休息
(
きうそく
)
さして
貰
(
もら
)
はう』
086
日の出別
『サアサア
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
、
087
休眠
(
やす
)
まうぢやないか』
088
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
089
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
は
雑草
(
ざつさう
)
の
上
(
うへ
)
にコロリと
横
(
よこ
)
たはり、
090
鼾声
(
かんせい
)
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
く、
091
忽
(
たちま
)
ち
華胥
(
くわしよ
)
の
国
(
くに
)
に
遊楽
(
いうらく
)
するものの
如
(
ごと
)
くなりけり。
092
鷹彦
(
たかひこ
)
『アア、
093
何
(
なん
)
と
罪
(
つみ
)
のない
豪胆
(
がうたん
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
だらう。
094
昨日
(
きのふ
)
まで
極力
(
きよくりよく
)
反対
(
はんたい
)
して
居
(
ゐ
)
た
吾々
(
われわれ
)
を
側
(
そば
)
に
置
(
お
)
いて、
095
何
(
なん
)
の
懸念
(
けねん
)
もなく、
096
率先
(
そつせん
)
して
他念
(
たあい
)
もなく
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
く。
097
其
(
その
)
度量
(
どりやう
)
の
大
(
おほ
)
きいのには、
098
吾々
(
われわれ
)
も
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
かねばならぬ。
099
人間
(
にんげん
)
は
斯
(
こ
)
うなくてはならない、
100
猜疑心
(
さいぎしん
)
や、
101
嫉妬心
(
しつとしん
)
や、
102
疑惑
(
ぎわく
)
があると、
103
つひ
他人
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
が
気
(
き
)
になつて、
104
安心
(
あんしん
)
の
出来
(
でき
)
ぬものだ。
105
疑心
(
ぎしん
)
暗鬼
(
あんき
)
を
生
(
しやう
)
ずと
言
(
い
)
つて、
106
人
(
ひと
)
は
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
で
自分
(
じぶん
)
を
苦
(
くるし
)
めるのだ。
107
ウラル
教
(
けう
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
連
(
づれ
)
で
旅
(
たび
)
をしても、
108
夜中
(
やちう
)
に
何
(
なに
)
が
襲来
(
しふらい
)
するか
知
(
し
)
れないと
云
(
い
)
つて、
109
交代
(
かうたい
)
で
一人
(
ひとり
)
宛
(
づつ
)
、
110
其
(
その
)
傍
(
そば
)
に
哨兵
(
せうへい
)
を
立
(
た
)
たせて
置
(
お
)
く。
111
之
(
これ
)
れを
思
(
おも
)
へば、
112
実
(
じつ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
は
淡泊
(
たんぱく
)
なものだ。
113
博愛
(
はくあい
)
の
教
(
をしへ
)
だ。
114
……オイ
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
も
安心
(
あんしん
)
して
寝
(
ね
)
たがよからう』
115
駒彦
(
こまひこ
)
『ソラさうだ、
116
昨日
(
きのふ
)
の
敵
(
てき
)
は
今日
(
けふ
)
の
味方
(
みかた
)
、
117
鬼
(
おに
)
の
囁
(
ささや
)
き、
118
虎
(
とら
)
の
嘯
(
うそぶ
)
きと
聞
(
きこ
)
えしは、
119
松
(
まつ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
となりにけりだ。
120
サアサア
皆
(
みな
)
一同
(
いちどう
)
に
心
(
こころ
)
のキルクを
抜
(
ぬ
)
いて、
121
今日
(
けふ
)
は
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
、
122
枕
(
まくら
)
を
並
(
なら
)
べて
討死
(
うちじに
)
……オツトドツコイ
打揃
(
うちそろ
)
ひ
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
かうぢやないか』
123
岩彦
(
いはひこ
)
『サアお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
皆
(
みな
)
寝
(
やす
)
め、
124
この
岩彦
(
いはひこ
)
は
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
保護
(
ほご
)
の
任
(
にん
)
にあたらねばならぬ。
125
是
(
これ
)
が
俺
(
おれ
)
の
真心
(
まごころ
)
だから……』
126
鷹彦
(
たかひこ
)
『
真心
(
まごころ
)
とは
真赤
(
まつか
)
な
詐
(
いつは
)
りだらう。
127
マ
心
(
こころ
)
のマは
悪魔
(
あくま
)
の
魔
(
ま
)
だらう。
128
貴様
(
きさま
)
はまだ
安心
(
あんしん
)
が
出来
(
でき
)
ないと
見
(
み
)
えて、
129
熟睡
(
じゆくすい
)
して
居
(
ゐ
)
る
間
(
ま
)
に、
130
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけの
)
命
(
みこと
)
に
喉笛
(
のどぶえ
)
でもかかれはせぬかといふ
猜疑心
(
さいぎしん
)
があるのだよ』
131
岩彦
(
いはひこ
)
『ナニ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
132
さうではないよ。
133
此
(
この
)
フル
野ケ原
(
のがはら
)
には、
134
沢山
(
たくさん
)
の
大蛇
(
をろち
)
が
居
(
を
)
るといふ
事
(
こと
)
だ。
135
人
(
ひと
)
の
匂
(
にほひ
)
がすれば
嗅
(
か
)
ぎつけて、
136
何時
(
なんどき
)
やつて
来
(
く
)
るか
知
(
し
)
れぬ。
137
それだから
拙者
(
せつしや
)
が
保護
(
ほご
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
るのだよ』
138
鷹彦
(
たかひこ
)
『ナニソンナ
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
139
早
(
はや
)
く
寝
(
やす
)
んだがよからうぞ』
140
梅彦
(
うめひこ
)
『オイオイ、
141
大変
(
たいへん
)
だ
大変
(
たいへん
)
だ』
142
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なに
)
が
大変
(
たいへん
)
だ』
143
梅彦
(
うめひこ
)
『
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えぬぢやないか』
144
此
(
この
)
一言
(
いちごん
)
に『アツ』と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
145
附近
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば
影
(
かげ
)
もない。
146
岩彦
(
いはひこ
)
『それ
見
(
み
)
ろ、
147
やつぱりフル
野ケ原
(
のがはら
)
は
妖怪窟
(
えうくわいくつ
)
だ。
148
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を、
149
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
150
忍術
(
にんじゆつ
)
を
使
(
つか
)
つて、
151
そつと
呑
(
の
)
んで
仕舞
(
しまひ
)
よつたのだらうも
知
(
し
)
れぬぞ』
152
鷹彦
(
たかひこ
)
『ナーニ、
153
ソンナ
事
(
こと
)
があるものか。
154
あの
方
(
かた
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
だから、
155
変幻
(
へんげん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
だ。
156
吾々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
な
罪悪
(
ざいあく
)
の
凝結
(
かたまり
)
とは
違
(
ちが
)
つて、
157
浄化
(
じやうくわ
)
して
御座
(
ござ
)
るのだから、
158
透
(
すきとほ
)
つて
見
(
み
)
えないのだらう』
159
此
(
この
)
時
(
とき
)
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
血腥
(
ちなまぐさ
)
き、
160
湿潤
(
しめり
)
ある、
161
蒸暑
(
むしあつ
)
い
風
(
かぜ
)
がサツと
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
た。
162
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
此
(
この
)
風
(
かぜ
)
はナンダ、
163
怪体
(
けつたい
)
な
調子
(
てうし
)
だぞ。
164
どうしてもフル
野ケ原
(
のがはら
)
式
(
しき
)
だ』
165
鷹彦
(
たかひこ
)
『
恐怖心
(
きようふしん
)
に
駆
(
か
)
られて、
166
全身
(
ぜんしん
)
細
(
こま
)
かく、
167
ブルブルブル
野ケ原
(
のがはら
)
の
野宿
(
のじゆく
)
といふ
体裁
(
ていさい
)
だ。
168
アハヽヽヽ、
169
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
がソロソロ
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
したワイ』
170
音彦
(
おとひこ
)
『
向
(
むか
)
うから
悪魔
(
あくま
)
の
奴
(
やつ
)
、
171
魔風
(
まかぜ
)
を
吹
(
ふ
)
かしよるから、
172
此方
(
こちら
)
も
負
(
ま
)
けぬ
気
(
き
)
になつて、
173
言霊
(
ことたま
)
の
一
(
いち
)
二
(
に
)
三
(
さん
)
四
(
し
)
五
(
ご
)
六
(
ろく
)
七
(
しち
)
八
(
はち
)
九
(
く
)
十
(
じふ
)
百
(
ひやく
)
千
(
せん
)
万
(
まん
)
億病風
(
おくびやうかぜ
)
だ』
174
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なに
)
を
洒落
(
しやれ
)
るのだ、
175
それそれ
又
(
また
)
雨
(
あめ
)
だ』
176
音彦
(
おとひこ
)
『
あめ
が
下
(
した
)
に
住居
(
すまゐ
)
する
吾々
(
われわれ
)
が、
177
雨
(
あめ
)
が
怖
(
こは
)
くて
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
れるか。
178
雨
(
あめ
)
より
恐
(
こは
)
いは、
179
アーメニヤのウラル
彦
(
ひこ
)
様
(
さま
)
だ。
180
吾々
(
われわれ
)
が
斯
(
か
)
うして、
181
飛行
(
ひかう
)
宣伝中
(
せんでんちう
)
に
宙返
(
ちうがへり
)
をうつたと
云
(
い
)
ふことが
聞
(
きこ
)
えたら、
182
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ。
183
到底
(
たうてい
)
旧
(
もと
)
のアーメニヤの
城内
(
じやうない
)
に、
184
格納
(
かくなふ
)
して
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
は
最大
(
さいだい
)
難事
(
なんじ
)
だよ』
185
鷹彦
(
たかひこ
)
『まだ
貴様
(
きさま
)
は、
186
アーメニヤが
恋
(
こひ
)
しいのか』
187
音彦
(
おとひこ
)
『ナーニ、
188
アーメニヤが
恋
(
こひ
)
しいのぢやない、
189
肝腎
(
かんじん
)
の
力
(
ちから
)
に
思
(
おも
)
うた
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が、
190
雲煙
(
くもけむり
)
となつて
磨滅
(
まめつ
)
して
了
(
しま
)
つたものだから、
191
心細
(
こころぼそ
)
くなつて
来
(
き
)
たのだ。
192
それで
今度
(
こんど
)
はアーメニヤの
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
のお
咎
(
とがめ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしくなつて
来
(
き
)
たのだ。
193
俺
(
おれ
)
だつて
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にしやツついてさへ
居
(
を
)
れば、
194
心
(
こころ
)
が
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だが、
195
コンナ
魔窟
(
まくつ
)
に
放擲
(
はうてき
)
されて、
196
チツトは
愚痴
(
ぐち
)
も
出
(
で
)
ようまいものでもなからうぢやないか』
197
亀彦
(
かめひこ
)
『さうぢや、
198
同感
(
どうかん
)
々々
(
どうかん
)
、
199
誰
(
たれ
)
だつて
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
は
九合
(
ぐがふ
)
八合
(
はちがふ
)
だ。
200
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
捨
(
す
)
てられたら、
201
それこそ
一升
(
いつしよう
)
の
恨
(
うらみ
)
だ。
202
オイオイ
一斗
(
いつと
)
の
者
(
もの
)
、
203
一石
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
在処
(
ありか
)
を
探
(
たづ
)
ねて
見
(
み
)
ようぢやないか。
204
桝々
(
ますます
)
斗
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
の
変幻
(
へんげん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
、
205
こりやマア、
206
どうしたら
宜
(
よ
)
からうかな』
207
此
(
この
)
時
(
とき
)
ボンヤリとした、
208
薄暗
(
うすぐら
)
い、
209
生茂
(
おひしげ
)
る
茅
(
かや
)
の
中
(
なか
)
から、
210
ズズ
黒
(
ぐろ
)
い
大
(
おほ
)
きな
顔
(
かほ
)
がヌツと
現
(
あら
)
はれて、
211
化物
(
ばけもの
)
『キエーヘヽヽヽ、
212
キヤーハヽヽヽ、
213
キヨーホヽヽヽ、
214
キューヽヽヽヽ』
215
音彦
(
おとひこ
)
『
音高
(
おとたか
)
し
音高
(
おとたか
)
し、
216
静
(
しづ
)
かにめされ
化物
(
ばけもの
)
殿
(
どの
)
』
217
化物
(
ばけもの
)
『キヤーヽヽヽヽ、
218
キユーヽヽヽヽ』
219
音彦
(
おとひこ
)
『オイオイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
220
呪文
(
じゆもん
)
を
唱
(
とな
)
へるのだ。
221
向
(
むか
)
うがキユーキユーだから、
222
此方
(
こつち
)
は
窮々
(
きうきう
)
如律令
(
によりつれい
)
だ。
223
サア
言
(
い
)
うたり
言
(
い
)
うたり』
224
一同
(
いちどう
)
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
225
一同
『
窮々
(
きうきう
)
如律令
(
によりつれい
)
、
226
窮々
(
きうきう
)
如律令
(
によりつれい
)
』
227
化物
(
ばけもの
)
『ワハヽヽヽ、
228
苦
(
くる
)
しいか、
229
恐
(
おそ
)
ろしいか、
230
キユーキユー
言
(
い
)
つてゐよるナア。
231
キヤヽヽヽヽ、
232
キヤハヽヽヽヽキヨホヽヽヽ』
233
岩彦
(
いはひこ
)
『ナーンダ、
234
脱線
(
だつせん
)
だらけの
鵺的
(
ぬえてき
)
言霊
(
ことたま
)
を
陳列
(
ちんれつ
)
しよつて、
235
……ソンナものは
何時迄
(
いつまで
)
置
(
お
)
いといても、
236
売約済
(
ばいやくずみ
)
の
札
(
ふだ
)
は
付
(
つ
)
かんぞ。
237
モツト
舶来
(
はくらい
)
の
精巧
(
せいかう
)
無比
(
むひ
)
、
238
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
といふ
言霊
(
ことたま
)
を
陳列
(
ちんれつ
)
せぬかい』
239
化物
(
ばけもの
)
『ウーン、
240
ウンウン』
241
梅彦
(
うめひこ
)
『ナアーンダ、
242
屈
(
かが
)
みよつたな』
243
岩彦
(
いはひこ
)
『どうだ、
244
俺
(
おれ
)
の
言霊
(
ことたま
)
には、
245
化
(
ばけ
)
チヤン
往生
(
わうじやう
)
しただらう。
246
それだから
此
(
この
)
方
(
はう
)
が、
247
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
長
(
ちやう
)
に
選
(
えら
)
ばれたのだ。
248
ウラル
彦
(
ひこ
)
の
眼力
(
がんりき
)
は
実
(
じつ
)
に
天晴
(
あつぱ
)
れなものだらう』
249
音彦
(
おとひこ
)
『あまり
吹
(
ふ
)
くない。
250
何時
(
いつ
)
だつて
尻
(
しり
)
の
約
(
つづま
)
りが
合
(
あ
)
うた
事
(
こと
)
が、
251
一度
(
いちど
)
でもあるかい。
252
貴様
(
きさま
)
の
言霊
(
ことたま
)
で
化物
(
ばけもの
)
が
閉息
(
へいそく
)
したと
思
(
おも
)
へば
当
(
あて
)
が
違
(
ちが
)
うぞ。
253
あの
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いたか、
254
ウンウンウンといつただらう、
255
萱
(
かや
)
ん
穂
(
ぼ
)
の
中
(
なか
)
で、
256
団尻
(
だんじり
)
を
引捲
(
ひきまく
)
つて、
257
ウンと
瓦斯
(
ガス
)
や
残滓物
(
ざんさぶつ
)
を
放出
(
はうしゆつ
)
して、
258
それから
第二
(
だいに
)
の
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
にかからうと
云
(
い
)
ふ
手段
(
しゆだん
)
だよ』
259
岩彦
(
いはひこ
)
『
何程
(
なにほど
)
ウンウン
言
(
い
)
つたつて、
260
運
(
うん
)
は
天
(
てん
)
に
在
(
あ
)
りだ、
261
一
(
ひと
)
つ
是
(
これ
)
から
運比
(
うんくら
)
べをやるのだ』
262
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
263
岩彦
(
いはひこ
)
は
尻
(
しり
)
ひきまくり、
264
化物
(
ばけもの
)
の
屈
(
かが
)
んだ
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
つて、
265
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤア、
266
折悪
(
をりあ
)
しくウンの
持合
(
もちあは
)
せがない、
267
仕方
(
しかた
)
がないワ、
268
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
臀肉
(
でんにく
)
を
喰
(
くら
)
へ、
269
お
尻
(
しり
)
が
呆
(
あき
)
れるワ』
270
と
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
叩
(
たた
)
いて
見
(
み
)
せる。
271
音
(
おと
)
、
272
梅
(
うめ
)
『アハヽヽヽ、
273
こいつあ
面白
(
おもしろ
)
い、
274
洒落
(
しやれ
)
てけつかるワイ』
275
草原
(
くさはら
)
より
再
(
ふたた
)
び
化物
(
ばけもの
)
はニユーツと
首
(
くび
)
を
出
(
だ
)
し、
276
化物
『ヤア
岩彦
(
いはひこ
)
、
277
有難
(
ありがた
)
い、
278
お
前
(
まへ
)
の
尻
(
けつ
)
を
是
(
これ
)
から
頂戴
(
ちやうだい
)
する。
279
そこ
動
(
うご
)
くな』
280
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤア、
281
バババケ
公
(
こう
)
、
282
嘘
(
うそ
)
だ
嘘
(
うそ
)
だ、
283
一寸
(
ちよつと
)
愛想
(
あいそ
)
に
行
(
や
)
つて
見
(
み
)
たのだ。
284
お
前
(
まへ
)
はウンウンと
言
(
い
)
つて
糞
(
くそ
)
をこいたが、
285
俺
(
おれ
)
は
嘘
(
うそ
)
をこいたのだ。
286
コンナ
事
(
こと
)
を、
287
真面目
(
まじめ
)
に
聞
(
き
)
く
不風流
(
ぶふうりう
)
な
奴
(
やつ
)
があるかい。
288
お
前
(
まへ
)
もよつぽど
原始
(
げんし
)
的
(
てき
)
な
化
(
ばけ
)
チヤンだナア』
289
化物
(
ばけもの
)
『オ……オ……
俺
(
おれ
)
は
原始
(
げんし
)
的
(
てき
)
だから、
290
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
風流
(
ふうりう
)
の
持合
(
もちあは
)
せはないワイ。
291
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
は
正直
(
しやうぢき
)
が
一番
(
いちばん
)
だ。
292
お
前
(
まへ
)
も
苟
(
いやし
)
くも
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
293
滅多
(
めつた
)
に
戯談
(
じやうだん
)
や
嘘偽
(
うそ
)
を
云
(
い
)
ふ
筈
(
はず
)
はあるまい。
294
言行
(
げんかう
)
一致
(
いつち
)
だ。
295
サアサア
宣言
(
せんげん
)
を
履行
(
りかう
)
して
貰
(
もら
)
はうかい』
296
鷹彦
(
たかひこ
)
『アハヽヽヽ、
297
此
(
この
)
化州
(
ばけしう
)
、
298
あぢな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひよる。
299
オイオイ
化州
(
ばけしう
)
、
300
コンナ
岩公
(
いはこう
)
の
様
(
やう
)
な
分
(
わか
)
らずやに
相手
(
あひて
)
になるな、
301
見逃
(
みのが
)
せ
見逃
(
みのが
)
せ』
302
化物
(
ばけもの
)
『それでも
岩公
(
いはこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
303
確
(
たしか
)
に
尻
(
しり
)
をまくつて、
304
喰
(
くら
)
へと
言
(
い
)
つたのだ。
305
お
前
(
まへ
)
たちの
耳
(
みみ
)
にも
新
(
あらた
)
なる
所
(
ところ
)
、
306
斯
(
か
)
く
的確
(
てきかく
)
な
意思
(
いし
)
表示
(
へうじ
)
をやつた
以上
(
いじやう
)
は、
307
何処
(
どこ
)
までも
強制
(
きやうせい
)
執行
(
しつかう
)
をやるのだ』
308
岩彦
(
いはひこ
)
『
執行
(
しつかう
)
とはナンダ、
309
執拗
(
しつこい
)
ぢやないか、
310
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
砕
(
くだ
)
けぬかい』
311
化物
(
ばけもの
)
『
砕
(
くだ
)
ける
砕
(
くだ
)
ける、
312
お
前
(
まへ
)
の
骨
(
ほね
)
が、
313
木葉
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
に
砕
(
くだ
)
けるぞ。
314
当
(
あた
)
つて
砕
(
くだ
)
けと
云
(
い
)
ふことがあるぢやないか、
315
お
前
(
まへ
)
も
立派
(
りつぱ
)
な
一人前
(
いちにんまへ
)
の
男
(
をとこ
)
だらう。
316
当
(
あた
)
つて
砕
(
くだ
)
けたらどうだい』
317
岩彦
(
いはひこ
)
『イヤ
俺
(
おれ
)
は
一人前
(
いちにんまへ
)
ぢやない、
318
四人前
(
よにんまへ
)
だ』
319
化物
(
ばけもの
)
『
四人前
(
よにんまへ
)
なら
猶更
(
なほさら
)
の
事
(
こと
)
だ、
320
余人
(
よにん
)
はいざ
知
(
し
)
らず、
321
汝
(
なんぢ
)
一人
(
ひとり
)
に
限
(
かぎ
)
つて
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
に
実行
(
じつかう
)
をするのだ。
322
そこ
動
(
うご
)
くな』
323
岩彦
(
いはひこ
)
『
動
(
うご
)
けと
云
(
い
)
つたつて、
324
動
(
うご
)
くものかい。
325
岩
(
いは
)
サンは
其
(
その
)
名
(
な
)
の
如
(
ごと
)
く、
326
恬
(
てん
)
として
動
(
うご
)
からざる
事
(
こと
)
、
327
磐石
(
いはじやく
)
の
如
(
ごと
)
しだ』
328
化物
(
ばけもの
)
『さうだらう、
329
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かしよつて、
330
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
くない』
331
鷹彦
(
たかひこ
)
『アーア、
332
此
(
この
)
睡
(
ねむ
)
たいのに、
333
気楽
(
きらく
)
な
化
(
ばけ
)
奴
(
め
)
がやつて
来
(
き
)
よつて、
334
種々
(
いろいろ
)
の
余興
(
よきよう
)
をやるものだから
可笑
(
おか
)
しくつて、
335
碌
(
ろく
)
に
眠
(
ねむ
)
る
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
やしないワ』
336
岩彦
(
いはひこ
)
『オイオイ
鷹彦
(
たかひこ
)
、
337
何
(
なに
)
が
余興
(
よきよう
)
だ。
338
俺
(
おれ
)
の
身
(
み
)
にも
一
(
ひと
)
つなつて
見
(
み
)
い』
339
鷹彦
(
たかひこ
)
『アハヽヽヽ、
340
貴様
(
きさま
)
あまり
頑固
(
ぐわんこ
)
だつたから、
341
一寸
(
ちよつと
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
釘
(
くぎ
)
を
打
(
う
)
たれて
居
(
ゐ
)
るのだ。
342
ナアモシ、
343
化神
(
ばけがみ
)
さま……』
344
化物
(
ばけもの
)
『さうだ、
345
鷹彦
(
たかひこ
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほり
)
、
346
俺
(
おれ
)
の
聞
(
き
)
く
通
(
とほ
)
りだ。
347
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
間違
(
まちがひ
)
のない
話
(
はなし
)
だ』
348
岩彦
(
いはひこ
)
『オイ
鷹彦
(
たかひこ
)
、
349
岩
(
いは
)
いでもよい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふな、
350
貴様
(
きさま
)
は
化
(
ばけ
)
の
奴
(
やつ
)
に
共鳴
(
きようめい
)
しよつて、
351
本当
(
ほんたう
)
に
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
ぢや』
352
鷹彦
(
たかひこ
)
『アハヽヽヽ、
353
貴様
(
きさま
)
又
(
また
)
昨夜
(
ゆふべ
)
の
様
(
やう
)
に
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
とるのぢやないか』
354
岩彦
(
いはひこ
)
『さうかなア、
355
夢
(
ゆめ
)
なら
結構
(
けつこう
)
だが……ヤアどうしても
夢
(
ゆめ
)
の
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
はれぬぞ。
356
起
(
お
)
きてはテクテクと
曠野
(
くわうや
)
を
渉
(
わた
)
り、
357
寝
(
ね
)
てはコンナ
恐
(
おそ
)
ろしい
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
せられては
堪
(
たま
)
つたものぢやないワ』
358
化物
(
ばけもの
)
『ヤア
岩
(
いは
)
チヤン、
359
永々
(
ながなが
)
お
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しました。
360
夢
(
ゆめ
)
でもない、
361
現
(
うつつ
)
でもない、
362
本当
(
ほんたう
)
のフル
野ケ原
(
のがはら
)
の
化
(
ばけ
)
チヤンだ。
363
ユメユメ
疑
(
うたが
)
ふこと
勿
(
なか
)
れ、
364
アリヨース』
365
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
366
『ブスツ』と
屁
(
へ
)
の
様
(
やう
)
な
怪
(
あや
)
しき
音
(
おと
)
と
共
(
とも
)
に
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
367
音彦
(
おとひこ
)
『ヤアヤア
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
な
事
(
こと
)
があつたものだ。
368
今
(
いま
)
の
出
(
で
)
よつたお
化
(
ばけ
)
は、
369
ナンデも
雪隠
(
せつちん
)
のお
化
(
ばけ
)
と
見
(
み
)
える。
370
糞
(
くそ
)
を
垂
(
た
)
れる
終局
(
しまひ
)
の
果
(
は
)
てには
鼬
(
いたち
)
の
最期屁
(
さいごぺ
)
ぢやないが、
371
ブスツと
音
(
おと
)
をさせて
屁古垂
(
へこた
)
れよつた』
372
岩彦
(
いはひこ
)
『ワハヽヽヽ、
373
妙
(
めう
)
なものだ。
374
俺
(
おれ
)
の
腰
(
こし
)
もモウ
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
375
オイどうだ、
376
貴様
(
きさま
)
、
377
俺
(
おれ
)
が
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かしたと
本当
(
ほんたう
)
に
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
つたのだらう、
378
ソンナ
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
で
宣伝使
(
せんでんし
)
が
勤
(
つと
)
まるかい。
379
キヤハヽヽヽ、
380
キユフヽヽヽ、
381
キヨホヽヽヽ』
382
鷹彦
(
たかひこ
)
『オイオイ
岩公
(
いはこう
)
、
383
ソンナ
言霊
(
ことたま
)
を
使
(
つか
)
うと、
384
第二
(
だいに
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
のお
見舞
(
みまひ
)
だぞ』
385
岩彦
(
いはひこ
)
『
ようかい
も
神界
(
しんかい
)
もあつたものかい。
386
吾輩
(
わがはい
)
の
勢力
(
せいりよく
)
範囲
(
はんゐ
)
内
(
ない
)
に
立入
(
たちい
)
つて、
387
何
(
なに
)
を
ようかい
(
容喙
(
ようかい
)
)するのぢや、
388
権利
(
けんり
)
侵害罪
(
しんがいざい
)
で
起訴
(
きそ
)
するぞ』
389
鷹彦
(
たかひこ
)
『
起訴
(
きそ
)
するとは、
390
奇想
(
きそう
)
天外
(
てんぐわい
)
だ、
391
天涯
(
てんがい
)
万里
(
ばんり
)
の
雨
(
あめ
)
がフル
野ケ原
(
のがはら
)
、
392
どうで
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
はないからマアマア
楽
(
たのし
)
んで、
393
ゆつくりと
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
に
継
(
つ
)
いで
旅行
(
りよかう
)
するのだなア』
394
此
(
この
)
時
(
とき
)
何処
(
いづく
)
ともなく、
395
化物
(
ばけもの
)
の
声
(
こゑ
)
にて、
396
化物
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
397
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
398
化物
(
ばけもの
)
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
399
嘘
(
うそ
)
と
糞
(
くそ
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
400
嘘
(
うそ
)
で
固
(
かた
)
めた
岩公
(
いはこう
)
の
401
岩
(
いは
)
より
固
(
かた
)
い
頑固者
(
ぐわんこもの
)
402
荒肝
(
あらぎも
)
取
(
と
)
られて
腰
(
こし
)
打
(
う
)
つて
403
骨
(
ほね
)
を
一々
(
いちいち
)
刻
(
きざ
)
まれた
404
様
(
やう
)
な
苦
(
くる
)
しい
思
(
おも
)
ひして
405
涙
(
なみだ
)
をソツと
押隠
(
おしかく
)
し
406
泰平楽
(
たいへいらく
)
の
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
407
此
(
この
)
行先
(
ゆくさき
)
の
荒屋
(
あばらや
)
に
408
又
(
また
)
もや
俺
(
おれ
)
が
待受
(
まちう
)
けて
409
どつと
脂
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
つてやろか
410
アハヽヽヽ、オホヽヽヽ、イヒヽヽヽ』
411
岩彦
(
いはひこ
)
『エヽ、
412
五月蝿
(
うるさ
)
い、
413
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても。
414
併
(
しか
)
し
今度
(
こんど
)
の
笑方
(
わらひかた
)
は
正式
(
せいしき
)
だ、
415
最前
(
さいぜん
)
の
様
(
やう
)
な、
416
キューキューキューと
吐
(
ぬ
)
かしよると
気持
(
きもち
)
が
悪
(
わる
)
い……オイ
化
(
ばけ
)
チヤン、
417
笑
(
わら
)
ふなら、
418
今
(
いま
)
の
流儀
(
りうぎ
)
だよ』
419
再
(
ふたた
)
び
中空
(
ちうくう
)
より、
420
化物
(
ばけもの
)
の
声
(
こゑ
)
、
421
化物
『
岩
(
いは
)
に
松
(
まつ
)
さへ
生
(
は
)
えるぢやないか、
422
喰
(
く
)
つて
喰
(
く
)
はれぬ
事
(
こと
)
はない。
423
アハヽヽヽ、
424
ウフヽヽヽ、
425
マハヽヽヽ、
426
イヒヽヽヽ』
427
鷹彦
(
たかひこ
)
『オイ
岩公
(
いはこう
)
、
428
喜
(
よろこ
)
べ、
429
あの
笑声
(
わらひごゑ
)
は
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふ、
430
アーウマイ、
431
アウマイと
笑
(
わら
)
つただらう、
432
巧妙
(
うま
)
いこと
吐
(
ぬ
)
かしよるナア』
433
岩彦
(
いはひこ
)
『アーア、
434
ウン……ウン、
435
マーマ、
436
イーイ、
437
イーワイ』
438
(
大正一一・三・一七
旧二・一九
松村真澄
録)
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【第7章 布留野原|第13巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1307】
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