霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第二三章 和解(わかい)〔五四九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第5篇 膝栗毛 よみ(新仮名遣い):ひざくりげ
章:第23章 和解 よみ(新仮名遣い):わかい 通し章番号:549
口述日:1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所: 筆録者:谷村真友 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
夜、トイレに行きたくなった二人は、梯子を取られてしまったので、お茶を汲む土瓶の中に小便をして、それを返した。
怒ったお竹の母は、小便入りのお茶を二人に出した。このことで、二人はお竹の父母と喧嘩を始めてしまう。見物人が集まって大騒ぎになるが、そこへ六人の宣伝使がやってきて、宣伝歌を歌った。
一同は宣伝歌にあわせて踊り舞い、喧嘩は収まった。そして一行はコーカス山に向かって進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-14 10:58:49 文字数:3762 OBC :rm1323
愛善世界社版:272頁 八幡書店版:第3輯 129頁 修補版: 校定版:272頁 普及版:119頁 初版: ページ備考:
001 弥次彦(やじひこ)、002与太彦(よたひこ)の二人(ふたり)は、003また大土瓶(おほどびん)の茶(ちや)をガブガブと残(のこ)らず飲(の)んでしまつた。
004与太彦『エー気分(きぶん)の悪(わる)い、005沢山(たくさん)の茶(ちや)を飲(の)んで洗濯(せんたく)をした積(つも)りだが、006何(なん)だかまだ口(くち)が粘(ねば)つくやうだ。007洗濯(せんたく)をしても矢張(やつぱり)腹(はら)の中(なか)に洟(みづばな)もあれば鼻汁(はなじる)も雑居(ざつきよ)して居(ゐ)るのだから、008気持(きも)ちがあまり冴(さ)えぬワイ。009お前(まへ)も殺生(せつしやう)な奴(やつ)だ、010洟(みづばな)が斯(か)う斯(か)うだと前(さき)に言(い)うて呉(く)れればよいものを、011腹(はら)が悪(わる)いなア』
012弥次彦『俺(おれ)は腹(はら)がへつて悪(わる)いが、013貴様(きさま)は鱈腹(たらふく)喰(く)つて、014もつたいない理窟(りくつ)を言(い)ふとは、015よほど腹(はら)の悪(わる)い奴(やつ)だ。016アヽ余(あま)り沢山(たくさん)飲(の)んだので小便(せうべん)が仕度(した)くなつた。017梯子(はしご)も何(なに)も取(と)つて仕舞(しま)つて降(おり)る事(こと)が出来(でき)やしない。018此処(ここ)でやれば下(した)へ漏(も)るし、019張(は)り切(き)れる様(やう)になつて来(き)たワ、020どう為(し)ようか知(し)らぬて』
021与太彦(よたひこ)『都合(つがふ)の好(よ)いものがある、022この土瓶(どびん)の中(なか)にやつたらどうだ、023下(した)に漏(も)る気遣(きづか)ひはないぞ』
024と云(い)ひながら、025かはるがはる泡(あわ)立(だつ)た茶色(ちやいろ)の小便(せうべん)を夜(よ)の明(あ)けるまでに半分(はんぶん)ばかり溜(た)めた。026二人(ふたり)は旅(たび)の疲(つか)れでグツスリと寝込(ねこ)んでしまつた。027ソロソロ聞(きこ)ゆる鶏(にはとり)の声(こゑ)、028小鳥(ことり)の声(こゑ)、
029弥次彦(やじひこ)『ヤー春(はる)の夜(よ)は短(みじか)いものだ、030此処(ここ)へこけたと思(おも)へば早鶏(はやとり)の声(こゑ)だ、031折角(せつかく)煙(けむり)が無(な)くなつたと思(おも)へば又(また)そろそろ焚(た)き出(だ)しよつて燻(くすぶ)るワイ。032アヽ煙(けむ)たい煙(けむ)たい』
033 婆々(ばばあ)は下(した)より、
034婆(お竹の母)『二階(にかい)のお客(きやく)さま、035土瓶(どびん)を降(お)ろして下(くだ)さらぬか』
036弥次彦『ヨシヨシ』
037と弥次彦(やじひこ)は土瓶(どびん)を鈎(かぎ)に引(ひ)つ掛(か)けツルツルと釣(つ)り降(お)ろした。038暫(しばら)くすると、039婆々(ばばあ)が、
040婆『お客(きやく)さま握(にぎ)り飯(めし)だ、041鈎(かぎ)を降(おろ)したり』
042 弥次彦(やじひこ)はツルツルと鈎(かぎ)を降(おろ)す。043婆々(ばばあ)はまたもや十文字(じふもんじ)に縛(しば)つた笊(ざる)に握(にぎ)り飯(めし)を盛(も)つて引(ひつ)かける。
044弥次彦『オイ与太公(よたこう)、045今日(けふ)は大丈夫(だいぢやうぶ)だ、046どつさりと頂(いただ)いて見(み)ようかい』
047与太彦『イヤモウ閉口(へいこう)だ、048夜(よ)の短(みじか)いのに二人前(ふたりまへ)も頂(いただ)いて、049おまけに土瓶(どびん)の茶(ちや)を沢山(たくさん)飲(の)んだものだから、050臨月(りんげつ)の嬶(かか)アの腹(はら)のやうに筋張(すぢば)つてポンポンだ。051お前(まへ)、052遠慮(ゑんりよ)せずに頂(いただ)いて終(しま)へ』
053弥次彦『俺(おれ)も何(なん)となく腹(はら)がすかぬ、054マア止(や)めて置(お)かうかい』
055与太彦『お腹(なか)がすいても空腹(ひもじ)うないと云(い)ふが、056空腹(ひもじ)いときのまずいものなし、057ひだるいときの汚(きたな)いものなしぢや、058一(ひと)つ奮発(ふんぱつ)して五(いつ)つ六(むつ)つ平(たひら)げたらどうだい弥次彦(やじひこ)』
059弥次彦『ヤアどう思(おも)つても胸膨(むなぶく)れがして食(く)ふ気(き)にならぬワイ。060それよりも茶(ちや)なと貰(もら)つて腹(はら)を膨(ふく)らさうぢやないか。061モシモシ婆(ばあ)サン、062どつさりお茶(ちや)を下(くだ)さらぬか』
063婆々(ばばあ)は下(した)から、
064婆『高取村(たかとりむら)の旦那(だんな)さま、065お茶(ちや)が都合(つがふ)よく沸(わ)きました、066あまり熱(あつ)くもなし、067ぬるくもなし、068飲(の)み頃(ごろ)ですぜ。069サア鈎(かぎ)を降(おろ)して下(くだ)さい』
070弥次彦『鈎(かぎ)は最前(さいぜん)から降(おろ)して待(ま)つて居(ゐ)るのだ』
071婆『アヽ、072ホンニ降(お)りてをつたなア、073年(とし)が寄(よ)ると目脂(めやに)、074鼻汁(はなじる)、075いやもうじじむさいものだ』
076と言(い)ひながら、077手鼻(てばな)をかんでその手(て)で土瓶(どびん)の蔓(つる)を持(も)ち鈎(かぎ)に引掛(ひつか)けた。078弥次彦(やじひこ)は手早(てばや)く手繰上(たくりあ)げて、
079弥次彦『また婆々(ばばあ)の手鼻(てばな)をかんだ手(て)で茶(ちや)を汲(く)んで呉(く)れたが、080茶(ちや)の中(なか)にはまさか鼻汁(はなじる)は這入(はい)つてゐまい。081マア緩(ゆつ)くりと茶腹(ちやばら)でも膨(ふく)らかさうかい』
082と言(い)ひながら互(たが)ひに引(ひ)つたくり、083争(あらそ)ひつつ七八分(しちはちぶ)まで飲(の)んで仕舞(しま)つたが、084何(なん)となく妙(めう)な臭(にほひ)が鼻(はな)にプンプンとする。
085弥次彦『オイこの茶(ちや)は怪体(けつたい)な臭(にほひ)がするぢやないか、086何(なん)だか塩辛(しほから)い味(あぢ)の、087よい塩(しほ)加減(かげん)の茶(ちや)だと思(おも)うて飲(の)んだが、088この臭(にほひ)が何(なん)だか気(き)に喰(く)はぬぢやないか、089のう与太彦(よたひこ)』
090と云(い)ひながら下(した)を覗(のぞ)いて、
091弥次彦『コレコレお婆(ばあ)さま、092この茶(ちや)は腐(くさ)つとらせぬかいなア。093妙(めう)な臭(にほひ)がするぞ』
094婆『なに腐(くさ)つて居(を)るものかい、095昨夜(ゆうべ)沸(わか)した所(ところ)だ、096現(げん)にお前(まへ)さまが昨夜(よんべ)飲(の)んだ残(のこ)りの上(うへ)に茶(ちや)を補(た)して沸(わ)かして上(あ)げたのだ。097腐(くさ)つて居(を)る気遣(きづか)ひは無(な)いわいなア』
098弥次彦『ヤー此奴(こいつ)は堪(たま)らぬ、099どうしようか、100オイ与太公(よたこう)』
101与太彦『仕方(しかた)がないなア。102己(おのれ)に出(い)づるものは己(おのれ)に帰(かへ)るぢや。103他人(ひと)の小便(せうべん)ぢやあるまいし、104自分(じぶん)の小便(せうべん)を自分(じぶん)が飲(の)んだのだ、105疝気(せんき)の薬(くすり)ぢやと思(おも)へば、106マア辛抱(しんばう)するのだなア。107あんまり常平生(つねへいぜい)から、108バリバリバリ付(つ)くものだから、109因劫(いんがふ)が報(むく)い来(きた)つて自業(じごう)自得(じとく)で、110狼(おほかみ)の様(やう)にバリを飲(の)まされたのだ。111ペツペツペツペツ』
112 ガア、113ガラガラガラと咽(のど)に指(ゆび)を突(つ)き込(こ)んで吐(は)き出(だ)す、114柴屋(しばや)の簀子(すのこ)を洩(も)れて反吐水(へどみづ)は下(した)を通(とほ)り爺(おやぢ)の禿頭(はげあたま)にダラダラと流(なが)れ落(お)ちた。
115爺『チエツ、116鼠(ねずみ)の奴(やつ)、117頭(あたま)から小便(せうべん)をかけよつて、118ヤー小便(せうべん)計(ばか)りぢやないぞ、119飯粒(めしつぶ)が交(まじ)つて居(ゐ)る。120ヤアこれは大方(おほかた)二階(にかい)のお客(きやく)だらう、121怪(け)しからぬ奴(やつ)ぢや。122娘(むすめ)の世話(せわ)になつた旦那(だんな)、123主人(しゆじん)だと思(おも)ふから二階(にかい)に泊(と)めてやれば頭(あたま)から反吐(へど)を引(ひつ)かけるなんて不人情(ふにんじやう)きはまる。124ヨシ先方(せんぱう)がさうなら此方(こつち)も了見(れうけん)がある。125コレお竹(たけ)、126梯子(はしご)を差(さ)す事(こと)はならぬぞ、127何時(いつ)までも天井(てんじやう)へ祭(まつ)り込(こ)んで焚物(たきもん)になるとこまで燻(くす)べてやるのだ。128本当(ほんたう)に人(ひと)を馬鹿(ばか)にして居(ゐ)る。129コラ二階(にかい)の兵六玉(ひやうろくだま)、130どうするのだ』
131弥次彦『モシモシ爺(おやぢ)さま、132私(わし)ぢやない、133あれは鼠(ねずみ)ぢや。134鼠(ねずみ)の悪戯(いたづら)迄(まで)吾々(われわれ)に転嫁(てんか)させられては弥次彦(やじひこ)も困(こま)るよ』
135爺『馬鹿(ばか)言(い)ふない、136鼠(ねずみ)が反吐(へど)をつくかい、137田舎者(ゐなかもん)だと思(おも)つて余(あま)り馬鹿(ばか)にするな』
138弥次彦(やじひこ)『コラコラお竹(たけ)、139梯子(はしご)を差(さ)さぬかい』
140お竹『ハイいま差(さ)します、141チヨット待(ま)つて下(くだ)さい。142小用(こよう)して来(く)るから』
143与太彦(よたひこ)『用事(ようじ)を済(す)ましてから差(さ)して上(あ)げますとは、144洒落(しやれ)てけつかるワイ』
145爺(おやぢ)『コラお竹(たけ)、146親(おや)の許(ゆる)しもなしに梯子(はしご)をかけると云(い)ふ事(こと)があるか』
147お竹『それでも、148可愛(かあい)がつて下(くだ)さつた旦那(だんな)さまぢやもの、149親(おや)が何(なん)と云(い)つても私(わたくし)は差(さ)して上(あ)げます。150サアサア早(はや)くこれに乗(の)つて降(お)りて来(き)て下(くだ)さい』
151弥次彦『乗(の)れと言(い)つたつて、152コンナヒヨロヒヨロの梯(はし)の子(こ)にどうして乗(の)れるのだ。153危(あぶ)なくつて仕方(しかた)がない』
154お竹『乗(の)るのがいやなら、155両方(りやうはう)の親柱(おやばしら)をグツと抱(だ)いて大股(おほまた)に跨(また)げて降(お)りて下(くだ)さい。156二人(ふたり)一緒(いつしよ)に跨(また)げると梯子(はしご)が折(を)れます。157マア、158旦那(だんな)さまから先(さき)い』
159与太彦『旦那(だんな)さまから先(さき)いなんて馬鹿(ばか)にしてやがる。160エー仕方(しかた)がない。161鎌(かま)の柄(え)を向(むか)ふに握(にぎ)られて、162切(き)れる方(はう)を此方(こちら)が持(も)つて居(ゐ)るやうなものだから、163この柴屋(しばや)から無事(ぶじ)に着陸(ちやくりく)する迄(まで)は、164猫(ねこ)を被(かぶ)つて大人(おとな)しうして居(を)ろかい、165この与太(よた)ヤンも』
166 二人(ふたり)は漸(やうや)う降(お)りて来(き)た。167弥次彦(やじひこ)は面(つら)を脹(ふく)らして、
168弥次彦『コラ婆々(ばばあ)、169人(ひと)に小便(せうべん)を飲(の)ましよつて馬鹿(ばか)にするない』
170婆『この人(ひと)は何(なに)を言(い)ふのだい、171誰(たれ)が小便(せうべん)を飲(の)ましました。172お前(まへ)さまが勝手(かつて)にこいて飲(の)んだのぢやないか。173あんまり勿体無(もつたいな)い事(こと)をなさるから、174懲(こら)しめの為(ため)に小便(せうべん)だとは知(し)つて居(を)つたけれど、175態(わざ)とに其(その)儘(まま)にして置(お)いたのだよ。176ソンナ道楽(だうらく)な心(こころ)で、177コーカス詣(まゐ)りをしたつて神(かみ)様(さま)は、178彼方(あつちや)向(む)いて御座(ござ)るわ。179本当(ほんたう)に自堕落(じだらく)な兵六玉(ひやうろくだま)だナア。180奉公人(ほうこうにん)の一人(ひとり)も使(つか)ふ人(ひと)だから、181チツトは行儀(ぎやうぎ)ぐらゐ知(し)つた方(かた)だと思(おも)うて居(ゐ)たのに、182あまりの仕打(しうち)で愛想(あいさう)が尽(つ)きた。183私(わし)は斯(か)う貧乏(びんぼう)して居(を)つても、184綺麗(きれい)な物(もの)と汚(きたな)い物(もの)ぐらゐは弁(わきま)へて居(を)る。185アタ勿体(もつたい)ない、186先祖(せんぞ)譲(ゆづ)りの履歴(りれき)のついた、187大事(だいじ)なお土瓶(どびん)に小便(せうべん)をこかれて、188どうしてこれが使(つか)へるものか。189サア旧(もと)の通(とほ)りにして下(くだ)され、190婆々(ばばあ)が承知(しようち)しませぬぞや』
191弥次彦『土瓶(どびん)の一(ひと)つくらゐ何(なん)だ、192それほど惜(を)しけりや買(か)うて返(かへ)してやるわ。193何(なん)だ大層(たいそう)らしい。194三銭(さんせん)や五銭(ごせん)の土瓶(どびん)を』
195婆『この土瓶(どびん)は三銭(さんせん)や五銭(ごせん)ぢや買(か)へませぬ、196百(ひやく)両(りやう)から致(いた)しますよ』
197弥次彦『金(きん)の土瓶(どびん)でも百(ひやく)両(りやう)出(だ)せばあるのに、198何(なん)ぢやコンナ真(ま)つ黒気(くろけ)な蛸土瓶(たこどびん)をあまり懸(か)け値(ね)を言(い)ふな。199足許(あしもと)を付(つ)け込(こ)みよつて年寄(としより)の癖(くせ)に欲(よく)の皮(かは)の深(ふか)い奴(やつ)だ。200棺桶(くわんをけ)に片足(かたあし)突込(つきこ)んで居(を)つて欲張(よくば)つて何(なん)になる、201お熊(くま)婆(ばば)[※「お熊婆」とは、熊手性(くまでしょう)(=強欲な性質)の老婆を意味する「熊手婆(くまでばば)」のことだと思われる。]奴(め)が』
202婆『この土瓶(どびん)は成(な)るほど買(か)うた時(とき)は三銭(さんせん)だつたさうだが、203曽祖父(ひいぢいさん)の代(だい)から家宝(かほう)となつて今(いま)まで持(も)つて来(き)た物(もの)だ。204三銭(さんせん)の金(かね)に利(り)に利(り)を盛(も)つて百五十(ひやくごじふ)年(ねん)の間(あひだ)勘定(かんぢやう)して見(み)なさい、205百(ひやく)両(りやう)なら安(やす)いものだよ』
206弥次彦『何(なん)と勘定(かんぢやう)の高(たか)い婆(ばば)アだなア、207こいつア、208ウラル教(けう)だよ与太公(よたこう)』
209婆『ウラルもウランもあるものか、210百(ひやく)両(りやう)だつて千(せん)両(りやう)だつて、211家(いへ)の宝(たから)を売(う)つて堪(たま)るものか』
212弥次彦(やじひこ)『蛸(たこ)なら足(あし)もつくだらうが、213此奴(こいつ)は足(あし)の無(な)い胴瓶(どうびん)ばかりだから、214素(もと)より利足(りそく)の付(つ)く筈(はず)がないわ』
215与太彦(よたひこ)『形(かたち)あるものは必(かなら)ず滅(ほろ)び、216逢(あ)ふものは離(はな)れると云(い)ふのは世(よ)の中(なか)の習(なら)ひだ。217諦(あきら)めて置(お)くが好(よ)からう、218後生(ごしやう)の為(ため)だよ』
219爺(おやぢ)『何(な)んだ、220聞(き)いて居(を)れば親重代(おやぢゆうだい)の土瓶(どびん)を穢(けがら)はしい小便(せうべん)を垂(た)れよつたのか、221モウ了見(れうけん)ならぬ、222俺(おれ)のとこの宝(たから)を台(だい)なしにしよつたナ』
223弥次彦(やじひこ)『エー小(ちひ)さい事(こと)を吐(ぬ)かすない、224土瓶(どびん)に小便(せうべん)を入(い)れたのがそれほど腹(はら)が立(た)つのなら、225吾々(われわれ)の胴腹(どうばら)に小便(せうべん)を入(い)れよつた貴様(きさま)こそ了見(れうけん)ならぬ奴(やつ)だ。226胴瓶(どうびん)の土瓶(どびん)いぢりの薬鑵(やくわん)老爺(おやぢ)、227土瓶(どびん)も薬鑵(やくわん)も一緒(いつしよ)にポカンと遺(や)つてやらうか』
228爺(おやぢ)『人(ひと)の家(いへ)に厄介(やくかい)になつて置(お)きながら、229何(なん)と云(い)ふ劫託(ごふたく)をこきよるのだ。230コラ、231年(とし)は寄(よ)つてもこれでもヤンチヤの虎(とら)サンと綽名(あだな)を取(と)つた此(この)方(はう)だぞ』
232と云(い)ひながら握(にぎ)り拳(こぶし)を固(かた)めてポカンとやつた。
233 与太彦(よたひこ)は、
234与太彦『この耄碌(まうろく)老爺(おやぢ)、235何(なに)をしやがる』
236と又(また)もや鉄拳(てつけん)を固(かた)めて薬鑵頭(やくわんあたま)をポカンとやる。237老爺(おやぢ)は甲声(かんごゑ)を出(だ)して怒(おこ)る、238お竹(たけ)は泣(な)く、239婆(ばば)はわめく、240弥次(やじ)はカンカンになつて暴(あ)れ廻(まは)る。241表(おもて)を通(とほ)る数多(あまた)の参詣者(さんけいしや)は『ヤア喧嘩(けんくわ)だ喧嘩(けんくわ)だ』と面白(おもしろ)がり黒山(くろやま)の如(ごと)く集(あつ)まつて来(く)る。
242甲(かふ)『コラ一体(いつたい)何(なん)の喧嘩(けんくわ)だ』
243乙(おつ)『土瓶(どびん)と薬鑵(やくわん)の喧嘩(けんくわ)ださうな』
244 ワイワイと野次馬(やじうま)連(れん)が騒(さわ)いで居(を)る、245斯(か)かる所(ところ)へ烏帽子(ゑぼうし)、246狩衣(かりぎぬ)、247厳(いか)めしく馬上(ばじやう)ゆたかに進(すす)み来(く)る宣伝使(せんでんし)の一行(いつかう)ありき。248宣伝使(せんでんし)は馬(うま)を止(と)め、249ツカツカと群集(ぐんしふ)を別(わ)けてこの家(いへ)に飛(と)び込(こ)み、
250『アヽ、251お前(まへ)サンは弥次彦(やじひこ)サン与太彦(よたひこ)サンぢやないか』
252弥次彦、与太彦『ホー、253貴様(あなた)は醜(しこ)の巌窟(いはや)でお目(め)に懸(かか)つた宣伝使(せんでんし)様(さま)、254エライ所(ところ)でお目(め)にかかりました』
255 宣伝使(せんでんし)六(ろく)人(にん)は声(こゑ)を揃(そろ)へて手(て)を拍(う)ちながら、
256『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
257善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
258この世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
259心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
260唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
261直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
262身(み)の過(あやま)ちは詔直(のりなほ)せ』
263と歌(うた)ひ初(はじ)めたる。264この声(こゑ)に連(つ)れて弥次彦(やじひこ)、265与太彦(よたひこ)を初(はじ)め、266老爺(おやぢ)も婆々(ばばあ)もお竹(たけ)も、267今(いま)までの争(あらそ)ひをケロリと忘(わす)れ、268共(とも)に手(て)を拍(う)ち踊(をど)り狂(くる)ふ。
269音彦(おとひこ)『アヽ世直(よなほ)し世直(よなほ)し、270サーサ皆(みな)さまコーカス山(ざん)へ参(まゐ)りませう』
271一同(いちどう)『有難(ありがた)う』
272(大正一一・三・二一 旧二・二三 谷村真友録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→