霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 宣替(のりかへ)〔五四六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第4篇 奇窟怪巌 よみ(新仮名遣い):きくつかいがん
章:第20章 宣替 よみ(新仮名遣い):のりかえ 通し章番号:546
口述日:1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
三人は臥竜姫の館を後にして、宣伝歌を歌いながら九十九折の岩窟内を進んで行った。
岩窟内の十字路で、岩彦一行にばったりと出くわした。岩彦は三人に今までどこに行っていたのかと尋ねるが、三人の言葉使いが丁寧になっていることに気づく。岩彦は、物言いが女々しいといって、三人を責める。
岩彦はひとしきり三人の丁寧な様子をけなすが、鷹彦と梅彦は、岩彦の方こそ魂が落ち着いていないのだ、と諭し始める。
岩彦は他の宣伝使たちを腰抜けと言って罵るが、そこへ突然、大音響と共に火光が落下して爆発した。岩彦はあっと驚いてその場に昏倒してしまったが、他の五人は両手を合わせ、神言を唱えている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 18:08:38 文字数:5209 OBC :rm1320
愛善世界社版:229頁 八幡書店版:第3輯 114頁 修補版: 校定版:230頁 普及版:100頁 初版: ページ備考:
001 音彦(おとひこ)、002亀彦(かめひこ)、003駒彦(こまひこ)の三(さん)人(にん)は、004臥竜姫(ぐわりようひめ)の館(やかた)を後(あと)に見(み)て、005又(また)もや巌窟内(がんくつない)の探険(たんけん)に出(で)かけた。006九十九(つくも)折(をれ)の或(あるひ)は広(ひろ)く、007或(あるひ)は狭(せま)く、008或(あるひ)は天井(てんじやう)高(たか)く、009或(あるひ)は低(ひく)き石径(いしみち)を宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら、010勇(いさ)ましく進(すす)み行(ゆ)く。
011音、亀、駒『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
012善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
013この世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
014心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
015唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
016直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
017身(み)の過(あやま)ちは詔(の)り直(なほ)せ
018醜(しこ)の窟(いはや)の曲神(まがかみ)を
019吾(われ)等(ら)三人(みたり)の宣伝使(せんでんし)
020言向和(ことむけやは)し神(かみ)の世(よ)を
021堅磐(かきは)常磐(ときは)に立(た)てむとて
022進(すす)み来(きた)りし其(そ)の間(うち)に
023何時(いつ)か誇(ほこ)りの雲(くも)覆(おほ)ひ
024心(こころ)は暗(くら)き闇(やみ)の道(みち)
025誠(まこと)の道(みち)を踏(ふ)み迷(まよ)ひ
026夢(ゆめ)に夢見(ゆめみ)る心地(ここち)して
027心(こころ)たかぶる其(そ)の儘(まま)に
028磐樟船(いはくすぶね)に乗(の)せられて
029九天(きうてん)高(たか)く昇(のぼ)りつめ
030やつと安心(あんしん)する間(ま)なく
031喜(よろこ)び消(き)えて夢(ゆめ)の間(ま)の
032荒野(あれの)ケ原(はら)に踏(ふ)み迷(まよ)ひ
033得体(えたい)の知(し)れぬ野呂(のろ)サンに
034寂(さび)しき野辺(のべ)に廻(めぐ)り合(あ)ひ
035荒(あら)き言葉(ことば)のその中(なか)に
036神(かみ)の恵(めぐ)みの玉(たま)の声(こゑ)
037含(ふく)みあるとは知(し)らずして
038肩臂(かたひぢ)怒(いか)らし進(すす)み行(ゆ)く
039わが身(み)の程(ほど)も恥(はづか)しき
040夢(ゆめ)か現(うつつ)か幻(まぼろし)か
041心(こころ)の暗(くら)きわれわれは
042黒白(あやめ)もわかぬ闇黒(くらがり)の
043再(ふたた)び窟(いはや)の人(ひと)となり
044醜(しこ)の身魂(みたま)の数多(かずおほ)く
045前後(ぜんご)左右(さいう)に飛(と)び廻(まは)る
046中(なか)を切(き)り抜(ぬ)けやうやうに
047光(ひかり)を三叉(みまた)の道(みち)の角(かど)
048思(おも)ひがけなく衝当(つきあた)る
049痛(いた)さは痛(いた)し胸(むね)の闇(やみ)
050得体(えたい)の知(し)れぬ弥次彦(やじひこ)や
051酒(さけ)も飲(の)まぬに与太彦(よたひこ)の
052二人(ふたり)の男(をとこ)に出会(でくわ)して
053開(ひら)き兼(かね)たる石(いし)の門(もん)
054天津(あまつ)祝詞(のりと)の言霊(ことたま)に
055さつと開(ひら)いて眺(なが)むれば
056果(はて)しも知(し)らぬ長廊下(ながらうか)
057一目散(いちもくさん)に進(すす)み行(ゆ)く
058行(ゆ)けども行(ゆ)けど果(はて)しなく
059心(こころ)の駒(こま)の逸(はや)る間(ま)に
060行(ゆ)き詰(つま)りたる岩壁(いはかべ)に
061はつと気(き)がつき眺(なが)むれば
062こは抑(そ)も如何(いか)に大空(おほぞら)に
063きらめく星(ほし)の数多(かずおほ)く
064怪(あや)しみゐたる折柄(をりから)に
065玉(たま)をあざむく優姿(やさすがた)
066いづくの方(かた)か出雲姫(いづもひめ)
067フサの都(みやこ)に進(すす)まむと
068先(さき)に立(た)ちてぞ出(いで)て行(ゆ)く
069吾(われ)等(ら)三人(みたり)の宣伝使(せんでんし)
070コシの峠(たうげ)の麓(ふもと)まで
071到(いた)りて見(み)ればこは如何(いか)に
072日(ひ)の出(で)の別(わけ)の宣伝使(せんでんし)
073鷹彦(たかひこ)岩彦(いはひこ)梅彦(うめひこ)の
074四(よ)人(にん)千引(ちびき)の岩(いは)の上(へ)に
075白河(しらかは)夜船(よぶね)の夢(ゆめ)結(むす)ぶ
076あゝ嬉(うれ)しやと思(おも)ふ間(ま)も
077あらしの音(おと)に目(め)を醒(さま)し
078よくよく見(み)ればこは如何(いか)に
079臥竜(ぐわりよう)の姫(ひめ)の住(すま)ひたる
080奥(おく)の一間(ひとま)に端坐(たんざ)して
081蜥蜴(とかげ)蚯蚓(みみず)や蛇(へび)蛙(かはず)
082見(み)るも穢(きたな)きなめくぢり
083蚯蚓(みみず)の馳走(ちそう)を与(あた)へむと
084貴(うづ)の女神(めがみ)にすすめられ
085遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)の折柄(をりから)に
086三人(みたり)の身体(からだ)は鉄縛(かなしば)り
087手足(てあし)も自由(じいう)にならぬ身(み)の
088いよいよ生命(いのち)を捨鉢(すてばち)の
089決心(けつしん)したる折柄(をりから)に
090臥竜(ぐわりよう)の姫(ひめ)は忽(たちま)ちに
091優(やさ)しき笑顔(ゑがほ)を現(あら)はしつ
092水(みづ)も漏(もら)さぬ善言美詞(みやびごと)
093宣(の)り聞(きか)されし嬉(うれ)しさに
094衿(ほこら)の夢(ゆめ)も何処(どこ)へやら
095直日(なほひ)の身魂(みたま)輝(かがや)きて
096ここに館(やかた)をいづのめの
097神(かみ)の身魂(みたま)となりそめし
098三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
099そしり言(こと)の葉(は)吹(ふ)き払(はら)ひ
100みやび言葉(ことば)の神嘉言(かむよごと)
101詔(の)り直(なほ)し行(ゆ)く勇(いさ)ましさ
102朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
103月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
104たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも
105窟(いはや)の曲津(まがつ)多(おほ)くとも
106神(かみ)の賜(たま)ひし言霊(ことたま)に
107言向和(ことむけやは)し三五(あななひ)の
108神(かみ)の教(をしへ)を縦横(たてよこ)の
109錦(にしき)の機(はた)の此(こ)の仕組(しぐみ)
110仕(つか)へまつらむ宣伝使(せんでんし)
111あゝ面白(おもしろ)し面白(おもしろ)し
112心(こころ)は勇(いさ)む岩(いは)の道(みち)
113岩(いは)より堅(かた)き鋭心(とごころ)の
114大和心(やまとごころ)を振(ふ)り起(おこ)し
115伊都(いづ)の雄健(をたけ)び踏健(ふみたけ)び
116進(すす)みて行(ゆ)かむ神(かみ)の道(みち)
117進(すす)みて行(ゆ)かむ神(かみ)の道(みち)』
118と歌(うた)ひながら、119岩窟内(がんくつない)の十字路(じふじろ)に着(つ)いた。120この時(とき)前方(ぜんぱう)より現(あら)はれたる三(さん)人(にん)の男(をとこ)、
121岩彦(いはひこ)『オー貴様(きさま)は音公(おとこう)に亀公(かめこう)、122駒公(こまこう)、123何処(どこ)にまごついて居(ゐ)よつたのだい。124馬鹿(ばか)野郎(やらう)だな。125俺(おれ)たち三(さん)人(にん)は貴様(きさま)の行方(ゆくへ)を探(さが)して、126幾度(いくたび)この八衢(やちまた)の隧道(すゐだう)を廻(まは)つたことか知(し)れやしない。127一体(いつたい)何(なに)をぐづついとつたのだい』
128音彦(おとひこ)『ハイ、129コレハコレハ岩彦(いはひこ)サンでございますか。130誠(まこと)に誠(まこと)に御(ご)心配(しんぱい)をかけまして済(す)みませぬ。131私(わたくし)は日(ひ)の出別(でわけの)命(みこと)様(さま)の磐船(いはふね)に、132あなた方(がた)と一同(いちどう)に乗(の)せられて雲(くも)の上(うへ)に上(あ)げられ、133ヤレ嬉(うれ)しやと思(おも)つて居(を)りましたが、134豈(あに)図(はか)らむや何時(いつ)の間(ま)にか草(くさ)茫々(ばうばう)と生(は)え茂(しげ)る荒野(あれの)ケ原(はら)に、135吾々(われわれ)三(さん)人(にん)は振(ふ)り落(おと)されてゐました。136あなた様(さま)三(さん)人(にん)は何(ど)うして居(を)られますかと、137今(いま)の今(いま)まで心配(しんぱい)をして居(を)りましたが、138マアマア御(ご)無事(ぶじ)な御(ご)一行(いつかう)の御(お)顔(かほ)を拝(はい)しまして、139これ位(ぐらゐ)嬉(うれ)しいことはございませぬ。140これも三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)の全(まつた)くの御(お)引合(ひきあは)せ有(あ)り難(がた)うございます』
141岩彦(いはひこ)『ナアンダ。142俄(にはか)に御(ご)丁寧(ていねい)な言葉(ことば)を使(つか)ひよつて馬鹿(ばか)にするない。143礼(れい)に過(す)ぐれば却(かへ)て無礼(ぶれい)だといふことを知(し)らぬか。144打(う)つて変(かは)つた貴様(きさま)の態度(たいど)、145気(き)が狂(くる)つたのか、146但(ただし)は化物(ばけもの)か、147合点(がてん)の行(ゆ)かぬ奴(やつ)だ。148ナア梅公(うめこう)、149此奴(こいつ)はチト変痴(へんち)奇珍(きちん)だぞ』
150梅彦(うめひこ)『アーさうだ。151三(さん)人(にん)の奴(やつ)の面(つら)を見(み)い。152営養(えいやう)不良(ふりやう)、153色(いろ)蒼白(あをざ)め、154身体(しんたい)骨立(こつりつ)餓鬼(がき)の如(ごと)しだ。155巌窟内(いはやない)の瓦斯(ガス)に酔(よ)はされよつて精神(せいしん)に異状(いじやう)を来(きた)したのだらう』
156音彦(おとひこ)『コレハコレハ岩(いは)サン、157梅(うめ)サン、158決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)下(くだ)さいますな。159精神(せいしん)に異状(いじやう)を来(きた)したでも、160何(なん)でもございませぬ。161私(わたくし)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)でございますから、162ナー亀(かめ)サン、163駒(こま)サン、164些(ちつと)も気(き)が狂(くる)つてはゐませぬなア』
165亀彦(かめひこ)『左様(さやう)々々(さやう)、166岩(いは)サン梅(うめ)サンは大変(たいへん)心配(しんぱい)をして下(くだ)さるさうですが、167決(けつ)して異状(いじやう)はありませぬ、168御(ご)安心(あんしん)して下(くだ)さいませ』
169岩彦(いはひこ)『オイ梅公(うめこう)、170鷹公(たかこう)、171ますます変(へん)だ。172女郎(めらう)の腐(くさ)つたやうに俄(にはか)に糞丁寧(くそていねい)になりよつたぢやないか。173オイ音公(おとこう)、174亀公(かめこう)、175駒公(こまこう)、176貴様(きさま)等(ら)は人(ひと)を嘲弄(てうろう)するのか。177あまり馬鹿(ばか)にするない』
178亀彦(かめひこ)『イエイエ滅相(めつさう)なこと仰有(おつしや)いませ。179決(けつ)して勿体(もつたい)ない三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)を嘲弄(てうろう)ナンカしてどうして神(かみ)様(さま)に申訳(まをしわけ)が立(た)ちませう。180私(わたくし)たちは三五教(あななひけう)を天下(てんか)に宣伝(せんでん)する神(かみ)の僕(しもべ)でございます』
181岩彦(いはひこ)『ますます可笑(をか)しい奴(やつ)だ。182なぜ貴様(きさま)はさう俄(にはか)に女性(ぢよせい)的(てき)になつたのだ。183モ少(すこ)し勇壮(ゆうさう)活溌(くわつぱつ)な男性(だんせい)的(てき)の精神(せいしん)を発揮(はつき)して、184ベランメー口調(くてう)でも使(つか)つて勇(いさ)ましく噪(はしや)がぬかい。185勇気(ゆうき)がなくては大事(だいじ)は遂行(すゐかう)することは出来(でき)ないぞ。186お正(しやう)月(ぐわつ)言葉(ことば)を使(つか)ひよつて、187ナンダ。188俄(にはか)に気分(きぶん)が悪(わる)いやうな御(ご)丁寧(ていねい)な言霊(ことたま)を使(つか)ひよるのか』
189音彦(おとひこ)『ハイ、190吾々(われわれ)三(さん)人(にん)は仔細(しさい)あつて改心(かいしん)を致(いた)しました』
191岩彦(いはひこ)『改心(かいしん)をすれば、192さう女々(めめ)しくなるものぢやない。193何事(なにごと)も神(かみ)様(さま)の御(ご)保護(ほご)の下(もと)に、194活機(くわつき)臨々(りんりん)として天下(てんか)に雄飛(ゆうひ)活躍(くわつやく)せなくてはならないのだ。195貴様(きさま)は惟神(かむながら)中毒(ちうどく)をしよつて、196雨(あめ)が降(ふ)つたというては胸(むね)を躍(をど)らせ、197風(かぜ)が吹(ふ)くというては胆(きも)を潰(つぶ)し、198灯心(とうしん)の幽霊(いうれい)のやうな細(ほそ)い細(ほそ)い精神(せいしん)になりよつて、199ナンダ、200その女々(めめ)しい言霊(ことたま)は。201ちつと確(しつか)りせぬか。202元気(げんき)がつくやうに二(ふた)つ三(み)つ拳骨(げんこつ)をお見舞(みま)ひしてやらうか。203これも貴様(きさま)等(ら)を鞭撻(べんたつ)するための情(なさけ)の鞭(むち)だ』
204と云(い)ひながら、205蠑螺(さざえ)の如(ごと)き拳骨(げんこつ)を固(かた)め三(さん)人(にん)の頭(あたま)をボカボカと急速度(きふそくど)をもつて擲(なぐ)りつけた。
206音彦(おとひこ)『ご親切(しんせつ)によう思(おも)つて下(くだ)さいました。207何卒(どうぞ)これからは、208幾度(いくど)もご注意(ちうい)をして下(くだ)さいませ』
209岩彦(いはひこ)『アハーやつぱり此奴(こいつ)どうかして居(ゐ)よる。210オイ音公(おとこう)、211確(しつか)りせぬかい。212貴様(きさま)は魔(ま)に犯(をか)されたのだらう。213ナンダその態度(たいど)は』
214亀彦(かめひこ)『岩(いは)サンのご意見(いけん)は御尤(ごもつと)もでございます。215決(けつ)して無理(むり)とは申(まを)しませぬ。216併(しか)し乍(なが)ら私(わたくし)等(ら)三(さん)人(にん)は以前(いぜん)に数十倍(すうじふばい)の力(ちから)と強味(つよみ)が出来(でき)ました。217如何(いか)なる難事(なんじ)に際会(さいくわい)しても、218少(すこ)しも驚(おどろ)かぬやうになりました。219如何(いか)なる敵(てき)に向(むか)つても怯(お)めず臆(おく)せず、220善戦(ぜんせん)善闘(ぜんとう)するだけの神力(しんりき)を与(あた)へられました』
221岩彦(いはひこ)『オイ鷹公(たかこう)、222梅公(うめこう)、223一体(いつたい)合点(がてん)が行(ゆ)かぬぢやないか。224此奴(こいつ)の態度(たいど)と云(い)つたら丸(まる)で処女(しよぢよ)の如(ごと)しだ。225辛気臭(しんきくさ)くて、226長(なが)い長(なが)い口上(こうじやう)を列(なら)べ立(た)てよつて、227干瓢(かんぴよう)でもたぐるやうに、228あた辛気臭(しんきくさ)い。229骨無(ほねな)しの力(ちから)も無(な)い、230女々(めめ)しい言霊(ことたま)、231エーゲン糞(くそ)の悪(わる)い』
232鷹彦(たかひこ)『ヤア感心(かんしん)です。233音(おと)サン、234亀(かめ)サン、235駒(こま)サン、236よう其処(そこ)まで魂(たま)を研(みが)き、237強(つよ)うなつて下(くだ)さいました。238今(いま)までの三(さん)人(にん)サンとは違(ちが)つて勇気(ゆうき)も百倍(ひやくばい)いたしました。239嗚呼(ああ)それでこそ如何(いか)なる敵(てき)にも打克(うちか)つことが出来(でき)ませう。240よい修業(しうげふ)をなさいましたなア』
241音彦(おとひこ)『ご親切(しんせつ)に能(よ)く言(い)つて下(くだ)さいました。242貴方(あなた)こそ本当(ほんたう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)でございます。243以後(いご)は何卒(なにとぞ)お見捨(みすて)なくお世話(せわ)下(くだ)さいますやう御(お)願(ねが)ひ致(いた)します』
244鷹彦(たかひこ)『何(ど)う致(いた)しまして、245お三(さん)人(にん)様(さま)お芽出度(めでた)うございます。246お互様(たがひさま)に宜(よろ)しく手(て)を曳(ひ)き合(あ)うて神(かみ)の道(みち)に参(まゐ)りませう。247貴方(あなた)の方(はう)からもお見捨(みす)てなく』
248岩彦(いはひこ)『ナンダ。249鷹公(たかこう)洒落(しやれ)ない。250人(ひと)が一生(いつしやう)懸命(けんめい)に力(ちから)を付(つ)けてやらうと思(おも)つて居(ゐ)るのに、251貴様(きさま)は横車(よこぐるま)を押(お)しよつて人(ひと)を嘲弄(てうろう)するのか。252愈(いよいよ)もつて怪(け)しからぬ醜(しこ)の巌窟(いはや)式(しき)だ。253ナア梅公(うめこう)、254一体(いつたい)合点(がてん)が行(ゆ)かぬぢやないか』
255梅彦(うめひこ)『岩(いは)サン、256それは貴方(あなた)のお考(かんが)へ違(ちが)ひでございませう』
257岩彦(いはひこ)『オツト待(ま)つた待(ま)つた。258梅(うめ)の奴(やつ)、259貴様(きさま)までが逆上(ぎやくじやう)して何(ど)うするのだ。260これだから精神(せいしん)の弱(よわ)い奴(やつ)は間(ま)に合(あ)はぬのだ。261醜(しこ)の窟(いはや)の半分(はんぶん)くらゐ探険(たんけん)してこれだから、262全部(ぜんぶ)探検(たんけん)する迄(まで)にはすつかり軟化(なんくわ)して章魚(たこ)のやうに、263骨(ほね)も何(なに)も無(な)くなつて了(しま)ふかも知(し)れやせぬぞ。264オイ皆(みな)の奴(やつ)、265しつかりせぬか。266腰抜(こしぬ)け野郎(やらう)奴(め)が。267あゝコンナ腰抜(こしぬ)け野郎(やらう)を五疋(ごひき)も伴(つ)れて、268この岩(いは)サン一人(ひとり)が奮戦(ふんせん)苦闘(くとう)強敵(きやうてき)に当(あた)らねばならぬかと思(おも)へば、269心細(こころぼそ)くなつて来(く)るワイ。270エー何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も好(い)い腰抜(こしぬ)けの揃(そろ)つたものだな』
271鷹彦(たかひこ)『岩(いは)サン、272貴方(あなた)モー少(すこ)し強(つよ)くなつて下(くだ)されや。273外(そと)ばつかり強(つよ)く見(み)えても、274肝腎(かんじん)の魂(たましひ)が落(おち)ついて居(を)らねば、275まさかの時(とき)の御(お)間(ま)には合(あ)ひませぬからナア』
276岩彦(いはひこ)『エー腰抜(こしぬ)け奴(め)が、277自分(じぶん)の目(め)にある柱(はしら)は見(み)えぬでも人(ひと)の目(め)の埃(ほこり)はよう分(わか)るとは、278貴様(きさま)等(ら)のことだ。279弱味噌(よわみそ)奴(め)が。280何(なに)を吐(ぬ)かしよるのだい。281天(てん)が地(ち)となり地(ち)が天(てん)となる。282変(かは)れば変(かは)つたものだ。283弱(よわ)い者(もの)を称(しよう)して強者(きやうしや)といひ、284強(つよ)い者(もの)を称(しよう)して弱者(じやくしや)といふ。285如何(いか)に逆様(さかさま)の世(よ)の中(なか)だと云(い)つても、286見直(みなほ)し、287聞(き)き直(なほ)し、288詔(の)り直(なほ)しを宣伝(せんでん)する神(かみ)の使(つかひ)が、289さう道理(だうり)を逆転(ぎやくてん)させては何(ど)うして此(こ)のお道(みち)がひらけると思(おも)ふか。290しつかりせぬかい。291何(なに)を呆(とぼ)けてゐるのだ。292アヽ情無(なさけな)いわ。293エライ厄介(やくかい)ものを背負(せお)はされたものだワイ』
294音彦(おとひこ)『アヽ私(わたくし)も岩(いは)サンのやうに空威張(からいば)りの上手(じやうづ)な心(こころ)の弱(よわ)い御(お)方(かた)を、295神(かみ)様(さま)もナント思召(おぼしめ)してか知(し)りませぬが、296背負(せお)はして下(くだ)さつたものだ。297これも吾々(われわれ)の身魂(みたま)研(みが)きの為(ため)に、298弱(よわ)い方(かた)の標本(へうほん)をお示(しめ)し下(くだ)さつたのだらうか』
299岩彦(いはひこ)『骨無(ほねな)しの腰抜(こしぬ)け、300何(なに)を吐(ぬか)しよるのだ。301女郎(めらう)の腐(くさ)つたやうな弱音(よわね)を吹(ふ)きよつて情(なさけ)なくなつて来(き)たワイ。302オイ鷹公(たかこう)、303梅公(うめこう)、304貴様(きさま)も一(ひと)つ、305ポカンと目醒(めざま)しをくれてやらうか』
306鷹(たか)、307梅(うめ)『ハイハイ何卒(どうぞ)よろしうお願(ねが)ひ申(まを)します。308どつさりと気(き)のつくまで叩(たた)いて下(くだ)さいませ』
309岩彦(いはひこ)『ハテ合点(がてん)の行(ゆ)かぬ五(ご)人(にん)の男(をとこ)、310此奴(こいつ)ア狐(きつね)にいかれよつたな。311コンナ弱虫(よわむし)を引率(いんそつ)して悪魔(あくま)との戦闘(せんとう)は、312たうてい継続(けいぞく)されるものぢやない。313ヤーヤー困(こま)つた事(こと)になつて来(き)た。314俺(おれ)も一(ひと)つ思案(しあん)をせなくちやなるまい。315オーさうだ。316解(わか)つた。317今(いま)まで俺(おれ)は強(つよ)い強(つよ)いと思(おも)つてゐたが、318人(ひと)を杖(つゑ)について助太刀(すけだち)を頼(たの)むと云(い)ふ心(こころ)が悪(わる)かつたのだ。319その点(てん)が俺(おれ)の欠点(けつてん)であつた。320これは神(かみ)様(さま)が貴様(きさま)一人(ひとり)で活動(くわつどう)せエ。321大勢(おほぜい)の奴(やつ)を力(ちから)にしても駄目(だめ)だ。322まさかの時(とき)になつたら此(こ)の通(とほ)りだ。323何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も腰抜(こしぬ)け野郎(やらう)だ。324力(ちから)と頼(たの)むは自分(じぶん)の守護神(しゆごじん)ばつかりだ。325イヤイヤ吾身(わがみ)を守護(しゆご)し給(たま)ふ元(もと)の大神(おほかみ)様(さま)ばかりだ。326人(ひと)に頼(たよ)るな、327師匠(ししやう)を杖(つゑ)につくなといふ教(をしへ)があつたワイ。328サア俺(おれ)はモ一(ひと)つ強(つよ)うなつて神業(しんげふ)に参加(さんか)せなくてはなるまい。329それにつけても今(いま)まで寝食(しんしよく)を共(とも)にして来(き)た五(ご)人(にん)連(づ)れ、330俺(おれ)でさへも神(かみ)様(さま)から弱(よわ)いと云(い)つて戒(いまし)められて居(を)るのだから、331コンナ弱味噌(よわみそ)を吾々(われわれ)として見棄(みす)てて置(お)く訳(わけ)にも行(ゆ)かない。332アヽどうかして強(つよ)くしてやりたいものだ。333コンナ腰抜(こしぬけ)人足(にんそく)を世(よ)の中(なか)へ出(だ)したならば、334これほど悪魔(あくま)の蔓(はびこ)る荒野(あれの)ケ原(はら)であるから、335自分(じぶん)一身(いつしん)を保護(ほご)することも出来(でき)やしない。336アヽ情無(なさけな)いことだ。337大国治立(おほくにはるたち)の大神(おほかみ)様(さま)、338どうぞ此(こ)の五(ご)人(にん)のものを憐(あは)れみ下(くだ)さいまして、339貴方(あなた)のお力(ちから)を分配(ぶんぱい)してやつて下(くだ)さいませ。340九分(くぶ)九厘(くりん)といふ所(ところ)で、341十中(じつちう)の八九(はつく)まで大抵(たいてい)の宣伝使(せんでんし)は腰(こし)を抜(ぬ)かして、342屁古垂(へこた)れるものだが、343今(いま)ここに陳列(ちんれつ)してある五(ご)人(にん)の蛸(たこ)宣伝使(せんでんし)は、344目的(もくてき)の半途(はんと)にも達(たつ)せずして殆(ほとん)ど崩壊(ほうくわい)して了(しま)ひさうだ。345せめて九分(くぶ)九厘(くりん)といふ所(ところ)までなりと、346活動(くわつどう)さしてやつて下(くだ)さいませ。347国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)憐(あは)れみ玉(たま)へ、348助(たす)け玉(たま)へ。349臆病神(おくびやうがみ)を払(はら)はせ玉(たま)へ、350清(きよ)め玉(たま)へ、351岩彦(いはひこ)が真心(まごころ)を籠(こ)めての一生(いつしやう)の願(ねが)ひでございます。352惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)、353惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
354音彦(おとひこ)『アヽ岩(いは)サンのご親切(しんせつ)、355何時(いつ)の世(よ)にかは忘(わす)れませう。356流石(さすが)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、357よくも吾々(われわれ)をそこまで思(おも)つて下(くだ)さいます』
358亀彦(かめひこ)『ご親切(しんせつ)に有(あ)り難(がた)う。359骨身(ほねみ)に応(こた)へます、360嬉(うれ)しうございます』
361駒彦(こまひこ)『性(せい)は善(ぜん)なり、362人(ひと)には添(そ)うて見(み)よ、363馬(うま)には乗(の)つて見(み)よとは、364よく云(い)つたことだ。365岩(いは)サンの真心(まごころ)が現(あら)はれて大神(おほかみ)様(さま)の直接(ちよくせつ)の慈言(じげん)のやうに、366嬉(うれ)しう辱(かたじけ)なう存(ぞん)じます』
367岩彦(いはひこ)『アヽさつぱり駄目(だめ)だ。368モウ何(なに)ほど祈(いの)つたつて零点(ゼロ)だ。369アヽ止(や)みぬる哉(かな)止(や)みぬる哉(かな)。370アヽ何(なん)とせむ方(かた)泣(な)く涙(なみだ)、371余(あま)りのことで涙(なみだ)さへ出(で)ぬワイヤイ』
372鷹彦(たかひこ)『岩(いは)サンのお心遺(こころづか)ひ、373われわれ一統(いつとう)満足(まんぞく)を致(いた)しました』
374梅彦(うめひこ)『本当(ほんたう)に心(こころ)の色(いろ)が現(あら)はれて、375コンナ嬉(うれ)しいことは無(な)い。376やつぱり神(かみ)様(さま)に選(えら)ばれた宣伝使(せんでんし)様(さま)だけあつて、377ご親切(しんせつ)に報(むく)ゆるために吾々(われわれ)も、378彼(あ)の弱(よわ)い岩(いは)サンをモ一(ひと)つ強(つよ)くして上(あ)げねばなりませぬ』
379岩彦(いはひこ)『コラ梅公(うめこう)、380貴様(きさま)そら何(なに)を云(い)ふのだ。381貴様(きさま)より弱(よわ)くなつて堪(たま)らうかい。382今(いま)では俺(おれ)が一番(いちばん)気(き)が確(たしか)だ。383ここは醜(しこ)の窟(いはや)だ。384気(き)を張(は)りつめて元気(げんき)を出(だ)さぬか。385何(なに)がやつて来(く)るか知(し)れやしないぞ。386せめて自分(じぶん)だけの保護(ほご)だけ位(くらゐ)はやつて呉(く)れぬと、387俺(おれ)も十分(じふぶん)に奮闘(ふんとう)が出来(でき)はしないワイ』
388 斯(かか)る所(ところ)へ何処(いづこ)ともなく百雷(ひやくらい)の一(いち)時(じ)に落下(らくか)する如(ごと)き大音響(だいおんきやう)と共(とも)に、389巨大(きよだい)なる大火光(だいくわくわう)は一同(いちどう)の前(まへ)に落下(らくか)した途端(とたん)、390爆発(ばくはつ)して四方(しはう)八方(はつぱう)に火矢(ひや)を飛(と)ばした。
391 岩公(いはこう)はアツと言(い)うて、392その場(ば)に昏倒(こんたふ)した。393五(ご)人(にん)は依然(いぜん)として両手(りやうて)を合(あは)せ、394神言(かみごと)を奏上(そうじやう)しつつありける。
395(大正一一・三・二一 旧二・二三 外山豊二録)
396(第一五章~第二〇章 昭和一〇・三・二九 於吉野丸船室 王仁校正)
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