霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 石門開(いはとびらき)〔五四四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第4篇 奇窟怪巌 よみ(新仮名遣い):きくつかいがん
章:第18章 石門開 よみ(新仮名遣い):いわとびらき 通し章番号:544
口述日:1922(大正11)年03月20日(旧02月22日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行は、立派な石壁で築かれた館の前にやってきた。音彦は大音声に門を開けと呼ばわるが、何も起こらない。ただ門内よりかすかに琵琶の音が聞こえてくるのみである。
弥次彦と音彦が問答をしていると、門内から大声で一同を誰何する者がある。声は、門を開こう開こうと焦って教えを忘れていた宣伝使たちに注意を促した。
音彦は亀彦、駒彦に促して、慌てて神言を奏上する。すると門は易々と開いた。そこに居た巨大な男は、うわばみの野呂公だった。野呂公は臥竜姫に取り次ぐといって奥に入るが、なかなか戻ってこない。
いぶかる亀彦に、弥次彦は、門は開いたが、まだお前たちの心が開いていないのだ、と説教をする。亀彦が口答えすると、弥次彦と与太彦は一同に気をつけると、赤白の玉になって飛んでいってしまった。
一同はしびれを切らし、館の中にどかどかと進み入った。すると突然、上空が開け、日の出別の乗った天の鳥船が航行しているのが見えた。一同はいつの間にか、野天の野原に出ていた。
そこへ、出雲姫と名乗る三五教の女宣伝使が現れ、日の出別一行が、峠で待っていると言って道案内を始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 18:06:50 文字数:3045 OBC :rm1318
愛善世界社版:202頁 八幡書店版:第3輯 104頁 修補版: 校定版:203頁 普及版:88頁 初版: ページ備考:八幡版「石戸開」、愛世版・校定版「石門開」
001 巌窟内(がんくつない)に、002有(あ)り得(う)べからざるやうな立派(りつぱ)な石壁(いしかべ)をもつて囲(かこ)まれたる邸宅(ていたく)の前(まへ)に、003一行(いつかう)五(ご)人(にん)は到着(たうちやく)した。
004音彦(おとひこ)『ヨー、005立派(りつぱ)な構(かま)へだ、006而(しか)も堅牢(けんらう)な石(いし)をもつて城壁(じやうへき)を繞(めぐ)らし、007門扉(もんぴ)迄(まで)が石造(いしづくり)と来(き)て居(ゐ)るワイ。008これは容易(ようい)に侵入(しんにふ)する事(こと)は出来(でき)なからう、009琵琶(びは)の音(ね)の主(ぬし)はてつきり此処(ここ)だ。010恋女(こひをんな)の隠棲(いんせい)せる処(ところ)と思(おも)へば心臓(しんざう)の鼓動(こどう)が激(はげ)しくなつたやうだ』
011亀彦(かめひこ)『何(なに)を吐(ほざ)くのだ。012未通(おぼこ)息子(むすこ)か未通(おぼこ)娘(むすめ)のやうに、013好(い)い年(とし)をして心臓(しんざう)の鼓動(こどう)が激(はげ)しくなつたもあつたものかい、014摺枯(すれつから)しの阿婆摺(あばずれ)男(をとこ)めが』
015音彦(おとひこ)『オイオイ、016亀(かめ)サン、017ちつと場所柄(ばしよがら)を考(かんが)へて呉(く)れぬと困(こま)るぢやないか、018想思(さうし)の女(をんな)の館(やかた)の前(まへ)に来(き)てさう色男(いろをとこ)をボロクソに云(い)ふものぢやないよ』
019駒彦(こまひこ)『アハヽヽ、020困(こま)つたやつだ。021又(また)持病(ぢびやう)が再発(さいはつ)したと見(み)えるワイ、022気(き)が付(つ)くやうに拳骨(げんこつ)の頓服剤(とんぷくざい)でも盛(も)つてやらうか』
023音彦(おとひこ)『ヤアヤア、024石門(いしもん)をもつて四辺(しへん)を築固(つきかた)めたるこれの棲(す)み家(か)、025てつきり曲津(まがつ)の巣窟(そうくつ)と覚(おぼ)えたり。026吾(われ)等(ら)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、027敬神(けいしん)愛民(あいみん)の大道(だいだう)を天下(てんか)に宣布(せんぷ)し、028善(ぜん)を勧(すす)め悪(あく)を懲(こら)す神司(かむつかさ)なるぞ。029尋(たづ)ね問(と)ふべき仔細(しさい)あり、030一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)門(もん)開(ひら)けよ』
031と大音声(だいおんぜう)に呼(よば)はつた。032門内(もんない)には何(なん)の応答(いらへ)もなく森閑(しんかん)と静(しづ)まり返(かへ)つて居(ゐ)る。033只(ただ)幽(かすか)に琵琶(びは)の音(ね)の漏(も)れ来(きた)るのみである。
034弥次彦(やじひこ)『モシモシ、035宣伝使(せんでんし)さま、036この館(やかた)の人間(にんげん)は、037何(ど)れも之(これ)も皆(みな)聾神(つんぼがみ)さまばかりですから呼(よ)んだつてあきませぬよ。038そこは此(この)弥次(やじ)サンでなくては、039この神秘(しんぴ)の門扉(もんぴ)を開(ひら)く事(こと)は不可能(ふかのう)だ』
040音彦(おとひこ)『如何(どう)して開(ひら)くのだ、041云(い)つて呉(く)れないか』
042弥次彦(やじひこ)『最前(さいぜん)も云(い)つた通(とほ)り、043要領(えうりやう)を得(え)なくては要領(えうりやう)を得(え)させないのですから』
044音彦(おとひこ)『何(なん)だか不得(ふとく)要領(えうりやう)な事(こと)を云(い)ふ男(をとこ)だ。045金(かね)でも呉(く)れと云(い)ふのか』
046弥次彦(やじひこ)『マアソンナものかい、047お前(まへ)さまは狡(ずる)い人(ひと)だから。048要領(えうりやう)を得度(えた)いと云(い)へば大抵(たいてい)極(きま)つたものだ。049聾(つんぼ)の真似(まね)をして居(ゐ)るから、050それがホントの金聾(かなつんぼ)と云(い)ふのだ』
051音彦(おとひこ)『あまり馬鹿(ばか)らしいから止(や)めとかうかい、052如何(どう)なつと工夫(くふう)をすれば開(あ)くであらう。053聾(つんぼ)の神(かみ)と云(い)よつたからには、054大方(おほかた)竜神(りうじん)だらう、055聾(つんぼ)と云(い)ふ字(じ)は龍(りう)の耳(みみ)と書(か)くから、056これやてつきり長(なが)さまに相違(さうゐ)はない、057ヨシヨシ、058かう分(わか)つた以上(いじやう)は弥次(やじ)サンのお世話(せわ)にはなりますまい』
059この時(とき)門内(もんない)より大声(おほごゑ)に、
060(野呂公)『吾(わが)門前(もんぜん)に来(きた)つてブツブツ囁(ささや)く奴(やつ)は何者(なにもの)だ』
061音彦(おとひこ)『ヤアその方(はう)は、062聾神(つんぼがみ)の竜神(りうじん)か、063耳(みみ)が聞(きこ)えねば目(め)で聞(き)け、064某(それがし)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)音彦(おとひこ)、065亀彦(かめひこ)、066駒彦(こまひこ)の一行(いつかう)だ。067直(ただち)に門戸(もんこ)を開(ひら)いて吾々(われわれ)を歓迎(くわんげい)致(いた)せ』
068 門内(もんない)より、
069(野呂公)『アハヽヽヽ、070ウラル教(けう)のヘボ宣伝使(せんでんし)、071竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)に三(さん)年(ねん)の間(あひだ)宣伝(せんでん)を試(こころ)み、072櫛風(しつぷう)沐雨(もくう)の苦心(くしん)惨憺(さんたん)的(てき)活動(くわつどう)も残(のこ)らず水泡(すゐはう)に帰(き)し、073アーメニヤに向(むか)つて心細(こころぼそ)くも帰(かへ)らむとする途中(とちう)颶風(ぐふう)に遇(あ)ひ、074又(また)もや森林(しんりん)の中(なか)に一夜(いちや)を明(あ)かし、075肝玉(きもたま)を押潰(おしつぶ)され、076しよう事(こと)なしに、077三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)した、078垢(あか)の抜(ぬ)けぬ宣伝使(せんでんし)の音(おと)、079亀(かめ)、080駒(こま)の三(さん)人(にん)か。081よくも、082ノメノメと出(で)て来(き)たなア、083盲目(めくら)蛇(へび)に怖(おぢ)ずとは汝(なんぢ)の事(こと)だ。084アハヽヽヽ』
085音彦(おとひこ)『エイ、086矢釜敷(やかまし)いワイ。087一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)門(もん)を開(ひら)かぬか、088此(この)方(はう)にも考(かんが)へがあるぞ』
089 門内(もんない)より、
090(野呂公)『アハヽヽヽ、091分(わか)らぬ奴(やつ)だ。092神秘(しんぴ)の門(もん)は汝(なんぢ)自(みづか)ら汝(なんぢ)の力(ちから)をもつて開(ひら)くべきものだ。093少(すこ)しの労(らう)を惜(をし)み、094他人(たにん)に開門(かいもん)させむとは狡猾(かうくわつ)至極(しごく)の汝(なんぢ)の挙動(ふるまひ)、095神秘(しんぴ)の鍵(かぎ)を持(も)ち忘(わす)れたか』
096音彦(おとひこ)『ヤア、097此奴(こいつ)中々(なかなか)洒落(しやれ)た事(こと)を云(い)ふワイ、098オヽさうだ。099これ位(くらゐ)の石門(せきもん)が開(ひら)けないやうな事(こと)で、100どうして天(あま)の岩戸(いはと)開(びら)きの神業(しんげふ)が勤(つと)まらうか、101さうだ、102さうだ。103余(あま)り開門(かいもん)ばかりに精神(せいしん)を傾注(けいちゆう)して肝腎(かんじん)の神言(かみごと)を忘(わす)れて居(ゐ)た。104ヤア尤(もつと)も千万(せんばん)なお言葉(ことば)だ。105サア亀公(かめこう)、106駒公(こまこう)、107神言(かみごと)だ』
108と云(い)ひながら神言(かみごと)を奏上(そうじやう)する。109祝詞(のりと)が終(をは)ると共(とも)に、110さしも堅牢(けんらう)なる石門(せきもん)は音(おと)もなく易々(やすやす)と左右(さいう)に開(ひら)いた。
111音彦(おとひこ)『アヽ祝詞(のりと)の通(とほ)りだ。112如此(かく)宣(の)らば、113天津(あまつ)神(かみ)は天(あま)の磐戸(いはと)を推披(おしひら)きて、114天(あめ)の八重雲(やへくも)を伊頭(いづ)の千別(ちわき)に千別(ちわき)て所聞召(きこしめ)さむ、115国津(くにつ)神(かみ)は高山(たかやま)の末(すゑ)短山(ひきやま)の末(すゑ)に上(のぼ)り坐(まし)て、116高山(たかやま)の伊保理(いほり)短山(ひきやま)の伊保理(いほり)を掻分(かきわけ)て所聞召(きこしめ)さむと云(い)ふ神言(かみごと)の実現(じつげん)だ。117サアこれで一切(いつさい)の秘訣(ひけつ)を悟(さと)つた。118一(いち)にも祝詞(のりと)、119二(に)にも祝詞(のりと)だ。120なア亀(かめ)サン、121駒(こま)サン』
122 亀(かめ)、123駒(こま)無言(むごん)の儘(まま)俯向(うつむ)く。124音彦(おとひこ)は門内(もんない)に佇(たたず)む大男(おほをとこ)の姿(すがた)を見(み)て、
125音彦(おとひこ)『ヤアお前(まへ)は夢(ゆめ)にみた蠎(うはばみ)の野呂公(のろこう)ぢやないか、126どうして此処(ここ)に居(ゐ)たのだ』
127野呂公(のろこう)『夢(ゆめ)と云(い)へば夢(ゆめ)、128現(うつつ)と云(い)へば現(うつつ)、129どうせ今(いま)の人間(にんげん)は誰(たれ)も彼(かれ)も夢(ゆめ)の浮世(うきよ)に夢(ゆめ)を見(み)て居(ゐ)るのだ。130確(しつか)りした奴(やつ)は目薬(めぐすり)にする程(ほど)もあるものぢやない。131それでも三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だと思(おも)へば仏壇(ぶつだん)の底(そこ)ぬけぢやないが、132悲(かな)しうて目(め)から阿弥陀(あみだ)が落(お)ちるワイ、133アハヽヽヽ』
134音彦(おとひこ)『何(なに)は兎(と)もあれ、135臥竜姫(ぐわりようひめ)に先刻(せんこく)お目(め)にかかつた色男(いろをとこ)の音彦(おとひこ)サンが御(ご)来臨(らいりん)ぢやと、136報告(はうこく)して呉(く)れ』
137野呂公(のろこう)『エヽ仕方(しかた)がない、138今(いま)直(すぐ)に申上(まをしあげ)て来(く)るから、139御(ご)返事(へんじ)のある迄(まで)は此処(ここ)に神妙(しんめう)に立(た)つて居(ゐ)るのだ。140一寸(ちよつと)でも許(ゆる)しの無(な)いに此方(こつち)に這入(はい)つてはいかないぞ』
141と云(い)ひながら野呂公(のろこう)は姿(すがた)を隠(かく)した。
142亀彦(かめひこ)『野呂公(のろこう)の奴(やつ)いつ迄(まで)かかつて居(ゐ)るのだらう。143何(なに)ほど奥(おく)が深(ふか)いと云(い)つても知(し)れたものだが、144随分(ずゐぶん)じらしよるぢやないか。145ヤア弥次彦(やじひこ)、146与太彦(よたひこ)大(おほい)に憚(はばか)りさまだつた。147お蔭(かげ)で門(もん)はお手(て)のもので開(ひら)きました』
148弥次彦(やじひこ)『門(もん)は開(ひら)いても、149開(ひら)かぬのはお前(まへ)の心(こころ)だ。150可憐(かわい)さうなものだよ』
151亀彦(かめひこ)『無形(むけい)的(てき)精神(せいしん)の門戸(もんこ)が開(ひら)けたか、152開(ひら)けぬか、153ソンナ事(こと)がどうして観測(くわんそく)出来(でき)るか、154精神(せいしん)上(じやう)の事(こと)が、155体主(たいしゆ)霊従(れいじう)的(てき)人物(じんぶつ)に分(わか)つて耐(たま)らうかい。156二言目(ふたことめ)には要領(えうりやう)だとか、157何(なん)とか云(い)つて手(て)を出(だ)し、158物質欲(ぶつしつよく)に憂身(うきみ)を窶(やつ)す代物(しろもの)に吾々(われわれ)の思想(しさう)上(じやう)の明暗(めいあん)が分(わか)らう筈(はず)がない。159余計(よけい)な無駄口(むだぐち)を叩(たた)くな』
160弥次彦(やじひこ)『アハヽヽヽ、161さつぱり分(わか)らぬ宣伝使(せんでんし)だ。162弥次彦(やじひこ)、163与太彦(よたひこ)の御(ご)両人(りやうにん)さまは如何(いか)なるお方(かた)と心得(こころえ)て居(ゐ)るか。164後(あと)で吃驚(びつくり)して泡(あわ)を吹(ふ)くなよ』
165と云(い)ひながら、166忽(たちま)ち赤白(あかしろ)の二(ふた)つの玉(たま)となつてブーンと唸(うな)りをたてて何処(どこ)ともなくかけ去(さ)つた。
167音彦(おとひこ)『ヤア何(なん)だ。168彼奴(あいつ)は唯(ただ)の代物(しろもの)では無(な)かつたやうだ。169それにしても野呂公(のろこう)の奴(やつ)、170何時迄(いつまで)のろのろと埒(らち)の明(あ)かぬ事(こと)だらう、171アーア何事(なにごと)も自分(じぶん)がやらねば人頼(ひとだよ)りにしては埒(らち)が明(あ)かぬものだ。172オイ亀公(かめこう)、173駒公(こまこう)、174何(なに)も躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)するに及(およ)ばない。175此方(こちら)から出(で)かけて行(い)かうぢやないか。176如何(いか)なる秘密(ひみつ)が包蔵(はうざう)されてあるか知(し)れないから、177十分(じふぶん)気(き)をつけて進(すす)む事(こと)にしよう。178この臥竜姫(ぐわりようひめ)の正体(しやうたい)を見届(みとど)けた者(もの)が、179金鵄(きんし)勲章(くんしやう)功一級(こういつきふ)、180勲一等(くんいつとう)だ。181サアサア構(かま)ふ事(こと)はない、182前進(ぜんしん)々々(ぜんしん)、183突喊(とつかん)々々(とつかん)』
184と、185足(あし)を揃(そろ)へて玄関(げんくわん)目蒐(めが)けて掛登(かけのぼ)つた。186目(め)も届(とど)かぬばかりの長(なが)い廊下(らうか)を九十九(つづら)折(をれ)に曲(まが)りながら、187足音(あしおと)荒(あら)くドンドンと進(すす)み行(ゆ)く。
188音彦(おとひこ)『ヤア何(なん)だ、189誰(たれ)も居(ゐ)ないぢやないか、190ピタツと岩(いは)に行(ゆ)き詰(つま)つて了(しま)つた。191マアマア此処(ここ)に寛(ゆつ)くり気(き)を落(おち)つけて第二(だいに)の策戦(さくせん)計画(けいくわく)に移(うつ)らうぢやないか』
192音(おと)(空(そら)を仰(あふ)いで)
193音彦『ヤア巌窟(がんくつ)に似合(にあは)ぬ非常(ひじやう)に高(たか)い天井(てんじやう)だ。194ヤアヤア日(ひ)の出別(でわけ)の宣伝使(せんでんし)が天(あま)の鳥船(とりふね)に乗(の)つて推進機(すゐしんき)の音(おと)高(たか)く、195航空(かうくう)して居(ゐ)るぢやないか』
196 この時(とき)前方(ぜんぱう)より柔(やさ)しき女(をんな)の宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)え来(き)たる。
197亀彦(かめひこ)『ヤア駒公(こまこう)、198これや大変(たいへん)だ、199野天(のてん)ぢやないか』
200駒彦(こまひこ)『ホンニホンニ、201路傍(ろばう)の岩(いは)の上(うへ)だ。202合点(がてん)の行(ゆ)かぬ事(こと)だなア』
203 女(をんな)宣伝使(せんでんし)は、204チヨクチヨクと三(さん)人(にん)の前(まへ)に進(すす)み来(きた)り、
205女(をんな)『ヤア貴方(あなた)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)で御座(ござ)いますか、206只今(ただいま)日(ひ)の出別(でわけ)の宣伝使(せんでんし)様(さま)が三(さん)人(にん)の男女(なんによ)の宣伝使(せんでんし)と共(とも)に、207コシの峠(たうげ)の麓(ふもと)に馬(うま)の用意(ようい)をしてお待(ま)ち受(う)けです』
208音彦(おとひこ)『ヤアこれは合点(がてん)の行(ゆ)かぬ、209テツキリ巌窟(がんくつ)の中(なか)だと思(おも)つて居(ゐ)たのに、210果(はて)しもなき荒野原(あれのはら)。211さう云(い)ふ貴女(あなた)は何(いづ)れの神(かみ)様(さま)か』
212女(をんな)『ハイ、213私(わたくし)は聖地(せいち)エルサレムの者(もの)で、214黄金山(わうごんざん)の埴安彦(はにやすひこ)の神(かみ)様(さま)の教(をしへ)を伝(つた)ふる三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)出雲姫(いづもひめ)と申(まを)すもの、215長途(ちやうと)の宣伝(せんでん)ご苦労(くらう)で御座(ござ)いました。216サアどうぞ妾(わらは)に随(つい)て此方(こちら)へお越(こ)し下(くだ)さいまし、217寛(ゆつ)くり休息(きうそく)の上(うへ)海山(うみやま)のお話(はなし)を交換(かうくわん)いたしませう。218左様(さやう)ならばお先(さき)に失礼(しつれい)』
219と云(い)ひながら先(さき)に立(た)つて草(くさ)生茂(おひしげ)る野路(のぢ)をトボトボと歩(あゆ)み行(ゆ)く。220三(さん)人(にん)はその後(あと)について怪訝(くわいが)の念(ねん)に駆(か)られつつ進(すす)み行(ゆ)く。
221(大正一一・三・二〇 旧二・二二 加藤明子録)
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