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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第13巻(子の巻)
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総説
第1篇 勝利光栄
第1章 言霊開
第2章 波斯の海
第3章 波の音
第4章 夢の幕
第5章 同志打
第6章 逆転
第2篇 洗礼旅行
第7章 布留野原
第8章 醜の窟
第9章 火の鼠
第3篇 探険奇聞
第10章 巌窟
第11章 怪しの女
第12章 陥穽
第13章 上天丸
第4篇 奇窟怪巌
第14章 蛙船
第15章 蓮花開
第16章 玉遊
第17章 臥竜姫
第18章 石門開
第19章 馳走の幕
第20章 宣替
第21章 本霊
第5篇 膝栗毛
第22章 高加索詣
第23章 和解
第24章 大活躍
信天翁(三)
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> 第4篇 奇窟怪巌 > 第17章 臥竜姫
<<< 玉遊
(B)
(N)
石門開 >>>
第一七章
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
〔五四三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第4篇 奇窟怪巌
よみ(新仮名遣い):
きくつかいがん
章:
第17章 臥竜姫
よみ(新仮名遣い):
がりょうひめ
通し章番号:
543
口述日:
1922(大正11)年03月20日(旧02月22日)
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
三人(音彦、亀彦、駒彦)は引き続き岩窟の中を進んで行くと、どこからともなく琵琶の音が聞こえてきた。三人は、琵琶を弾いているのは先ほど光の中から現れた美人ではないかと無駄話をしながら、三叉路までやってきた。
すると曲がり角から一人の男が勢い余ってやってきて、音彦とぶつかった。男は弥次彦と名乗り、醜の岩窟の主人だとうそぶく。後から連れの与太彦も現れた。音彦は例によって喧嘩口調で対している。
弥次彦と与太彦は、三人が宣伝使と見ると喧嘩をやめて、美人のところへ案内しましょう、と言う。琵琶を弾いている美人は、臥竜姫と言って、エルサレムの高貴な神の娘であるという。
弥次彦と与太彦は、三人を臥竜姫の館の前まで案内した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-04-14 14:11:47
OBC :
rm1317
愛善世界社版:
195頁
八幡書店版:
第3輯 102頁
修補版:
校定版:
196頁
普及版:
84頁
初版:
ページ備考:
001
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
又
(
また
)
もや
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
002
何所
(
どこ
)
ともなく
微妙
(
びめう
)
な
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
003
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
妖怪窟
(
えうくわいくつ
)
の
探険
(
たんけん
)
丈
(
だ
)
けあつて
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
余興
(
よきよう
)
を
見聞
(
けんぶん
)
させられるワイ。
004
之
(
これ
)
が
吾々
(
われわれ
)
の
役徳
(
やくとく
)
と
云
(
い
)
ふ
物
(
もの
)
だ。
005
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
微妙
(
びめう
)
な
音楽
(
おんがく
)
ぢやないか。
006
要
(
えう
)
するに、
007
察
(
さつ
)
するに、
008
つらつら
鑑
(
かんがみ
)
るに………』
009
駒彦
(
こまひこ
)
『
何
(
なん
)
だ、
010
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
な
論法
(
ロジツク
)
を
陳列
(
ちんれつ
)
しよつて、
011
此処
(
ここ
)
は
博覧会
(
はくらんくわい
)
とは
違
(
ちが
)
ふぞ』
012
音彦
(
おとひこ
)
『
枕
(
まくら
)
言葉
(
ことば
)
なしに
開陳
(
かいちん
)
する
事
(
こと
)
は、
013
少
(
すこ
)
しく
勿体
(
もつたい
)
ない
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
ふのだ。
014
こいつは
的切
(
てつきり
)
白煙
(
はくえん
)
の
中
(
なか
)
から、
015
玉
(
たま
)
となつて
現
(
あら
)
はれたやや
神経質
(
しんけいしつ
)
な、
016
ナイスが
弾
(
だん
)
ずるのに
相違
(
さうゐ
)
は
無
(
な
)
いわ。
017
小督
(
こごう
)
の
局
(
つぼね
)
の
所在
(
ありか
)
は
何処
(
どこ
)
ぢやと、
018
行衛
(
ゆくゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねた
罪
(
つみ
)
な
男
(
をとこ
)
ぢやないが、
019
峰
(
みね
)
の
嵐
(
あらし
)
か
松風
(
まつかぜ
)
か、
020
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
の
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
か、
021
駒
(
こま
)
と
亀
(
かめ
)
とが
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
して
聞
(
き
)
くからに、
022
爪音
(
つまおと
)
しるき
想夫憐
(
さうふれん
)
と
云
(
い
)
ふ
調子
(
てうし
)
だ。
023
此
(
この
)
音
(
おと
)
サンの
眉目
(
びもく
)
清秀
(
せいしう
)
なる
好男子
(
かうだんし
)
を、
024
チラと
一瞥
(
いちべつ
)
して、
025
ニタリと
微笑
(
びせう
)
を
浮
(
うか
)
べ、
026
新月
(
しんげつ
)
の
眉
(
まゆ
)
の
下
(
した
)
から
緑
(
みどり
)
滴
(
したた
)
る
涼
(
すず
)
しき
眼
(
め
)
を、
027
ジヤイロコンパスの
様
(
やう
)
に
急速力
(
きふそくりよく
)
を
以
(
もつ
)
て
廻転
(
くわいてん
)
し
電波
(
でんぱ
)
を
発射
(
はつしや
)
し、
028
この
音
(
おと
)
サンをチャームした
天女
(
てんによ
)
に
間違
(
まちがひ
)
ないぞ、
029
この
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
は、
030
音
(
おと
)
が
違
(
ちが
)
うのだ、
031
音
(
ね
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
は
音
(
おと
)
サンの
音
(
おと
)
だ、
032
一言
(
ひとこと
)
も
聞
(
き
)
き
おと
さぬ
様
(
やう
)
に
聴聞
(
ちやうもん
)
したがよからうぞ』
033
駒彦
(
こまひこ
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しよるのだ、
034
己惚
(
うぬぼれ
)
の
強
(
つよ
)
いにも
程
(
ほど
)
がある。
035
長茄子
(
ながなすび
)
にハンモツクを
着
(
き
)
せた
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
をしよつて、
036
美人
(
びじん
)
も
糞
(
くそ
)
もあつたものかい、
037
宣伝使
(
せんでんし
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
の
務
(
つと
)
めさへすれば
宜
(
よ
)
いのだ』
038
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽヽ、
039
自称
(
じしよう
)
好男子
(
かうだんし
)
、
040
色々
(
いろいろ
)
の
下馬評
(
げばひやう
)
を
否
(
いな
)
熱望
(
ねつばう
)
的
(
てき
)
気焔
(
きえん
)
を
上
(
あ
)
げて
見
(
み
)
た
処
(
ところ
)
で
磯
(
いそ
)
の
鮑
(
あはび
)
の
片思
(
かたおも
)
ひだ、
041
長持
(
ながもち
)
の
蓋
(
ふた
)
だ、
042
こちらはあいても、
043
向
(
むか
)
ふはあかぬとけつかるワイ』
044
音彦
(
おとひこ
)
『
貴様
(
きさま
)
は
黙
(
だま
)
つて
伏艇
(
ふくてい
)
して
居
(
を
)
れば
宜
(
よ
)
いのだよ。
045
ウカウカと
水面
(
すゐめん
)
に
浮上
(
ふじやう
)
すると、
046
浮流
(
ふりう
)
水雷
(
すゐらい
)
に
掛
(
かか
)
つて
爆発
(
ばくはつ
)
するぞ』
047
亀彦
(
かめひこ
)
『ハヽア、
048
たうとう
桜島
(
さくらじま
)
ぢやないが、
049
疳癪玉
(
かんしやくだま
)
を
破裂
(
はれつ
)
させよつた。
050
憤怨
(
ふんゑん
)
万丈
(
ばんぢやう
)
近付
(
ちかづ
)
く
可
(
べ
)
からずと
云
(
い
)
ふ
音公
(
おとこう
)
サンの
物凄
(
ものすご
)
い
権幕
(
けんまく
)
、
051
女
(
をんな
)
の
話
(
はなし
)
をしても
直
(
ただち
)
に
真赤
(
まつか
)
になつて、
052
鼻息
(
はないき
)
荒
(
あら
)
く、
053
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
斜
(
ななめ
)
なりだから
困
(
こま
)
つたものだ。
054
アハヽヽ』
055
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
は
益々
(
ますます
)
冴
(
さ
)
えて
来
(
く
)
る。
056
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
無駄口
(
むだぐち
)
を
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
057
三叉路
(
さんさろ
)
に
停立
(
ていりつ
)
して、
058
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め
旁
(
かたがた
)
興味
(
きようみ
)
がつて
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
る。
059
突然
(
いきなり
)
曲
(
まが
)
り
角
(
かど
)
よりやつて
来
(
き
)
て、
060
ドンと
行
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
つた
荒男
(
あらをとこ
)
、
061
勢
(
いきほひ
)
余
(
あま
)
つてどつと
尻餅
(
しりもち
)
をつき、
062
弥次彦
『ヤア
何処
(
どこ
)
の
何奴
(
どいつ
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
063
此
(
この
)
醜
(
しこ
)
の
窟
(
いはや
)
に
無断
(
むだん
)
に
侵入
(
しんにふ
)
して
来
(
き
)
よつて、
064
道路神
(
だうろじん
)
の
様
(
やう
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
て
俺
(
おれ
)
を
刎飛
(
はねと
)
ばしよつた。
065
オイ、
066
奴盲目
(
どめくら
)
奴
(
め
)
が、
067
尠
(
ちつ
)
と
注意
(
ちうい
)
を
払
(
はら
)
はぬかい』
068
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
か
知
(
し
)
らないが、
069
吾輩
(
わがはい
)
の
胸板
(
むないた
)
に
衝突
(
しようとつ
)
しよつて
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
な、
070
何故
(
なぜ
)
早速
(
さつそく
)
に
謝罪
(
しやざい
)
を
致
(
いた
)
さぬか』
071
弥次彦
『
何
(
なん
)
だい、
072
人
(
ひと
)
を
突
(
つ
)
き
飛
(
と
)
ばして
置
(
お
)
き
乍
(
なが
)
ら
謝罪
(
しやざい
)
も
糞
(
くそ
)
もあつたものかい。
073
俺
(
おれ
)
を
何誰
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
るか、
074
醜
(
しこ
)
の
窟
(
いはや
)
の
御
(
ご
)
守護神
(
しゆごじん
)
、
075
弥次彦
(
やじひこ
)
サンとは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だ。
076
オイ
与太彦
(
よたひこ
)
、
077
貴様
(
きさま
)
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
る、
078
此奴
(
こいつ
)
を
一
(
ひと
)
つ
打撲
(
ぶんなぐ
)
つて
呉
(
く
)
れ。
079
如何
(
いか
)
に
世
(
よ
)
が
変
(
かは
)
るとはいへ、
080
被害者
(
ひがいしや
)
が
加害者
(
かがいしや
)
に
御
(
お
)
詑
(
わび
)
をすると
云
(
い
)
ふ
現行
(
げんかう
)
法律
(
はふりつ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるものか』
081
音彦
(
おとひこ
)
『アハヽヽヽ、
082
此奴
(
こいつ
)
なかなか
威張
(
ゐば
)
りよる。
083
一寸
(
ちよつと
)
容易
(
ようい
)
には、
084
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
085
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
対
(
たい
)
しても
閉口
(
へいこう
)
頓死
(
とんし
)
をやり
腐
(
くさ
)
らぬワイ』
086
弥次彦
(
やじひこ
)
『エヽ
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い、
087
閉口
(
へいこう
)
頓死
(
とんし
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
088
トンチキ
野郎
(
やらう
)
奴
(
め
)
』
089
与太彦
(
よたひこ
)
『
何
(
なん
)
だか
善悪
(
ぜんあく
)
の
標準
(
へうじゆん
)
がトント
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
たワイ、
090
突
(
つ
)
き
飛
(
とば
)
し
得
(
どく
)
の、
091
突
(
つ
)
き
飛
(
とば
)
され
損
(
ぞん
)
ぢや。
092
ヤア
弥次
(
やじ
)
、
093
これが
時代
(
じだい
)
思潮
(
してう
)
だ。
094
神
(
かみ
)
も
時節
(
じせつ
)
には
叶
(
かな
)
はぬから、
095
マア
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
りにする
方
(
はう
)
が
無難
(
ぶなん
)
で
宜
(
よ
)
からう、
096
時勢
(
じせい
)
に
逆行
(
ぎやくかう
)
すると
第一
(
だいいち
)
〇〇
主義
(
しゆぎ
)
だと
云
(
い
)
はれるからな』
097
弥次彦
(
やじひこ
)
『
宣伝使
(
せんでんし
)
といふ
立派
(
りつぱ
)
な
保護色
(
ほごしよく
)
に
包
(
つつ
)
まれた
御
(
お
)
方
(
かた
)
を
相手
(
あひて
)
にしたつて
仕方
(
しかた
)
がない。
098
それよりも、
099
なんとか
云
(
い
)
つて
暴利
(
ぼ
)
る
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へ
様
(
やう
)
ぢやないか。
100
突
(
つ
)
き
飛
(
とば
)
されても
自分
(
じぶん
)
で
転
(
こけ
)
たと
思
(
おも
)
へば
総
(
すべ
)
ての
問題
(
もんだい
)
は
自然
(
しぜん
)
消滅
(
せうめつ
)
だ。
101
モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
さま、
102
いま
迄
(
まで
)
の
事
(
こと
)
は
互
(
たがひ
)
に
川
(
かは
)
へ
流
(
なが
)
しませう。
103
然
(
しか
)
し
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
りますぜ』
104
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
早速
(
さつそく
)
の
解決
(
かいけつ
)
、
105
流石
(
さすが
)
は
醜
(
しこ
)
の
窟
(
いはや
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
丈
(
だけ
)
あつて
良
(
よ
)
く
捌
(
さば
)
けたものだ。
106
ドンナ
事
(
こと
)
があるのだ、
107
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
へまいか』
108
弥次彦
(
やじひこ
)
『それは
大変
(
たいへん
)
に
ぼろい
事
(
こと
)
ですよ、
109
木
(
き
)
に
餅
(
もち
)
が
実
(
な
)
ると
云
(
い
)
はうか、
110
瓜
(
うり
)
の
蔓
(
つる
)
に
小判
(
こばん
)
がガチヤガチヤ、
111
処
(
ところ
)
狭
(
せま
)
き
迄
(
まで
)
実
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るのを、
112
ずらりと
占領
(
せんりやう
)
した
様
(
やう
)
な
ぼろい
事
(
こと
)
です。
113
結構
(
けつこう
)
な
宝
(
たから
)
を、
114
地
(
ち
)
に
委
(
ゐ
)
して、
115
放
(
ほか
)
して
居
(
を
)
るのも
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かない。
116
吾々
(
われわれ
)
も
尠
(
ちつ
)
と
其
(
その
)
分配
(
ぶんぱい
)
を
受
(
う
)
けたいものだが
其
(
その
)
宝
(
たから
)
を
拾
(
ひろ
)
ふ
人間
(
にんげん
)
が
無
(
な
)
いので
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
117
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
な
立派
(
りつぱ
)
な
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
なら
屹度
(
きつと
)
ばつ
があふだらう。
118
何分
(
なにぶん
)
吾々
(
われわれ
)
は
天来
(
てんらい
)
の
醜男
(
ぶをとこ
)
だから、
119
こちらから
何程
(
なにほど
)
速射砲
(
そくしやはう
)
的
(
てき
)
電波
(
でんぱ
)
を
直射
(
ちよくしや
)
しても、
120
先方
(
せんぱう
)
の
受電機
(
じゆでんき
)
が
悪
(
わる
)
いのか、
121
こちらの
機械
(
きかい
)
が
不完全
(
ふくわんぜん
)
なのか、
122
一向
(
いつかう
)
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
ない。
123
お
前
(
まへ
)
サンならば
第一
(
だいいち
)
押
(
お
)
し
尻
(
けつ
)
も
強
(
つよ
)
いし、
124
一寸
(
ちよつと
)
人間
(
にんげん
)
らしい
面付
(
つらつ
)
きもしてゐるから、
125
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
も、
126
猫
(
ねこ
)
に
鰹節
(
かつをぶし
)
を
見
(
み
)
せた
様
(
やう
)
に、
127
咽
(
のど
)
を
鳴
(
なら
)
して
飛
(
と
)
び
付
(
つ
)
く
事
(
こと
)
は、
128
請合
(
うけあひ
)
ではない
事
(
こと
)
はないワイ』
129
音彦
(
おとひこ
)
『その
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
と
云
(
い
)
ふのは
一体
(
いつたい
)
何者
(
なにもの
)
だ』
130
弥次彦
(
やじひこ
)
『その
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
る
位
(
くらゐ
)
なら
吾々
(
われわれ
)
も
今迄
(
いままで
)
苦労
(
くらう
)
はしないのだ。
131
然
(
しか
)
し
何
(
なん
)
でも、
132
エルサレムとかの
立派
(
りつぱ
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
娘御
(
むすめご
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ』
133
音彦
(
おとひこ
)
『さうして
其
(
その
)
姫
(
ひめ
)
の
所在
(
ありか
)
は
何処
(
どこ
)
だ』
134
弥次彦
(
やじひこ
)
『それを
云
(
い
)
つては
吾々
(
われわれ
)
の
暴利
(
ぼ
)
る
種
(
たね
)
が
無
(
な
)
くなる、
135
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
さして
貰
(
もら
)
はうかい。
136
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
ない
内
(
うち
)
は、
137
私
(
わたくし
)
だつて
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
させる
訳
(
わけ
)
にはいかないのだ』
138
亀彦
(
かめひこ
)
『オイオイ
男
(
をとこ
)
[
※
この「男」とは弥次彦ではなく音彦を指している。
]
、
139
貴様
(
きさま
)
の
面
(
つら
)
は
何
(
なん
)
だ。
140
目
(
め
)
迄
(
まで
)
細
(
ほそ
)
くしよつて、
141
コンナ
奴
(
やつ
)
に
関係
(
かかりあ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
時機
(
じき
)
ぢやあるまい、
142
ナア
駒公
(
こまこう
)
』
143
駒彦
(
こまひこ
)
『オーさうぢやさうぢや、
144
音公
(
おとこう
)
では
到底
(
たうてい
)
不合格
(
ふがふかく
)
だ。
145
宜
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
前進
(
ぜんしん
)
する
事
(
こと
)
にしよう。
146
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
147
あの
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
を
合図
(
あひづ
)
に
行
(
ゆ
)
けば
好
(
い
)
いのだ。
148
吾々
(
われわれ
)
が
行
(
い
)
つたら
屹度
(
きつと
)
、
149
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
は
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
るよ。
150
何
(
なん
)
となしに
吾輩
(
わがはい
)
の
魂
(
たましひ
)
に
電流
(
でんりう
)
が
通
(
つう
)
じて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
だ』
151
弥次彦
(
やじひこ
)
『モシモシ、
152
お
前
(
まへ
)
サンの
様
(
やう
)
な、
153
不完全
(
ふくわんぜん
)
な
御
(
お
)
粗末
(
そまつ
)
な、
154
糸瓜
(
へちま
)
の
様
(
やう
)
な
長
(
なが
)
たらしいお
顔
(
かほ
)
では、
155
鰻
(
うなぎ
)
でも
愛想
(
あいさう
)
を
尽
(
つ
)
かして、
156
ヌラヌラと
滑
(
すべ
)
つて
逃
(
に
)
げるのは
当然
(
あたりまへ
)
ですよ。
157
アハヽヽヽ』
158
駒彦
(
こまひこ
)
『
構
(
かま
)
ふない
先陣
(
せんぢん
)
の
功名
(
こうみやう
)
は
俺
(
おれ
)
が
一番槍
(
いちばんやり
)
だ』
159
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
160
大手
(
おほて
)
を
振
(
ふ
)
つて
元気
(
げんき
)
好
(
よ
)
く、
161
音
(
ね
)
を
的
(
あて
)
に、
162
四股
(
しこ
)
踏
(
ふ
)
み
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
163
弥次彦
(
やじひこ
)
『ヤア
御
(
ご
)
一統
(
いつとう
)
サン、
164
此処
(
ここ
)
が
即
(
すなは
)
ち、
165
所謂
(
いはゆる
)
、
166
取
(
と
)
りも
直
(
なほ
)
さず、
167
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
の
隠家
(
かくれが
)
で
御座
(
ござ
)
います。
168
それはそれは
奇妙
(
きめう
)
奇天烈
(
きてれつ
)
、
169
不思議
(
ふしぎ
)
千万
(
せんばん
)
な
妖怪窟
(
えうくわいくつ
)
ですから、
170
其
(
その
)
お
積
(
つも
)
りで
不覚
(
ふかく
)
を
取
(
と
)
らぬ
様
(
やう
)
になさるが
宜
(
よ
)
からう』
171
音彦
(
おとひこ
)
『ヨー、
172
この
窟
(
いはや
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
立派
(
りつぱ
)
な
構
(
かま
)
へだ。
173
エルサレムの
何誰
(
どなた
)
様
(
さま
)
の
娘
(
むすめ
)
か
知
(
し
)
らぬが
一
(
ひと
)
つ
探険
(
たんけん
)
して
見
(
み
)
ようかい』
174
(
大正一一・三・二〇
旧二・二二
藤津久子
録)
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