霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 主一(しゆいつ)無適(むてき)〔八六七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻 篇:第1篇 千状万態 よみ(新仮名遣い):せんじょうばんたい
章:第1章 主一無適 よみ(新仮名遣い):しゅいつむてき 通し章番号:867
口述日:1922(大正11)年08月18日(旧06月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:冒頭では、国治立大神による三五教の創始から、国依別が高砂島へ渡り、ウラル教の魔軍を撃退し、キジ、マチを弟子として迎えた経緯など、これまでの物語が七五調の歌で振り返られている。

国依別はエリナに案内されてエスの館に到着するが、エリナの母は重病で瀕死の状態にあった。国依別は祝詞や鎮魂によって治療を試みるものの、病状は悪化するばかりである。

エリナは母の回復と父の救出を熱心に祈るが、国治立命と常世神王のどちらを信じるべきか迷い、神罰を恐れていた。国依別は、神は本来一つであり、信仰に迷いや執着があっては神徳を受けられないと説く。そして、雑念を払い、神意にすべてを任せる「主一無適」の精神が大切だと諭す。

しかしエリナの迷いは晴れず、母の回復も絶望的となる。国依別は、まずエリナ自身が最も信じる神に一心に祈るよう勧め、ヒルの都へ向けて出発する。

(AIによる要約)
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-02-25 17:52:30 文字数:3768 OBC :rm3101
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第6輯 43頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:2頁 初版: ページ備考:
001千早振(ちはやぶる)遠(とほ)き神代(かみよ)の昔(むかし)より
002珍(うづ)の都(みやこ)のエルサレムに
003天津(あまつ)御神(みかみ)の神言(みこと)もて
004国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)は
005普(あまね)く世人(よびと)を救(すく)はむと
006野立彦(のだちのひこ)と現(あら)はれまし
007豊国姫(とよくにひめ)の神御霊(かむみたま)は
008野立姫(のだちのひめ)と現(あら)はれて
009天(あめ)と地(つち)とを兼(か)ね玉(たま)ひ
010百(もも)の神人(かみびと)草木(くさき)まで
011安(やす)きに救(すく)ひ助(たす)くべく
012心(こころ)を千々(ちぢ)に配(くば)りまし
013埴安彦(はにやすひこ)や埴安姫(はにやすひめ)の
014貴(うづ)の命(みこと)と現(あら)はれて
015黄金山(わうごんさん)下(か)に三五(あななひ)の
016神(かみ)の教(をしへ)を樹(た)て玉(たま)ひ
017救(すく)ひの道(みち)を宣(の)り玉(たま)ふ
018此(この)御教(みをしへ)を朝夕(あさゆふ)に
019守(まも)り玉(たま)へる天教山(てんけうざん)の
020木(こ)の花姫(はなひめ)を始(はじ)めとし
021日(ひ)の出神(でのかみ)の珍御子(うづみこ)が
022神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
023瑞(みづ)の御霊(みたま)の神業(かむわざ)を
024輔(たす)け玉(たま)ひて世(よ)に広(ひろ)く
025開(ひら)き玉(たま)ふぞ尊(たふと)けれ
026豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほくに)
027根別(ねわけ)の国(くに)と名(な)に負(お)ひし
028自転倒(おのころ)島(じま)の中心地(ちうしんち)
029綾(あや)の高天(たかま)の霊場(れいぢやう)に
030国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)は
031暫(しば)し隠(かく)れて四尾山(よつをやま)
032国武彦(くにたけひこ)と名(な)を替(か)へて
033五六七(みろく)の御世(みよ)を来(きた)さむと
034桶伏山(をけふせやま)の片(かた)ほとり
035厳(いづ)と瑞(みづ)との神御霊(かむみたま)
036玉照彦(たまてるひこ)や玉照姫(たまてるひめ)を
037錦(にしき)の宮(みや)の神司(かむづかさ)と
038定(さだ)め玉(たま)ひて三五(あななひ)の
039教(をしへ)の庭(には)を開(ひら)かせつ
040言依別(ことよりわけ)の瑞御霊(みづみたま)を
041錦(にしき)の宮(みや)の教主(けうしゆ)とし
042西(にし)の神都(しんと)はエルサレム
043東(ひがし)の神都(しんと)は桶伏(をけふせ)の
044霊山(れいざん)会場(ゑぢやう)の神(かみ)の山(やま)
045太(ふと)く建(た)てたる神柱(かむばしら)
046緯(よこ)の御霊(みたま)と聞(きこ)えたる
047言依別(ことよりわけの)命(みこと)をば
048道(みち)の教主(けうしゆ)と任(ま)け玉(たま)ひ
049神(かみ)の司(つかさ)を養(やしな)ひて
050自凝島(おのころじま)を初(はじめ)とし
051国(くに)の八十国(やそくに)八十島(やそしま)を
052皇(すめ)大神(おほかみ)の御恵(みめぐ)みの
053光(ひか)りに照(て)らし露(つゆ)あたへ
054曇(くも)り切(き)つたる現世(うつしよ)を
055寂光(じやくくわう)浄土(じやうど)の天国(てんごく)に
056造(つく)り成(な)さむと千万(ちよろづ)に
057いそしみ玉(たま)ふ有難(ありがた)さ
058教司(をしへつかさ)の其(その)一人(ひとり)
059中(なか)にも清(きよ)き神司(かむづかさ)
060国依別(くによりわけ)の宣伝使(せんでんし)は
061教主(けうしゆ)の後(あと)に従(したが)ひて
062自凝島(おのころじま)を出立(しゆつたつ)し
063神(かみ)のまにまに和田(わだ)の原(はら)
064荒浪(あらなみ)分(わ)けてやうやうに
065海(うみ)に浮(うか)べる高砂(たかさご)の
066テルの港(みなと)に上陸(じやうりく)し
067夜(よ)を日(ひ)に継(つ)いで三倉山(みくらやま)の
068国魂神(くにたまがみ)を祀(まつ)りたる
069祠(ほこら)に二人(ふたり)は参拝(さんぱい)し
070飢(うゑ)に迫(せま)りし国人(くにびと)を
071救(すく)ひ助(たす)けて人々(ひとびと)に
072救(すく)ひの神(かみ)と崇(あが)められ
073教主(けうしゆ)言依別(ことよりわけの)命(みこと)は
074袂(たもと)を分(わか)ちウヅの国(くに)
075末子(すゑこ)の姫(ひめ)の現(あ)れませる
076都(みやこ)をさして出(い)でて行(ゆ)く。
077後(あと)に残(のこ)りし国依別(くによりわけ)は
078軽生(けいせい)重死(ぢうし)のウラル教(けう)が
079無道(ぶだう)極(きは)まる迷信(めいしん)を
080打破(だは)し尽(つく)して潔(いさぎよ)く
081此(この)場(ば)を立(た)ちてヒルの国(くに)
082桜(さくら)の花(はな)もチルの里(さと)
083夜(よる)の荒(あら)シの森蔭(もりかげ)に
084辿(たど)りて息(いき)を休(やす)め居(ゐ)る
085時(とき)しもあれやウラル教(けう)
086乱(みだ)れ散(ち)りたる信徒(まめひと)を
087集(あつ)めて再(ふたた)び出(い)で来(きた)り
088国依別(くによりわけ)を十重(とへ)二十重(はたへ)に
089囲(かこ)みて生命(いのち)を奪(うば)ひ取(と)り
090三五教(あななひけう)を根底(こんてい)より
091殲滅(せんめつ)せむと襲(おそ)ひ来(く)る
092醜(しこ)の魔神(まがみ)を悉(ことごと)く
093珍(うづ)の神術(みわざ)に蹴散(くゑち)らし
094皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
095感謝(かんしや)し奉(まつ)る折(をり)もあれ
096キジとマチとの二人(ふたり)の男(をとこ)
097国依別(くによりわけ)の神徳(しんとく)を
098慕(した)ひて茲(ここ)に走(は)せ来(きた)り
099師弟(してい)の約(やく)を結(むす)びつつ
100日暮(ひぐら)シ河(がは)の土堤(どて)の辺(へ)に
101進(すす)む折(をり)しもウラル教(けう)の
102アナン、ユーズの両人(りやうにん)は
103数多(あまた)の部下(ぶか)を引率(いんそつ)し
104剣(つるぎ)や竹槍(たけやり)を携(たづさ)へて
105ヒルの都(みやこ)に三五(あななひ)の
106教(をしへ)を伝(つた)ふ神司(かむづかさ)
107楓別(かえでわけの)命(みこと)の霊場(れいぢやう)を
108夜陰(やいん)に紛(まぎ)れて蹂躙(じうりん)し
109打破(うちやぶ)らむと進(すす)み来(く)る
110此(この)一隊(いつたい)に出会(しゆつくわい)し
111キジとマチとの両人(りやうにん)は
112国依別(くによりわけ)の司(つかさ)より
113鎮魂(ちんこん)帰神(きしん)言霊(ことたま)の
114幽玄(いうげん)微妙(びめう)の神力(しんりき)を
115完美(うまら)に委曲(つばら)に授(さづ)けられ
116勇(いさ)み進(すす)むで河(かは)の辺(べ)を
117進(すす)みて来(きた)る魔軍(まいくさ)に
118向(むか)つて言霊(ことたま)打出(うちだ)せば
119不意(ふい)を打(う)たれて敵軍(てきぐん)は
120雲(くも)を霞(かすみ)と逃(に)げて行(ゆ)く
121茲(ここ)に三人(みたり)は夜(よ)の道(みち)を
122スタスタ進(すす)みアラシカの
123険(けは)しき峠(たうげ)を攣登(よぢのぼ)り
124東北(とうほく)指(さ)して降(くだ)り行(ゆ)く
125道(みち)の片方(かたへ)の古社(ふるやしろ)
126楠(くす)の古木(こぼく)の天(てん)を摩(ま)し
127聳(そそ)り立(た)ちたる木下蔭(こしたかげ)
128額(ぬか)づき拝(をが)む人影(ひとかげ)を
129認(みと)めて近(ちか)づき伺(うかが)へば
130ウラルの道(みち)の神司(かむづかさ)
131エスの娘(むすめ)と聞(き)きしより
132キジは言葉(ことば)も柔(やはら)かく
133親切(しんせつ)こめて問(と)ひ糺(ただ)し
134茲(ここ)に様子(やうす)を詳(まつぶ)さに
135明(あきら)め尽(つく)し両人(りやうにん)は
136国依別(くによりわけ)に相別(あひわか)れ
137日暮(ひぐら)シ山(やま)の岩窟(がんくつ)に
138囚(とら)はれ苦(くる)しむエスの身(み)を
139一日(ひとひ)も早(はや)く助(たす)けむと
140勇(いさ)み進(すす)むで出(い)でて行(ゆ)く
141国依別(くによりわけ)の神司(かむづかさ)
142エスの娘(むすめ)に従(したが)ひて
143アラシカ山(やま)の麓(ふもと)なる
144エスが館(やかた)に立(た)ち向(むか)ひ
145暫(しばら)くここに逗留(とうりう)し
146神(かみ)の教(をしへ)を宣(の)べ伝(つた)へ
147ヒルの都(みやこ)に立寄(たちよ)りて
148楓別(かえでのわけ)に面会(めんくわい)し
149キジ、マチ二人(ふたり)を助(たす)けむと
150日暮(ひぐら)シ山(やま)の岩窟(がんくつ)に
151進(すす)みてブールの神司(かむづかさ)
152言向(ことむ)け和(やは)し驍名(げうめい)を
153高砂島(たかさごじま)は云(い)ふも更(さら)
154豊葦原(とよあしはら)の国中(くになか)に
155轟(とどろ)かしたる物語(ものがたり)
156狩野(かの)の渓流(けいりう)眺(なが)めつつ
157初秋(しよしう)の風(かぜ)を浴(あ)び乍(なが)ら
158安楽(あんらく)椅子(いす)に横(よこた)はり
159敷島(しきしま)煙草(たばこ)をくゆらしつ
160浄写(じやうしや)菩薩(ぼさつ)と立向(たちむか)ひ
161いよいよ霊界(れいかい)物語(ものがたり)
162三十一(みそまりひとつ)の巻(まき)始(はじ)め
163言霊車(ことたまぐるま)転(ころ)ばしぬ
164あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
165御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
166 国依別(くによりわけ)はエリナに導(みちび)かれ、167エスの家(いへ)に漸(やうや)く着(つ)きぬ。168エリナの母(はは)は思(おも)ひの外(ほか)の重病(ぢうびやう)にて、169殆(ほとん)ど人事(じんじ)不省(ふせい)の体(てい)なり。170国依別(くによりわけ)は取(と)る物(もの)も取敢(とりあへ)ず、171草鞋(わらぢ)をとくとく座敷(ざしき)に駆上(かけあが)り、172直(ただち)に天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、173天(あま)の数歌(かずうた)を称(とな)へあげ、174鎮魂(ちんこん)を施(ほどこ)し、175いろいろ雑多(ざつた)と丹精(たんせい)をこらして、176病気(びやうき)回復(くわいふく)の途(みち)を謀(はか)りける。177されど如何(いか)にせしか、178病人(びやうにん)は少(すこ)しも快方(くわいはう)に向(むか)はずして、179日(ひ)に日(ひ)に衰弱(すゐじやく)甚(はなは)だしく、180最早(もはや)絶望(ぜつばう)の域(ゐき)に進(すす)みたり。181エリナは一生(いつしやう)懸命(けんめい)に水垢離(みづごうり)を取(と)り……、
182エリナ『三五教(あななひけう)の大神(おほかみ)国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)、183常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)、184何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)父(ちち)の危難(きなん)を遁(のが)れさせ玉(たま)へ、185母(はは)の難病(なんびやう)を今(いま)一度(いちど)救(すく)はせ玉(たま)ひて、186夫婦(ふうふ)親子(おやこ)が仮令(たとへ)一(いち)日(にち)なり共(とも)、187嬉(うれ)しく楽(たの)しく、188互(たがひ)に顔(かほ)を見合(みあは)せ、189恵(めぐみ)の露(つゆ)にうるほひまする様(やう)……』
190と、191我(わ)れを忘(わす)れて祈願(きぐわん)を凝(こ)らし居(ゐ)る。192されどエリナの心中(しんちう)は未(いま)だ主一(しゆいつ)無適(むてき)の精神(せいしん)には成(な)り得(え)ず迷(まよ)ひあり。193其(その)理由(りいう)は、194国治立(くにはるたちの)命(みこと)は果(はた)して善神(ぜんしん)なりや? 但(ただし)は常世(とこよ)神王(しんのう)の方(はう)が善神(ぜんしん)なるや? 国治立(くにはるたちの)神(かみ)を念(ねん)じなば、195常世(とこよ)神王(しんのう)の神怒(しんど)に触(ふ)れて、196益々(ますます)母(はは)の病(やまひ)は重(おも)り、197父(ちち)の大危難(だいきなん)は愈(いよいよ)深(ふか)くなり行(ゆ)くには非(あら)ざるかとの疑念(ぎねん)が、198頭脳(あたま)の中(なか)に往来(わうらい)しゐたるが故(ゆゑ)なり。
199 国依別(くによりわけ)はエリナの心(こころ)の中(うち)を推知(すゐち)し、200四五(しご)日(にち)茲(ここ)に逗留(とうりう)して、201いろいろ雑多(ざつた)と善悪(ぜんあく)不二(ふじ)、202顕幽(けんいう)一本(いつぽん)の真理(しんり)を説(と)き諭(さと)したれども、203父母(ふぼ)の災厄(さいやく)に周章(しうしやう)狼狽(らうばい)したる若(わか)き娘(むすめ)の事(こと)とて、204千言(せんげん)万語(ばんご)を尽(つく)しての国依別(くによりわけ)の教示(けうじ)も、205容易(ようい)に頭(あたま)に入(い)らず、206唯(ただ)一(いち)日(にち)も早(はや)く父(ちち)の危難(きなん)を救(すく)はれ、207母(はは)の重病(ぢうびやう)の癒(い)やされむことにのみ余念(よねん)なく、208一心(いつしん)不乱(ふらん)になり乍(なが)ら、209信仰(しんかう)上(じやう)の点(てん)に於(おい)て非常(ひじやう)に迷(まよ)ひ苦(くる)しみ居(ゐ)たり。210それ故(ゆゑ)に神徳(しんとく)充実(じゆうじつ)したる国依別(くによりわけの)命(みこと)の鎮魂(ちんこん)も、211言霊(ことたま)も功験(こうけん)を現(あら)はすには至(いた)らざりける。
212 凡(すべ)て信仰(しんかう)は迷(まよ)ひを去(さ)り、213雑念(ざつねん)を払(はら)ひ、214理智(りち)に走(はし)らず、215只(ただ)何事(なにごと)も神意(しんい)に任(まか)せ奉(たてまつ)り、216主一(しゆいつ)無適(むてき)の心(こころ)にならなくては、217如何(いか)な尊(たふと)き神人(しんじん)の祈念(きねん)と雖(いへど)も、218如何(いか)に権威(けんゐ)ある言霊(ことたま)と雖(いへど)も、219容易(ようい)に其(その)効(かう)の顕(あら)はれざるは当然(たうぜん)なり。220要(えう)するにエリナの信仰(しんかう)は二心(ふたごころ)にして、221悪(わる)く言(い)はば内股(うちまた)膏薬(かうやく)的(てき)信仰(しんかう)に堕(だ)し居(ゐ)たり。222幼少(えうせう)の頃(ころ)より宇宙間(うちうかん)に於(おい)て常世(とこよ)神王(しんのう)に優(まさ)る尊(たふと)き神(かみ)はなく、223又(また)常世(とこよ)神王(しんのう)に勝(まさ)るべき権威(けんゐ)はなし、224万一(まんいち)常世(とこよ)神王(しんのう)の忌憚(きたん)に触(ふ)れむか、225現界(げんかい)は云(い)ふも更(さら)、226霊界(れいかい)に於(おい)ても無限(むげん)の苦(くる)しみを受(う)け、227且(か)つ厳罰(げんばつ)に処(しよ)せらるべしとの信仰(しんかう)を深(ふか)く心(こころ)の底(そこ)より植(う)ゑ付(つ)けられ居(ゐ)たるが故(ゆゑ)に、228誠(まこと)の神(かみ)の教(をしへ)を喜(よろこ)びて聴聞(ちやうもん)し乍(なが)らも、229不安(ふあん)の雲(くも)に包(つつ)まれ、230煩悶(はんもん)苦悩(くなう)を続(つづ)け居(ゐ)たるなりける。
231 国依別(くによりわけ)は容易(ようい)にエリナの信仰(しんかう)の動(うご)かざるを悟(さと)り、232且(か)つ彼(かれ)の母(はは)の病気(びやうき)は到底(たうてい)救(すく)はれざることを悟(さと)りて、233いよいよ此処(ここ)を立去(たちさ)り、234ヒルの都(みやこ)に向(むか)う決心(けつしん)なしたりける。
235 国依別(くによりわけ)はエリナに向(むか)ひ、
236国依別『エリナさま、237永(なが)らく御(お)世話(せわ)になりましたが、238貴女(あなた)の御(ご)信仰(しんかう)は何(ど)うしても徹底(てつてい)致(いた)しませぬ。239それも無理(むり)のなき事(こと)でせう。240就(つ)いてはお母(か)アさまの御(ご)病気(びやうき)も最早(もはや)絶望(ぜつばう)ですから、241其(その)お積(つも)りで居(ゐ)て下(くだ)さい。242又(また)エスさまを救(すく)ひ出(だ)さむとして、243日暮(ひぐら)シ山(やま)の霊場(れいぢやう)に向(むか)つたキジ公(こう)、244マチ公(こう)の両人(りやうにん)が未(いま)だ帰(かへ)つて来(こ)ないのも、245何(なに)か神界(しんかい)に於(おい)て深(ふか)き思召(おぼしめ)しのある事(こと)でせう。246父(ちち)を救(すく)ひ、247母(はは)を救(すく)はむとのあなたの真心(まごころ)は実(じつ)に感服(かんぷく)の至(いた)りですが、248斯(か)かる場合(ばあひ)には、249あなたの日頃(ひごろ)信(しん)ずる常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)に、250主一(しゆいつ)無適(むてき)の真心(まごころ)を捧(ささ)げて御(お)願(ねが)ひなさる方(はう)が却(かへつ)て御(ご)神力(しんりき)が現(あら)はれるでせう。251三五教(あななひけう)の主神(しゆしん)国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)は、252あらゆる万民(ばんみん)の苦(くるし)みを助(たす)け下(くだ)さる有難(ありがた)き神(かみ)様(さま)なれど、253あなたの信念力(しんねんりよく)が二(ふた)つに割(わ)れて居(を)りますから、254神(かみ)様(さま)も救(すく)ひの御手(みて)を伸(の)べさせ玉(たま)ふ事(こと)が出来(でき)ませぬ。255斯(こ)う申(もう)せば、256国治立(くにはるたちの)神(かみ)は余程(よほど)気(き)の狭(せま)い偏狭(へんけふ)な神(かみ)様(さま)だと思(おも)はれるでせうが、257決(けつ)して左様(さやう)な不公平(ふこうへい)な神(かみ)様(さま)ではありませぬ。258只(ただ)あなたが神(かみ)様(さま)は元(もと)は一株(ひとかぶ)だから、259常世(とこよ)神王(しんのう)様(さま)を念(ねん)じても、260国治立(くにはるたち)の神(かみ)様(さま)は決(けつ)して御(お)怒(いか)りなく、261又(また)国治立(くにはるたちの)命(みこと)を何程(いくら)一心(いつしん)に念(ねん)じたとて、262常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)が御(ご)立腹(りつぷく)遊(あそ)ばすものでないと云(い)ふ事(こと)が御(お)分(わか)りにならなくては、263信仰(しんかう)は駄目(だめ)です。264神(かみ)様(さま)の方(はう)では左様(さやう)な小(ちい)さい障壁(しやうへき)や区画(くくわく)はありませぬが、265貴女(あなた)の心(こころ)の中(なか)に区画(くくわく)をつけたり深(ふか)き溝渠(こうきよ)を穿(うが)つたり、266いろいろと煩悶(はんもん)の雲(くも)が包(つつ)んでゐるから、267何程(なにほど)神(かみ)様(さま)が御(ご)神徳(しんとく)を与(あた)へやうと思召(おぼしめ)しても、268お前(まへ)さまの方(はう)に感(かん)じないのだから仕方(しかた)がありませぬ。269それ故(ゆゑ)あなたの最(もつと)も信(しん)ずる、270常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)に御(ご)祈願(きぐわん)をなさつた方(はう)が、271却(かへつ)て御(ご)安心(あんしん)でせう。272私(わたくし)は是(これ)から御(お)暇(いとま)を致(いた)します。273ここ暫(しばら)くの間(あいだ)は、274ヒルの都(みやこ)の楓別(かえでわけの)命(みこと)の神館(かむやかた)に逗留(とうりう)の考(かんが)へで厶(ござ)いますから、275御用(ごよう)があつたら、276国依別(くによりわけ)と云(い)つてお訪(たづ)ね下(くだ)さいませ。277何時(いつ)でもお目(め)にかかります。278又(また)幸(さいは)ひにエスさま始(はじ)めキジ、279マチの両人(りやうにん)が帰(かへ)つて来(こ)られたら、280国依別(くによりわけ)はヒルの都(みやこ)に逗留(とうりう)して居(を)るからと、281伝言(でんごん)を願(ねが)ひます。282左様(さやう)ならばエリナさま、283御(ご)病人(びやうにん)様(さま)を大切(たいせつ)になさいませ』
284と立出(たちい)でむとするを、285エリナは周章(あわて)て引(ひき)とめ、
286エリナ『モシモシ宣伝使(せんでんし)様(さま)、287どうぞさう仰有(おつしや)らずに、288暫(しばら)く御(ご)逗留(とうりう)遊(あそ)ばして下(くだ)さいませ。289これから心(こころ)を入(い)れ替(か)へて、290あなた様(さま)の仰(あふ)せに従(したが)ひ、291信仰(しんかう)を致(いた)しますから……』
292国依別『心(こころ)の底(そこ)から発根(ほつこん)と分(わか)つての信仰(しんかう)でなければ到底(たうてい)駄目(だめ)です。293神(かみ)様(さま)は仁慈(じんじ)無限(むげん)の御(お)方(かた)故(ゆゑ)、294別(べつ)に頼(たの)まず共(とも)、295助(たす)けてやりたいと思召(おぼしめ)し、296種々(いろいろ)と力(ちから)を御(お)尽(つく)し遊(あそ)ばして厶(ござ)るのですが、297あなたの心(こころ)の中(なか)の執着(しふちやく)と云(い)ふ曲鬼(まがおに)が神徳(しんとく)を遮(さへぎ)つて居(を)るのです。298其(その)曲鬼(まがおに)をあなた自(みづか)ら追出(おひだ)さねば到底(たうてい)駄目(だめ)ですよ。299国依別(くによりわけ)が別(わか)れに臨(のぞ)むで、300御(ご)注意(ちうい)申上(まをしあ)げておきます。301左様(さやう)ならば……』
302と後(あと)に心(こころ)を残(のこ)しつつ、303国依別(くによりわけ)は此(この)家(や)を立出(たちい)でヒルの都(みやこ)を指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
304(大正一一・八・一八 旧六・二六 松村真澄録)
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