霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第31巻(午の巻)
序歌
総説
第1篇 千状万態
第1章 主一無適
第2章 大地震
第3章 救世神
第4章 不知恋
第5章 秋鹿の叫
第6章 女弟子
第2篇 紅裙隊
第7章 妻の選挙
第8章 人獣
第9章 誤神託
第10章 噂の影
第11章 売言買辞
第12章 冷い親切
第13章 姉妹教
第3篇 千里万行
第14章 樹下の宿
第15章 丸木橋
第16章 天狂坊
第17章 新しき女
第18章 シーズンの流
第19章 怪原野
第20章 脱皮婆
第21章 白毫の光
第4篇 言霊将軍
第22章 神の試
第23章 化老爺
第24章 魔違
第25章 会合
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスク完了しました
。どうもありがとうございます。
|
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第31巻(午の巻)
> 第2篇 紅裙隊 > 第12章 冷い親切
<<< 売言買辞
(B)
(N)
姉妹教 >>>
第一二章
冷
(
つめた
)
い
親切
(
しんせつ
)
〔八七八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
篇:
第2篇 紅裙隊
よみ(新仮名遣い):
こうくんたい
章:
第12章 冷い親切
よみ(新仮名遣い):
つめたいしんせつ
通し章番号:
878
口述日:
1922(大正11)年08月19日(旧06月27日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
ユーズは国依別がやってきたことに恐れをなし、ブールの居間にかけこんで、国依別が来たことを注進し、エスを牢から出してその場を取り繕うようにと進言した。
ブールはユーズの案に賛同した。ユーズは早速エスの水牢に行き、エスに呼びかけた。しかしエスは、結構な修行をさせてもらっていると意固地になって牢から出ようとしない。エスは国依別が娘のエリナを連れて洞窟までやってきたことを知っており、ユーズの呼び掛けにはまったく耳を貸さなかった。
そうこうするうちに、国依別一行は、助け出したキジとマチを連れて、ブールの居間にやってきていた。ブールは態度を変えて、にこやかに一行を迎え入れる。
ブールは、キジとマチにこれまでの仕打ちを責められて震えていた。そこへ、やはり青い顔をしたユーズが帰ってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-04-05 19:09:54
OBC :
rm3112
愛善世界社版:
138頁
八幡書店版:
第6輯 92頁
修補版:
校定版:
141頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
ユーズは
国依別
(
くによりわけ
)
、
002
外
(
ほか
)
二女
(
にぢよ
)
の
茲
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれしと
聞
(
き
)
き、
003
驚
(
おどろ
)
いてアナンを
入口
(
いりぐち
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
はしめ、
004
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
言
(
い
)
つて、
005
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
にブール
教主
(
けうしゆ
)
を
納得
(
なつとく
)
させ、
006
エスを
水牢
(
みづらう
)
より
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し、
007
何
(
なに
)
喰
(
く
)
はぬ
顔
(
かほ
)
をして、
008
甘
(
うま
)
く
国依別
(
くによりわけ
)
の
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひ、
009
鋭鋒
(
えいほう
)
をさけむと
苦慮
(
くりよ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
010
ブールの
居間
(
ゐま
)
に
慌
(
あは
)
ただしくかけ
入
(
い
)
り、
011
ユーズ
『モシ、
012
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
013
タヽ
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
しました』
014
ブール
『
大変
(
たいへん
)
とは
何事
(
なにごと
)
だ』
015
ユーズ
『ヘエ
一寸
(
ちよつと
)
申上
(
まをしあ
)
げて
能
(
よ
)
いやら、
016
上
(
あ
)
げぬがよいやら、
017
私
(
わたし
)
には
見当
(
けんたう
)
が
付
(
つ
)
きませぬが、
018
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
申上
(
まをしあ
)
げて
見
(
み
)
ませうかな。
019
大変
(
たいへん
)
にあなたが
御
(
お
)
喜
(
よろこ
)
びの
話
(
はなし
)
と、
020
お
驚
(
おどろ
)
きの
話
(
はなし
)
とが、
021
ごつちや
苦茶
(
くちや
)
になつて
居
(
を
)
りますので、
022
実
(
じつ
)
はどうも、
023
お
目出
(
めで
)
たいやら、
024
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
やらで、
025
実
(
じつ
)
は
申上
(
まをしあげ
)
かねてゐます』
026
ブール
『
構
(
かま
)
はないから
早
(
はや
)
く
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ』
027
ユーズ
『あなたの
数年前
(
すうねんぜん
)
から
御
(
ご
)
執心
(
しふしん
)
遊
(
あそ
)
ばすヒルの
都
(
みやこ
)
の
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
が、
028
ブール
様
(
さま
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
お
目
(
め
)
にかかつて、
029
お
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
したい
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いまして、
030
ワザワザ
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
しました……と
仰有
(
おつしや
)
つたかどうか、
031
其
(
その
)
点
(
てん
)
迄
(
まで
)
はハツキリと
存
(
ぞん
)
じませぬが、
032
マアマア
美人
(
びじん
)
と
云
(
い
)
ふものは
人気
(
にんき
)
のよいもので
御座
(
ござ
)
いますワイ』
033
ブール
『ナニ、
034
ヒルの
館
(
やかた
)
の
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
が
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
たとは、
035
そりや
本当
(
ほんたう
)
か』
036
ユーズ
『
本当
(
ほんたう
)
も
本当
(
ほんたう
)
、
037
一文
(
いちもん
)
生中
(
きなか
)
の
掛値
(
かけね
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬワイ。
038
付
(
つ
)
いては
喜
(
よろこ
)
びあれば
悲
(
かな
)
しみあり……とか
申
(
まを
)
しまして、
039
あなたがお
聞
(
き
)
きになつたならば、
040
さぞやさぞや、
041
ブールブールと
慄
(
ふる
)
ひ
上
(
あが
)
つて、
042
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
まで
青
(
あを
)
くなり、
043
家
(
いへ
)
の
隅
(
すみ
)
くたに、
044
人
(
ひと
)
に
顔
(
かほ
)
をも
能
(
よ
)
う
見
(
み
)
せず、
045
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
りて
居
(
を
)
らねばならぬぞよと、
046
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
になるかも
知
(
し
)
れませぬ。
047
それだから
第一
(
だいいち
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
の
遣
(
つか
)
はしたキジ、
048
マチの
両人
(
りやうにん
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し、
049
彼奴
(
あいつ
)
にドツサリ
酒
(
さけ
)
でも
呑
(
の
)
まして
口塞
(
くちふさ
)
ぎをし、
050
又
(
また
)
エリナの
父
(
ちち
)
のエスをば、
051
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に
牢獄
(
らうごく
)
から
引張
(
ひつぱり
)
出
(
だ
)
し、
052
此奴
(
こいつ
)
も
十分
(
じふぶん
)
大切
(
たいせつ
)
にして
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
責
(
ぜ
)
めに
会
(
あ
)
はし、
053
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
はない
様
(
やう
)
にするのが
上分別
(
じやうふんべつ
)
だと
考
(
かんが
)
へますが、
054
どう
取計
(
とりはか
)
らひませうかなア』
055
ブール
『そりや
大変
(
たいへん
)
だ。
056
表口
(
おもてぐち
)
はアナンが、
057
さうして
暇取
(
ひまど
)
らせて
居
(
ゐ
)
る
間
(
あひだ
)
に、
058
早
(
はや
)
くこちらは
準備
(
じゆんび
)
をせなくてはならぬ。
059
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
060
エスを
早
(
はや
)
く
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱり
)
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ』
061
ユーズ
『これはこれは
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て、
062
吾々
(
われわれ
)
如
(
ごと
)
き
はした
者
(
もの
)
の
進言
(
しんげん
)
をお
聞
(
きき
)
届
(
とど
)
け
下
(
くだ
)
さいまして、
063
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
深
(
ふか
)
き
教主殿
(
けうしゆどの
)
の
御心
(
みこころ
)
、
064
イヤもう
吾々
(
われわれ
)
が
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
つたように
有難
(
ありがた
)
く
存
(
ぞん
)
じまする。
065
エスも
本当
(
ほんたう
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものですワイ。
066
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
067
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
を
泊
(
と
)
めたとか
云
(
い
)
つて、
068
世間
(
せけん
)
狭
(
せま
)
い
事
(
こと
)
を
主張
(
しゆちやう
)
し、
069
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
をかけて、
070
あの
様
(
やう
)
な
所
(
ところ
)
へ
放
(
はう
)
り
込
(
こ
)
みおくと
云
(
い
)
ふ
無慈悲
(
むじひ
)
な
事
(
こと
)
で、
071
如何
(
どう
)
して
御
(
お
)
道
(
みち
)
が
拡
(
ひろ
)
まりませうか、
072
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
に
叶
(
かな
)
ひませうか、
073
オツト
待
(
ま
)
てよ、
074
エスを
放
(
はう
)
り
込
(
こ
)
みた
張本人
(
ちやうほんにん
)
は
矢張
(
やつぱり
)
ユーズだつた。
075
ヤア
是
(
これ
)
は
取消
(
とりけ
)
します。
076
教主
(
けうしゆ
)
さま、
077
もし
国依別
(
くによりわけ
)
が
誰
(
たれ
)
がエスを
放
(
はう
)
り
込
(
こ
)
みたかと
尋
(
たづ
)
ねたらあなたは
此
(
この
)
ブールだと、
078
部下
(
ぶか
)
の
責任
(
せきにん
)
を
引受
(
ひきう
)
けて
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいや、
079
頼
(
たの
)
みますから』
080
ブール
『
何
(
なに
)
をグヅグヅ
云
(
い
)
つてゐるのだ。
081
間髪
(
かんはつ
)
を
入
(
い
)
れざる
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
082
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
かないか。
083
ユーズの
利
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
だなア』
084
ユーズ
『
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
のユーズが
利
(
き
)
かないから、
085
それで
先
(
さき
)
へ
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
をして
居
(
ゐ
)
るのぢやありませぬか。
086
折角
(
せつかく
)
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱり
)
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て、
087
私
(
わたし
)
が
一人
(
ひとり
)
悪者
(
わるもの
)
にせられちや、
088
やり
切
(
き
)
れませぬからなア』
089
ブール
『どうでもよい、
090
俺
(
おれ
)
が
引受
(
ひきう
)
けてやるから、
091
早
(
はや
)
く
出
(
だ
)
して
来
(
こ
)
い』
092
ユーズ
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました。
093
ウントコドツコイ、
094
シテコイナ』
095
と
尻
(
しり
)
ひつからげ
牢獄
(
らうごく
)
指
(
さ
)
して、
096
タツタツタツと
暗
(
くら
)
がり
道
(
みち
)
を
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
き、
097
漸
(
やうや
)
く
水牢
(
みづろう
)
の
外面
(
そとも
)
に
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
り、
098
ユーズ
『コレコレエス
様
(
さま
)
、
099
さぞさぞ
御
(
ご
)
難儀
(
なんぎ
)
で
御座
(
ござ
)
りましただらう。
100
何分
(
なにぶん
)
ここの
大将
(
たいしやう
)
がブールブール
言
(
い
)
うて
怒
(
おこ
)
り
散
(
ち
)
らし、
101
此
(
この
)
ユーズが
融通
(
ゆうづう
)
を
利
(
き
)
かして、
102
幾度
(
いくど
)
も
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
してあげたいと
思
(
おも
)
ひ、
103
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
りましたけれど、
104
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもお
前
(
まへ
)
さまは、
105
一生涯
(
いつしやうがい
)
出
(
だ
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬと
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
を
)
りましたよ。
106
本当
(
ほんたう
)
にひどいものですなア。
107
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
昼
(
ひる
)
も
夜
(
よる
)
も
私
(
わたし
)
が、
108
教主
(
けうしゆ
)
の
側
(
そば
)
に
附添
(
つきそ
)
うて
千言
(
せんげん
)
万語
(
ばんご
)
を
尽
(
つく
)
し、
109
漸
(
やうや
)
くあなたを
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
す
段取
(
だんど
)
りになりました。
110
サア
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい』
111
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
112
錠
(
ぢやう
)
をガタリと
外
(
はづ
)
した。
113
エスは
暗
(
くら
)
い
牢
(
ろう
)
の
中
(
なか
)
から、
114
エス
『
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても、
115
吾々
(
われわれ
)
は
此処
(
ここ
)
を
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
宮殿
(
みと
)
だと
考
(
かんが
)
へ、
116
天然
(
てんねん
)
に
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
る
岩
(
いは
)
の
水
(
みづ
)
を
掬
(
すく
)
つて
呑
(
の
)
み、
117
始
(
はじ
)
めは
少
(
すこ
)
し
暗
(
くら
)
かつたが、
118
目
(
め
)
が
馴
(
なれ
)
て
来
(
き
)
て、
119
そこらが
少
(
すこ
)
し
明
(
あ
)
かるくなつた。
120
滾々
(
こんこん
)
として
流
(
なが
)
れ
出
(
い
)
づる
清泉
(
せいせん
)
を
眺
(
なが
)
め、
121
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みは
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りと、
122
私
(
わたくし
)
は
結構
(
けつこう
)
な
修業
(
しうげふ
)
をさして
貰
(
もら
)
つた。
123
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもここを
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
124
酒
(
さけ
)
が
呑
(
の
)
みたいと
思
(
おも
)
へば
此
(
この
)
清水
(
せいすゐ
)
は
酒
(
さけ
)
と
変
(
かは
)
り、
125
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
と
変
(
かは
)
り、
126
厚
(
あつ
)
き
神
(
かみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
を
結構
(
けつこう
)
に
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて
居
(
ゐ
)
るのだから、
127
そンな
殺生
(
せつしやう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はず、
128
そこを
締
(
し
)
めておいて
下
(
くだ
)
さい。
129
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
130
吾々
(
われわれ
)
はここを
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
は
不賛成
(
ふさんせい
)
ですワイ』
131
ユーズ
『コリヤ
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
りますなア。
132
こンなせせつこましい
所
(
ところ
)
へ
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
められて、
133
苦
(
くるし
)
ンでゐるよりも、
134
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
へ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して、
135
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に、
136
ちつと
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
めて
見
(
み
)
たらどうですか。
137
天
(
てん
)
は
青
(
あを
)
くすみ
渡
(
わた
)
り、
138
山川
(
やまかは
)
は
清
(
きよ
)
くさやけく、
139
田
(
た
)
の
面
(
おも
)
には
黄金
(
こがね
)
の
波
(
なみ
)
が
打
(
う
)
ち、
140
鳥
(
とり
)
は
歌
(
うた
)
ひ
蝶
(
てふ
)
は
舞
(
ま
)
ひ、
141
果物
(
くだもの
)
は
稔
(
みの
)
り、
142
花
(
はな
)
は
咲
(
さ
)
き、
143
こンな
所
(
ところ
)
に
蟄居
(
ちつきよ
)
してるのとは
比較
(
ひかく
)
になりませぬよ。
144
サア
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て
貰
(
もら
)
はぬと、
145
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
詰
(
つま
)
らぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るのだ。
146
サア
頼
(
たの
)
みだから、
147
どうぞ
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さいな、
148
サア
早
(
はや
)
う
早
(
はや
)
う』
149
エス
『
吾々
(
われわれ
)
は
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
150
此処
(
ここ
)
を
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
151
お
前
(
まへ
)
たちは
狭
(
せま
)
い
牢獄
(
らうごく
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるだらうが、
152
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
受
(
う
)
けた
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
目
(
め
)
から
見
(
み
)
れば、
153
此
(
この
)
狭
(
せま
)
い
一室
(
いつしつ
)
も
宇宙大
(
うちうだい
)
に
見
(
み
)
えるのだから、
154
仕方
(
しかた
)
がないワ。
155
小鳥
(
ことり
)
を
籠
(
かご
)
に
永
(
なが
)
らく
飼
(
か
)
うておき、
156
戸
(
と
)
をあけて
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
へ
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してやつても、
157
其
(
その
)
鳥
(
とり
)
は
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
籠
(
かご
)
が
恋
(
こひ
)
しうて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るものだ。
158
おれも
斯
(
こ
)
うなつては
挺子
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも
動
(
うご
)
きませぬぞや。
159
汚
(
けが
)
らはしい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はずに
早
(
はや
)
く
立去
(
たちさ
)
るが
良
(
よ
)
い』
160
ユーズ
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
にて、
161
普通
(
ふつう
)
では
此奴
(
こいつ
)
は
動
(
うご
)
きよらぬと
考
(
かんが
)
へ……エリナが
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
て
腹痛
(
ふくつう
)
を
起
(
おこ
)
してゐると
云
(
い
)
へば、
162
何程
(
なにほど
)
頑固
(
ぐわんこ
)
なエスでも、
163
吾子
(
わがこ
)
を
見
(
み
)
たさに、
164
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふだらう、
165
オウそれがよい……と
心
(
こころ
)
にうなづき
乍
(
なが
)
ら、
166
ユーズ
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はお
前
(
まへ
)
さまの
独娘
(
ひとりむすめ
)
、
167
エリナさまが、
168
ここへお
迎
(
むか
)
へにお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばし、
169
今
(
いま
)
ブールさまの
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
で
腹痛
(
ふくつう
)
を
起
(
おこ
)
し、
170
お
父
(
と
)
うさまに
会
(
あ
)
ひたい
会
(
あ
)
ひたいと
仰有
(
おつしや
)
るのだから、
171
お
前
(
まへ
)
さまも
子
(
こ
)
の
可愛
(
かあい
)
い
味
(
あぢ
)
は
知
(
し
)
つてるだらう。
172
白銀
(
しろがね
)
も
黄金
(
こがね
)
も
玉
(
たま
)
も
何
(
なに
)
かせむ
子
(
こ
)
にます
宝
(
たから
)
世
(
よ
)
にあらめやも
173
と
云
(
い
)
ふ
歌
(
うた
)
があるでせう。
174
其
(
その
)
大切
(
たいせつ
)
な
子
(
こ
)
が
来
(
き
)
てゐるのぢや。
175
サアサア
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て、
176
エリナさまに
目出
(
めで
)
たく
対面
(
たいめん
)
してあげて
下
(
くだ
)
さいナ。
177
親
(
おや
)
が
子
(
こ
)
に
対
(
たい
)
する
愛情
(
あいじやう
)
は、
178
到底
(
たうてい
)
門外漢
(
もんぐわいかん
)
の
伺
(
うかが
)
ひ
知
(
し
)
る
所
(
ところ
)
ではないさうだ。
179
早乙女
(
さおとめ
)
や
子
(
こ
)
の
泣
(
な
)
く
方
(
はう
)
にうゑて
行
(
ゆ
)
き
180
拾
(
ひろ
)
はるる
親
(
おや
)
は
蔭
(
かげ
)
から
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ
181
と
云
(
い
)
つて、
182
子
(
こ
)
位
(
くらゐ
)
可愛
(
かあい
)
いものはないぢやないか、
183
なあエスさま』
184
エス
『アハヽヽヽ、
185
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
御
(
お
)
出
(
いで
)
になり、
186
ヒルの
館
(
やかた
)
の
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
と、
187
吾
(
あが
)
娘
(
むすめ
)
のエリナの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
がやつて
来
(
き
)
て、
188
キジ
公
(
こう
)
、
189
マチ
公
(
こう
)
両人
(
りやうにん
)
を
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
190
今
(
いま
)
ブールの
居間
(
ゐま
)
に
乗込
(
のりこ
)
まうとする
最中
(
さいちう
)
であらうがナ。
191
ブールの
大将
(
たいしやう
)
橡麺棒
(
とちめんぼう
)
を
喰
(
く
)
つて、
192
甘
(
うま
)
く
其
(
その
)
場
(
ば
)
をつくらはうと
思
(
おも
)
ひ、
193
今更
(
いまさら
)
俺
(
おれ
)
を
大事相
(
だいじさう
)
にして
見
(
み
)
せたつて
駄目
(
だめ
)
だよ』
194
ユーズ
『ヤア、
195
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にそれ
丈
(
だけ
)
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
能
(
よ
)
く
分
(
わか
)
る
様
(
やう
)
になつたのかな。
196
大方
(
おほかた
)
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
でも
憑
(
つ
)
きよつたのだな。
197
どうも
怪
(
あや
)
しい。
198
こンな
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
つて
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
皆
(
みな
)
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
199
エス
『
俺
(
おれ
)
をどなたと
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
るか。
200
永
(
なが
)
らく
此
(
この
)
泉
(
いづみ
)
の
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
づる
牢獄内
(
らうごくない
)
に
於
(
おい
)
て
御霊
(
みたま
)
を
清
(
きよ
)
め、
201
大悟
(
たいご
)
徹底
(
てつてい
)
した
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
で
勿体
(
もつたい
)
なくも
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
分霊
(
ぶんれい
)
を
戴
(
いただ
)
き、
202
何
(
なに
)
もかも
世界中
(
せかいぢう
)
の
事
(
こと
)
が
見
(
み
)
えすく
様
(
やう
)
になつたのだ。
203
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
もあの
地震
(
ぢしん
)
で
亡
(
な
)
くなつたであらうがな。
204
あの
様
(
やう
)
な
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
ると、
205
大切
(
たいせつ
)
な
神業
(
しんげふ
)
の
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
すに
依
(
よ
)
つて、
206
神界
(
しんかい
)
から
御
(
お
)
引上
(
ひきあげ
)
になつたのだ。
207
決
(
けつ
)
して
俺
(
おれ
)
は
女房
(
にようばう
)
位
(
くらゐ
)
には
目
(
め
)
をくれてをらぬ。
208
又
(
また
)
何程
(
なにほど
)
吾子
(
わがこ
)
が
可愛
(
かあい
)
いと
云
(
い
)
つても、
209
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
には
変
(
か
)
へられないから、
210
もしもエリナが
親
(
おや
)
に
会
(
あ
)
ひたいと
思
(
おも
)
ふならば、
211
ここ
迄
(
まで
)
面会
(
めんくわい
)
に
来
(
き
)
たがよからう。
212
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
213
出
(
で
)
ぬと
申
(
まを
)
したら、
214
金輪際
(
こんりんざい
)
、
215
五六七
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
迄
(
まで
)
も
此処
(
ここ
)
を
出
(
で
)
ないのだから、
216
早
(
はや
)
くブールに
向
(
むか
)
つて、
217
さう
云
(
い
)
つておくがよからうぞ。
218
あゝ
折角
(
せつかく
)
気分
(
きぶん
)
よく
眠
(
ねむ
)
つてゐた
所
(
ところ
)
を
醒
(
さ
)
まされて、
219
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かない。
220
マアゆつくりと
此処
(
ここ
)
で
一寝入
(
ひとねい
)
りして、
221
岩屋
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
の
活劇
(
くわつげき
)
を
透視
(
とうし
)
する
事
(
こと
)
にせうかい』
222
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
223
ゴロンと
横
(
よこ
)
になり、
224
早
(
はや
)
くも
蒲鉾
(
かまぼこ
)
の
様
(
やう
)
に、
225
板
(
いた
)
を
背中
(
せなか
)
に
負
(
お
)
うて、
226
グウグウと
鼾
(
いびき
)
を
掻
(
か
)
き、
[
※
御校正本・愛世版では「早くも板を背中に負うて、蒲鉾の様に、グウグウと鼾を掻き」だが、カマボコのようにグウグウと鼾をかくとはどういう意味なのか不明である。校定版・八幡版では「早くも蒲鉾のやうに、板を背中に負うて、グウグウと鼾をかき」に直している。霊界物語ネットでも読者の混乱を避けるため、校定版と同じように「蒲鉾の様に」の位置を直した。
]
227
寝入
(
ねい
)
らむとする。
228
落
(
おち
)
つき
払
(
はら
)
つたエスの
態度
(
たいど
)
に、
229
ユーズは
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て、
230
すごすごとブールの
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
231
国依別
(
くによりわけ
)
は
二男
(
になん
)
二女
(
にぢよ
)
を
伴
(
ともな
)
ひブールの
居間
(
ゐま
)
に
通
(
とほ
)
れば、
232
ブールは
俄
(
にはか
)
に
態度
(
たいど
)
を
変
(
か
)
へ、
233
庭
(
には
)
に
下
(
お
)
り、
234
揉手
(
もみで
)
し
乍
(
なが
)
ら、
235
ブール
『これはこれは、
236
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
237
よくマア
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
御
(
ご
)
来訪
(
らいはう
)
下
(
くだ
)
さいました。
238
先達
(
せんだつ
)
ては
三倉山
(
みくらやま
)
の
谷川
(
たにがは
)
に
於
(
おい
)
て、
239
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
240
実
(
じつ
)
にあの
時
(
とき
)
のあなたの
理義
(
りぎ
)
明白
(
めいはく
)
なる
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
には
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りまして、
241
私
(
ひそ
)
かに
御
(
ご
)
高徳
(
かうとく
)
を
慕
(
した
)
つて
居
(
を
)
りましたが、
242
何分
(
なにぶん
)
にも
沢山
(
たくさん
)
の
部下
(
ぶか
)
の
手前
(
てまへ
)
、
243
其
(
その
)
場
(
ば
)
であなた
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
弟子
(
でし
)
になる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
244
今日迄
(
こんにちまで
)
どうぞしてあの
宣伝使
(
せんでんし
)
にお
目
(
め
)
にかかり、
245
立派
(
りつぱ
)
な
御教
(
みをしへ
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
きたいと、
246
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
念
(
ねん
)
じて
居
(
を
)
りました。
247
其
(
その
)
功
(
こう
)
空
(
むな
)
しからず、
248
今日
(
けふ
)
は
又
(
また
)
何
(
なん
)
たる
吉日
(
きちじつ
)
でせう。
249
あなた
様
(
さま
)
のみならず、
250
皆様
(
みなさま
)
も
賑々
(
にぎにぎ
)
しく
御
(
ご
)
来訪
(
らいはう
)
下
(
くだ
)
さいまして、
251
何
(
なん
)
と
御
(
お
)
礼
(
れい
)
申
(
まを
)
してよいやら
御
(
お
)
礼
(
れい
)
の
言
(
ことば
)
も
分
(
わか
)
りませぬ。
252
ヤア
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なくズツと
御
(
お
)
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ、
253
今
(
いま
)
に
御
(
お
)
酒
(
さけ
)
の
用意
(
ようい
)
も
出来
(
でき
)
ませうから』
254
国依別
『
仮令
(
たとへ
)
心
(
こころ
)
は
反対
(
はんたい
)
でも、
255
さう
御
(
ご
)
叮嚀
(
ていねい
)
な
言霊
(
ことたま
)
を
使
(
つか
)
つて
貰
(
もら
)
ふのは
気分
(
きぶん
)
の
良
(
よ
)
いものですよ。
256
左様
(
さやう
)
ならば、
257
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
国依別
(
くによりわけ
)
も、
258
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
りませう……サア
皆
(
みな
)
さま、
259
私
(
わたし
)
と
一所
(
いつしよ
)
におあがりなさいませ』
260
ブール
『サアどなた
様
(
さま
)
も、
261
むさくるしい
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
262
ブールの
私
(
わたし
)
が
居間
(
ゐま
)
です。
263
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく、
264
ズツと
奥
(
おく
)
へお
進
(
すす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
265
五人
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
266
と
五
(
ご
)
人
(
にん
)
はブールの
居間
(
ゐま
)
に
半月形
(
はんげつがた
)
に
坐
(
すわ
)
り
込
(
こ
)
んだ。
267
ブールは
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
手
(
て
)
をつき、
268
国依別
(
くによりわけ
)
の
発言
(
はつげん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
269
国依別
『どうも
永
(
なが
)
らく、
270
キジ、
271
マチの
両人
(
りやうにん
)
が、
272
深
(
ふか
)
い
冷
(
つめ
)
たい
御
(
ご
)
同情
(
どうじやう
)
に
預
(
あづか
)
りまして、
273
おかげで
生命
(
いのち
)
丈
(
だけ
)
は
取
(
と
)
りとめました。
274
是
(
これ
)
と
云
(
い
)
ふのも
全
(
まつた
)
く
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
さまの
御守
(
みまも
)
り、
275
又
(
また
)
あなた
様
(
さま
)
の
残酷
(
ざんこく
)
なる
同情
(
どうじやう
)
に
依
(
よ
)
つて、
276
おかげで
両人
(
りやうにん
)
は
魂
(
たま
)
を
研
(
みが
)
き、
277
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
に
仕上
(
しあが
)
りました。
278
更
(
あらた
)
めて
国依別
(
くによりわけ
)
、
279
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
します』
280
ブール
『ハイ、
281
誠
(
まこと
)
に
行届
(
ゆきとど
)
かぬ
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
282
何分
(
なにぶん
)
災
(
わざはい
)
は
下
(
しも
)
からと
云
(
い
)
つて、
283
私
(
わたくし
)
ブールの
知
(
し
)
らない
事
(
こと
)
を、
284
下
(
した
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
が
勝手
(
かつて
)
に
致
(
いた
)
すもので
御座
(
ござ
)
いますから、
285
エヽ、
286
キジ、
287
マチ
両人
(
りやうにん
)
さまにも、
288
どんな
御
(
お
)
扱
(
あつか
)
ひをして
居
(
を
)
つたか、
289
私
(
わたし
)
はちつとも
存
(
ぞん
)
じませぬ。
290
定
(
さだ
)
めて
御
(
ご
)
不自由
(
ふじゆう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたらう。
291
これも
前生
(
ぜんせい
)
の
因縁
(
いんねん
)
だと
諦
(
あきら
)
めて、
292
どうぞ
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
の
点
(
てん
)
は
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
293
お
許
(
ゆる
)
しあらむ
事
(
こと
)
を
御
(
お
)
願
(
ねが
)
い
致
(
いた
)
します』
294
キジはニコニコし
乍
(
なが
)
ら、
295
キジ
『モシ、
296
ブールさまどうも
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
いました……とは
申
(
まを
)
されませぬ。
297
併
(
しか
)
し
修業
(
しうげふ
)
を
致
(
いた
)
しまして、
298
魂
(
たま
)
を
研
(
みが
)
いたのは
私
(
わたくし
)
の
信仰
(
しんかう
)
の
力
(
ちから
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
299
あなたの
感知
(
かんち
)
さるる
所
(
ところ
)
ではありませぬから、
300
お
礼
(
れい
)
は
申
(
まを
)
しませぬワ。
301
なア、
302
マチ
公
(
こう
)
さうだらう』
303
マチ
『さうともさうとも、
304
余
(
あま
)
り
人
(
ひと
)
を
虐待
(
ぎやくたい
)
しておくと、
305
後
(
あと
)
が
何々
(
なになに
)
ぢやからなア。
306
一本
(
いつぽん
)
のマチくづがあれば、
307
大都会
(
だいとくわい
)
でも、
308
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
でも
焼
(
や
)
きつくせるのだから、
309
此
(
この
)
マチ
公
(
こう
)
だつて
馬鹿
(
ばか
)
にはなりませぬワイ。
310
罷
(
まか
)
り
マチ
がへば、
311
どこやらの
人
(
ひと
)
が、
312
ブールブールと
蒟蒻
(
こんにやく
)
のお
化
(
ばけ
)
のやうに
震
(
ふる
)
ひ
上
(
あが
)
る
様
(
やう
)
な
悲惨事
(
ひさんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
するかも
知
(
し
)
れませぬワイ。
313
用心
(
ようじん
)
なさいませや。
314
マチ
も
湿
(
しめ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
間
(
あひだ
)
は
至極
(
しごく
)
安全
(
あんぜん
)
ですが、
315
湿
(
しめ
)
つぽい
陥穽
(
おとしあな
)
から
這
(
は
)
ひあがつて
来
(
き
)
てこう
燥
(
はしや
)
ぎ
出
(
だ
)
すと、
316
随分
(
ずいぶん
)
険呑
(
けんのん
)
ですよ。
317
アハヽヽヽ』
318
ブール
『
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
は
御尤
(
ごもつと
)
もで
御座
(
ござ
)
いますが、
319
どうぞ
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し、
320
聞直
(
ききなほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
321
ブールが
御
(
お
)
詫
(
わび
)
致
(
いた
)
します』
322
マチ
『アハヽヽヽ、
323
コリヤ
嘘
(
うそ
)
だ、
324
マチ
がひだ。
325
吾々
(
われわれ
)
は
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
に
敵
(
てき
)
もなければ
味方
(
みかた
)
も
持
(
も
)
たない。
326
只
(
ただ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
親
(
おや
)
とし、
327
世界
(
せかい
)
万物
(
ばんぶつ
)
を
兄弟
(
けうだい
)
と
思
(
おも
)
つてゐるのだから、
328
決
(
けつ
)
して
祖神
(
おやがみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をなさる
様
(
やう
)
な
兄弟
(
けうだい
)
喧嘩
(
げんくわ
)
は
致
(
いた
)
しませぬから、
329
ブールさま
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
330
ここに
雛
(
ひな
)
さまの
様
(
やう
)
にして
並
(
なら
)
ンで
御座
(
ござ
)
るナイスは、
331
ヒルの
神館
(
かむやかた
)
の
有名
(
いうめい
)
な
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
332
そしてモ
一人
(
ひとり
)
はお
前
(
まへ
)
さまが
水牢
(
みづろう
)
に
入
(
い
)
れて
苦
(
くるし
)
めて
居
(
ゐ
)
るエスさまの
娘
(
むすめ
)
エリナさまですよ』
333
と
言尻
(
ことばぢり
)
に
力
(
ちから
)
をこめ、
334
大声
(
おほごゑ
)
に
思
(
おも
)
はず
呶鳴
(
どな
)
つて、
335
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き
睨
(
にら
)
みつける。
336
ブールは
驚
(
おどろ
)
いてブルブルと
身
(
み
)
を
震
(
ふる
)
はし、
337
ブール
『ハイ、
338
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
339
能
(
よ
)
うマア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
340
お
父
(
とう
)
さまも
世間
(
せけん
)
からは
如何
(
どう
)
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るか
知
(
し
)
りませぬが、
341
十分
(
じふぶん
)
大切
(
たいせつ
)
にして
居
(
を
)
つて
貰
(
もら
)
うて
居
(
を
)
りますから、
342
今
(
いま
)
に
茲
(
ここ
)
へお
出
(
い
)
でになりませう。
343
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
344
キジ
『さうでせう、
345
キジの
私
(
わたし
)
さへも
陥穽
(
おとしあな
)
に
落
(
おと
)
し、
346
エス
様
(
さま
)
を
真黒
(
まつくろ
)
けの
水牢
(
みづろう
)
の
中
(
なか
)
へ
大切
(
たいせつ
)
に
漬
(
つ
)
けておくのだから、
347
呆
(
あき
)
れますワイ。
348
吾々
(
われわれ
)
も
同
(
おな
)
じく、
349
陥穽
(
おとしあな
)
の
底
(
そこ
)
で、
350
大切
(
たいせつ
)
に
梨
(
なし
)
の
腐
(
くさ
)
つたのや、
351
林檎
(
りんご
)
の
虫喰
(
むしく
)
ひを、
352
あひさに
当
(
あ
)
てがはれ、
353
随分
(
ずいぶん
)
大切
(
たいせつ
)
にして
頂
(
いただ
)
きました。
354
なアエリナさま、
355
ブールさまに
能
(
よ
)
くお
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げなさいや。
356
丸
(
まる
)
で
鬼
(
おに
)
の
様
(
やう
)
な
蛇
(
じや
)
の
様
(
やう
)
な
残虐
(
ざんぎやく
)
なブールさま……ではない……
事
(
こと
)
はない
事
(
こと
)
はない
事
(
こと
)
はないのですから、
357
そこはそれ、
358
御
(
お
)
礼
(
れい
)
にもいろいろ
種類
(
しゆるゐ
)
がありますからなア』
359
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しもユーズは
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
360
のそりのそりと
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
たりける。
361
(
大正一一・八・一九
旧六・二七
松村真澄
録)
362
(昭和九・一二・一八 王仁校正)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 売言買辞
(B)
(N)
姉妹教 >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第31巻(午の巻)
> 第2篇 紅裙隊 > 第12章 冷い親切
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第12章 冷い親切|第31巻|海洋万里|霊界物語|/rm3112】
合言葉「みろく」を入力して下さい→