霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 大地震(だいぢしん)〔八六八〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm3102
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 国依別(くによりわけ)の立去(たちさ)つた後(あと)のエリナは、002掌中(しやうちう)の玉(たま)を何者(なにもの)にか奪(うば)はれたるが如(ごと)き心地(ここち)し乍(なが)ら、003門(かど)に立出(たちい)でて、004宣伝使(せんでんし)の姿(すがた)の広(ひろ)き原野(げんや)に見(み)えなくなる迄(まで)打見(うちみ)まもり、
005エリナ『アヽ御(ご)親切(しんせつ)な御(お)方(かた)であつたナ。006どうぞモウ暫(しばら)く居(ゐ)て下(くだ)さればよかつたのに……俄(にはか)に御(ご)機嫌(きげん)を損(そこ)ねたと見(み)えて、007とうとう帰(かへ)つて了(しま)はれた。008最早(もはや)此(この)上(うへ)は三五(あななひ)の神(かみ)様(さま)に見放(みはな)されたに違(ちがひ)ない。009ヤツパリ昔(むかし)から信仰(しんかう)して来(き)た常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)を、010一心(いつしん)不乱(ふらん)に信仰(しんかう)致(いた)しませう。011お父(とう)さまが日暮(ひぐら)シ山(やま)の牢獄(らうごく)に囚(とら)はれて、012あるにあられぬ責苦(せめく)に会(あ)ひ、013お苦(くる)しみ遊(あそ)ばすのも、014其(その)元(もと)を尋(たづ)ぬれば、015ウラル教(けう)の神司(かむづかさ)であり乍(なが)ら、016ブールの教主(けうしゆ)様(さま)が常(つね)に異端(いたん)とし、017外道(げだう)としてお嫌(きら)ひ遊(あそ)ばす三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)を吾家(わがや)に泊(と)めたり、018又(また)ウラル教(けう)の信者(しんじや)に対(たい)し、019異端(いたん)外道(げだう)の教(をしへ)を御(お)勧(すす)め遊(あそ)ばした天罰(てんばつ)が酬(むく)うたのであらう。020何程(なにほど)誠(まこと)の教(をしへ)でも、021常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)に仕(つか)へて居(ゐ)る以上(いじやう)は、022二心(ふたごころ)を出(だ)して他(た)の神(かみ)様(さま)を信仰(しんかう)すれば、023神罰(しんばつ)が当(あた)るのは当然(たうぜん)だ。024アヽ是(これ)から心(こころ)を改(あらた)めて、025常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)に対(たい)し、026心(こころ)の底(そこ)よりお詫(わ)びを致(いた)し、027主一(しゆいつ)無適(むてき)の信仰(しんかう)を捧(ささ)げませう。028……あゝ常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)、029吾々(われわれ)教子(をしへご)の重々(ぢうぢう)の罪(つみ)、030何卒(なにとぞ)御(お)赦(ゆる)し下(くだ)さいませ』
031と言(い)ひ乍(なが)ら、032家(いへ)に入(い)り、033母親(ははおや)の枕許(まくらもと)に進(すす)み寄(よ)り見(み)れば、034母親(ははおや)は少(すこ)しく頭(あたま)を擡(もた)げ、035ニコニコと笑(わら)ひ初(はじ)めた。
036エリナ『アヽお母(か)アさま! 大変(たいへん)に御(ご)気分(きぶん)がよささうに御座(ござ)いますなア。037こんな嬉(うれ)しい事(こと)は御座(ござ)いませぬ』
038母(テール)『お前(まへ)は余(あま)り両親(りやうしん)を大切(たいせつ)に思(おも)ふ真心(まごころ)より、039遂(つひ)にウラル教(けう)の有難(ありがた)い事(こと)を忘(わす)れ又(また)お父(とう)さまの様(やう)に三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)を吾家(わがや)に連(つ)れ帰(かへ)り、040外道(げだう)の神(かみ)様(さま)を信仰(しんかう)なさるものだから、041私(わたし)も又(また)もやブールの大将(たいしやう)に睨(にら)まれ、042お前(まへ)と私(わし)とが、043再(ふたた)びお父(と)うさまの様(やう)に、044水牢(みづろう)の責苦(せめく)に会(あ)はねばならぬかと、045それが心配(しんぱい)になつて、046病気(びやうき)はだんだん重(おも)る計(ばか)り、047心(こころ)の中(なか)で……常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)、048どうぞ一(いち)時(じ)も早(はや)く宣伝使(せんでんし)が帰(かへ)つて呉(く)れます様(やう)……と、049祈願(きぐわん)をこらして居(を)りました。050おかげに依(よ)つて外道(げだう)の宣伝使(せんでんし)、051吾家(わがや)を立出(たちい)で、052姿(すがた)を見(み)せなくなつたので、053ヤツと安心(あんしん)し、054俄(にはか)に気分(きぶん)も良(よ)くなつて来(き)たのよ。055モウ是(これ)からどんな事(こと)があつても、056外道(げだう)の宣伝使(せんでんし)を吾家(わがや)へ連(つ)れて帰(かへ)ることはなりませぬぞや。057お前(まへ)は親(おや)を助(たす)けようと思(おも)うて焦(あせ)り、058却(かへつ)て、059外道(げだう)に迷(まよ)ひ、060親(おや)を苦(くる)しめる様(やう)な事(こと)になるから、061どうしても斯(こ)うしても常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)の教(をしへ)を疎外(そぐわい)し、062外道(げだう)に迷(まよ)はぬ様(やう)に心得(こころえ)て下(くだ)されや。063おかげは忽(たちま)ち此(この)通(とほ)りだから、064神(かみ)様(さま)が種々(いろいろ)として、065吾々(われわれ)親子(おやこ)の信仰(しんかう)の厚薄(こうはく)を御(お)試(ため)し遊(あそ)ばすのだから、066チツとも油断(ゆだん)はなりませぬぞえ』
067エリナ『ハイ、068現当(げんたう)利益(りやく)と言(い)ひ、069お母(か)アさまのお言葉(ことば)といひ、070只今(ただいま)限(かぎ)りスツパリと心(こころ)を改(あらた)め、071決(けつ)して外(ほか)の道(みち)へは迷(まよ)ひませぬから、072御(ご)安心(あんしん)下(くだ)さいませ』
073母『あゝそれを聞(き)いて母(はは)も安心(あんしん)しました。074サア早(はや)く常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)に御(お)礼(れい)を申上(まをしあ)げてお呉(く)れ!』
075エリナ『ハイ、076只今(ただいま)直(すぐ)に感謝(かんしや)の詞(ことば)を捧(ささ)げませう』
077と直(ただ)ちに、078庭先(にはさき)を流(なが)るる細谷川(ほそたにがは)に身(み)を清(きよ)め、079衣類(いるゐ)を着替(きか)へ、080恭(うやうや)しく感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し居(ゐ)る。
081 かかる所(ところ)へ日暮(ひぐら)シ山(やま)のブールの使(つかい)として、082アナンは四五(しご)人(にん)の部下(ぶか)を引(ひき)つれ、083此(この)家(や)に荒々(あらあら)しく入来(いりきた)り、084いとも声高(こわだか)にエリナに向(むか)ひ、
085アナン『オイ、086エリナとやら、087貴様(きさま)は又(また)しても、088三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)を吾家(わがや)に引入(ひきい)れ、089朝夕(あさゆふ)……親(おや)の病気(びやうき)を直(なほ)さうとか、090父(ちち)の危難(きなん)を遁(のが)れさせ玉(たま)へとか云(い)つて、091祈(いの)らして居(を)つたではないか? 近所(きんじよ)の者(もの)の注進(ちうしん)によつて、092何(なに)も彼(か)もスツカリと教主(けうしゆ)の耳(みみ)に這入(はい)つてゐるぞ! それにも拘(かか)はらず、093三五教(あななひけう)の乱暴者(らんばうもの)キジ、094マチの両人(りやうにん)を差向(さしむ)け、095聖場(せいぢやう)を蹂躙(じうりん)せむと致(いた)した図太(づぶと)き代物(しろもの)……サア教主(けうしゆ)の命令(めいれい)だ、096尋常(じんじやう)に手(て)を廻(まは)せ。097日暮(ひぐら)シ山(やま)の館(やかた)に連(つ)れ帰(かへ)り、098其(その)方(はう)もエスの様(やう)に水牢(みづろう)に投込(なげこ)み、099戒(いまし)めてやらねばならぬ』
100と鼻息(はないき)荒(あら)く呶鳴(どな)りつける。101母親(ははおや)はアナンの声(こゑ)を聞(き)いて又(また)もや心(こころ)を痛(いた)め、102猛烈(まうれつ)なる癪気(しやくき)を起(おこ)し、103其(その)場(ば)に『ウン』と倒(たふ)れて人事(じんじ)不詳(ふしよう)の体(てい)なり。104エリナは身(み)も世(よ)もあられぬ心地(ここち)し乍(なが)ら、105こわごわ手(て)を仕(つか)へ、
106エリナ『これはこれはアナンの大将(たいしやう)様(さま)、107能(よ)くこそ御(ご)入来(じゆらい)下(くだ)さいました。108御存(ごぞん)じの通(とほ)り、109父(ちち)は館(やかた)に囚(とら)はれ、110跡(あと)に残(のこ)つた一人(ひとり)の母(はは)は此(この)通(とほ)りの大病(たいびやう)、111今(いま)私(わたし)が引(ひ)つ立(た)てられて参(まゐ)りますれば、112あとに誰(たれ)が母(はは)の世話(せわ)を致(いた)す者(もの)が御座(ござ)いませう。113是非(ぜひ)行(ゆ)かねばならぬ者(もの)なれば潔(いさぎよ)く参(まゐ)りますが、114どうぞ此(この)母(はは)の病気(びやうき)が直(なほ)りますまで、115御(ご)猶予(いうよ)を願(ねが)ひます』
116 アナンは烈(はげ)しく首(くび)を左右(さいう)に振(ふ)り、
117アナン『あゝイヤイヤ、118其(その)事(こと)許(ばか)りは罷(まか)り成(な)らぬ。119一時(いつとき)も早(はや)く汝(なんぢ)を召捕(めしとり)来(きた)れよとの厳命(げんめい)、120到底(たうてい)吾々(われわれ)の独断(どくだん)にて其(その)方(はう)に猶予(いうよ)を与(あた)へる事(こと)は出来(でき)ない。121何(なん)と云(い)つても引捉(ひつとら)へて帰(かへ)らねば、122此(この)方(はう)の役目(やくめ)が済(す)まぬ。123そうして三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)は何時(いつ)此処(ここ)を立(た)つたか?』
124エリナ『只今(ただいま)御(お)立(た)ちになりました』
125アナン『さうだらう。126最前(さいぜん)歌(うた)を歌(うた)つて行(い)きよつたのが、127神力(しんりき)無双(むそう)の国依別(くによりわけ)だらう。128彼奴(あいつ)が居(ゐ)やがると、129チツと此方(こつち)も都合(つがふ)が好(よ)くないのだ。130二三(にさん)日前(にちまへ)から、131此(この)家(いへ)を遠巻(とほまき)に巻(ま)いてゐたのだ。132サアもう斯(か)うなる上(うへ)は、133泣(な)いても悔(くや)むでもおつつかぬ。134キリキリと手(て)をまはさぬか』
135 エリナは自棄(やけ)気味(ぎみ)になり、136容(かたち)を改(あらた)め、137悪胴(わるどう)を据(す)ゑ、
138エリナ『コレ、139アナンさま! お前(まへ)さまも余程(よほど)良(よ)い腰抜(こしぬけ)だなア。140日暮(ひぐら)シ河(がは)では脆(もろ)くも一人(ひとり)の宣伝使(せんでんし)に追(お)ひまくられ、141又(また)たつた一人(ひとり)の国依別(くによりわけ)が恐(おそ)ろしうて、142二晩(ふたばん)も三晩(みばん)も、143此(この)暑(あつ)い、144蚊(か)の喰(く)うのに、145頼(たの)みもせぬ私(わたし)の家(うち)の夜警(やけい)をして下(くだ)され、146渋茶(しぶちや)の一杯(いつぱい)も進(しん)ぜるのが道(みち)かは知(し)りませぬが、147餓鬼(がき)にやる茶(ちや)があつても、148お前(まへ)さま等(ら)に呑(の)ます茶(ちや)はありませぬワ。149そこに谷川(たにがは)の水(みづ)が流(なが)れてゐるから、150それなつと呑(の)むで、151モウ一(ひと)きり御(ご)講演(かうえん)を願(ねが)ひます。152ラツパ節(ぶし)でも法螺貝(ほらがい)節(ぶし)でも構(かま)ひませぬワ。153お母(か)アさまの冥途(めいど)の土産(みやげ)に、154一(ひと)つ力(ちから)一杯(いつぱい)吹(ふ)き立(たて)て下(くだ)さい』
155 アナンはクワツと怒(いか)り、156巨眼(きよがん)を見開(みひら)き、
157アナン『コリヤ女(をんな)! 譬(たと)へがたなき汝(なんぢ)の雑言(ざふごん)無礼(ぶれい)、158最早(もはや)聞捨(ききすて)はならぬぞ』
159エリナ『お父(と)うさまはお前(まへ)達(たち)悪人(あくにん)の為(ため)に囚(とら)へられ、160お母(か)アさまは此(この)通(とほ)りの重病(ぢうびやう)、161たつた今(いま)の先(さき)、162余程(よほど)快方(くわいはう)にお向(むか)ひ遊(あそ)ばし、163ヤツと安心(あんしん)する間(ま)もなく、164お前(まへ)がここへふみ込(こ)んで大声(おほごゑ)を出(だ)し、165お母(か)アさまを最早(もはや)取返(とりかへ)しのならぬ様(やう)な重態(ぢうたい)におとして了(しま)ひよつた以上(いじやう)は、166お母(か)アさまの御(ご)寿命(じゆめう)も今日(けふ)一(いち)日(にち)が保(たも)ちかねる。167さうならば此(この)エリナは最早(もはや)自棄(やけ)くそだ。168たかが男(をとこ)の五匹(ごひき)や十匹(じつぴき)、169何(なに)が恐(おそ)ろしい……国依別(くによりわけ)の宣伝使(せんでんし)より神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の神力(しんりき)を授(さづ)かり、170最早(もはや)立派(りつぱ)な三五教(あななひけう)の女(をんな)宣伝使(せんでんし)だ。171指(ゆび)一本(いつぽん)でも触(さ)へるなら、172見事(みごと)触(さ)へて見(み)よ』
173と呶鳴(どな)り立(た)て、174睨(にら)み付(つ)けたる。175其(その)権幕(けんまく)に流石(さすが)剛情(がうじやう)我慢(がまん)のアナンも辟易(へきえき)し、176エリナの顔(かほ)を見(み)つめて稍(やや)不安(ふあん)の念(ねん)に沈(しづ)みゐる。177母親(ははおや)は『キヤツ』と一声(ひとこゑ)悲鳴(ひめい)をあげた儘(まま)、178縡切(ことぎ)れにける。179エリナは驚(おどろ)いて、
180エリナ『お母(か)アさま!モ一度(いちど)物(もの)を言(い)うて下(くだ)さいませ……エリナで御座(ござ)います』
181と死骸(しがい)に取付(とりつ)き、182あたり構(かま)はず泣(な)き叫(さけ)ぶ。183アナンは今(いま)こそと、184手早(てばや)く捕縄(とりなは)を取出(とりだ)し、185エリナの首(くび)にひつかけようとする一刹那(いつせつな)、186俄(にはか)に轟々(ぐわうぐわう)ガタガタと凄(すさま)じき物音(ものおと)聞(きこ)え来(き)たりければ、187アナンを始(はじ)め一同(いちどう)は驚(おどろ)き戸外(こぐわい)に駆出(かけだ)す刹那(せつな)強烈(きやうれつ)なる大地震(おほぢしん)起(おこ)り、188アナンを始(はじ)め一同(いちどう)は生命(いのち)カラガラ、189転(こ)けつまろびつ、190常世(とこよ)神王(しんのう)の祠(ほこら)の前(まへ)を指(さ)して、191四這(よつばい)となり逃(に)げて行(ゆ)く。
192 地震(ぢしん)は益々(ますます)烈(はげ)しさの度(ど)を加(くは)へ来(き)たる。193エリナは母親(ははおや)の死体(したい)を抱(かか)へて外(そと)へ飛出(とびだ)さうとする途端(とたん)、194家(いへ)はメキメキメキと音(おと)を立(た)て、195バサリと打(う)ち倒(たふ)れける。196エリナは止(や)むを得(え)ず、197身(み)を以(もつ)て逃(のが)れたるが、198忽(たちま)ち火(ひ)を失(うしな)ひ、199エリナの家(いへ)は火煙(くわえん)濛々(もうもう)として立上(たちのぼ)り、200母親(ははおや)の死体(したい)は惟神(かむながら)的(てき)に火葬(くわさう)に附(ふ)せられ了(おは)りぬ。201上下動(じやうげどう)の激震(げきしん)は刻々(こくこく)に烈(はげ)しく、202エリナは松(まつ)の木(き)の株(かぶ)にシカと抱付(だきつ)き、203目(め)を塞(ふさ)ぎ、204地震(ぢしん)の歇(や)むのを待(ま)ち乍(なが)ら、205一心(いつしん)不乱(ふらん)に『国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)守(まも)り玉(たま)へ幸(さち)はひ玉(たま)へ……』と祈念(きねん)をこらしける。206……漸(やうや)くにして地震(ぢしん)は止(と)まり、207エリナはホツと一息(ひといき)し乍(なが)ら、208ここに居(を)つては又(また)何時(いつ)捕手(とりて)の襲(おそ)ひ来(く)るやも計(はか)られずと、209俄(にはか)に国依別(くによりわけ)の宣伝使(せんでんし)が恋(こひ)しくなり、210ヒルの都(みやこ)を指(さ)して一目散(いちもくさん)に走(はし)り行(ゆ)く。
211 ヒルの都(みやこ)を遠(とほ)く見下(みお)ろせば、212大激震(だいげきしん)の為(ため)火災(くわさい)起(おこ)り、213火(ひ)は天(てん)に冲(ちう)し、214空(そら)の雲(くも)迄(まで)真赤(まつか)に染(そ)まり、215所謂(いはゆる)雲焼(くもやけ)志(し)居(ゐ)たりける。
216(大正一一・八・一八 旧六・二六 松村真澄録)
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