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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第31巻(午の巻)
序歌
総説
第1篇 千状万態
第1章 主一無適
第2章 大地震
第3章 救世神
第4章 不知恋
第5章 秋鹿の叫
第6章 女弟子
第2篇 紅裙隊
第7章 妻の選挙
第8章 人獣
第9章 誤神託
第10章 噂の影
第11章 売言買辞
第12章 冷い親切
第13章 姉妹教
第3篇 千里万行
第14章 樹下の宿
第15章 丸木橋
第16章 天狂坊
第17章 新しき女
第18章 シーズンの流
第19章 怪原野
第20章 脱皮婆
第21章 白毫の光
第4篇 言霊将軍
第22章 神の試
第23章 化老爺
第24章 魔違
第25章 会合
余白歌
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海洋万里(第25~36巻)
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第31巻(午の巻)
> 第3篇 千里万行 > 第14章 樹下の宿
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(B)
(N)
丸木橋 >>>
第一四章
樹下
(
じゆか
)
の
宿
(
やど
)
〔八八〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
篇:
第3篇 千里万行
よみ(新仮名遣い):
せんりばんこう
章:
第14章 樹下の宿
よみ(新仮名遣い):
じゅかのやど
通し章番号:
880
口述日:
1922(大正11)年08月19日(旧06月27日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
国依別はキジに安彦という名を与え、マチには宗介という名を与えた。道々二人に教えを伝えながら、ブラジル峠を越えて大平原に出た。国依別と安彦は旅の疲れに寝てしまったが、宗介は何となく寝つけず、聞こえてくる猛獣の声に震えていた。
明け方、猛獣の声が聞こえなくなったが、大木の切り株に二人の男が腰を掛けてひそびそ話にふけっているのが耳に入ってきた。宗介が耳を澄ませて聞き入ると、それは秋山別とモリスだった。
秋山別とモリスは国依別が紅井姫とエリナを連れていると思って、執念深く追ってきていたのであった。二人はこの先の丸木橋に仕掛けをして、国依別を落として亡き者にしようと企んでいた。
宗介はこれを聞いて、国依別に先に知らせるよりも、丸木橋のところで自分が天眼通で彼らの企みを見破ったように見せかければ、国依別も自分を見直すだろう、と我知らず独り言が大きくなった。
安彦は宗介の独り言を聞いてしまい、宗介をからかう。しかし国依別は最初からすべて聞いていた。国依別は、宗介の頼みを聞いて、名を宗彦と改めた。
国依別は、秋山別とモリスの企みを逆手に取って、女の声色を使ってまんまと丸木橋をわたって出し抜いてやろうという。一行は再び眠りについて、夜が明けてから進んで行くことになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-04-07 18:03:59
OBC :
rm3114
愛善世界社版:
165頁
八幡書店版:
第6輯 103頁
修補版:
校定版:
169頁
普及版:
78頁
初版:
ページ備考:
001
波
(
なみ
)
に
浮
(
うか
)
べる
高砂
(
たかさご
)
の
002
ヒルとハルとの
国依別
(
くによりわけ
)
が
003
険
(
けは
)
しき
山
(
やま
)
をよぢ
登
(
のぼ
)
り
004
安彦
(
やすひこ
)
、
宗介
(
むねすけ
)
両人
(
りやうにん
)
を
005
従
(
したが
)
ひ
登
(
のぼ
)
るブラジルの
006
細
(
ほそ
)
き
谷間
(
たにま
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
007
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についではるばると
008
ハルの
原野
(
げんや
)
を
打渉
(
うちわた
)
り
009
アマゾン
河
(
がは
)
の
森林
(
しんりん
)
に
010
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
迷
(
まよ
)
ひ
込
(
こ
)
み
011
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
や
012
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
013
モールバンドの
怪獣
(
くわいじう
)
を
014
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
万民
(
ばんみん
)
の
015
さも
恐
(
おそ
)
ろしき
災禍
(
わざはい
)
を
016
除
(
のぞ
)
き
清
(
きよ
)
めし
物語
(
ものがたり
)
017
いよいよ
茲
(
ここ
)
に
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つる。
018
国依別
(
くによりわけ
)
はキジに
安彦
(
やすひこ
)
といふ
名
(
な
)
を
与
(
あた
)
へ、
019
マチに
宗介
(
むねすけ
)
と
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
を
与
(
あた
)
へ、
020
道々
(
みちみち
)
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し
乍
(
なが
)
ら、
021
其
(
その
)
昔
(
むかし
)
淤縢山
(
おどやま
)
津見
(
づみの
)
司
(
かみ
)
が、
022
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
の
化身
(
けしん
)
なる
蚊々虎
(
かがとら
)
と
通過
(
つうくわ
)
したる
[
※
第8巻第15~16章参照
]
、
023
ブラジル
峠
(
たうげ
)
の
山頂
(
さんちやう
)
に
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め、
024
それより
大原野
(
だいげんや
)
に
出
(
い
)
づる
事
(
こと
)
となつた。
025
国依別
(
くによりわけ
)
一行
(
いつかう
)
はブラジル
峠
(
たうげ
)
の
山麓
(
さんろく
)
にて
日
(
ひ
)
を
暮
(
く
)
らし、
026
大木
(
たいぼく
)
の
根元
(
ねもと
)
に
夜露
(
よつゆ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
事
(
こと
)
となりぬ。
027
国依別
(
くによりわけ
)
、
028
安彦
(
やすひこ
)
は
他愛
(
たあい
)
もなく
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れに、
029
よく
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
030
宗介
(
むねすけ
)
は
何
(
なん
)
となく、
031
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがして、
032
マンジリとも
得
(
え
)
せず、
033
二人
(
ふたり
)
の
間
(
あひだ
)
に
挟
(
はさ
)
まつて、
034
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
た。
035
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆる
猛獣
(
まうじう
)
の
声
(
こゑ
)
、
036
心
(
しん
)
飛
(
と
)
び
魂
(
こん
)
消
(
き
)
ゆる
計
(
ばか
)
り、
037
其
(
その
)
厭
(
いや
)
らしさに
宗介
(
むねすけ
)
は、
038
戦慄
(
せんりつ
)
堪
(
た
)
へ
切
(
き
)
れず、
039
安彦
(
やすひこ
)
の
体
(
からだ
)
にしつかり
喰
(
くら
)
ひ
付
(
つ
)
き、
040
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
かれと
祈
(
いの
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
041
夜明
(
よあけ
)
に
間近
(
まぢか
)
くなつたと
見
(
み
)
え、
042
猛獣
(
まうじう
)
の
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
は
何時
(
いつ
)
とはなしに
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
043
折柄
(
をりから
)
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
、
044
大木
(
たいぼく
)
の
株
(
かぶ
)
に
腰
(
こし
)
をかけ、
045
ヒソビソ
話
(
ばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
046
同
(
おな
)
じ
一本
(
いつぽん
)
の
大木
(
たいぼく
)
と
雖
(
いへど
)
も、
047
五十丈
(
ごじふぢやう
)
許
(
ばか
)
り
[
※
1丈=約3mとすると50丈=約150mになる
]
も
周
(
まは
)
つた
幹
(
みき
)
、
048
一方
(
いつぱう
)
の
方
(
はう
)
には
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
他愛
(
たあい
)
なく
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
るのも、
049
一方
(
いつぱう
)
に
腰打
(
こしうち
)
かけてる
二人
(
ふたり
)
の
目
(
め
)
には
止
(
と
)
まらうやうもなかつた。
050
どこともなくヒソビソ
話
(
ばなし
)
が
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つて
来
(
く
)
るので
宗介
(
むねすけ
)
は、
051
ソツと
空
(
そら
)
をすかし
乍
(
なが
)
ら、
052
声
(
こゑ
)
する
方
(
はう
)
に
近寄
(
ちかよ
)
つて
耳
(
みみ
)
を
立
(
た
)
てて、
053
一言
(
ひとこと
)
も
洩
(
も
)
らさじと
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
054
モリス
『オイ
秋
(
あき
)
……ここまで
捜
(
さが
)
しに
来
(
き
)
たのだが、
055
モウ
駄目
(
だめ
)
だぞ。
056
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
では、
057
ハル、
058
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
に
追
(
お
)
ひまくられ、
059
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けば
国依別
(
くによりわけ
)
は
今朝
(
けさ
)
程
(
ほど
)
立
(
た
)
つたと
言
(
い
)
ひよつたので、
060
何人
(
なんにん
)
連
(
づ
)
れかと
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
れば、
061
指
(
ゆび
)
を
三本
(
さんぼん
)
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
やがつた。
062
的切
(
てつき
)
り、
063
ク
印
(
じるし
)
とエ
印
(
じるし
)
を
連
(
つ
)
れてノホホンで、
064
宣伝
(
せんでん
)
を
だし
に
天下
(
てんか
)
を
漫遊
(
まんいう
)
すると
云
(
い
)
ふ
考
(
かんが
)
へだ。
065
俺
(
おれ
)
も
男
(
をとこ
)
の
意地
(
いぢ
)
で、
066
仮令
(
たとへ
)
命
(
いのち
)
がなくなつても、
067
彼奴
(
あいつ
)
の
後
(
あと
)
をつけ
狙
(
ねら
)
ひ、
068
国依別
(
くによりわけ
)
の
隙
(
すき
)
を
窺
(
うかが
)
ひ、
069
谷底
(
たにそこ
)
へでも
突
(
つ
)
き
落
(
おと
)
し、
070
二人
(
ふたり
)
のナイスを
此方
(
こちら
)
のものにせぬことには、
071
阿呆
(
あほ
)
らしうて、
072
世間
(
せけん
)
へ
顔出
(
かほだ
)
しも
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
073
最早
(
もはや
)
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らぬと
云
(
い
)
つて
此
(
この
)
儘
(
まま
)
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
074
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
はあるまいかなア、
075
秋
(
あき
)
さま』
076
秋山別
『モリ
公
(
こう
)
、
077
お
前
(
まへ
)
も
中々
(
なかなか
)
執着心
(
しふちやくしん
)
が
深
(
ふか
)
いねい。
078
こんな
所迄
(
ところまで
)
スタスタと
尻
(
しり
)
を
付
(
つ
)
けて
来
(
く
)
るのだから、
079
こンな
連中
(
れんぢう
)
に
狙
(
ねら
)
はれた
女
(
をんな
)
こそ、
080
蛇
(
へび
)
に
魅入
(
みい
)
られた
蟇
(
がま
)
のやうなものだよ。
081
本当
(
ほんたう
)
に
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
ふ
程
(
ほど
)
、
082
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
が
可哀相
(
かあいさう
)
になつて
来
(
き
)
た。
083
俺
(
おれ
)
もここまで
心猿
(
しんゑん
)
意馬
(
いば
)
の
狂
(
くる
)
ひに
引
(
ひ
)
かされて、
084
来
(
きた
)
るは
来
(
き
)
たものの、
085
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
086
心
(
こころ
)
の
猿
(
さる
)
も
思
(
おも
)
ひの
馬
(
うま
)
も、
087
どつかへ、
088
愛想
(
あいさう
)
をつかして、
089
絶望
(
ぜつばう
)
を
叫
(
さけ
)
び、
090
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
つたやうな
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
た。
091
モウ
仕方
(
しかた
)
がない、
092
是
(
これ
)
から
後
(
あと
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
さうぢやないか』
093
モリス
『
勝手
(
かつて
)
にせい、
094
俺
(
おれ
)
は
何処迄
(
どこまで
)
もやり
遂
(
と
)
げるのだ。
095
男
(
をとこ
)
がのめのめとどの
面
(
つら
)
さげて、
096
国許
(
くにもと
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようかい』
097
秋山別
『
併
(
しか
)
し
何程
(
なにほど
)
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
懸想
(
けさう
)
して
居
(
を
)
つても、
098
国依別
(
くによりわけ
)
の
居
(
ゐ
)
る
以上
(
いじやう
)
は
駄目
(
だめ
)
ぢやないか。
099
彼奴
(
あいつ
)
を
如何
(
どう
)
かして……』
100
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
小声
(
こごゑ
)
で
何
(
なに
)
か
耳
(
みみ
)
のはたで
稍
(
やや
)
暫
(
しば
)
し
囁
(
ささや
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
101
宗介
(
むねすけ
)
は
何
(
ど
)
うしても
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
が
余
(
あま
)
り
低
(
ひく
)
いので
聞
(
きこ
)
えなかつた。
102
モリス
『……
此処
(
ここ
)
を
一
(
いち
)
里
(
り
)
計
(
ばか
)
り
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、
103
丸木橋
(
まるきばし
)
がある。
104
相当
(
さうたう
)
に
深
(
ふか
)
い
谷川
(
たにがは
)
で、
105
そこへ
落
(
お
)
ちようものなら、
106
どんな
太
(
ふと
)
い
男
(
をとこ
)
でも
五体
(
ごたい
)
がメチヤメチヤになつて
了
(
しま
)
ふと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だから、
107
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に
先
(
さき
)
へ
廻
(
まは
)
つて、
108
其
(
その
)
橋
(
はし
)
のつつぱりを
取
(
と
)
り、
109
国依別
(
くによりわけ
)
が
一足
(
ひとあし
)
跨
(
また
)
げるや
否
(
いな
)
や、
110
バサツと
落
(
お
)
ちる
様
(
やう
)
に
工夫
(
くふう
)
をせうぢやないか。
111
藤蔓
(
ふぢつる
)
か
何
(
なん
)
かで、
112
橋
(
はし
)
の
一方
(
いつぱう
)
を
括
(
くく
)
つておき、
113
国依別
(
くによりわけ
)
が
跨
(
また
)
げるや
否
(
いな
)
や、
114
谷底
(
たにそこ
)
へ
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
つて、
115
其
(
その
)
綱
(
つな
)
を
引
(
ひ
)
くのだ。
116
さうすると、
117
ズヽヽヽズドン、
118
ウン、
119
キヤア……とそれつきり、
120
憐
(
あは
)
れなりける
次第
(
しだい
)
なりけりだ。
121
さうせうぢやないか』
122
秋山別
『それ
程
(
ほど
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
つたつて、
123
国依別
(
くによりわけ
)
の
通
(
とほ
)
つた
後
(
あと
)
だつたら、
124
骨折損
(
ほねをりぞん
)
の
草臥儲
(
くたびれまう
)
けになつて
了
(
しま
)
うぢやないか』
125
モリス
『ナアニ、
126
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ。
127
半日
(
はんにち
)
位
(
くらゐ
)
先
(
さき
)
に
出
(
で
)
たと
云
(
い
)
つても、
128
向
(
むか
)
うは
足弱
(
あしよわ
)
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れてるんだし、
129
此方
(
こちら
)
は
健脚家
(
けんきやくか
)
計
(
ばか
)
りのお
揃
(
そろひ
)
だから、
130
キツと
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
が
先
(
さき
)
へ
勝
(
か
)
つにきまつてる。
131
彼奴
(
あいつ
)
はまだ
二三
(
にさん
)
里
(
り
)
位
(
くらゐ
)
後
(
あと
)
に
女
(
をんな
)
と
意茶
(
いちや
)
ついて
居
(
ゐ
)
よるに
違
(
ちが
)
ひない。
132
サア
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
かぬと、
133
追
(
お
)
ひつかれると
大変
(
たいへん
)
だぞ。
134
作業
(
さげふ
)
が
済
(
す
)
まぬ
中
(
うち
)
に
来
(
き
)
よつたら
何
(
なん
)
にもならぬからなア。
135
もしも
女
(
をんな
)
が
渡
(
わた
)
りよつたら、
136
黙
(
だま
)
つて
渡
(
わた
)
してやるのだ。
137
国依別
(
くによりわけ
)
が
足
(
あし
)
を
二歩
(
ふたあし
)
三歩
(
みあし
)
かけよつたが
最後
(
さいご
)
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
ツで
引張
(
ひつぱ
)
るのだ。
138
何
(
なん
)
と
秋
(
あき
)
さま、
139
妙案
(
めうあん
)
だらう』
[
※
御校正本・愛世版では「もしも女が渡りよつたら」以降を秋山別のセリフにしているが、それでは会話がおかしくなる。作戦を練っているのがモリスで、それに否定的なのが秋山別である。校定版ではそれを考慮して、区切り位置を「一人の女が」に変えたようである。また「何とモリ公」を「何と秋さま」に変えている。霊界物語ネットでも読者の混乱を避けるため、校定版と同じように修正した。
]
140
秋山別
『
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち、
141
国依別
(
くによりわけ
)
が
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
ち、
142
又
(
また
)
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
後
(
あと
)
にあり、
143
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
単縦陣
(
たんじうぢん
)
を
作
(
つく
)
つて
渡
(
わた
)
りよつたら、
144
何
(
ど
)
うするのだ。
145
それこそ
虻
(
あぶ
)
蜂
(
はち
)
取
(
と
)
らずの
草臥
(
くたびれ
)
もうけになつて
了
(
しま
)
うぢやないか』
146
モリス
『そこは
又
(
また
)
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くぢやないか。
147
仮令
(
たとへ
)
落込
(
おちこ
)
ンだ
所
(
ところ
)
で、
148
チツと
位
(
くらゐ
)
怪我
(
けが
)
をしても、
149
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
乍
(
なが
)
ら
死
(
し
)
ぬ
気
(
き
)
づかひはないワ。
150
そこで
国依別
(
くによりわけ
)
は
目
(
め
)
をまかす、
151
そ
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
放
(
ほ
)
つとけばそれで
仕舞
(
しまひ
)
だ。
152
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
には
水
(
みづ
)
を
呑
(
の
)
ませ、
153
介抱
(
かいほう
)
し……コレコレ
旅
(
たび
)
の
御
(
お
)
女中
(
ぢよちう
)
……とか
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つて
助
(
たす
)
けてやる。
154
さうすれば
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
が、
155
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
命
(
いのち
)
の
親様
(
おやさま
)
と
云
(
い
)
つて、
156
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
つて
クレナイ
事
(
こと
)
もあるまいぞ。
157
現
(
げん
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
がラバーされたのも
大地震
(
だいぢしん
)
の
時
(
とき
)
に
助
(
たす
)
けてやつたのが
原因
(
げんいん
)
ぢやからのウ』
158
秋山別
『それもさうだなア。
159
サア
早
(
はや
)
く
往
(
い
)
つて
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
りかからうかい。
160
グヅグヅして
居
(
を
)
ると
六菖
(
ろくしやう
)
十菊
(
じつきく
)
、
161
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
りで、
162
何
(
なん
)
にもならないワ。
163
オ
一
(
いち
)
、
164
二
(
に
)
、
165
三
(
さん
)
!』
166
と、
167
細
(
ほそ
)
き
谷路
(
たにみち
)
を、
168
怪
(
あや
)
しげにすかし
乍
(
なが
)
ら、
169
進ンで
行
(
ゆ
)
く。
170
宗介
(
むねすけ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
往
(
い
)
つた
後
(
あと
)
で、
171
宗介
『
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
は
今夜
(
こんや
)
に
限
(
かぎ
)
つて
寝
(
ね
)
られないと
思
(
おも
)
へば、
172
秋山別
(
あきやまわけ
)
、
173
モリスの
両人
(
りやうにん
)
、
174
あンな
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
企
(
たく
)
ンでゐやがるのだなア。
175
それも
天罰
(
てんばつ
)
に
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
聞
(
きこ
)
えるやうにすつかり
喋
(
しやべ
)
つて
行
(
ゆ
)
きよつた。
176
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
がこンな
計画
(
けいくわく
)
をして
居
(
ゐ
)
るからと、
177
俺
(
おれ
)
に
霊
(
れい
)
をかけ、
178
ねかさなかつたのだナ。
179
何
(
なん
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
恵
(
めぐみ
)
はどこからどこ
迄
(
まで
)
も
行届
(
ゆきとど
)
いたものだ。
180
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
るまいと
思
(
おも
)
つて、
181
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
企
(
たく
)
むと、
182
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りだ。
183
天
(
てん
)
知
(
し
)
る
地
(
ち
)
知
(
し
)
る
吾
(
わ
)
れも
知
(
し
)
る、
184
宗介
(
むねすけ
)
迄
(
まで
)
が
知
(
し
)
ると
云
(
い
)
ふのだから、
185
怖
(
こわ
)
いものだなア。
186
ドレドレ
此
(
この
)
秘密
(
ひみつ
)
を
聞
(
き
)
き
取
(
と
)
つて
手柄話
(
てがらばなし
)
を
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
に
報告
(
はうこく
)
せうかなア……イヤイヤ
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
てさう
早
(
はや
)
く
云
(
い
)
ふと
値打
(
ねうち
)
がない。
187
橋
(
はし
)
の
詰
(
つめ
)
まで
行
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
188
国依別
(
くによりわけ
)
さまが
足
(
あし
)
をかけようとなさつたら……モシ
御
(
お
)
待
(
ま
)
ちなさい、
189
私
(
わたくし
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
で
見
(
み
)
れば、
190
此
(
この
)
橋
(
はし
)
は
浮橋
(
うきはし
)
ですから
険呑
(
けんのん
)
です。
191
秋
(
あき
)
、
192
モリの
二人
(
ふたり
)
が
綱
(
つな
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つて
居
(
を
)
りますから……と
抱止
(
だきと
)
めるのだ。
193
さうすると
国依別
(
くによりわけ
)
さまも
喜
(
よろこ
)
びて、
194
宗介
(
むねすけ
)
と
替
(
か
)
へて
下
(
くだ
)
さつた
名
(
な
)
を
又
(
また
)
、
195
昔
(
むかし
)
の
名
(
な
)
の
宗彦
(
むねひこ
)
さまと
替
(
か
)
へて
下
(
くだ
)
さるかも
知
(
し
)
れぬ。
196
おゝさうだ
言
(
い
)
はぬが
花
(
はな
)
だ』
197
と
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて、
198
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら、
199
高
(
たか
)
い
声
(
こゑ
)
で
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
200
安彦
(
やすひこ
)
は
目
(
め
)
をさまして、
201
安彦
『オイ
宗介
(
むねすけ
)
、
202
貴様
(
きさま
)
は
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
よるなア』
203
宗介
(
むねすけ
)
小声
(
こごゑ
)
になつて、
204
宗介
『オイ、
205
お
前
(
まへ
)
聞
(
き
)
いたのか。
206
大将
(
たいしやう
)
に
内証
(
ないしよう
)
だから
其
(
その
)
積
(
つも
)
りで
居
(
を
)
つて
呉
(
く
)
れよ』
207
安彦
(
やすひこ
)
殊更
(
ことさら
)
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で、
208
安彦
『
一本橋
(
いつぽんばし
)
をどうしたと
云
(
い
)
ふのだい』
209
宗介
『
喧
(
やかま
)
しう
言
(
い
)
はずに
休
(
やす
)
まぬか。
210
秋
(
あき
)
、
211
モリの
両人
(
りやうにん
)
が、
212
今頃
(
いまごろ
)
にや
丸木橋
(
まるきばし
)
をおとす
作業中
(
さげふちう
)
だ。
213
面白
(
おもしろ
)
いぢやないか』
214
安彦
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
215
あなた
御存
(
ごぞん
)
じですか』
216
国依別
『
初
(
はじめ
)
からスツカリ
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
217
宗彦
(
むねひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
に
替
(
か
)
へてやらうか』
218
宗介
『イヤもう
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
219
どうぞ
宜
(
よろ
)
しうお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
します』
220
国依別
『そんなら、
221
一段
(
いちだん
)
位
(
くらゐ
)
を
上
(
あ
)
げて、
222
只今
(
ただいま
)
から
宗彦
(
むねひこ
)
と
名
(
な
)
を
与
(
あた
)
へる』
223
宗彦(宗介)
『アヽ
何
(
なん
)
とも
御
(
お
)
礼
(
れい
)
の
申様
(
まをしやう
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ……オイ
安彦
(
やすひこ
)
どうだい、
224
只今
(
ただいま
)
から、
225
お
前
(
まへ
)
も
俺
(
おれ
)
も
同役
(
どうやく
)
だ。
226
余
(
あま
)
り
偉相
(
えらさう
)
に
弟
(
おとうと
)
扱
(
あつか
)
ひには
出来
(
でき
)
ないぞ』
227
安彦
『
俺
(
おれ
)
は
彦
(
ひこ
)
を
貰
(
もら
)
つてから
三日
(
みつか
)
になる。
228
貴様
(
きさま
)
は
今
(
いま
)
貰
(
もら
)
つた
所
(
ところ
)
ぢやないか。
229
双児
(
ふたご
)
が
生
(
うま
)
れても
兄弟
(
けうだい
)
の
区別
(
くべつ
)
がつくのだ。
230
現
(
げん
)
に
三日
(
みつか
)
も
違
(
ちが
)
ひがあるのだから、
231
ヤツパリ
弟
(
おとうと
)
だよ』
232
宗彦
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がないなア。
233
ぢやドツと
譲歩
(
じやうほ
)
して
表面
(
へうめん
)
だけ
弟
(
おとうと
)
になつておかうかい。
234
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
兄
(
あに
)
は
兄
(
あに
)
丈
(
だけ
)
の
甲斐性
(
かひしやう
)
がなくてはならず、
235
弟
(
おとうと
)
を
可愛
(
かあい
)
がつて
大切
(
たいせつ
)
にせねばならぬ
責任
(
せきにん
)
がある。
236
弟
(
おとうと
)
が
弱
(
よわ
)
つて
居
(
を
)
れば、
237
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いてやつて
労
(
いた
)
はり
又
(
また
)
負
(
お
)
うてやらなきや、
238
兄貴
(
あにき
)
の
値打
(
ねうち
)
がないからなア』
239
国依別
『コラコラ
喧
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
はずに
休
(
やす
)
まぬか。
240
まだ
夜明
(
よあけ
)
にチツと
間
(
ま
)
もある。
241
ゆつくり
茲
(
ここ
)
で
休
(
やす
)
ンで、
242
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けてからボツボツ
行
(
ゆ
)
くのだ。
243
何
(
いづ
)
れ
彼奴
(
あいつ
)
ら
両人
(
りやうにん
)
は
谷底
(
たにそこ
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みに
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひないから、
244
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
は
女
(
をんな
)
の
声色
(
こはいろ
)
を
使
(
つか
)
つて
行
(
ゆ
)
くのだよ。
245
さうして
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
甘
(
うま
)
く、
246
渡
(
わた
)
つて
了
(
しま
)
うのだよ』
247
宗彦
『
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
声色
(
こはいろ
)
とは、
248
チツと
変
(
へん
)
ぢや
御座
(
ござ
)
りませぬか』
249
国依別
『そこは
二人
(
ふたり
)
になるのだ。
250
国依別
(
くによりわけ
)
が
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
の
声色
(
こはいろ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
251
安彦
(
やすひこ
)
は
弟
(
おとうと
)
の
宗彦
(
むねひこ
)
を
背中
(
せなか
)
に
負
(
お
)
ひ、
252
さうしてエリナの
声色
(
こはいろ
)
になつて、
253
渡
(
わた
)
りさへすれば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
254
渡
(
わた
)
つて
了
(
しま
)
つてから、
255
各自
(
めいめい
)
に
男
(
をとこ
)
の
声
(
こゑ
)
で
大笑
(
おほわら
)
ひをし、
256
ビツクリさしてやるのだ』
257
安彦
『
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
258
あなたは
真面目
(
まじめ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
に
似
(
に
)
ず、
259
随分
(
ずいぶん
)
悪戯
(
いたづら
)
が
御
(
お
)
好
(
すき
)
ですなア。
260
こんな
男
(
をとこ
)
を、
261
私
(
わたし
)
だつて
背中
(
せなか
)
に
負
(
お
)
うて
一本橋
(
いつぽんばし
)
が
渡
(
わた
)
られませうかなア』
262
国依別
『あの
様
(
やう
)
な
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
企
(
たく
)
む
奴
(
やつ
)
には、
263
此方
(
こちら
)
も
一
(
ひと
)
つからかつてやる
位
(
くらゐ
)
は
良
(
よ
)
いぢやないか。
264
まさか
違
(
ちが
)
へば
生命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られる
所
(
ところ
)
ぢやから……そしてお
前
(
まへ
)
は
宗彦
(
むねひこ
)
を
背中
(
せなか
)
へ
括
(
くく
)
りつけ、
265
もしも
誤
(
あやま
)
つて
落
(
お
)
ちた
所
(
ところ
)
で、
266
国依別
(
くによりわけ
)
に
於
(
おい
)
ては、
267
痛
(
いた
)
い
事
(
こと
)
もなければ
痒
(
かゆ
)
い
事
(
こと
)
もないのだ、
268
アハヽヽヽヽ』
269
安彦
(
やすひこ
)
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
270
国依別
(
くによりわけ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見詰
(
みつ
)
め
乍
(
なが
)
ら、
271
安彦
『ヘーン、
272
何
(
なん
)
とマア
水臭
(
みづくさ
)
い
御
(
お
)
方
(
かた
)
ですなア』
273
宗彦
『
何
(
いづ
)
れ、
274
谷川
(
たにかは
)
を
渡
(
わた
)
り
谷水
(
たにみづ
)
の
中
(
なか
)
へおちるのだもの。
275
ちつたア、
276
水臭
(
みづくさ
)
からうかい。
277
谷底
(
たにそこ
)
には
水
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
つて、
278
はまつた
所
(
ところ
)
で、
279
手
(
て
)
を
受
(
う
)
けて
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さるから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ。
280
そんな
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
はするものぢやないよ。
281
あゝ
待
(
ま
)
ち
遠
(
どほ
)
しい
事
(
こと
)
だ。
282
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
モウそろそろ
出
(
で
)
かけたら
如何
(
どう
)
でせう』
283
国依別
『
今
(
いま
)
二人
(
ふたり
)
が
行
(
い
)
つたばかしぢやないか。
284
あの
深
(
ふか
)
い
谷川
(
たにがは
)
の
橋杭
(
はしくひ
)
を
取
(
と
)
つたり、
285
蔓
(
つる
)
をつけて
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
る
用意
(
ようい
)
するのは、
286
一時
(
ひととき
)
や
二時
(
ふたとき
)
の
猶予
(
いうよ
)
で
出来
(
でき
)
るものぢやない。
287
茲
(
ここ
)
でゆつくりしてアフンとさしてやる
方
(
はう
)
が
面白
(
おもしろ
)
いぢやないか。
288
別
(
べつ
)
に
半日
(
はんにち
)
位
(
くらゐ
)
遅
(
おく
)
れたつて、
289
遅刻
(
ちこく
)
の
罰金
(
ばつきん
)
を
取
(
と
)
られるのでもなし、
290
マア
先
(
さき
)
を
楽
(
たのし
)
ンで、
291
ゆつくり
休
(
やす
)
ンで
行
(
ゆ
)
かう』
292
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
293
大木
(
たいぼく
)
の
根
(
ね
)
を
枕
(
まくら
)
に
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つた。
294
安彦
『
何
(
なん
)
と
宣伝使
(
せんでんし
)
と
云
(
い
)
ふものは
大胆
(
だいたん
)
な
者
(
もの
)
ぢやないか、
295
ナア
宗彦
(
むねひこ
)
。
296
現在
(
げんざい
)
敵
(
かたき
)
が
落橋
(
らくけう
)
準備
(
じゆんび
)
をやつてゐるのに、
297
平気
(
へいき
)
であの
通
(
とほ
)
り、
298
横
(
よこ
)
になるが
早
(
はや
)
いか
高鼾
(
たかいびき
)
をかいて
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
はれた。
299
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
はまだ
執着心
(
しふちやくしん
)
が
離
(
はな
)
れぬので、
300
命
(
いのち
)
が
惜
(
を
)
しくて、
301
敵
(
てき
)
が
前
(
まへ
)
に
殺人
(
さつじん
)
準備
(
じゆんび
)
をやつて
居
(
ゐ
)
ると
思
(
おも
)
へば、
302
どこともなしに
心気
(
しんき
)
興奮
(
こうふん
)
して
寝
(
ね
)
られないがなア』
303
宗彦
『
国依別
(
くによりわけ
)
さまと
安物
(
やすもの
)
の
安彦
(
やすひこ
)
と
比
(
くら
)
べやうとするから、
304
そンな
疑問
(
ぎもん
)
が
起
(
おこ
)
るのだよ。
305
活神
(
いきがみ
)
さまと
製糞器
(
せいふんき
)
とは
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
にはいかぬワイ』
306
安彦
『
俺
(
おれ
)
が
製糞器
(
せいふんき
)
なら、
307
お
前
(
まへ
)
も
製糞器
(
せいふんき
)
ぢやないか』
308
宗彦
『お
前
(
まへ
)
は
製糞器
(
せいふんき
)
だよ、
309
この
宗彦
(
むねひこ
)
は
糞造器
(
ふんざうき
)
だ。
310
同
(
おな
)
じ
意味
(
いみ
)
の
様
(
やう
)
だが、
311
そこに
一寸
(
ちよつと
)
違
(
ちが
)
う
訳
(
わけ
)
があるのだ。
312
アハヽヽヽ』
313
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
314
大木
(
たいぼく
)
の
周囲
(
まわり
)
をクルクルと
繞
(
めぐ
)
りつつ
夜明
(
よあけ
)
を
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
にした。
315
漸
(
やうや
)
くにして、
316
東
(
ひがし
)
は
白
(
しら
)
み
出
(
だ
)
し、
317
百鳥
(
ももとり
)
の
声
(
こゑ
)
、
318
あたりの
森林
(
しんりん
)
より、
319
かしましく
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
320
青葉
(
あをば
)
を
渡
(
わた
)
る
旦
(
あした
)
の
風
(
かぜ
)
は、
321
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
涼味
(
りやうみ
)
を
惜
(
を
)
しげもなく、
322
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
つて
吹
(
ふ
)
きつける。
323
いよいよ
一行
(
いつかう
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
足仕度
(
あしじたく
)
をなし、
324
谷
(
たに
)
の
細路
(
ほそみち
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
325
丸木橋
(
まるきばし
)
に
向
(
むか
)
ひ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
とはなりにける。
326
(
大正一一・八・一九
旧六・二七
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(N)
丸木橋 >>>
霊界物語
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