霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 女(おんな)弟子(でし)〔八七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻 篇:第1篇 千状万態 よみ(新仮名遣い):せんじょうばんたい
章:第6章 女弟子 よみ(新仮名遣い):おんなでし 通し章番号:872
口述日:1922(大正11)年08月18日(旧06月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-03-12 19:56:20 文字数:3265 OBC :rm3106
愛善世界社版:61頁 八幡書店版:第6輯 63頁 修補版: 校定版:64頁 普及版:27頁 初版: ページ備考:
001 此(この)乱痴気(らんちき)騒(さわ)ぎの最中(さいちう)に、002意気(いき)揚々(やうやう)としてモリスは国依別(くによりわけ)の居間(ゐま)を尋(たづ)ね、003姿(すがた)の見(み)えざるに、004的切(てつき)り此奴(こいつ)は紅井姫(くれなゐひめ)の居間(ゐま)に侵入(しんにふ)し、005脂(やに)下(さが)つてゐるに相違(さうゐ)ないと、006エリナを伴(ともな)ひ、007足音(あしおと)高(たか)く、008現(あら)はれ来(きた)り、009ガラリと襖(ふすま)を引(ひき)あけて、
010モリス『国依別(くによりわけ)様(さま)、011お前様(まへさま)の女房(にようばう)がはるばる尋(たづ)ねてお出(いで)になりましたよ。012サアどうぞトツクリとお楽(たの)しみなさりませ』
013国依別『ヤア、014エリナ殿(どの)か、015あなたのお母(か)アさまは何(ど)うなりましたか。016日々(にちにち)御(お)案(あん)じ申(まを)して居(を)りました』
017エリナ『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います。018とうとう母(はは)はあの大地震(だいぢしん)に亡(な)くなつて仕舞(しまひ)ました。019今(いま)は、020父(ちち)は御存(ごぞん)じの通(とほ)り、021日暮(ひぐら)シ山(やま)に囚(とら)はれ、022たよる所(ところ)もなき女(をんな)の一人身(ひとりみ)、023あなた様(さま)のお後(あと)を慕(した)ひ、024お世話(せわ)に預(あづか)りたいと存(ぞん)じまして、025茲(ここ)まで尋(たづ)ねて参(まゐ)りました。026どうぞ先日(せんじつ)の御(ご)無礼(ぶれい)をお叱(しか)りなく、027憐(あは)れな妾(わたくし)、028何卒(どうぞ)お助(たす)け下(くだ)さいませ』
029 モリスはもどかしげに、
030モリス『コレコレ、031エリナさま、032そんな他人(たにん)行儀(ぎやうぎ)の事(こと)を云(い)ふに及(およ)ばぬぢやありませぬか。033お前(まへ)さま……ソレ私(わたし)の前(まへ)で雄健(をたけ)びしたように、034ここで一(ひと)つ売(う)り出(だ)さぬかいな。035ヤツパリ可愛(かあい)い夫(をつと)の顔(かほ)を見(み)るとグニヤグニヤになつて了(しま)ふから仕方(しかた)がないワ。036女(をんな)と云(い)ふ者(もの)は男(をとこ)にかけたら弱(よわ)い者(もの)だなア、037アハヽヽヽ』
038 秋山別(あきやまわけ)は言(ことば)も荒(あら)らかに、
039秋山別『姫(ひめ)様(さま)の御(ご)病気(べうき)、040今(いま)此(この)通(とほ)り御(ご)昏倒(こんたう)遊(あそ)ばして御座(ござ)る所(ところ)だ。041何(なに)を気楽(きらく)な事(こと)を言(い)つてゐるのだい』
042モリス『ヤア姫(ひめ)様(さま)が御(ご)病気(べうき)だなア。043コリヤ大変(たいへん)だ。044ドレドレ、045モリスが介抱(かいほう)をして進(しん)ぜよう。046癪気(しやくき)を起(おこ)して御座(ござ)るのだらう。047こんな所(ところ)へ国依別(くによりわけ)さまの奥(おく)さまがやつて来(き)たものだから、048益々(ますます)大変(たいへん)だ。049併(しか)し乍(なが)ら姫(ひめ)様(さま)も結句(けつく)諦(あきら)めがついてよからう。050サア一(ひと)つお腹(なか)を取(と)つてあげませう……癪(しやく)に嬉(うれ)しい男(をとこ)の力(ちから)、051身(み)が粉(こな)になるまで抱(だ)いて欲(ほ)しい……とか何(なん)とかヘヽヽ言(い)ふ事(こと)がある。052国依別(くによりわけ)さまだと都合(つがふ)が好(よ)いのだが、053生憎(あひにく)奥(おく)さまの御(ご)臨検(りんけん)だからさうもならず……国依別(くによりわけ)さま、054さぞお心(こころ)の揉(も)める事(こと)でせうなア』
055とニヤリと笑(わら)ひ乍(なが)ら、
056モリス『コレコレお姫(ひめ)様(さま)、057内事司(ないじつかさ)のモリスで御座(ござ)いますよ。058サア気(き)をしつかりなさいませ』
059紅井姫『エヽ汚(けが)らはしい!』
060と今迄(いままで)性念(しやうねん)を失(うしな)つて居(ゐ)たと思(おも)つた大病人(たいべうにん)に、061力(ちから)一杯(いつぱい)横腹(よこばら)あたりを、062肱鉄砲(ひぢでつぱう)で打(う)たれ、063肋(あばら)の三枚目(さんまいめ)をしたたかやられて『アツ』と其(その)場(ば)に目(め)を剥(む)いて倒(たふ)れて了(しま)つた。064国依別(くによりわけ)は驚(おどろ)いて、
065国依別『コレコレお姫(ひめ)様(さま)、066そりや余(あま)り乱暴(らんばう)ぢやありませぬか?』
067紅井姫『国依別(くによりわけ)さま、068あなたは妾(わらは)を騙(だま)しましたねえ。069独身(どくしん)ぢやと仰有(おつしや)つたが、070現(げん)に立派(りつぱ)な奥様(おくさま)が訪(たづ)ねて御座(ござ)つたぢやありませぬか。071エヽ残念(ざんねん)ぢや口惜(くちを)しい』
072と歯切(はぎり)をかむで狂(くる)ひまはる。073秋山別(あきやまわけ)は紅井姫(くれなゐひめ)の体(からだ)をグツと抱(かか)へ、
074秋山別『モシモシ姫(ひめ)様(さま)、075さう荒立(あらだ)ちなさつてはお体(からだ)に障(さは)ります。076どうぞ気(き)をお鎮(しづ)めなさいませ。077世(よ)の中(なか)は広(ひろ)いものです。078男(をとこ)の数(かず)も決(けつ)して一人(ひとり)や二人(ふたり)ぢや御座(ござ)いませぬ。079そンな気(き)の狭(せま)い事(こと)を仰有(おつしや)るに及(およ)びませぬ。080あなたに適当(てきたう)な男(をとこ)が此(この)お館(やかた)にも一人(ひとり)や半分(はんぶん)は居(ゐ)ますから、081御(お)世話(せわ)を致(いた)します。082どうぞお鎮(しづ)まり下(くだ)さいませ』
083紅井姫『エヽお前(まへ)は秋山別(あきやまわけ)か、084又(また)しても又(また)しても好(す)かぬたらしい、085震(ふる)ひが来(く)る、086退(の)いてお呉(く)れ!』
087と云(い)ひ乍(なが)ら、088かよわき手(て)に拳骨(げんこつ)を固(かた)め、089力(ちから)一杯(いつぱい)鼻(はな)つ柱(ぱしら)を擲(なぐ)りつける。090秋山別(あきやまわけ)は不意(ふい)に鼻(はな)つ柱(ぱしら)を打(う)たれ、091目(め)から火(ひ)を出(だ)し乍(なが)ら、092ヨロヨロヨロとよろめき、093モリスの頭(あたま)の上(うへ)にドスンと倒(たふ)れた機(はづ)みに尻(しり)を下(おろ)せば、094モリスは夢中(むちう)になつて、095秋山別(あきやまわけ)の睾丸(きんたま)を力(ちから)一杯(いつぱい)握(にぎ)りしめ、
096モリス『コリヤ国依別(くによりわけ)、097貴様(きさま)は女房(にようばう)のある身(み)を持(も)ち乍(なが)ら、098神(かみ)様(さま)の御(ご)規則(きそく)に背(そむ)き、099箱入娘(はこいりむすめ)の姫(ひめ)様(さま)を誑(たぶ)らかしチヨロまかして、100風紀(ふうき)を紊(みだ)す大罪人(だいざいにん)、101サア此(この)玉(たま)さへ抜(ぬ)けば、102発情(はつじやう)は致(いた)すまい。103モリスが、104睾丸(きんたま)割去術(かつきよじゆつ)でも施(ほどこ)して去勢(きよせい)してやらうか』
105と一生(いつしやう)懸命(けんめい)に固(かた)く握(にぎ)りつめる。106秋山別(あきやまわけ)は真青(まつさを)になつて『ウーン』と云(い)つたきり、107ふん伸(の)びて了(しま)つた。
108 エリナ姫(ひめ)は気(き)をいらち、
109エリナ『モシ国依別(くによりわけ)さま、110どうかしてやつて下(くだ)さらぬと、111息(いき)が止(と)まりは致(いた)しませぬか』
112 国依別(くによりわけ)は、
113国依別『さうですなア』
114と云(い)ひ乍(なが)ら、115モリスの手(て)を指(ゆび)一本(いつぽん)一本(いつぽん)力(ちから)を入(い)れて放(はな)させた。116秋山別(あきやまわけ)は漸(やうや)くに気(き)が付(つ)き、117呆(とぼ)け面(づら)してポカンと口(くち)をあけて紅井姫(くれなゐひめ)の顔(かほ)を恨(うら)めしげに眺(なが)めて居(ゐ)る。
118紅井姫『あのマア厭(いや)な男(をとこ)、119妾(わたし)の顔(かほ)に何(なん)ぞ付(つ)いて居(を)りますか?』
120秋山別『ハイ、121何(なん)だか知(し)りませぬが、122男(をとこ)の顔(かほ)がひつついてますワイ。123それもクの字(じ)が一番(いちばん)ハツキリ現(あら)はれ、124つぎにアの字(じ)が現(あら)はれて居(を)りますが、125クの字(じ)は段々(だんだん)と色(いろ)が黒(くろ)くなり、126アの字(じ)が赤(あか)く花(はな)の様(やう)に現(あら)はれかけました。127あのクの字(じ)の黒(くろ)い事(こと)わいの』
128紅井姫『又(また)しても厭(いや)な事(こと)を云(い)ふ男(をとこ)だナ。129サア早(はや)うあちらへお行(ゆ)き!汚(けが)らはしい、130アリーは居(を)らぬか、131サールは何処(いづこ)ぞ、132早(はや)く箒(はうき)を持(も)つて来(き)てお呉(く)れ』
133 次(つぎ)の間(ま)に息(いき)をこらして控(ひか)えてゐた二人(ふたり)の侍女(じぢよ)は、134箒(はうき)と塵取(ちりとり)を持(も)つて現(あら)はれ、135跪(ひざまづ)いて姫(ひめ)の手(て)に渡(わた)せば、136姫(ひめ)は手早(てばや)く其(その)箒(はうき)を取(と)り、137第一(だいいち)に秋山別(あきやまわけ)に向(むか)ひ、
138紅井姫『エヽ煩雑(うるさ)い男(をとこ)奴(め)』
139と云(い)ひ乍(なが)ら狂人(きちがひ)の如(ごと)く髪(かみ)ふり乱(みだ)し、140目(め)を釣(つ)りあげ所(ところ)構(かま)はず打据(うちす)ゑたり。141モリスは、
142モリス『コレコレ姫(ひめ)様(さま)、143そンな乱暴(らんばう)をなさつては可(い)けませぬ』
144と立(たち)あがるを、145姫(ひめ)は、
146紅井姫『ナニ此(この)睾丸(きんたま)掴(つか)み』
147と云(い)ひ乍(なが)ら、148又(また)叩(たた)きつける。149二人(ふたり)は流石(さすが)に手向(てむか)ひもならず、150コソコソとして吾(わが)居間(ゐま)に引下(ひきさが)り行(ゆ)く。
151紅井姫『お前(まへ)さまは国依別(くによりわけ)さまの御(ご)家内(かない)でせう。152紅井(くれなゐ)が永(なが)らく御(ご)厄介(やくかい)になりまして、153さぞお待兼(まちかね)でしたらう。154サア大事(だいじ)の婿(むこ)さまを伴(つ)れて、155勝手(かつて)にお帰(かへ)りなさいませ』
156国依別『これはしたり姫(ひめ)様(さま)、157そりや大変(たいへん)な考(かんが)へ違(ちが)ひ、158此(この)方(かた)はアラシカ山(やま)の山麓(さんろく)に御座(ござ)るウラル教(けう)の宣伝使(せんでんし)エスと云(い)ふ方(かた)の娘(むすめ)さまで御座(ござ)いますよ。159フトした事(こと)から途中(とちう)にお目(め)にかかり、160二三(にさん)日(にち)御(お)世話(せわ)になりましたもの、161独身(どくしん)主義(しゆぎ)の国依別(くによりわけ)に、162女房(にようばう)があつて堪(たま)りますか』
163紅井姫『あなたは世界(せかい)を股(また)にかけて御(お)歩(ある)き遊(あそ)ばす宣伝使(せんでんし)様(さま)、164うち見(み)る島(しま)の先々(さきざき)、165掻(か)き見(み)る磯(いそ)の先(さき)おちず、166若草(わかぐさ)の妻(つま)を至(いた)る所(ところ)にお持(も)ち遊(あそ)ばし、167神生(かみう)み、168御子生(みこう)みを遊(あそ)ばす丈(だけ)あつて、169随分(ずいぶん)巧(たくみ)に言霊(ことたま)をお使(つか)ひ遊(あそ)ばします。170妾(わらは)も最早(もはや)観念(かんねん)致(いた)しました。171妾(わらは)の恋(こひ)は真剣(しんけん)で御座(ござ)ります。172つまり九寸(くすん)五分(ごぶ)式(しき)の猛烈(まうれつ)な恋(こひ)なれば、173最早(もはや)あなたに見放(みはな)された上(うへ)は、174此(この)世(よ)に生(い)きて何(なに)の楽(たのし)みも御座(ござ)いませぬ。175恋(こひ)の病(やまひ)に悩(なや)み一生(いつしやう)苦(くるし)むよりも、176一層(いつそう)此(この)場(ば)であなたのお目(め)の前(まへ)で自害(じがい)して相果(あひは)てまする。177愚(おろか)な女(をんな)と一口(ひとくち)にお笑(わら)ひ下(くだ)さいますれば、178それを冥途(めいど)の土産(みやげ)に嬉(うれ)しう帰幽(きいう)致(いた)します』
179と隠(かく)し持(も)つたる短刀(たんたう)を閃(ひらめ)かし、180ガハと喉(のど)につき立(た)てむとするにぞ、181国依別(くによりわけ)は打(う)ち驚(おどろ)き、182直(ただち)に飛(と)びつき、183姫(ひめ)の手(て)を打叩(うちたた)きし其(その)途端(とたん)に短刀(たんたう)はバラリと前(まへ)におちぬ。184国依別(くによりわけ)は手早(てばや)く短刀(たんたう)を拾(ひろ)ひあげ、185熱涙(ねつるゐ)を流(なが)し乍(なが)ら、
186国依別『あゝ困(こま)つた事(こと)が出来(でき)て来(き)たものだワイ。187これと云(い)ふのも、188若(わか)い時(とき)に女泣(をんなな)かせや、189御家(ごけ)倒(だを)し、190家潰(いへつぶ)しを数限(かずかぎ)りなくやつて来(き)た其(その)酬(むく)ゐだらう……モシモシお姫(ひめ)様(さま)、191私(わたし)は今(いま)こそ斯(こ)ンな殊勝(しゆしよう)らしい顔(かほ)をして宣伝使(せんでんし)になつて居(を)りますが、192私(わたし)の素性(すじやう)を洗(あら)つたら如何(いか)な姫(ひめ)様(さま)でも愛想(あいさう)をつかされるでせう。193随分(ずいぶん)と女(をんな)を泣(な)かして来(き)た代物(しろもの)ですよ。194こンな男(をとこ)に心中立(しんぢうだて)をしたつて直(すぐ)に放(ほ)かされ、195蛸(たこ)の揚壺(あげつぼ)を喰(く)はされますよ。196どうぞこンな男(をとこ)の事(こと)は思(おも)ひ切(き)つて下(くだ)さいませ』
197紅井姫『自分(じぶん)の事(こと)を自分(じぶん)で悪(わる)く仰有(おつしや)る、198其(その)正直(しやうぢき)なお心(こころ)が妾(わらは)には震(ふる)ひつく程(ほど)好(すき)で御座(ござ)います。199果(はた)して此(この)エリナ様(さま)があなたの女房(にようばう)でないのならば、200是非(ぜひ)茲(ここ)に御(ご)逗留(とうりう)遊(あそ)ばして、201妾(わらは)に神(かみ)様(さま)の教(をしへ)を聞(き)かして下(くだ)さいませ。202お気(き)に入(い)らぬ者(もの)を無理(むり)に女房(にようばう)にして下(くだ)さいとは申(まを)しませぬ。203お側(そば)においてさへ頂(いただ)けば、204それで満足(まんぞく)致(いた)しますから……』
205国依別『それは困(こま)りましたねい。206どうしても私(わたし)は急(きふ)にここを立(た)たねばなりませぬから、207姫(ひめ)様(さま)のお側(そば)において頂(いただ)く事(こと)は到底(たうてい)出来(でき)ませぬ。208どうぞ思(おも)ひ切(き)つて下(くだ)さいませ』
209紅井姫『そんなら、210あなたのお弟子(でし)として、211どンな所(ところ)でも厭(いと)ひませぬからお伴(つ)れ下(くだ)さいませ。212お願(ねがひ)で御座(ござ)います』
213エリナ『どうぞこのエリナもお弟子(でし)として、214あなたのお出(い)で遊(あそ)ばす所(ところ)へお伴(つ)れ下(くだ)さいませ。215其(その)代(かは)りに洗濯(せんだく)や針仕事(はりしごと)は十分(じふぶん)致(いた)しまして、216御(ご)神徳(しんとく)が授(さづ)かつたら宣伝(せんでん)も致(いた)します』
217国依別『あゝ仕方(しかた)がありませぬ。218それならお二人共(ふたりとも)、219一所(いつしよ)に参(まゐ)りませう。220併(しか)し乍(なが)ら紅井姫(くれなゐひめ)様(さま)、221貴女(あなた)は楓別(かへでわけの)命(みこと)様(さま)のお許(ゆる)しを受(う)けなくてはなりますまい。222お許(ゆる)しさへあれば、223何時(いつ)でもお伴(とも)を致(いた)しませう』
224 紅井姫(くれなゐひめ)は、225『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います』と機嫌顔(きげんがほ)。
226 是(これ)より国依別(くによりわけ)は楓別(かえでわけの)命(みこと)に暇(いとま)を告(つ)げ、227二人(ふたり)の女(をんな)を伴(ともな)ひ、228神館(かむやかた)を後(あと)に日暮(ひぐら)シ山(やま)の岩窟(がんくつ)に向(むか)ひ、229エス、230キジ、231マチの三(さん)人(にん)の生命(いのち)を救(すく)ふべく夜(よ)の明(あ)けぬ中(うち)より準備(したく)為(な)し、232日暮(ひぐら)シ山(やま)指(さ)して男女(だんぢよ)三(さん)人(にん)進(すす)み行(ゆ)く。
233(大正一一・八・一八 旧六・二六 松村真澄録)
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