霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 清浄車(しやうじやうぐるま)〔一五二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻 篇:第1篇 天仁和楽 よみ(新仮名遣い):てんじんわらく
章:第1章 清浄車 よみ(新仮名遣い):しょうじょうぐるま 通し章番号:1526
口述日:1923(大正12)年04月05日(旧02月20日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年8月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
スマの浜辺には山のごとく老若男女が集まって、伊太彦が率いる猩々舟の船団を歓呼で迎えていた。風は芳香を送り無声の音楽聞こえて天地は清く、また静かに賑わしく、理想の原語句を現出したごとき真善美愛の極致にたっした。
人々の心には一点の塵もとどめず互いに和気あいあいとして一切の障壁を忘れ、その睦まじきこと鴛鴦の番のごとくであった。
それにもかかわらず、猜疑心にからまれた心の暗鬼は、畏怖驚愕のあまり、バラモン教のヤッコス、サボールを駆って無残にも湖中に身を投じさせたのである。
玉国別の命で小舟を浮かばせ待っていた真純彦、三千彦は、二人が落ちた渦巻の上に舟を寄せ、二人を救い出すことができた。衆人は歓喜し、真純彦、三千彦の仁侠を手を打って感賞した。
チルテルは猩々の乗る車を造り、先頭に立って磯畑に待っている。伊太彦はまっさきに玉国別に前に進みより、歓喜の涙をたたえながら手を握りニ三回ゆすった。玉国別は感涙にむせびながら伊太彦の労をねぎらった。
宣伝使たちは里人が用意した山車に乗り、猩々たちは十数台の車に乗って、歌を歌いながらバーチルの館に帰り行く。
チルテルは猩々車の先頭に立って述懐と祝いの音頭をとった。バーチルの屋敷に着くと、一同は庭園に筵を敷いて祝いの酒に舌鼓をうち歓喜を尽くした。
バーチルとサーベル姫は一同に恭しく礼を述べた。玉国別、チルテルの一行を導いて奥の広い客間に案内した。猩々たちも続いて奥の間に進んだ。一同はそれぞれ述懐の歌を歌った。
玉国別はアヅモス山の谷あいを跋渉し、木を数多の杣人に伐採せしめ、神殿の普請に着手することとなった。里人たち、チルテルの部下たち、猩々たちは勇んで宮普請に奉仕した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-09-04 11:29:55 文字数:4610 OBC :rm6001
愛善世界社版:9頁 八幡書店版:第10輯 601頁 修補版: 校定版:9頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 東西(とうざい)百(ひやく)里(り)南北(なんぼく)二百(にひやく)里(り)、002広袤(くわうぼう)二万(にまん)方里(はうり)のキヨメの湖(うみ)は、003大小(だいせう)十二(じふに)の島(しま)を泛(うか)べて鏡(かがみ)の如(ごと)く照(て)り輝(かがや)いてゐる。004北方(ほくぱう)の雲間(うんかん)にボカされたやうなテルモン山(ざん)が水鏡(みづかがみ)を覗(のぞ)いてゐる。
005 饅頭笠(まんぢうがさ)の様(やう)な大太陽(だいたいやう)が東(ひがし)の波間(なみま)より生(うま)れ始(はじ)め、006五色(ごしき)の雲(くも)の階段(かいだん)をチクチクと登(のぼ)るにつけて其(その)形(かたち)を小(ちひ)さくして行(ゆ)く。007颯々(さつさつ)たる夏(なつ)の晨(あした)の風(かぜ)は涼(すず)しく人(ひと)の面(おもて)を撫(な)で、008帆(ほ)をペタペタと前後(ぜんご)に揺(ゆす)つてゐる長閑(のどか)さ。009数万(すうまん)の鳥族(てうぞく)は湖上(こじやう)を前後(ぜんご)左右(さいう)に翺翔(かうしやう)し、010日(ひ)の出(で)を喜(よろこ)び祝(いは)ふ声(こゑ)は九天(きうてん)に達(たつ)するかと疑(うたが)はるる許(ばか)りであつた。011白砂(はくしや)青松(せいしよう)のスマの浜辺(はまべ)には012山(やま)の如(ごと)く老若(らうにやく)男女(なんによ)の羅漢姿(らかんすがた)が蝟集(ゐしふ)並列(へいれつ)して013其(その)影(かげ)を湖中(こちう)に逆(さか)しまに映(うつ)してゐる。
014 伊太彦(いたひこ)が率(ひき)ゆる二十艘(にじつそう)の猩々舟(しやうじやうぶね)は015万歳(ばんざい)歓呼(くわんこ)の中(うち)にチクリチクリと磯辺(いそべ)に向(むか)つて近附(ちかづ)き来(きた)る。016磯辺(いそべ)に立(た)つた群集(ぐんしふ)は鬱金(うこん)の鉢巻(はちまき)赤襷(あかだすき)、017太鼓(たいこ)や、018摺鉦(すりがね)や、019笛(ふえ)、020笙(しやう)、021篳篥(ひちりき)、022羯鼓(かつこ)、023月琴(げつきん)等(など)を手(て)にし024思(おも)ひ思(おも)ひの妙技(めうぎ)を発揮(はつき)して、025伊太彦(いたひこ)一行(いつかう)の無事(ぶじ)帰港(きこう)を祝(しゆく)してゐる。
026 淡水(たんすい)の湖原(うなばら)は気分(きぶん)の悪(わる)い潮(しほ)の香(か)もなく、027風(かぜ)は芳香(はうかう)を送(おく)り、028無声(むせい)の音楽(おんがく)聞(きこ)えて人(ひと)の耳(みみ)を浄(きよ)め、029天(てん)清(きよ)く海(うみ)青(あを)く、030地(つち)亦(また)清(きよ)く、031天(てん)火(くわ)水(すい)地(ち)はいと静(しづ)かにいと賑(にぎは)しく、032実(じつ)に理想(りさう)の天国(てんごく)を現出(げんしゆつ)せし如(ごと)く、033真善(しんぜん)美愛(びあい)の極致(きよくち)に達(たつ)した。034天地(てんち)の間(あひだ)にも人(ひと)の心(こころ)にも一点(いつてん)の塵(ちり)も止(とど)めず、035和気(わき)靄々(あいあい)として、036親子(おやこ)の如(ごと)く、037兄弟(きやうだい)の如(ごと)く、038夫婦(ふうふ)の如(ごと)く、039敵(てき)も味方(みかた)も一切(いつさい)の障壁(しやうへき)を忘(わす)れ、0391其(その)睦(むつ)まじき事(こと)、040鴛鴦(をし)の番(つがひ)の如(ごと)し。041斯(か)かる平和(へいわ)の天地(てんち)にも拘(かかは)らず、042猜疑心(さいぎしん)に搦(から)まれたる心(こころ)の暗鬼(あんき)は忽(たちま)ち畏怖(ゐふ)驚愕(きやうがく)の余(あま)り、043バラモン教(けう)のヤッコス、044サボールを駆(か)つて、045無残(むざん)や湖中(こちう)に身(み)を投(とう)ぜしめた。
046 船中(せんちう)の人々(ひとびと)も陸上(りくじやう)の群集(ぐんしふ)も、047猩々隊(しやうじやうたい)も此(この)光景(くわうけい)を見(み)て、048手(て)に唾(つばき)し、049如何(いか)にもして彼(かれ)等(ら)両人(りやうにん)を救(すく)はむと思(おも)ふ至情(しじやう)は一度(いちど)に勃発(ぼつぱつ)し、050同情(どうじやう)の念(ねん)に胸(むね)を焦(こが)した。051斯(か)かる所(ところ)へ、052予(かね)て斯(か)くあらむと、053玉国別(たまくにわけ)の命(めい)に依(よ)り葦草(あしぐさ)の間(あひだ)に小舟(こぶね)を泛(うか)ばせ待(ま)つてゐた真純彦(ますみひこ)、054三千彦(みちひこ)はスハこそ一大事(いちだいじ)と、055艪櫂(ろかい)を操(あやつ)り、056水面(すいめん)を飛鳥(ひてう)の如(ごと)く辷(すべ)つて、057ドブンと落(お)ちた渦巻(うづまき)の上(うへ)に舟(ふね)を送(おく)り、058漸(やうや)くにして二人(ふたり)を救(すく)ふ事(こと)を得(え)た。059万一(まんいち)此(この)二人(ふたり)の中(うち)一人(ひとり)たり共(とも)、060生命(いのち)を失(うしな)ふ如(ごと)き不吉事(ふきつじ)あらば、061至善(しぜん)至真(ししん)至美(しび)の天地(てんち)に瑕瑾(かきん)を印(いん)し062光玉(くわうぎよく)に曇(くも)りのかかりし如(ごと)くなるべかりしを、063事(こと)なくして済(す)みたるは、064実(じつ)に平和(へいわ)の祥徴(しやうちよう)なりと衆人(しうじん)一度(いちど)に歓喜(くわんき)し、065且(か)つ真純彦(ますみひこ)、066三千彦(みちひこ)が仁侠(じんけふ)を手(て)を拍(う)つて感賞(かんしやう)した。
067 スマの関守(せきもり)チルテルは、068十数台(じふすうだい)の猩々車(しやうじやうぐるま)を造(つく)り、069種々(いろいろ)の花(はな)を飾(かざ)りて、070数多(あまた)の兵士(へいし)に引(ひ)かせ乍(なが)ら、071猩々隊(しやうじやうたい)を迎(むか)へむ為(ため)、072チルテルが先頭(せんとう)に立(た)ち、0721磯端(いそばた)に待(ま)つてゐる。073伊太彦(いたひこ)は先(ま)づ第一(だいいち)に舟(ふね)を離(はな)れて玉国別(たまくにわけ)の前(まへ)に進(すす)みより、074歓喜(くわんき)の涙(なみだ)を湛(たた)へ乍(なが)ら、075固(かた)く其(その)手(て)を握(にぎ)り二三回(にさんくわい)揺(ゆす)つた。076玉国別(たまくにわけ)は感涙(かんるゐ)に咽(むせ)び乍(なが)ら、077稍(やや)かすんだ声(こゑ)にて、
078玉国別(たまくにわけ)『伊太彦(いたひこ)殿(どの)、079天晴(あつぱ)れお手柄(てがら)、080御(ご)苦労(くらう)であつた。081予定(よてい)の時刻(じこく)に先立(さきだ)つて、082無事(ぶじ)帰(かへ)る事(こと)を得(え)たのは全(まつた)く神(かみ)の御恵(みめぐみ)と、083汝(なんぢ)が至誠(しせい)の賜物(たまもの)である。084サア是(これ)からバーチル館(やかた)に帰(かへ)つて種々(いろいろ)の珍(めづ)らしい話(はなし)を聞(き)かして貰(もら)はう』
085伊太彦(いたひこ)『ハイ有難(ありがた)う厶(ござ)います。086然(しか)らばお伴(とも)致(いた)しませう』
087 バーチル、088サーベル姫(ひめ)は美(うる)はしき山車(だんじり)を飾(かざ)り立(た)て、089玉国別(たまくにわけ)、090真純彦(ますみひこ)、091伊太彦(いたひこ)、092三千彦(みちひこ)、093デビス姫(ひめ)を搭乗(たふじやう)せしめ、094自分(じぶん)も山車(だんじり)の前方(ぜんぱう)に立(た)ち、095歌(うた)を歌(うた)ひ乍(なが)ら、096里人(さとびと)に太綱(ふとづな)を以(もつ)て輓(ひ)かせつつ帰(かへ)りゆく。097十数台(じふすうだい)のチルテルが設備(せつび)した車(くるま)には三百(さんびやく)三十三(さんじふさん)体(たい)の眷族(けんぞく)が搭乗(たふじやう)し、098キヤツ キヤツと歓声(くわんせい)を挙(あ)げ乍(なが)ら、099ヂリリヂリリと輓(ひ)かれ行(ゆ)く。100鐘(かね)、101太鼓(たいこ)、102拍子木(ひやうしぎ)、103縦笛(たてぶえ)、104横笛(よこぶえ)、105羯鼓(かつこ)、106月琴(げつきん)其(その)外(ほか)種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)の音楽(おんがく)に送(おく)られ、107各(おのおの)唄(うた)を唄(うた)つて賑々(にぎにぎ)しく大道(だいだう)を練(ね)り行(ゆ)く。
108 チルテルは猩々車(しやうじやうぐるま)の先(さき)に立(た)ち、109声(こゑ)も涼(すず)しく音頭(おんどう)をとつた。110群衆(ぐんしう)は一節(ひとふし)々々(ひとふし)其(その)あとをつけ乍(なが)ら、111手(て)をふり腰(こし)を振(ふ)り、112狂喜(きやうき)の如(ごと)く踊(をど)り狂(くる)ふ。
113チルテル『酒(さけ)のイヅミのアヅモス山(さん)の
114ヨーイセ、ソーラセ
115パインや樟(くす)の繁茂(はんも)せる
116梢(こずゑ)に鷹(たか)が巣(す)をつくる
117鳥(とり)の司(つかさ)の禿鷲(はげわし)さまが
118千羽(せんば)万羽(まんば)と子(こ)を生(う)んで
119スマの中空(ちうくう)に舞(ま)ひ遊(あそ)ぶ
120ヨーイセ、ソーラセー
121みみづく、梟(ふくろ)や山鳩(やまばと)が
122又(また)も梢(こずゑ)に巣(す)をくんで
123バーチルさまの万歳(ばんざい)を
124祝(いは)ふも目出度(めでた)き夏(なつ)の空(そら)
125ヨーイセ、ソーラセ
126千歳(ちとせ)の鶴(つる)は舞(ま)ひ遊(あそ)び
127八千代(やちよ)の亀(かめ)は舞(ま)ひ遊(あそ)ぶ
128前代(ぜんだい)未聞(みもん)の盛典(せいてん)に
129敵(てき)と味方(みかた)の隔(へだ)てなく
130天(てん)火(くわ)水(すい)地(ち)も結(むす)び合(あ)ひ
131世界(せかい)を一(ひと)つに相丸(あひまる)め
132三五教(あななひけう)やバラモンの
133神(かみ)の恵(めぐみ)を慎(つつし)みて
134老(おい)と若(わか)きの隔(へだ)てなく
135仰(あふ)ぎ敬(うやま)ふ今日(けふ)の空(そら)
136ヤートコセー、ヨーイヤナ
137アレワイセー、コレワイセ
138ソーリヤ、ヨーイトセー
139カンカンチキチン カンチキチン
140チキチン チキチン カンチキチン
141ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
142ヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユー
143猩々(しやうじやう)ケ島(しま)に流(なが)されし
144三百(さんびやく)有余(いうよ)の眷族(けんぞく)は
145天(あま)の岩戸(いはと)の開(ひら)かれて
146全(まつた)く日出(ひので)の御代(みよ)となり
147五六七(みろく)の神(かみ)の松(まつ)の代(よ)を
148目出(めで)たく祝(いは)ふスマの里(さと)
149鷹(たか)の棲(す)まひしアヅモスの
150元(もと)の屋敷(やしき)に立(たち)帰(かへ)り
151天王(てんわう)の森(もり)の守護神(しゆごじん)と
152再(ふたた)び仕(つか)ふる世(よ)となりぬ
153ヨーイセ、ソーラセ
154かかる目出(めで)たき神代(かみよ)をば
155招来(せうらい)したる神人(しんじん)は
156玉国別(たまくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
157誠(まこと)一(ひと)つの賜物(たまもの)ぞ
158バラモン軍(ぐん)に能(よ)く仕(つか)へ
159朝(あさ)な夕(ゆふ)なに三五(あななひ)の
160教司(をしへつかさ)や信徒(まめひと)を
161鵜(う)の目(め)鷹(たか)の目(め)光(ひか)らせつ
162片(かた)ツぱしから捕縛(ほばく)して
163苦(くるし)め悩(なや)めし吾々(われわれ)も
164転迷(てんめい)開悟(かいご)の花(はな)開(ひら)き
165今(いま)は全(まつた)くバラモンの
166軍(いくさ)の司(つかさ)を辞職(じしよく)して
167心(こころ)も清(きよ)き三五(あななひ)の
168誠(まこと)の道(みち)に進(すす)みけり
169あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
170此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
171心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
172只(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
173直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)す
174神(かみ)の恵(めぐみ)に抱(いだ)かれて
175今日(けふ)の祝(いはひ)に列(つら)なりし
176其(その)喜(よろこ)びは天地(あめつち)も
177一度(いちど)に揺(ゆ)るぐ許(ばか)り也(なり)
178ヨーイセー、ソーラセ
179引(ひ)けよ引(ひ)け引(ひ)け猩々車(しやうじやうぐるま)
180ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
181砂(すな)敷(しき)つめし此(この)街道(かいだう)
182車(くるま)の轍(わだち)のきしる音(おと)
183引手(ひきて)の一度(いちど)に唄(うた)ふ声(こゑ)
184天国(てんごく)浄土(じやうど)か地(ち)の上(うへ)か
185例(ためし)も知(し)らぬ楽(たの)しさは
186高天原(たかあまはら)の天国(てんごく)の
187其(その)儘(まま)姿(すがた)をうつしたる
188歓喜(くわんき)の波(なみ)は漂(ただよ)ひぬ
189ドツコイセー ドツコイセー
190ヤートコセーのヨーイヤナ
191チヤンチヤンチキチン チヤンチキチン
192チキチン チキチン チヤンチキチン
193ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
194ヒユーヒユードンドン ヒユードンドン』
195『清(きよ)めの湖(うみ)に三歳(みとせ)ぶり
196漂(ただよ)ひ暮(くら)したアンチーは
197猩々(しやうじやう)の島(しま)のお客(きやく)さま
198漸(やうや)く無事(ぶじ)に迎(むか)へ来(き)て
199スマの磯辺(いそべ)につくや否(いな)
200数多(あまた)の男女(なんによ)に迎(むか)へられ
201抃舞(べんぶ)雀躍(じやくやく)魂(たましひ)の
202置(おき)どこさへも知(し)らぬ身(み)の
203歓迎車(くわんげいぐるま)の梶(かぢ)を把(と)り
204館(やかた)へ帰(かへ)る嬉(うれ)しさよ
205ヨーイセー、ソーラセ
206皆(みな)さま揃(そろ)うて曳(ひ)いてくれ
207先方(むかう)に見(み)ゆる森蔭(もりかげ)は
208バーチルさまの御(おん)館(やかた)
209静(しづ)まり返(かへ)つた邸内(ていない)も
210今日(けふ)の生日(いくひ)の足日(たるひ)から
211三百(さんびやく)有余(いうよ)の眷族(けんぞく)が
212老木(らうぼく)茂(しげ)る森(もり)の上(へ)に
213梢(こずゑ)を伝(つた)ひ飛(とび)まはり
214キヤツキヤツキヤツと賑(にぎは)しく
215宙空(ちうくう)に音楽(おんがく)相奏(あひかな)で
216イヅミの国(くに)の隆昌(りうしやう)を
217祝(ことほ)ぎまつる事(こと)だらう
218三五教(あななひけう)やバラモンの
219教(をしへ)の司(つかさ)が村肝(むらきも)の
220心(こころ)を一(ひと)つになし玉(たま)ひ
221真善(しんぜん)美愛(びあい)の神(かみ)の道(みち)
222完全(うまら)に委曲(つばら)に立(た)て玉(たま)ふ
223聖(ひじり)の御世(みよ)とはなりにけり
224ヨーイセー、ソーラセ
225旭(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
226月(つき)は盈(み)つ共(とも)虧(か)くる共(とも)
227テルモン山(ざん)は海(うみ)となり
228キヨメの湖(うみ)は山(やま)となり
229天変(てんぺん)地妖(ちえう)の災(わざはひ)が
230一度(いちど)に起(おこ)る事(こと)あるも
231神(かみ)の恵(めぐみ)に救(すく)はれし
232神(かみ)の選(えら)みしスマの里(さと)
233千代(ちよ)も八千代(やちよ)も動(うご)かまじ
234勇(いさ)めよ勇(いさ)め里人(さとびと)よ
235風(かぜ)は自然(しぜん)の音楽(おんがく)を
236宙空(ちうくう)に奏(かな)で百(もも)の木(き)は
237手(て)を振(ふ)り腰(こし)を曲(ま)げ乍(なが)ら
238ダンスを演(えん)じて吾々(われわれ)が
239無事(ぶじ)の帰郷(ききやう)を祝(いは)ふ也(なり)
240喜(よろこ)び勇(いさ)め惟神(かむながら)
241神(かみ)に任(まか)せて何事(なにごと)も
242日々(ひび)の業務(げふむ)を勤(つと)めつつ
243バーチルさまを親(おや)となし
244神(かみ)の司(つかさ)を師(し)となして
245卑屈(ひくつ)猜疑(さいぎ)の精神(せいしん)を
246科戸(しなど)の風(かぜ)に吹(ふ)き払(はら)ひ
247速川(はやかは)の瀬(せ)に流(なが)しすて
248清浄(しやうじやう)無垢(むく)の魂(たま)となり
249永(なが)く天与(てんよ)の御恵(みめぐみ)を
250仰(あふ)ぎまつらむ世(よ)となりぬ
251引(ひ)けよ引(ひ)け引(ひ)け御車(みくるま)の
252此(この)太綱(ふとづな)の切(き)れるまで
253ヨイトコセー ヨイトコセー』
254 新(あらた)に開鑿(かいさく)された広(ひろ)い街道(かいだう)に白砂(しらすな)を布(し)きつめた上(うへ)を255漸(やうや)くにしてアヅモス山(さん)の南麓(なんろく)、256バーチルが宏大(くわうだい)なる屋敷(やしき)を指(さ)して、257歓喜(くわんき)の裡(うち)に着(つ)いた。258これより一同(いちどう)は邸園(ていゑん)に蓆(むしろ)を布(し)き、259祝(いはひ)の酒(さけ)に舌鼓(したつづみ)を打(う)ち、260歓喜(くわんき)を尽(つく)す事(こと)となつた。
261 バーチル、262サーベル姫(ひめ)は一同(いちどう)に恭(うやうや)しく礼(れい)を述(の)べ、263玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)及(および)チルテルの一行(いつかう)を導(みちび)いて、264奥(おく)の広(ひろ)き客間(きやくま)に招待(せうたい)した。265三百(さんびやく)有余(いうよ)の猩々(しやうじやう)は何(なん)の会釈(ゑしやく)もなく、266車(くるま)より先(さき)を争(あらそ)うて飛(とび)下(お)り、267バーチルの後(あと)に従(したが)ひ、268所(ところ)狭(せ)き迄(まで)うごなはつて、269奥(おく)の間(ま)を塞(ふさ)いで了(しま)つた。
270玉国別(たまくにわけ)『バーチルの君(きみ)は嬉(うれ)しくおぼすらむ
271数多(あまた)の御子(みこ)を目(ま)のあたりみて』
272バーチル『三歳(みとせ)ぶり吾(わ)が子(こ)の如(ごと)く愛(め)でゐたる
273猿(ましら)の顔(かほ)を見(み)るぞ嬉(うれ)しき』
274サーベル姫(ひめ)『生(う)みの子(こ)のいや日(ひ)に月(つき)に栄(さか)えしも
275皆(みな)天地(あめつち)の恵(めぐみ)なりけり
276物(もの)云(い)はぬ吾(わ)が子(こ)なれども魂(たましひ)は
277吾(わ)れに通(かよ)ひぬ子(こ)の事々(ことごと)は』
278チルテル『鳥(とり)獣(けもの)虫族(むしけら)迄(まで)も救(すく)うてふ
279神(かみ)の恵(めぐみ)の有難(ありがた)くぞ思(おも)ふ』
280真純彦(ますみひこ)『大空(おほぞら)も大海原(おほうなばら)もすみ渡(わた)る
281島(しま)に育(そだ)ちし身魂(みたま)ぞきよき』
282伊太彦(いたひこ)『かく許(ばか)り楽(たの)しき事(こと)があらむとは
283吾(わ)れさへ夢(ゆめ)に悟(さと)らざりけり』
284三千彦(みちひこ)『天地(あめつち)の恵(めぐみ)は四方(よも)に三千彦(みちひこ)の
285水(みづ)も洩(も)らさぬ今日(けふ)の喜(よろこ)び』
286デビス姫(ひめ)『吾(わ)れも亦(また)神(かみ)の御業(みわざ)を了(を)へし上(うへ)は
287御子(みこ)の数々(かずかず)生(う)まむとぞ思(おも)ふ』
288伊太彦(いたひこ)『三千(さんぜん)の物(もの)言(い)はぬ子(こ)を生(う)み並(なら)べ
289喜(よろこ)び胸(むね)に三千彦(みちひこ)となれ』
290三千彦(みちひこ)『三千(さんぜん)や五千(ごせん)の御子(みこ)は何(なん)のその
291百千万(ももちよろづ)の教御子(をしへみこ)生(う)む』
292アンチー『アヅモスの山(やま)に棲(す)まへる百鳥(ももどり)も
293教(をしへ)の御子(みこ)の数(かず)に入(い)らなむ』
294アキス『吾(わ)れとても玉国別(たまくにわけ)の御子(みこ)となりぬ
295恵(めぐみ)の乳(ちち)を含(ふく)みし身(み)なれば』
296カール『さる昔(むかし)猿(さる)が三匹(さんびき)飛(と)んで来(き)て
297アヅモス山(やま)の使(つかひ)とぞなる』
298テク『其(その)子孫(しそん)茂(しげ)り栄(さか)えて三百(さんびやく)の
299珍(うづ)の猿(ましら)の御子(みこ)となりける』
300カンナ『惟神(かむながら)人(ひと)の種(たね)をば地(ち)に蒔(ま)いて
301青人草(あをひとぐさ)と育(そだ)て玉(たま)ひぬ。
302草(くさ)も木(き)も花(はな)咲(さき)みのる世(よ)の中(なか)に
303吾(われ)のみ一人(ひとり)花(はな)なかるらむ』
304ヘール『初花(はつはな)の露(つゆ)の唇(くちびる)吸(す)はむとて
305驚(おどろ)かされぬ珍(うづ)の白狐(びやくこ)に』
306チルナ姫(ひめ)『咲(さ)くとても容易(ようい)にチルナ初花(はつはな)の
307香(かを)りを千代(ちよ)の枝(えだ)にとどめて。
308チルテルの吾(わが)背(せ)の君(きみ)も惟神(かむながら)
309目覚(めざ)め玉(たま)ひし今日(けふ)の嬉(うれ)しさ』
310ワックス『テルモンの神(かみ)の館(やかた)を追(おひ)出(だ)され
311今日(けふ)は嬉(うれ)しき春(はる)に会(あ)ふ哉(かな)』
312ヘルマン『うたかたの夢(ゆめ)と消(き)え行(ゆ)く吾(わが)罪(つみ)は
313皆(みな)皇神(すめかみ)の光(ひかり)なりけり』
314エキス『五百笞(いほむち)を大勢(おほぜ)の前(まへ)で加(くは)へられ
315尻(しり)おちつきし今日(けふ)の喜(よろこ)び』
316エル『ミカエルの珍(うづ)の司(つかさ)の現(あら)はれて
317百(もも)の罪科(つみとが)払(はら)ひ玉(たま)ひぬ』
318ハール『情(なさけ)ある神(かみ)の司(つかさ)を疑(うたが)ひて
319海(うみ)に堕(お)ちたる人(ひと)もありけり』
320ヤッコス『吾(わが)罪(つみ)の深(ふか)きを思(おも)ひ泛(うか)べては
321世(よ)にやすやすと永(なが)らへぬべき。
322さり乍(なが)ら恵(めぐみ)の深(ふか)き神司(かむづかさ)
323浮(うか)ばせ玉(たま)ひぬ命(いのち)助(たす)けて』
324サボール『情(なさけ)ある神(かみ)の司(つかさ)の言(こと)の葉(は)に
325今(いま)は怖(おそ)れの夢(ゆめ)も醒(さ)めけり』
326サーベル姫(ひめ)『子(こ)よ孫(まご)よ汝(なれ)は之(これ)より門(かど)に出(で)て
327神酒(みき)に浸(ひた)れよ心(こころ)ゆく迄(まで)』
328伊太彦(いたひこ)『猩々(しやうじやう)の御子(みこ)に代(かは)りて物(もの)申(まう)さむ
329吾(わが)たらちねの深(ふか)き御恵(みめぐ)み。
330今日(けふ)よりはアヅモス山(さん)に立(たち)帰(かへ)り
331昔(むかし)のままに神仕(かみづか)へせむ。
332此(この)館(やかた)木々(きぎ)の茂(しげ)みの深(ふか)ければ
333千代(ちよ)の棲処(すみか)になさむとぞ思(おも)ふ。
334人(ひと)の子(こ)は畳(たたみ)の上(うへ)に騒(さわ)げ共(ども)
335吾(われ)は梢(こずゑ)によりて騒(さわ)がむ。
336夜着(よぎ)一(ひと)つ箸(はし)一本(いつぽん)も要(い)りませぬ
337木々(きぎ)の木(こ)の実(み)を取(と)りて食(くら)へば。
338折々(をりをり)に酒倉(さかぐら)開(ひら)きなみなみと
339神酒(みき)を与(あた)へよ百(もも)の御子(みこ)等(ら)に』
340バーチル『吾(われ)は今(いま)俄(にはか)に御子(みこ)を得(え)たりけり
341妻(つま)の御腹(みはら)をからざる御子(みこ)を』
342サーベル姫(ひめ)『身体(からたま)はよし借(か)らずとも汝(な)が身魂(みたま)
343吾(われ)に睦(むつ)びて生(うま)せ玉(たま)ひぬ』
344バーチル『バーチルと猩々彦(しやうじやうひこ)の和合(わがふ)して
345生(う)みし子(こ)なれば他人(ひと)の子(こ)でなし』
346玉国別(たまくにわけ)『いざさらばこれの宴会(うたげ)を切(き)りあげて
347神(かみ)の宮居(みやゐ)に進(すす)み詣(まう)でむ』
348テク『バーチルの家(いへ)をば守(まも)るテク司(つかさ)
349従(したが)ひ行(ゆ)かむ君(きみ)の背後(しりへ)に』
350 之(これ)より玉国別(たまくにわけ)は一同(いちどう)と共(とも)に、351アヅモス山(さん)の彼方(あなた)此方(こなた)の谷間(たにあひ)を跋渉(ばつせう)し、352大峡(おほがひ)小峡(をがひ)の木(き)を数多(あまた)の杣人(そまびと)に伐採(ばつさい)せしめ、353手斧(てをの)の音(おと)勇(いさ)ましく宮(みや)の普請(ふしん)の木作(きづく)りに着手(ちやくしゆ)する事(こと)となつた。354数多(あまた)の里人(さとびと)を始(はじ)め、355チルテルの部下(ぶか)並(ならび)に猩々隊(しやうじやうたい)は昼夜(ちうや)の別(べつ)なく喜(よろこ)び勇(いさ)んで、356木(き)を伐(き)り、357或(あるひ)は運(はこ)び、358或(あるひ)は削(けづ)り、359身(み)の疲(つか)れも打(うち)忘(わす)れて宮普請(みやぶしん)に奉仕(ほうし)する事(こと)となつた。
360(大正一二・四・五 旧二・二〇 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
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