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第九章 夜光玉(やくわうのたま)〔一五三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻 篇:第2篇 東山霊地 よみ(新仮名遣い):あづもすれいち
章:第9章 夜光玉 よみ(新仮名遣い):やこうのたま 通し章番号:1534
口述日:1923(大正12)年04月07日(旧02月22日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年8月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三人がさらに進んで行くと、青白い玉が二つ三つ現れて、ワックスの一二間前で爆発した。エルは驚いて倒れてしまった。
伊太彦は、自分たちはタクシャカ竜王への赦免を伝える使いだから、悪魔がそうそう苦しめることはないだろうと安堵させた。そして元気をつけるために宣伝歌を歌い始めた。
一行が進んで行くと、雷のような音が聞こえた。そこには相当に広い河があって、冷たい水が流れていた。岩のすき間から明りが指しているので探してみると、一丈もある鍾乳石の上に夜光の玉が輝いていた。
伊太彦は天津祝詞を奏上して神慮を伺った。神示によると、これはタクシャカ竜王の宝物・夜光の玉であり、この玉を竜王に持たせると再び風水火の天災を引き起こすから、月照彦の神がここに安置したのだという。
そして、この玉は伊太彦が持ち帰って玉国別に渡すようにとのお告げであった。伊太彦は喜んで玉を懐に入れ、地底を指して進んで行った。岩窟の奥底には岩蓋が施してあり、ここにタクシャカ竜王が封じられていた。
伊太彦は神示を述べ伝え、心の底より悔悟するなら救われると竜王に呼びかけた。するとタクシャカ竜王は恐ろしい九頭一体の巨躯を表し、たちまち白髪赤面の老人となって伊太彦の前に進み、恭しく目礼しながら歌をもって答えた。
竜王は改心の情を歌に込めて表した。伊太彦は歌でもって、地上に上るように竜王を促した。互いに歌を交換し、一行は竜王を従えて隧道を戻って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-09-04 20:14:47 OBC :rm6009
愛善世界社版:107頁 八幡書店版:第10輯 633頁 修補版: 校定版:114頁 普及版:60頁 初版: ページ備考:
001 エルは怪物(くわいぶつ)肝玉(きもだま)()られ、002(いろ)(あを)()め、003臆病風(おくびやうかぜ)(さそ)はれて、004そろそろ(ふる)()した。
005ワックス『オイ、006エルの(やつ)007(ちつ)(しつか)りせぬかい、008睾丸(きんたま)()げた一人前(いちにんまへ)(をとこ)が、009蜘蛛(くも)化物(ばけもの)(ぐらゐ)(おどろ)いて、010どうして(この)探険(たんけん)出来(でき)ようか。011(いま)(まで)(おれ)(たち)所在(あらゆる)悪業(あくごふ)(つく)した(つみ)(つぐな)(ため)012今度(こんど)抜群(ばつぐん)手柄(てがら)(あら)はさにやならぬぢやないか、013本当(ほんたう)腰抜(こしぬけ)ぢやなア』
014エル『さう(しか)るものぢやないワ、015(いま)(まで)(おれ)ならもつと勇気(ゆうき)()すのぢやけれど、016ブラ()げる睾丸(きんたま)()くなつて()るのぢやから、017サウ註文通(ちうもんどほ)りにゆかないワ。018そこは(ひと)同情(どうじやう)して()れないと(こま)るぢやないか』
019ワックス『(なん)だ、020その間抜(まぬけ)(つら)は、021(わづか)顔面(がんめん)に、022免役地(めんえきち)や、023未開(みかい)墾地(こんち)や、024荒蕪地(くわうぶち)沢山(たくさん)(あら)はれとると(おも)へば025矢張(やは)()()はぬ代物(しろもの)だつたワイ。026モシ伊太彦(いたひこ)さま027()んな(やつ)0271これから(おく)()れて()かうものなら、028吾々(われわれ)迷惑(めいわく)ですから、029此処(ここ)から一層(いつそう)(いな)してやつたらどうでせうか』
030伊太彦(いたひこ)『それも()からう。031サア エル032(これ)から免役(めんえき)だ。033トツトと(かへ)つたら()からうぞ』
034エル『ハイ有難(ありがた)う。035そんなら何卒(どうぞ)036入口(いりぐち)(まで)(おく)つて(くだ)さいますか』
037伊太彦(いたひこ)『そいつは(ちつ)(こま)つたなア』
038ワックス『オイ エル039(しつか)りせぬかい、040(ひと)(こころ)()ちやう(ひと)つだ。041サア一人(ひとり)(かへ)つたがよからう。042(この)金剛杖(こんがうづゑ)一本(いつぽん)あれば大丈夫(だいぢやうぶ)だから』
043エル『そンなら仕方(しかた)がない、044(さん)(にん)中間(まんなか)になつて()いて()(こと)にしよう』
045ワックス『ハヽア、046たうと屁古垂(へこた)れやがつたな。047そンなら、048伊太彦(いたひこ)さま、049(あく)にも(つよ)けりや(ぜん)にも(つよ)(この)ワックスが先頭(せんとう)()ちませう、050こいつは面白(おもしろ)い』
051と、052四股(しこ)()(なが)ら、053燐光(りんくわう)(ひか)岩窟(いはや)隧道(すゐだう)を、054一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(さぐ)るやうにして(すす)()る。055(むかう)(はう)から二三個(にさんこ)(ひか)つた(たま)地上(ちじやう)三尺(さんじやく)(ばか)りの(ところ)()いたやうに此方(こちら)(むか)つて(すす)んで()る。056よくよく()ればその青白(あをじろ)(たま)(なか)には、057(いや)らしい(かほ)がハツキリと(あら)はれて()る。058エルは(こし)(かが)め、059ワックスの(せな)(かほ)()(なが)ら、060(あし)もワナワナ()いて()く。061青白(あをじろ)火団(くわだん)強大(きやうだい)なる音響(おんきやう)(とも)062三個(さんこ)一度(いちど)にワックスの一二間(いちにけん)(まへ)(とこ)爆発(ばくはつ)した。063エルはキヤツと(さけ)んで064ワックスの(かた)(つか)んだ(まま)(たふ)れた。065(やむ)()ずワックスも(その)()にドンと(たふ)れて仕舞(しま)つた。
066伊太彦(いたひこ)『オイ、067ワックスさま、068エルさま、069()きた()きた、070(てき)粉砕(ふんさい)(やく)()つて()()せて仕舞(しま)つた。071もう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。072(かみ)(さま)()威光(ゐくわう)(おそ)(もろ)くも滅亡(めつぼう)したと()える、073アハヽヽヽ』
074ワックス『これしきの(こと)(おどろ)くワックスぢやありませぬが、075エルの(やつ)(ひと)首筋(くびすぢ)(つか)ンだまま(たふ)れやがつたものだから、076可惜(あたら)勇士(ゆうし)共倒(ともだふ)れの(やく)()ひました。077オイ、0771エル078(しつか)りしやがらぬか』
079エル『イヤもう(しつか)りする。080哥兄(あにき)(まへ)(しつか)りして()()れよ。081(まへ)伊太彦(いたひこ)さまとさへ(つよ)ければ大丈夫(だいぢやうぶ)だからなア』
082ワックス『(なん)()うても数千(すうせん)年来(ねんらい)密閉(みつぺい)されてあつた()岩窟(いはや)だから、083種々(しゆじゆ)奇怪(きくわい)千万(せんばん)珍事(ちんじ)勃発(ぼつぱつ)するのは覚悟(かくご)(まへ)だ。084サア()かう、085タクシャカ竜王(りうわう)(たい)吾々(われわれ)赦免(しやめん)のお使(つかひ)だから、086さう無暗(むやみ)悪魔(あくま)(おれ)(たち)(くるし)める(はず)がない。087エルが怪物(くわいぶつ)()()まれたのも矢張(やつぱ)りエルが(わる)いのだ、088(いら)はぬ(はち)()さぬからなア。089サア(ひと)機嫌(きげん)(なほ)して宣伝歌(せんでんか)でも(うた)つて元気(げんき)をつけようぢやないか。090(おれ)(うた)ふから(あと)から共節(ともぶし)について()い。091(なん)だか何処(どこ)ともなしに気分(きぶん)()い、092(こと)はない()岩窟(いはや)だ。
093朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
094(つき)()つとも()くるとも
095岩窟(いはや)蜘蛛(くも)()けるとも
096(なに)(おそ)れむ三五(あななひ)
097(かみ)使(つかひ)(あら)はれし
098伊太彦(いたひこ)(つかさ)(はじ)めとし
099ワックス、エルの三柱(みはしら)
100三千(さんぜん)世界(せかい)(その)(あひだ)
101アヅモス(さん)底津根(そこつね)
102(ふう)()まれた竜王(りうわう)
103(つみ)をば(ゆる)(すく)()
104(たふと)(かみ)御使(みつかひ)
105なさむがために(きた)りけり
106仮令(たとへ)如何(いか)なる怪物(くわいぶつ)
107雲霞(うんか)(ごと)(ひそ)むとも
108(かみ)(ちから)()()びて
109(すす)(わが)()金剛(こんがう)不壊(ふゑ)
110如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)なるぞ
111(みづ)(おぼ)れず()()けず
112(さび)(くさ)らず(くも)らずに
113幾万(いくまん)(ねん)(のち)(まで)
114天地(てんち)(たから)(ひか)りゆく
115(きた)れよ(きた)曲津(まがつ)(かみ)
116蜘蛛(くも)(かはづ)虫族(むしけら)
117神力(しんりき)無双(むさう)吾々(われわれ)
118手向(てむか)(こと)出来(でき)よまい
119(いま)(あら)はれた()つの(たま)
120(あや)しき(つら)(さら)しつつ
121(われ)()(まへ)(すす)()
122()()微塵(みぢん)粉砕(ふんさい)
123(けぶり)()えし(あは)れさよ
124(わが)神力(しんりき)(この)(とほ)
125岩窟(いはや)(ひそ)曲神(まがかみ)
126(わが)言霊(ことたま)()きしめて
127(けつ)して無礼(ぶれい)をするでない
128洒落(しやれ)(こと)をば(いた)すなら
129(けつ)して(ゆる)しはせぬ(ほど)
130ワックスさまの身魂(みたま)には
131(おに)大蛇(をろち)(おほかみ)
132ライオン(まで)()んで()
133さうかと(おも)へば天地(あめつち)
134完全(うまら)委曲(つばら)(かた)めなし
135(つく)りたまひし大御祖(おほみおや)
136(たふと)(かみ)神集(かむつど)
137無限(むげん)神力(しんりき)(かがや)かし
138(ひか)へて(ござ)るぞ()をつけよ
139あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
140(いき)(ふさ)がりそになつた
141伊太彦(いたひこ)(つかさ)(いま)此処(ここ)
142一寸(ちよつと)休息(きうそく)(つかまつ)
143天津(あまつ)祝詞(のりと)神言(かみごと)
144奏上(そうじやう)なして岩窟(いはやど)
145妖気(えうき)(はら)(まゐ)りませう
146あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
147(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)
148(まこと)()まぬと()(なが)
149()うなりやもはや仕様(しやう)がない
150此処(ここ)一服(いつぷく)(つかまつ)る』
151 伊太彦(いたひこ)一行(いつかう)(また)もや隧道(すゐだう)をドンドンドンと(くだ)()く。152其処(そこ)には(らい)(ごと)(おと)(きこ)えて()る。153ハテ不思議(ふしぎ)と、154一町(いつちやう)(ばか)(また)平坦(へいたん)隧道(すゐだう)(くだ)つて()くと、155相当(さうたう)(ひろ)(かは)があつて156(いは)から()(いは)吸収(きふしう)さるる(ごと)(こほり)(ごと)(つめ)たい(みづ)(なが)れて()る。157(さん)(にん)(なが)れを(わた)つて(むか)うへ()いた。158此処(ここ)には大小(だいせう)無数(むすう)色々(いろいろ)(かたち)をした(いは)が、159キラキラ(ひか)つて()つて()る。160さうして何処(どこ)ともなしに(いは)隙間(すきま)から(あかり)がさして()るのは(ひと)つの不思議(ふしぎ)である。161ハテ不思議(ふしぎ)(さん)(にん)四辺(あたり)見廻(みまは)せば、162鐘乳石(しようにゆうせき)一丈(いちぢやう)()らうといふ立柱(たちばしら)(うへ)に、163夜光(やくわう)(たま)(かがや)いて()るのが()についた。164伊太彦(いたひこ)此処(ここ)にて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、165神慮(しんりよ)(うかが)つて()た。166神示(しんじ)()れば(この)(たま)夜光(やくわう)(たま)であつて、167タクシャカ竜王(りうわう)宝物(ほうもつ)である。168されど(この)(たま)(かれ)()たせ()(とき)は、169(ふたた)天地(てんち)(あひだ)跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)して風水火(ふうすいくわ)天災(てんさい)誘起(いうき)するをもつて170月照彦(つきてるひこ)(かみ)がこれを()()げ、171此処(ここ)安置(あんち)しおき、172岩窟(がんくつ)(そこ)(ふか)竜王(りうわう)(ふう)()かれたとの(こと)であつた。173さうして174(この)(たま)伊太彦(いたひこ)(みづか)()(かへ)玉国別(たまくにわけ)(わた)せとの神示(しんじ)である。175伊太彦(いたひこ)(おほい)(よろこ)び、176種々(いろいろ)工夫(くふう)()らして(その)(たま)()()(うやうや)しく(ふところ)(をさ)め、177(また)もや(あま)数歌(かずうた)(うた)ひながら、178地底(ちてい)岩窟(がんくつ)をさして際限(さいげん)もなく(すす)()く。179(ふところ)(ざう)せし(たま)(ひかり)によつて地底(ちてい)岩窟(がんくつ)(あか)くなり、180崎嶇(きく)たる、181(あるひ)(ほそ)く、182(あるひ)(せま)岩穴(いはあな)(くぐ)つて最低(さいてい)岩窟(がんくつ)についた。183此処(ここ)には岩蓋(いはぶた)(ほどこ)して、184タクシャカ竜王(りうわう)185(すなは)九頭竜(くづりう)(かた)(ふう)()めてあつた。
186 伊太彦(いたひこ)佇立(ちよりつ)して神示(しんじ)()(つた)へたり。
187神代(かみよ)(むかし)高天(たかま)にて
188天地(てんち)(ぬし)()れませる
189大国常立(おほくにとこたち)大神(おほかみ)
190宇宙(うちう)万有(ばんいう)(つく)りなし
191(かみ)(かたち)生宮(いきみや)
192最後(さいご)(つく)りなさむとて
193天足(あだる)(ひこ)胞場姫(えばひめ)
194(うづ)御子(みこ)をば()みたまふ
195かかる(ところ)天界(てんかい)
196海王星(かいわうせい)より(あら)はれし
197(なんぢ)タクシャカ竜王(りうわう)
198(かみ)御国(みくに)(けが)さむと
199胞場(えば)身魂(みたま)憑依(ひようい)して
200(かみ)(をしえ)(そむ)かしめ
201蒼生草(あをひとぐさ)(ことごと)
202(つみ)奴隷(どれい)(けが)したる
203悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)()めむとて
204(すめ)大神(おほかみ)(みこと)もて
205月照彦(つきてるひこ)大神(おほかみ)
206(なんぢ)此処(ここ)(ふう)じまし
207()(わざはひ)(のぞ)かれぬ
208さはさりながらタクシャカの
209(みたま)邪気(じやき)()(のこ)
210八岐(やまた)大蛇(をろち)醜狐(しこぎつね)
211曲鬼(まがおに)数多(あまた)(あら)はれて
212(かみ)(つく)りし御国(みくに)をば
213(けが)(くも)らす果敢(はか)なさよ
214(この)()(まが)(きよ)めむと
215(いづ)御霊(みたま)大御神(おほみかみ)
216(みづ)御霊(みたま)大神(おほかみ)
217千座(ちくら)置戸(おきど)()ひたまひ
218(なんぢ)(をか)せし罪科(つみとが)
219(ゆる)して地上(ちじやう)(すく)()
220(たふと)(かみ)御使(みつかひ)
221なさせたまはむ思召(おぼしめし)
222(なんぢ)タクシャカ竜王(りうわう)
223()()(つた)(こと)()
224(こころ)(そこ)より悔悟(くわいご)して
225(よろこ)(あふ)()くならば
226(いま)こそ(なんぢ)(すく)ふべし
227善悪(ぜんあく)邪正(じやせい)(わか)(ぎは)
228完全(うまら)委曲(つばら)復命(かへりごと)
229(まを)させたまへ惟神(かむながら)
230(かみ)御言(みこと)(かうむ)りて
231(ここ)(まこと)()(つた)
232(ひと)(ふた)()()(いつ)()
233(なな)()(ここの)(たり)(もも)()
234(よろづ)(かみ)はアヅモスの
235(この)聖場(せいぢやう)(あつ)まりて
236三千(さんぜん)世界(せかい)水晶(すいしやう)
237()立直(たてなほ)天地(あめつち)
238一切(いちさい)衆生(しゆじやう)(すく)ひます
239(かしこ)御世(みよ)となりけるぞ
240あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
241此処(ここ)伊太彦(いたひこ)(あら)はれて
242(なんぢ)(きよ)返答(いらへ)まつ』
243()(をは)れば、244タクシャカ竜王(りうわう)は、245()るも(おそ)ろしき九頭(きうとう)一体(いつたい)巨躯(きよく)(あら)はし、246(おのおの)()(まい)(した)()()(なが)ら、247口許(くちもと)から、248(あを)249(あか)250(むらさき)251(しろ)252()253橄欖色(かんらんしよく)などの(けぶり)(さか)んに()()し、254(たちま)白髪(はくはつ)赤面(せきめん)老人(らうじん)となり、255赤色(あかいろ)(ころも)全身(ぜんしん)(まと)ひ、256岩窟(がんくつ)()をパツと(ひら)いて伊太彦(いたひこ)(まへ)(すす)(うやうや)しく目礼(もくれい)しながら、257(うた)をもつてこれに(こた)へた。
258タクシャカ『三千(さんぜん)(ねん)(いにしへ)より
259月照彦(つきてるひこ)大神(おほかみ)
260()()められし(われ)こそは
261タクシャカ竜王(りうわう)()(かしら)
262暴風(ばうふう)()こし()(はな)
263豪雨(がうう)()らして天地(あめつち)
264自由(じいう)自在(じざい)(みだ)したる
265(われ)悪魔(あくま)(みたま)ぞや
266罪障(ざいしやう)(ふか)(われ)こそは
267八千万(はつせんまん)(ごふ)(すゑ)(まで)
268常暗(とこやみ)なせる岩窟(がんくつ)
269()てられ(くる)しむものなりと
270覚悟(かくご)(きは)()たりしが
271(ここ)一陽(いちやう)来復(らいふく)
272仁慈(じんじ)(かみ)御恵(みめぐみ)
273(ふたた)(われ)()(いだ)
274(すく)はむ(ため)(おん)使(つかひ)
275(つつし)感謝(かんしや)(たてまつ)
276いざ(この)(うへ)(いち)(にち)
277(はや)地上(ちじやう)(すく)はれて
278天地(てんち)陽気(やうき)調節(てうせつ)
279蒼生草(あをひとぐさ)(とり)(けもの)
280草木(くさき)(すゑ)(いた)(まで)
281(かみ)のまにまに(まも)るべし
282(すく)はせたまへ神司(かむづかさ)
283(いま)(まで)(をか)せし(つみ)()
284(ここ)至誠(しせい)吐露(とろう)して
285改心(かいしん)(ちか)(たてまつ)
286あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
287御霊(みたま)恩頼(ふゆ)(たま)へかし』
288言葉(ことば)(さはや)かに(こた)へた。289伊太彦(いたひこ)は、
290伊太彦(いたひこ)『タクシャカの(かみ)(こころ)(あらた)めて
291(まつろ)ふと()ひし(こと)()(たふと)き。
292いざさらば(はや)(この)()()でまして
293(のぼ)らせたまへ(つち)(おもて)に』
294タクシャカ『有難(ありがた)(はな)()(はる)(めぐ)()
295(きみ)()ひたる今日(けふ)(うれ)しさ。
296(いま)(まで)()しき(おこなひ)(あらた)めて
297(まこと)(ひと)つに(かみ)(つか)へむ』
298伊太彦(いたひこ)(この)(ごろ)知辺(しるべ)なしとも()(うへ)
299因縁(ゆかり)ありせば(やす)くかへらせ』
300 ()(たがひ)(うた)交換(かうくわん)し、301タクシャカ竜王(りうわう)(したが)へ、302ワックス、303エルの両人(りやうにん)先頭(せんとう)をさせ(なが)ら、304隧道(すゐだう)を、3041(あるひ)(のぼ)り、305(あるひ)(くだ)り、306左右(さいう)屈曲(くつきよく)(なが)(やうや)くにして、307(もと)入口(いりぐち)(のぼ)りついた。
308大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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