霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 夜光玉(やくわうのたま)〔一五三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻 篇:第2篇 東山霊地 よみ(新仮名遣い):あづもすれいち
章:第9章 夜光玉 よみ(新仮名遣い):やこうのたま 通し章番号:1534
口述日:1923(大正12)年04月07日(旧02月22日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年8月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
三人がさらに進んで行くと、青白い玉が二つ三つ現れて、ワックスの一二間前で爆発した。エルは驚いて倒れてしまった。
伊太彦は、自分たちはタクシャカ竜王への赦免を伝える使いだから、悪魔がそうそう苦しめることはないだろうと安堵させた。そして元気をつけるために宣伝歌を歌い始めた。
一行が進んで行くと、雷のような音が聞こえた。そこには相当に広い河があって、冷たい水が流れていた。岩のすき間から明りが指しているので探してみると、一丈もある鍾乳石の上に夜光の玉が輝いていた。
伊太彦は天津祝詞を奏上して神慮を伺った。神示によると、これはタクシャカ竜王の宝物・夜光の玉であり、この玉を竜王に持たせると再び風水火の天災を引き起こすから、月照彦の神がここに安置したのだという。
そして、この玉は伊太彦が持ち帰って玉国別に渡すようにとのお告げであった。伊太彦は喜んで玉を懐に入れ、地底を指して進んで行った。岩窟の奥底には岩蓋が施してあり、ここにタクシャカ竜王が封じられていた。
伊太彦は神示を述べ伝え、心の底より悔悟するなら救われると竜王に呼びかけた。するとタクシャカ竜王は恐ろしい九頭一体の巨躯を表し、たちまち白髪赤面の老人となって伊太彦の前に進み、恭しく目礼しながら歌をもって答えた。
竜王は改心の情を歌に込めて表した。伊太彦は歌でもって、地上に上るように竜王を促した。互いに歌を交換し、一行は竜王を従えて隧道を戻って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-09-04 20:14:47 文字数:3763 OBC :rm6009
愛善世界社版:107頁 八幡書店版:第10輯 633頁 修補版: 校定版:114頁 普及版:60頁 初版: ページ備考:
001 エルは怪物(くわいぶつ)に肝玉(きもだま)を取(と)られ、002色(いろ)青(あを)冷(ざ)め、003臆病風(おくびやうかぜ)に誘(さそ)はれて、004そろそろ慄(ふる)ひ出(だ)した。
005ワックス『オイ、006エルの奴(やつ)、007些(ちつ)と確(しつか)りせぬかい、008睾丸(きんたま)を提(さ)げた一人前(いちにんまへ)の男(をとこ)が、009蜘蛛(くも)の化物(ばけもの)位(ぐらゐ)に驚(おどろ)いて、010どうして此(この)探険(たんけん)が出来(でき)ようか。011今(いま)迄(まで)俺(おれ)達(たち)が所在(あらゆる)悪業(あくごふ)を尽(つく)した罪(つみ)を償(つぐな)ふ為(ため)に012今度(こんど)は抜群(ばつぐん)の手柄(てがら)を現(あら)はさにやならぬぢやないか、013本当(ほんたう)に腰抜(こしぬけ)ぢやなア』
014エル『さう叱(しか)るものぢやないワ、015今(いま)迄(まで)の俺(おれ)ならもつと勇気(ゆうき)を出(だ)すのぢやけれど、016ブラ下(さ)げる睾丸(きんたま)が無(な)くなつて居(を)るのぢやから、017サウ註文通(ちうもんどほ)りにゆかないワ。018そこは一(ひと)つ同情(どうじやう)して呉(く)れないと困(こま)るぢやないか』
019ワックス『何(なん)だ、020その間抜(まぬけ)た面(つら)は、021僅(わづか)の顔面(がんめん)に、022免役地(めんえきち)や、023未開(みかい)墾地(こんち)や、024荒蕪地(くわうぶち)が沢山(たくさん)現(あら)はれとると思(おも)へば025矢張(やは)り間(ま)に合(あ)はぬ代物(しろもの)だつたワイ。026モシ伊太彦(いたひこ)さま027此(こ)んな奴(やつ)、0271これから奥(おく)へ連(つ)れて行(ゆ)かうものなら、028吾々(われわれ)の迷惑(めいわく)ですから、029此処(ここ)から一層(いつそう)帰(いな)してやつたらどうでせうか』
030伊太彦(いたひこ)『それも好(よ)からう。031サア エル032是(これ)から免役(めんえき)だ。033トツトと帰(かへ)つたら好(よ)からうぞ』
034エル『ハイ有難(ありがた)う。035そんなら何卒(どうぞ)、036入口(いりぐち)迄(まで)送(おく)つて下(くだ)さいますか』
037伊太彦(いたひこ)『そいつは些(ちつ)と困(こま)つたなア』
038ワックス『オイ エル039確(しつか)りせぬかい、040人(ひと)は心(こころ)の持(も)ちやう一(ひと)つだ。041サア一人(ひとり)帰(かへ)つたがよからう。042此(この)金剛杖(こんがうづゑ)一本(いつぽん)あれば大丈夫(だいぢやうぶ)だから』
043エル『そンなら仕方(しかた)がない、044三(さん)人(にん)の中間(まんなか)になつて跟(つ)いて行(ゆ)く事(こと)にしよう』
045ワックス『ハヽア、046たうと屁古垂(へこた)れやがつたな。047そンなら、048伊太彦(いたひこ)さま、049悪(あく)にも強(つよ)けりや善(ぜん)にも強(つよ)い此(この)ワックスが先頭(せんとう)に立(た)ちませう、050こいつは面白(おもしろ)い』
051と、052四股(しこ)踏(ふ)み乍(なが)ら、053燐光(りんくわう)に光(ひか)る岩窟(いはや)の隧道(すゐだう)を、054一歩(ひとあし)々々(ひとあし)探(さぐ)るやうにして進(すす)み入(い)る。055向(むかう)の方(はう)から二三個(にさんこ)の光(ひか)つた玉(たま)が地上(ちじやう)三尺(さんじやく)許(ばか)りの所(ところ)を浮(う)いたやうに此方(こちら)に向(むか)つて進(すす)んで来(く)る。056よくよく見(み)ればその青白(あをじろ)い玉(たま)の中(なか)には、057嫌(いや)らしい顔(かほ)がハツキリと現(あら)はれて居(ゐ)る。058エルは腰(こし)を屈(かが)め、059ワックスの背(せな)に顔(かほ)を当(あ)て乍(なが)ら、060足(あし)もワナワナ跟(つ)いて行(ゆ)く。061青白(あをじろ)い火団(くわだん)は強大(きやうだい)なる音響(おんきやう)と共(とも)に062三個(さんこ)一度(いちど)にワックスの一二間(いちにけん)前(まへ)の所(とこ)で爆発(ばくはつ)した。063エルはキヤツと叫(さけ)んで064ワックスの肩(かた)を掴(つか)んだ儘(まま)倒(たふ)れた。065止(やむ)を得(え)ずワックスも其(その)場(ば)にドンと倒(たふ)れて仕舞(しま)つた。
066伊太彦(いたひこ)『オイ、067ワックスさま、068エルさま、069起(お)きた起(お)きた、070敵(てき)は粉砕(ふんさい)の厄(やく)に遭(あ)つて消(き)え失(う)せて仕舞(しま)つた。071もう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。072神(かみ)様(さま)の御(ご)威光(ゐくわう)に怖(おそ)れ脆(もろ)くも滅亡(めつぼう)したと見(み)える、073アハヽヽヽ』
074ワックス『これしきの事(こと)に驚(おどろ)くワックスぢやありませぬが、075エルの奴(やつ)人(ひと)の首筋(くびすぢ)を掴(つか)ンだまま倒(たふ)れやがつたものだから、076可惜(あたら)勇士(ゆうし)も共倒(ともだふ)れの厄(やく)に遭(あ)ひました。077オイ、0771エル078確(しつか)りしやがらぬか』
079エル『イヤもう確(しつか)りする。080哥兄(あにき)お前(まへ)確(しつか)りして居(ゐ)て呉(く)れよ。081お前(まへ)と伊太彦(いたひこ)さまとさへ強(つよ)ければ大丈夫(だいぢやうぶ)だからなア』
082ワックス『何(なん)と云(い)うても数千(すうせん)年来(ねんらい)密閉(みつぺい)されてあつた魔(ま)の岩窟(いはや)だから、083種々(しゆじゆ)の奇怪(きくわい)千万(せんばん)な珍事(ちんじ)が勃発(ぼつぱつ)するのは覚悟(かくご)の前(まへ)だ。084サア行(ゆ)かう、085タクシャカ竜王(りうわう)に対(たい)し吾々(われわれ)は赦免(しやめん)のお使(つかひ)だから、086さう無暗(むやみ)に悪魔(あくま)が俺(おれ)達(たち)を困(くるし)める筈(はず)がない。087エルが怪物(くわいぶつ)に手(て)を噛(か)まれたのも矢張(やつぱ)りエルが悪(わる)いのだ、088弄(いら)はぬ蜂(はち)は螫(さ)さぬからなア。089サア一(ひと)つ機嫌(きげん)を直(なほ)して宣伝歌(せんでんか)でも歌(うた)つて元気(げんき)をつけようぢやないか。090俺(おれ)が歌(うた)ふから後(あと)から共節(ともぶし)について来(こ)い。091何(なん)だか何処(どこ)ともなしに気分(きぶん)の好(よ)い、092事(こと)はない魔(ま)の岩窟(いはや)だ。
093朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
094月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
095岩窟(いはや)の蜘蛛(くも)は化(ば)けるとも
096何(なに)か怖(おそ)れむ三五(あななひ)の
097神(かみ)の使(つかひ)と現(あら)はれし
098伊太彦(いたひこ)司(つかさ)を始(はじ)めとし
099ワックス、エルの三柱(みはしら)だ
100三千(さんぜん)世界(せかい)の其(その)間(あひだ)
101アヅモス山(さん)の底津根(そこつね)に
102封(ふう)じ込(こ)まれた竜王(りうわう)の
103罪(つみ)をば赦(ゆる)し救(すく)ひ上(あ)げ
104尊(たふと)き神(かみ)の御使(みつかひ)と
105なさむがために来(きた)りけり
106仮令(たとへ)如何(いか)なる怪物(くわいぶつ)が
107雲霞(うんか)の如(ごと)く潜(ひそ)むとも
108神(かみ)の力(ちから)を身(み)に浴(あ)びて
109進(すす)む吾(わが)身(み)は金剛(こんがう)不壊(ふゑ)
110如意(によい)の宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)なるぞ
111水(みづ)に溺(おぼ)れず火(ひ)に焼(や)けず
112錆(さび)ず腐(くさ)らず曇(くも)らずに
113幾万(いくまん)年(ねん)の後(のち)迄(まで)も
114天地(てんち)の宝(たから)と光(ひか)りゆく
115来(きた)れよ来(きた)れ曲津(まがつ)神(かみ)
116蜘蛛(くも)も蛙(かはづ)も虫族(むしけら)も
117神力(しんりき)無双(むさう)の吾々(われわれ)に
118手向(てむか)ふ事(こと)は出来(でき)よまい
119今(いま)現(あら)はれた三(み)つの玉(たま)
120怪(あや)しき面(つら)を晒(さら)しつつ
121吾(われ)等(ら)が前(まへ)に進(すす)み来(き)て
122木(こ)つ端(ぱ)微塵(みぢん)に粉砕(ふんさい)し
123煙(けぶり)と消(き)えし哀(あは)れさよ
124吾(わが)神力(しんりき)は此(この)通(とほ)り
125岩窟(いはや)に潜(ひそ)む曲神(まがかみ)よ
126吾(わが)言霊(ことたま)を聞(き)きしめて
127決(けつ)して無礼(ぶれい)をするでない
128洒落(しやれ)た事(こと)をば致(いた)すなら
129決(けつ)して許(ゆる)しはせぬ程(ほど)に
130ワックスさまの身魂(みたま)には
131鬼(おに)も大蛇(をろち)も狼(おほかみ)も
132ライオン迄(まで)も棲(す)んで居(ゐ)る
133さうかと思(おも)へば天地(あめつち)を
134完全(うまら)に委曲(つばら)に固(かた)めなし
135造(つく)りたまひし大御祖(おほみおや)
136尊(たふと)き神(かみ)が神集(かむつど)ひ
137無限(むげん)の神力(しんりき)輝(かがや)かし
138控(ひか)へて厶(ござ)るぞ気(き)をつけよ
139あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
140息(いき)が塞(ふさ)がりそになつた
141伊太彦(いたひこ)司(つかさ)よ今(いま)此処(ここ)で
142一寸(ちよつと)休息(きうそく)仕(つかまつ)り
143天津(あまつ)祝詞(のりと)や神言(かみごと)を
144奏上(そうじやう)なして岩窟(いはやど)の
145妖気(えうき)を払(はら)ひ参(まゐ)りませう
146あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
147叶(かな)はぬ時(とき)の神頼(かみだの)み
148誠(まこと)に済(す)まぬと知(し)り乍(なが)ら
149斯(か)うなりやもはや仕様(しやう)がない
150此処(ここ)で一服(いつぷく)仕(つかまつ)る』
151 伊太彦(いたひこ)一行(いつかう)は又(また)もや隧道(すゐだう)をドンドンドンと下(くだ)り行(ゆ)く。152其処(そこ)には雷(らい)の如(ごと)き音(おと)が聞(きこ)えて居(を)る。153ハテ不思議(ふしぎ)と、154一町(いつちやう)許(ばか)り又(また)平坦(へいたん)な隧道(すゐだう)を下(くだ)つて行(ゆ)くと、155相当(さうたう)に広(ひろ)い河(かは)があつて156岩(いは)から出(で)て岩(いは)に吸収(きふしう)さるる如(ごと)く氷(こほり)の如(ごと)き冷(つめ)たい水(みづ)が流(なが)れて居(ゐ)る。157三(さん)人(にん)は流(なが)れを渡(わた)つて向(むか)うへ着(つ)いた。158此処(ここ)には大小(だいせう)無数(むすう)の色々(いろいろ)の形(かたち)をした岩(いは)が、159キラキラ光(ひか)つて立(た)つて居(ゐ)る。160さうして何処(どこ)ともなしに岩(いは)の隙間(すきま)から明(あかり)がさして居(ゐ)るのは一(ひと)つの不思議(ふしぎ)である。161ハテ不思議(ふしぎ)と三(さん)人(にん)は四辺(あたり)を見廻(みまは)せば、162鐘乳石(しようにゆうせき)の一丈(いちぢやう)も有(あ)らうといふ立柱(たちばしら)の上(うへ)に、163夜光(やくわう)の玉(たま)が輝(かがや)いて居(ゐ)るのが目(め)についた。164伊太彦(いたひこ)は此処(ここ)にて天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、165神慮(しんりよ)を伺(うかが)つて見(み)た。166神示(しんじ)に依(よ)れば此(この)玉(たま)は夜光(やくわう)の玉(たま)であつて、167タクシャカ竜王(りうわう)が宝物(ほうもつ)である。168されど此(この)玉(たま)を彼(かれ)に持(も)たせ置(お)く時(とき)は、169再(ふたた)び天地(てんち)の間(あひだ)に跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)して風水火(ふうすいくわ)の天災(てんさい)を誘起(いうき)するをもつて170月照彦(つきてるひこ)の神(かみ)がこれを取(と)り上(あ)げ、171此処(ここ)に安置(あんち)しおき、172岩窟(がんくつ)の底(そこ)深(ふか)く竜王(りうわう)を封(ふう)じ置(お)かれたとの事(こと)であつた。173さうして174此(この)玉(たま)は伊太彦(いたひこ)が自(みづか)ら持(も)ち帰(かへ)り玉国別(たまくにわけ)に渡(わた)せとの神示(しんじ)である。175伊太彦(いたひこ)は大(おほい)に喜(よろこ)び、176種々(いろいろ)と工夫(くふう)を凝(こ)らして其(その)玉(たま)を手(て)に入(い)れ恭(うやうや)しく懐(ふところ)に納(をさ)め、177又(また)もや天(あま)の数歌(かずうた)を歌(うた)ひながら、178地底(ちてい)の岩窟(がんくつ)をさして際限(さいげん)もなく進(すす)み行(ゆ)く。179懐(ふところ)に蔵(ざう)せし玉(たま)の光(ひかり)によつて地底(ちてい)の岩窟(がんくつ)も明(あか)くなり、180崎嶇(きく)たる、181或(あるひ)は細(ほそ)く、182或(あるひ)は狭(せま)き岩穴(いはあな)を潜(くぐ)つて最低(さいてい)の岩窟(がんくつ)についた。183此処(ここ)には岩蓋(いはぶた)が施(ほどこ)して、184タクシャカ竜王(りうわう)、185即(すなは)ち九頭竜(くづりう)が堅(かた)く封(ふう)じ込(こ)めてあつた。
186 伊太彦(いたひこ)は佇立(ちよりつ)して神示(しんじ)を宣(の)り伝(つた)へたり。
187『神代(かみよ)の昔(むかし)高天(たかま)にて
188天地(てんち)の主(ぬし)と現(あ)れませる
189大国常立(おほくにとこたち)大神(おほかみ)は
190宇宙(うちう)万有(ばんいう)造(つく)りなし
191神(かみ)の形(かたち)の生宮(いきみや)を
192最後(さいご)に造(つく)りなさむとて
193天足(あだる)の彦(ひこ)や胞場姫(えばひめ)の
194珍(うづ)の御子(みこ)をば生(う)みたまふ
195かかる所(ところ)へ天界(てんかい)の
196海王星(かいわうせい)より現(あら)はれし
197汝(なんぢ)タクシャカ竜王(りうわう)は
198神(かみ)の御国(みくに)を汚(けが)さむと
199胞場(えば)の身魂(みたま)に憑依(ひようい)して
200神(かみ)の教(をしえ)に背(そむ)かしめ
201蒼生草(あをひとぐさ)を悉(ことごと)く
202罪(つみ)の奴隷(どれい)と汚(けが)したる
203悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)を矯(た)めむとて
204皇(すめ)大神(おほかみ)の勅(みこと)もて
205月照彦(つきてるひこ)の大神(おほかみ)は
206汝(なんぢ)を此処(ここ)に封(ふう)じまし
207世(よ)の禍(わざはひ)を除(のぞ)かれぬ
208さはさりながらタクシャカの
209霊(みたま)の邪気(じやき)が世(よ)に残(のこ)り
210八岐(やまた)大蛇(をろち)や醜狐(しこぎつね)
211曲鬼(まがおに)数多(あまた)現(あら)はれて
212神(かみ)の造(つく)りし御国(みくに)をば
213汚(けが)し曇(くも)らす果敢(はか)なさよ
214此(この)世(よ)の曲(まが)を清(きよ)めむと
215厳(いづ)の御霊(みたま)の大御神(おほみかみ)
216瑞(みづ)の御霊(みたま)の大神(おほかみ)は
217千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)ひたまひ
218汝(なんぢ)が犯(をか)せし罪科(つみとが)を
219宥(ゆる)して地上(ちじやう)に救(すく)ひ上(あ)げ
220尊(たふと)き神(かみ)の御使(みつかひ)と
221なさせたまはむ思召(おぼしめし)
222汝(なんぢ)タクシャカ竜王(りうわう)よ
223吾(わ)が宣(の)り伝(つた)ふ言(こと)の葉(は)を
224心(こころ)の底(そこ)より悔悟(くわいご)して
225喜(よろこ)び仰(あふ)ぎ聞(き)くならば
226今(いま)こそ汝(なんぢ)を救(すく)ふべし
227善悪(ぜんあく)邪正(じやせい)の分(わか)れ際(ぎは)
228完全(うまら)に委曲(つばら)に復命(かへりごと)
229申(まを)させたまへ惟神(かむながら)
230神(かみ)の御言(みこと)を蒙(かうむ)りて
231茲(ここ)に誠(まこと)を述(の)べ伝(つた)ふ
232一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)つ六(む)つ
233七(なな)八(や)九(ここの)つ十(たり)百(もも)千(ち)
234万(よろづ)の神(かみ)はアヅモスの
235此(この)聖場(せいぢやう)に集(あつ)まりて
236三千(さんぜん)世界(せかい)を水晶(すいしやう)の
237世(よ)に立直(たてなほ)し天地(あめつち)の
238一切(いちさい)衆生(しゆじやう)を救(すく)ひます
239畏(かしこ)き御世(みよ)となりけるぞ
240あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
241此処(ここ)に伊太彦(いたひこ)現(あら)はれて
242汝(なんぢ)が清(きよ)き返答(いらへ)まつ』
243と宣(の)り終(をは)れば、244タクシャカ竜王(りうわう)は、245見(み)るも怖(おそ)ろしき九頭(きうとう)一体(いつたい)の巨躯(きよく)を現(あら)はし、246各(おのおの)二(に)枚(まい)の舌(した)を吐(は)き出(だ)し乍(なが)ら、247口許(くちもと)から、248青(あを)、249赤(あか)、250紫(むらさき)、251白(しろ)、252黄(き)、253橄欖色(かんらんしよく)などの煙(けぶり)を盛(さか)んに吐(は)き出(だ)し、254忽(たちま)ち白髪(はくはつ)赤面(せきめん)の老人(らうじん)となり、255赤色(あかいろ)の衣(ころも)を全身(ぜんしん)に纒(まと)ひ、256岩窟(がんくつ)の戸(と)をパツと開(ひら)いて伊太彦(いたひこ)の前(まへ)に進(すす)み恭(うやうや)しく目礼(もくれい)しながら、257歌(うた)をもつてこれに答(こた)へた。
258タクシャカ『三千(さんぜん)年(ねん)の古(いにしへ)より
259月照彦(つきてるひこ)の大神(おほかみ)に
260押(お)し込(こ)められし吾(われ)こそは
261タクシャカ竜王(りうわう)魔(ま)の頭(かしら)
262暴風(ばうふう)起(お)こし火(ひ)を放(はな)ち
263豪雨(がうう)を降(ふ)らして天地(あめつち)を
264自由(じいう)自在(じざい)に乱(みだ)したる
265吾(われ)は悪魔(あくま)の霊(みたま)ぞや
266罪障(ざいしやう)深(ふか)き吾(われ)こそは
267八千万(はつせんまん)劫(ごふ)の末(すゑ)迄(まで)も
268常暗(とこやみ)なせる岩窟(がんくつ)に
269捨(す)てられ苦(くる)しむものなりと
270覚悟(かくご)を極(きは)め居(ゐ)たりしが
271茲(ここ)に一陽(いちやう)来復(らいふく)し
272仁慈(じんじ)の神(かみ)の御恵(みめぐみ)に
273再(ふたた)び吾(われ)を世(よ)に出(いだ)し
274救(すく)はむ為(ため)の御(おん)使(つかひ)
275謹(つつし)み感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
276いざ此(この)上(うへ)は一(いち)日(にち)も
277早(はや)く地上(ちじやう)に救(すく)はれて
278天地(てんち)の陽気(やうき)を調節(てうせつ)し
279蒼生草(あをひとぐさ)や鳥(とり)獣(けもの)
280草木(くさき)の末(すゑ)に至(いた)る迄(まで)
281神(かみ)のまにまに守(まも)るべし
282救(すく)はせたまへ神司(かむづかさ)
283今(いま)迄(まで)犯(をか)せし罪(つみ)を悔(く)い
284茲(ここ)に至誠(しせい)を吐露(とろう)して
285改心(かいしん)誓(ちか)ひ奉(たてまつ)る
286あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
287御霊(みたま)の恩頼(ふゆ)を給(たま)へかし』
288と言葉(ことば)も爽(さはや)かに答(こた)へた。289伊太彦(いたひこ)は、
290伊太彦(いたひこ)『タクシャカの神(かみ)は心(こころ)を改(あらた)めて
291服(まつろ)ふと云(い)ひし言(こと)の葉(は)尊(たふと)き。
292いざさらば早(はや)く此(この)場(ば)を出(い)でまして
293登(のぼ)らせたまへ地(つち)の表(おもて)に』
294タクシャカ『有難(ありがた)し花(はな)咲(さ)く春(はる)に廻(めぐ)り会(あ)ひ
295君(きみ)に遇(あ)ひたる今日(けふ)の嬉(うれ)しさ。
296今(いま)迄(まで)の悪(あ)しき行(おこなひ)改(あらた)めて
297誠(まこと)一(ひと)つに神(かみ)に仕(つか)へむ』
298伊太彦(いたひこ)『此(この)頃(ごろ)の知辺(しるべ)なしとも地(ち)の上(うへ)に
299因縁(ゆかり)ありせば安(やす)くかへらせ』
300 斯(か)く互(たがひ)に歌(うた)を交換(かうくわん)し、301タクシャカ竜王(りうわう)を従(したが)へ、302ワックス、303エルの両人(りやうにん)に先頭(せんとう)をさせ乍(なが)ら、304隧道(すゐだう)を、3041或(あるひ)は登(のぼ)り、305或(あるひ)は下(くだ)り、306左右(さいう)に屈曲(くつきよく)し乍(なが)ら漸(やうや)くにして、307元(もと)の入口(いりぐち)に登(のぼ)りついた。
308(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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