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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第60巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 天仁和楽
第1章 清浄車
第2章 神森
第3章 瑞祥
第4章 木遣
第5章 鎮祭
第6章 満悦
第2篇 東山霊地
第7章 方便
第8章 土蜘蛛
第9章 夜光玉
第10章 玉国
第11章 法螺貝
第3篇 神の栄光
第12章 三美歌(その一)
第13章 三美歌(その二)
第4篇 善言美詞
第14章 神言
第15章 祝詞
第16章 祈言
第17章 崇詞
第18章 復祭
第19章 復活
第5篇 金言玉辞
第20章 三五神諭(その一)
第21章 三五神諭(その二)
第22章 三五神諭(その三)
第23章 三五神諭(その四)
第24章 三五神諭(その五)
第25章 三五神諭(その六)
余白歌
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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第60巻(亥の巻)
> 第2篇 東山霊地 > 第8章 土蜘蛛
<<< 方便
(B)
(N)
夜光玉 >>>
第八章
土蜘蛛
(
つちぐも
)
〔一五三三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻
篇:
第2篇 東山霊地
よみ(新仮名遣い):
あづもすれいち
章:
第8章 土蜘蛛
よみ(新仮名遣い):
つちぐも
通し章番号:
1533
口述日:
1923(大正12)年04月07日(旧02月22日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年8月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉国別一行はふたたびアヅモス山に登り、もとの古社の跡に近寄ってみれば、猩々姫の言葉通り五寸ばかり上土をめくると、長方形の石蓋が現れてきた。
玉国別は石蓋を取り除くための祈願を奏上した。大神に無事を祈り終ると、金てこを岩のすき間に押し込んで石蓋を取り除いた。黒煙もうもうと立ち上り、しばし当りがまったく見えない状態となった。黒煙が風に吹き飛ばされると、岩との入り口には階段が見えた。
玉国別は、伊太彦にワックス、エルを共につけて岩窟の探検を命じた。三人は蜘蛛の巣をはらいながら下って行く。不思議にも隧道は燐光が輝いて足元が見えるほど明るかった。
長い隧道を上り下り、右に左に折れながら進んで行くと、にわかに明るいところに出た。そこに三尺ばかりの丸い茶褐色のものが横たわっていた。エルが力ませに杖で打つと、それは数千年を経た穴蜘蛛であった。蜘蛛は逃げて行った。
エルは景気づけに滑稽な歌を歌いながら進んで行った。角を曲がると、デビス姫が立っていた。二人は本物のデビス姫と思い、ワックスは口説き始めた。
伊太彦がこの女に関わってはならないと忠告し、ややワックスは躊躇した。エルはワックスの代理として手を握ろうと手を出した。女がエルの手を唇に当てたとたん、エルは悲鳴を上げて倒れてしまった。
女は大蜘蛛の正体を表し、休んでいたところを殴った敵だ、と言い捨てて這って行ってしまった。
伊太彦はエルの傷に息を吹きかけて天の数歌を歌った。半時ばかりしてようやくエルは正気付いたが、痛さをこらえて意気消沈の態で二人の跡に従って進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-05-11 22:37:11
OBC :
rm6008
愛善世界社版:
93頁
八幡書店版:
第10輯 627頁
修補版:
校定版:
100頁
普及版:
60頁
初版:
ページ備考:
001
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
はバーチルの
館
(
やかた
)
を
立
(
たち
)
出
(
い
)
で、
002
再
(
ふたた
)
びアヅモス
山
(
さん
)
のもとの
古社
(
ふるやしろ
)
の
趾
(
あと
)
に
近寄
(
ちかよ
)
り
見
(
み
)
れば
003
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
違
(
たが
)
はず、
004
五寸
(
ごすん
)
許
(
ばか
)
り
上土
(
うはつち
)
をめくつて
見
(
み
)
ると、
005
長方形
(
ちやうはうけい
)
の
石蓋
(
いしぶた
)
が
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
た。
006
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
先
(
ま
)
づ
石蓋
(
いしぶた
)
取
(
と
)
り
除
(
のぞ
)
きの
祈願
(
きぐわん
)
を
奏上
(
そうじやう
)
したり。
007
『スメールの
珍
(
うづ
)
の
聖地
(
せいち
)
に、
008
宮柱
(
みやばしら
)
太
(
ふと
)
しく
建
(
た
)
てて
常久
(
とこしへ
)
に、
009
鎮
(
しづ
)
まり
居
(
ゐ
)
ますバラモンの、
010
教
(
をしへ
)
の
御祖
(
みおや
)
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
御舎
(
みあらか
)
を、
011
仕
(
つか
)
へまつりし
古
(
ふる
)
き
趾
(
あと
)
の
石蓋
(
いしぶた
)
を、
012
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
の
願
(
ねが
)
ひによりて、
013
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め
身
(
み
)
を
浄
(
きよ
)
め、
014
珍
(
うづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
り
上
(
あ
)
げて、
015
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
の
昔
(
むかし
)
より、
016
封
(
ふう
)
じ
置
(
お
)
きたる
玉手箱
(
たまてばこ
)
、
017
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
蒙
(
かうむ
)
りて、
018
愈
(
いよいよ
)
開
(
ひら
)
き
奉
(
たてまつ
)
る。
019
仰
(
あふ
)
ぎ
願
(
ねが
)
はくは
此
(
この
)
神業
(
かむわざ
)
に
仕
(
つか
)
へまつる
人々
(
ひとびと
)
は、
020
心
(
こころ
)
正
(
ただ
)
しく
清
(
きよ
)
く
直
(
なほ
)
くして、
021
神
(
かみ
)
の
霊
(
みたま
)
に
帰
(
かへ
)
りし
珍
(
うづ
)
の
御宝
(
みたから
)
なれば、
022
如何
(
いか
)
なる
神
(
かみ
)
の
在
(
ま
)
すかは
知
(
し
)
らねども
必
(
かなら
)
ず
咎
(
とが
)
め
罰
(
きた
)
め
玉
(
たま
)
ふ
事
(
こと
)
なく、
023
いと
安々
(
やすやす
)
と
之
(
これ
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
開
(
ひら
)
かせ
玉
(
たま
)
へ。
024
又
(
また
)
これの
岩窟
(
いはやど
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
りて
025
神代
(
かみよ
)
ながらの
秘事
(
ひめごと
)
を
疾
(
と
)
く
速
(
すむや
)
かに
探
(
さぐ
)
らせ
玉
(
たま
)
へ。
026
惟神
(
かむながら
)
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
慎
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る。
027
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
、
028
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
029
と
珍
(
うづ
)
の
宣
(
の
)
り
言
(
ごと
)
唱
(
とな
)
へ
上
(
あ
)
げ、
030
忌鋤
(
いむすき
)
忌鍬
(
いむくは
)
を
以
(
もつ
)
て
土
(
つち
)
をかき
分
(
わ
)
け、
031
洗
(
あら
)
ひ
清
(
きよ
)
めし
金梃
(
かなてこ
)
を
岩
(
いは
)
の
隙間
(
すきま
)
に
押
(
お
)
し
込
(
こ
)
み、
032
漸
(
やうや
)
くにして
広
(
ひろ
)
き
厚
(
あつ
)
き
岩蓋
(
いはぶた
)
を
取
(
とり
)
除
(
のぞ
)
いた。
033
黒煙
(
こくえん
)
濛々
(
もうもう
)
として
立
(
たち
)
昇
(
のぼ
)
り、
034
少時
(
しばし
)
は
咫尺
(
しせき
)
も
弁
(
べん
)
ぜざる
如
(
ごと
)
き
惨澹
(
さんたん
)
たる
光景
(
くわうけい
)
であつた。
035
折
(
をり
)
から
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
に
黒
(
くろ
)
き
煙
(
けぶり
)
は
何処
(
いづく
)
ともなく
散
(
ち
)
り
失
(
う
)
せて
036
岩戸
(
いはと
)
の
入口
(
いりぐち
)
は
階段
(
かいだん
)
まで
明
(
あきら
)
かに
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た。
037
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
千早
(
ちはや
)
振
(
ふ
)
る
昔
(
むかし
)
ながらの
秘事
(
ひめごと
)
を
038
開
(
ひら
)
き
初
(
そ
)
めたる
今朝
(
けさ
)
ぞ
目出度
(
めでた
)
き』
039
バーチル『
九頭竜
(
くづりう
)
を
弥
(
いや
)
常久
(
とこしへ
)
に
封
(
ふう
)
じたる
040
岩戸
(
いはと
)
も
開
(
ひら
)
く
今日
(
けふ
)
の
目出度
(
めでた
)
さ』
041
サーベル
姫
(
ひめ
)
『
神代
(
かみよ
)
より
云
(
い
)
ひつぎ
語
(
かた
)
りつぎ
来
(
きた
)
る
042
タクシャカ
竜王
(
りうわう
)
に
会
(
あ
)
はむ
今日
(
けふ
)
かな』
043
伊太彦
(
いたひこ
)
『
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
此
(
この
)
岩窟
(
いはやど
)
の
奥底
(
おくそこ
)
を
044
探
(
さぐ
)
り
見
(
み
)
むとす
許
(
ゆる
)
させ
玉
(
たま
)
へ』
045
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
先立
(
さきだ
)
たむとする
伊太彦
(
いたひこ
)
の
046
インクリネーション
現
(
あら
)
はれにけり』
047
伊太彦
(
いたひこ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
に
先立
(
さきだ
)
ち
進
(
すす
)
まむと
048
するは
吾
(
わが
)
身
(
み
)
のテーストなりけり』
049
三千彦
(
みちひこ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
の
其
(
その
)
ネーチュア
現
(
あら
)
はれて
050
危
(
あやふ
)
き
穴
(
あな
)
に
進
(
すす
)
まむとぞする』
051
伊太彦
(
いたひこ
)
『これしきの
岩窟
(
いはや
)
探
(
さぐ
)
るは
難
(
かた
)
からじ
052
朝飯前
(
あさめしまへ
)
のメデオーカ
事
(
ごと
)
ぞや』
053
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
を
総取締
(
そうとりしまり
)
となし、
054
ワックス、
055
エル
二人
(
ふたり
)
を
伴
(
ともな
)
はしめ、
056
一同
(
いちどう
)
を
岩窟
(
いはや
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
待
(
ま
)
たせ
置
(
お
)
き、
057
長
(
なが
)
き
綱
(
つな
)
の
先
(
さき
)
に
鈴
(
すず
)
をつけて
穴
(
あな
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
掛
(
か
)
けおき、
058
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
は
此
(
この
)
綱
(
つな
)
を
引
(
ひ
)
けば
援兵
(
ゑんぺい
)
に
何人
(
なにびと
)
か
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れる
様
(
やう
)
と
頼
(
たの
)
み
置
(
お
)
き、
059
数千
(
すうせん
)
年
(
ねん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
探
(
さぐ
)
るべく
060
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
を
払
(
はら
)
ひ
払
(
はら
)
ひ
階段
(
かいだん
)
をドンドンと
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
061
不思議
(
ふしぎ
)
にも
長
(
なが
)
き
深
(
ふか
)
き
隧道
(
すゐだう
)
は
燐光
(
りんくわう
)
燦爛
(
さんらん
)
として
輝
(
かがや
)
き、
062
あまり
足許
(
あしもと
)
の
悩
(
なや
)
みを
訴
(
うつた
)
へない
迄
(
まで
)
に
明
(
あか
)
かつた。
063
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はタクシャカ
竜王
(
りうわう
)
の
幽閉所
(
いうへいしよ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
岩窟
(
がんくつ
)
を
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
064
或
(
あるひ
)
は
下
(
くだ
)
り
或
(
あるひ
)
は
上
(
のぼ
)
り、
065
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
折
(
を
)
り
廻
(
まは
)
り
乍
(
なが
)
ら
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて
探
(
さぐ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
066
俄
(
にはか
)
にクワツと
明
(
あか
)
るい
処
(
ところ
)
がある。
067
近
(
ちか
)
づき
見
(
み
)
れば
直径
(
ちよくけい
)
三尺
(
さんじやく
)
許
(
ばか
)
りの
丸
(
まる
)
い
茶褐色
(
ちやかつしよく
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
な
物
(
もの
)
が
隧道
(
すゐだう
)
の
真中
(
まんなか
)
に
横
(
よこ
)
たはり、
068
薄明
(
うすあか
)
い
燈火
(
あかり
)
を
放射
(
はうしや
)
して
居
(
ゐ
)
る。
069
耳
(
みみ
)
をすまして
聞
(
き
)
き
居
(
を
)
れば
070
ブーンブーンと
不思議
(
ふしぎ
)
な
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
える。
071
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
少時
(
しばし
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
此
(
この
)
怪
(
あや
)
しき
物体
(
ぶつたい
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
072
俄
(
にはか
)
にブツブツブツと
粥
(
かゆ
)
の
煮
(
に
)
える
様
(
やう
)
な
音
(
おと
)
が
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
073
エル『おいワックス、
074
此奴
(
こいつ
)
ア
何
(
なん
)
でもモンスターに
違
(
ちが
)
ひない。
075
此
(
この
)
杖
(
つゑ
)
で
一
(
ひと
)
つポカンと
一撃
(
いちげき
)
を
加
(
くは
)
へたら
如何
(
どう
)
だらうかな』
076
ワックス『
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
077
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
よるか
知
(
し
)
れぬ。
078
うつかり
相手
(
あひて
)
にならうものなら、
079
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ』
080
伊太彦
(
いたひこ
)
『アハヽヽヽ、
081
丁度
(
ちやうど
)
エルさまが
牛
(
うし
)
に
踏
(
ふ
)
み
潰
(
つぶ
)
された
代物
(
しろもの
)
の
様
(
やう
)
だな。
082
ポツポツと
湯気
(
ゆげ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
だ。
083
此奴
(
こいつ
)
ア
大方
(
おほかた
)
田野
(
たの
)
危平
(
きへい
)
が
八畳敷
(
はちでふじき
)
を
落
(
おと
)
して
置
(
お
)
いたのかも
知
(
し
)
れないぞ』
084
エル『
曲津
(
まがつ
)
の
奴
(
やつ
)
、
085
逸早
(
いちはや
)
くこんな
処
(
ところ
)
へ
先走
(
さきばし
)
りをしやがつて、
086
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
睾丸
(
きんたま
)
、
087
オツトドツコイ
肝玉
(
きもたま
)
を
潰
(
つぶ
)
さうと
企
(
たく
)
んで、
088
失礼
(
しつれい
)
千万
(
せんばん
)
な、
089
吾々
(
われわれ
)
の
行路
(
かうろ
)
を
遮
(
さへぎ
)
つてゐやがるのだらう。
090
人
(
ひと
)
触
(
ふ
)
るれば
人
(
ひと
)
を
斬
(
き
)
り、
091
馬
(
うま
)
触
(
ふ
)
るれば
馬
(
うま
)
を
斬
(
き
)
る
程
(
てい
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
、
092
エルさまは
到底
(
たうてい
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
差許
(
さしゆる
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
093
又
(
また
)
飽迄
(
あくまで
)
此奴
(
こいつ
)
を
如何
(
どう
)
とかせなくては
向側
(
むかう
)
へ
渡
(
わた
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
094
のうワックス、
095
貴様
(
きさま
)
も
随分
(
ずいぶん
)
横着者
(
わうちやくもの
)
だつたが、
096
此奴
(
こいつ
)
には
閉口
(
へいこう
)
したと
見
(
み
)
え
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
つてるぢやないか。
097
モンスターが
恐
(
おそ
)
ろしい
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で
098
岩窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
がどうして
出来
(
でき
)
るものか。
099
もし
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
100
此
(
この
)
モンスターを
私
(
わたし
)
に
処分
(
しよぶん
)
さして
下
(
くだ
)
さいませぬか』
101
伊太彦
(
いたひこ
)
『
宜
(
よろ
)
しい、
102
お
前
(
まへ
)
の
力
(
ちから
)
で
一
(
ひと
)
つ
退散
(
たいさん
)
さして
見
(
み
)
るのもよからう』
103
エル『そんなら
退散
(
たいさん
)
さして
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れませう。
104
大山
(
たいざん
)
鳴動
(
めいどう
)
して
鼠
(
ねずみ
)
一匹
(
いつぴき
)
かも
知
(
し
)
れませぬぞ』
105
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
杖
(
つゑ
)
を
真向
(
まつかう
)
に
振
(
ふ
)
り
翳
(
かざ
)
し
構
(
かま
)
へ
腰
(
ごし
)
になつて、
106
エイヤと
一声
(
ひとこゑ
)
、
107
ウンと
打
(
う
)
つた。
108
忽
(
たちま
)
ち
怪物
(
くわいぶつ
)
は
黒
(
くろ
)
い
細長
(
ほそなが
)
い
足
(
あし
)
が
数十本
(
すうじつぽん
)
ニユーツと
生
(
は
)
え
出
(
だ
)
し、
109
丸
(
まる
)
い
体
(
からだ
)
を
七八
(
しちはつ
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
りの
中空
(
ちうくう
)
に
浮
(
う
)
かしてガサリガサリと
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
した。
110
よくよく
見
(
み
)
れば
数千
(
すうせん
)
年
(
ねん
)
劫
(
ごふ
)
を
経
(
へ
)
たる
穴蜘蛛
(
あなぐも
)
が
足
(
あし
)
を
縮
(
すく
)
めてここに
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
たのであつた。
111
エル『アツハヽヽヽ
何
(
なん
)
だ、
112
蜘蛛
(
くも
)
の
親方
(
おやかた
)
奴
(
め
)
、
113
エルさまの
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
に
恐
(
おそ
)
れ、
114
長
(
なが
)
いコンパスを
運転
(
うんてん
)
させ、
115
体
(
からだ
)
を
宙
(
ちう
)
に
浮
(
うか
)
べて
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せやがつた。
116
イヒヽヽヽヽエルさまの
神力
(
しんりき
)
によつて
くも
なく
退散
(
たいさん
)
仕
(
つかまつ
)
り……
後
(
あと
)
をも
見
(
み
)
ずになりにける……だ。
117
おいワックス、
118
今度
(
こんど
)
は
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
ても
俺
(
おれ
)
はもう
構
(
かま
)
はぬから、
119
お
前
(
まへ
)
の
番
(
ばん
)
だ、
120
確
(
しつか
)
りやり
玉
(
たま
)
へ』
121
ワックス『ここの
蜘蛛
(
くも
)
は
燐
(
りん
)
の
息
(
いき
)
を
吸
(
す
)
うて
居
(
を
)
ると
見
(
み
)
えて
体
(
からだ
)
迄
(
まで
)
が
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
やがる。
122
本当
(
ほんたう
)
に
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
があるものだ。
123
サア
之
(
これ
)
から
四辺
(
あたり
)
に
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
り
十二分
(
じふにぶん
)
の
注意
(
ちうい
)
を
払
(
はら
)
つて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
にしよう。
124
伊太彦
(
いたひこ
)
様
(
さま
)
、
125
貴方
(
あなた
)
も
随分
(
ずいぶん
)
狼狽者
(
あわてもの
)
、
126
否々
(
いやいや
)
何
(
なん
)
でも
先鞭
(
せんべん
)
をつけるお
方
(
かた
)
だと
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまが
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られたぢやありませぬか。
127
今度
(
こんど
)
は
貴方
(
あなた
)
が
率先
(
そつせん
)
して
怪物
(
くわいぶつ
)
退治
(
たいぢ
)
をやつて
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
いものですな』
128
伊太彦
(
いたひこ
)
『
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
をして
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
は、
129
どうしても
俺
(
わし
)
が
先駆
(
せんく
)
を
勤
(
つと
)
めねばならない。
130
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今日
(
けふ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
総統者
(
そうとうしや
)
だから、
131
チツト
許
(
ばか
)
り
慎重
(
しんちよう
)
の
態度
(
たいど
)
を
守
(
まも
)
つてるのだ。
132
まあエルさま、
133
先走
(
さきばし
)
りとなつて
噪
(
はつしや
)
いで
下
(
くだ
)
さい。
134
まさかとなれば
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
がお
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
すから』
135
エル『ヘヽヽヽヽうまい
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますワイ。
136
何
(
なん
)
ですか、
137
その
足許
(
あしもと
)
は、
138
膝坊主
(
ひざぼし
)
が
大変
(
たいへん
)
活動
(
くわつどう
)
してるぢやありませぬか。
139
急性
(
きふせい
)
恐怖病
(
きようふびやう
)
が
起
(
おこ
)
つたのでせう』
140
伊太彦
(
いたひこ
)
『
何
(
なに
)
、
141
急性
(
きうせい
)
沈着病
(
ちんちやくびやう
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
したのだ。
142
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
143
サア
進
(
すす
)
んだり
進
(
すす
)
んだり』
144
エル『
何
(
なん
)
だかチツと
許
(
ばか
)
り
寂寥
(
せきれう
)
の
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれて
来
(
き
)
ました。
145
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つて
元気
(
げんき
)
をつけますから
囃
(
はや
)
して
下
(
くだ
)
さい、
146
頼
(
たの
)
みますよ』
147
ワックス『アハヽヽヽ、
148
到頭
(
たうとう
)
エルの
奴
(
やつ
)
、
149
生地
(
きぢ
)
を
現
(
あら
)
はしやがつたな。
150
空威張
(
からゐば
)
りの
睾丸潰
(
きんたまつぶ
)
しの
大将
(
たいしやう
)
奴
(
め
)
、
151
ウツフヽヽヽ』
152
エル『こりやこりやワックス
馬鹿
(
ばか
)
息子
(
むすこ
)
153
オツトドツコイこりや
違
(
ちが
)
うた
154
善言
(
ぜんげん
)
美詞
(
びし
)
の
此
(
この
)
教
(
をしえ
)
155
忘
(
わす
)
れて
口
(
くち
)
を
滑
(
すべ
)
らせた
156
ワックスさまよチツト
許
(
ばか
)
り
157
お
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つかは
知
(
し
)
らねども
158
知
(
し
)
つてる
通
(
とほ
)
りの
狼狽者
(
あわてもの
)
159
思
(
おも
)
はぬ
口
(
くち
)
が
滑
(
すべ
)
りました
160
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
して
161
決
(
けつ
)
して
怒
(
おこ
)
つちやなりませぬ
162
岩戸
(
いはと
)
の
口
(
くち
)
からドンドンと
163
限
(
かぎ
)
り
知
(
し
)
られぬ
階段
(
かいだん
)
を
164
下
(
くだ
)
りて
又
(
また
)
も
上
(
のぼ
)
りつめ
165
右
(
みぎ
)
や
左
(
ひだり
)
と
屈曲
(
くつきよく
)
し
166
漸
(
やうや
)
くここに
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
167
パツと
光
(
ひか
)
るは
摩訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
168
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬモンスター
169
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
むものと
170
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をば
振
(
ふ
)
り
翳
(
かざ
)
し
171
ウンと
許
(
ばか
)
りに
打
(
うち
)
据
(
す
)
うる
172
ポンと
音
(
おと
)
して
黒煙
(
くろけぶり
)
173
鳥賊
(
いか
)
が
墨
(
すみ
)
をば
吐
(
は
)
く
様
(
やう
)
に
174
四辺
(
あたり
)
を
真黒
(
まつくろ
)
々助
(
くろすけ
)
に
175
包
(
つつ
)
んで
了
(
しま
)
つた
可笑
(
をか
)
しさよ
176
暫
(
しばら
)
く
眺
(
なが
)
め
居
(
ゐ
)
る
間
(
うち
)
に
177
数多
(
あまた
)
のコンパス
附着
(
ふちやく
)
して
178
怪体
(
けたい
)
な
体
(
からだ
)
を
中空
(
ちうくう
)
に
179
ヒヨロリ ヒヨロリと
揺
(
ゆす
)
りつつ
180
前方
(
ぜんぱう
)
さして
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
181
此奴
(
こいつ
)
あテツキリ
蜘蛛
(
くも
)
の
精
(
せい
)
182
何処
(
どこ
)
々々
(
どこ
)
迄
(
まで
)
もおつついて
183
往生
(
わうじやう
)
させねば
措
(
お
)
かないぞ
184
此方
(
こちら
)
が
命
(
いのち
)
をとらるるか
185
向方
(
むかう
)
を
往生
(
わうじやう
)
さしてやるか
186
二
(
ふた
)
つの
中
(
うち
)
の
一
(
ひと
)
つをば
187
選
(
えら
)
まにやならぬ
今
(
いま
)
の
破目
(
はめ
)
188
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
189
オツトドツコイ
国
(
くに
)
の
祖
(
おや
)
190
国治立
(
くにはるたち
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
191
何卒
(
なにとぞ
)
エルに
神力
(
しんりき
)
を
192
腕
(
うで
)
も
撓
(
たわわ
)
に
与
(
あた
)
へませ
193
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
194
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
195
初
(
はじ
)
めて
岩窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
と
196
出掛
(
でか
)
けた
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
197
到底
(
たうてい
)
様子
(
やうす
)
が
分
(
わか
)
らない
198
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
の
陥穽
(
かんせい
)
に
199
陥
(
お
)
ちて
命
(
いのち
)
を
落
(
おと
)
すやら
200
今
(
いま
)
から
案
(
あん
)
じ
過
(
す
)
ごされる
201
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
202
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
203
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
又
(
また
)
もや
曲
(
まが
)
り
角
(
かど
)
に
着
(
つ
)
いた。
204
角
(
かど
)
を
曲
(
まが
)
るや
否
(
いな
)
やワックスの
現
(
うつつ
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
恋慕
(
れんぼ
)
して
居
(
ゐ
)
たデビス
姫
(
ひめ
)
が
起居
(
たちゐ
)
物腰
(
ものごし
)
淑
(
しとや
)
かに、
205
袖
(
そで
)
にて
赤
(
あか
)
い
口
(
くち
)
を
隠
(
かく
)
し
乍
(
なが
)
ら、
206
稍
(
やや
)
伏目勝
(
ふしめが
)
ちにスツクと
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
207
エルは
勢
(
いきほひ
)
よく
進
(
すす
)
む
途端
(
とたん
)
に、
208
此
(
この
)
女
(
をんな
)
に
衝突
(
しようとつ
)
し、
209
エル『アイタヽヽヽヽ
210
こりや
阿魔
(
あま
)
ツ
女
(
ちよ
)
、
211
往来
(
わうらい
)
の
真中
(
まんなか
)
に
黙
(
だま
)
つて
立
(
た
)
てつて
居
(
ゐ
)
やがるものだから、
212
到頭
(
たうとう
)
俺
(
おれ
)
の
出歯
(
でば
)
をきつい
目
(
め
)
に
打
(
う
)
つて
了
(
しま
)
つたぢやないか。
213
これ
見
(
み
)
よ、
214
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
歯
(
は
)
の
間
(
あひだ
)
から
黒
(
くろ
)
い
血
(
ち
)
がポトポトと
流
(
なが
)
れてゐる。
215
「
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
致
(
いた
)
しました」と
一言
(
ひとこと
)
謝
(
あやま
)
らぬかい。
216
馬鹿
(
ばか
)
だな』
217
女
(
をんな
)
『ホヽヽヽヽ、
218
貴方
(
あなた
)
は
狼狽者
(
あわてもの
)
のエルさまぢやありませぬか。
219
昼
(
ひる
)
の
最中
(
さいちう
)
に
大道
(
だいだう
)
を
歩
(
ある
)
いては
牛
(
うし
)
の
尻
(
しり
)
に
衝突
(
しようとつ
)
し、
220
又
(
また
)
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
で
妾
(
あたい
)
のお
尻
(
いど
)
に
衝突
(
しようとつ
)
し、
221
出歯
(
でば
)
を
打
(
う
)
つとは
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
のチヨカ
助
(
すけ
)
だな』
222
エル『ヤア、
223
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
224
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い、
225
吾々
(
われわれ
)
を
吃驚
(
びつくり
)
さそうと
思
(
おも
)
つて、
226
ソツと
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
り、
227
あの
四辻
(
よつつじ
)
から、
228
ここへ
先廻
(
さきまは
)
りして
吃驚
(
びつくり
)
さす
考
(
かんが
)
へですな。
229
本当
(
ほんたう
)
に
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
の
奥
(
おく
)
さまになつてから
大変
(
たいへん
)
なお
転婆
(
てんば
)
になりましたな。
230
おいワックス、
231
貴様
(
きさま
)
もこんな
処
(
ところ
)
で、
232
改心
(
かいしん
)
したと
云
(
い
)
ふものの
幾分
(
いくぶん
)
か
未練
(
みれん
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらうから、
233
一言
(
ひとくち
)
怨
(
うら
)
みの
数
(
かず
)
を
陳列
(
ちんれつ
)
して
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
聞
(
き
)
きに
達
(
たつ
)
したらどうだ。
234
こんな
好
(
い
)
い
機会
(
きくわい
)
は
一生
(
いつしやう
)
の
間
(
あひだ
)
に
又
(
また
)
とは
無
(
な
)
いぞよ。
235
俺
(
おれ
)
が
邪魔
(
じやま
)
になるなら
友達
(
ともだち
)
の
誼
(
よしみ
)
で
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしてやる。
236
モシ
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
237
少
(
すこ
)
しの
間
(
ま
)
、
238
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
りませうかな』
239
伊太彦
(
いたひこ
)
『………………』
240
ワックス『これは これは、
241
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
242
この
恐
(
おそ
)
ろしい
岩窟内
(
がんくつない
)
を
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
で
探険
(
たんけん
)
とは
実
(
じつ
)
に
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
243
いや
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
244
その
健気
(
けなげ
)
なお
志
(
こころざし
)
を
看破
(
かんぱ
)
して
245
此
(
この
)
ワックスは
何時
(
いつ
)
も
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
めたので
厶
(
ござ
)
いますよ。
246
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
のお
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
膠
(
にかは
)
の
様
(
やう
)
に
引
(
ひつ
)
ついて
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
ゐ
)
らつしやるものだから
247
お
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
乍
(
なが
)
ら
儘
(
まま
)
ならず、
248
丸
(
まる
)
で
写真
(
しやしん
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
だつたが、
249
今日
(
けふ
)
は
一言
(
ひとくち
)
位
(
ぐらゐ
)
は
言葉
(
ことば
)
をかけて
下
(
くだ
)
さるでせうね』
250
女
(
をんな
)
『ホヽヽこれワックスさま、
251
貴方
(
あなた
)
はそこ
迄
(
まで
)
妾
(
あたい
)
を
本当
(
ほんたう
)
に
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さるのですか。
252
本当
(
ほんたう
)
ならば
嬉
(
うれ
)
しいワ』
253
ワックス『
酒
(
さけ
)
も
飲
(
の
)
まずに、
254
どうして
男
(
をとこ
)
が
女
(
をんな
)
を
捉
(
つか
)
まへて
嘘
(
うそ
)
が
云
(
い
)
へませう。
255
心底
(
しんそこ
)
から
ホ
の
字
(
じ
)
と
レ
の
字
(
じ
)
だから、
256
ここ
迄
(
まで
)
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
たのですよ。
257
チツトは
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
にも
同情
(
どうじやう
)
を
寄
(
よ
)
せて
貰
(
もら
)
つても
余
(
あま
)
り
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
りますまいがな』
258
エル『アハヽヽヽヽおい、
259
ワックス、
260
そこだ そこだ、
261
正念場
(
しやうねんば
)
だ、
262
確
(
しつか
)
りやれ、
263
ワツシヨ ワツシヨ』
264
女
(
をんな
)
『ホヽヽヽヽあのエルさまの
睾丸潰
(
きんたまつぶ
)
しさま、
265
犬
(
いぬ
)
か
何
(
なん
)
ぞの
様
(
やう
)
に
嗾
(
けし
)
をかけなくても
宜
(
い
)
いぢやありませぬか』
266
エル『コレ、
267
姫
(
ひめ
)
さま、
268
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
ですよ。
269
友人
(
いうじん
)
の
恋
(
こひ
)
を
叶
(
かな
)
へてやり
度
(
た
)
いばつかりに
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですから、
270
余
(
あま
)
り
憎
(
にく
)
うはありますまい。
271
貴女
(
あなた
)
だつてこんな
処
(
ところ
)
に
一人
(
ひとり
)
待
(
ま
)
つてる
位
(
くらゐ
)
だから
万更
(
まんざら
)
ワックスがお
嫌
(
きら
)
ひでない
事
(
こと
)
は
百
(
ひやく
)
も
承知
(
しようち
)
、
272
千
(
せん
)
も
合点
(
がつてん
)
の
私
(
わたし
)
、
273
随分
(
ずいぶん
)
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げますよ。
274
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
伊太彦
(
いたひこ
)
さまがチツト
許
(
ばか
)
り
煙
(
けぶ
)
たうなつて
来
(
き
)
た。
275
モシ
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
276
表
(
おもて
)
は
表
(
おもて
)
、
277
裏
(
うら
)
は
裏
(
うら
)
、
278
滅多
(
めつた
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
さまの
奥
(
おく
)
さまをワックスが
取
(
と
)
らうと
云
(
い
)
ふのぢやないから、
279
握手
(
あくしゆ
)
位
(
ぐらゐ
)
は
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
てやつて
下
(
くだ
)
さるでせうな』
280
伊太彦
(
いたひこ
)
『オイ、
281
両人
(
りやうにん
)
、
282
此
(
この
)
女
(
をんな
)
に
指
(
ゆび
)
一本
(
いつぽん
)
でも
触
(
さ
)
へる
事
(
こと
)
はならぬぞ。
283
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
するからの』
284
エル『
扨
(
さ
)
ても
扨
(
さ
)
ても
融通
(
ゆうづう
)
の
利
(
き
)
かぬ
唐変木
(
たうへんぼく
)
だな。
285
おいワックス、
286
俺
(
おれ
)
が
三千彦
(
みちひこ
)
さまに
弁解
(
べんかい
)
をしてやるから
一寸
(
ちよつと
)
形式
(
けいしき
)
だけ
握手
(
あくしゆ
)
やつたら
如何
(
どう
)
だ』
287
女
(
をんな
)
『もし、
288
エルさま、
289
ワックスさまの
代理
(
だいり
)
として
貴方
(
あなた
)
と
握手
(
あくしゆ
)
しようぢやありませぬか、
290
握手
(
あくしゆ
)
したと
云
(
い
)
つても
決
(
けつ
)
して
心
(
こころ
)
は
貴方
(
あなた
)
に
移
(
うつ
)
しませぬよ』
291
エル『おいワックス、
292
俺
(
おれ
)
が
代理権
(
だいりけん
)
を
執行
(
しつかう
)
しても
滅多
(
めつた
)
に
姦通
(
かんつう
)
の
訴訟
(
そしよう
)
は
起
(
おこ
)
さないだらうな』
293
ワックス『うん』
294
エル『ハヽア、
295
此奴
(
こいつ
)
、
296
割
(
わり
)
とは
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
297
恥
(
はづ
)
かしいと
見
(
み
)
えるな。
298
それでは
此
(
この
)
エルが
暫
(
しばら
)
く
弁理
(
べんり
)
公使
(
こうし
)
を
勤
(
つと
)
めてやらう。
299
サア、
300
デビスさま、
301
お
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
して
御覧
(
ごらん
)
』
302
女
(
をんな
)
『はい、
303
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
304
サア
貴方
(
あなた
)
のお
手
(
てて
)
をズツと
伸
(
の
)
ばして
下
(
くだ
)
さい』
305
エル『
仮令
(
たとへ
)
代理権
(
だいりけん
)
にもせよ、
306
こんなナイスに
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
られるのはチツト
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
い……
事
(
こと
)
はないワイ。
307
エヘヽヽヽおい、
308
ワックス、
309
すみませぬな。
310
必
(
かなら
)
ず
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
うして
下
(
くだ
)
さるな、
311
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
312
何卒
(
どうぞ
)
ここは
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
情
(
なさけ
)
を
以
(
もつ
)
て
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい。
313
エツヘヽヽヽヽ』
314
と
嬉
(
うれ
)
し
相
(
さう
)
に
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
らグツと
手
(
て
)
をつき
出
(
だ
)
した。
315
女
(
をんな
)
はエルの
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
るや
否
(
いな
)
や
赤
(
あか
)
い
唇
(
くちびる
)
へペタリと
当
(
あ
)
てたと
思
(
おも
)
ふ
途端
(
とたん
)
、
316
エルはキヤツと
悲鳴
(
ひめい
)
を
上
(
あ
)
げ
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
317
女
(
をんな
)
は
忽
(
たちま
)
ち
般若
(
はんにや
)
の
様
(
やう
)
な
面
(
めん
)
になり、
318
女
(
をんな
)
『ケラケラケラケラケラ、
319
俺
(
わし
)
が
折角
(
せつかく
)
休
(
やす
)
んでる
処
(
ところ
)
を
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
で
頭
(
あたま
)
を
殴
(
なぐ
)
りやがつたから
320
其
(
その
)
敵討
(
かたきうち
)
だ、
321
イツヒヽヽヽ』
322
と
腮
(
あご
)
をしやくる
途端
(
とたん
)
に
又
(
また
)
もとの
大蜘蛛
(
おほくも
)
となり
323
数
(
かず
)
限
(
かぎ
)
りもなきコンパスをニユツと
現
(
あら
)
はし
324
七八
(
しちはつ
)
尺
(
しやく
)
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
に
体
(
からだ
)
を
浮
(
うか
)
してノソリノソリと
奥
(
おく
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
這
(
は
)
うて
行
(
ゆ
)
く。
325
伊太彦
(
いたひこ
)
は
直
(
ただち
)
に
近寄
(
ちかよ
)
つてエルの
傷所
(
きずしよ
)
に
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
きかけ
326
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げた。
327
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
り
経
(
た
)
つてエルは
漸
(
やうや
)
く
正気
(
しやうき
)
づき、
328
痛
(
いた
)
さを
堪
(
こら
)
へ
乍
(
なが
)
ら
意気
(
いき
)
消沈
(
せうちん
)
の
態
(
てい
)
で
329
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひおづおづし
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
330
(
大正一二・四・七
旧二・二二
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
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