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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
第1章 感謝組
第2章 古峽の山
第3章 岩侠
第4章 不聞銃
第5章 独許貧
第6章 噴火口
第7章 反鱗
第2篇 地異転変
第8章 異心泥信
第9章 劇流
第10章 赤酒の声
第11章 大笑裡
第12章 天恵
第3篇 虎熊惨状
第13章 隔世談
第14章 山川動乱
第15章 饅頭塚
第16章 泥足坊
第17章 山颪
第4篇 神仙魔境
第18章 白骨堂
第19章 谿の途
第20章 熊鷹
第21章 仙聖郷
第22章 均霑
第23章 義侠
第5篇 讃歌応山
第24章 危母玉
第25章 道歌
第26章 七福神
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第65巻(辰の巻)
> 第1篇 盗風賊雨 > 第2章 古峽の山
<<< 感謝組
(B)
(N)
岩侠 >>>
第二章
古峡
(
こけふ
)
の
山
(
やま
)
〔一六五八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第1篇 盗風賊雨
よみ(新仮名遣い):
とうふうぞくう
章:
第2章 古峽の山
よみ(新仮名遣い):
こきょうのやま
通し章番号:
1658
口述日:
1923(大正12)年07月15日(旧06月2日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6502
愛善世界社版:
23頁
八幡書店版:
第11輯 618頁
修補版:
校定版:
24頁
普及版:
12頁
初版:
ページ備考:
普及版では目次「峡」本文「峽」、八幡版「峽」、校定版・愛世版は「峡」。
001
今
(
いま
)
雲
(
くも
)
を
出
(
い
)
でた
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
頂
(
いただき
)
は、
002
夏
(
なつ
)
ながら
雪
(
ゆき
)
に
覆
(
おほ
)
はれて、
003
その
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
つ
噴火
(
ふんくわ
)
の
煙
(
けぶり
)
は、
004
青味
(
あをみ
)
を
帯
(
お
)
びた
黄土色
(
わうどしよく
)
をして、
005
南
(
みなみ
)
へ
南
(
みなみ
)
へと
靡
(
なび
)
いてゐる。
006
道
(
みち
)
はトロトロ
上
(
のぼ
)
りになつて、
007
萱野
(
かやの
)
の
音
(
おと
)
淋
(
さび
)
しく、
008
昔
(
むかし
)
のバラモンの
関所跡
(
せきしよあと
)
の
門柱
(
もんばしら
)
が、
009
二本
(
にほん
)
倒
(
たふ
)
れかかつて
悲
(
かな
)
しげに
仰天
(
ぎやうてん
)
してゐる。
010
あたりの
森林
(
しんりん
)
の
景色
(
けしき
)
は
木
(
き
)
の
色
(
いろ
)
や
草
(
くさ
)
の
色
(
いろ
)
、
011
山々
(
やまやま
)
の
色
(
いろ
)
迄
(
まで
)
が、
012
すべて
深山
(
しんざん
)
的
(
てき
)
趣
(
おもむ
)
きを
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
013
左右
(
さいう
)
の
密林
(
みつりん
)
を
脱
(
ぬ
)
けると、
014
雨
(
あめ
)
にやつるる
音
(
おと
)
と
風
(
かぜ
)
に
並
(
な
)
みふす
音
(
おと
)
許
(
ばか
)
りで、
015
人
(
ひと
)
の
丈
(
たけ
)
よりも
高
(
たか
)
い
萱草
(
かやくさ
)
の、
0151
中
(
なか
)
の
右
(
みぎ
)
も
左
(
ひだり
)
も
雲
(
くも
)
許
(
ばか
)
り、
016
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
して
登
(
のぼ
)
りつつ
細谷川
(
ほそたにがは
)
を
渡
(
わた
)
つて
行
(
ゆ
)
く
七
(
しち
)
人
(
にん
)
は、
017
云
(
い
)
はずと
知
(
し
)
れた
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
一行
(
いつかう
)
である。
018
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
例
(
れい
)
の
法螺貝
(
ほらがひ
)
を
吹
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら
山野
(
さんや
)
の
邪気
(
じやき
)
を
清
(
きよ
)
めつつ、
019
密林
(
みつりん
)
の
中
(
なか
)
の
山径
(
さんけい
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
020
行
(
ゆ
)
く
手
(
て
)
に
当
(
あた
)
つて
二人
(
ふたり
)
のトランスが
又
(
また
)
もや
路傍
(
ろばう
)
の
石
(
いし
)
に
腰
(
こし
)
打
(
うち
)
掛
(
か
)
け、
021
何
(
なに
)
か
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
022
甲
(
かふ
)
『オイ、
023
タール、
024
詮
(
つま
)
らぬぢやないか。
025
バラモン
軍
(
ぐん
)
に
従
(
したが
)
つて、
026
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
征服
(
せいふく
)
に
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちう
)
、
027
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
が
俄
(
にはか
)
に
心機
(
しんき
)
一転
(
いつてん
)
し、
028
軍隊
(
ぐんたい
)
を
解散
(
かいさん
)
さしたものだから、
029
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
も
生
(
うま
)
れてから、
030
やつた
事
(
こと
)
もないトランスとなり
下
(
さが
)
り、
031
住
(
す
)
み
馴
(
なれ
)
し
故郷
(
こきやう
)
に
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
032
セールの
親分
(
おやぶん
)
に
従
(
したが
)
つて、
033
あてどもない
鳥
(
とり
)
を
探
(
さが
)
して
日々
(
にちにち
)
過
(
す
)
ごすのは
本当
(
ほんたう
)
に
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かぬぢやないか。
034
俺
(
おれ
)
アもう、
035
いい
加減
(
かげん
)
に
機会
(
きくわい
)
を
考
(
かんが
)
へて
故国
(
ここく
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
036
何
(
なん
)
とかして
生計
(
せいけい
)
を
立
(
た
)
て、
037
理想
(
りさう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を、
038
自分
(
じぶん
)
の
故郷
(
こきやう
)
に
於
(
おい
)
て
営
(
いとな
)
んで
見
(
み
)
たいと
思
(
おも
)
ふが、
039
お
前
(
まへ
)
はどう
思
(
おも
)
ふか』
040
タール『
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふな。
041
何処
(
どこ
)
で
死
(
し
)
なうと、
042
構
(
かま
)
はぬぢやないか。
043
凡
(
すべ
)
て
此
(
この
)
天地
(
てんち
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
故郷
(
こきやう
)
だ。
044
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
に
故郷
(
こきやう
)
と
云
(
い
)
つたら、
045
自分
(
じぶん
)
の
生
(
うま
)
れた
土地
(
とち
)
許
(
ばか
)
りだと
思
(
おも
)
つてゐるのは、
046
未
(
ま
)
だ
真
(
しん
)
の
故郷
(
こきやう
)
を
知
(
し
)
らぬものだ。
047
自分
(
じぶん
)
の
生
(
うま
)
れた
故郷
(
こきやう
)
は
只
(
ただ
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
旅
(
たび
)
の
一夜
(
いちや
)
の
宿
(
やど
)
りのやうなものだ。
048
それだから
海
(
うみ
)
で
死
(
し
)
ぬるもよし、
049
山野
(
やまの
)
に
於
(
おい
)
て
死
(
し
)
ぬるのもよし、
050
河
(
かは
)
で
死
(
し
)
ぬるも
都
(
みやこ
)
で
死
(
し
)
ぬるも、
051
田舎
(
いなか
)
で
死
(
し
)
ぬるも、
052
また、
0521
旅
(
たび
)
に
出
(
で
)
て
並木
(
なみき
)
の
肥料
(
こえ
)
になるのもいいぢやないか。
053
天
(
てん
)
に
日月
(
じつげつ
)
星辰
(
せいしん
)
を
宿
(
やど
)
し、
054
地
(
ち
)
に
万物
(
ばんぶつ
)
を
載
(
の
)
する
所
(
ところ
)
、
055
行
(
ゆ
)
くとして
己
(
おの
)
が
故郷
(
こきやう
)
に
非
(
あら
)
ざるはなしだ。
056
それだから
此
(
こ
)
の
天
(
てん
)
と
地
(
ち
)
との
間
(
あひだ
)
は、
057
何
(
ど
)
んな
処
(
ところ
)
に
於
(
お
)
いて
暮
(
くら
)
すも、
058
睡
(
ねむ
)
るも、
059
死
(
し
)
ぬるも
差支
(
さしつかへ
)
はない。
060
人間
(
にんげん
)
が
斯
(
か
)
く
悟
(
さと
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
061
別
(
べつ
)
に
生
(
うま
)
れた
所
(
ところ
)
が
恋
(
こひ
)
しいの、
062
命
(
いのち
)
が
惜
(
を
)
しいのと
云
(
い
)
ふ
道理
(
だうり
)
が
無
(
な
)
いぢやないか。
063
何国
(
なにくに
)
何郡
(
なにごほり
)
何村
(
なにむら
)
の
何某
(
なにがし
)
の
先祖
(
せんぞ
)
も、
064
元々
(
もともと
)
其
(
その
)
土地
(
とち
)
から
水
(
みづ
)
のやうに
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
で、
065
菌
(
きのこ
)
や
筍
(
たけのこ
)
の
様
(
やう
)
に
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
から、
066
もぐり
出
(
で
)
たものぢやあるまい。
067
矢張
(
やはり
)
外
(
そと
)
から
移住
(
いぢう
)
して
来
(
き
)
て、
068
其
(
その
)
土地
(
とち
)
を
開
(
ひら
)
いたのぢやないか。
069
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
先祖
(
せんぞ
)
にして
已
(
すで
)
に
然
(
しか
)
りとすれば、
070
その
子孫
(
しそん
)
たるものは
何
(
なん
)
ぞ
奮
(
ふる
)
つて
祖先
(
そせん
)
の
行動
(
かうどう
)
を
採
(
と
)
らざるやだ。
071
見
(
み
)
ず
知
(
し
)
らずの
新
(
あたら
)
しき
国
(
くに
)
に
至
(
いた
)
り、
072
新
(
あたら
)
しき
土地
(
とち
)
を
墾
(
ひら
)
いて
新
(
あたら
)
しい
村
(
むら
)
を
作
(
つく
)
るも、
073
トランス
団
(
だん
)
を
組織
(
そしき
)
するも
皆
(
みな
)
人間
(
にんげん
)
の
自由
(
じいう
)
ぢやないか。
074
人間
(
にんげん
)
たるもの、
075
ここに
至
(
いた
)
つて
初
(
はじ
)
めて、
076
其
(
その
)
面目
(
めんもく
)
を
発揮
(
はつき
)
せりと
云
(
い
)
ふべしだ。
077
一竿
(
いつかん
)
飄然
(
へうぜん
)
として
狐舟
(
こしう
)
に
棹
(
さをさ
)
す、
078
又
(
また
)
甚
(
はなは
)
だ
快
(
くわい
)
ならずやだ。
079
然
(
しか
)
るを
何万
(
なんまん
)
何千
(
なんぜん
)
噸
(
とん
)
の
汽船
(
きせん
)
に
乗
(
の
)
つて
一度
(
ひとたび
)
その
土地
(
とち
)
を
離
(
はな
)
れむとする
時
(
とき
)
、
080
数千百
(
すうせんひやく
)
の
蚯蚓
(
みみづ
)
のやうな
小胆者
(
せうたんもの
)
は、
081
別
(
わか
)
れを
惜
(
をし
)
んで
涙
(
なみだ
)
を
振
(
ふる
)
つてゐるが、
082
実
(
じつ
)
に
吾人
(
ごじん
)
の、
0821
之
(
これ
)
は
恥辱
(
ちじよく
)
ではあるまいか。
083
同
(
おな
)
じ
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
の
此
(
この
)
土地
(
とち
)
に
於
(
おい
)
て
活動
(
くわつどう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
084
故郷
(
こきやう
)
を
恋
(
こひ
)
しがるとは、
085
甚
(
はなは
)
だ
以
(
もつ
)
て
醜
(
しう
)
の
醜
(
しう
)
たるものではないか。
086
此
(
この
)
地
(
ち
)
を
去
(
さ
)
つて
彼
(
かの
)
地
(
ち
)
に
至
(
いた
)
り、
087
隣
(
となり
)
を
去
(
さ
)
つて
隣
(
となり
)
に
至
(
いた
)
る。
088
何
(
なん
)
ぞ
離別
(
りべつ
)
を
惜
(
をし
)
み、
089
心身
(
しんしん
)
を
痛
(
いた
)
むるの
愚
(
ぐ
)
を
要
(
えう
)
せむやだ。
090
貴様
(
きさま
)
の
如
(
ごと
)
きは
鈍根
(
どんこん
)
愚痴
(
ぐち
)
、
091
醜態
(
しうたい
)
も、
0911
ここに
至
(
いた
)
つて
092
真
(
しん
)
に
極
(
きは
)
まれりと
云
(
い
)
ふべしだ。
093
あまり
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
が
見
(
み
)
え
透
(
す
)
いて、
094
俺
(
おれ
)
ヤ
可笑
(
をか
)
しうなつて
来
(
き
)
たわい。
095
些
(
ちつ
)
と
確
(
しつか
)
りせないか、
096
そんな
事
(
こと
)
でトランス
商売
(
しやうばい
)
が
勤
(
つと
)
まらうかい。
097
一波
(
いつぱ
)
来
(
きた
)
りて
一波
(
いつぱ
)
去
(
さ
)
り、
098
万波
(
ばんぱ
)
来
(
きた
)
つて
万波
(
ばんぱ
)
去
(
さ
)
る。
099
之
(
これ
)
海洋
(
かいやう
)
万里
(
ばんり
)
の
状態
(
じやうたい
)
だ。
100
激浪
(
げきらう
)
も
怒濤
(
どたう
)
ももうこれ
通常事
(
つうじやうじ
)
だ。
101
徒
(
いたづら
)
に
真
(
しん
)
の
故郷
(
こきやう
)
を
解
(
かい
)
せない
貴様
(
きさま
)
の
如
(
ごと
)
きは、
102
無暗
(
むやみ
)
に
故郷
(
こきやう
)
に
遠
(
とほ
)
ざかるのを
恐
(
おそ
)
れ、
103
顔色
(
かほいろ
)
まで
蒼白色
(
さうはくしよく
)
に
変
(
へん
)
じ、
104
胸
(
むね
)
を
焦
(
こが
)
す
小魂
(
せうこん
)
小胆者
(
せうたんもの
)
だ。
105
終
(
しまひ
)
には
病気
(
びやうき
)
を
起
(
おこ
)
して
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
り、
106
身動
(
みうご
)
きも
出来
(
でき
)
ぬ、
107
憐
(
あはれ
)
むべき
代物
(
しろもの
)
だよ。
108
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
山野
(
さんや
)
を
渉
(
わた
)
つて
腸
(
はらわた
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
109
一村落
(
いちそんらく
)
の
花園
(
はなぞの
)
に
快哉
(
くわいさい
)
を
叫
(
さけ
)
ぶ
腰抜
(
こしぬ
)
け
者
(
もの
)
の
如
(
ごと
)
きは、
110
到底
(
たうてい
)
人生
(
じんせい
)
を
語
(
かた
)
るに
足
(
た
)
らぬものだ。
111
小
(
ちひ
)
さき
寒村
(
かんそん
)
に、
112
営々
(
えいえい
)
として
田畑
(
たはた
)
を
耕
(
たがや
)
し、
113
田
(
た
)
の
草取
(
くさと
)
りに
日
(
ひ
)
を
暮
(
くら
)
す
人間
(
にんげん
)
、
114
よろしく
寒山
(
かんざん
)
氷地
(
ひようち
)
、
115
広袤
(
くわうばう
)
漠々
(
ばくばく
)
の
野
(
の
)
に
家
(
いへ
)
を
築
(
きづ
)
いて
以
(
もつ
)
て
一大
(
いちだい
)
帝国
(
ていこく
)
をなして、
116
天地
(
てんち
)
経綸
(
けいりん
)
の
司宰者
(
しさいしや
)
たる
本分
(
ほんぶん
)
を
尽
(
つく
)
すが、
117
男子
(
だんし
)
たるものの
勤
(
つと
)
むべき
所
(
ところ
)
だ。
118
此
(
この
)
天地
(
てんち
)
は
真
(
しん
)
に
吾々
(
われわれ
)
の
故郷
(
こきやう
)
だ。
119
一夜
(
いちや
)
の
宿
(
やど
)
に
等
(
ひと
)
しき
産土
(
うぶすな
)
の
地
(
ち
)
を
出
(
い
)
でては、
120
再
(
ふたた
)
び
古巣
(
ふるす
)
に
帰
(
かへ
)
り、
121
家
(
いへ
)
を
求
(
もと
)
むる
如
(
ごと
)
き
卑屈
(
ひくつ
)
の
事
(
こと
)
は
為
(
す
)
るものではない。
122
之
(
これ
)
が
今日
(
こんにち
)
の
人間
(
にんげん
)
の
世
(
よ
)
に
処
(
しよ
)
すべき
要訣
(
えうけつ
)
だ』
123
エム『お
前
(
まへ
)
の
弁舌
(
べんぜつ
)
も
一応
(
いちおう
)
尤
(
もつと
)
もだが、
124
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
産土
(
うぶすな
)
の
土地
(
とち
)
を
恋
(
こひ
)
しがらないものが、
125
何処
(
どこ
)
にあらうか。
126
生
(
うま
)
れ
故郷
(
こきやう
)
を
忘
(
わす
)
れるやうな
奴
(
やつ
)
は
遂
(
つひ
)
には
国
(
くに
)
を
忘
(
わす
)
れ、
127
仁義
(
じんぎ
)
道徳
(
だうとく
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
し、
128
妻子
(
さいし
)
に
対
(
たい
)
して
不仁
(
ふじん
)
となり、
129
祖先
(
そせん
)
に
対
(
たい
)
して
不孝
(
ふかう
)
の
罪
(
つみ
)
を
重
(
かさ
)
ぬるものだ。
130
望郷
(
ばうきやう
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られざるものは、
131
もはや
人間
(
にんげん
)
の
霊性
(
れいせい
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
した
人面
(
じんめん
)
獣心
(
じうしん
)
ぢやないか』
132
タール『アハヽヽヽ、
133
人
(
ひと
)
の
財物
(
ざいぶつ
)
を
掠
(
かす
)
めるトランスと
成
(
な
)
り
乍
(
なが
)
ら、
134
仁義
(
じんぎ
)
道徳
(
だうとく
)
も、
135
孝
(
かう
)
、
136
不孝
(
ふかう
)
もあつたものかい。
137
此
(
この
)
社会
(
しやくわい
)
へ
這入
(
はい
)
つた
以上
(
いじやう
)
は
善悪
(
ぜんあく
)
、
138
倫常
(
りんじやう
)
、
139
孝悌
(
かうてい
)
などに
超越
(
てうゑつ
)
せなくちや
到底
(
たうてい
)
発達
(
はつたつ
)
は
遂
(
と
)
げられないぞ。
140
俺
(
おれ
)
だつて
生
(
うま
)
れつきの
悪人
(
あくにん
)
ぢやないから、
141
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
区別
(
くべつ
)
位
(
くらゐ
)
知
(
し
)
つてゐる。
142
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
俗
(
ぞく
)
に
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
143
勝
(
か
)
てば
官軍
(
くわんぐん
)
敗
(
ま
)
くれば
賊
(
ぞく
)
だ。
144
俺
(
おれ
)
だつてトランス
様
(
さま
)
で
一生
(
いつしやう
)
を
終
(
をは
)
らうとは
思
(
おも
)
はない。
145
何
(
なん
)
とかいい
機会
(
きくわい
)
があれば
世間
(
せけん
)
の
所謂
(
いはゆる
)
善
(
ぜん
)
に
立
(
たち
)
帰
(
かへ
)
り、
146
虚礼
(
きよれい
)
虚偽
(
きよぎ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
つて
世間
(
せけん
)
に
謡
(
うた
)
はれ
度
(
た
)
いのは
山々
(
やまやま
)
だ。
147
其
(
そ
)
の
材料
(
ざいれう
)
を
集
(
あつ
)
むるために
好
(
す
)
きでもないトランスをしてるのだ……。
148
まだ
吾々
(
われわれ
)
は
仁義
(
じんぎ
)
道徳
(
だうとく
)
を
称
(
とな
)
へる
丈
(
だけ
)
の
余地
(
よち
)
が
無
(
な
)
い。
149
そこ
迄
(
まで
)
物質
(
ぶつしつ
)
的
(
てき
)
の
準備
(
じゆんび
)
も
無
(
な
)
く、
150
世間
(
せけん
)
を
詐
(
いつは
)
る
偽善
(
ぎぜん
)
の
権化
(
ごんげ
)
となつて
威張
(
ゐば
)
る
所
(
ところ
)
へは
行
(
ゆ
)
かないのだ。
151
今
(
いま
)
の
間
(
あひだ
)
は
何
(
なに
)
よりも
商売
(
しやうばい
)
の
発達
(
はつたつ
)
を
考
(
かんが
)
へるのが
安全
(
あんぜん
)
第一
(
だいいち
)
だ。
152
金
(
かね
)
さへ
有
(
あ
)
れば
愚者
(
ぐしや
)
も
賢者
(
けんしや
)
となり、
153
無学者
(
むがくしや
)
も
学者
(
がくしや
)
と
成
(
な
)
り、
154
悪人
(
あくにん
)
も
善人
(
ぜんにん
)
となり、
155
蝿虫
(
はへむし
)
野郎
(
やらう
)
も
有力者
(
いうりよくしや
)
と
云
(
い
)
はれるのだからな。
156
貴様
(
きさま
)
も
一
(
ひと
)
つ
改心
(
かいしん
)
して
157
トランス
学
(
がく
)
の
研究
(
けんきう
)
に
一意
(
いちい
)
専心
(
せんしん
)
没頭
(
ぼつとう
)
するのだな』
158
エム『トランス
学
(
がく
)
の
研究
(
けんきう
)
も
随分
(
ずいぶん
)
苦
(
くる
)
しいものだな。
159
南無
(
なむ
)
バラモン
大自在天
(
だいじざいてん
)
、
160
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へ
幸
(
さきは
)
へ
給
(
たま
)
へ。
161
霜
(
しも
)
おく
野辺
(
のべ
)
の
夜
(
よ
)
は
更
(
ふけ
)
て
162
身
(
み
)
を
裂
(
き
)
る
許
(
ばか
)
りの
寒風
(
かんぷう
)
に
163
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
は
清
(
きよ
)
く
震
(
ふる
)
ふ
164
喧々
(
けんけん
)
轟々
(
ぐわうぐわう
)
の
声
(
こゑ
)
165
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
より
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
る
166
世
(
よ
)
は
何
(
なん
)
となく
物騒
(
ものさわ
)
がし
167
秋
(
あき
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
の
凩
(
こがらし
)
に
168
脆
(
もろ
)
くも
散
(
ち
)
りて
169
囀
(
さへづ
)
る
鳥
(
とり
)
の
声
(
こゑ
)
ひそむ
170
あゝ
荒
(
あ
)
れ
果
(
は
)
てし
山野
(
さんや
)
の
景色
(
けしき
)
171
小夜
(
さよ
)
ふけて
峰
(
みね
)
の
松風
(
まつかぜ
)
172
庵
(
いほり
)
を
叩
(
たた
)
く
173
夕日
(
ゆふひ
)
の
影
(
かげ
)
は
暗
(
くら
)
くして
174
バラモン
男子
(
だんし
)
の
意気
(
いき
)
消沈
(
せうちん
)
す
175
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
自在天
(
じざいてん
)
176
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
177
あゝ
苦
(
くる
)
しいせつろしい
178
こんな
浮世
(
うきよ
)
に
何
(
なん
)
として
179
私
(
わたし
)
は
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
ただらう』
180
タール『こりやエム、
181
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
卑劣
(
ひれつ
)
の
歌
(
うた
)
を
謳
(
うた
)
ふのだ。
182
夏
(
なつ
)
の
真盛
(
まつさか
)
りに
冬
(
ふゆ
)
だの
凩
(
こがらし
)
だのと、
183
そんな
淋
(
さび
)
しい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふない。
184
バラモン
兵士
(
へいし
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
185
意気
(
いき
)
が
萎
(
しぼ
)
むの
何
(
なん
)
のつて、
186
泣声
(
なきごゑ
)
を
並
(
なら
)
べやがつて、
187
あゝ
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
浮世
(
うきよ
)
が
嫌
(
いや
)
になつて
来
(
き
)
たわい。
188
水
(
みづ
)
は
方円
(
はうゑん
)
の
器
(
うつは
)
に
随
(
したが
)
ひ、
189
人
(
ひと
)
は
善悪
(
ぜんあく
)
の
友
(
とも
)
によると
云
(
い
)
ふからな。
190
お
前
(
まへ
)
のやうな
悪
(
あく
)
の
破産者
(
はさんしや
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
働
(
はたら
)
いてゐると、
191
どうやら
俺
(
おれ
)
も
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
無常
(
むじやう
)
を
感
(
かん
)
じて、
192
社会
(
しやくわい
)
の
所謂
(
いはゆる
)
善
(
ぜん
)
の
道
(
みち
)
へ
堕落
(
だらく
)
しさうだ。
193
ヤア
法螺貝
(
ほらがひ
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
たぞ。
194
オイ
此奴
(
こいつ
)
アどこともなしに
権威
(
けんゐ
)
のある
声
(
こゑ
)
ぢやないか。
195
サアここで
一
(
ひと
)
つ
確
(
しつか
)
り、
196
トランスの
秘術
(
ひじゆつ
)
を
尽
(
つく
)
し、
197
うまく、
198
あれを
岩窟
(
いはや
)
に
引
(
ひき
)
込
(
こ
)
まねばなるまいぞ。
199
サア
此処
(
ここ
)
で
善
(
ぜん
)
だとか
正義
(
せいぎ
)
だとか
云
(
い
)
ふ
名詞
(
めいし
)
は
抹殺
(
まつさつ
)
するのだ』
200
と
俄
(
にはか
)
に
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
してゐる。
201
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
202
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
改心組
(
かいしんぐみ
)
は
密林
(
みつりん
)
の
小径
(
せうけい
)
を
辿
(
たど
)
つて
漸
(
やうや
)
く
両人
(
りやうにん
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれた。
203
タール『オイ、
204
ヤク、
205
エール、
2051
そのお
方
(
かた
)
は
何処
(
どこ
)
へおいでになるのだ』
206
ヤク『
此
(
この
)
方
(
かた
)
は
勿体
(
もつたい
)
なくも
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
だ。
207
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
やお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
がトランスに
堕落
(
だらく
)
して
居
(
ゐ
)
るのを
改心
(
かいしん
)
さしてやらうと
云
(
い
)
つて、
208
今
(
いま
)
、
209
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
説教
(
せつけう
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さつたのだ。
210
そしてセールの
親分
(
おやぶん
)
に
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
かせて
改心
(
かいしん
)
をさせてやらねばならぬと
云
(
い
)
つて、
211
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
に
案内
(
あんない
)
を
命
(
めい
)
じ
遊
(
あそ
)
ばしたのだから、
212
貴様
(
きさま
)
もいい
加減
(
かげん
)
に
改心
(
かいしん
)
したがよからう。
213
トランスなんて
詮
(
つま
)
らぬからな』
214
タールは
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
にて、
215
「いや、
216
いい
鳥
(
とり
)
が
引
(
ひつ
)
掛
(
かか
)
つた。
217
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
今
(
いま
)
あゝして
比丘
(
びく
)
になつてゐるものの、
218
元
(
もと
)
が
元
(
もと
)
だから、
219
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
や、
2191
二万
(
にまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
は
持
(
も
)
つてるに
違
(
ちが
)
ひない。
220
一
(
ひと
)
つ
改心
(
かいしん
)
したと
見
(
み
)
せかけ、
221
うまく
岩窟
(
いはや
)
に
引
(
ひつ
)
張
(
ぱ
)
り
行
(
ゆ
)
かう……エール、
222
ヤクの
奴
(
やつ
)
、
223
仲々
(
なかなか
)
偉
(
えら
)
いわい。
224
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
引
(
ひつ
)
込
(
こ
)
み、
225
否応
(
いやおう
)
云
(
い
)
はさず、
226
ボツタくる
所存
(
しよぞん
)
だな。
227
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
帰順
(
きじゆん
)
と
見
(
み
)
せかけ、
228
一
(
ひと
)
つ
岩窟
(
いはや
)
へ
案内
(
あんない
)
してやらう」
229
と
故意
(
わざ
)
と
空涙
(
そらなみだ
)
を
流
(
なが
)
し、
230
タール『これはこれは
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか、
231
お
久
(
ひさ
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
232
私
(
わたし
)
も、
233
こんなトランスはし
度
(
た
)
くありませぬが、
234
貴方
(
あなた
)
から
頂
(
いただ
)
いたお
手当金
(
てあてきん
)
は、
235
心
(
こころ
)
の
悪魔
(
あくま
)
に
皆
(
みな
)
使
(
つか
)
はれて
了
(
しま
)
ひ、
236
今
(
いま
)
は
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずセールの
世話
(
せわ
)
になり、
237
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
岩窟
(
いはや
)
にトランスの
乾児
(
こぶん
)
となつて
居
(
を
)
ります。
238
然
(
しか
)
し
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
が、
239
そんな
姿
(
すがた
)
とお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばし、
240
世界
(
せかい
)
をお
歩
(
ある
)
き
遊
(
あそ
)
ばすのを
見
(
み
)
て、
241
懺悔
(
ざんげ
)
の
心
(
こころ
)
が
湧
(
わ
)
きました。
242
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
私
(
わたし
)
も
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しますから、
243
何卒
(
どうぞ
)
岩窟
(
いはや
)
にお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
244
セールの
大親分
(
おほおやぶん
)
を
説
(
と
)
き
伏
(
ふ
)
せ、
245
善道
(
ぜんだう
)
へ
復
(
かへ
)
るやう
御
(
お
)
取計
(
とりはか
)
らひ
下
(
くだ
)
さいませ』
246
エム『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
247
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
248
とエムは
本当
(
ほんたう
)
に
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
してゐる。
249
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
はタールの
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
からの
改心
(
かいしん
)
でない、
250
自分
(
じぶん
)
をたばかる
為
(
ため
)
だ、
251
とは
直覚
(
ちよくかく
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
252
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
無事
(
ぶじ
)
に
到着
(
たうちやく
)
して、
253
セール、
254
ハールの
巨頭
(
きよとう
)
を
改心
(
かいしん
)
させむと
決心
(
けつしん
)
し、
255
ワザとタールの
言葉
(
ことば
)
を
信
(
しん
)
ずるものの
如
(
ごと
)
く
装
(
よそほ
)
ひ、
256
治道
(
ちだう
)
『やア、
257
それは
何
(
なに
)
より
結構
(
けつこう
)
だ。
258
俺
(
わし
)
もお
前
(
まへ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
感謝
(
かんしや
)
に
堪
(
た
)
へない。
259
サア
案内
(
あんない
)
して
呉
(
く
)
れ』
260
タール『ハイ、
261
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
262
勝手
(
かつて
)
覚
(
おぼ
)
えし
此
(
この
)
山道
(
やまみち
)
、
263
近道
(
ちかみち
)
も
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
りますれば、
264
お
伴
(
とも
)
をさして
貰
(
もら
)
ひませう』
265
エム『もしもし、
266
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
様
(
さま
)
、
267
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
を
貴方
(
あなた
)
のお
弟子
(
でし
)
となし、
268
どこかへ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
269
セール、
270
ハールの
大将
(
たいしやう
)
を
初
(
はじ
)
め、
271
此
(
この
)
タールだつて
到底
(
たうてい
)
改心
(
かいしん
)
の
見込
(
みこみ
)
はありませぬ。
272
あんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
計略
(
けいりやく
)
にかけて
懐
(
ふところ
)
のものを
盗
(
と
)
らうと
云
(
い
)
ふ
企
(
たく
)
みで
厶
(
ござ
)
いますよ』
273
タール『コリヤ、
274
エム、
275
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
276
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
が
貴様
(
きさま
)
に
分
(
わか
)
らうかい。
277
仮令
(
たとへ
)
セール、
278
ハールが
悪人
(
あくにん
)
でも、
279
もとの
主人
(
しゆじん
)
たる
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
が、
280
斯
(
か
)
うなつて
衆生
(
しゆじやう
)
済度
(
さいど
)
にお
歩
(
ある
)
き
遊
(
あそ
)
ばす
姿
(
すがた
)
を
拝
(
をが
)
んだならば、
281
屹度
(
きつと
)
改心
(
かいしん
)
をなさるにきまつてる……。
282
味方
(
みかた
)
の
裏切
(
うらぎ
)
りする
奴
(
やつ
)
がどこにあるかい』
283
と
小声
(
こごゑ
)
で
窘
(
たしな
)
める。
284
エムは
大声
(
おほごゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
285
エム『もし
治道
(
ちだう
)
様
(
さま
)
、
286
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
287
険呑
(
けんのん
)
ですから
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なさいませ。
288
私
(
わたし
)
は
之
(
これ
)
にてお
暇
(
いとま
)
します。
289
岩窟
(
いはや
)
へでも
帰
(
かへ
)
らうものなら、
290
私
(
わたし
)
の
今
(
いま
)
云
(
い
)
つた
言葉
(
ことば
)
を
大将
(
たいしやう
)
に
告
(
つ
)
げ、
291
どんな
目
(
め
)
に
合
(
あ
)
はすかも
知
(
し
)
れませぬから、
292
貴方
(
あなた
)
も
何処
(
どつか
)
へ
逃
(
に
)
げて
下
(
くだ
)
さい。
293
さア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く、
294
お
逃
(
に
)
げなさい』
295
と
云
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
て、
296
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
森林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
へ
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
297
タール『ハヽヽヽ
疑
(
うたがひ
)
の
深
(
ふか
)
い
奴
(
やつ
)
だな。
298
セールの
親分
(
おやぶん
)
だつて、
299
元
(
もと
)
は
真人間
(
まにんげん
)
だ。
300
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
様
(
さま
)
の
懇篤
(
こんとく
)
な
説示
(
せつじ
)
によつて
改心
(
かいしん
)
するにきまつてる。
301
此
(
この
)
悪人
(
あくにん
)
の
俺
(
わし
)
でさへも、
302
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
のお
姿
(
すがた
)
を
拝
(
をが
)
んだ
丈
(
だ
)
けで、
3021
感涙
(
かんるい
)
に
咽
(
むせ
)
び、
303
最
(
も
)
はや
悪魔
(
あくま
)
は
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つたのだもの、
304
もし
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
305
何卒
(
どうぞ
)
エムの
云
(
い
)
ふた
事
(
こと
)
を
信用
(
しんよう
)
遊
(
あそ
)
ばさず、
306
私
(
わたし
)
が
案内
(
あんない
)
しますから、
307
何卒
(
どうぞ
)
岩窟
(
いはや
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
308
さア、
309
ヤク、
310
エール、
311
貴様
(
きさま
)
は
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
のお
後
(
あと
)
からお
伴
(
とも
)
し、
312
随分
(
ずいぶん
)
抜
(
ぬ
)
かりなく
用心
(
ようじん
)
して
上
(
のぼ
)
るのだぞ』
313
と
小声
(
こごゑ
)
にて
囁
(
ささや
)
く。
314
ヤク、
315
エールは
黙然
(
もくねん
)
としてニタリと
笑
(
わら
)
ふ。
316
治道
(
ちだう
)
『アハヽヽヽ、
317
随分
(
ずいぶん
)
人生
(
じんせい
)
と
云
(
い
)
ふものは
面白
(
おもしろ
)
いものだな。
318
仮令
(
たとへ
)
悪魔
(
あくま
)
に
謀
(
はか
)
られようとも
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られようとも、
319
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
した
吾
(
わ
)
が
身魂
(
みたま
)
、
320
何
(
なん
)
の
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
があらうぞ。
321
之
(
これ
)
でも
昔
(
むかし
)
は
三軍
(
さんぐん
)
を
叱咤
(
しつた
)
した
勇将
(
ゆうしやう
)
だ。
322
オイ、
323
タール、
324
心遣
(
こころづか
)
ひは
無用
(
むよう
)
だ。
325
サア
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
して
呉
(
く
)
れ。
326
虎熊
(
とらくま
)
の
山
(
やま
)
は
如何
(
いか
)
程
(
ほど
)
峻
(
さか
)
しとも
327
安
(
やす
)
く
上
(
のぼ
)
らむ
神
(
かみ
)
のまにまに。
328
セール、ハール、
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
329
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
靡
(
なび
)
かせて
見
(
み
)
む。
330
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
は
黒雲
(
くろくも
)
に
331
包
(
つつ
)
まれにけり
晴
(
は
)
らしてや
見
(
み
)
む』
332
タール『サア
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう。
333
之
(
これ
)
から
段々
(
だんだん
)
坂
(
さか
)
が
峻
(
けは
)
しくなりますから、
334
足許
(
あしもと
)
に
気
(
き
)
をつけてお
上
(
のぼ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
335
然
(
しか
)
らば
私
(
わたし
)
が
先導
(
せんだう
)
致
(
いた
)
しませう』
336
と
胸
(
むね
)
に
一物
(
いちもつ
)
、
337
心
(
こころ
)
に
二物
(
にもつ
)
、
338
罪
(
つみ
)
の
重荷
(
おもに
)
を
背負
(
せお
)
ひつつ、
339
喘
(
あへ
)
ぎ
喘
(
あへ
)
ぎ
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
340
(
大正一二・七・一五
旧六・二
於祥雲閣
北村隆光
録)
341
(昭和一〇・六・一六 王仁校正)
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