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第一二章 天恵(てんけい)〔一六六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第2篇 地異転変 よみ(新仮名遣い):ちいてんぺん
章:第12章 天恵 よみ(新仮名遣い):てんけい 通し章番号:1668
口述日:1923(大正12)年07月16日(旧06月3日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-04-03 12:54:12 OBC :rm6512
愛善世界社版:137頁 八幡書店版:第11輯 659頁 修補版: 校定版:142頁 普及版:65頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第六篇 宗教雑感 > 第七章 天恵
001 治道(ちだう)居士(こじ)は、002バット、003カークス、004ベース、005ヤク、006エールの()(にん)(したが)へ、007法螺貝(ほらがひ)()(なが)ら、008西(にし)西(にし)へとエルサレムを()して(すす)()く。009ヤクは道々(みちみち)(うた)ふ。
010ヤク『(かみ)(おもて)(あら)はれて
011善神(ぜんしん)邪神(じやしん)立別(たてわ)ける
012(たふと)御世(みよ)となりにけり
013(われ)()(もと)はバラモンの
014(いくさ)(きみ)()(つか)
015大黒主(おほくろぬし)御心(みこころ)
016(かな)はむ(ため)朝夕(あさゆふ)
017(うま)手入(ていれ)(その)(ほか)
018雑役(ざうやく)などにいそしみて
019(けは)しき山川(やまかは)(うち)(わた)
020浮木(うきき)(もり)まで()()れば
021(おも)(がけ)なき大軍(たいぐん)
022旗色(はたいろ)(わる)(わが)(いくさ)
023ライオン(がは)(うち)(わた)
024ビクトル(さん)猪倉(ゐのくら)
025(やま)をば(また)もや()()され
026(ここ)(いよいよ)解散(かいさん)
027()()()うて当惑(たうわく)
028(わが)故郷(ふるさと)へのめのめと
029(かへ)らむ(かほ)もなきままに
030セールの大尉(たいゐ)(したが)ひて
031虎熊山(とらくまやま)山砦(さんさい)
032泥棒(どろばう)のつとめを(あひ)()たし
033彼方(かなた)此方(こなた)(かけ)めぐり
034旅人(りよじん)(かす)()たりしが
035(いくさ)(きみ)治道(ちだう)居士(こじ)
036(もと)鬼春別(おにはるわけ)(さま)
037比丘(びく)姿(すがた)となりまして
038ハルセー(ぬま)(ほとり)(まで)
039(きた)らせたまふ(その)(みぎり)
040天地(てんち)道理(だうり)(さと)されて
041(まこと)(みち)(たち)(かへ)
042すまぬ(こと)とは()(なが)
043親分(おやぶん)なりしセールをば
044(うま)くだまして牢番(らうばん)
045()()今日(けふ)大芝居(おほしばゐ)
046()()ふせたる愉快(ゆくわい)さよ
047さはさり(なが)(この)前途(さき)
048()うして月日(つきひ)(おく)ろやら
049()むには(いへ)なく(くら)ふには
050(かて)なき(まづ)しき()れこそは
051(ぜん)にならうと(あせ)つても
052どうやら(あく)になり(さう)
053(こころ)(よわ)(ひと)()
054絶対(ぜつたい)無限(むげん)神力(しんりき)
055(そな)はりませる(かみ)(さま)
056(まか)せするより仕様(しやう)がない
057カークス、バット、エール、ベース
058(まへ)(なん)(おも)ふてるか
059(おれ)()()(あん)じられ
060(むね)をこがしてゐるわいの
061何程(なにほど)神力(しんりき)()けたとて
062(もと)より無学(むがく)吾々(われわれ)
063比丘(びく)にもなれず如何(いか)にして
064(たふと)(かみ)御使(みつかひ)
065つとまり(さう)(こと)はない
066此奴(こいつ)(なん)とか工夫(くふう)して
067()(ふり)(かた)(かんが)へにや
068(くち)のひあがる(おそれ)あり
069倉廩(さうりん)みちて礼節(れいせつ)
070()るとは古人(こじん)金言(きんげん)
071何程(なにほど)(まこと)(をしへ)をば
072(たき)(ごと)くに()びせられ
073(らい)(ごと)くに()かされて
074いかに(こころ)(ひら)くとも
075(なか)()いては(たま)()
076(いのち)をつなぐ(すべ)もない
077どしたら()()(のが)れようか
078コレコレもうし比丘(びく)(さま)
079(われ)()()(にん)行先(ゆくさき)
080()(ふり)(かた)詳細(まつぶさ)
081何卒(どうぞ)(をし)へて(くだ)さんせ
082(ぜん)(あく)との分水嶺(ぶんすいれい)
083刹那心(せつなごころ)(かぢ)次第(しだい)
084(ふね)(かへ)しちやなりませぬ
085あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
086御恵(みめぐみ)(ふか)治道(ちだう)居士(こじ)
087(わが)()(まへ)(つつし)みて
088(ひとへ)(ねが)(たてまつ)る』
089 治道(ちだう)居士(こじ)(これ)(こた)へて(うた)ふ。
090治道(ちだう)居士(こじ)天津(あまつ)御空(みそら)()(とり)
091山野(さんや)(すま)へる(けだもの)
092(かみ)(めぐみ)(つつ)まれて
093今日(けふ)(たくは)へなくとても
094立派(りつぱ)(いのち)をつなぎ()
095(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
096(てん)不食(ふじき)民草(たみぐさ)
097いかでか(つく)(たま)ふべき
098(まこと)(みち)(かな)ひなば
099慈愛(じあい)(かみ)吾々(われわれ)
100身魂(みたま)(やす)きに(まも)りつつ
101永遠(とは)(さかえ)(よろこ)びと
102(いのち)(かて)(たま)ふべし
103(そもそ)(ひと)はパンのみで
104(この)()()くべきものならず
105(みたま)(ゑさ)沢山(たくさん)
106吸収(きふしう)したる(その)(うへ)
107肉体(にくたい)(まも)食物(しよくもつ)
108(もと)むるならば皇神(すめかみ)
109必要(ひつえう)(みと)めし(もの)ならば
110(かなら)(さづ)(たま)ふべし
111(かみ)(まこと)大道(おほみち)
112(つく)(なが)らも食物(しよくもつ)
113(まづ)しく(くら)(くるし)むは
114(いま)(まつた)皇神(すめかみ)
115(こころ)(かな)はぬしるしぞや
116霊主(れいしゆ)体従(たいじゆう)真心(まごころ)
117(たち)(かへ)りたる人々(ひとびと)
118(かなら)衣食(いしよく)住業(ぢうげふ)
119(あまね)(さち)はひ(たま)ふべし
120()第一(だいいち)(たましひ)
121(みが)いて(こころ)相清(あひきよ)
122(かみ)大道(おほぢ)(あゆ)むべし
123(かみ)(なんぢ)(とも)にあり
124いかでか()すて(たま)はむや
125(とり)(けだもの)大神(おほかみ)
126(ゆたか)(やしな)(たま)ひます
127(いは)んや(ひと)()(もつ)
128(うゑ)()すべき()あらむや
129(ただ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
130(かみ)(をしへ)()(まか)
131(こころ)(くだ)()(くだ)
132(ちから)(かぎ)りに(わが)(わざ)
133(あさ)(ゆふ)なに(つか)ふべし
134(これ)処世(しよせい)第一(だいいち)
135万古(ばんこ)(くる)はぬ要訣(えうけつ)
136あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
137(かみ)(をしへ)(したが)ひて
138(なれ)(まよ)へる(たましひ)
139ひびきに(こた)へまつるなり
140(すす)めよ(すす)(かみ)(みち)
141(はげ)めよ(はげ)(ひと)(わざ)
142(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
143(かみ)(なんぢ)(とも)()り』
144(うた)(なが)ら、145治道(ちだう)居士(こじ)(さき)()つて(すす)()く。146(ある)(ちひ)さき(やま)(ふもと)()いた。147()ればかんばしき(いちご)大地(だいち)(くれなゐ)(そめ)て、148人待顔(ひとまちがほ)(みの)つてゐる。
149治道(ちだう)『さア(みな)さま、150ここで一服(いつぷく)せう。151()()よ。152(まへ)(たち)はいろいろと心配(しんぱい)してゐるが、153(かみ)(したが)つて()(みち)には()ふいふ天恵(てんけい)があるのだ。154(はたけ)(つく)つた(いちご)でなし、155(たれ)(はばか)らぬ原野(げんや)(なか)(いちご)(じゆく)して(おれ)(たち)()つてゐるぢやないか。156どれ()餓虎(がこ)(いきほひ)()つたとて、157これ(だけ)あれば、158(ひやく)(にん)二百(にひやく)(にん)食料(しよくれう)大丈夫(だいぢやうぶ)だ。159(また)先繰(せんぐ)先繰(せんぐ)(あたら)しい()が、160()うして根元(ねもと)(はう)についてゐる。161サア(ひと)感謝(かんしや)祈願(きぐわん)()らして、162天恵(てんけい)美味(びみ)(いただ)かうぢやないか』
163 一同(いちどう)は、
164『ハイ、165有難(ありがた)(ござ)います』
166此処(ここ)(こし)()え、167(かみ)感謝(かんしや)し、168小口(こぐち)から(みづ)()るやうな(いちご)を、169()()つては()()(やうや)(はら)(こしら)へた。
170治道(ちだう)居士(こじ)有難(ありがた)(すめ)大神(おほかみ)御恵(みめぐみ)
171()にも(やま)にもみち()らひけり。
172()(かわ)(すす)みかねたる(ひと)()
173(さづ)(たま)ひぬ(いのち)(あぢ)を。
174虎熊(とらくま)(やま)(たち)()(いま)ここに
175(かみ)(めぐみ)(あぢ)はふ(うれ)しさ』
176ヤク『(おも)ひきやあたりも(くら)(くさ)()
177(あか)(いちご)(みの)りゐるとは』
178エール『蛇苺(へびいちご)ならむと近寄(ちかよ)()()れば
179いとど美味(おい)しく()エール(いちご)
180バット『うす(ぐら)(この)山路(やまみち)(くれなゐ)
181(いちご)にバットあかくなりける』
182カークス『皇神(すめかみ)(ふか)(めぐみ)をカークスの
183(まこと)(ひと)(あた)(たま)ひぬ』
184ベース『(のど)かわきベースをかきし吾々(われわれ)
185(いま)御神(みかみ)(めぐみ)にうるほふ』
186ヤク『治道(ちだう)(さま)187()(なか)心配(しんぱい)せなくても()いものですな。188(わたし)(たち)昨日(きのふ)から一食(いつしよく)(ろく)にせず、189山坂(やまさか)(くだ)り、190スタスタ此処(ここ)(まで)やつて(まゐ)りましたが、191最早(もはや)(はら)はすき、192(のど)はかわき一滴(いつてき)(みづ)もなし、193進退(しんたい)(これ)(きは)まるといふ(ところ)(ござ)いました。194九分(くぶ)九厘(くりん)(すで)(いき)つかうとした(とき)に、195かやうな(たふと)(いちご)(くだ)さるとは、196(なん)とも、197(たと)(がた)ない有難(ありがた)さで(ござ)います。198(これ)(おも)へば199(けつ)して(かみ)(さま)吾々(われわれ)見殺(みごろし)にはなさりませぬな』
200治道(ちだう)『さうだ。201人間(にんげん)(かみ)(さま)(あた)へて(くだ)さるものを(いただ)いて()りさへすれば安全(あんぜん)だ。202(いま)人間(にんげん)()つた(うへ)にも()ひ、203()んだ(うへ)にも()み、204贅沢(ぜいたく)三昧(ざんまい)をして、205(これ)(うま)いの、206不味(まずい)のと小言(こごと)(ばか)()ふてゐるから、207生活難(せいくわつなん)(こゑ)(おこ)るのだ。208それで物価(ぶつか)益々(ますます)騰貴(とうき)して人民(じんみん)(いよいよ)(くるし)むのだ。209万人(ばんにん)万人(ばんにん)(なが)(かみ)恩恵(おんけい)有難(ありがた)(かん)じ、210(あた)へられたものを(いただ)くといふ(こと)になれば、211()(なか)貧乏(びんばふ)もなく、212(やまひ)もなく、213(また)(あらそ)ひも(おこ)らぬ。214だから吾々(われわれ)はどこ(まで)も、215惟神(かむながら)(みち)(あゆ)まねばならないのだ。216これで(かみ)(さま)有難(ありがた)(こと)(わか)つただらうな……。217オイ、218バット、219(まへ)はバラモン(ぐん)(はな)れてから、220泥棒(どろばう)とまで(なり)(さが)つて()つたが、221(その)(あひだ)(なに)愉快(ゆくわい)だと(おも)つた(こと)があるか、222あるなら(その)(とき)感想(かんさう)(わし)()かして()しいものだ』
223バット『ハイ、224(わたし)貴師(あなた)部下(ぶか)となつて、225軍人(ぐんじん)生活(せいくわつ)をやつて()りました(とき)には、226随分(ずいぶん)(つら)(ござ)いましたよ。227上官(じやうくわん)からは(あたま)(おさ)へられる。228(また)(すこ)しく上官(じやうくわん)のお()()らうとして忠実(まめまめ)しく(はたら)けば、229同僚(どうれう)(にく)まれる。230不真面目(ふまじめ)阿諛(おべつか)主義(しゆぎ)(やつ)抜擢(ばつてき)されて、231すぐに自分(じぶん)上役(うはやく)となり、232(あたま)(おさ)へる。233どうも不平(ふへい)不平(ふへい)で、234(いち)(にち)だつて(こころ)(やす)んじた(こと)はありませぬ。235そして何時(なんどき)強敵(きやうてき)(おそ)ふて()るかも()れず、236さすれば生命(いのち)(まと)(たたか)はねばならず、237日夜(にちや)戦々(せんせん)恟々(きようきよう)として月日(つきひ)(おく)りました』
238治道(ちだう)成程(なるほど)(まへ)()(こと)事実(じじつ)だ。239(わし)だつて三千(さんぜん)部下(ぶか)(ひき)(つれ)てをるものの、240(うへ)には大黒主(おほくろぬし)(かみ)(さま)があり、241(また)同僚(どうれう)もあり、242部下(ぶか)もあり、243一方(いつぱう)強敵(きやうてき)(ひか)征途(せいと)(のぼ)(とき)(くる)しさ。244(くち)では立派(りつぱ)雄健(をたけ)びをしてゐるものの、245(こころ)(うち)では、246随分(ずいぶん)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)(たね)をまいたよ。247そして一戦(いつせん)味方(みかた)無残(むざん)最後(さいご)()げる。248(また)仮令(たとへ)(てき)だと()つても、249無残(むざん)最後(さいご)()げてるのを()れば(むね)(いた)む。250イヤ(まつた)地獄(ぢごく)修羅(しゆら)畜生(ちくしやう)(ちまた)彷徨(さまよ)(やう)であつた。251治国別(はるくにわけ)(さま)(たす)けられ、252比丘(びく)となつた(とき)(こころ)(うれ)しさ、253(はじ)めて(ひろ)天地(てんち)(うま)れた(やう)(おも)ひがしたよ』
254バット『将軍(しやうぐん)(さま)(いま)(まで)結構(けつこう)なお(やく)だと、255(わたし)(うらや)んでゐましたが、256ヤツパリ貴師(あなた)でもさうで(ござ)いましたかなア。257さうすると()(なか)に、258安心(あんしん)して(くら)(もの)(いち)(にん)もありませぬなア』
259治道(ちだう)古人(こじん)()つたぢやないか……()(こと)種類(しな)こそ(かは)()(なか)に、260(うら)やすくてすむ(ひと)はなし……(この)(うた)第36巻第18章「心の天国」にも引用されているが、誰が詠んだ歌かは不明。本当(ほんたう)人生(じんせい)(くる)しき境遇(きやうぐう)(うた)つたものだ。261そしてお(まへ)以前(いぜん)泥棒(どろばう)になつて()(とき)262(なに)愉快(ゆくわい)(かん)じた(こと)はないか』
263バット『ハイ、264どうも軍人(ぐんじん)生活(せいくわつ)(とき)よりも一層(いつそう)(くる)しう(ござ)いました。265(くる)しいと()つても軍人(ぐんじん)ならば毎月(まいげつ)きまつてお手当(てあて)(いただ)けますが、266泥棒(どろばう)といふ(やつ)ア、267資本(もとで)のいらぬボロイ商売(しやうばい)(やう)ですが、268(あさ)から(ばん)まで戦々(せんせん)恟々(きようきよう)として、269(こころ)(くる)しめ(むね)(いた)め、270そして中々(なかなか)容易(ようい)収入(しうにふ)()られませぬ。271仮令(たとへ)(すこ)しの(かね)()()れようとするにも、272(たたか)ひと同様(どうやう)(いのち)がけで(ござ)います。273それに(また)何時(なんどき)捕手(とりて)()()るかも()れぬといふ(おそれ)があり、274(めし)(さけ)満足(まんぞく)(のど)(とほ)つた(こと)(ござ)いませぬ。275(ただ)泥棒(どろばう)になつて愉快(ゆくわい)(かん)じたのは、276貴師(あなた)(さま)にお()にかかり、277森林(しんりん)(おい)(かみ)(さま)のお(はなし)(うけたま)はつた(とき)と、278貴師(あなた)のお身代(みがは)りになつて牢獄(らうごく)(なか)芝居(しばゐ)をした(とき)(くらゐ)279愉快(ゆくわい)(かん)じた(こと)はありませぬ。280(しか)(なが)らそれにもまして愉快(ゆくわい)(こと)は、281(まこと)(みち)猛進(まうしん)し、282貴師(あなた)(とも)聖地(せいち)エルサレムに参拝(さんぱい)する途中(とちう)(うれ)しさ 283(はら)()(のど)(かわ)き、284九死(きうし)一生(いつしやう)になつた(とき)285天与(てんよ)(いちご)(いただ)いた(いま)(よろこ)びは、286(うま)れてから(この)(かた)287まだ(あぢ)はつた(こと)(ござ)いませぬ。288あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
289治道(ちだう)(ひと)()うしても、290(まこと)(みち)苦労(くらう)せなくては、291(かみ)(さま)(めぐみ)(わか)らず、292(また)飲食物(いんしよくぶつ)(たふと)(こと)(わか)らぬものだ。293サア(みな)(もの)294(いま)のバットの()つた(やう)にお(まへ)(たち)(いま)(めぐみ)愉快(ゆくわい)(かん)じただらうのう』
295 ()(にん)一度(いちど)に『ハイ』と()つたきり、296感謝(かんしや)(なみだ)にくれて()る。297(たちま)轟然(ぐわうぜん)たる(ひびき)後方(こうはう)(きこ)えた。298よくよく()れば虎熊山(とらくまやま)大爆発(だいばくはつ)(はじ)め、299(やま)半分(はんぶん)以上(いじやう)黒煙(こくえん)(つつ)まれ、300大火災(だいくわさい)(おこ)して()る。301一同(いちどう)()光景(くわうけい)(なが)め、302(かみ)無限(むげん)仁慈(じんじ)(なみだ)(とも)感謝(かんしや)した。
303大正一二・七・一六 旧六・三 於祥雲閣 松村真澄録)
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