霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 均霑(きんてん)〔一六七八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第4篇 神仙魔境 よみ(新仮名遣い):しんせんまきょう
章:第22章 均霑 よみ(新仮名遣い):きんてん 通し章番号:1678
口述日:1923(大正12)年07月17日(旧06月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:4189 OBC :rm6522
愛善世界社版:243頁 八幡書店版:第11輯 697頁 修補版: 校定版:255頁 普及版:110頁 初版: ページ備考:
001 虎熊山(とらくまやま)の俄(にはか)の爆発(ばくはつ)に、002仙聖山(せんせいざん)は云(い)ふも更(さら)なり、003此(この)郷土(きやうど)の山川(さんせん)草木(さうもく)は激烈(げきれつ)に震動(しんどう)し、004三千彦(みちひこ)を除(のぞ)く外(ほか)、005何(いづ)れも顔色(がんしよく)蒼白(まつさを)となり、006慄(ふる)ひ戦(をのの)いてゐた。007熔岩(ようがん)は七八(しちはち)里(り)隔(へだ)てた此(この)地点(ちてん)まで遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく降(ふ)りくるその凄(すさま)じさ。008されど此(この)大(おほ)きな家(いへ)にも拘(かか)はらず、009只(ただ)の一個(いつこ)も当(あた)らなかつたのは神(かみ)様(さま)の御(ご)守護(しゆご)と、010何(いづ)れも感謝(かんしや)の念(ねん)を催(もよほ)すのであつた。011流石(さすが)の猛悪(まうあく)なるテーラも、012キングレスも、013部下(ぶか)の小盗人(こぬすびと)も、014俄(にはか)に怖(おぢ)けつき、015思(おも)はず知(し)らず両手(りやうて)を合(あは)せ、016一生(いつしやう)懸命(けんめい)に祈願(きぐわん)し初(はじ)めた。017その声(こゑ)は一(いち)時(じ)、018裏山(うらやま)の谷々(たにだに)の木精(こだま)を響(ひび)かした。
019スマナー姫(ひめ)『皆(みな)さま、020恐(おそ)ろしい事(こと)で厶(ござ)いましたな。021あの様(やう)な……一(いち)時(じ)は巨大(きよだい)な熔岩(ようがん)が雨(あめ)の如(ごと)くに降(ふ)つて参(まゐ)りましたが、022お神徳(かげ)によりまして、023吾(わが)家(や)には只(ただ)の一(ひと)つも当(あた)らず、024又(また)あの地響(ぢひびき)で家(いへ)も倒(たふ)れず、025皆(みな)さまも無事(ぶじ)に命(いのち)を拾(ひろ)はれしは、026全(まつた)く尊(たふと)き神(かみ)様(さま)の御(ご)守護(しゆご)で厶(ござ)いませう』
027と云(い)ひ乍(なが)ら窓(まど)を開(ひら)いて、028村落(そんらく)の家々(いへいへ)を眺(なが)めて見(み)た。029然(しか)し乍(なが)ら黒煙(こくえん)天(てん)に漲(みなぎ)つて黒白(あやめ)も分(わか)らぬ真(しん)の暗(やみ)となつて居(ゐ)た。030実際(じつさい)今日(けふ)は朝(あさ)早(はや)くより何処(どこ)ともなく薄暗(うすくら)く、031何(いづ)れも夜分(やぶん)と思(おも)つてゐたがその実(じつ)、032まだ昼(ひる)の最中(もなか)であつたのである。033別(べつ)に村(むら)の家々(いへいへ)にも火災(くわさい)も起(おこ)らず、034阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)の声(こゑ)もなきに安心(あんしん)の胸(むね)を撫(な)でおろし、
035スマナー『皆(みな)さま、036私(わたし)の家(いへ)は村中(むらぢう)一度(いちど)に見下(みお)ろせる所(ところ)で厶(ござ)いますが、037村方(むらがた)はあの騒動(さうだう)に火災(くわさい)も起(おこ)らず、038叫(さけ)びの声(こゑ)も聞(きこ)えませぬから、039一軒(いつけん)も残(のこ)らず神(かみ)様(さま)のお神徳(かげ)を頂(いただ)いたのでせう。040サア之(これ)から神(かみ)様(さま)に感謝(かんしや)の祭(まつり)を致(いた)しまして、041皆(みな)さまに直会(なほらひ)を頂(いただ)いて貰(もら)ひませう』
042三千(みち)『いや、043それは結構(けつこう)です。044此(この)様(やう)な大爆発(だいばくはつ)、045雨(あめ)の如(ごと)く降(ふ)り来(きた)る熔岩(ようがん)が、046此(この)広(ひろ)い家(いへ)に一箇(いつこ)も当(あた)らず、047村中(むらぢう)安全(あんぜん)と云(い)ふのは全(まつた)く不思議(ふしぎ)です。048此(こ)れも神(かみ)様(さま)の御(お)神徳(かげ)でせう。049サア青年隊(せいねんたい)の方々(かたがた)、050御(ご)苦労(くらう)乍(なが)らお祭(まつり)の用意(ようい)を願(ねが)ひます』
051 タークは三千彦(みちひこ)の言葉(ことば)に従(したが)ひ、052青年隊(せいねんたい)を率(ひき)ゐ、053いろいろ供物(くもつ)の用意(ようい)をなし、054祭典(さいてん)の準備(じゆんび)に取(と)りかかつた。055漸(やうや)く祭典(さいてん)の用意(ようい)は出来(でき)た。056ここに三千彦(みちひこ)、057スマナー姫(ひめ)は新(あたら)しき祭服(さいふく)をつけ、058恭(うやうや)しく神前(しんぜん)に祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、059祭典(さいてん)も無事(ぶじ)に終了(しうれう)した。060それより村中(むらぢう)の老若(ろうにやく)男女(なんによ)は此(この)広(ひろ)き家(いへ)に集(あつ)まり来(きた)り、061キングレスの部下(ぶか)も斎場(さいぢやう)に列(れつ)し、062直会(なほらひ)を頂(いただ)く事(こと)となつた。
063 スマナー姫(ひめ)は嬉(うれ)しげに宴席(えんせき)の中央(ちうあう)に立(た)つて、064自(みづ)から歌(うた)ひ自(みづか)ら舞(ま)ふ。
065スマナー姫(ひめ)『此処(ここ)は名(な)に負(お)ふ秘密(ひみつ)郷(きやう)
066北(きた)に仙聖山(せんせいざん)を控(ひか)へ
067東(ひがし)に虎熊(とらくま)の山(やま)聳(そび)え立(た)ち
068白(しろ)青(あを)黄色(きいろ)紫(むらさき)の
069花(はな)は芳香(はうかう)薫(くん)じつつ
070胡蝶(こてふ)は高(たか)く舞(ま)ひ遊(あそ)び
071迦陵(かりよう)嚬伽(びんが)は涼(すず)しき声(こゑ)を放(はな)ちて
072神世(かみよ)を謡(うた)ふ
073実(げ)にも尊(たふと)き仙聖郷(せんせいきやう)の
074青人草(あをひとぐさ)の喜(よろこ)びは
075外(ほか)の国(くに)には例(ためし)なき
076中国一(ちうごくいち)の瑞祥(ずゐしやう)ぞ
077醜(しこ)の曲津(まがつ)の時(とき)を得(え)て
078一度(いちど)は荒(すさ)び狂(くる)ひしが
079尊(たふと)き神(かみ)の御使人(みつかひびと)
080三千彦(みちひこ)司(つかさ)があれまして
081吾(わが)家(や)を初(はじ)め此(この)里(さと)の
082醜(しこ)の災(わざはひ)除(のぞ)かせ玉(たま)ひ
083今(いま)は全(まつた)く古(いにしへ)の
084神代(かみよ)に帰(かへ)りし嬉(うれ)しさよ
085仙聖山(せんせいざん)の峰(みね)高(たか)く
086五色(ごしき)の雲(くも)の被衣(かづき)して
087雲(くも)をば起(おこ)し雨(あめ)降(ふ)らし
088五日(いつか)の風(かぜ)や十日(じふじつ)の
089雨(あめ)も時(とき)をば違(たが)へずに
090降(ふ)りしく厚(あつ)き御恵(みめぐみ)は
091仙聖郷(せんせいきやう)の名(な)に負(お)ひし
092吾(わが)住(す)む郷(さと)の喜(よろこ)びぞ
093勇(いさ)めよ勇(いさ)め里人(さとびと)よ
094踊(をど)れよ踊(をど)れ皆(みな)の人(ひと)
095今日(けふ)の生日(いくひ)の喜(よろこ)びは
096外(ほか)へはやらじ幾千代(いくちよ)も
097つづかせませと大前(おほまへ)に
098祈(いの)る吾(われ)等(ら)が真心(まごころ)を
099神(かみ)は必(かなら)ずみそなはし
100清(きよ)く諾(うべ)なひ玉(たま)ふべし
101あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102実(げ)にも嬉(うれ)しき人(ひと)の世(よ)の
103誠(まこと)の道(みち)を踏(ふ)みしめて
104神(かみ)の教(をしへ)を守(も)るならば
105此(この)世(よ)に枉(まが)の恐(おそ)れなし
106妾(わらは)も尊(たふと)き足乳根(たらちね)の
107親(おや)兄弟(きやうだい)や背(せ)の君(きみ)に
108悲(かな)しき別(わか)れをなせしより
109心(こころ)は曇(くも)り胸(むね)痛(いた)み
110身(み)も世(よ)もあらぬ思(おも)ひにて
111一度(いちど)は此(この)世(よ)を去(さ)らむかと
112狭(せま)き女(をんな)の心(こころ)より
113思(おも)ひ定(さだ)めて仙聖(せんせい)の
114山(やま)に立(た)ちたる白骨堂(はくこつだう)
115それの御前(みまへ)に平伏(ひれふ)して
116今(いま)や果(は)てむとする時(とき)しもあれや
117名(な)さへ目出度(めでた)き三千彦(みちひこ)の
118神(かみ)の司(つかさ)の御恵(みめぐ)みに
119果敢(はか)なき命(いのち)を救(すく)はれて
120吾(わが)家(や)に帰(かへ)り窺(うかが)へば
121早(はや)くも魔(ま)の手(て)は内外(うちそと)に
122拡(ひろ)げられたる恐(おそ)ろしさ
123闇(やみ)を幸(さいは)ひ裏口(うらぐち)に
124立(た)ちて様子(やうす)を覗(うかが)へば
125従兄(いとこ)と名乗(なの)るテーラさま
126捕手(とりて)と名乗(なの)る人々(ひとびと)が
127青年隊(せいねんたい)のタークさま
128インターさまと何事(なにごと)か
129争論(あげつらひ)つつ妾(わらは)が命(いのち)
130死(し)せしとや思(おも)ひ玉(たま)ひけむ
131百千万(ひやくせんまん)の心(こころ)配(くば)り
132感謝(かんしや)の涙(なみだ)にほだされて
133三千彦(みちひこ)司(つかさ)と諸共(もろとも)に
134奥(おく)の襖(ふすま)を引(ひき)開(あ)けて
135其(その)場(ば)に立(たち)出(い)で言霊(ことたま)を
136かすかに宣(の)れば人々(ひとびと)の
137心(こころ)の暗(やみ)は晴(は)れ渡(わた)り
138清(きよ)く尊(たふと)き惟神(かむながら)
139珍(うづ)の身魂(みたま)に帰(かへ)りたる
140その喜(よろこ)びや如何(いか)許(ばか)り
141感謝(かんしや)の言葉(ことば)もなきまでに
142妾(わらは)は喜(よろこ)び泣(な)き入(い)りぬ
143あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
144神(かみ)の恵(めぐ)みを何処(どこ)までも
145頂(いただ)きまして直会(なほらひ)の
146此(この)酒宴(さかもり)を快(こころ)よく
147聞(きこ)し召(め)されと宣(の)り奉(まつ)る
148朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
149月(つき)落(お)ち星(ほし)は失(う)するとも
150虎熊山(とらくまやま)は割(わ)るるとも
151神(かみ)に任(まか)せし人(ひと)の身(み)は
152いかで恐(おそ)れむ今(いま)目(ま)の辺(あた)り
153神(かみ)の恵(めぐみ)を蒙(かうむ)りて
154笑(ゑ)み栄(さか)えたる嬉(うれ)しさよ
155あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
156神(かみ)の御前(みまへ)に慎(つつし)みて
157畏(かしこ)み感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る』
158三千彦(みちひこ)『諸々(もろもろ)の罪(つみ)や穢(けがれ)を払(はら)はむと
159爆発(ばくはつ)しけむ虎熊(とらくま)の山(やま)。
160虎熊(とらくま)の峰(みね)に潜(ひそ)みし枉神(まがかみ)も
161今(いま)は全(まつた)く逃(に)げ失(う)せにけむ。
162仙聖(せんせい)の清(きよ)けき郷(さと)に来(き)て見(み)れば
163思(おも)ひがけなき事(こと)のみぞ聞(き)く。
164スマナーの姫(ひめ)の命(みこと)の真心(まごころ)を
165愛(めで)玉(たま)ひなむ天地(あめつち)の神(かみ)は。
166インターやタークの君(きみ)の真心(まごころ)に
167バータラの家(いへ)は栄(さか)え行(ゆ)かなむ』
168ターク『思(おも)ひきや魔神(まがみ)の猛(たけ)る此(この)郷(さと)に
169神(かみ)の使(つかひ)の来(きた)りますとは。
170傾(かたむ)きし家(いへ)の柱(はしら)を立直(たてなほ)す
171君(きみ)は誠(まこと)の三千彦(みちひこ)司(つかさ)よ』
172インター『村肝(むらきも)の心(こころ)の暗(やみ)は晴(は)れにけり
173バータラの家(いへ)の雲(くも)を払(はら)ひて。
174昼(ひる)さへも暗(くら)くなりぬる今日(けふ)の空(そら)
175明(あ)かさむ為(ため)か爆発(ばくはつ)の声(こゑ)。
176吾(わが)胸(むね)に潜(ひそ)む枉津(まがつ)も逃(に)げ失(う)せぬ
177かの爆発(ばくはつ)の強(つよ)き響(ひびき)に。
178獅子(しし)熊(くま)も虎(とら)狼(おほかみ)も戦(をのの)きて
179鎮(しづ)まりにけむ爆発(ばくはつ)の声(こゑ)に』
180三千彦(みちひこ)『何事(なにごと)も皆(みな)皇神(すめかみ)の御心(みこころ)ぞ
181仰(あふ)ぎ敬(ゐやま)へ神(かみ)の御子(みこ)達(たち)。
182産土(うぶすな)の山(やま)を立(た)ち出(いで)し師(し)の君(きみ)の
183御(おん)身(み)如何(いか)にと思(おも)ひ煩(わづら)ふ。
184さり乍(なが)ら吾(わが)師(し)の君(きみ)は神人(しんじん)よ
185いと平(たひ)らけく安(やす)くましまさむ』
186 スマナーは三千彦(みちひこ)に盃(さかづき)をさし乍(なが)ら、
187スマナー『もし宣伝使(せんでんし)様(さま)、188妾(わたし)の今後(こんご)の身(み)の振(ふ)り方(かた)に就(つ)いては、189如何(いかが)致(いた)したら宜(よろ)しう厶(ござ)いませうか。190何卒(どうぞ)お示(しめ)しを願(ねが)ひたう厶(ござ)います』
191三千(みち)『私(わたし)が斯(か)うなさいませ……とお指図(さしづ)は致(いた)しませぬが、192貴女(あなた)のお心(こころ)にお感(かん)じなされた最善(さいぜん)の方法(はうはふ)を以(もつ)ておやりなされたら如何(どう)でせう』
193スマナー『はい、194有難(ありがた)う厶(ござ)います。195左様(さやう)ならば貴方(あなた)のお蔭(かげ)で命(いのち)のない処(ところ)を救(すく)はれ、196又(また)こうして沢山(たくさん)の方(かた)も誠(まこと)の道(みち)へ立(たち)帰(かへ)つて下(くだ)さつたので厶(ござ)いますから、197妾(わたし)はこれに越(こ)した喜(よろこ)びは厶(ござ)いませぬ。198山林(さんりん)も田畑(たはた)も宝(たから)も何(なに)も要(い)りませぬ。199妾(わたし)は此(この)家(いへ)に三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)やウラルの神(かみ)様(さま)をお祀(まつ)り致(いた)し、200祖先(そせん)や、201夫(をつと)の菩提(ぼだい)を弔(とむら)ひ、202比丘尼(びくに)となつて、203一生(いつしやう)を送(おく)りたう厶(ござ)いますが、204如何(いかが)で厶(ござ)いませうな』
205三千(みち)『成程(なるほど)、206それは誠(まこと)に殊勝(しゆしよう)なお考(かんが)へです。207三千彦(みちひこ)、208双手(そうしゆ)を挙(あ)げて賛成(さんせい)致(いた)します』
209スマナー『早速(さつそく)の御(ご)承知(しようち)、210有難(ありがた)う存(ぞん)じます。211就(つ)きましては妾(わたし)の家(いへ)は先祖(せんぞ)代々(だいだい)の……此(この)界隈(かいわい)での富豪(ふがう)で厶(ござ)いまするが、212もはや比丘尼(びくに)となつて神(かみ)様(さま)にお仕(つか)へする以上(いじやう)は、213財産(ざいさん)なんか、214必要(ひつえう)は認(みと)めませぬ。215何卒(どうぞ)バータラ家(け)の財産(ざいさん)全部(ぜんぶ)を、216社会(しやくわい)公共(こうきよう)の為(ため)に捧(ささ)げ度(た)いと存(ぞん)じますが、217如何(いかが)で厶(ござ)いませうか』
218三千(みち)『それは至極(しごく)結構(けつこう)です。219定(さだ)めて村人(むらびと)もお喜(よろこ)びになるでせう』
220スマナー『全財産(ぜんざいさん)を四(よつ)つに分(わ)け、221その一部(いちぶ)をエルサレムの宮(みや)に献(けん)じ、222一部(いちぶ)を神館(かむやかた)の維持費(ゐぢひ)に当(あ)て、223残(のこ)りの二部(にぶ)を村人(むらびと)に寄贈(きぞう)致(いた)しましたら如何(いかが)で厶(ござ)いませうかな』
224三千(みち)『それは至極(しごく)よいお考(かんが)へです。225さうなさいませ。226然(しか)し乍(なが)ら今(いま)ここに改心(かいしん)をせられたキングレス、227外(ほか)十数(じふすう)人(にん)の方々(かたがた)は、228いま泥棒(どろばう)をお廃(や)めになつた処(ところ)で、229百姓(ひやくしやう)するにも田畑(たはた)はなし、230商売(しやうばい)をするにも資本(しほん)もないと云(い)ふ場合(ばあひ)ですから、231此(この)方々(かたがた)にも少(すこ)しなりと山林(さんりん)なり田畑(たはた)なりお与(あた)へになり、232農業(のうげふ)をおさせになつたら如何(いかが)で厶(ござ)いませうか』
233スマナー『はい、234どうも有難(ありがた)う厶(ござ)います。235キングレス様(さま)其(その)外(ほか)の方々(かたがた)が御(ご)承知(しようち)さへ下(くだ)されば236此(この)村(むら)に居(を)つて貰(もら)つて正業(せいげふ)に就(つ)いて貰(もら)ひませう』
237三千(みち)『キングレス様(さま)、238其(その)他(た)の方々(かたがた)、239今(いま)スマナー様(さま)が貴方(あなた)等(がた)に相当(さうたう)の財産(ざいさん)を分配(ぶんぱい)したいと仰有(おつしや)るがどうで厶(ござ)いませう。240改心(かいしん)なさつた以上(いじやう)は、241此(この)仙聖郷(せんせいきやう)に於(おい)て農業(のうげふ)を営(いとな)み、242安全(あんぜん)なる生活(せいくわつ)を送(おく)られたら宜(よ)からうと思(おも)ひますが、243貴方(あなた)のお考(かんが)へは如何(いかが)で厶(ござ)いますか』
244 キングレスは落涙(らくるい)し乍(なが)ら両手(りやうて)をつき、
245キング『ハイ、246重々(ぢうぢう)の罪(つみ)を赦(ゆる)された上(うへ)、247夢(ゆめ)だにも見(み)る事(こと)の出来(でき)ないやうな御(おん)恵(めぐ)み、248あまりの事(こと)で、249勿体(もつたい)なうて返(かへ)す言葉(ことば)も厶(ござ)いませぬ。250何分(なにぶん)にも宜(よろ)しく御(お)願(ねがひ)申(まを)します』
251三千(みち)『あ、252それは結構(けつこう)々々(けつこう)。253これ、254スマナー様(さま)、255これで財産(ざいさん)の処分(しよぶん)が略(ほぼ)落着(らくちやく)しました。256貴女(あなた)もこれから重荷(おもに)が下(お)りたやうなものだから、257此(この)家(いへ)を修繕(しうぜん)して神(かみ)様(さま)の御舎(みあらか)となして258里人(さとびと)を善(ぜん)に導(みちび)き善根(ぜんこん)をお積(つ)みなさいませ。259私(わたくし)も貴女(あなた)に会(あ)つて思(おも)はぬ御用(ごよう)をさして頂(いただ)きました。260あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
261と天(てん)に向(むか)つて合掌(がつしやう)し嬉(うれ)し涙(なみだ)にくれてゐる。
262三千(みち)『世(よ)の中(なか)に醜(しこ)の枉津(まがつ)はなけれども
263只(ただ)心(こころ)より湧(わ)き出(い)づるかな。
264身(み)の内(うち)に枉(まが)さへなくば獅子(しし)熊(くま)も
265虎(とら)狼(おほかみ)も物(もの)の数(かず)かは。
266誠(まこと)ほど世(よ)に恐(おそ)るべき物(もの)はなし
267鬼(おに)も大蛇(をろち)も逃(に)げ失(う)せて行(ゆ)く。
268バラモンの神(かみ)の教(をしへ)を振(ふり)捨(す)てて
269今日(けふ)は誠(まこと)の三千彦(みちひこ)となる』
270スマナー姫(ひめ)『玉(たま)の緒(を)の命(いのち)危(あやふ)き折節(をりふし)に
271待(ま)てよとかかる玉(たま)の御(おん)声(こゑ)。
272三千彦(みちひこ)の君(きみ)の現(あら)はれ来(き)まさずば
273吾(われ)は霊界(あのよ)の人(ひと)なりしならむ。
274テーラの醜(しこ)の言葉(ことば)に怖(お)ぢ恐(おそ)れ
275死(し)なむとせしぞ愚(おろか)なりけり。
276さり乍(なが)らテーラの君(きみ)のあらばこそ
277此(この)喜(よろこ)びの来(きた)りしならむ。
278世(よ)の中(なか)に悪(あし)きものとて無(な)かるべし
279只(ただ)吾(わが)心(こころ)暗(くら)き故(ゆゑ)なり。
280村肝(むらきも)の心(こころ)の空(そら)に雲(くも)なくば
281月日(つきひ)も清(きよ)く身(み)を照(て)らすらむ』
282ターク『仙聖(せんせい)の郷(さと)も今日(けふ)より古(いにしへ)の
283花(はな)咲(さ)き匂(にほ)ふ園(その)となるらむ。
284三千彦(みちひこ)の神(かみ)の司(つかさ)の御恵(みめぐ)みに
285吾(わが)里人(さとびと)は甦(よみがへ)りつつ。
286スマナーの比丘尼(びくに)の君(きみ)によく仕(つか)へ
287朝(あさ)な夕(ゆふ)なに道(みち)を守(まも)らむ』
288インター『吾(われ)とても比丘尼(びくに)の君(きみ)の真心(まごころ)の
289雨(あめ)にぬれつつ忍(しの)び音(ね)に泣(な)きぬ。
290嬉(うれ)しさの涙(なみだ)は胸(むね)に充(み)ち溢(あふ)れ
291身(み)も浮(う)く許(ばか)り勇(いさ)み立(た)つかな』
292キングレス『枉事(まがこと)のあらむ限(かぎ)りを尽(つく)したる
293吾(われ)にも神(かみ)の恵(めぐ)み賜(たま)ひぬ。
294虎熊(とらくま)の山(やま)に悪事(あくじ)を企(たく)らみつ
295今(いま)もありせば亡(ほろ)びしならむ。
296此(この)郷(さと)に現(あら)はれ来(きた)り爆発(ばくはつ)の
297なやみ逃(のが)れし事(こと)の嬉(うれ)しき』
298 テーラはノソリノソリと足(あし)を痛(いた)めて此(この)場(ば)に這(は)ひ来(きた)り、299庭(には)の土間(どま)に犬突這(いぬつくばひ)となつて、
300テーラ『枉神(まがかみ)の醜(しこ)の限(かぎ)りを尽(つく)したる
301吾(われ)今(いま)よりは悔(く)い改(あらた)めなむ。
302百人(ももびと)よ吾(わが)罪科(つみとが)を赦(ゆる)せかし
303村(むら)の僕(しもべ)となりて仕(つか)へむ』
304 愈(いよいよ)ここにバータラ家(け)の遺産(ゐさん)は、305スマナーの意志(いし)に従(したが)ひそれぞれ分配(ぶんぱい)されて、306上下(じやうげ)貧富(ひんぷ)の区別(くべつ)なく、307郷民(きやうみん)は互(たがひ)に業(げふ)を楽(たの)しみ近隣(きんりん)相和(あひわ)し、308和気(わき)靄々(あいあい)として世(よ)を送(おく)る事(こと)となつた。309三千彦(みちひこ)は宣伝(せんでん)の旅(たび)が急(せ)くので、310永(なが)く留(とど)まる訳(わけ)にも行(い)かず、311二三(にさん)日(にち)逗留(とうりう)して里人(さとびと)に神(かみ)の教(をしへ)を伝(つた)へ、312タークを館(やかた)の留守居(るすゐ)と頼(たの)み置(お)き、313スマナーはエルサレムへ参拝(さんぱい)せむと、314三千彦(みちひこ)の許(ゆる)しなければ、315見(み)え隠(かく)れに後(あと)を慕(した)ふて進(すす)み行(ゆ)く事(こと)となつた。
316(大正一二・七・一七 旧六・四 於祥雲閣 北村隆光録)
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